(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443679
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】排ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/64 20060101AFI20181217BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20181217BHJP
B01D 53/70 20060101ALI20181217BHJP
B01D 53/72 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
B01D53/64 100
B01D53/82ZAB
B01D53/70
B01D53/72
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-66525(P2015-66525)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-185510(P2016-185510A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2017年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】平山 敦
(72)【発明者】
【氏名】長尾 厚志
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇
【審査官】
佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−174360(JP,A)
【文献】
特開昭55−051422(JP,A)
【文献】
特開2010−214280(JP,A)
【文献】
特開2008−116280(JP,A)
【文献】
特開昭57−030531(JP,A)
【文献】
特開昭57−030532(JP,A)
【文献】
特開2000−157826(JP,A)
【文献】
特開平07−204439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34−53/85
B01D 53/02−53/12
B01D 53/14−53/18
B01J 20/00−20/28
B01J 20/30−20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオキシン類、クロロベンゼン類、クロロフェノール類、多環芳香族炭化水素類及び水銀を含む排ガスを、活性炭層を内蔵する吸着塔に流通して処理する排ガス処理方法であって、
添着物のない通常活性炭層で排ガスからダイオキシン類、クロロベンゼン類、クロロフェノール類、多環芳香族炭化水素類及び一部の水銀を吸着除去する通常活性炭処理工程と、通常活性炭処理工程から排ガスを受け添着物が添着された添着活性炭層で通常活性炭処理工程で吸着除去しきれず残留する水銀を吸着除去する添着活性炭処理工程とを有し、
添着活性炭が、鉄、ニッケル、銅、亜鉛のうちいずれかを添着した活性炭、鉄、ニッケル、銅、亜鉛のうちいずれかの化合物を添着した活性炭、ハロゲン単体を除くハロゲン化合物を添着した活性炭及び硫黄を添着した活性炭のうちのいずれかであることを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項2】
通常活性炭層と添着活性炭層は、互いに密着して配設されていることとする請求項1に記載の排ガス処理方法。
【請求項3】
通常活性炭層と添着活性炭層は、互いに分離して配設されており、両者間に中間空間を形成していることとする請求項1に記載の排ガス処理方法。
【請求項4】
ダイオキシン類、クロロベンゼン類、クロロフェノール類、多環芳香族炭化水素類及び水銀を含む排ガスを、活性炭層を内蔵する吸着塔に流通して処理する排ガス処理方法であって、
吸着塔は、上流側塔と下流側塔とを連通して形成され、上流側塔に配設された添着物のない通常活性炭層で排ガスからダイオキシン類、クロロベンゼン類、クロロフェノール類、多環芳香族炭化水素類及び一部の水銀を吸着除去する通常活性炭処理工程と、下流側塔に配設された添着物が添着された添着活性炭層で通常活性炭処理工程から排ガスを受け通常活性炭処理工程で吸着除去しきれず残留する水銀を吸着除去する添着活性炭処理工程とを有し、
