特許第6443696号(P6443696)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443696
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20181217BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20181217BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20181217BHJP
【FI】
   H01M2/16 P
   H01M2/16 L
   H01M10/0566
   H01M10/058
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-188517(P2016-188517)
(22)【出願日】2016年9月27日
(65)【公開番号】特開2018-55888(P2018-55888A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2017年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】筒井 恵美
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−326250(JP,A)
【文献】 特開2011−198532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14− 2/18
H01M 10/05−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータと、を有する電極体と、
電解液と、
を備え、
前記セパレータは、ポリエチレン系樹脂を含み前記負極と対向するように配置されている多孔質ポリエチレン層と、前記ポリエチレン系樹脂よりも融点の高い樹脂を含む多孔質高融点樹脂層と、を有する多層構造の樹脂基材を備え、
前記多孔質ポリエチレン層の空孔率は2%以上5%以下であり、
前記多孔質高融点樹脂層の空孔率は、前記多孔質ポリエチレン層の空孔率よりも大きく、
前記樹脂基材の総厚みに対する前記多孔質ポリエチレン層の厚みの比は、0.048以上0.091以下である、二次電池。
【請求項2】
前記多孔質高融点樹脂層が、多孔質ポリプロピレン層であり、
前記樹脂基材が、前記多孔質ポリエチレン層と前記多孔質ポリプロピレン層との2層構造で構成されている、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記樹脂基材の総厚みが、5.5μm以上22μm以下である、請求項1又は2に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な二次電池は、正極と、負極と、正負極間に介在するセパレータとを有する電極体と、電解液とを備えている。セパレータは、空孔を有する多孔質構造である。セパレータは、正負極間を絶縁すると共に、空孔内に電解液を保持することによって、正負極間にイオン伝導パスを形成する。セパレータの中には、シャットダウン機能を有するものがある。シャットダウン機能を有するセパレータでは、過充電等によって電池内部の温度が上昇した際に構成材料が溶融して空孔を閉塞し、正負極間のイオン伝導パスを遮断する。これによって、電池の充放電反応を強制的に停止させ、電池内部の温度上昇を抑制する。
【0003】
このようなセパレータを備えた二次電池に関連する先行技術文献として、特許文献1〜3が挙げられる。例えば特許文献1には、多孔質ポリエチレン層(PE層)の両側に多孔質ポリプロピレン層(PP層)をそれぞれ積層した、PP層/PE層/PP層の3層構造のセパレータを用いた二次電池が開示されている。特許文献1の二次電池は、中央部に配置されたPE層が両側に配置されたPP層よりも先に溶けて、正負極間のイオン伝導パスを遮断するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−157136号公報
【特許文献2】特開2008−311220号公報
【特許文献3】特開2001−273880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者の検討によれば、セパレータのシャットダウン開始から完了までの間は、シャットダウンされていない部位に電流が集中することがある。このため、電池内部の温度上昇が加速することがある。したがって、過充電耐性を向上する観点からは、セパレータの空孔を迅速に閉塞して、シャットダウン開始から完了までの時間、言い換えれば、正負極間のイオン伝導パスが遮断されるまでの時間をできるだけ短縮することが望ましい。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池内部の温度上昇が抑えられ、過充電耐性に優れた二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、正極と、負極と、上記正極と上記負極との間に介在するセパレータと、を有する電極体と、電解液と、を備える二次電池が提供される。上記セパレータは、ポリエチレン系樹脂を含み上記負極と対向するように配置されている多孔質ポリエチレン層と、上記ポリエチレン系樹脂よりも融点の高い樹脂を含む多孔質高融点樹脂層と、を有する多層構造の樹脂基材を備えている。上記多孔質ポリエチレン層の空孔率は2%以上5%以下である。上記樹脂基材の総厚みに対する上記多孔質ポリエチレン層の厚みの比は0.048以上0.091以下である。
