(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、電動車両の一例である電動自転車は、
図12,
図13に示すように、ペダル101に入力された人力駆動力(踏力)によって回転する前部スプロケット102と、後輪103に設けられた後部スプロケット104と、前部スプロケット102と後部スプロケット104との間に巻回されたチェン105と、チェン105に補助駆動力を付加する駆動ユニット106とを有するものがある。
【0003】
駆動ユニット106は、チェン105に歯合する補助駆動用スプロケット107と、補助駆動用スプロケット107を回転駆動するモータ(図示省略)と、チェン105に張力を付与するテンショナー109とを有している。
【0004】
補助駆動用スプロケット107は、モータに連動する出力軸114に設けられており、下位の巻回経路のチェン105に下方から歯合して、チェン105を持ち上げている。テンショナー109はアーム110と張力付与プーリー111とばね(図示省略)とを有している。アーム110は、支軸113を介して、上下揺動自在に駆動ユニット106に設けられている。張力付与プーリー111は、アーム110の遊端部に回転自在に設けられ、下位の巻回経路のチェン105に上方から歯合している。ばねは、アーム110を下向きに付勢している。
【0005】
これによると、ペダル101を踏むことにより前部スプロケット102が回転し、前部スプロケット102の回転がチェン105を介して後部スプロケット104に伝わり、後輪103が回転する。この際、ペダル101にかかる踏力に応じてモータが駆動することにより、補助駆動用スプロケット107が回転駆動し、補助駆動力が補助駆動用スプロケット107からチェン105を介して後部スプロケット104に伝わる。これにより、人力駆動力に補助駆動力が加味されて、後輪103が回転する。
【0006】
この時、アーム110はばねの付勢力によって下向きに付勢されているため、張力付与プーリー111は下位の巻回経路のチェン105を上方から下向きに押圧し、チェン105に最適な張力が付与され、チェン105の弛みを防止することができる。
【0007】
尚、上記のようなテンショナーを備えた電動自転車については、例えば下記特許文献1
に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記の従来形式では、アーム110の支軸113を補助駆動用スプロケット107の出力軸114から離間した位置に設けているため、テンショナー109の取付スペースが大きくなり、駆動ユニット106が大型化するといった問題がある。
【0010】
また、アーム110の支軸113は補助駆動用スプロケット107の出力軸114よりも下方で且つ駆動ユニット106の下端部に設けられているため、自転車で段差部を乗り越える等の際、駆動ユニット106が縁石等の障害物に衝突することがあり、このような場合、アーム110の支軸113が破損し易いといった問題がある。このような問題の対策として、アーム110の支軸113の径を太くして強度を上げることが考えられるが、支軸113の径を太くすると、駆動ユニット106がさらに大型化するといった問題がある。
【0011】
また、アーム110が支軸113を中心に上下に揺動する際、アーム110の単位揺動角度に対するチェン105の周長の変化量の比をテンショナーキャパシティーと定義すると、このテンショナーキャパシティーの数値を大きくすることは困難であった。
【0012】
本発明は、駆動ユニットを小型化でき、テンショナーキャパシティーを増大させることが可能な電動車両のテンショナーおよび電動自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本第1発明は、回転自在な一方の輪体と他方の輪体との間に巻回された無端状の回動自在な駆動力伝達部材と、駆動力伝達部材に補助駆動力を付加する駆動ユニットとを備え、
