(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御回路は、前記トランスが磁気飽和しない不飽和領域の範囲内で動作するように、パルス電圧のパルス幅を制限することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
前記制御回路は、前記電流検出回路の検出結果から電力変換装置の出力電流を求め、求めた出力電流に基づいてパルス電圧のパルス幅を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本実施形態では、本発明に係る電力変換装置を、車両に搭載されたバッテリから負荷に電力を供給する電力変換装置に適用した例を示す。
【0012】
(第1実施形態)
まず、
図1を参照して第1実施形態の電力変換装置の構成について説明する。
【0013】
図1に示す電力変換装置1は、バッテリB1から供給される直流電圧を所定の直流電圧に変換して負荷S1に供給する装置である。いわゆるプッシュプル方式の電力変換装置である。ここで、負荷S1は、所定の直流電圧で動作する装置である。電力変換装置1は、平滑用コンデンサ10と、電圧印加回路11と、トランス12と、整流回路13と、平滑回路14と、電流センサ15(電流検出回路)と、制御回路16とを備えている。
【0014】
平滑用コンデンサ10は、バッテリB1の出力する直流電圧を平滑化する素子である。平滑用コンデンサ10の一端はバッテリB1の正極端に、他端はバッテリB1の負極端にそれぞれ接続されている。
【0015】
電圧印加回路11は、トランス12にパルス電圧を印加する回路である。電圧印加回路11は、IGBT110、111を備えている。
【0016】
IGBT110、111は、制御回路16によって制御され、平滑用コンデンサ10によって平滑化された直流電圧をパルス電圧に変換してトランス12に印加する素子である。IGBT110、111のコレクタはトランス12に、エミッタは平滑用コンデンサ10の他端に、ゲートは制御回路16にそれぞれ接続されている。
【0017】
トランス12は、電圧印加回路11によって印加されたパルス電圧を、巻数比に応じた所定の交流電圧に変換して整流回路13に供給する素子である。トランス12は、1次巻線120、121と、2次巻線122、123とを有している。1次巻線120、121は直列接続されている。1次巻線120、121の直列接続点は、平滑用コンデンサ10の一端に接続されている。1次巻線120の一端はIGBT110のコレクタに、1次巻線121の一端はIGBT111のコレクタにそれぞれ接続されている。2次巻線122、123は直列接続されている。2次巻線122、123の直列接続点、2次巻線122の一端及び2次巻線123の一端は、整流回路13にそれぞれ接続されている。
【0018】
整流回路13は、トランス12から供給される交流電圧を整流し、直流電圧に変換して平滑回路14に供給する回路である。整流回路13は、ダイオード130、131を備えている。
【0019】
ダイオード130、131は、トランス12から供給される交流電圧を整流し、直流電圧に変換する素子である。ダイオード130のカソードは2次巻線122の一端に、アノードは平滑回路14にそれぞれ接続されている。ダイオード131のカソードは2次巻線123の一端に、アノードは平滑回路14にそれぞれ接続されている。また、2次巻線122、123の直列接続点は、配線を介して平滑回路14に接続されている。
【0020】
平滑回路14は、整流回路13から供給される直流電圧を平滑化する回路である。平滑回路14は、リアクトル140と、コンデンサ141とを備えている。リアクトル140の一端は、ダイオード130、131のアノードに、他端は負荷S1の負極端にそれぞれ接続されている。コンデンサ141の一端は整流回路13の配線を介して2次巻線122、123の直列接続点に接続されるとともに、負荷S1の正極端に接続され、他端はリアクトル140の他端に接続されている。
【0021】
電流センサ15は、1次巻線120、121に流れる電流を検出し、検出結果を出力する素子である。電流センサ15は、IGBT110、111のエミッタと平滑用コンデンサ10の他端を接続する配線に設けられている。また、検出結果を出力する出力端は、制御回路16に接続されている。
【0022】
