特許第6443627号(P6443627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443627
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】変圧器の冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/08 20060101AFI20181217BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20181217BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   H01F27/08 153
   H01F27/28 176
   H01F30/10 S
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-105298(P2015-105298)
(22)【出願日】2015年5月25日
(65)【公開番号】特開2016-219688(P2016-219688A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中島 健裕
(72)【発明者】
【氏名】酒井 貴悠
【審査官】 井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−277482(JP,A)
【文献】 特開2013−004598(JP,A)
【文献】 米国特許第02981785(US,A)
【文献】 特開2011−082414(JP,A)
【文献】 特開2011−071190(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/008359(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0027568(US,A1)
【文献】 特開2011−258795(JP,A)
【文献】 実開昭49−115624(JP,U)
【文献】 特開平06−349648(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0257439(US,A1)
【文献】 特開2001−284134(JP,A)
【文献】 実開昭60−081615(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/08
H01F 27/28
H01F 30/10
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筺体に収納された変圧器を冷却風により強制的に冷却する冷却装置において、
前記変圧器を構成する巻線部の軸方向両端部にそれぞれ配置された上部仕切板と下部仕切板とを備え、かつ、前記筺体の上部近傍に排気ファンを配置すると共に、
前記筺体に主吸気口及び副吸気口をそれぞれ形成し、前記上部仕切板及び前記下部仕切板に開口部を設けて前記巻線部の鉄芯との間に上部仕切板内通気口と下部仕切板内通気口とをそれぞれ形成し、
前記排気ファンの運転により、
前記主吸気口から前記巻線部の周囲に流入した冷却風を、前記上部仕切板の端部と前記筺体の内面との間に形成された端部通気口を介して、前記排気ファン方向に通過させる第1の気流と、
前記副吸気口から流入した冷却風を、前記下部仕切板内通気口から前記巻線部の内部と前記上部仕切板内通気口とを介して、前記巻線部の軸方向に沿って前記排気ファン方向に通過させる第2の気流と、
を形成したことを特徴とする変圧器の冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載した変圧器の冷却装置において、
前記主吸気口を前記筐体の前面に形成し、かつ、前記副吸気口を前記筐体の下端部近傍に形成したことを特徴とする変圧器の冷却装置。
【請求項3】
請求項2に記載した変圧器の冷却装置において、
前記端部通気口を、前記上部仕切板の後端部と前記筐体の内面との間に形成したことを特徴とする変圧器の冷却装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載した変圧器の冷却装置において、
前記巻線部は、前記鉄芯に対して同心状に巻かれた一次巻線と二次巻線とを備え、前記鉄芯と前記一次巻線との間、及び、前記一次巻線と前記二次巻線との間にそれぞれ保有された隙間に前記第2の気流を通過させることを特徴とする変圧器の冷却装置。
【請求項5】
請求項4に記載した変圧器の冷却装置において、
前記上部仕切板内通気口及び前記下部仕切板内通気口の面積を変えて前記隙間を通過する前記第2の気流の量を調整することを特徴とする変圧器の冷却装置。
【請求項6】
請求項1〜の何れか1項に記載した変圧器の冷却装置において、