【0007】
上記二次電池では、過充電等によって電池内部の温度が上昇した際に、上記多孔質ポリエチレン層が、所謂、シャットダウン層として機能する。つまり、電池内部の温度が上昇した際に、多孔質ポリエチレン層の空孔が迅速に閉塞され、正負極間のイオン伝導が速やかに遮断される。このように、上記多孔質ポリエチレン層では、シャットダウンの開始から完了までの時間を短縮することができる。したがって、電池内部の温度上昇を抑制して、過充電耐性を向上することができる。また、セパレータの連通性(積層方向の空孔のつながり)を確保して、通常使用時には良好なイオン伝導性を確保することができる。
【0008】
なお、多孔質ポリエチレン層の空孔率(%)は、次式(1):((V1−V0)/V1)×100;によって算出することができる。ここで、V1は、多孔質ポリエチレン層の見かけ体積(cm)である。V0は、多孔質ポリエチレン層の質量W(g)と、多孔質ポリエチレン層を構成する樹脂の真密度ρ(g/cm)との比、すなわち、W/ρ(cm)である。つまり、V0は、質量Wの樹脂が占める実体積である。なお、ここでは一例として多孔質ポリエチレン層について説明したが、樹脂基材の各層についても同様に空孔率を求めることができる。また、セパレータの各層の空孔率は、例えばX線CTスキャナーによって実測することもできる。空孔率の単位は「体積%(vol%)」であるが、本明細書では単に「%」と表記している。
【0009】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、上記多孔質高融点樹脂層が、多孔質ポリプロピレン層であり、上記樹脂基材が、上記多孔質ポリエチレン層と上記多孔質ポリプロピレン層との2層構造で構成されている。これにより、セパレータをシンプルな構成とすることができる。
【0010】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、上記樹脂基材の総厚みが、5.5μm以上22μm以下である。これにより、良好なイオン伝導性を実現すると共に、機械的強度を向上することができる。したがって、通常使用時の電池特性と耐久性とをより良く高めることができる。
【0011】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、上記多孔質高融点樹脂層の空孔率が、上記多孔質ポリエチレン層の空孔率よりも大きい。これにより、セパレータの電解液浸透性や保湿性が高められ、通常使用時のイオン伝導性を向上することができる。
【0012】
また、本発明により、ポリエチレン系樹脂を含む多孔質ポリエチレン層と、上記ポリエチレン系樹脂よりも融点の高い樹脂を含む多孔質高融点樹脂層と、を有する多層構造の樹脂基材を備えたセパレータが提供される。上記多孔質ポリエチレン層の空孔率は2%以上5%以下である。上記樹脂基材の総厚みに対する上記多孔質ポリエチレン層の厚みの比は0.048以上0.091以下である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る二次電池の内部構成を模式的に示す縦断面図である。
図2】一実施形態に係る二次電池の電極体の構成を模式的に示す要部断面図である。
図3】PE層の空孔率と、最高電池温度との関係を示すグラフである。
図4】PE層の厚み比と、最高電池温度との関係を示すグラフである。
図5】PP層の厚みと、最高電池温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の一実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の構成要素や電池の一般的な構築プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。
【0015】
特に限定することを意図したものではないが、以下では図1に示す二次電池100を例に説明する。図1に示す二次電池100は、電極体40と、図示しない電解液とが、電池ケース50に収容され、構成されている。
【0016】
図2は、電極体40の構成を模式的に示す要部断面図である。図2に示すように、電極体40は、正極10と、負極20と、正極10と負極20との間に介在するセパレータ30と、を有している。電極体40は、矩形状の正極と負極とがセパレータを介して積層されてなる、所謂、積層電極体であってもよく、長尺シート状の正極と負極とがセパレータシートを介して積層され、長手方向に捲回されてなる捲回電極体であっても良い。
【0017】
正極10は、正極集電体12と、その表面に形成された正極活物質層14とを備えている。正極集電体12としては、導電性の良好な金属(例えばアルミニウム、ニッケル等)からなる導電性部材が好適である。正極活物質層14は、正極集電体12の表面に所定の幅で形成されている。正極集電体12の幅方向Wの一方の端部には、正極活物質層14が形成されていない正極活物質層非形成部分12nが設けられている。
【0018】