駆動ユニットが、駆動力伝達部材の巻回経路の内外いずれか一方側から駆動力伝達部材に歯合する回転自在な補助駆動用輪体と、補助駆動用輪体に回転駆動力を付与する電動機とを有
し、
電動機によって回転駆動される出力軸に補助駆動用輪体が設けられている電動車両の駆動力伝達部材に張力を付与するテンショナーであって、
駆動ユニットに設けられた円筒状の固定軸に外嵌されて揺動軸心を中心に揺動自在なアームと、アームに設けられた回転自在な張力付与輪体と、付勢手段とを有し、
固定軸に出力軸が挿通され、
張力付与輪体は補助駆動用輪体と反対側から駆動力伝達部材に歯合し、
付勢手段は駆動力伝達部材の張力が増える方向へアームを付勢し、
アームの揺動軸心が補助駆動用輪体の回転軸心と同軸であるものである。
【0014】
これによると、アームの揺動軸心が補助駆動用輪体の回転軸心と同軸であるため、アームの揺動軸心の位置と補助駆動用輪体の回転軸心の位置とが異なっている場合に比べて、テンショナーの取付スペースが縮小され、これにより、駆動ユニットを小型化することができる。
【0015】
また、アームが揺動する際、アームの単位揺動角度に対する駆動力伝達部材の周長の変化量の比をテンショナーキャパシティーと定義すると、アームの揺動軸心が補助駆動用輪体の回転軸心と同軸であるため、アームが揺動しても、補助駆動用輪体の回転軸心から張力付与輪体の回転軸心までの距離は常に一定に保たれ、テンショナーキャパシティーが増大する。
【0016】
これにより、駆動力伝達部材が伸縮して周長が変化した場合、これに応じてアームが揺動することで、駆動力伝達部材の伸縮が吸収されるのであるが、このときの駆動力伝達部材の伸縮量に対するアームの揺動角度の変化量が小さくなるため、アームに作用する付勢手段の付勢力の変動も小さくなり、変動の少ない比較的安定した付勢力をアームに作用させることができる。
【0020】
また、アームの軸を円筒状の固定軸とすることにより、アームの軸の直径が太くなってアームの軸の剛性が向上し、電動車両が転倒したり或いは駆動ユニットが障害物に衝突しても、アームの軸の折損を防止することができる。
【0021】
また、出力軸が固定軸に挿通されているため、出力軸と固定軸とが同軸上に配置され、出力軸の位置とアームの軸の位置とが異なっている場合に比べて、テンショナーの取付スペースが縮小され、駆動ユニットを小型化することができ、見栄えも向上する。
【0022】
本第
2発明における電動車両のテンショナーは、アームが揺動軸心方向に変動するのを規制する変動規制手段が、固定軸の径方向における外側方に設けられているものである。
これによると、アームが揺動軸心方向に変動するのを阻止することができるため、張力付与輪体がアームの揺動軸心方向に変動して駆動力伝達部材が張力付与輪体から離脱してしまうのを防止することができる。
【0023】
本第
3発明における電動車両のテンショナーは、変動規制手段は、アームに形成された長孔と、アームの揺動軸心方向から長孔に挿通されて駆動ユニットに取り付けられた規制部材とを有し、
アームの長孔の周縁部がアームの揺動軸心方向において相対向する規制部材の一部と駆動ユニットの一部との間に嵌め込まれているものである。
【0024】
これによると、アームが揺動軸心を中心に揺動する際、長孔の周縁部が、規制部材の一部と駆動ユニットの一部との間に嵌め込まれた状態で、アームと一体に揺動軸心を中心に揺動する。これにより、アームが揺動軸心方向に変動するのを阻止することができる。
【0025】
本第
4発明は、
回転自在な一方の輪体と他方の輪体との間に巻回された無端状の回動自在な駆動力伝達部材と、駆動力伝達部材に補助駆動力を付加する駆動ユニットとを備え、
駆動ユニットが、駆動力伝達部材の巻回経路の内外いずれか一方側から駆動力伝達部材に歯合する回転自在な補助駆動用輪体と、補助駆動用輪体に回転駆動力を付与する電動機とを有する電動車両の駆動力伝達部材に張力を付与するテンショナーであって、
