(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
搬送用走行体の走行経路中に勾配経路部が設けられ、この勾配経路部の傾斜直線部と、当該勾配経路部の両端につながる上下両水平経路部の少なくとも前記勾配経路部に隣接する一定領域とに、互いに連動連結され且つモーター駆動される直線状のスクリューシャフトが並設され、搬送用走行体には、前記スクリューシャフトに係合する被動ローラーが、この搬送用走行体の走行方向に前後一対設けられ、この前後一対の被動ローラー間の間隔は、前記勾配経路部の上下両端の円弧部の両側に位置する、勾配経路部に並設の傾斜スクリューシャフトの端部と、水平経路部に並設の水平スクリューシャフトの端部との間の直線距離より短くない長さとして、搬送用走行体が、前記上下両水平経路部間を、回転駆動されている前記各スクリューシャフトとこれに係合する少なくとも1つの被動ローラーにより、前記勾配経路部を経由して連続走行するように構成された、搬送装置。
前記傾斜スクリューシャフトの前記円弧部側の端部と、前記水平スクリューシャフトの前記円弧部側の端部は、側面視において、前記円弧部の円弧中心と当該円弧部の両端とを結ぶ2本の仮想直線間の扇形領域内に入り込むように延長されて、これら円弧部側のスクリューシャフト端部間の直線距離が、両スクリューシャフトの前記扇形領域に接する交点間の直線距離よりも短く構成され、前記前後一対の被動ローラー間の間隔は、前記交点間の直線距離よりも短いが前記スクリューシャフト端部間の直線距離より短くない長さとなっている、請求項1に記載の搬送装置。
前後一対の前記被動ローラーが、搬送用走行体の走行方向に対して直交する向きの水平支軸により、当該搬送用走行体の横側部に軸支され、各スクリューシャフトは、搬送用走行体の横側方に並列する位置に支承されている、請求項1又は2に記載の搬送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、走行経路中に勾配経路部が存在するとき、この勾配経路部において搬送用走行体を推進させる駆動手段として、スクリュー駆動方式のものは知られていなかった。勾配経路部を走行する搬送用走行体には、重力によって降下方向の力が作用するので、例えば搬送用走行体に軸支された車輪をモーター駆動する、車輪駆動方式や、搬送用走行体に設けられた摩擦面に、走行経路側のモーター駆動の摩擦駆動輪を圧接させて、搬送用走行体を推進させる摩擦駆動方式の駆動手段では、搭載された被搬送物を含む搬送用走行体全体が大型で大重量となるような搬送装置では、勾配経路部、特に勾配角度が大きい勾配経路部で駆動車輪や摩擦駆動輪のスリップが生じて、搬送用走行体を、所定速度を保って確実に走行駆動することが出来ない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる搬送装置を提案するものであって、本発明に係る搬送装置は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、搬送用走行体(2)の走行経路中に勾配経路部(5)が設けられ、この勾配経路部(5)の傾斜直線部(5C)と、当該勾配経路部(5)の両端につながる上下両水平経路部(3,4)の少なくとも前記勾配経路部(5)に隣接する一定領域とに、互いに連動連結され且つモーター駆動される直線状のスクリューシャフト(21〜23)が並設され、搬送用走行体(2)には、前記スクリューシャフト(21〜23)に係合する被動ローラー(19,20)が、この搬送用走行体(2)の走行方向に前後一対設けられ、この前後一対の被動ローラー(19,20)間の間隔(D)は、前記勾配経路部(5)の上下両端の円弧部(5A,5B)の両側に位置する、勾配経路部(5)に並設の傾斜スクリューシャフト(22)の端部と、水平経路部(3,4)に並設の水平スクリューシャフト(21,23)の端部との間の直線距離(L1)より短くない長さとして、搬送用走行体(2)が、前記上下両水平経路部(3,4)間を、回転駆動されている前記各スクリューシャフト(21〜23)とこれに係合する少なくとも1つの被動ローラー(19/20)により、前記勾配経路部(5)を経由して連続走行するように構成されたものである。
【発明の効果】
【0006】