正極活物質層14は、正極活物質を含んでいる。正極活物質としては、例えば、LiNiO、LiCoO、LiMn、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.5Mn1.5等のリチウム遷移金属複合酸化物が好適である。正極活物質層14は、正極活物質以外の成分、例えば、導電材やバインダ等を含んでいてもよい。導電材としては、例えば、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラックやケッチェンブラック)、活性炭、黒鉛等の炭素材料が例示される。バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のハロゲン化ビニル樹脂や、ポリエチレンオキサイド(PEO)等のポリアルキレンオキサイドが例示される。
【0019】
負極20は、負極集電体22と、その表面に形成された負極活物質層24とを備えている。負極集電体22としては、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル等)からなる導電性材料が好適である。負極活物質層24は、負極集電体22の表面に所定の幅で形成されている。負極集電体22の幅方向Wの一方の端部には、負極活物質層24が形成されていない負極活物質層非形成部分22nが設けられている。
【0020】
負極活物質層24は、負極活物質を含んでいる。負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質コート黒鉛(黒鉛粒子の表面に非晶質カーボンをコートした形態のもの)等の黒鉛系炭素材料が好適である。負極活物質層24は、負極活物質以外の成分、例えば、増粘剤やバインダ等を含んでいてもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)やメチルセルロース(MC)等のセルロース類が例示される。バインダとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類や、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のハロゲン化ビニル樹脂が例示される。
【0021】
セパレータ30は、正極10の正極活物質層14と、負極20の負極活物質層24との間に配置されている。セパレータ30は、正極活物質層14と負極活物質層24とを絶縁する。セパレータ30は、二次電池100の通常使用時において、空孔内に電解液を保持し、正極活物質層14と負極活物質層24との間にイオン伝導パスを形成する。言い換えれば、セパレータ30は、電解液に含まれる電荷担体が通過可能なように構成されている。セパレータ30は、二次電池100の内部の温度が上昇した際に、軟化または溶融して空孔を閉塞し、電荷担体の通過を遮断する、シャットダウン機能を有する。
【0022】
セパレータ30は、樹脂基材36を備えている。ここで開示される技術において、樹脂基材36は多層構造であり、少なくとも、多孔質ポリエチレン層32と、多孔質高融点樹脂層34とを有している。図2に示すセパレータ30は、多孔質ポリエチレン層32と、多孔質高融点樹脂層34とで構成されている。言い換えれば、図2に示すセパレータ30は、樹脂基材36で構成されている。多孔質ポリエチレン層32は、負極20の負極活物質層24と対向するように配置されている。本発明者の検討によれば、負極20では正極10に比べて発熱の始まる温度が低い。言い換えれば、負極20は過充電のより早い段階で高温になる。多孔質ポリエチレン層32を負極20と対向するように配置することで、シャットダウン機能が効果的に作用し、ここで開示される技術の効果をより良く発揮することができる。
【0023】
多孔質ポリエチレン層32は、二次電池100の内部の温度が上昇した際に多孔質高融点樹脂層34よりも早く軟化または溶融する、シャットダウン層である。多孔質ポリエチレン層32は、ポリエチレン系樹脂を含んでいる。ポリエチレン系樹脂は、エチレンを主モノマーとする(モノマーのなかで最も多い割合を占める主成分とする)樹脂であり、好ましくは、エチレンの共重合割合が50質量%を超える樹脂である。ポリエチレン系樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、分岐状低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレンを主モノマーとするエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体等が例示される。
【0024】
ポリエチレン系樹脂は通常、その融点が、二次電池100の通常使用温度の上限よりも高く、典型的には70℃以上、例えば80℃以上である。したがって、二次電池100の通常使用時には、セパレータ30の多孔質構造が維持され、電荷担体が正極活物質層14と負極活物質層24との間をスムーズに行き来することができる。言い換えれば、正極10と負極20との間にイオン伝導パスを形成することができる。
ポリエチレン樹脂は、その融点が、概ね130℃以下、典型的には120℃以下、好ましくは110℃以下、例えば100℃以下であるとよい。これにより、二次電池100の内部の温度が大きく上昇する前に、シャットダウン機能を作用させることができる。その結果、温度上昇を抑制することができる。
