特許第6443622号(P6443622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443622
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】用紙適正判定装置および印刷機
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/407 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   H04N1/407
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-25022(P2015-25022)
(22)【出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2016-149623(P2016-149623A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2018年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(74)【代理人】
【識別番号】100109689
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 結
(72)【発明者】
【氏名】浜津 誠
【審査官】 豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−301076(JP,A)
【文献】 特開2008−066923(JP,A)
【文献】 特開2013−126171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/407
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準用紙上への試験用画像の印刷および該試験用画像の濃度測定を経て作成された階調補正関数に従って画像信号に階調補正処理を施し、該階調補正処理により生成された画像テータを使って未定着トナーからなる画像を形成し、該画像を用紙上に転写して定着することにより該用紙上に定着トナーからなる画像を印刷する印刷機に組み込まれ、適正判定対象として指定された適正判定対象用紙が前記基準用紙として適性であるか否かを判定する用紙判定装置であって、
指定された適正判定対象用紙の濃度再現特性を反映させた、画素値に対する濃度を表わす高濃度域適性判定用濃度曲線を取得する第1の取得部と、
前記第1の取得部で取得した前記高濃度域適性判定用濃度曲線上に現れた最高濃度が、濃度についてのあらかじめ定められた上限濃度閾値と下限濃度閾値とに挟まれた範囲内にあるときに前記適正判定対象用紙が高濃度域について適正であると判定し、前記最高濃度が前記上限濃度閾値よりも大きいとき、および、前記最高濃度が前記下限濃度閾値よりも小さいときのいずれにおいても前記適正判定対象用紙が高濃度域について不適正であると判定する第1の判定部と、
前記適正判定対象用紙の濃度再現特性を反映させた、画素値に対する濃度を表わす低濃度域適性判定用濃度曲線を取得する第2の取得部と、
前記第2の取得部で取得した前記低濃度域適性判定用濃度曲線上にあらわれた最低濃度にあらかじめ定められた濃度幅を加えた濃度に対応する判定対象画素値が、画素値についてのあらかじめ定められた上限画素閾値と下限画素閾値とに挟まれた範囲内にあるときに前記適正判定対象用紙が低濃度域について適正であると判定し、前記判定対象画素値が前記上限画素閾値よりも大きいとき、および、前記判定対象画素値が前記下限画素閾値よりも小さいときのいずれにおいても前記適正判定対象用紙が低濃度域について不適正であると判定する第2の判定部と、
を備えたことを特徴とする用紙適正判定装置。
【請求項2】
前記第1の判定部を備えることに代えて、前記第1の取得部で取得した前記高濃度域適性判定用濃度曲線上にあらわれた最高濃度における、該高濃度域適性判定用濃度曲線の接線の傾きが、接線の傾きについてのあらかじめ定められた閾値を越える傾きであるときに、前記適正判定対象用紙が高濃度域について適正であると判定する第3の判定部を備えたことを特徴とする請求項1記載の用紙適正判定装置。
【請求項3】
前記第2の判定部を備えることに代えて、前記第2の取得部で取得した前記低濃度域適性判定用濃度曲線の接線の傾きを画素値の小さい側から大きい側に向かって算出していった場合における該傾きが、接線の傾きについてのあらかじめ定められた基準値に一致したときにおける、該基準値に一致した傾きに対応する画素値が、画素値についてのあらかじめ定められた2つの閾値に挟まれた範囲内にあるときに、前記適正判定対象用紙が低濃度域について適正であると判定する第4の判定部を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の用紙適正判定装置。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれか1項記載の用紙適正判定装置が組み込まれ、該用紙適正判定装置により適正であることが判定された基準用紙上への試験用画像の印刷および該試験用画像の濃度測定を行って階調補正関数を作成し、該階調補正関数に従って画像信号に階調補正処理を施し、該階調補正処理により生成された画像テータを使って未定着トナーからなる画像を形成し、該画像を用紙上に転写して定着することにより該用紙上に画像を印刷する印刷機であって、
用紙への転写前の未定着トナーからなる試験用画像の濃度を測定する第1の測定器、
用紙上に印刷された試験用画像の濃度を測定する第2の測定器、
第1の画像信号に第1の階調補正関数に従う第1の階調補正処理を施して第2の画像信号を生成する第1の階調補正処理部、
第1の階調補正処理部により生成された第2の画像信号に第2の階調補正関数に従う第2の階調補正処理を施して第3の画像信号を生成する第2の階調補正処理部、
前記第1の階調補正処理を施す前の第1の試験用画像信号を使って未定着トナーからなる第1の試験用画像を形成させて前記第1の測定器に測定させることにより、画素値に対する濃度を表わす第1の濃度曲線を取得する第1の濃度曲線取得部、