制御回路16は、電流センサ15の検出結果から電力変換装置1の出力電流を求め、求めた出力電流に基づいて、1次巻線120、121が一方向及びその逆方向に交互に磁束を発生するように、電圧印加回路11の出力するパルス電圧を制御する回路である。制御回路16は、電流センサ15の検出結果に基づいて、正の磁束(一方向の磁束)を発生しているときに1次巻線120に所定時間流れる電流と、負の磁束(逆方向の磁束)を発生しているときに1次巻線121に所定時間流れる電流の大きさが等しくなるように、電圧印加回路11の出力するパルス電圧のパルス幅を制御する。また、トランス12が磁気飽和しない不飽和領域の範囲内で動作するように、具体的には、トランス12がET積の範囲内で動作するように、パルス電圧のパルス幅を制限する。そして、負荷電流変動時において、応答性を上げる必要がある場合には、一時的にパルス電圧のパルス幅を制限している間、パルス電圧の周波数を上げる。制御回路16は、マイクロコンピュータを有し、電流情報出力部160と、偏差演算部161と、PI演算部162と、加算部163と、パルス幅制限部164と、偏差演算部165と、PI演算部166と、減算部167と、加算部168と、駆動回路169a、169bとを備えている。電流情報出力部160、偏差演算部161、PI演算部162、加算部163、パルス幅制限部164、偏差演算部165、PI演算部166、減算部167及び加算部168は、マイクロコンピュータ及びソフトウェアによって構成されている。
【0023】
電流情報出力部160は、電流センサ15の検出結果から電力変換装置1の出力電流を求め、出力電流Ioutとして出力するブロックである。また、1次巻線120に流れる電流の大きさIsw1と、1次巻線121に流れる電流の大きさIsw2を求め、これらの差ΔIsw(=Isw1−Isw2)を演算して出力するブロックである。
【0024】
偏差演算部161は、外部から入力される電力変換装置1の出力電流指令Iout*と、電流情報出力部160の出力する出力電流Ioutの偏差を演算して出力するブロックである。
【0025】
PI演算部162は、偏差演算部161の出力を比例、積分演算して出力するブロックである。
【0026】
加算部163は、PI演算部162の出力に、電力変換装置1の入力電圧Vinに対する出力電圧Voutの比Vout/Vinをフィードフォワード項として加算し、1次巻線120、121に印加するパルス電圧のパルス幅として出力するブロックである。ここで、入力電圧VinはバッテリB1から供給される電圧であり、出力電圧Voutは負荷S1に供給される電圧である。
【0027】
パルス幅制限部164は、加算部163の出力がパルス幅制限値以下のときには加算部163の出力を、加算部163の出力がパルス幅制限値より大きいときにはパルス幅制限値を、1次巻線120、121に印加するパルス電圧のパルス幅として出力するブロックである。ここで、パルス幅制限値は、トランス12のET積によって決まる、トランス12が不飽和領域の範囲内で動作する場合に許容される最大パルス幅に設定されている。
【0028】
偏差演算部165は、1次巻線120、121に流れる電流の大きさの差に対する指令ΔIsw*と、電流センサ15の検出結果から求めた1次巻線120、121に流れる電流の大きさIsw1、Isw2の差ΔIsw(=Isw1−Isw2)の偏差を演算し出力するブロックである。ここで、1次巻線120、121に流れる電流の大きさの差に対する指令ΔIsw*は、0に設定されている。
【0029】
PI演算部166は、偏差演算部165の出力を比例、積分演算して出力するブロックである。
【0030】
減算部167は、パルス幅制限部164の出力から、PI演算部166の出力を減算し、1次巻線120に印加するパルス電圧のパルス幅として出力するブロックである。具体的には、IGBT110をオンするための駆動信号のパルス幅として出力するブロックである。
【0031】
加算部168は、パルス幅制限部164の出力に、PI演算部166の出力を加算し、1次巻線121に印加するパルス電圧のパルス幅として出力するブロックである。具体的には、IGBT111をオンするための駆動信号のパルス幅として出力するブロックである。
【0032】
駆動回路169aは、減算部167の出力に基づいてIGBT110をオン、オフする回路である。駆動回路169aは、IGBT110のゲートに接続されている。
【0033】