駆動ユニットに設けられて揺動軸心を中心に揺動自在なアームと、アームに設けられた回転自在な張力付与輪体と、付勢手段とを有し、
張力付与輪体は補助駆動用輪体と反対側から駆動力伝達部材に歯合し、
付勢手段は駆動力伝達部材の張力が増える方向へアームを付勢し、
アームの揺動軸心が補助駆動用輪体の回転軸心と同軸であり、
正規の補助駆動用輪体よりも大径の改造補助駆動用輪体を取付けて改造することを防止するための改造防止部材がアームに設けられ、
改造防止部材は、正規の補助駆動用輪体の外周端から径方向外側へ所定距離離間した状態で、径方向において正規の補助駆動用輪体の外周端に対向しているものである。
【0026】
これによると、正規の補助駆動用輪体を取り外して、正規の補助駆動用輪体よりも大径の改造補助駆動用輪体を取付けて改造しようとしても、改造補助駆動用輪体が改造防止部材に干渉するため、改造補助駆動用輪体を取付けることができず、これにより、不正な改造を防止することができる。
【0027】
本第5発明における電動車両のテンショナーは、駆動力伝達部材が補助駆動用輪体に巻き付いている範囲を示す角度を巻角度とすると、
付勢手段は、巻角度が増大する方向にアームが揺動するほど、付勢力が低下するものである。
これによると、巻角度が増大する方向にアームが揺動した場合、付勢手段の付勢力が低下するため、駆動力伝達部材と補助駆動用輪体との摩擦抵抗の増大が抑制され、駆動力の伝達効率の低下や騒音の増大が抑えられる。また、反対に、巻角度が減少する方向にアームが揺動した場合、付勢手段の付勢力が増大するため、駆動力伝達部材に歯合する補助駆動用輪体の歯数が少なくても、補助駆動用輪体が駆動力伝達部材に十分に歯合し、歯飛び現象の発生を防止することができる。
本第
6発明は、上記第1発明から第
5発明のいずれか1項に記載のテンショナーを備えた電動自転車であって、一方の輪体はクランク軸と共に回転自在な前部スプロケットであり、
他方の輪体は後輪に設けられた後部スプロケットであるものである。
【発明の効果】
【0028】
以上のように本発明によると、アームの揺動軸心が補助駆動用輪体の回転軸心と同軸であるため、テンショナーの取付スペースが縮小され、駆動ユニットを小型化することができる。また、テンショナーキャパシティーを増大させることができるため、駆動力伝達部材が伸縮して周長が変化しても、変動の少ない比較的安定した付勢力をアームに作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における電動自転車の後半分の側面図である。
【
図2】同、電動自転車のチェンとテンショナーの側面図であり、チェンの周長が収縮した状態を示す。
【
図3】同、電動自転車のチェンとテンショナーの側面図であり、チェンの周長が伸長した状態を示す。
【
図4】同、電動自転車の駆動ユニットとテンショナーとの横断面図である。
【
図5】同、電動自転車の駆動ユニットとテンショナーとの一部拡大横断面図である。
【
図7】同、電動自転車のテンショナーの拡大側面図である。
【
図8】同、電動自転車の補助駆動用スプロケットと張力付与プーリーから発生する騒音のグラフである。
【
図9】従来の電動自転車の補助駆動用スプロケットと張力付与プーリーから発生する騒音のグラフである。
【
図10】本発明の第2の実施の形態における電動自転車の駆動ユニットとテンショナーとの一部拡大横断面図である。
【
図11】本発明の第3の実施の形態における電動自転車の駆動ユニットとテンショナーとの一部拡大横断面図である。
【
図12】従来の電動自転車の後半分の側面図である。
【
図13】同、電動自転車の駆動ユニットとテンショナーとの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、