なお、樹脂の融点は、一般的な示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry:DSC)によって測定することができる。
【0025】
多孔質ポリエチレン層32の空孔率は、2%以上5%以下である。これにより、過充電耐性をより良く向上することができる。つまり、二次電池100の内部の温度が上昇した際に、多孔質ポリエチレン層32の空孔を迅速に完全閉塞して、正負極間のイオン伝導を速やかに遮断することができる。その結果、二次電池100の内部の温度上昇をより良く抑制することができる。
【0026】
多孔質ポリエチレン層32の厚みは特に限定されないが、概ね0.1μm以上、例えば0.5μm以上であって、概ね2μm以下、例えば1μm以下であるとよい。これにより、良好なイオン伝導性を実現すると共に、ここで開示される技術の効果を安定的により良く発揮することができる。
【0027】
多孔質高融点樹脂層34は、多孔質ポリエチレン層32に含まれるポリエチレン系樹脂よりも融点の高い高融点樹脂を含んでいる。高融点樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース類、ポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂等が例示される。また、例えば多孔質ポリエチレン層32に、ポリエチレン樹脂として、LLDPEやLDPE、エチレン−プロピレン共重合体等の低融点ポリエチレン系樹脂を用いる場合には、多孔質高融点樹脂層34の高融点樹脂として、HDPEやエチレン−酢酸ビニル共重合体等の高融点ポリエチレン系樹脂を用いることもできる。機械的強度(例えば、引張強度や突刺強度)や化学的安定性を向上する観点からは、多孔質高融点樹脂層34がポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。なお、ここで「ポリオレフィン系樹脂」とは、主鎖骨格にカルボニル単位を含む化合物全般をいうものとする。
【0028】
多孔質高融点樹脂層34は、ここではポリプロピレン系樹脂を含む多孔質ポリプロピレン層である。ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンを主モノマーとする(モノマーのなかで最も多い割合を占める主成分とする)樹脂であり、好ましくは、プロピレンの共重合割合が50質量%を超える樹脂である。ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体(ホモポリマー)や、プロピレンを主モノマーとするエチレン−プロピレン共重合体(ランダムコポリマー、ブロックコポリマー)等が例示される。
【0029】
高融点樹脂の融点は、多孔質ポリエチレン層32に含まれるポリエチレン系樹脂よりも高い限りにおいて特に限定されない。高融点樹脂の融点は、多孔質ポリエチレン層32に含まれるポリエチレン系樹脂よりも、概ね5℃以上、典型的には10℃以上、好ましくは20℃以上、例えば30℃以上高いとよい。これにより、多孔質ポリエチレン層32がシャットダウン層として機能する際に、多孔質高融点樹脂層34の形状を保持し易くなる。したがって、正極10と負極20との短絡をより良く抑制することができる。また、多孔質ポリエチレン層32と多孔質高融点樹脂層34とに、それぞれ融点の異なる樹脂を含むことによって、二段階のシャットダウンを可能にすることができる。言い換えれば、多孔質高融点樹脂層34が第2のシャットダウン層としての機能を好適に発揮して、より高い過充電耐性を実現することができる。
【0030】
高融点樹脂の融点は、概ね100℃以上、典型的には110℃以上、好ましくは130℃以上、例えば150℃以上であるとよい。これにより、セパレータ30の耐熱性を向上することができる。高融点樹脂の融点は、概ね200℃以下、典型的には180℃以下、好ましくは170℃以下、例えば165℃以下であるとよい。これにより、多孔質高融点樹脂層34が第2のシャットダウン層として機能を好適に発揮し得る。
【0031】
多孔質高融点樹脂層34の空孔率は特に限定されないが、多孔質ポリエチレン層32の空孔率よりも大きいとよい。多孔質高融点樹脂層34の空孔率は、多孔質ポリエチレン層32の空孔率よりも、概ね5倍以上、好ましくは10倍以上、例えば20倍以上大きいとよい。具体的には、概ね35%以上、典型的には40%以上、例えば45%以上であって、概ね70%以下、典型的には65%以下、例えば60%以下であるとよい。これにより、二次電池100の通常使用時には、電解液の浸透性や保湿性が高められる。その結果、優れたイオン伝導性を実現することができる。また、セパレータ30の機械的強度や耐久性を向上することができる。
【0032】
多孔質高融点樹脂層34の厚みは特に限定されないが、概ね3μm以上、例えば5μm以上であって、概ね25μm以下、例えば20μm以下であるとよい。これにより、良好なイオン伝導性を実現すると共に、機械的強度や耐久性をより良く向上することができる。
【0033】