駆動回路169bは、加算部168の出力に基づいてIGBT111をオン、オフする回路である。駆動回路169bは、IGBT111のゲートに接続されている。
【0034】
次に、
図1を参照して第1実施形態の電力変換装置の動作について説明する。
【0035】
図1に示す電流センサ15は、トランスの1次巻線120、121に流れる電流を検出し、検出結果を出力する。ここで、1次巻線に流れる電流は、励磁電流と負荷電流の和である。負荷電流は、2次巻線に流れる電流に対応した電流である。つまり、電力変換装置の出力電流に対応した電流である。
【0036】
電流情報出力部160は、IGBT110がオンしているときの所定のタイミングにおける電流センサ15の検出結果と、トランス12の巻数比から、2次巻線122に流れる電流を求めるとともに、IGBT111がオンしているときの所定のタイミングにおける電流センサ15の検出結果と、トランス12の巻数比から、2次巻線123に流れる電流を求める。つまり、電力変換装置1の出力電流を求める。そして、求めた出力電流を、電力変換装置1の出力電流Ioutとして出力する。また、IGBT110がオンしているときの所定のタイミングにおける電流センサ15の検出結果から、1次巻線120に流れる電流の大きさIsw1を求めるとともに、IGBT111がオンしているときの所定のタイミングにおける電流センサ15の検出結果から、1次巻線121に流れる電流の大きさIsw2を求める。そして、これらの差ΔIswを演算し出力する。
【0037】
偏差演算部161は、外部から入力される出力電流指令Iout*と、出力電流Ioutの偏差を演算して出力する。PI演算部162は、偏差演算部161の出力を比例、積分演算して出力する。
【0038】
加算部163は、PI演算部162の出力に、フィードフォワード項Vout/Vinを加算し、1次巻線120、121に印加するパルス電圧のパルス幅として出力する。パルス幅制限部164は、加算部163の出力がパルス幅制限値以下のときには加算部163の出力を、加算部163の出力がパルス幅制限値より大きいときにはパルス幅制限値を、1次巻線120、121に印加するパルス電圧のパルス幅として出力する。
【0039】
一方、偏差演算部165は、1次巻線120、121に流れる電流の大きさの差に対する指令ΔIsw*と、1次巻線120、121に流れる電流の大きさの差ΔIswの偏差を演算して出力する。PI演算部166は、偏差演算部165の出力を比例、積分演算して出力する。
【0040】
減算部167は、パルス幅制限部164の出力から、PI演算部166の出力を減算し、IGBT110をオンするための駆動信号のパルス幅として出力する。
【0041】
加算部168は、パルス幅制限部164の出力に、PI演算部166の出力を加算し、IGBT111をオンするための駆動信号のパルス幅として出力する。
【0042】
駆動回路169aは、減算部167の出力に基づいてIGBT110をオン、オフする。駆動回路169bは、加算部168の出力に基づいてIGBT111をオン、オフする。
【0043】
平滑用コンデンサ10は、バッテリB1の出力する直流電圧を平滑化する。
【0044】
IGBT110、111は、駆動回路169a、169bによってオン、オフされる。IGBT110がオンし、IGBT111がオフすることで、1次巻線120にパルス電圧が印加される。その結果、IGBT110、111の直列接続点からIGBT110の一端に向かって電流が流れ、1次巻線120は正の磁束を発生する。一方、IGBT110がオフし、IGBT111がオンすることで、1次巻線121にパルス電圧が印加される。その結果、IGBT110、111の直列接続点からIGBT111の一端に向かって電流が流れ、1次巻線121は負の磁束を発生する。IGBT110、111がオン、オフすることで、1次巻線120、121は正負交互に磁束を発生する。
【0045】
2次巻線122、123は、電磁誘導によって、巻数比に応じた所定の交流電圧を発生する。整流回路13は、ダイオード130、131によって、2次巻線122、123の発生する交流電圧を整流し、直流電圧に変換して平滑回路14に供給する。平滑回路14は、整流回路13から供給される直流電圧を平滑化して負荷S1に供給する。
【0046】
これにより、バッテリB1から供給される直流電圧が、所定の直流電圧に変換され負荷S1に供給される。
【0047】
次に、
図1及び