前記第1の濃度曲線取得部により取得された前記第1の濃度曲線を使って前記第1の階調補正関数を生成する第1の階調補正関数生成部、
前記第1の階調補正処理を施した後であって前記第2の階調補正処理を施す前の第2の試験用画像信号を使って第2の試験用画像を用紙上に印刷させて前記第2の測定器に測定させることにより、画素値に対する濃度を表わす第2の濃度曲線を取得する第2の濃度曲線取得部、および
前記第2の濃度曲線取得部により取得された前記第2の濃度曲線を使って前記第2の階調補正関数を生成する第2の階調補正関数生成部を備え、
前記用紙適正判定装置が、
前記第2の濃度曲線取得部に、前記第1の階調補正処理を施した後であって前記第2の階調補正処理を施す前の第2の試験用画像信号を使って前記適正判定対象用紙上に第2の試験用画像を印刷させて前記第2の測定器に測定させることにより、画素値に対する濃度を表わす第2の濃度曲線を取得させ、該第2の濃度曲線を前記高濃度域適性判定用濃度曲線として使って該適正判定対象用紙が高濃度域について適正であるか否かを判定し、
前記第2の階調補正関数生成部に、前記適正判定対象用紙を使って前記第2の濃度曲線取得部に取得させた第2の濃度曲線を使って前記第2の階調補正関数を生成させ、前記第1の階調補正処理を施した後であって前記第2の階調補正処理を施す前の第2の試験用画
像信号にさらに前記第2の階調補正処理を施すことにより第3の試験用画像信号を生成し、該第3の試験用画像信号を使って前記適正判定対象用紙上に第3の試験用画像を印刷させた場合の該第3の試験用画像にあらわれる、画素値に対する濃度を表わす第3の濃度曲線を前記低濃度域適性判定用濃度曲線として使って、該適正判定対象用紙が低濃度域について適正であるか否かを判定するものであることを特徴とする印刷機。
【請求項5】
前記用紙適正判定装置が、前記第3の濃度曲線を、前記第3の試験用画像信号を使った計算により算出し、算出した前記第3の濃度曲線を前記低濃度域適性判定用濃度曲線として使って、前記適正判定対象用紙が低濃度域について適正であるか否かを判定するものであることを特徴とする請求項4記載の印刷機。
【請求項6】
前記用紙適正判定装置が、前記第3の試験用画像信号を使って前記適正判定対象用紙上に前記第3の試験用画像を印刷させ前記第2の測定器に測定させて前記第3の濃度曲線を取得し、該第3の濃度曲線を前記低濃度域適性判定用濃度曲線として使って、該適正判定対象用紙が低濃度域について適正であるか否かを判定するものであることを特徴とする請求項4記載の印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙適正判定装置および印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷機において、基準用紙に画質調整用画像を印刷し、その画質調整用画像をセンサで読み取って階調補正用LUT(ルックアップテーブル)を変更することによってその後の印刷画像の画質を調整する技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、画質調整用画像を印刷する用紙について、その用紙上に印刷した画質調整用画像が、最大濃度部において限界最大濃度以上であり、最小濃度部において限界最小濃度以下である場合に、その用紙が基準用紙として適していると判断することが記載されている。またこの特許文献1には、特定色の最大濃度部における濃度値と、最小濃度部における濃度値との差が限界濃度幅未満である場合を除いて使用可能とすることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−301076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この特許文献1に開示された上記の提案と比べ、基準用紙として使用可能か否かをより高精度に判定することが可能な用紙適正判定装置、およびその用紙適正判定装置が組み込まれた印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1は、基準用紙上への試験用画像の印刷および該試験用画像の濃度測定を経て作成された階調補正関数に従って画像信号に階調補正処理を施し、該階調補正処理により生成された画像テータを使って未定着トナーからなる画像を形成し、該画像を用紙上に転写して定着することにより該用紙上に定着トナーからなる画像を印刷する印刷機に組み込まれ、適正判定対象として指定された適正判定対象用紙が前記基準用紙として適性であるか否かを判定する用紙判定装置であって、
指定された適正判定対象用紙の濃度再現特性を反映させた、画素値に対する濃度を表わす高濃度域適性判定用濃度曲線を取得する第1の取得部と、
前記第1の取得部で取得した前記高濃度域適性判定用濃度曲線上に現れた最高濃度が、濃度についてのあらかじめ定められた上限濃度閾値と下限濃度閾値とに挟まれた範囲内にあるときに前記適正判定対象用紙が高濃度域について適正であると判定し、前記最高濃度が前記上限濃度閾値よりも大きいとき、および、前記最高濃度が前記下限濃度閾値よりも小さいときのいずれにおいても前記適正判定対象用紙が高濃度域について不適正であると判定する第1の判定部と、
前記適正判定対象用紙の濃度再現特性を反映させた、画素値に対する濃度を表わす低濃度域適性判定用濃度曲線を取得する第2の取得部と、
前記第2の取得部で取得した前記低濃度域適性判定用濃度曲線上にあらわれた最低濃度にあらかじめ定められた濃度幅を加えた濃度に対応する判定対象画素値が、画素値についてのあらかじめ定められた上限画素閾値と下限画素閾値とに挟まれた範囲内にあるときに前記適正判定対象用紙が低濃度域について適正であると判定し、前記判定対象画素値が前記上限画素閾値よりも大きいとき、および、前記判定対象画素値が前記下限画素閾値よりも小さいときのいずれにおいても前記適正判定対象用紙が低濃度域について不適正であると判定する第2の判定部と、
を備えたことを特徴とする用紙適正判定装置である。
【0007】