ここで開示される技術において、樹脂基材36の総厚みに対する多孔質ポリエチレン層32の厚みの比は、0.048以上0.091以下である。また、図2に示す態様では、多孔質高融点樹脂層(すなわち、多孔質ポリプロピレン層)34の厚みに対する多孔質ポリエチレン層32の厚みの比が0.05以上0.1以下である。これにより、樹脂基材36に空孔率が小さな多孔質ポリエチレン層32を含む態様であっても、セパレータ30の連通性を確保して、良好なイオン伝導性を実現することができる。したがって、通常使用時の電池特性と過充電耐性とをより良くバランスすることができる。
なお、セパレータ30の各層の厚みは、例えば電子顕微鏡(例えば、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM))観察によって実測することができる。例えば、セパレータ30の各層において、複数箇所で厚みを測定し、その平均値を採用することができる。
【0034】
樹脂基材36の総厚みは特に限定されないが、概ね5μm以上、典型的には5.5μm以上、例えば10μm以上であって、概ね50μm以下、好ましくは30μm以下、典型的には25μm以下、例えば22μm以下であるとよい。樹脂基材36の総厚みを所定値以上とすることで、セパレータ30の機械的強度(例えば、引張強度や突刺強度)や耐久性を向上することができる。また、樹脂基材36の総厚みを所定値以下とすることで、イオン伝導性を高めて、二次電池100のハイレート充放電特性を向上することができる。
【0035】
なお、セパレータ30の樹脂基材36は、図2に示すように多孔質ポリエチレン層32と多孔質高融点樹脂層34との2層構造であってもよいし、多孔質ポリエチレン層32と多孔質高融点樹脂層34とに加えて1以上の層を有する3層以上の構造であってもよい。例えば、多孔質ポリエチレン層32と多孔質高融点樹脂層34との間に1以上の層を設けてもよいし、多孔質高融点樹脂層34の多孔質ポリエチレン層32と対向していない側の表面に1以上の層を設けてもよい。一具体例として、多孔質ポリエチレン層32と、多孔質高融点樹脂層34と、更に他の多孔質高融点樹脂層と、がこの順に積層されてなる3層以上の構造が挙げられる。
【0036】
また、セパレータ30は、樹脂基材36の表面、例えば多孔質高融点樹脂層34の多孔質ポリエチレン層32と対向していない側の表面に、耐熱性および絶縁性を有する耐熱層(Heat Resistant Layer:HRL層)を備えていてもよい。耐熱層は、アルミナ等の無機化合物粒子(無機フィラー)を含んでいる。耐熱層は、電荷担体が通過可能なように、多孔質に構成されている。セパレータ30に耐熱層を備えることで、例えば二次電池100の内部の温度が多孔質高融点樹脂層34に含まれる高融点樹脂の融点を超え、樹脂基材36が縮んだり破断したりした場合であっても、正極10と負極20との短絡を防ぐことができる。
【0037】
また、樹脂基材36を構成する各層は、それぞれ、上記した樹脂成分のみで構成されていてもよく、樹脂成分以外の成分、例えば、可塑剤や酸化防止剤等の添加成分を含んでいてもよい。
【0038】
二次電池100の電解液は、典型的には溶媒と支持塩とを含む。支持塩は、溶媒中で解離して電荷担体を生成する。溶媒としては、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の非水溶媒が例示される。なかでも、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類が好適である。支持塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩等が例示される。なかでも、LiPF、LiBF等のリチウム塩が好適である。電解液は、溶媒と支持塩以外の成分、例えば、ビフェニル(BP)やシクロヘキシルベンゼン(CHB)等のガス発生剤、ホウ素原子および/またはリン原子を含むオキサラト錯体化合物、ビニレンカーボネート(VC)等の被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤等を含んでいてもよい。
【0039】
二次電池100の電池ケース50は、上端が開放された扁平な直方体形状(角形)の電池ケース本体52と、その開口部を塞ぐ蓋板54とを備えている。電池ケース50の上面(すなわち蓋板54)には、外部接続用の正極端子70および負極端子72が設けられている。正極端子70は、正極活物質層非形成部分12nに設けられた正極集電板12cを介して、電極体40の正極10と電気的に接続されている。負極端子72は、負極活物質層非形成部分22nに設けられた負極集電板22cを介して、電極体40の負極20と電気的に接続されている。
【0040】
ここで開示される二次電池100は各種用途に利用可能であるが、セパレータ30を備えることにより、従来の電池に比べて過充電耐性が向上していることを特徴とする。したがって、かかる特徴を活かして、例えば、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車等に搭載される高容量な駆動用電源として好適に利用することができる。
【0041】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0042】
<試験例I>
本試験例では、多孔質ポリエチレン層の空孔率と過充電耐性との関係性について検討を行った。具体的には、まず、セパレータとして、多孔質ポリエチレン層(以下PE層という。)と、多孔質ポリプロピレン層(以下、PP層という。)との2層で構成され、PE層の空孔率のみが異なる5種類のセパレータシート(例1〜5)を用意した。なお、セパレータを構成する各層の性状は下記の通りである。