添着活性炭が、鉄、ニッケル、銅、亜鉛のうちいずれかを添着した活性炭、鉄、ニッケル、銅、亜鉛のうちいずれかの化合物を添着した活性炭、ハロゲン単体を除くハロゲン化合物を添着した活性炭及び硫黄を添着した活性炭のうちのいずれかであることを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項5】
通常活性炭層と添着活性炭層の少なくとも一方は、塔内に対し装入及び取出し可能なカートリッジを形成していることとする請求項1ないし請求項4のうちの一つに記載の排ガス処理方法。
【請求項6】
通常活性炭層と添着活性炭層の少なくとも一方は、塔内に対し装入及び取出し可能なカートリッジを形成しており、カートリッジは、通常活性炭層と添着活性炭層のいずれかが単独で単層をなす状態で、複数の単層が間隔をもって平行に配置され、隣接する単層同士が塔内空間を上流側空間と下流側空間とに区分するように接続されていることとする請求項1、請求項3及び請求項4のうちの一つに記載の排ガス処理方法。
【請求項7】
活性炭層は、塔内に対し装入及び取出し可能なカートリッジを形成しており、カートリッジは、通常活性炭層と添着活性炭層の二層が密着されて一つの組層をなす状態で、複数の組層が間隔をもって複数平行に配置され、隣接する組層同士が塔内空間を上流側空間と下流側空間とに区分するように接続されていることとする請求項2に記載の排ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物焼却施設、セメント製造工場、火力発電所、非鉄金属製錬工場等の各種工場から排出される水銀を含む排ガスの処理
方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントキルン炉、非鉄金属製錬炉から排出される排ガスや、水銀を含んだ廃棄物が廃棄物焼却炉で焼却され排出される排ガス中に水銀が含まれることがあり、そのまま大気に放出されると、大気汚染を引き起こし問題となる。そこで、排ガス中の水銀を除去することが求められている。
【0003】
さらに、「水銀に関する水俣条約」が2013年に採択され、世界的な水銀管理強化の動きが進行している。この条約発効後、水銀排出規制対象施設に対して水銀の排出を抑制する対策が検討されている。水銀排出規制対象施設としては、石炭火力発電所、石炭焚きボイラ、非鉄金属製錬施設、廃棄物焼却施設、セメント製造施設が挙げられる。かかる状況において、これらの施設から排出される排ガス中の水銀を効率的に除去する処理装置の要望が高まっている。
【0004】
例えば、廃棄物焼却炉から排出される排ガス中の水銀の除去方法としては、特許文献1に見られるように、何も特段の物質を添着していない通常の活性炭(以下、「通常活性炭」という)を充填した固定床式吸着塔に排ガスを導入し、該通常活性炭に水銀を吸着させる方法が知られている。
【0005】
一方、特許文献2には、活性炭にアルカリ金属ヨウ化物、鉄、ニッケル、銅、亜鉛などの金属の硫酸塩又は硝酸塩を担持せしめてなる水銀蒸気吸着剤が開示されている。水銀吸着用活性炭として、上記のアルカリ金属ヨウ化物、鉄、ニッケル、銅、亜鉛などの金属の硫酸塩又は硝酸塩を添着した活性炭や、塩素、臭素、フッ素などのハロゲン化合物、鉄、ニッケル、銅、亜鉛などの金属やこれら金属の化合物、硫黄を添着した活性炭を用いることが提案されている。このような、ハロゲン化合物、金属化合物、硫黄等が添着された活性炭を「添着活性炭」といい、水銀吸着性能に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−166618
【特許文献2】特開昭59−010343
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のような方法で排ガスを処理すると、排ガス中の水銀に加え、ダイオキシン類やクロロベンゼン類、クロロフェノール類、多環芳香族炭化水素類なども同時に除去が可能である。処理に際して、固定床式の吸着塔を用いる場合、活性炭の寿命に応じて活性炭の交換が必要であるが、水銀やダイオキシン類を含む排ガスの吸着処理に活性炭を用いると、ダイオキシン類より水銀の方が破過し易いという報告もあり(廃棄物学会誌Vol.16,No.4,p36)、活性炭の水銀吸着能力が早い時期に低下してしまい、活性炭の交換頻度が上がりコストが掛かるという課題を有する。
【0008】
一方、通常活性炭に代え、特許文献2に見られるような、水銀吸着性能に優れた添着活性炭を固定床式の吸着塔に使用すると、水銀に対する吸着性能が高いため活性炭寿命を長くできるが、廃棄物焼却炉やセメント製造施設等の排ガスに用いると、添着活性炭がダイオキシン類や多環芳香族炭化水素類なども同時に吸着除去するため、これら共存物質の影響により添着活性炭の水銀吸着除去可能な寿命が短くなるという課題を有する。併せて、添着活性炭は通常活性炭に比べ高価であり、コスト高に繋がる。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑み、排ガス中の水銀の吸着除去を良好に行い、添着活性炭の使用量を最小限として排ガス処理費用を抑制できる排ガス処理