上記本発明の搬送装置では、搬送用走行体が、水平経路部と勾配経路部の一方から他方に乗り移るとき、当該搬送用走行体は、前側の被動ローラーが、水平経路部側の水平スクリューシャフト又は勾配経路部側の傾斜スクリューシャフトの端から離れた後は、後ろ側の被動ローラーを介して、前記水平スクリューシャフト又は傾斜スクリューシャフトから推進力を受けて、水平経路部と勾配経路部とをつなぐ円弧部に進入することになる。そして後ろ側の被動ローラーが前記水平スクリューシャフト又は傾斜スクリューシャフトの端から離れるときには、前側の被動ローラーが前記水平スクリューシャフト又は傾斜スクリューシャフトの端に係合しているので、今度は、前側の被動ローラーを介して、前記傾斜スクリューシャフト又は水平スクリューシャフトから推進力を受けて、前記円弧部から勾配経路部の傾斜直線部又は水平経路部に進入することになる。水平スクリューシャフトが並設された水平経路部又は傾斜スクリューシャフトが並設された勾配経路部の傾斜直線部を搬送用走行体が走行するときは、前後一対の被動ローラーの内、少なくとも1つがこれらスクリューシャフトに係合して推進力を受けることになる。
【0007】
上記のように本発明の構成によれば、搬送用走行体は、前後一対の被動ローラーの内、少なくとも1つが常にスクリューシャフトから推進力を受けて、勾配経路部で接続された上下両水平経路部の一方から他方へ、スクリューシャフトの回転速度で決まる一定速度で連続的に走行することが出来るのであるが、勾配経路部の上下両端に存在する円弧部では、被動ローラーはスクリューシャフトに係合する必要が無いので、当該円弧部に沿って湾曲した状態で自転出来る、可撓性のある特殊なスクリューシャフトが不要であり、直線棒状の一般的なスクリューシャフトのみを使用して構成することが出来る。
【0008】
上記本発明を実施する場合、具体的には、前記傾斜スクリューシャフト(22)の前記円弧部(5A,5B)側の端部と、前記水平スクリューシャフト(21,23)の前記円弧部(5A,5B)側の端部は、側面視において、前記円弧部(5A,5B)の円弧中心と当該円弧部(5A,5B)の両端とを結ぶ2本の仮想直線間の扇形領域(SA)内に入り込むように延長させて、これら円弧部(5A,5B)側のスクリューシャフト端部間の直線距離(L1)を、両スクリューシャフトの前記扇形領域(SA)に接する交点(P)間の直線距離(L2)よりも短く構成し、前記前後一対の被動ローラー(19,20)間の間隔(D)は、前記交点(P)間の直線距離(L2)よりも短いが前記スクリューシャフト端部間の直線距離(L1)より短くない長さとするのが望ましい。即ち、前記傾斜スクリューシャフトの前記円弧部側の端部と、前記水平スクリューシャフトの前記円弧部側の端部は、前記扇形領域と接する位置にあるように構成しても良いが、この場合は、前後一対の被動ローラー間の間隔も、両スクリューシャフトの端部間の間隔より短くすることが出来ないので、これら前後一対の被動ローラー間の間隔が大きくなる。これは、本来なら前後一対の被動ローラー間の間隔を狭めて、搬送用走行体の全長を短くすることが出来る状況にあっても、前記円弧部の長さに合わせて搬送用走行体の全長を長くしなければならないことになり、搬送用走行体が長大になって、ストレージ経路長さが長くなり、重量アップやコストアップの原因にもなる。しかしながら上記のように構成すれば、前記円弧部の長さの割に、前後一対の被動ローラー間の間隔を狭めて、搬送用走行体を短く構成することが可能になる。
【0009】
又、搬送用走行体の走行経路の下側又は上側にスクリューシャフトを並設することも可能であるが、前後一対の前記被動ローラー(19,20)を、搬送用走行体(2,36)の走行方向に対して直交する向きの水平支軸により、当該搬送用走行体(2,36)の横側部に軸支し、各スクリューシャフト(21〜23)は、搬送用走行体(2,36)の横側方に並列させるのが望ましい。この場合、搬送用走行体(2,36)は、本体(7,40)と、
搬送用走行体(2,36)の走行経路を構成するガイドレール(1,37)に対し一定姿勢を保って移動自在に支持された前後一対のトロリー(11,12/38,39)とを備えた構成とし、両トロリー(11,12/38,39)は、前記本体(7,40)の前後2箇所に、左右横向きの水平支軸(16,43)の周りに前後揺動自在に軸支することが出来る。