請求項2は、前記第1の判定部を備えることに代えて、前記第1の取得部で取得した前記高濃度域適性判定用濃度曲線上にあらわれた最高濃度における、該高濃度域適性判定用濃度曲線の接線の傾きが、接線の傾きについてのあらかじめ定められた閾値を越える傾きであるときに、前記適正判定対象用紙が高濃度域について適正であると判定する第3の判定部を備えたことを特徴とする請求項1記載の用紙適正判定装置である。
【0008】
請求項3は、前記第2の判定部を備えることに代えて、前記第2の取得部で取得した前記低濃度域適性判定用濃度曲線の接線の傾きを画素値の小さい側から大きい側に向かって算出していった場合における該傾きが、接線の傾きについてのあらかじめ定められた基準値に一致したときにおける、該基準値に一致した傾きに対応する画素値が、画素値についてのあらかじめ定められた2つの閾値に挟まれた範囲内にあるときに、前記適正判定対象用紙が低濃度域について適正であると判定する第4の判定部を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の用紙適正判定装置である。
【0009】
請求項4は、請求項1から3のうちのいずれか1項記載の用紙適正判定装置が組み込まれ、該用紙適正判定装置により適正であることが判定された基準用紙上への試験用画像の印刷および該試験用画像の濃度測定を行って階調補正関数を作成し、該階調補正関数に従って画像信号に階調補正処理を施し、該階調補正処理により生成された画像テータを使って未定着トナーからなる画像を形成し、該画像を用紙上に転写して定着することにより該用紙上に画像を印刷する印刷機であって、
用紙への転写前の未定着トナーからなる試験用画像の濃度を測定する第1の測定器、
用紙上に印刷された試験用画像の濃度を測定する第2の測定器、
第1の画像信号に第1の階調補正関数に従う第1の階調補正処理を施して第2の画像信号を生成する第1の階調補正処理部、
第1の階調補正処理部により生成された第2の画像信号に第2の階調補正関数に従う第2の階調補正処理を施して第3の画像信号を生成する第2の階調補正処理部、
前記第1の階調補正処理を施す前の第1の試験用画像信号を使って未定着トナーからなる第1の試験用画像を形成させて前記第1の測定器に測定させることにより、画素値に対する濃度を表わす第1の濃度曲線を取得する第1の濃度曲線取得部、
前記第1の濃度曲線取得部により取得された前記第1の濃度曲線を使って前記第1の階調補正関数を生成する第1の階調補正関数生成部、
前記第1の階調補正処理を施した後であって前記第2の階調補正処理を施す前の第2の試験用画像信号を使って第2の試験用画像を用紙上に印刷させて前記第2の測定器に測定させることにより、画素値に対する濃度を表わす第2の濃度曲線を取得する第2の濃度曲線取得部、および
前記第2の濃度曲線取得部により取得された前記第2の濃度曲線を使って前記第2の階調補正関数を生成する第2の階調補正関数生成部を備え、
前記用紙適正判定装置が、
前記第2の濃度曲線取得部に、前記第1の階調補正処理を施した後であって前記第2の階調補正処理を施す前の第2の試験用画像信号を使って前記適正判定対象用紙上に第2の試験用画像を印刷させて前記第2の測定器に測定させることにより、画素値に対する濃度を表わす第2の濃度曲線を取得させ、該第2の濃度曲線を前記高濃度域適性判定用濃度曲線として使って該適正判定対象用紙が高濃度域について適正であるか否かを判定し、
前記第2の階調補正関数生成部に、前記適正判定対象用紙を使って前記第2の濃度曲線取得部に取得させた第2の濃度曲線を使って前記第2の階調補正関数を生成させ、前記第1の階調補正処理を施した後であって前記第2の階調補正処理を施す前の第2の試験用画
像信号にさらに前記第2の階調補正処理を施すことにより第3の試験用画像信号を生成し、該第3の試験用画像信号を使って前記適正判定対象用紙上に第3の試験用画像を印刷させた場合の該第3の試験用画像にあらわれる、画素値に対する濃度を表わす第3の濃度曲線を前記低濃度域適性判定用濃度曲線として使って、該適正判定対象用紙が低濃度域について適正であるか否かを判定するものであることを特徴とする印刷機である。
【0010】
請求項5は、前記用紙適正判定装置が、前記第3の濃度曲線を、前記第3の試験用画像信号を使った計算により算出し、算出した前記第3の濃度曲線を前記低濃度域適性判定用濃度曲線として使って、前記適正判定対象用紙が低濃度域について適正であるか否かを判定するものであることを特徴とする請求項4記載の印刷機である。
【0011】
請求項6は、前記用紙適正判定装置が、前記第3の試験用画像信号を使って前記適正判定対象用紙上に前記第3の試験用画像を印刷させ前記第2の測定器に測定させて前記第3の濃度曲線を取得し、該第3の濃度曲線を前記低濃度域適性判定用濃度曲線として使って、該適正判定対象用紙が低濃度域について適正であるか否かを判定するものであることを特徴とする請求項4記載の印刷機である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の用紙適正判定装置および請求項4の印刷機によれば、基準用紙としての適性を、最大濃度と最小濃度との差分濃度に基づいて判定するよりも高精度に判定することができる。
【0013】
請求項2,3の用紙適正判定装置によっても、請求項1と同様に、基準用紙としての適性を、より高精度に判定することができる。
【0014】
請求項5の印刷機によれば、請求項6と比べ、基準用紙としての適性を判定するのに必要な用紙枚数を節減することができる。
【0015】
請求項6の印刷機によれば、請求項5と比べ、基準用紙としての適性を一層高精度に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の印刷機の一実施形態としてのプリンタの概略構成図である。
図2図1に示すプリンタにおける階調補正処理を含む画像処理の流れを示した図である。
図3】パッチ画像の一例を表した図である。
図4】階調補正のための演算処理の概念図である。
図5】用紙上にパッチ画像を形成するための操作画面を示した図である。
図6】用紙適正判定モードで実行される処理の第1例を示した図である。
図7】濃度曲線を示した模式図である。
図8】濃度曲線を示した模式図である。
図9】表示画面の一例を示した図である。
図10】用紙適正判定モードで実行される処理の第2例を示した図である。