方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る排ガス処理装置は、活性炭層を内蔵する吸着塔を有する排ガス処理装置において、活性炭層は、添着物のない通常活性炭層と添着物が添着された添着活性炭層とを有することを特徴としている。
【0011】
このような構成の本発明によると、ダイオキシン類や多環芳香族炭化水素類の吸着性能に優れた通常活性炭によりダイオキシン類等を吸着除去し、水銀吸着性能に優れた添着活性炭により水銀を吸着除去することができ、高価な添着活性炭を水銀吸着除去に優先的に用いることができ、添着活性炭の使用量を抑制して、排ガス処理費用を低減することができる。
【0012】
また、本発明に係る排ガス処理装置は、活性炭層を内蔵する吸着塔を有する排ガス処理装置において、活性炭層は、添着物のない通常活性炭層と添着物が添着された添着活性炭層とを有し、通常活性炭層が添着活性炭層に対して上流側に配置されていることを特徴としている。
【0013】
このような構成の本発明によると、固定床式の吸着塔において、排ガスの流通方向で上流側に配置された通常活性炭層で、先ず、ダイオキシン類やクロロベンゼン類、クロロフェノール類、多環芳香族炭化水素類及び水銀を吸着除去する。しかる後、下流側に配置された添着活性炭層により、通常活性炭層で吸着除去しきれなかった水銀を除去する。その際、上流側の通常活性炭層で水銀吸着を阻害するダイオキシン類等がすでに除去されているので、高価な添着活性炭層を専ら水銀除去に用いることができる。その結果、水銀に対する添着活性炭の長寿命化が図れ、高価な添着活性炭の使用量を抑制でき排ガス処理費用の低減が可能となる。
【0014】
このような構成の本発明は、先ず、通常活性炭層で排ガス中のダイオキシン類や多環芳香族炭化水素類等を吸着除去し、下流側に配置された添着活性炭層での水銀吸着除去を阻害するダイオキシン類等を除去するため、特に排ガス中のダイオキシン類や多環芳香族炭化水素類の濃度が高い場合に有効である。
【0015】
また、本発明に係る排ガス処理装置は、活性炭層を内蔵する吸着塔を有する排ガス処理装置において、活性炭層は、添着物のない通常活性炭層と添着物が添着された添着活性炭層とを有し、添着活性炭層が通常活性炭層に対して上流側に配置されていることを特徴としている。
【0016】
このような構成の本発明は、特に排ガス中のダイオキシン類や多環芳香族炭化水素類濃度が低く水銀濃度が高い場合に、有効である。すなわち、排ガス中にダイオキシン類や多環芳香族炭化水素類が少ないため、添着活性炭層での水銀吸着除去にこれらの共存物質の影響を受けにくく、吸着塔の上流側に設置された添着活性炭層において水銀を効率的に吸着除去できる。吸着塔への排ガスの流通を続けた後、上流側に設置された添着活性炭層の水銀吸着能が破過に到り、添着活性炭層出口から排出される排ガス中の水銀濃度が一定濃度まで上昇する状態に到っても、下流側に設置された通常活性炭層において水銀を除去できるため、添着活性炭層を引続き使用可能である。添着活性炭層のみを備える吸着塔では添着活性炭層の水銀吸着能が破過に到れば添着活性炭層を全量交換する必要があることに対して、本発明では添着活性炭層の水銀吸着量が飽和付近に達するまで使用することができ、高価な添着炭を有効に使うことができ効率的である。吸着塔への排ガスの流通を続けると、上流側の添着活性炭層出口の排ガス中の水銀濃度が上昇してくるが、これに伴い、下流側の通常活性炭層の水銀吸着能が先に破過した場合は、通常活性炭のみを交換するようにする。通常活性炭は添着活性炭に比べて安価であるため、活性炭の総合的なコストを低減することができる。
【0017】
本発明において、通常活性炭層と添着活性炭層は、互いに密着して配設されているようにすることも、互いに分離して配設されていて、両者間に中間空間を形成しているようにすることもできる。
【0018】
また、本発明に係る排ガス処理装置は活性炭層を内蔵する吸着塔を有し、吸着塔は、上流側塔と下流側塔とを連通して形成され、上流側塔に添着物のない通常活性炭層が配設され、下流側塔に添着物が添着された添着活性炭層が配設されていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明に係る排ガス処理装置は活性炭層を内蔵する吸着塔を有し、吸着塔は、上流側塔と下流側塔とを連通して形成され、上流側塔に添着物が添着された添着活性炭層が配設され、下流側塔に添着物のない通常活性炭層が配設されていることを特徴としている。