・PE層:ポリエチレン系樹脂(融点:110℃)を含み、厚みが1μmであり、空孔率が2〜20%のもの。
・PP層:ポリプロピレン系樹脂(融点:130℃)を含み、厚みが10μmであり、空孔率が40%のもの。
【0043】
次に、このセパレータシート(例1〜5)を用いて、リチウムイオン二次電池を構築した。具体的には、下記正極シートと下記負極シートとをセパレータシートを介して重ね合わせて、電極体を得た。このとき、セパレータシートのPP層が正極と対向し、PE層が負極と対向するように配置した。得られた電極体を下記電解液と共に電池ケース内に収容して、二次電池(例1〜5)を構築した。そして、構築した二次電池の電池ケースの外面に、温度センサを張り付けた。
・正極:アルミ箔(正極集電体)の表面に、リチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質層を備えた正極シート。
・負極:銅箔(負極集電体)の表面に、炭素材料(負極活物質)を含む負極活物質層を備えた負極シート。
・電解液:エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの体積比が30:40:30の混合溶媒に、LiPF(支持塩)を溶解させたもの。
【0044】
次に、例1〜5の二次電池を過充電状態まで充電し、二次電池の最高電池温度を比較した。具体的には、電池電圧が25Vになるまで二次電池を充電し、このときの二次電池の最高到達温度を比較した。結果を表1、図3に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1および図3に示すように、PE層の空孔率が高くなるほど、最高電池温度が高くなる傾向があった。特に、PE層の空孔率が5%を超えたあたりからその傾向が顕著になり、PE層の空孔率が10%以上である例3〜5では、最高電池温度が120℃以上となっていた。
一方、PE層の空孔率が2〜5%である例1,2では、最高電池温度が110℃以下であり、例3〜5に比べて相対的に過充電時における電池内部の温度上昇が抑制されていた。これは、PE層の空孔率が小さいほど、セパレータのシャットダウンを短い時間で完了することができ、正負極間のイオン伝導を速やかに遮断することができたためと考えられる。このことから、PE層の空孔率を5%以下とすることは、過充電耐性を向上する観点から有効であるとわかった。また、PE層の空孔率が2%以上であれば、セパレータの連通性を確保できるとわかった。
【0047】
<試験例II>
本試験例では、樹脂基材の総厚みに対する多孔質ポリエチレン層(PE層)の厚みの比(厚み比)と過充電耐性との関係性について検討を行った。具体的には、表2に示す厚み比のセパレータ(例6〜11)を用いたこと以外は上記試験例Iの例2と同様に、リチウムイオン二次電池(例6〜11)を構築し、25Vまで充電する過充電試験を行った。結果を表2、図4に示す。なお、表2の「厚み比」は、樹脂基材の総厚みに対するPE層の厚みの比であり、小数点以下第4位を四捨五入して示している。
【0048】
【表2】
【0049】
表2および図4に示すように、PE層の厚み比が大きくなるほど、最高電池温度が高くなる傾向があった。特に、PE層の厚み比が0.091を超えたあたりから、その傾向が顕著になり、PE層の厚み比が0.130以上である例8〜11では、最高電池温度が110℃以上となっていた。
一方、PE層の厚み比が0.048〜0.091である例6,7では、最高電池温度が110℃以下であり、例8〜11に比べて相対的に過充電時における電池内部の温度上昇が抑制されていた。これは、PE層の厚み比が小さいほど、セパレータのシャットダウンを短い時間で完了することができたためと考えられる。このことから、PE層の厚み比を0.048〜0.091とすることは、過充電耐性を向上する観点から有効であるとわかった。
【0050】
<試験例III>
本試験例では、多孔質ポリエチレン層(PE層)および多孔質ポリプロピレン層(PP層)の絶対的な厚みと過充電耐性との関係性について検討を行った。具体的には、表3に示す厚みのセパレータ(例12〜15)を用いたこと以外は上記試験例Iの例2と同様に、リチウムイオン二次電池(例12〜15)を構築し、25Vまで充電する過充電試験を行った。結果を表3、図5に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
表3および図5に示すように、例12〜15では、PE層およびPP層の絶対的な厚みが変化しても、最高電池温度は110℃以下であり、過充電時における電池内部の温度上昇が抑制されていた。
【0053】
上記の結果から明らかなように、ここで開示される技術によれば、電池内部の温度上昇が抑制され、過充電耐性に優れた二次電池を実現することができる。
【0054】
以上、本発明を詳細に説明したが、上記実施形態および実施例は例示にすぎず、ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0055】
10 正極
20 負極
30 セパレータ
32 多孔質ポリエチレン層
34 多孔質高融点樹脂層
36 樹脂基材
40 電極体
50 電池ケース
100 二次電池
図1
図2
図3
図4
図5