【0010】
搬送用走行体を上記のような構成とすることにより、前後一対の前記被動ローラーを、各トロリーを軸支する前記水平支軸の上方位置で前記本体に軸支する構成や、前後一対の前記被動ローラーを、各トロリーを軸支する前記水平支軸の横側方への延長端に支持する構成などが採用出来る。更には、前後一対の前記トロリー(38,39)に、前記ガイドレール(37)の支持用レール面上を転動自在な車輪(44)を、前記水平支軸(43)と同心状に設け、少なくとも一方のトロリー(39)には、当該トロリー(39)が備える前記車輪(44)を回転駆動するモーター(50)を設け、このモーター駆動の車輪(44)により搬送用走行体(36)を、走行経路中の水平経路部において自走可能に構成し、前後一対の前記被動ローラー(19,20)は、前後一対の前記トロリー(38,39)の車輪(44)と同心状に軸支することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1〜
図5は、第一実施例を示す図であって、
図1は、走行経路中の要部と搬送用走行体を示す一部切欠き側面図である。
【
図3】
図3は、勾配経路部を平面上に展開した状態での
図1の平面図である。
【
図4】
図4Aは、走行経路上の搬送用走行体とスクリューシャフトを示す一部切欠き平面図、
図4Bは、同背面図である。
【
図5】
図5は、勾配経路部の上端円弧部の構成を説明する側面図である。
【
図6】
図6は、勾配経路部の下端円弧部の構成を説明する側面図である。
【
図7】
図7〜
図12は、第二実施例を示す図であって、
図7Aは、走行経路中の要部でのガイドレールと搬送用走行体を示す側面図、
図7Bは、その要部の拡大図である。
【
図8】
図8は、
図7Aにおいて省かれたスクリューシャフトを示す側面図である。
【
図9】
図9Aは、勾配経路部の上端円弧部の構成を説明する側面図、
図9Bは、勾配経路部の下端円弧部の構成を説明する側面図である。
【
図10】
図10は、ガイドレール上の搬送用走行体とスクリューシャフトを示す平面図である。
【
図11】
図11は、ガイドレール上の搬送用走行体を示す側面図である。
【
図12】
図12は、ガイドレール上の搬送用走行体とスクリューシャフトを示す縦断背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第一実施例を
図1〜
図6に基づいて説明すると、ガイドレール1によって構成された搬送用走行体2の走行経路には、上側水平経路部3と下側水平経路部4とを接続する勾配経路部5が設けられている。この実施例では、搬送用走行体2は、上側水平経路部3から勾配経路部5を経由して下側水平経路部4へ走行する。搬送用走行体2は、被搬送物支持部6が上側に設けられた、前後走行方向に長い本体7と、この本体7の前後両端の巾方向中央位置から垂直下方に連設された前後一対の支持用支柱部材8,9と、この前後一対の支持用支柱部材8,9の下端近傍位置に架設された、この搬送用走行体2の全長にわたって連続する摩擦駆動用のロードバー10と、このロードバー10の下側で前後一対の支持用支柱部材8,9の下端に取り付けられた前後一対のトロリー11,12から構成されている。勾配経路部5は、上端円弧部5Aと下端円弧部5、及び両円弧部5A,5Bを接続する傾斜直線部5Cから構成されている。換言すれば、勾配経路部5を構成するガイドレール1は、これら上下各円弧部5A,5Bと傾斜直線部5Cに分けられている。尚、被搬送物支持部6の構成は特に限定されないが、勾配経路部5の傾斜角度が大きいなどの理由で、この勾配経路部5を搬送用走行体2が走行するとき、積載した被搬送物が傾斜下方に滑動する恐れが予想される状況であれば、被搬送物支持部6として、支持した被搬送物を所定位置に確実に保持出来る構造の被搬送物支持部、例えば被搬送物のサイズや物性に応じて、囲いの中に被搬送物を収容する構造の被搬送物支持部や、被搬送物を所定位置にロックするロック手段を備えた構造の被搬送物支持部、その他、各種構造の被搬送物支持部が採用出来る。
【0013】