【0020】
本発明において、通常活性炭層と添着活性炭層の少なくとも一方は、塔内に対し装入及び取出し可能なカートリッジを形成しているようにすることができる。こうすることで、塔内に対する活性炭層の装入及び取出しがきわめて簡単となる。
【0021】
本発明において、上記カートリッジは、通常活性炭層と添着活性炭層のいずれかが単独で単層をなす状態で、複数の単層が間隔をもって平行に配置され、隣接する単層同士が塔内空間を上流側空間と下流側空間とに区分するように接続されていることで形成できる。
【0022】
このように、カートリッジに複数の単層を設けることで、排ガスが活性炭層を透過する面積を増大させることができる。
【0023】
また、本発明に係る排ガス処理装置は活性炭層を内蔵する吸着塔を有し、活性炭層は、塔内に対し装入及び取出し可能なカートリッジを形成し、カートリッジは、添着物のない通常活性炭層と添着物が添着された添着活性炭層の二層が密着されて一つの組層をなす状態で、複数の組層が間隔をもって複数平行に配置され、隣接する組層同士が塔内空間を上流側空間と下流側空間とに区分するように接続されていることを特徴としている。
【0024】
このように、カートリッジに複数の組層を設けることで、排ガスが活性炭層を透過する面積を増大させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、吸着塔内の上流側に通常活性炭層、下流側に添着活性炭層を配置することとしたので、上流側の通常活性炭層で、ダイオキシン類やクロロベンゼン類、クロロフェノール類、多環芳香族類炭化水素類及び一部の水銀を吸着除去した後に、通常活性炭層で吸着除去しきれなかった残留の水銀を添着活性炭層で除去でき、その際、上流側の通常活性炭層で添着活性炭の水銀吸着を阻害するダイオキシン類がすでに除去されていて、下流側の高価な添着活性炭層を専ら水銀除去に用いることができる。その結果、水銀に対する添着活性炭の長寿命化が図れ、高価な添着活性炭の使用量を抑制できランニングコストの低減が可能となるという効果を得る。
【0026】
また、本発明によると、吸着塔内の上流側に添着活性炭層、下流側に通常活性炭層を配置することとしたので、特に排ガス中のダイオキシン類や多環芳香族炭化水素類濃度が低く水銀濃度が高い場合に、上流側の添着活性炭層での水銀吸着除去に対してダイオキシン類や多環芳香族炭化水素類の影響を受けにくいため、水銀を効率的に吸着除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態としての排ガス処理装置の概要構成を示す縦断面図であり、(A)は通常活性炭層と添着活性炭層が密着して一つの組層をなして同一吸着塔に収められている場合、(B)は通常活性炭層と添着活性炭層がそれぞれで単層をなして別の吸着塔に収められている場合を示している。
【
図2】本発明の他の実施形態であって、通常活性炭層と添着活性炭層のいずれかが複数層平行に設けられてカートリッジをなし、両カートリッジが別々の吸着塔に収められている場合で、(A)はカートリッジの吸着塔との配置関係、(B)はカートリッジの構造を示している。
【
図3】本発明のさらに他の実施形態であって、通常活性炭層と添着活性炭層が密着して組層をなし、複数の組層がカートリッジとして形成された場合を示し、(A)はカートリッジの吸着塔との配置関係、(B)はカートリッジの構造、(C)は(B)の一部を拡大して示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
図1(A),(B)は、本発明の一実施形態における排ガス処理装置としての固定式吸着塔の概要構成を示す縦断面図である。
【0030】
図1(A)に示す排ガス処理装置では、上端に排ガス導入部11そして下端に清浄排ガス導出部12が設けられた縦型筒状の吸着塔10を有し該吸着塔10はその内部に単層状の活性炭層20が取外し自在に設置されていて、該活性炭層20が塔内の空間を排ガス導入部11側の上流側空間Uと清浄排ガス導出部12側の下流側空間Lとに区分している。
【0031】
活性炭層20は、上流側空間Uに面する通常活性炭層(添着物のない通常の活性炭層)21と、下流側空間Lに面する添着活性炭層(添着物が添着された活性炭層)22とを互いに密着配置して一つの組層の形態をなしている。勿論、本実施形態で上記通常活性炭層21と添着活性炭層22とは互いに離れて両者間に中間空間を形成していてもよい。添着活性炭の添着物としては、ハロゲン化合物(塩素、臭素、フッ素及びこれらの化合物)、金属化合物(鉄、ニッケル、銅、亜鉛及びこれらの化合物)、硫黄等が挙げられる。