図1に示すように、1は電動車両の一例である電動自転車であって、電動自転車1は、ペダル4を踏むことによって回転するクランク軸5と、クランク軸5と共に回転自在な前部スプロケット6(一方の輪体の一例)と、後輪7に設けられた後部スプロケット8(他方の輪体の一例)と、前部スプロケット6と後部スプロケット8との間に巻回された無端状の回動自在なチェン9(駆動力伝達部材の一例)と、チェン9に補助駆動力を付加する駆動ユニット10とを備えている。
【0031】
尚、クランク軸5と前部スプロケット6との間には一方向クラッチ12(
図4参照)が設けられている。クランク軸5が一方向C(
図2参照)へ回転すると、クランク軸5から前部スプロケット6への回転力伝達経路が一方向クラッチ12によりつながり、前部スプロケット6がクランク軸5と共に回転する。また、クランク軸5が反対方向へ回転すると、クランク軸5から前部スプロケット6への回転力伝達経路が一方向クラッチ12により遮断され、クランク軸5と前部スプロケット6とが個別に回転可能な状態になる。
【0032】
図2〜
図6に示すように、駆動ユニット10は、車体フレーム2に設けられており、チェン9の巻回経路の下方外側(一方側の一例)からチェン9に歯合する回転自在な補助駆動用スプロケット15(補助駆動用輪体の一例)と、補助駆動用スプロケット15に回転駆動力を付与する電動機16と、ケース17と、チェン9に張力を付与するテンショナー18と、ペダル4にかかる踏力を検出するトルクセンサ(図示省略)とを有している。
【0033】
補助駆動用スプロケット15は出力軸20に設けられ、出力軸20は減速用歯車21を介して電動機16の回転駆動軸22に連動する。尚、出力軸20と減速用歯車21との間には一方向クラッチ23が設けられている。電動機16が駆動している際、減速用歯車21から出力軸20への回転力伝達経路が一方向クラッチ23によってつながり、電動機16の回転駆動力が減速用歯車21から出力軸20を経て補助駆動用スプロケット15に伝えられる。また、電動機16が停止している際、上記回転力伝達経路が一方向クラッチ23によって遮断され、電動機16側の負荷がチェン9に作用することを防いでいる。
【0034】
電動機16と減速用歯車21とはケース17内に収納されている。
テンショナー18は、駆動ユニット10に設けられて左右方向(車幅方向)の揺動軸心25を中心に上下揺動自在なアーム26と、アーム26の遊端部に設けられた回転自在な張力付与プーリー27(張力付与輪体の一例)と、捻りコイルばね28(付勢手段の一例)とを有している。
【0035】
駆動ユニット10のケース17の一側面には、内外に貫通する孔部30が形成され、孔部30には、円筒状の固定軸31が嵌入されてケース17に固定されている。出力軸20はケース17内に回転自在に保持され、出力軸20の先端部が固定軸31に挿通されて外側方へ突出している。アーム26の基端部は揺動自在に固定軸31に外嵌されており、アーム26の揺動軸心25が補助駆動用スプロケット15の回転軸心37と同軸である。
【0036】
アーム26は、左右一対の板部材33,34と、両板部材33,34間に連結された連結部材35とを有している。張力付与プーリー27は、両板部材33,34間に設けられており、チェン9の巻回経路の上方内側(反対側の一例)からチェン9に歯合する。
【0037】
捻りコイルばね28は、アーム26を下向き(チェン9の張力が増える方向の一例)に揺動するように付勢しており、固定軸31に外嵌されて、アーム26の基端部とケース17との間に保持されている。捻りコイルばね28の一端部はアーム26に形成された孔38(
図6参照)に係止され、他端部(図示省略)はケース17に形成された孔(図示省略)に係止されている。
【0038】
尚、
図7に示すように、チェン9が補助駆動用スプロケット15に巻き付いている範囲を示す角度を巻角度Aとすると、捻りコイルばね28は、アーム26が下向き(巻角度Aが増大する方向の一例)に揺動するほど、付勢力が低下するように構成されている。
【0039】
図4〜