図2を参照して第1実施形態の電力変換装置の動作をより詳細に説明する。
【0048】
図2に示すように、IGBT110がオンすることで1次巻線120に電流が流れ、トランス12に正の磁束が発生する。1次巻線120に流れる電流は、時間の経過とともに増加し、IGBT110がオフする直前に最も大きくなる。また、IGBT111がオンすることで1次巻線121に電流が流れ、トランス12に負の磁束が発生する。1次巻線121に流れる電流は、時間の経過とともに増加し、IGBT111がオフする直前に最も大きくなる。
【0049】
1次巻線120、121に流れる電流は、励磁電流と負荷電流の和である。そのため、励磁電流が0になるタイミングにおける1次巻線120、121に流れる電流が負荷電流になる。つまり、電力変換装置1の出力電流に対応した電流になる。また、IGBT110、111がオフ直前に励磁電流の大きさが最も大きくなる。
【0050】
図1に示す電力変換装置1が動作を開始すると、制御回路16は、
図2に示すように、1次巻線120に印加するパルス電圧のパルス幅が想定されるパルス幅の1/2(ただし、パルス幅制限値以上の場合はパルス幅制限値の1/2)となるように、IGBT110をオンする。これにより、1次巻線120に所定時間電流が流れ、トランス12の励磁電流が0から増加して正の所定値になる。次に、IGBT111を想定されるパルス幅でオンする。これにより、1次巻線121に所定時間電流が流れ、トランス12の励磁電流が減少して負の所定値になる。動作開始時のパルス幅を想定されるパルス幅の1/2にすることで、トランス12の励磁電流を0基準で動作させることが可能になり、ET積を過度に大きくする必要がなくなる。
【0051】
図1に示す電流情報出力部160は、励磁電流が0になるタイミングである、IGBT111のオン期間中の中央点における電流センサ15の検出結果と、トランス12の巻数比から、電力変換装置1の出力電流Ioutを求める。PI演算部162は、出力電流指令Iout*と出力電流Ioutの偏差に応じたパルス幅を出力する。加算部163は、PI演算部162の出力するパルス幅にフィードフォワード項Vout/Vinを加算し、パルス幅として出力する。加算部163の出力するパルス幅がパルス幅制限値以下である場合、パルス幅制限部164は、加算部163の出力するパルス幅を、1次巻線121に印加するパルス電圧のパルス幅として出力する。
【0052】
同様に、
図1に示す電流情報出力部160は、励磁電流が0になるタイミングである、IGBT110のオン期間中の中央点における電流センサ15の検出結果と、トランス12の巻数比から、電力変換装置1の出力電流Ioutを求める。PI演算部162は、出力電流指令Iout*と出力電流Ioutの偏差に応じたパルス幅を出力する。加算部163は、PI演算部162の出力するパルス幅にフィードフォワード項Vout/Vinを加算し、パルス幅として出力する。加算部163の出力するパルス幅がパルス幅制限値以下である場合、パルス幅制限部164は、加算部163の出力するパルス幅を、1次巻線120に印加するパルス電圧のパルス幅として出力する。
【0053】
以降、同様の制御が周期T1毎に繰り返され、出力電流Ioutは出力電流指令Iout*に漸近する。
【0054】
次に、偏磁抑制について説明する。電流情報出力部160は、IGBT110がオフする直前のタイミング(N)における電流センサ15の検出結果から、1次巻線120に流れる電流の大きさIsw1(N)を検出し保持する。また、IGBT111がオフする直前のタイミング(N)における電流センサ15の検出結果から、1次巻線121に流れる電流の大きさIsw2(N)を検出し保持する。電流情報出力部160は、Isw1(N)からIsw2(N)を減算することで1次巻線120、121に流れる電流の差ΔIsw(N)を求める。1次巻線120、121の漏れインダクタや駆動回路169a、169bの性能差が原因で、1次巻線120、121に流れる電流の差ΔIswは、0でない所定値になる。その結果、PI演算部166は、0でない所定値を出力する。
【0055】