図11】濃度曲線を示した模式図である。
図12】シミュレーションにより算出された濃度曲線を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の印刷機の一実施形態としてのプリンタの概略構成図である。このプリンタ100には、本発明の一実施形態としての用紙適正判定装置が組み込まれている。
【0019】
このプリンタ100の下部には複数(ここでは3台)の用紙トレイ150が備えられていて、各用紙トレイ150には、画像プリントに使用される、使用前の用紙Pが、積み重ねられた状態に収容されている。それら複数の用紙トレイ150には、それぞれ異なる種類の用紙Pが収容されている。画像プリントにあたり、複数の用紙トレイ150のうちの指定された用紙トレイから、用紙取出しロール151により、用紙Pが1枚ずつ取り出されて、用紙搬送ロール152等により用紙搬送路153上を矢印D方向に搬送される。
【0020】
また、プリンタ100には、4基の画像形成エンジン130が搭載されている。各々の画像形成エンジン130では、各画像形成エンジン130Y,130M,130C,130Kごとにそれぞれ色が異なる単色トナーによる単色トナー像が形成される。
【0021】
ここで、画像形成エンジン130について、トナーの色を表すときは、画像形成エンジンを表す符号‘130’にさらにトナーの色を表す符号である、‘Y’(イエロー)、‘M’(マゼンタ)、‘C’(シアン)、‘K’(黒)を付して示す。色には無関係の説明については、色を表す符号は省略し、画像形成エンジン130と称する。画像形成エンジン以外の他の要素についても同様である。
【0022】
本実施形態では、4基の画像形成エンジン130は全て同一の構成となっている。各画像形成エンジン130は、矢印A方向に回転する感光体131と、その周囲に配置された、帯電器132、露光器133、現像器134、およびクリーナ135を備えている。
【0023】
帯電器132は、感光材131の表面を一様に帯電する。
【0024】
露光器133は、画像信号に基づいて変調された露光光を感光体131に照射して、感光体131上に静電潜像を形成する。
【0025】
このプリンタ100には、画像制御部200が備えられている。各画像形成エンジン130を構成する各露光器133には、その画像制御部200から、その画像形成エンジン130が分担する色トナーで形成される単色の画像を表わす画像信号が入力される。そして露光器133からは、その単色の画像を表わす画像信号で変調された露光光が照射され、感光体131上には、その単色の画像を表わす画像信号に対応する静電潜像が形成される。
【0026】
現像器134は、感光体131上に形成された静電潜像をトナーで現像して感光体131上に単色のトナー像を形成する。
【0027】
この現像にあたっては、現像器134に現像バイアスが印加され、感光体131上に形成された静電潜像は、その静電潜像の電位パターンと現像器134に印加された現像バイアスとに従って、トナーで現像される。
【0028】
各画像形成エンジン130の上部には、各トナータンク139が備えられている。各トナータンク139には、対応する画像形成エンジン130ごとの単色のトナーが収容されている。トナータンク139内のトナーは現像器134内に供給されてトナー像の形成に使用される。このトナータンク139は交換自在となっており、空になると新たなトナータンク139に交換される。
【0029】
画像形成エンジン130の下部には、中間転写ユニット160が配置されている。この中間転写ユニット160には、無端の中間転写ベルト161と、その中間転写ベルト161を回転駆動する駆動ロール162と、その中間転写ベルト161に張力を与える張力付与ロール163と、中間転写ベルト161を2次転写ロール170に押し当てる押当てロール164とを備えている。中間転写ベルト161は、それら駆動ロール162、張力付与ロール163、および押当てロール164に支持されていて、駆動ロール162からの回転駆動力を受けて、4基の画像形成エンジン130に沿う移動経路を通って矢印B方向に循環移動する。さらに、この中間転写ユニット160には、4基の1次転写ロール165と、クリーナ166と、濃度センサ167とが備えられている。
【0030】
4基の1次転写ロール165は、中間転写ベルト161を間に挟んで各画像形成エンジン130の感光体131と対向する位置に配置されていて、感光体131上に形成されたトナー像を中間転写ベルト161上に転写する役割を担っている。
【0031】
4基の画像形成エンジン130のそれぞれの感光体131上に形成されたトナー像は、各1次転写ロール163の作用により、矢印B方向に移動している中間転写ベルト161上に順次重なるように転写される。
【0032】
感光体131は、トナー像の転写後において、クリーナ135により、その表面に残存するトナー等が取り除かれる。
【0033】
中間転写ベルト161上に順次重なるように転写されたトナー像は、2次転写ロール170の作用により、タイミングを合わせて搬送されてきた用紙P上に転写される。トナー像の転写を受けた用紙Pは、用紙搬送路153上をさらに搬送されて定着器180による加熱および加圧を受け、その用紙P上に定着トナー像からなる画像がプリントされて、このプリンタ100から不図示の排紙トレイ上に排出される。
【0034】
一方、中間転写ベルト161は、トナー像転写後において、クリーナ166により、その表面に残存するトナー等が取り除かれる。
【0035】
また、このプリンタ100には、用紙搬送路153上の、定着器180よりも下流側の位置に濃度センサ190が備えられている。この濃度センサ190は、中間転写ユニット160に備えられている濃度センサ167とともに、このプリンタ100でプリント出力される画像の階調補正用として用いられる。
【0036】
また、この図1に示すプリンタ100には、動作制御部300とUI(ユーザインタフェース)400とが備えられている。動作制御部300は、このプリンタ100の、上述した各部の、連携した動作の制御を担っている。
【0037】
また、UI400は、各種の操作画面を表示してユーザによる操作を受け付ける役割を担っている。このプリンタ100では、その操作画面上でのユーザによる操作に応じた処理が実行される。