前後一対のトロリー11,12は、その左右両側で前後2箇所に車輪14が軸支されると共に、これら4つの車輪14の内側上方に位置するように4つの位置決め用ローラー15がそれぞれ垂直支軸により軸支されたもので、ロードバー10から下側に突出する前後一対の支持用支柱部材8,9の下端部が、各トロリー11,12に、それぞれ左右横向きの水平支軸16により前後相対揺動自在に連結されている。従って、搬送用走行体2の走行経路を構成する前記ガイドレール1は、トロリー11,12の左右両側の前後一対の車輪14がそれぞれ嵌合する左右一対の溝形レール1a,1bと、前記位置決め用ローラー15が隣接転動するように各溝形レール1a,1bの上側内側辺に付設された角棒状レール材1c,1dから構成され、各トロリー11,12が、ガイドレール1に対し一定姿勢を保って移動することが出来るように構成されている。前記水平支軸16は、側面視において、各トロリー11,12の前後一対の車輪14間の中央位置で且つこれら車輪14の回転軸心と同一レベルに配置され、各トロリー11,12に対する支持用支柱部材8,9の位置は、平面視において、各トロリー11,12の4つの車輪14で囲まれた矩形平面の中央位置にある。
【0014】
尚、この搬送用走行体2を水平カーブ経路部においても走行可能にする場合は、前後一対の支持用支柱部材8,9のロードバー10を貫通する部分に垂直支軸を介在させ、この垂直支軸の周りに、被搬送物支持用本体7とロードバー10とが各トロリー11,12に対して水平に相対回転可能に構成することが出来る。
【0015】
搬送用走行体2の本体7には、その前後両端近傍の一側面に、支持用支柱部材8,9の真横に位置する前後一対の柱状支持部材17,18の上端が取り付けられ、これら両柱状支持部材17,18の下端外側に、被動ローラー19,20が左右横向きの水平支軸により片持ち状に軸支されている。これら被動ローラー19,20は、ガイドレール1よりも横外側で且つロードバー10よりも高い位置にある。
【0016】
図1に示すように、上側水平経路部3の勾配経路部5に隣接する端部と、勾配経路部5と、下側水平経路部4の勾配経路部5に隣接する端部とには、各経路部を構成するガイドレール1と平行に、上側水平スクリューシャフト21、傾斜スクリューシャフト22、及び下側水平スクリューシャフト23が並設されている。これら各スクリューシャフト21〜23は、搬送用走行体2の前後一対の被動ローラー19,20が、各スクリューシャフト21〜23の回転軸心の真横位置で係合するものであって、伝動手段24,25によって互いに連動連結されると共に、上側水平スクリューシャフト21には、勾配経路部5から遠い側の端部に駆動用モーター26が連動連結されている。
【0017】
これら各スクリューシャフト21〜23は、それぞれ支持フレーム27〜29に両端が軸受け30によって支承されている。伝動手段24,25は、両側のスクリューシャフト21,22及び22,23を同一速度で同一方向に連動回転させることが出来るものであれば如何なる構造のものでも良いが、図示の実施例では、
図5及び
図6に示すように、片側の支持フレーム28,29に軸受け31により支承されて、定位置で自転のみ可能な中間伝動軸32と、両側のスクリューシャフト21,22及び22,23とを連結する、両端に自在継手を備えた自在継手軸33a,33bにより構成されている。スクリューシャフト21〜23は、例えば軸管34に、帯状板を螺旋状に巻回したスクリュー本体35を同心状に支持させ、軸管34の両端に、軸受け30に支承される支持用軸部34aが同心状に連設された、従来周知のものが利用出来る。
【0018】
これら各スクリューシャフト21〜23は、送り方向と送りピッチが同一のものであって、それぞれの長さは、前後一対の被動ローラー19,20間の距離よりも長い。そして、前後一対の被動ローラー19,20間の間隔Dは、各スクリューシャフト21〜23に共通の送りピッチの整数倍に設定されている。搬送用走行体2が上下各円弧部5A,5Bを通過するとき、後ろ側の被動ローラー20が上手側のスクリューシャフト21又は22から外れる前に、前側の被動ローラー19が下手側のスクリューシャフト22又は23に係合しているように、
図5及び
