特許第6443685号(P6443685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443685
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20181217BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20181217BHJP
【FI】
   H01M8/04 N
   H01M8/2475
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-151197(P2015-151197)
(22)【出願日】2015年7月30日
(65)【公開番号】特開2017-33718(P2017-33718A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2017年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】森長 正彦
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−021216(JP,A)
【文献】 特開2015−015220(JP,A)
【文献】 特開2012−155931(JP,A)
【文献】 特開2007−335147(JP,A)
【文献】 特開2005−056814(JP,A)
【文献】 特開2015−225809(JP,A)
【文献】 特開2006−147456(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0032461(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックを収容するケースとを有する燃料電池であって、
前記燃料電池スタックと前記ケースとの間に形成される隙間を調整する隙間調整部材が、前記燃料電池スタック又は前記ケースの少なくとも一方に1又は複数箇所設けられ、
前記隙間調整部材によって調整された隙間は、0より大きく、且つ、前記燃料電池スタックから前記ケース内に流出した水素が燃焼しても消炎する消炎距離以下となっており、
前記隙間調整部材の外周に曲面部を有する構成と、
前記燃料電池スタックの角部に面する前記ケースの内周面が曲面である構成、又は、全体として直方体形状をなす前記燃料電池スタックの角部とそれに面する前記ケースの内周面との隙間が少なくとも前記消炎距離よりも大きい構成とを備える燃料電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば固体高分子型燃料電池は、電解質膜の両方にアノード電極とカソード電極とが配設された膜電極構造体(MEA)を備える。この膜電極構造体を一対のセパレータによって挟持した発電セルを所定数積層することにより燃料電池スタックが構成され、この燃料電池スタックは、例えば燃料電池車両に使用されている。
【0003】
この種の燃料電池車両では、通常、燃料電池スタックは、制御デバイスとともに燃料電池スタックケース(以下、単にケースとも称する)に収納された状態で搭載されている。このようにケースに覆われた燃料電池スタックにあっては、燃料電池スタックに供給された水素のうち、反応に寄与しなかった未反応水素が、燃料電池スタックから漏洩してケース内に滞留するおそれがある。
【0004】
このような問題を解決するため、例えば下記特許文献1では、ケース内に触媒燃焼用の貴金属を設け、燃料電池スタックから漏洩した水素を触媒燃焼により水に変換する技術が提案されている。下記特許文献1によれば、燃料電池スタックからケース内に漏洩した水素を触媒燃焼により水に変換することで、ケース内に漏洩した水素の滞留を防止できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−093435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1にあっては、ケース内に漏洩した水素に対して触媒燃焼を用いた対策が施されているものの、触媒燃焼で処理しきれない(もしくは触媒燃焼がうまく働かない)場合、ケース内に漏洩した水素に引火したときにケース内全体の水素が燃焼してしまうおそれがあった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケース内に漏洩した水素に引火した場合であっても、ケース内の水素が全体的に燃焼することを抑制できる燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る燃料電池は、燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックを収容するケースとを有する燃料電池であって、前記燃料電池スタックと前記ケースとの間に形成される隙間を調整する隙間調整部材が、前記燃料電池スタック又は前記ケースの少なくとも一方に1又は複数箇所設けられ、前記隙間調整部材によって調整された隙間は、前記燃料電池スタックから前記ケース内に流出した水素が燃焼しても消炎する消炎距離以下となっており、前記隙間調整部材の外周に曲面部を有する構成と、前記燃料電池スタックの角部に面する前記ケースの内周面が曲面である構成、又は、全体として直方体形状をなす前記燃料電池スタックの角部とそれに面する前記ケースの内周面との隙間が少なくとも前記消炎距離よりも大きい構成とを備える。
【0009】
本発明では、燃料電池スタック又はケースの少なくとも一方に1又は複数箇所設けられた隙間調整部材によって調整された隙間は、ケース内に流出した水素が燃焼しても消炎する消炎距離以下となっている。このため、燃料電池スタックとケースとの間に形成される隙間にたとえ水素が漏洩して着火したとしても、水素が燃焼しても消炎する消炎距離以下の隙間によって着火後の燃焼波を消炎させることができる。また本発明では、隙間調整部材の外周に曲面部を有する構成を備えているので、隙間内を流れる燃焼波の伝播をより滑らかにすることができ、燃焼波の流れの乱れを抑えることができる。また本発明では、燃料電池スタックの角部に面するケースの内周面が曲面である構成、又は、全体として直方体形状をなす燃料電池スタックの角部とそれに面するケースの内周面との隙間が少なくとも消炎距離よりも大きい構成を備える。これにより、角部における燃焼波の伝播をより滑らかにすることができ、燃焼波の流れの乱れを抑えることができる。その結果、燃焼波の速度の急激な上昇が抑えられ、たとえケース内に漏洩した水素に引火しても、燃焼水素が消炎する距離以下の隙間によって仕切られた外の空間まで燃焼波が伝搬することを抑えることができ、ケース内に漏洩した水素が全体的に燃焼してしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ケース内に漏洩した水素に引火した場合であっても、ケース内の水素が全体的に燃焼することを抑制できる燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る燃料電池を模式的に示す概略斜視図である。
図2図1のA−A線を含むxz平面における断面図である。
図3A】燃料電池スタックとケースとの隙間を変更した形状で実施した流れ計算の一例を示す図である。
図3B】燃料電池スタックとケースとの隙間を変更した形状で実施した流れ計算の一例を示す図である。
図3C】燃料電池スタックとケースとの隙間を変更した形状で実施した流れ計算の一例を示す図である。
図3D】燃料電池スタックとケースとの隙間を変更した形状で実施した流れ計算の一例を示す図である。
図3E】燃料電池スタックとケースとの隙間を変更した形状で実施した流れ計算の一例を示す図である。
図3F】燃料電池スタックとケースとの隙間を変更した形状で実施した流れ計算の一例を示す図である。
図3G】燃料電池スタックとケースとの隙間を変更した形状で実施した流れ計算の一例を示す図である。
図3H】燃料電池スタックとケースとの隙間を変更した形状で実施した流れ計算の一例を示す図である。
図4】燃料電池スタックとケースとの隙間を変更した形状で流れ計算を実施した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態はあくまでも好適な適用例であって、本発明の適用範囲がこれに限定されるものではない。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
【0013】