前記端部通気口の面積を変えて前記端部通気口を通過する前記第の気流の量を調整することを特徴とする変圧器の冷却装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載した変圧器の冷却装置において、
前記下部仕切板に、前記第2の気流を通過させるバイパス通気口を形成したことを特徴とする変圧器の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筺体に収納された変圧器を強制的に空冷するための冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9図10は、筺体に変圧器が収納された変圧器盤の従来技術(第1の従来技術)を示しており、図9は筺体内部の構造を示す正面図、図10図9のX−X断面図である。
これらの図において、101は筐体、102は三相の変圧器、103R,103S,103Tは各相の巻線部、104は一次巻線、105は二次巻線、106,107はヨークを示す。
【0003】
この変圧器盤では、筐体101の上部に排気ファン108が配置され、筐体101の前面下方には吸気口109が設けられている。また、筐体101の内部上方には仕切板110が配置されていると共に、巻線部103R,103S,103Tの下端部近傍には、押し出し式の付属ファン111がそれぞれ前後に配置されている。
【0004】
上記の構成により、図10に示すように、排気ファン108を運転して吸気口109から流入した冷却風は、巻線部103R,103S,103Tの周囲を上方に移動して排気ファン108から排気される。これと同時に、付属ファン111を運転して巻線部103R,103S,103Tにそれぞれ送風することにより、変圧器102の全体を下方から冷却する冷却風の気流が形成されることとなる。
【0005】
また、特許文献1には、他の構造の冷却装置が記載されている。
図11は、特許文献1に記載された第2の従来技術を示し、図12は、同じく第3の従来技術を示す構成図である。
図11図12において、201は変圧器盤の筐体、202は変圧器、202aは鉄芯の周囲に一次巻線及び二次巻線が巻かれた巻線部、203は吸気口、204は排気ファン、205,206,207は気流の方向を制御するための仕切板、205a,207aは開口部である。
【0006】
図11に示した第2の従来技術では、排気ファン204を運転して吸気口203から流入した冷却風が、開口部207a、巻線部202aの周囲、開口部205a等を介して排気ファン204から排気される。
また、図12に示した第3の従来技術では、図11における仕切板205がないことに起因して、吸気口203から流入した冷却風の一部は変圧器202の周囲を経て直接的に排気ファン204方向に向かう。
上記の第2,第3の従来技術においては、変圧器202の周囲に仕切板205,206,207を配置することにより、変圧器202に供給される冷却風の風量、風速を最大化する気流の流路を形成して冷却能力を高めるように工夫している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−4598号公報(図4図6等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図9図10に示した第1の従来技術において、吸気口109から筐体101の内部に導入された冷却風の流路は、上部の排気ファン108の近傍で仕切板110により規制されているだけである。従って、筐体101の内部では冷却風の流路面積が広いため、変圧器102を集中的に冷却することが難しい。
また、変圧器102の鉄芯、一次巻線104、二次巻線105の相互間では、各部を固定、絶縁するために固定部材や絶縁部材が使用されており、これらの部材が冷却風の流路面積を減少させている。このため、変圧器102の内部における圧力損失が大きく、十分な冷却効果を得ることが困難である。
【0009】
そこで、第1の従来技術では、巻線部103R,103S,103Tの下端部近傍に付属ファン111をそれぞれ配置して巻線部103R,103S,103Tを個別に冷却しているが、多数の付属ファンが必要になり、コストの増加や変圧器盤の大型化、組立作業やメンテナンス作業の煩雑化を招くという問題がある。
【0010】
また、前述したように変圧器102内部の圧力損失が大きいと、変圧器102の内外を通過する風量に差が生じ、この風量の差によって変圧器102の内部温度は外部温度より高くなる。変圧器102に対する冷却能力は排気ファンのスペックや吸気口の面積等によって決定されるが、変圧器102の内外の温度が不均一であると、高温部の温度に基づいて冷却能力を設計せざるを得ず、結果的に排気ファン等の容量が大きくなってコスト高になるという問題があった。
【0011】
更に、図11図12に示した第2,第3の従来技術においても、変圧器202の内外を通過する冷却風の風量に偏りが生じて変圧器202の内外に大幅な温度差が発生することがあり、鉄芯や一次巻線、二次巻線を均一に冷却することが困難であった。