図6に示すように、前後一対の被動ローラー19,20間の間隔Dは、上下各円弧部5A,5Bの両側に位置する両スクリューシャフト21,22の端部間及び両スクリューシャフト22,23の端部間の直線距離よりも短くならないように構成されている。前側の被動ローラー19が下手側のスクリューシャフト22又は23の螺旋溝内に円滑に係合進入出来るように、各スクリューシャフト21〜23の螺旋溝の位相は完全に一致している。
【0019】
更に詳述すれば、
図1に示すように、側面視において上下各円弧部5A,5Bの円弧中心から上下各円弧部5A,5Bの両端を通る2本の仮想線間を扇形領域SAとすると、
図5及び
図6に示すように、上側水平経路部3から勾配経路部5へ、又は勾配経路部5から下側水平経路部4へ、搬送用走行体2が走行するとき、被動ローラー19,20は、各スクリューシャフト21〜23の軸心と平行な直線経路と、前記扇形領域SA内の円弧経路を移動することになる。ここで
図5及び
図6に示すように、各スクリューシャフト21〜23の前記円弧部5A,5B側の端部を、前記扇形領域SA内に向けて延長させると、前記扇形領域SA内を移動する被動ローラー19,20は、各スクリューシャフト21〜23の扇形領域SA内に入り込んでいる直線状部分に対し、斜め円弧形に移動することになるが、側面視において、被動ローラー19,20が各スクリューシャフト21〜23の軸心から離れていても、スクリューシャフトを軸心方向から見たときに、被動ローラー19,20が各スクリューシャフト21〜23のスクリュー本体35の螺旋溝部に所定値以上の深さで嵌合していれば、被動ローラー19,20は各スクリューシャフト21〜23から推力を問題無く受けることが出来る。
【0020】
従ってこの実施例では、
図5及び
図6に示すように、上記の条件を満足する範囲内で、各スクリューシャフト21〜23の円弧部5A,5B側の端部を延長させて扇形領域SA内に入り込ませることにより、各スクリューシャフト21〜23の円弧部5A,5B側の端部間の直線距離L1を、各スクリューシャフト21〜23の前記扇形領域SAと接する交点P間の直線距離L2よりも大幅に短くし、以て、勾配経路部5の上下各円弧部5A,5Bを搬送用走行体2が走行するとき、前後一対の被動ローラー19又は20が、スクリューシャフト21,22の何れか一方、又はスクリューシャフト22,23の何れか一方に係合して推力を受けることの出来る範囲内で、前後一対の被動ローラー19,20間の間隔Dを狭めている。換言すれば、前後一対の被動ローラー19,20間の間隔Dは、前記交点P間の直線距離L2よりも短いが、各スクリューシャフト21〜23の円弧部5A,5B側の端部間の直線距離L1より短くない長さとなっている。
【0021】
上記構成の搬送装置において、駆動用モーター26を稼働させて、互いに連動連結されている各スクリューシャフト21〜23を所定方向に所定速度で回転駆動させておく。而して、後述する適宜の走行駆動手段によって、上側水平経路部3の上側水平スクリューシャフト21に前側の被動ローラー19が係合し得る位置まで、搬送用走行体2が送り込まれると、当該上側水平スクリューシャフト21の回転により、前側の被動ローラー19が上側水平スクリューシャフト21によって引き込まれ、搬送用走行体2が前進走行する。この後、後ろ側の被動ローラー20も上側水平スクリューシャフト21に係合し、前後一対の被動ローラー19,20の内の少なくとも1つの被動ローラーが上側水平スクリューシャフト21から推力を受け、搬送用走行体2は前進走行を継続する。
【0022】
搬送用走行体2が勾配経路部5の上端円弧部5A内に進入すると、前側被動ローラー19は、上側水平スクリューシャフト21から前方に外れ、後ろ側の被動ローラー20が上側水平スクリューシャフト21から受ける推力により、搬送用走行体2は前進走行を継続する。この上端円弧部5Aでは、
図5にも示すように、前後一対のトロリー11,12が搬送用走行体2に対して水平支軸16の周りで傾動することにより、各トロリー11,12が、上端円弧部5Aの突曲したガイドレール1に沿った姿勢を保って当該ガイドレール1に沿って円滑に走行することが出来る。搬送用走行体2が上端円弧部5Aに沿った走行を継続することにより、
図5に示すように、後ろ側の被動ローラー20が、上端円弧部5Aの扇形領域SA内に直線状に入り込んでいる上側水平スクリューシャフト21の終端側領域内を、上端円弧部5Aと同心状に湾曲する円弧状に移動することになるが、この後ろ側の被動ローラー20が上側水平スクリューシャフト21の終端から外れるまで、先に説明した通り、当該後ろ側の被動ローラー20は上側水平スクリューシャフト21から確実に推力を受け、搬送用走行体2の走行は問題なく継続される。