【0038】
図2は、図1に示すプリンタにおける階調補正処理を含む画像処理の流れを示した図である。
【0039】
このプリンタ100で取り扱う画像信号10は、目的別に、ベルト上パッチ画像信号10Aと、用紙上パッチ画像信号10Bと、ユーザ画像信号10Cとに大別される。
【0040】
ベルト上パッチ画像信号10Aは、パッチと呼ばれる様々な網点面積率(単位面積当たりの、トナーが付着している面積の割合)の一様画像が複数並んだパッチ画像を表わす信号である。ベルト上パッチ画像信号10Aに基づくパッチ画像12Aは、中間転写ベルト161上に形成されて濃度センサ167でその濃度が読み取られ、用紙Pには転写されずにクリーナ166で中間転写ベルト161上から除去される。
【0041】
一方、用紙上パッチ画像信号10Bに基づくパッチ画像12Bは、中間転写ベルト161からさらに用紙P上に転写され定着器180で定着されることにより用紙上のパッチ画像16Bとなる。この用紙上のパッチ画像16Bは、もう1つの濃度センサ190でその濃度が読み取られる。これらベルト上パッチ画像信号10Aおよび用紙上パッチ画像信号10Bは、このプリンタ100の内部で生成される画像信号である。
【0042】
図3は、パッチ画像の一例を表した図である。
【0043】
ここには、Y,M,C,Kの各色トナーによる、網点面積率を段階的に変化させた複数のパッチ121(一様な網点面積率からなる画像)が並んでいる。ここでは、これら複数のパッチ121が配列された画像をパッチ画像と称している。本実施形態では、ベルト上パッチ画像信号10Aと用紙上パッチ画像信号10Bは、同じパッチ画像信号である。ただし、ベルト上パッチ画像信号10Aと用紙上パッチ画像信号10Bは、後述する各目的別に異なるパターンのパッチ画像を表わす画像信号であってもよい。
【0044】
図2に戻って説明を続ける。
【0045】
このプリンタ100で取り扱われるもう1種類の画像信号であるユーザ画像信号10Cは、ユーザにより用紙上にプリント出力することが指示された画像を表わす画像信号である。このユーザ画像信号は、このプリンタ100の外部から不図示の通信ケーブル等を経由してこのプリンタ100に送り込まれ、このプリンタ100で受信される。
【0046】
ユーザ画像信号10Cを受信すると、階調補正用のLUT(ルックアップテーブル)が参照されて画像信号上で階調補正処理が行われ、用紙上にユーザ画像16Cがプリント出力される。
【0047】
ここで、階調補正用のLUTとして、第1のLUT19Aと第2のLUT19Bが用意されている。第1のLUT19Aは、ユーザ画像信号10Cの階調を、中間転写ベルト161上に形成される画像(未定着トナー像)が適正な階調となるように補正するためのLUTである。ただし、中間転写ベルト161上に適正な階調の画像が形成されても、その中間転写ベルト161上にの画像(未定着トナー像)が用紙P上に転写されて定着器190で定着される過程で階調が崩れることが考えられる。そこでここでは、第1のLUT19Aのほかにさらに第2のLUT19Bが用意されている。この第2のLUT19Bは、用紙P上への転写および定着器190による定着による階調の崩れを補正し、用紙P上に適正階調の画像がプリント出力されるように画像信号の階調を補正するLUTである。外部から入力されたユーザ画像信号10Cは、第1のLUT19Aと第2のLUT19Bとの双方のLUTであ階調補正された後に、その補正されたユーザ画像信号に基づくユーザ画像16Cが用紙P上にプリント出力される。
【0048】
以下に、第1のLUT19Aおよび第2のLUT19Bそれぞれの作成処理について説明する。ここでは、第1のLUT19Aの作成に使用されるパッチ画像信号をベルト上パッチ画像信号10Aと称し、第2のLUT19Bの作成に使用されるパッチ画像信号を用紙上パッチ画像信号10Bと称している。
【0049】
第1のLUT19Aの作成にあたっては、第1のLUT19Aおよび第2のLUT19Bによる階調補正を受ける前のベルト上パッチ画像信号10Aに基づいて、電子写真プロセス(帯電・露光・現像・1次転写)11により中間転写ベルト161上にパッチ画像12Aが形成される。そして、濃度センサ167によりパッチ画像12Aの濃度測定13が行なわれ、中間転写ベルト161上に適正な階調の画像(未定着トナー像)を形成するための演算処理14が行なわれて、その演算処理結果に基づいて第1のLUT19Aが作成される。
【0050】
図4は、第1のLUT作成のための演算処理の概念図である。
【0051】
図4(A)は、演算処理内容の説明図、図4(B)はその演算により作成された第1のLUTを示した図である。
【0052】
図4(A)において、横軸のCinは、画像信号の値(画素値)であり、縦軸は、その画像値における濃度である。
【0053】
この図4(A)において、カーブaはパッチ画像の濃度測定により得られた、画素値Cinに対する濃度曲線である。また、カーブbは、予め定められた適正な濃度曲線である。
【0054】
ここで、Cin=Aの点を参照すると、その点Aに対応する適正濃度は、カーブbを参照して、濃度=Dである。一方、濃度測定により得られたカーブa上では、その同じ濃度Dを得る画素値は、画素値Cin=A’である。したがって、画素値Cin=Aを画素値A’に補正し、その補正した画素値A’に基づいて画像を形成すれば、カーブbで示される適正な濃度曲線に沿った画像が形成されることになる。
【0055】
図4(B)は、この考え方に沿って作成された第1のLUT19Aが示されている。横軸は図4(A)の横軸と同じ、補正前の画素値Cinであり、縦軸は、補正後の画素値Coutである。
【0056】
補正前の画素値Cin=Aは、この第1のLUT19Aにより補正後の画素値Cout=A’に補正される。
【0057】
図2に示す演算処理14では、図4(A)に示すような補正処理のための演算が行なわれ、図4(B)に示すような第1のLUT19Aが作成される。
【0058】