【0012】
そこで、本発明の解決課題は、変圧器の内外をまんべんなく冷却して温度を均一にすることができ、しかも付属ファン等を不要にして変圧器盤の小型化、コストの低減、組立作業等の容易化を可能にした変圧器の冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、筺体に収納された変圧器を冷却風により強制的に冷却する冷却装置において、
前記変圧器を構成する巻線部の軸方向両端部にそれぞれ配置された上部仕切板と下部仕切板とを備え、かつ、前記筺体の上部近傍に排気ファンを配置すると共に、
前記筺体に主吸気口及び副吸気口をそれぞれ形成し、前記上部仕切板及び前記下部仕切板に開口部を設けて前記巻線部の鉄芯との間に上部仕切板内通気口と下部仕切板内通気口とをそれぞれ形成し、
前記排気ファンの運転により、
前記主吸気口から前記巻線部の周囲に流入した冷却風を、前記上部仕切板の端部と前記筺体の内面との間に形成された端部通気口を介して、前記排気ファン方向に通過させる第1の気流と、
前記副吸気口から流入した冷却風を、前記下部仕切板内通気口から前記巻線部の内部と前記上部仕切板内通気口とを介して、前記巻線部の軸方向に沿って前記排気ファン方向に通過させる第2の気流と、を形成したことを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載した変圧器の冷却装置において、前記主吸気口を前記筐体の前面に形成し、かつ、前記副吸気口を前記筐体の下端部近傍に形成したことを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載した変圧器の冷却装置において、前記端部通気口を、前記上部仕切板の後端部と前記筐体の内面との間に形成したことを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載した変圧器の冷却装置において、前記巻線部は、前記鉄芯に対して同心状に巻かれた一次巻線と二次巻線とを備え、前記鉄芯と前記一次巻線との間、及び、前記一次巻線と前記二次巻線との間にそれぞれ保有された隙間に前記第2の気流を通過させることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載した変圧器の冷却装置において、前記上部仕切板内通気口及び前記下部仕切板内通気口の面積を変えて前記隙間を通過する前記第2の気流の量を調整することを特徴とする。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項1〜の何れか1項に記載した変圧器の冷却装置において、前記端部通気口の面積を変えて前記端部通気口を通過する前記第の気流の量を調整することを特徴とする。
【0019】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6の何れか1項に記載した変圧器の冷却装置において、前記下部仕切板に、前記第2の気流を通過させるバイパス通気口を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、筺体内部の上下に上部仕切板及び下部仕切板を配置し、これらの仕切板に仕切板内通気口や端部通気口を形成すると共に、変圧器の周囲及び変圧器の内部に第1の気流と第2の気流とをそれぞれ通過させるようにした。
これにより、上部仕切板及び下部仕切板によって区画された空間内で変圧器を内外から均等に冷却することが可能になり、筺体内温度の均一化、小型化、低コスト化、組立作業等の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態が適用される変圧器盤の内部構造等を示す図である。
図2】本発明の実施形態における第1,第2の気流の説明図である。
図3】本発明の実施形態における巻線部の横断面図及び縦断面図である。
図4】本発明の他の実施形態における巻線部の縦断面図である。
図5図1(a),(b)における上部仕切板方向から見た主要部の平面図である。
図6】本発明の実施形態における下部仕切板にバイパス通気口を形成した場合の、主要部の底面図である。
図7】本発明の他の実施形態における上部仕切板方向から見た主要部の平面図である。
図8】本発明の他の実施形態における上部仕切板方向から見た主要部の平面図である。
図9】第1の従来技術を示す正面図である。
図10図9のX−X断面図である。
図11】特許文献1に記載された第2の従来技術を示す構成図である。
図12】特許文献1に記載された第3の従来技術を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は筺体内部に三相の変圧器が配置された変圧器盤を説明するための図であり、図1(a)は筺体内部の構造を示す正面図、図1(b)は図1(a)のA−A断面図、図1(c)は後述する上部仕切板4の上方から見た平面図、図1(d)は後述する第1の気流の説明図である。