1次巻線120に流れる電流の大きさIsw1(N)が1次巻線121に流れる電流の大きさIsw2(N)よりも大きい場合、ΔIsw(N)は正の値になり、PI演算部166の出力は負の値になる。加算部167でパルス幅制限部164の出力とPI演算部166の出力が加算され、駆動回路169aに入力されるパルス幅は、パルス幅制限部164の出力パルス幅よりも小さくなる。また、加算部168でパルス幅制限部164の出力からPI演算部166の出力が減算され、駆動回路169aに入力されるパルス幅は、パルス幅制限部164の出力パルス幅よりも大きくなる。これにより、次のタイミング(N+1)のオンにおいて1次巻線120に流れる電流の大きさIsw1(N+1)は小さくなり、1次巻線121に流れる電流の大きさIsw2(N+1)は大きくなる。その結果、1次巻線120、121に流れる電流の差ΔIswは是正され、励磁電流の偏りがなくなる。
【0056】
以降、同様の制御が繰り返され、その結果、正の磁束を発生する際の励磁電流と、負の磁束を発生する際の励磁電流の大きさを等しくすることができる。つまり、正の磁束と負の磁束の大きさを等しくすることができる。従って、トランスの偏磁を抑えることができる。
【0057】
ところで、出力電流指令Iout*が急激に増加した場合、出力電流指令Iout*と出力電流Ioutの偏差も急激に増加する。そのため、加算部163の出力するパルス幅が、パルス幅制限値より大きくなる。その結果、パルス幅制限部164は、パルス幅制限値を、1次巻線120に印加するパルス電圧のパルス幅として出力する。パルス幅制限値は、トランス12のET積によって決まる、トランス12が不飽和領域の範囲内で動作する際に許容される最大パルス幅に設定されている。
【0058】
PI演算部166は、1次巻線120、121に流れる電流の大きさの差に対する指令ΔIsw*と、1次巻線120、121に流れる電流の大きさの差ΔIswの偏差を比例、積分演算して出力する。
【0059】
駆動回路169aは、
図2に示すように、1次巻線120に印加するパルス電圧のパルス幅が、パルス幅制限値からPI演算部166の出力を減算したものとなるように、IGBT110をオンする。
【0060】
その後、
図1に示す電流情報出力部160は、励磁電流が0になるタイミングにおける電流センサ15の検出結果と、トランス12の巻数比から、電力変換装置1の出力電流Ioutを求める。出力電流Ioutは出力電流指令Iout*に追従しておらず、加算部163の出力するパルス幅は、パルス幅制限部164におけるパルス幅制限値より大きくなる。その結果、パルス幅制限部164は、パルス幅制限値を、1次巻線120に印加するパルス電圧のパルス幅として出力する。
【0061】
PI演算部166は、1次巻線120、121に流れる電流の大きさの差に対する指令ΔIsw*と、1次巻線120、121に流れる電流の大きさの差ΔIswの偏差を比例、積分演算して出力する。
【0062】
駆動回路169bは、
図2に示すように、1次巻線121に印加するパルス電圧のパルス幅が、パルス幅制限値にPI演算部166の出力を加算したものとなるように、IGBT111をオンする。その結果、出力電流指令Iout*が急激に増加した場合であっても、トランス12の磁気飽和を防止することができる。また、出力電流の応答性が必要な場合は、パルス電圧の周波数を上げることで、一時的なスイッチング損失の増加のみで出力電流の応答性の低下を極力抑えることができる。
【0063】
なお、
図2では、負荷変動後、正の磁束を発生する際の励磁電流の大きさが、負の磁束を発生する際の励磁電流の大きさより大きくなっているが、時間経過ともに、正の磁束を発生する際の励磁電流と、負の磁束を発生する際の励磁電流の大きさは等しくなる。
【0064】
次に、第1実施形態の電力変換装置の効果について説明する。
【0065】
1次巻線に流れる電流は、励磁電流と負荷電流の和である。負荷電流は、2次巻線に流れる電流に対応した電流である。つまり、電力変換装置1の出力電流に対応した電流である。電力変換装置1の出力電流が一定になるように、電力変換装置1が制御されている場合、1次巻線の負荷電流の大きさも一定になる。
【0066】
第1実施形態によれば、制御回路16は、電流センサ15の検出結果に基づいて、正の磁束を発生しているときに1次巻線120に所定時間流れる電流と、負の磁束を発生しているときに1次巻線121に所定時間流れる電流の大きさが等しくなるように、電圧印加回路11の出力するパルス電圧のパルス幅を制御する。そのため、
図2及び
図3に示すように、正の磁束を発生する際の励磁電流と、負の磁束を発生する際の励磁電流の大きさを等しくすることができる。つまり、正の磁束と負の磁束の大きさを等しくすることができる。