【0032】
かかる構成の本実施形態装置へ、廃棄物焼却炉、セメントキルン炉、非鉄金属製錬炉等からの排ガスを上記排ガス導入部11から吸着塔10内へ導入する。上記排ガスには、ダイオキシン類やクロロベンゼン類、クロロフェノール類、多環芳香族炭化水素類及び水銀の有害成分が含まれており、これらが上流側の通常活性炭層21により吸着される。しかし水銀は、一部が該通常活性炭層21により吸着されるが、該通常活性炭層21で吸着除去しきれず残留することがある。
【0033】
上記通常活性炭層21で吸着除去しきれず残留する水銀は下流側の添着活性炭層22により吸着除去され、排ガスはすべての有害物質が吸着除去された状態で清浄排ガスとして清浄排ガス導出部12から排出される。上記通常活性炭層21で、水銀以外の他の有害成分がすでに吸着除去されているので、添着活性炭層22は専ら水銀の吸着除去に供することができ、それだけ吸着能力が大きく、また長寿命化ができ長期間使用可能となり、高価な添着活性炭の使用量を抑制できランニングコストの低減が可能となる。
【0034】
図1(B)に示す装置は、単層の活性炭層を収容する吸着塔を二つ用いた構成となっている。上方の上流側の吸着塔10Aと下方の下流側の吸着塔10Bとが連通部13により連通されていて、連通部13の上下に中間空間Mを形成し、該中間空間Mを隔てて、上流側の吸着塔10Aの上部に排ガス導入部11がそして下流側の吸着塔10Bの下部に清浄排ガス導出部12が設けられている。
【0035】
上流側の吸着塔10A内には通常活性炭層21、下流側の吸着塔10B内には添着活性炭層22が取外し自在に設置されている。この
図1(B)においても、
図1(A)の場合同様に、排ガス導入部11から導入される排ガスは通常活性炭層21で、ダイオキシン類やクロロベンゼン類、クロロフェノール類、多環芳香族炭化水素類及び一部の水銀が吸着除去され、水銀の残部が添着活性炭層22で吸着除去される。
【0036】
図1(A)、(B)の形態においては、通常活性炭層21そして添着活性炭層22はいずれも単層をなし吸着塔10A,10B内へ取外し自在に設置されていたが、
図2(A),(B)に示す形態においては、通常活性炭層32Aと添着活性炭層32Bは、いずれも複数の平行板状をなし、一つのカートリッジ30A、30Bとしてまとめられていて、該カートリッジをそれぞれユニットとして吸着塔内へ取外し自在に設置できるようになっている。カートリッジ30Aとカートリッジ30Bは、複数の平行板をなす活性炭層が、通常活性炭層32Aをなしているか、添着活性炭層32Bをなしているかが異なるだけであり、構造上は同じであるので、以下、
図2(B)にもとづき、通常活性炭層32Aを有するカートリッジ30Aについて説明し、同図において、符号の末文字「A」を「B」に代えることで、添着活性炭層32Bのカートリッジ30Bについての説明に代えることとする。
【0037】
図2(B)に示すように通常活性炭層32Aのカートリッジ30Aは、例えば、排ガスに対して耐腐食性を有する剛体で構成される筺体31Aの内部に、既述の通常活性炭層により形成された平板状の複数の通常活性炭層32Aを、それぞれが平行となるように配置することにより構成される。また、間隔をもって互いに隣接する二つの通常活性炭層32Aは対をなし、上記筺体31A内には、この通常活性炭層32Aの対が複数配列されて設けられている。
図2(B)では、通常活性炭層32Aの三つの対が図示されている。
【0038】
互いに隣接する通常活性炭層32Aの対同士間に形成された第一空間33Aは、上方には開放されており、下方には筺体31Aの底壁31A−1で閉塞されている。該第一空間33Aの上開口部33A−1は、排ガスの流入口として機能し、排ガス導入部11側の上部空間Uに連通している。また、各対をなす二つの通常活性炭層32A同士間に形成された第二空間34Aは、上方には筺体31Aの上壁31A−2で閉塞されており、下方には開放されている。該第二空間34Aの下開口部34A−1は、排ガスの流出口として機能し、連通部13を含んで形成される中間空間Mに連通している。そして、この筺体31Aを吸着塔10Aの内部に、そして筺体31Bを吸着塔10Bの内部に、装入及び取り外し可能、つまり着脱可能に構成することで、カートリッジとしての吸着剤が構成される。このように、吸着剤をカートリッジ構造として、吸着塔内に着脱可能とすることで、吸着剤の交換や装置内の点検等のメンテナンスを容易に行なうことが可能となる。
【0039】