【0024】
図1(a),(b)において、筐体1の内部には変圧器2を構成する各相の巻線部3R,3S,3Tが並設され、巻線部3R,3S,3Tの軸方向両端部には、上部仕切板4、下部仕切板5がそれぞれ配置されている。なお、6,7はヨーク、8は鉄芯10(図1(d)参照)の外側に巻かれた一次巻線、9は一次巻線8の外側に巻かれた二次巻線である。
筺体1の上部には、排気ファン21が配置されている。また、図1(b)に示すごとく、筺体1の前面には主吸気口としての第1吸気口22が配置され、筺体1の下端部近傍には、前面に副吸気口としての第2吸気口23が、背面に副吸気口としての第3吸気口24がそれぞれ配置されている。
図示されていないが、図1(a)における筺体1の下端部近傍の左右に、副吸気口としての第4,第5吸気口を更に配置(つまり、筺体1の下端部近傍の四方に副吸気口を配置)しても良い。
【0025】
図1(b),(c)に示すように、上部仕切板4、下部仕切板5の内部には、巻線部3R,3S,3Tの鉄芯10との間に仕切板内通気口4a,5aが形成されるように、ほぼ円形の開口部4b,5bがそれぞれ設けられている。また、上部仕切板4の後端部と筺体1の内面との間には、巻線部3R,3S,3Tの周囲から排気ファン21方向に向かう第1の気流(白抜き矢印にて示す)S1を通過させる端部通気口4cが形成されている。
【0026】
図1(d)は、巻線部の断面構造を示している。なお、この断面構造は全ての巻線部3R,3S,3Tに共通している。
図1(d)において、鉄芯10と一次巻線8との間の隙間11には絶縁筒12が配置され、一次巻線8と二次巻線9との間の隙間13には絶縁筒14が配置されている。図示するように、図1(b)の第1の吸気口22から流入した冷却風は、第1の気流S1となって、主に二次巻線9の外周面を回り込み、前記端部通気口4cを介して排気ファン21方向に流れる。
一方、図1(b)の第2,第3の吸気口23,24から流入した冷却風は、第2の気流S2となって仕切板内通気口5aから主に巻線部内の隙間11,13を通過し、仕切板内通気口4aを介して排気ファン21方向に流れる。
【0027】
ここで、図2は、第1,第2の気流S1,S2の作用を説明するための概念図である。
第1,第2の気流S1,S2を明確に分離することは難しいが、第1の気流S1は、二次巻線9の外周面や一次巻線8の外周面、二次巻線9同士の隙間等に沿って流れるため、主に、各巻線8,9を外側から冷却する作用を果たす。これに対して、第2の気流S2は、その大部分が前記隙間11,13を通過するので、主に、鉄芯10の外周面、一次巻線8の内外周面、二次巻線9の内周面等を効率良く冷却する作用を果たす。
これら第1,第2の気流S1,S2は、図1(b)の排気ファン21の手前で合流し、気流Sとして外部に排気されることになる。
【0028】
図3(a)は巻線部の横断面図であり、図3(b)は縦断面図である。
前述した上部仕切板4の開口部4b及び下部仕切板5の開口部5bの直径を調整することにより、第2の気流S2が通過する隙間11,13の断面積を調整することができる。
図3(b)は、開口部4b,5bの直径を絶縁筒14の内径に等しくした例である。この例によれば、ヨーク6,7によって遮られる部分を除けば、隙間11の全部と隙間13の一部とが第2の気流S2の流路となり、主として鉄芯10及び一次巻線8を冷却することができる。
【0029】
また、図4(a)は、開口部4b,5bの直径を二次巻線9の内径に等しくした例である。この例によれば、ヨーク6,7によって遮られる部分を除けば、隙間11,13の全部が第2の気流S2の流路となり、主として鉄芯10及び一次巻線8、並びに二次巻線9の内周面を冷却することができる。
図4(b)は、開口部4b,5bの直径を一次巻線8の内径に等しくした例である。この場合、ヨーク6,7によって遮られる部分を除けば、隙間11の全部が第2の気流S2の流路となる反面、隙間13は気流S2の流路とならない。この例によれば、主として鉄芯10と、一次巻線8の内周面とを冷却することができる。
図4(c)は、開口部4b,5bの直径を絶縁筒12の内径に等しくした例である。この場合、ヨーク6,7によって遮られる部分を除けば、隙間11の一部が第2の気流S2の流路となる反面、隙間13は気流S2の流路とならない。この例によれば、主として鉄芯10の冷却に効果的である。
【0030】
次に、図5は、図1(a),(b)における上部仕切板方向から見た主要部の平面図である。前述したように、上部仕切板4の後端部と筺体1の内面との間に、第2の気流S2の通路となる端部通気口4cが形成されている。なお、図示されていないが、下部仕切板5には端部通気口4cに相当する空間は形成されていない。図5では、端部通気口4cを巻線部3R,3S,3Tの並設方向に連続して形成してあるが、後述するバイパス通気口5cのごとく、巻線部3R,3S,3Tにそれぞれ対応させて個別に形成しても良い。
【0031】
また、図6(a),(b)は、図1(a),(b)における下部仕切板5にバイパス通気口を形成した場合の、主要部の底面図である。