【0067】
一方、正の磁束を発生しているときに1次巻線120に流れる電流と、負の磁束を発生しているときに1次巻線121に流れる電流の大きさが等しくなるようなパルス幅の制御をしていない場合、
図4に示すように、正の磁束を発生する際の励磁電流の大きさが、負の磁束を発生する際の励磁電流の大きさより大きくなってしまう。つまり、正の磁束と負の磁束の大きさを等しくすることができない。
【0068】
従って、電力変換装置1は、トランス12の磁束密度を直接検出することなく、偏磁を確実に抑えることができる。
【0069】
第1実施形態によれば、制御回路16は、トランス12が磁気飽和しない不飽和領域の範囲内で動作するように、具体的には、トランス12がET積の範囲内で動作するように、パルス電圧のパルス幅を制限する。そのため、トランス12の磁気飽和を防止することができる。
【0070】
制御回路16がパルス幅を制限すると、出力電流の応答性が低下してしまう。しかし、第1実施形態によれば、出力電流の応答性が必要な場合は、周期T1を短くしてパルス電圧の周波数を上げることで、一時的なスイッチング損失の増加のみで出力電流の応答性の低下を極力抑えることができる。
【0071】
第1実施形態によれば、制御回路16は、電流センサ15の検出結果から電力変換装置1の出力電流を求め、求めた出力電流に基づいて電圧印加回路11の出力するパルス電圧を制御する。そのため、出力電流を検出するための回路を別途設ける必要がない。従って、電力変換装置1を小型化するとともに、電力変換装置1のコストを抑えることができる。
【0072】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の電力変換装置について説明する。第2実施形態の電力変換装置は、第1実施形態の電力変換装置に対して、トランスの構成を変更するとともに、それに伴って電圧印加回路及び整流回路の構成を変更したものである。
【0073】
まず、
図5を参照して第2実施形態の電力変換装置の構成について説明する。
【0074】
図5に示す電力変換装置2は、バッテリB2から供給される直流電圧を所定の直流電圧に変換して負荷S2に供給する装置である。いわゆるフルブリッジ方式の電力変換装置である。電力変換装置2は、平滑用コンデンサ20と、電圧印加回路21と、トランス22と、整流回路23と、平滑回路24と、電流センサ25(電流検出回路)と、制御回路26とを備えている。
【0075】
平滑用コンデンサ20の一端はバッテリB2の正極端に、他端はバッテリB2の負極端にそれぞれ接続されている。
【0076】
電圧印加回路21は、IGBT210〜213を備えている。IGBT210、211及びIGBT212、213はそれぞれ直列接続されている。具体的には、IGBT210のエミッタがIGBT211のコレクタに、IGBT212のエミッタがIGBT213のコレクタにそれぞれ接続されている。直列接続されたIGBT210、211及び直列接続されたIGBT212、213は並列接続されている。具体的には、IGBT210のコレクタとIGBT212のコレクタが、IGBT211のエミッタとIGBT213のエミッタがそれぞれ共通接続されている。共通接続されたIGBT210、212のコレクタは平滑用コンデンサ20の一端に、共通接続されたIGBT211、213のエミッタは平滑用コンデンサ20の他端にそれぞれ接続されている。また、IGBT210、211の直列接続点及びIGBT212、213の直列接続点は、トランス22にそれぞれ接続されている。さらに、IGBT210〜213のゲートは、制御回路26にそれぞれ接続されている。
【0077】
トランス22は、1次巻線220と、2次巻線221とを有している。1次巻線220の一端はIGBT210、211の直列接続点に、他端はIGBT212、213の直列接続点にそれぞれ接続されている。2次巻線221の一端及び他端は、整流回路23に接続されている。
【0078】