次に、第2のLUT19Bが作成される。この第2のLUT19Bの作成にあたっては、用紙上パッチ画像信号10Bが第1のLUT19Aで階調補正され、電子写真プロセス(帯電・露光・現像・1次転写)11を経て、中間転写ベルト161上にパッチ画像12Bを形成する。ここではさらに、電子写真プロセス(2次転写・定着)15により、用紙P上にパッチ画像16Bを形成する。ここで形成されるパッチ画像16Bは、用紙P上に定着された定着トナー像からなるパッチ画像である。このパッチ画像16Bの形成にあたっては、基準用紙Pが用いられる。この基準用紙Pは、ユーザが基準用紙として指定した用紙である。このプリンタ100には、ユーザが指定した用紙が基準用紙として適正な用紙であるか否かを判定する処理が組み込まれている。この判定処理についての説明は、後に譲り、ここでは適正と判定された基準用紙上にパッチ画像16Bがプリントされたものとして説明を続ける。
【0059】
この基準用紙P上にプリントされたパッチ画像16Bは、図1に示す濃度センサ190により濃度測定17が行なわれ、その濃度測定結果に基づく演算処理18により第2のLUT19Bが作成される。この演算処理18および第2のLUT19Bの作成は、用紙上のパッチ画像16Bに基づくものであることを除き、図4を参照して説明した第1のLUT19A作成のための演算処理14および第1のLUT19Aの作成と同様であり、ここでの重複説明は省略する。
【0060】
ユーザ画像信号10Cに基づくユーザ画像をプリント出力するにあたっては、受信したユーザ画像信号10Cについて、先ず第1のLUT19Aに従って階調補正処理が行なわれ、次いで第2のLUT19Bに従って階調補正処理が行われて新たなユーザ画像信号が生成される。この新たなユーザ画像信号に基づき、電子写真プロセス(帯電・露光・現像・1次転写)11により中間転写ベルト161上に未定着トナー像としてのユーザ画像12Cが形成される。引き続き、中間転写ベルト161上のユーザ画像12Cが電子写真プロセス(2次転写・定着)15によりユーザ画像16Cとして用紙上にプリント出力される。
【0061】
ここで、上述の中間転写ベルト161上にパッチ画像12Aを形成して濃度センサ167で濃度測定13を行ない、その濃度測定結果に基づく演算処理14により第1のLUT19Aを作成する処理(図4参照)は、予め定められたタイミングで、このプリンタ100によって自動的に繰り返し実行されて、第1のLUT19Aが更新される。
【0062】
これに対し、第2のLUT19Bを作成する処理は、ユーザ所有の用紙を使用することもあって、ユーザの指示を待って行なわれる。
【0063】
ここで、用紙上にパッチ画像を形成して第2のLUT19Bを作成する処理には、「LUT更新モード」と「用紙適正判定モード」との2種類のモードが存在する。
【0064】
LUT更新モードは、基準用紙であることが分かっている用紙上にパッチ画像16Bを形成して濃度測定17および演算処理18を行ない、第2のLUT19Bを更新するモードである。このLUT更新モードは、適正階調のユーザ画像16Cをプリント出力するために実行される。
【0065】
もう1つのモードである用紙適正判定モードは、LUT更新モードで使おうとしている用紙が基準用紙としての適正を備えているか否かを判定するためのモードである。
【0066】
このプリンタ100には、複数(図1に示す例では3台)の用紙トレイ150が備えられており、各用紙トレイ150には、それぞれ異なる種類の用紙が収容されていて、プリントの用途に応じた用紙トレイが選択され、その選択された用紙トレイに収容されてる用紙が取り出されてプリント出力に使用される。
【0067】
ここでは、それら複数種類の用紙のうちのいずれかの用紙が基準用紙と指定され、その基準用紙上にパッチ画像16Bを形成して第2のLUT19Bが更新される。ところが、その基準用紙として指定された用紙が例えば色味がかった用紙であったり、あるいは光沢度が平均的な光沢度から外れた用紙であったりなど、基準用紙として適さない用紙であると、その用紙上にパッチ画像16Bを形成しても、その用紙の特性に引きずられて正しい色再現性が得られない場合がある。そのような、基準用紙として適さない用紙を基準用紙として使って第2のLUT19Bを更新すると、ユーザ画像16Cが階調が崩れた画像となってしまうおそれがある。そこでここでは、ユーザが指定した用紙が基準用紙として適正な用紙であるか否かを判定する用紙適正判定モードが用意されている。
【0068】
この用紙適正判定モードの実行により基準用紙としての適性が判定され、適正であると判定された基準用紙を使って第2のLUT19Bを定期的に更新することにより、ユーザ自身で、このプリンタ100を常に適正階調のユーザ画像12Cがプリント出力される状態に維持することができる。
【0069】
図5は、用紙上にパッチ画像を形成するための操作画面を示した図である。
【0070】
この操作画面510は、図1に示すUI400上に表示され、ユーザにより、その操作画面上での操作が行なわれる。
【0071】
この操作画面510上には、用紙選択プルダウンメニュー511と、動作モード選択プルダウンメニュー512と、開始ボタン513とが示されている。用紙選択プルダウンメニュー511では、3台の用紙トレイ150(トレイ1,トレイ2,トレイ3)(図4参照)のうちのいずれかの用紙トレイが選択される。
【0072】
また、動作モード選択プルダウンメニュー512では、LUT更新モード(階調補正)と用紙適正判定モード(用紙適正)とのうちのいずれかのモードが選択される。
【0073】
開始ボタン153は、その選択したモードに従う動作の実行の開始を指示するボタンである。
【0074】
LUT更新モードを実行させるときは、用紙選択プルダウンメニュー511により、基準用紙として適正であることが分かっている用紙が収容されている用紙トレイが選択され、動作モード選択プルダウンメニュー512により、LUT更新モード(階調補正)が選択されて開始ボタン513が押下される。とすると、その指定された用紙トレイから基準用紙が取り出されてその基準用紙上にパッチ画像16B(図2参照)が形成され、第2のLUT19Bが更新される。
【0075】
このLUT更新モードについては説明済であり、ここでの重複説明は省略する。
【0076】