まず、本発明の実施形態に係る燃料電池の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池を模式的に示す概略斜視図である。図2は、図1のA−A線を含むxz平面における断面図である。
【0014】
なお、図1において、燃料電池スタック20の軸方向(単位燃料電池(図示略)が複数枚積層される積層方向)をy方向とし、y方向に直交する単位燃料電池の幅方向をx方向とし、y方向及びx方向の双方向に直交する方向をz方向とする。
【0015】
図1及び図2に示すように、燃料電池1は、燃料電池スタック20と、当該燃料電池スタック20を全周に渡って配置される隙間調整部材21と、ケース10とを備える。
【0016】
ケース10は、燃料電池スタック20及び隙間調整部材21を収容する容器であり、燃料電池1が例えば燃料電池車両に使用されるときには、ケース10は燃料電池車両の例えば床下に搭載される。
【0017】
燃料電池スタック20は、燃料電池のセル(発電セル)が複数積層されたセル積層体であり、全体として略直方体形状をなしている。各発電セルは、燃料ガスタンク(図示せず)から供給される燃料ガスと、酸化剤ガスとして供給される空気とを用いて発電する。本実施形態においては、燃料ガスとして水素ガスを採用する。
【0018】
ところで、図2に示すように、燃料電池スタック20と当該燃料電池スタック20を覆うケース10との間には隙間Sが形成されている。この隙間Sには、燃料電池スタック20に供給された水素のうち反応に寄与しなかった未反応水素が漏洩することがある。隙間S内に漏洩した水素に着火した場合には、燃焼が燃料電池全体に広がる虞がある。
【0019】
そこで本発明者らは、例えケース10内に漏洩した水素に着火した場合であっても、ケース10内の水素が全体的に燃焼することを抑えられる隙間Sの構造について研究を行った。その結果、隙間Sの大きさと、ケース10内に漏洩した水素に着火したときの燃焼波の伝播との関係に関して、次のようなことが判明した。
【0020】
具体的には、燃料電池スタック20とケース10との間に形成される隙間Sが例えば25mm均一の場合、ケース10内に水素が漏洩して着火したときに、着火後の燃焼波が消炎せずに維持され、燃焼波の速度が急激に上昇する。
【0021】
一方で、隙間Sを例えば9mm均一にした場合には、ケース10内に水素が漏洩して着火したときに、着火後の燃焼波が消炎せずに維持される場合と、着火後の燃焼波が消炎する場合がある。つまり、燃焼波の伝播に関して不安定な状態となる。このため、このような隙間にした場合には、燃焼が全体に広がる可能性があることから、隙間Sの構造を更に改善する必要があった。
【0022】
隙間Sの構造について更に改善した結果、隙間Sを5mm以下に設定した場合には、ケース10内に漏洩した水素に着火した場合であっても、着火後の燃焼波が維持されず消炎するということが判明した。
【0023】
ところが、燃料電池スタック20とケース10との間に形成される隙間Sを全て5mm以下とすることは、燃料電池スタック20の外周面に沿ってケース10の内周面を製造する必要があるため、必ずしも現実的ではない。このため、隙間Sを全て5mm以下とするのではなく、5mm以下の隙間Sをどのように設置すれば(5mm以下の隙間Sを一部のみに設置しても)着火後の燃焼波を消炎させることが可能であるか、検証をした。例えば25mmの隙間Sの一部に5mm以下の隙間Sを設けた場合、25mmの部分から5mm以下の部分に隙間Sの大きさが変化することによって、隙間S内を流れる燃焼波の乱れが発生して燃焼波の速度の急激な上昇を招くおそれがあることから、どのように5mm以下の隙間Sを設ければ、着火後の燃焼波の乱れが抑えられるか、検証をした。
【0024】
その結果、着火する可能性のある部位(図2の点F)の隙間が、ケース10内に流出した水素が燃焼しても消炎する消炎距離D以下(以下、単に「消炎距離D」とも称する)となっており、また、当該部位以外の隙間Sが、所定間隔で消炎距離D以下となっていれば、着火後の燃焼波が消炎することを本発明者らは見出した。
【0025】
具体的には、本実施形態では、図2に示すように、燃料電池スタック20とケース10との間に形成される隙間Sが、所定間隔でケース10内に流出した水素が燃焼しても消炎する消炎距離D以下となるように隙間調整部材21を配置している。言い換えれば、図2に示すように、隙間Sが、ケース10内に流出した水素が燃焼しても消炎する消炎距離D以下の領域Tによって複数の空間に仕切られるように、隙間調整部材21を配置している。