整流回路23は、ダイオード230〜233を備えている。ダイオード230、231及びダイオード232、233はそれぞれ直列接続されている。具体的には、ダイオード230のアノードがダイオード231のカソードに、ダイオード232のアノードがダイオード233のカソードにそれぞれ接続されている。直接接続されたダイオード230、231及び直接接続されたダイオード232、233は並列接続されている。具体的には、ダイオード230のカソードとダイオード232のカソードが、ダイオード231のアノードとダイオード233のアノードがそれぞれ共通接続されている。ダイオード230、231の直列接続点は2次巻線221の一端に、ダイオード232、233の直接接続点は2次巻線221の他端にそれぞれ接続されている。また、共通接続されたダイオード230、232のカソード及び共通接続されたダイオード231、233のアノードは、平滑回路24にそれぞれ接続されている。
【0079】
平滑回路24は、リアクトル240と、コンデンサ241とを備えている。リアクトル240の一端は、共通接続されたダイオード230、232のカソードに、他端は負荷S2の正極端にそれぞれ接続されている。コンデンサ241の一端はリアクトル240の他端に接続され、他端は共通接続されたダイオード231、233のアノードに接続されるとともに、負荷S2の負極端にそれぞれ接続されている。
【0080】
電流センサ25は、IGBT211、213のエミッタと平滑用コンデンサ20の他端を接続する配線に設けられている。また、検出結果を出力する出力端は、制御回路26に接続されている。
【0081】
制御回路26は、電流センサ25の検出結果から電力変換装置2の出力電流を求め、求めた出力電流に基づいて、1次巻線220が一方向及び逆方向に交互に磁束を発生するように、電圧印加回路21の出力するパルス電圧を制御する回路である。制御回路26は、電流センサ25の検出結果に基づいて、正の磁束(一方向の磁束)を発生しているときに1次巻線220に所定時間流れる電流と、負の磁束(逆方向の磁束)を発生しているときに1次巻線220に所定時間流れる電流の大きさが等しくなるように、電圧印加回路21の出力するパルス電圧のパルス幅を制御する。また、トランス22が磁気飽和しない不飽和領域の範囲内で動作するように、具体的には、トランス22がET積の範囲内で動作するように、パルス電圧のパルス幅を制限する。そして、負荷電流変動時において、応答性を上げる必要がある場合には、一時的にパルス電圧のパルス幅を制限している間、パルス電圧の周波数を上げる。
【0082】
次に、
図5を参照して第2実施形態の電力変換装置の動作について説明する。電力変換装置2は、周知のフルブリッジ方式の電力変換装置である。そのため、基本的な動作の説明は省略し、本発明の要点に関連する動作についてする。
【0083】
制御回路26は、正の磁束を発生しているときに1次巻線220に所定時間流れる電流と、負の磁束を発生しているときに1次巻線220に所定時間流れる電流の大きさが等しくなるように、電圧印加回路21の出力するパルス電圧のパルス幅を制御する。これにより、正の磁束を発生する際の励磁電流と、負の磁束を発生する際の励磁電流の大きさを等しくすることができる。つまり、正の磁束と負の磁束の大きさを等しくすることができる。従って、トランスの偏磁を抑えることができる。
【0084】
また、制御回路26は、トランス22が磁気飽和しない不飽和領域の範囲内で動作するように、具体的には、トランス22がET積の範囲内で動作するように、パルス電圧のパルス幅を制限する。これにより、動作開始時に出力電流指令Iout*が大きい場合や、出力電流指令Iout*が急激に増加した場合であっても、トランス22の磁気飽和を防止することができる。また、パルス幅を制限したことによって出力電流の応答性が低下してしまうが、パルス電圧の周波数を上げることで、出力電流の応答性の低下を極力抑えることができる。
【0085】
次に、第2実施形態の電力変換装置の効果について説明する。
【0086】
第2実施形態によれば、フルブリッジ方式の電力変換装置であっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0087】
なお、第1及び第2実施形態では、制御回路が、正の磁束を発生しているときに1次巻線に流れる電流と、負の磁束を発生しているときに1次巻線に流れる電流の大きさが等しくなるように、電圧印加回路の出力するパルス電圧のパルス幅を制御する例を挙げているが、これに限られるものではない。1次巻線に流れる電流から励磁電流を求め、正の磁束を発生しているときに1次巻線に流れる電流の励磁電流成分と、負の磁束を発生しているときに1次巻線に流れる電流の励磁電流成分の大きさが等しくなるように、電圧印加回路の出力するパルス電圧のパルス幅を制御してもよい。