かかるカートリッジ30A,30Bを吸着塔10A,10Bにそれぞれ収めた本実施形態装置へ排ガスが排ガス導入部11へ導入されると、排ガスは上方の吸着塔10Aの排ガス導入部11から上部空間Uを経て上方のカートリッジ30Aの複数の第一空間33Aへ至り、ここから通常活性炭層32Aを透過して第二空間34Aへ流入した後、下部空間Lへ至り、しかる後、連通部13を経て、下方の吸着塔10Bに流入する。排ガスが上方の上流側の吸着塔10Aで第一空間33Aから第二空間34Aへ向けて通常活性炭層32Aを透過する際、既出の実施形態における通常活性炭層21の場合と同様な水銀の一部を含む他の有害物質が吸収除去される。
【0040】
連通部13を経て下方の下流側の吸着塔10Bに流入した排ガスは、該吸着塔10Bの第一空間33Bから第二空間34Bへ向けて添着活性炭層32Bで水銀の残部が吸着除去されて清浄排ガスとなって清浄排ガス導出部12から排出される。
【0041】
このような
図2の実施形態によると、通常活性炭層と添着活性炭層はカートリッジ形式となっているので吸着塔への装入そして取外しが容易になるだけでなく、塔内の容積を有効に用いて複数の通常活性炭層そして複数の添着活性炭層を配設できるので、排ガスに対する吸着面積を増大させ吸着能力が向上する。本実施形態では、通常活性炭層と添着活性炭層の両方ともカートリッジ形式にしたが、一方のみをカートリッジ形式として、他方を
図1(B)の単層形式のものとしてもよい。
【0042】
図1(B)、
図2(A)の形態においては、吸着塔10A、10Bの二段の吸着塔が設置されているが、本発明はこのような構成に限らず、排ガス性状に応じて吸着塔の段数を任意に設定することができる。例えば、排ガス中のダイオキシン類やクロロベンゼン類、クロロフェノール類、多環芳香族炭化水素類濃度が高い場合は、上流側に通常活性炭層を設置した吸着塔を二段設置し、下流側に添着活性炭層を設置した吸着塔を一段設置した三段の吸着塔構成としてもよい。また、排ガス中の水銀濃度が高く、ダイオキシン類やクロロベンゼン類、クロロフェノール類、多環芳香族炭化水素類濃度が低い場合は、上流側に添着活性炭層を設置した吸着塔を二段設置し、下流側に通常活性炭層を設置した吸着塔を一段設置した三段の吸着塔構成としてもよい。あるいは、上流側に添着活性炭層を設置した吸着塔を一段設置し、次いで通常活性炭層を設置した吸着塔を一段設置し、その下流に添着活性炭層を設置した吸着塔を一段設置した三段構成としてもよい。
【0043】
次に、他の形態として、
図2におけるカートリッジを
図3のごとく通常活性炭層と添着活性炭層とを組層として形成することも可能である。例えば、
図3(A)の吸着塔10内に、カートリッジ30を配設する。カートリッジ30は
図3(B)に見られるごとく、活性炭層32が複数平行に配された
図2(B)と類似の構造をなしている。ここで、各活性炭層32は、
図3(C)に拡大して図示されているように、通常活性炭層32Aと添着活性炭層32Bとを密着させ組層を形成していて、通常活性炭層32Aが上流側となる第一空間33そして添着活性炭層32Bが下流側となる第二空間34にそれぞれ面して位置している。本実施形態でも、排ガスは第一空間33から第二空間34へ向け活性炭層32を透過する際に、先に、通常活性炭層32Aで水銀の一部と他の有害ガスが吸着除去され、後に、添着活性炭層32Bで水銀の残部が吸着除去される。
【実施例】
【0044】
廃棄物焼却炉からの排ガスをバグフィルタで除塵し、排出された排ガス(排ガス流量300Nm
3/h,排ガス温度170℃)を表1に示す二段構成の活性炭吸着塔に流通して水銀吸着除去処理を行った。吸着塔に排ガスを流通し、活性炭吸着塔出口の排ガス中の水銀濃度が0.025mg/Nm
3まで上昇した時点を活性炭寿命とし、また、活性炭寿命と活性炭単価から活性炭費用の相対比率を、実施例の場合を1.0として求め、結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
上流段下流段共に通常活性炭を用いた比較例1では活性炭寿命が短く、頻繁に交換する必要があり、活性炭費用の相対比率が高くなる。上流段下流段共に添着活性炭を用いた比較例2では最も活性炭寿命が長いが、活性炭費用の相対比率が高くなる。上流段に通常活性炭を用い下流段に添着炭を用いた実施例では活性炭費用の相対比率が最も低い結果となり、このような活性炭吸着塔を用いることにより、活性炭費用を低減できることを確認した。
【符号の説明】
【0047】
10 吸着塔
10A,10B 吸着塔
11 排ガス導入部
11 排ガス導入部
12 清浄排ガス導出部
20 活性炭層
21 通常活性炭層
22 添着活性炭層
30 カートリッジ
30A,30B カートリッジ
32 活性炭層
32A 通常活性炭層
32B 添着活性炭層
L 下部空間
M 中間空間
U 上部空間