用紙適正判定モードを実行させるときは、3台の用紙トレイ150のうちのいずれかに基準用紙として適正か否かを判定させようとする用紙をセットし、用紙選択プルダウンメニュー511により、そのセットした用紙が収容されている用紙トレイを選択する。さらに、動作モード選択プルダウンメニュー512により用紙適正判定モード(用紙適正)を選択して開始ボタン513を押下する。すると、以下に説明する用紙適正判定モードによる処理が実行される。
【0077】
図6は、用紙適正判定モードで実行される処理の第1例を示した図である。
【0078】
図5に示す操作画面上で用紙適正判定モードが選択されて開始ボタンが押されると、この図6に示す、用紙適正判定モードにおける処理が開始される。ここでは先ず、用紙上パッチ画像信号10B(図2参照)が第1のLUT19Aで階調補正され、その階調補正後のパッチ画像信号に基づいて、ユーザが選択した用紙トレイから取り出された用紙上に、パッチ画像16B(図2参照)が形成される(ステップS101)。
【0079】
さらに、その用紙上のパッチ画像16Bの濃度が濃度センサ190により測定されて、濃度曲線(図4(A)のカーブa参照)が生成される(ステップS102)。ここで生成される濃度曲線は、本発明にいう高濃度域適正判定用濃度曲線の一例に相当する。
【0080】
図7は、ステップS102で作成される濃度曲線を示した模式図である。
【0081】
この図7において横軸は画素値、縦軸は測定により得られた濃度を表わしている。
【0082】
ここでは、濃度曲線A上の、最大画素値Pmaxに対応する濃度が参照される。最大画素値Pmaxは、網点面積率100%に相当する画素値である。この最大画素値Pmaxに対応する濃度が,
予め定められた下限濃度閾値Dth1と上限濃度閾値Dth2とに挟まれた濃度範囲内にあるか否かが判定される(図6、ステップS103)。そして、その濃度範囲内にあるときは、この用紙は高濃度側について基準用紙として適正であることが記録される(ステップS104)。一方、その濃度範囲から外れているときは、この用紙は高濃度側について基準用紙として不適正であると記録される(ステップS105)。
【0083】
基準用紙として適正であるためには、高濃度側において適正な高濃度が再現されることが要求されるからである。
【0084】
次に、ステップS102における濃度測定結果に基づいて、第2のLUT19Bが算出され(ステップS106)、次に再度、同じ用紙トレイから取り出した同じ種類の用紙上にパッチ画像16Bが形成される。このとき形成されるパッチ画像16Bは、第1のLUT19Aと、ステップS106で算出された第2のLUT19Bとの双方のLUTで階調補正されたパッチ画像信号に基づいてプリント出力されたパッチ画像である。
【0085】
このパッチ画像16Bのプリント出力に続き、このパッチ画像16Bについて濃度センサ190でその濃度が測定されて、再度、濃度曲線が作成される(ステップS108)。このときに作成される濃度曲線は、本発明にいう低濃度域適正判定用濃度曲線の一例に相当する。
【0086】
図8は、ステップS108で作成される濃度曲線を示した模式図である。
【0087】
この図8において、横軸は画素値、縦軸は測定により得られた濃度である。
【0088】
図6のステップS109では、この濃度曲線上の最低濃度Dminに予め定められた濃度幅△Dを加えた基準濃度Dstdに対する画素値Pstdが算出され、ステップS110において、画素値について予め定められた2つの画素閾値Pth1,Pth2に挟まれた画素値領域内にあるか否かが判定される。そして、この算出された画素値Pstdが2つの画素閾値Pth1,Pth2に挟まれた領域内にあるときは、この用紙が低濃度側について基準用紙として適正であることが記録され(ステップS111)、その領域から外れていたときは、この用紙が低濃度側について基準用紙として不適正であることが記録される。低濃度側において、適切な画素値領域内で濃度が十分に再現されることが、基準用紙としての条件の1つだからである。
【0089】
ステップS113では、ステップS104,S105における記録、およびステップS111,S112における記録が参照され、この用紙が基準用紙として適正であるか否かが、UI400(図1参照)上に表示される。
【0090】
図9は、このステップS113で表示される画面の一例を示した図である。
【0091】
この画面は、低濃度側において基準用紙として不適正との判定がなされたときに表示される画面である。
【0092】
ここでは、図示は省略するが、高濃度側において基準用紙として不適正との判定がなされた場合、および、高濃度側および低濃度側双方について基準用紙として適正であるとの判定がなされた場合も、それに応じた画面が表示される。ユーザは、この表示された画面を見て、今回試した用紙が基準用紙として適正であったか否かを知ることができる。不適正な用紙であったときは、別の種類の用紙について再度その適正が判定される。
【0093】
図10は、用紙適正判定モードで実行される処理の第2例を示した図である。
【0094】
この図10に示す第2例は、図6に示した第1例の処理に代えて実行される処理である。
【0095】
図5に示す操作画面510上で用紙適正判定モードが選択されて開始ボタンが押されると、この図10に示す、用紙適正判定モードにおける処理が開始される。
【0096】
ここでは先ず、用紙上パッチ画像信号10B(図2参照)が第1のLUT19Aで階調補正され、その階調補正後のパッチ画像信号に基づいて、ユーザが指定した用紙トレイから取り出された用紙上にパッチ画像16B(図2参照)が形成される(ステップS201)。
【0097】
さらに、その用紙上のパッチ画像16Bの濃度が濃度センサ190により測定されて、濃度曲線が生成される(ステップS202)。ここで生成される濃度曲線も、本発明にいう高濃度域適正判定用濃度曲線の一例に相当する。
【0098】
図11は、ステップS202で作成される濃度曲線を示した模式図である。
【0099】
この図11において横軸は画素値、縦軸は濃度を表わしている。図10のステップS203では、濃度曲線A上の、網点面積率100%に相当する最大画素値Pmaxに対応する濃度と網点面積率95%に相当する画素値P95に対応する濃度とを結んだ直線の傾きKが算出される。そして、その算出した傾きKが、予め定められた傾きの閾値Kthを超えているか否かが判定される(ステップS203)。この濃度曲線A上の、網点面積率100%に相当する最大画素値Pmaxに対応する濃度と網点面積率95%に相当する画素値P95に対応する濃度とを結んだ直線の傾きKは、本発明にいう、「最高濃度近傍における高濃度域適正判定用濃度曲線の接線の傾き」の一例に相当する。