【0023】
搬送用走行体2の走行が進んで、後ろ側の被動ローラー20が上側水平スクリューシャフト21の終端から外れるときには、既に前側の被動ローラー19が、次の傾斜スクリューシャフト22の始端部、即ち、上端円弧部5Aの扇形領域SA内に直線状に入り込んでいる傾斜スクリューシャフト22の始端側領域の始端部に係合していることになる。従って、搬送用走行体2は、傾斜スクリューシャフト22から前側の被動ローラー19に作用する推力により前進走行を継続する。このときも前側の被動ローラー19は、上端円弧部5Aの扇形領域SA内に直線状に入り込んでいる傾斜スクリューシャフト22の始端側領域内を、上端円弧部5Aと同心状に湾曲する円弧状に移動することになるが、先に説明した通り、当該前側の被動ローラー20は傾斜スクリューシャフト22から確実に推力を受け、搬送用走行体2の走行は問題なく継続される。
【0024】
上記のように搬送用走行体2は、上側水平経路部3から勾配経路部5の上端円弧部5Aを経由して当該勾配経路部5の傾斜直線部5Cへ、上側水平スクリューシャフト21と傾斜スクリューシャフト22、及びこれらに係合する前後一対の被動ローラー19,20によって、連続して確実に走行することが出来る。勾配経路部5の傾斜直線部5Cでは、搬送用走行体2は、重力により傾斜下方へ滑動しようとするが、傾斜スクリューシャフト22に係合する前後一対の被動ローラー19,20の内の少なくとも1つの被動ローラーが、傾斜スクリューシャフト22の送り速度を超えて搬送用走行体2が傾斜下方へ滑動するのを抑制するので、搬送用走行体2は、傾斜スクリューシャフト22の送り速度を保って、勾配経路部5の傾斜直線部5Cを傾斜下方へ走行することになる。勿論、重力で搬送用走行体2が傾斜下方へ滑動しない状況であれば、前後一対の被動ローラー19,20の内の少なくとも1つの被動ローラーが傾斜スクリューシャフト22から推力を受けることにより、搬送用走行体2は所定の速度で傾斜直線部5Cを傾斜下方へ走行することになる。
【0025】
勾配経路部5の傾斜直線部5Cを傾斜下方へ走行する搬送用走行体2が下端円弧部5Bに進入すると、前側被動ローラー19は、傾斜スクリューシャフト22から前方に外れ、後ろ側の被動ローラー20が傾斜水平スクリューシャフト22から受ける推力により、搬送用走行体2は前進走行を継続する。この下端円弧部5Bでは、
図6にも示すように、前後一対のトロリー11,12が搬送用走行体2に対して水平支軸16の周りで傾動することにより、各トロリー11,12が、下端円弧部5Bの凹曲したガイドレール1に沿った姿勢を保って当該ガイドレール1に沿って円滑に走行することが出来る。搬送用走行体2が下端円弧部5Bに沿った走行を継続することにより、
図6に示すように、後ろ側の被動ローラー20が、下端円弧部5Bの扇形領域SA内に直線状に入り込んでいる傾斜スクリューシャフト22の終端側領域内を、下端円弧部5Bと同心状に湾曲する円弧状に移動することになるが、この後ろ側の被動ローラー20が傾斜スクリューシャフト22の終端から外れるまで、先に説明した通り、当該後ろ側の被動ローラー20は傾斜スクリューシャフト22から確実に推力を受け、搬送用走行体2の走行は問題なく継続される。
【0026】
搬送用走行体2の走行が進んで、後ろ側の被動ローラー20が傾斜スクリューシャフト22の終端から外れるときには、既に前側の被動ローラー19が、次の下側水平スクリューシャフト23の始端部、即ち、下端円弧部5Bの扇形領域SA内に直線状に入り込んでいる下側水平スクリューシャフト23の始端側領域の始端部に係合していることになる。従って、搬送用走行体2は、下側水平スクリューシャフト23から前側の被動ローラー19に作用する推力により前進走行を継続する。このときも前側の被動ローラー19は、下端円弧部5Bの扇形領域SA内に直線状に入り込んでいる下側水平スクリューシャフト23の始端側領域内を、下端円弧部5Bと同心状に湾曲する円弧状に移動することになるが、先に説明した通り、当該前側の被動ローラー20は下側水平スクリューシャフト23から確実に推力を受け、搬送用走行体2の走行は問題なく継続される。