図1(a),(b)に示した構造によると、第2吸気口23及び第3吸気口24から流入した冷却風による第2の気流S2が巻線部3R,3S,3Tの隙間11,13を通過しやすくなるので、巻線部3R,3S,3Tを内側から冷却する効果が大きい。しかし、第2の気流S2を利用して二次巻線9を一層集中的に冷却したい場合には、以下に説明するように、下部仕切板5にバイパス通気口を形成することが有効である。
【0032】
すなわち、図6(a)に示すように、巻線部3R,3S,3Tにそれぞれ対応させてバイパス通気口5cを形成し、底面から見て、各バイパス通気口5cが二次巻線9の一部に重なるような位置関係とする。これにより、バイパス通気口5cを通過した冷却風が二次巻線9に直接当たるようになり、二次巻線9の冷却を促進することができる。
図6(b)は、図6(a)の三つのバイパス通気口5cを連続させて単一のバイパス通気口5dとした例である。図6(b)によれば、図6(a)に比べてバイパス通気口の加工が容易になる。
【0033】
次に、図7図8は、本発明の他の実施形態における上部仕切板方向から見た主要部の平面図である。これらの図では、上部仕切板4と筺体1内面との間に形成される端部通気口4cにハッチングを付してある。
端部通気口4cの面積を変更すれば、第2の気流S2の風量、風速を調整することができ、これにより、主として巻線部3R,3S,3Tの背面側の冷却能力を調整することができる。図7図8は、この端部通気口4cの面積を調整するための構造を示したものである。
【0034】
すなわち、端部通気口4cの面積の調整方法としては、図7に示すように、風量調整板15を筺体1の前後方向にスライドさせて所望の位置に固定可能としたり、あるいは、図8に示すように、一対の風量調整板16を筺体1の左右方向にスライドさせて、所望の位置に固定可能とする方法がある。
何れにしても、第2の気流S2に偏りを生じさせないためには、風量調整板15,16をスライドさせた後に形成される端部通気口4cの平面形状が、中央の巻線部3Sを中心として線対称であることが望ましい。
【0035】
以上説明したように、本発明に係る冷却装置は、筺体1に収納された変圧器2の上下を上部仕切板4及び下部仕切板5によって区画すると共に、筺体1の内部にその前面下方から流入して巻線部3R,3S,3Tの周囲を通り、上部仕切板4の後端部の端部通気口4cを介して排気ファン21方向へ流れる第1の気流S1と、筺体1の下方から流入して仕切板内通気口5a,4a及び巻線部3R,3S,3Tの内部を軸方向に通過して排気ファン21方向へ流れる第2の気流S2とを発生させ、これら第1,第2の気流S1,S2の相乗効果により変圧器2を冷却するものである。
【0036】
このため、一次巻線8及び二次巻線9の外周面や、各巻線8,9の隙間、鉄芯10の外周面等をまんべんなく冷却することができ、筺体内部温度の均一化を図ることができる。よって、内部温度が不均一な場合に高温部に合わせて冷却能力や冷却設備を設計する必要がなくなり、オーバースペックの冷却設備に起因するコスト高を招く心配がない。
また、上部仕切板4及び下部仕切板5によって冷却風の拡散を防止できるため、冷却風を無駄なく利用して変圧器2を高効率で冷却することができる。
更に、第2の気流S2によって二次巻線9を下方から集中的に冷却できるため、従来技術のように多数の付属ファンを配置する必要がなく、低コスト化や変圧器盤の小型化に寄与すると共に、組立作業やメンテナンス作業の容易化が可能である。
【0037】
加えて、図4図8に示したように、巻線部における第2の気流S2が通過する流路の断面積(仕切板内通気口4a,5aの内径)、上部仕切板4の後端部に形成される端部通気口4cの面積、及び、下部仕切板5に形成されるバイパス通気口5c,5dの面積等を適宜調整することにより、筺体1の形状や容積、巻線部の数(相数)、排気ファン21の冷却能力等に応じて、最適かつ効率的な冷却装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、変圧器盤単体だけでなく、変圧器盤と半導体電力ユニット及びその制御装置等を一体化した電力変換装置にも利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1:筐体
2:変圧器
3R,3S,3T:巻線部
4:上部仕切板
4a:仕切板内通気口
4b:開口部
4c:端部通気口
5:下部仕切板
5a:仕切板内通気口
5b:開口部
5c,5d:バイパス通気口
6,7:ヨーク
8:一次巻線
9:二次巻線
10:鉄芯
11,13:隙間
12,14:絶縁筒
15,16:風量調整板
21:排気ファン
22:第1吸気口(主吸気口)
23:第2吸気口(副吸気口)
24:第3吸気口(副吸気口)
S1:第1の気流
S2:第2の気流
S:気流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12