図6に示すように、固定軸31の径方向における外側方には、アーム26が揺動軸心25の方向B(左右方向)に変動するのを規制する変動規制手段40が設けられている。変動規制手段40は、アーム26の一方の板部材33に形成された長孔41と、揺動軸心25の方向Bから長孔41に挿通されてケース17に取り付けられた規制用ねじ42(規制部材の一例)とを有している。
【0040】
尚、長孔41は、揺動軸心25を中心とした円弧形状の孔であり、アーム26の揺動方向に長い。長孔41の周縁部41aが揺動軸心25の方向Bにおいて相対向する規制用ねじ42の頭部42a(規制部材の一部の一例)とケース17のボス部17a(駆動ユニットの一部の一例)との間に嵌め込まれている。
【0041】
また、アーム26の連結部材35は、正規の補助駆動用スプロケット15よりも大径の改造補助駆動用スプロケット50(改造補助駆動用輪体の一例)を取付けて改造することを防止するための改造防止部材の一例である。尚、連結部材35は、正規の補助駆動用スプロケット15の外周端から径方向外側へ所定距離Dだけ離間した状態で、径方向において正規の補助駆動用スプロケット15の外周端に対向している。
【0042】
以下、上記構成における作用を説明する。
図1に示すように、ペダル4を踏むことにより前部スプロケット6が回転し、前部スプロケット6の回転がチェン9を介して後部スプロケット8に伝わり、後輪7が回転する。この際、ペダル4にかかる踏力がトルクセンサにより検出され、この検出値に基いて
図2および
図4に示すように、電動機16が駆動し、補助駆動用スプロケット15が回転駆動し、補助駆動力が補助駆動用スプロケット15からチェン9を介して後部スプロケット8に伝えられる。これにより、人力駆動力に補助駆動力が加味されて、後輪7が回転する。
【0043】
この際、チェン9の回動に伴って張力付与プーリー27が回転する。また、アーム26は捻りコイルばね28の付勢力によって下向きに付勢されているため、張力付与プーリー27は下位の巻回経路のチェン9を上方から下向きに押圧し、チェン9に最適な張力が付与され、チェン9の弛みが防止されている。
【0044】
図2〜
図4および
図6に示すように、アーム26の揺動軸心25が補助駆動用スプロケット15の回転軸心37と同軸であるため、アーム26の揺動軸心25の位置と補助駆動用スプロケット15の回転軸心37の位置とが異なっている場合に比べて、テンショナー18の取付スペースが縮小され、これにより、駆動ユニット10を小型化することができる。
【0045】
図4,
図6に示すように、アーム26が上下に揺動しても、補助駆動用スプロケット15の回転軸心37から張力付与プーリー27の回転軸心44までの距離Eは常に一定に保たれるので、テンショナーキャパシティーが増大する。
【0046】
これにより、チェン9が伸縮してチェン9の周長が変化した場合、これに応じてアーム26が
図2および
図3に示すように上下に揺動することで、チェン9の伸縮が吸収されるのであるが、このときのチェン9の伸縮量に対するアーム26の揺動角度の変化量が小さくなるため、アーム26に作用する捻りコイルばね28の付勢力の変動も小さくなり、変動の少ない比較的安定した付勢力をアーム26に常時作用させることができる。
【0047】
例えば、本第1の実施の形態の電動自転車1を
図12,
図13に示した従来の電動自転車と同サイズにし、本第1の実施の形態の補助駆動用スプロケット15および張力付与プーリー27を上記従来の補助駆動用スプロケット107および張力付与プーリー111と同一部品とし、本第1の実施の形態のアーム26の揺動軸心25から張力付与プーリー27の回転軸心44までの距離E(
図4,
図6参照)を上記従来のアーム110の揺動軸心から張力付与プーリー111の回転軸心までの距離F(
図13参照)と同一にした場合、本第1の実施の形態では、
図3に示すようにチェン9が伸長したときの周長が440mmとなり、
図2に示すようにチェン9が収縮したときの周長が404mmとなり、チェン9が伸長したときと収縮したときとのアーム26の揺動角度が28°であった(すなわち、