【0027】
上記の過程を経て、搬送用走行体2は上側水平経路部3から勾配経路部5を経由して下側水平経路部4へ連続的に一定速度で走行することになるが、上側水平経路部3の上側水平スクリューシャフト21が並設された領域までの搬送用走行体2の走行と、下側水平経路部4の下側水平スクリューシャフト23が並設された領域以降の搬送用走行体2の走行は、如何なる走行用駆動手段で実行させても良い。例えば、上側水平経路部3や下側水平経路部4の全域に、搬送用走行体2の前後一対の被動ローラー19,20が係合する、モーター駆動の水平スクリューシャフトを並設して成るスクリュー駆動方式や、この実施例に示す搬送用走行体2が備える摩擦駆動用のロードバー10の側面に圧接するモーター駆動の摩擦駆動輪を、例えばロードバー10の全長より長くない間隔で走行経路脇に配設する従来周知の摩擦駆動方式、或いはこの実施例に示す前側のトロリー11の下側に突設したドッグ11aに係合して搬送用走行体2を前進走行させるプッシャー付きコンベヤチエンを利用するチエン駆動方式などを採用することが出来る。
【0028】
次に
図7〜
図12に示す実施例について説明すると、この実施例に示す搬送用走行体36は、
図10〜
図12に示すように、H形鋼を水平に倒した断面形状の1本のガイドレール37上に支持されて走行するものであって、前後一対のトロリー38,39と、これら両トロリー38,39によって前後両端が支持された、前後走行方向に長い本体40を備え、この本体40上に、被搬送物支持部41が設けられている。前後一対のトロリー38,39は、ガイドレール37の上下両水平レール部37a,37bを左右両側から挟む左右一対の、垂直支軸の間輪に回転自在な位置決め用ローラー42を前後二組と、上側水平レール部37a上を転動する、左右水平支軸43の周りに回転自在な車輪44と、下側水平レール部37bの下側面に当接する前後一対の、左右水平支軸の周りに回転自在なバックアップローラー45を備えたものであって、車輪44は、平面視で4つの位置決め用ローラー42で囲まれた四角形領域の中央に位置し、前後一対のバックアップローラー45は、側面視において、下側の前後一対の位置決め用ローラー42と重なる位置に設けられている。従って、これら両トロリー38,39は、ガイドレール37に対して一定姿勢を保って移動自在に支持されている。
【0029】
前後一対のトロリー38,39には、車輪44を支承する左右水平支軸43の上側に、当該車輪44の左右両側位置に配置された左右一対の軸受け46を介して、当該左右水平支軸43の周りに前後揺動自在に支持された架台47,48が設けられ、これら前後一対の架台47,48上に、本体40の前後両端部が、それぞれ垂直支軸49の周りに水平に相対揺動自在に連結支持されている。従って、ガイドレール37が上下方向に湾曲する円弧経路部では、本体40に対して前後一対のトロリー38,39が、それぞれ車輪44を支承する左右水平支軸43の周りに揺動して、ガイドレール37に沿った姿勢を保って走行し、ガイドレール37が水平に湾曲する円弧経路部では、本体40に対して前後一対のトロリー38,39が、それぞれ垂直支軸49の周りに回転して、ガイドレール37に沿った姿勢を保って走行することが出来る。
【0030】
この実施例に示す搬送用走行体36には、前後一対のトロリー38,39がそれぞれ備える車輪44の内、片側のトロリー39が備える車輪44を、当該車輪44を支承する左右水平支軸43を介して回転駆動する駆動用モーターユニット50が設けられ、この駆動用モーターユニット50によりトロリー39の車輪44を回転駆動することにより、搬送用走行体36を自走させることが出来るように構成されている。更に、前後一対のトロリー38,39の車輪44を支承する左右水平支軸43は、駆動用モーターユニット50のある側とは反対側に、平面視でこの搬送用走行体36の片側に突出するように、片持ち状に長く延出され、これら前後一対の左右水平支軸43の先端に、当該左右水平支軸43の周りに回転自在に前記被動ローラー19,20が支持されている。
【0031】