【0100】
ステップS203において算出された傾きKが傾き閾値Kthを越えると判定された場合は、この用紙は高濃度側については基準用紙として適正であることが記録される(ステップS205)。一方、算出された傾きKが傾きの閾値Kth以下のときは、この用紙は高濃度側について基準用紙として不適正であると記録される(ステップS06)。
【0101】
基準用紙として適正であるためには、高濃度域においても濃度再現性を必要とするからである。一方、高濃度域において画素値が変化しても濃度の変化が少ない(傾きKが小さい)用紙は、基準用紙として不適正である。
【0102】
次に、ステップS202における濃度測定結果に基づいて第2のLUT19Bが算出される(ステップS207)。そして、この図10に示す第2例の場合は、その算出した第2のLUT19Bを使って階調補正処理を実行し用紙上にパッチ画像16Bを形成したときの濃度曲線B’が、シミュレーションにより算出される(ステップS208)。この濃度曲線B’は、シミュレーションで算出したものではあるが、第1のLUT19Aと第2のLUT19Bの双方で階調補正処理が行われたパッチ画像信号に基づいて用紙上にパッチ画像16Bを形成し、そのパッチ画像16Bの濃度を測定して算出した濃度曲線B(図8参照)に相当する濃度曲線である。
【0103】
図12は、ステップS208におけるシミュレーションにより算出された濃度曲線を示した図である。
【0104】
ステップS209では、ステップS208におけるシミュレーションにより算出された濃度曲線B’の低濃度側において、その濃度曲線B’の接線の傾きKが予め定められた傾きの基準値Kstdに一致する点の画素値Pstdが算出される。高濃度側においても、その基準値Kstdと一致する傾きKの点が存在する可能性が高く、したがってここでは、画素値の小さい側から大きい側に向かって算出していった場合における傾きKが傾きの基準値Kstdに一致したときの、画素値Pstdが算出される。
【0105】
さらにステップS110において、その算出された画素値Pstdが、挟まれた画素値領域内にあるか否かが判定される。
【0106】
そして、この算出された画素値Pstdが画素値についての2つの閾値Pth1,Pth2に挟まれた画素値領域内にあるときは、この用紙が低濃度側について基準用紙として適正であることが記録される(ステップS211)。一方、その画素値領域から外れていたときは、この用紙について、低濃度側が基準用紙として不適正であることが記録される(ステップS212)。低濃度側における、適正な画素値領域内での画素値の変化に対する一定以上の濃度変化があることが、基準用紙としての必要な条件の1つだからである。
【0107】
ステップS213では、ステップS205,S206における記録、およびステップS211,S212における記録が参照され、この用紙が基準用紙として適正であるか否かが、UI400(図1参照)上に表示される。
【0108】
この表示については、図6を参照にして説明した第1例の場合と同様であり、重複説明は省略する、
ここで、図6に示す第1例では、高濃度側について、図7を参照して説明した通り、最大画素値Pmaxの濃度が2つの濃度閾値Dth1,Dth2に挟まれた濃度範囲内にあるか否かが判定される。これに対し、図10に示す第2例では、図11を参照して説明した通り、最大画素値(網点面積率100%)Pmaxの濃度と網点面積率95%に相当する画素値P95の濃度とを結んだ直線の傾きKが、傾きの閾値Kthを超えているか否かが判定される。ここでは、これらのうちいずれか一方の判定アルゴリズムを採用してもよく、それら双方の判定アルゴリズムを併用して、両者を満足する場合に、高濃度側において基準用紙として適正であると判定してもよい。
【0109】
また、図6に示す第1例では、低濃度側について、図8を参照して説明した通り、最小濃度Dminに濃度幅△Dを加算した基準濃度Dstdに対応する画素値Pstdが算出され、その算出した画素値Pstdが、2つの画素閾値Pth1,Pth2に挟まれた領域内にあるか否かが判定される。
【0110】
一方、図10に示す第2例では、低濃度側について、図12を参照して説明した通り、接線の傾きKが傾きの基準値Kstdに一致する点の画素値Pstdが算出され、その算出された画素値Pstdが、2つの画素閾値Pth1,Pth2に挟まれた領域内にあるか否かが判定される。低濃度側についても、高濃度側と同様、これらいずれか一方の判定アルゴリズムを採用してもよく、それら双方の判定アルゴリズムを併用して、両者を満足する場合に、低濃度側において基準用紙として適正であると判定してもよい。
【0111】
あるいは、高濃度側と低濃度側とでそれぞれ1つずつの判定アルゴリズムを採用する場合において、高濃度側の任意の一方の判定アルゴリズムと、低濃度側の任意の一方の判定アルゴリズムとを組み合わせてもよい。
【0112】
さらに、図6に示す第1例の場合、第2のLUT19Bを算出した後、用紙上に再度パッチ画像を形成し濃度測定を行って濃度曲線B(図8参照)を作成している。これに対し、図10に示す第2例の場合は、第2のLUT19Bを算出した後はシミュレーションにより濃度曲線B’(図12参照)を作成している。ただし、図8図12を参照して説明した2つの判定アルゴリズムのうちのいずれの判定アルゴリズムについても、実測による濃度曲線Bを採用してもよく、あるいはシミュレーションによる濃度曲線B’を採用してもよい。
【符号の説明】
【0113】
19A 第1のLUT
19B 第2のLUT
12A,12B,16B パッチ画像
100 プリンタ
161 中間転写ベルト
167 濃度センサ
180 定着器
190 濃度センサ
400 UI
510 操作画面
511 用紙選択プルダウンメニュー
512 動作モード選択プルダウンメニュー
513 開始ボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12