図2に示したアーム26の角度と
図3に示したアーム26角度との差が28°であった)。この場合のテンショナーキャパシティーは以下の計算式により求められる。
(440−404)/28=1.29mm/°
一方、従来のものでは、チェン105が伸長したときの周長が431mmとなり、チェン105が収縮したときの周長が422mmとなり、チェン105が膨張したときと収縮したときとのアーム110の揺動角度が20°であった。この場合のテンショナーキャパシティーは以下の計算式により求められる。
(431−422)/20=0.45mm/°
これにより、本第1の実施の形態におけるテンショナーキャパシティーが従来の形態におけるテンショナーキャパシティーよりも増大することが確認された。
【0048】
図7に示すように、チェン9が伸びてチェン9の周長が伸長し、アーム26が下向きに揺動するほど巻角度Aが増大するが、捻りコイルばね28の付勢力が低下するため、チェン9と補助駆動用スプロケット15との摩擦抵抗の増大が抑制され、駆動力の伝達効率の低下や騒音の増大が抑えられる。
【0049】
反対に、
図2に示すように、チェン9が収縮してチェン9の周長が短縮し、アーム26が上向きに揺動するほど巻角度Aが減少するが、捻りコイルばね28の付勢力が増大するため、チェン9に歯合する補助駆動用スプロケット15の歯数が少なくても、補助駆動用スプロケット15がチェン9に十分に歯合し、歯飛び現象の発生を防止することができる。
【0050】
図4〜
図6に示すように、アーム26の軸を円筒状の固定軸31とすることにより、アーム26の軸すなわち固定軸31の直径が太くなって固定軸31の剛性が向上する。従って、電動自転車1が転倒したり或いは駆動ユニット10が縁石等の障害物に衝突しても、アーム26の固定軸31の折損を防止することができる。
【0051】
また、出力軸20が固定軸31に挿通されているため、出力軸20と固定軸31とが同軸上に配置され、出力軸20の位置と固定軸31の位置とが異なっている場合に比べて、テンショナー18の取付スペースが縮小され、駆動ユニット10を小型化することができ、見栄えも向上する。
【0052】
図4〜
図6に示すように、アーム26が上下に揺動する際、長孔41の周縁部41aが、規制用ねじ42の頭部42aとケース17のボス部17aとの間に嵌め込まれた状態で、アーム26と一体に上下に揺動する。これにより、アーム26が揺動軸心25の方向B(左右方向)に変動するのを阻止することができるため、張力付与プーリー27が揺動軸心25の方向Bに変動してチェン9が張力付与プーリー27から離脱してしまうのを防止することができる。
【0053】
また、電動自転車1のユーザー等が正規の補助駆動用スプロケット15を出力軸20から取り外して、
図4および
図5の各仮想線で示すように、正規の補助駆動用スプロケット15よりも大径の改造補助駆動用スプロケット50を出力軸20に取付けて改造しようとしても、改造補助駆動用スプロケット50がアーム26の連結部材35に干渉するため、改造補助駆動用スプロケット50を取付けることができない。これにより、不正な改造を防止することができる。
【0054】
また、電動自転車1を走行させ、チェン9が回動し、補助駆動用スプロケット15と張力付与プーリー27とが回転している際、補助駆動用スプロケット15と張力付与プーリー27とからそれぞれ騒音が発生する。
図8のグラフ(a)は補助駆動用スプロケット15から発生する騒音の時間と振幅の関係を示し、グラフ(b)は張力付与プーリー27から発生する騒音の時間と振幅の関係を示している。ここで、補助駆動用スプロケット15の回転軸心37から張力付与プーリー27の回転軸心44までの距離E(