上記構成の搬送用走行体36の走行経路中に設けられた勾配経路部5において、当該搬送用走行体36を、前後一対の被動ローラー19,20と、当該勾配経路部5に並設されたスクリューシャフトによって一定速度で連続走行させるための構成及び作用は、先の実施例において説明した構成及び作用と基本的に同一である。異なる点は、この実施例の勾配経路部5の傾斜直線部5Cの長さが長くなり且つ傾斜角度が大きくなっているため、勾配経路部5の傾斜直線部5Cには、互いに伝動手段51によって連動連結された2本の傾斜スクリューシャフト22A,22Bが並設されている点である。又、上側水平経路部3に並設された上側水平スクリューシャフト21と、上側の傾斜スクリューシャフト22Aとを連動連結する伝動手段52と、下側の傾斜スクリューシャフト22Bと下側水平スクリューシャフト23とを連動連結する伝動手段53、そして傾斜スクリューシャフト22A,22Bを互いに連動連結する前記伝動手段51は、1本の中間伝動軸54の両端を、両側の互いに連動連結するスクリューシャフト21〜23の支持用軸部34aに自在継手55a,55bを介して連結した構成になっている。勿論、伝動手段52,53には、先の実施例で示した伝動手段24,25と同じものを使用しても良い。
【0032】
この実施例においても、勾配経路部5の上下両円弧部5A,5Bでは、その両側のスクリューシャフト21〜23の端部が扇形領域SA内に入り込む構成になっているが、この実施例での勾配経路部5の傾斜直線部5Cの傾斜角度が大きいので、円弧状に移動する被動ローラー19,20が、スクリューシャフト21〜23の螺旋溝内に所定深さ嵌合出来る領域は短くなり、従って、扇形領域SA内に入り込む各スクリューシャフト21〜23の端部領域の長さを短くしているが、各円弧部5A,5Bの両側のスクリューシャフト21〜23の端部を、扇形領域SA内に向けて延長させて当該扇形領域SA内に所要長さ入り込ませていることにより、各円弧部5A,5Bの両側のスクリューシャフト21〜23と扇形領域SAとの交点P間の直線距離L2よりも被動ローラー19,20間の間隔Dを狭めることが出来る。
【0033】
この実施例によれば、上側水平経路部3の上側水平スクリューシャフト21が並設された領域より上手と、下側水平経路部4の下側水平スクリューシャフト23が並設された領域より下手では、搬送用走行体36は、駆動用モーターユニット50の稼働により自走させることになり、上側水平スクリューシャフト21が並設された領域から下側水平スクリューシャフト23が並設された領域までは、駆動用モーターユニット50を停止させて、当該駆動用モーターユニット50で駆動されるべき車輪44を回転自由の状態に切り換え、先の実施例と同様に、各スクリューシャフト21〜23を回転駆動させて、搬送用走行体36の被動ローラー19,20を介して各スクリューシャフト21〜23から伝えられる推力により、搬送用走行体36を一定速度で連続的に走行させることになる。このとき被動ローラー19,20が、各スクリューシャフト21〜23の扇形領域SA内に入り込む端部領域に対しても係合して、推力を搬送用走行体36に伝える作用は、先の実施例において説明した通りである。
【0034】
尚、以上の実施例では、搬送用走行体2,36を、勾配経路部5の上側水平経路部3から下側水平経路部4へ走行駆動させるように説明したが、各スクリューシャフト21〜23の回転方向を変えて、勾配経路部5の下側水平経路部4から上側水平経路部3へ搬送用走行体2,36を走行駆動させることも出来る。更に、搬送用走行体としては、上側に被搬送物を積載するタイプのものに限らず、被搬送物を吊り下げて搬送するタイプのものであっても良い。又、搬送用走行体の走行経路に対するスクリューシャフト21〜23の位置は、横側方位置に限らず、被搬送物を上側に積載するタイプの搬送用走行体であれば、この搬送用走行体の走行経路の下側にスクリューシャフト21〜23を並設し、被搬送物を下側に吊り下げるタイプの搬送用走行体であれば、この搬送用走行体の走行経路の上側にスクリューシャフト21〜23を並設することも可能である。勿論、このように搬送用走行体の走行経路の下側や上側にスクリューシャフト21〜23を並設する場合でも、被動ローラー19,20は、スクリューシャフト21〜23に対して上下方向に係合させる構成に限らず、上記実施例と同様に、被動ローラー19,20をスクリューシャフト1〜23に対して左右横方向に係合させることも可能である。