【0026】
なお、本実施形態では、消炎距離Dは5mm以下に設定されるが、この消炎距離Dの大きさを、ケース10の材質に応じて変えることが好ましい。ケースの材質が例えば材質が例えばSUSである場合には、消炎距離Dは5mm以下に設定され、ケース10の材質が例えば樹脂である場合には、消炎距離Dは0.5mm以下に設定されることが好ましい。
【0027】
また本実施形態では、隙間調整部材21は、燃料電池スタックの幅方向(図2のx方向)に略同じ間隔dで設けられていることが好ましい。この略同じ間隔とは、一定間隔であることに限定されず、一定間隔±30%までのずれは許容出来るものとする。
例えば○○mm程度の誤差のような、実質的に同じであることも含まれる。図2に示すように、3個の隙間調整部材21が、燃料電池スタック20の全周に渡って配置される場合には、断面視で、燃料電池スタック20の幅方向における両端部に2個、燃料電池スタック20の中央部に1個配置されることが好適である。
【0028】
なお、図2では、隙間調整部材21が間隔dで3箇所設けられた例が示されているが、隙間調整部材21の幅の大きさを変更して1箇所設ける構成としても良く。また、所定の間隔で隙間調整部材21を4箇所以上設ける構成としても良く、隙間調整部材21の個数は限定されるものではない。隙間調整部材21が燃料電池スタック20の全周に渡って4箇所配置される場合には、燃料電池スタック20の幅方向(図2のx方向)における両端部に隙間調整部材21を2箇所配置し、各々の隙間調整部材21の間隔が略同じになるように、他の隙間調整部材21を2個配置することが好ましい。
【0029】
また本実施形態では、ケース10内に漏洩した水素に着火した場合に、隙間S内を通る水素と空気との混合ガスの流れを乱さないように、隙間調整部材21を滑らかな形状とすることが好ましい。具体的には、隙間調整部材21の外周に曲面部を有する構成、すなわち隙間調整部材21の角部に面取りr(後述する図3B図3C図3E図3F参照)が施されている構成であることが好ましい。
【0030】
また本実施形態では、燃料電池スタック20の角部に面するケース10の内周面が曲面である構成、すなわち、ケース10の角部に面取りR(後述する図3C図3F参照)が施されていることが好ましい。また本実施形態では、全体として直方体形状をなす燃料電池スタック20の角部とそれに面するケース10の内周面との隙間(角部隙間Sa)が少なくとも消炎距離Dよりも大きい構成(後述する図3D図3E図3F参照)を備えることが好ましい。このような、ケース10の角部の面取りR及び角部隙間Saを設ける利点について以下に詳述する。
【0031】
ケース10内に漏洩した水素に着火(例えば図2の点Fで着火)した場合には、着火後の燃焼波は隙間S内を同心円状に広がり、燃料電池スタック20とケース10との隙間Sの角部(図2の点線円P)で直角に曲がって燃焼波は伝播していく。このように燃焼波が直角に曲がることで乱れが発生する結果、燃焼速度が急激に上昇する可能性がある。
【0032】
そこで、本実施形態では、ケース10の角部に面取りR(図3C図3F参照)を設けることで、燃焼波を滑らかに伝播させて流れの乱れの発生を抑えている。また、角部隙間Sa(図3D図3E図3F参照)を大きくすることで、燃焼波を滑らかに伝播させて流れの乱れの発生を抑えている。後述するように、本実施形態では、ケース10の角部に面取りRを付与すること、角部隙間Saを大きくすることの一方を設けても良く、両方を設けても良い。
【0033】
以上説明した、隙間調整部材21を設置した燃料電池1について、燃料電池スタック20とケース10との間の隙間Sを変更した形状で流れ計算を実施し、最も乱れを抑制できる構造の検証を行った。
【0034】
図3は、燃料電池スタック20とケース10との間の隙間Sを変更した6種類の形状(形状A〜F)における、隙間S内を混合ガスが進行している状態を説明するための図である。図3に示す矢印FLは、例えばターミナル等で着火し、100m/sで水素と空気との混合ガスが進行する場合の、流れの方向を示している。
【0035】