図4参照)が増減すると、グラフ(b)の騒音の波形の山と谷の位置が、グラフ(a)の騒音の波形の山と谷の位置に対して、時間軸方向へずれる。これにより、グラフ(b)の山の位置がグラフ(a)の谷の位置に重なるとともにグラフ(b)の谷の位置がグラフ(a)の山の位置に重なるような一定距離に、上記距離Eを設定することができる。このように、上記距離Eを一定距離に設定して製作することにより、アーム26が上下に揺動しても、補助駆動用スプロケット15の回転軸心37と張力付与プーリー27の回転軸心44との間の距離Eは常に上記一定距離に保たれるので、グラフ(c)に示すように、山と谷とが重なって騒音の値がほぼ平均化される。
【0055】
これに対して従来のものでは、
図13に示すように、アーム110が上下に揺動した場合、補助駆動用スプロケット107の回転軸心と張力付与プーリー111の回転軸心との間の距離Gは、一定ではなく、様々に変化する。従って、
図9に示すように、補助駆動用スプロケット107から発生する騒音のグラフ(a)の波形と張力付与プーリー111から発生する騒音のグラフ(b)の波形との山同士の位置が重なるとともに谷同士の位置が重なる場合があり、この場合、グラフ(c)に示すように騒音の波形の山が増大する虞があり、騒音が周期的に大きくなる可能性があった。
【0056】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、
図10に示すように、アーム26は、左右一対の板部材33,34と、両板部材33,34を連結するねじ部材55(締結部材の一例)と、両板部材33,34の間隔を一定間隔に維持する間隔維持部材56とを有している。間隔維持部材56は他方の板部材34に設けられ、ねじ部材55は他方の板部材34から間隔維持部材56内に挿通されて一方の板部材33に螺合されている。
【0057】
また、他方の板部材34の基端部には円環状の保持部材57が設けられている。出力軸20の先端部は保持部材57内に挿入され、出力軸20の先端部外周面と保持部材57の内周面との間には軸受部材58が設けられている。
【0058】
以下、上記構成における作用を説明する。
アーム26に外力が作用した場合、この外力は、アーム26の一方の板部材33から固定軸31を介してケース17で受けられるとともに、他方の板部材34から軸受部材58を介して出力軸20で受けられる。このように、アーム26に作用した外力が分散して受けられるため、固定軸31に応力が集中することはなく、固定軸31の損傷を防止することができる。また、軸受部材58を設けたことにより、アーム26の上下の揺動がスムーズになる。
【0059】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、
図11に示すように、アーム26の他方の板部材34の基端部には円柱状のピン61が取付けられている。また、出力軸20の先端面には孔部62が形成されており、孔部62には嵌め輪63(ブッシュ)が嵌め込まれている。ピン61は嵌め輪63に挿入されている。尚、アーム26の揺動軸心25と補助駆動用スプロケット15の回転軸心37とピン61の軸心とは同軸である。
【0060】
以下、上記構成における作用を説明する。
アーム26に外力が作用した場合、この外力は、アーム26の一方の板部材33から固定軸31を介してケース17で受けられるとともに、他方の板部材34からピン61と嵌め輪63とを介して出力軸20で受けられる。このように、アーム26に作用した外力が分散して受けられるため、固定軸31に応力が集中することはなく、固定軸31の損傷を防止することができる。
【0061】
上記各実施の形態では、
図2に示すように、補助駆動用スプロケット15が下方外側からチェン9に歯合し、張力付与プーリー27が上方内側からチェン9に歯合しているが、補助駆動用スプロケット15が上方内側からチェン9に歯合し、張力付与プーリー27が下方外側からチェン9に歯合してもよい。
【0062】
上記各実施の形態では、駆動力伝達部材の一例としてチェン9を用いたが、ベルトを用いてもよい。
上記各実施の形態では、付勢手段の一例として捻りコイルばね28を用いたが、捻りコイルばね28以外の種類のばねを用いてもよい。