図3Aは、形状Aにおける、隙間S内を流れる混合ガスの乱流運動エネルギーコンター及び速度コンターを示す図である。図3Bは、形状Bにおける、隙間S内を流れる混合ガスの乱流運動エネルギーコンター及び速度コンターを示す図である。図3Cは、形状Cにおける、隙間S内を流れる混合ガスの乱流運動エネルギーコンター及び速度コンターを示す図である。図3Dは、形状Dにおける、隙間S内を流れる混合ガスの乱流運動エネルギーコンター及び速度コンターを示す図である。図3Eは、形状Eにおける、隙間S内を流れる混合ガスの乱流運動エネルギーコンター及び速度コンターを示す図である。図3Fは、形状Fにおける、隙間S内を流れる混合ガスの乱流運動エネルギーコンター及び速度コンターを示す図である。図3Gは、形状Gにおける、隙間S内を流れる混合ガスの乱流運動エネルギーコンター及び速度コンターを示す図である。図3Hは、形状Hにおける、隙間S内を流れる混合ガスの乱流運動エネルギーコンター及び速度コンターを示す図である。図4は、8種類の形状A〜Hにおける、流れ計算(乱流運動エネルギー最大値、速度最大値)の結果を示す図である。
【0036】
8種類の形状A〜Hを比較して示す図4の表によれば、形状D、E、F、Hでは、全体として直方体形状をなす燃料電池スタック20の角部とそれに面するケース10の内周面との隙間Sが少なくとも消炎距離Dよりも大きい構成(角部隙間Sa)を備えているのに対し、形状A、B、C、Gでは、このような構成(角部隙間Sa)を備えていない。言い換えれば、形状D、E、F、Hでは、角部隙間Saを大きくしているのに対し、形状A、B、C、Gでは、角部隙間を小さくしている。なお、本実施形態における、角部隙間Saを大きくする(消炎距離Dよりも大きい構成)とは、断面積における角部隙間200mm2以上、且つ、隙間の縦横比0.5以上を意味するのに対し、角部隙間を小さくするとは、角部隙間200mm2未満もしくは隙間の縦横比0.5未満を意味する。
【0037】
また、形状B、C、E、Fでは、隙間調整部材21b、21c、21e、21fに面取りrを付与しているのに対し、形状A、D、G、Hでは、隙間調整部材21a、21d、21g、21hに面取りrを付与していない。
【0038】
また、形状C、F、G、Hでは、ケース10の角部に面取りRを付与しているのに対し、形状A、B、D、Eでは、ケース10の角部に面取りRを付与していない。
【0039】
以上の8種類の形状A〜Hの流れ計算を実施した結果、図4に示すように、形状A、B、D、G、Hでは、少なくとも乱流運動エネルギー最大値が比較的大きい計算結果(乱流運動エネルギー最大値は1000以上)が確認された。これに対し、形状C、E、Fでは、乱流運動エネルギー最大値と速度最大値とが大幅に抑えられた計算結果が確認された。これは、隙間調整部材21に面取りrを付与することに加え、ケース10の角部近傍に設けられる角部隙間Saを大きくする、又は、ケース10の角部に面取りRを付与すると、隙間S内を流れる燃焼波を滑らかに伝播させることができる結果、燃焼波の速度の急激な上昇を抑えられることを示している。なお、ケース10の角部に付与される面取りRを10mm程度とすると、角部隙間Saにおいて燃焼波を滑らかに伝播させることができ、好適である。また、隙間調整部材21に付与される面取りrを10mm程度とすると、燃焼波を滑らかに伝播させることができ、好適である。
【0040】
以上のように本実施形態では、燃料電池スタック20とケース10との間に形成される隙間Sを調整する隙間調整部材21が燃料電池スタック20又はケース10の少なくとも一方に1又は複数箇所設けられ、隙間調整部材21によって調整された隙間Sは、燃料電池スタック20からケース10内に流出した水素が燃焼しても消炎する消炎距離D以下となっており、隙間調整部材21の外周に曲面部を有する構成と、燃料電池スタック20の角部に面するケース10の内周面が曲面である構成、又は、全体として直方体形状をなす燃料電池スタック20の角部とそれに面するケース10の内周面との隙間Sが少なくとも消炎距離Dよりも大きい構成とを備える。
【0041】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0042】
1:燃料電池
10:ケース
20:燃料電池スタック
21:隙間調整部材
D:消炎距離
R、r:面取り
S:隙間
Sa:角部隙間
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4