特許第6443714号(P6443714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6443714蒸気生成装置、吸着材収容器、及び蒸気生成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443714
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】蒸気生成装置、吸着材収容器、及び蒸気生成方法
(51)【国際特許分類】
   F24V 30/00 20180101AFI20181217BHJP
   F22B 1/18 20060101ALI20181217BHJP
   F22B 3/02 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   F24V30/00
   F22B1/18 C
   F22B3/02
【請求項の数】4
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-74334(P2014-74334)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-64192(P2015-64192A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2017年3月29日
(31)【優先権主張番号】特願2013-178565(P2013-178565)
(32)【優先日】2013年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23〜25年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 省エネルギー革新技術開発事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
(73)【特許権者】
【識別番号】307020545
【氏名又は名称】公立大学法人岡山県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(72)【発明者】
【氏名】川上 理亮
(72)【発明者】
【氏名】谷野 正幸
(72)【発明者】
【氏名】安部 義男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 香澄
(72)【発明者】
【氏名】深井 潤
(72)【発明者】
【氏名】板谷 義紀
(72)【発明者】
【氏名】中川 二彦
(72)【発明者】
【氏名】中曽 浩一
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4621816(JP,B2)
【文献】 特開平08−192021(JP,A)
【文献】 特開2004−003832(JP,A)
【文献】 特開2005−127683(JP,A)
【文献】 特開平01−210013(JP,A)
【文献】 特表昭56−500537(JP,A)
【文献】 特開昭56−006163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24V 30/00
F22B 1/18
F22B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に多孔質体が充填された吸着材収容部と、
前記吸着材収容部に、50〜100℃の温水を供給する温水供給部と、
前記吸着材収容部の吸着材に前記温水を吸着させることで発生した蒸気を排出する蒸気排出部と、
前記吸着材収容部に、露点が−20℃以下の乾燥空気を供給し、前記吸着材に吸着された吸着水を脱着して当該吸着材を再生させる乾燥空気供給部と、を備え、
前記吸着材収容部は、多孔質体としての前記吸着材の他に、非吸着性充填物を含み、
前記吸着材収容部は、非吸着性充填物が充填される第一の部分と、前記第一の部分の充填比率と異なる充填比率で非吸着性充填物が充填される第二の部分と、を有する、
蒸気生成装置。
【請求項2】
内部に多孔質体が充填された吸着材収容部と、
前記吸着材収容部に供給される50〜100℃の温水を受け入れる供給口と、
前記吸着材収容部の吸着材に前記温水を吸着させることで発生した蒸気を排出する排出口と、を備え、
前記吸着材収容部は、多孔質体としての前記吸着材の他に、非吸着性充填物を含み、
前記吸着材収容部は、非吸着性充填物が充填される第一の部分と、前記第一の部分の充填比率と異なる充填比率で非吸着性充填物が充填される第二の部分と、を有する、
吸着材収容器。
【請求項3】
内部に多孔質体が充填された吸着材収容部に、50〜100℃の温水を供給する温水供給ステップと、
前記吸着材収容部の吸着材に前記温水を吸着させることで発生した蒸気を排出する蒸気排出ステップと、
前記吸着材収容部に、露点が−20℃以下の乾燥空気を供給し、前記吸着材を再生させる乾燥空気供給ステップと、を備え、
前記吸着材収容部は、多孔質体としての前記吸着材の他に、非吸着性充填物を含み、
前記吸着材収容部は、非吸着性充填物が充填される第一の部分と、前記第一の部分の充填比率と異なる充填比率で非吸着性充填物が充填される第二の部分と、を有する、
蒸気生成方法。
【請求項4】
内部に多孔質体が充填された吸着材収容部に、50〜100℃の温水を供給する温水供給ステップと、
前記吸着材収容部の吸着材に前記温水を吸着させることで発生した蒸気を排出する蒸気排出ステップと、を備え、
前記吸着材収容部は、多孔質体としての前記吸着材の他に、非吸着性充填物を含み、
前記吸着材収容部は、非吸着性充填物が充填される第一の部分と、前記第一の部分の充填比率と異なる充填比率で非吸着性充填物が充填される第二の部分と、を有する、
蒸気生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気生成装置、及び蒸気生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の資源的制約や地球温暖化問題などを背景として、省エネルギーの更なる要請はますます強まっている。例えば、特許文献1には、自然エネルギーを用いて、ゼオライトに対する水の吸着・脱着を可逆的に行うことによって過熱水蒸気を生成する、ゼオライト式の過熱水蒸気生成装置が開示されている。また、例えば、特許文献2には、ガスエンジン又は燃料電池を用いたコージェネレーションシステムとして、吸着器が吸着過程にあるときに上水を通水するとともに、吸着器が再生過程にあるときは当該吸着器に接続されている凝縮器に上水を通水するように構成された吸着ヒートポンプシステムが開示されている。また、特許文献2では、吸着器にシリカゲル及びゼオライト等の吸着材を充填することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4621816号公報
【特許文献2】特開2006−29605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、鉄鋼産業や石油化学産業では、50〜100℃の排温水が大量に発生する。このような排温水は、再生エネルギーとして活用するには温度が低いため、回収されずに廃棄されていた。一方、このような排温水は、廃棄するには温度が高いため、冷却塔などを利用して、放熱し、廃棄していた。換言すると、廃棄するために、別途エネルギーを用いなければならなかった。そこで、本発明者らは、このような従来廃棄されていた排温水を回収して、再生エネルギーを生成すべく、ゼオライトを用いた蒸気生成装置に着目した。また、この蒸気生成装置を用いたシステムでは、排温水を回収して、再生エネルギーを生成する上では、継続的に再生エネルギー(水蒸気)を生成できることが求められる。つまり、ゼオライトを用いた蒸気生成装置を用いる上では、ゼオライトへの水の吸着・脱着を可逆的に繰り返すことが可能であり、連続的に水蒸気を生成可能な技術が必要となる。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑み、50〜100℃の排温水から水蒸気を生成でき、かつ、冷却塔などを用いた排温水の廃棄よりも少ない消費エネルギーで連続的に水蒸気を生成できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するため、50〜100℃の排温水をゼオライトに吸着させ、その際の吸着熱により水蒸気を生成することとした。また、本発明では、露点が−20℃以下の乾燥空気を供給してゼオライトなどの多孔質体の吸着水を脱着(再生)再生することとした。
【0007】
詳細には、本発明は、内部にゼオライトが充填されたゼオライト収容部と、前記ゼオライト収容部に、50〜100℃の温水を供給する温水供給部と、前記ゼオライト収容部のゼオライトに前記温水を吸着させることで発生した蒸気を排出する蒸気排出部と、前記ゼオライト収容部に、露点が−20℃以下の乾燥空気を供給し、前記ゼオライトに吸着された吸着水を脱着して当該ゼオライトを再生させる乾燥空気供給部と、を備える蒸気生成装
置である。
【0008】
本発明に係る蒸気生成装置は、ゼオライト収容部に充填されたゼオライトと温水供給部から供給される温水とが接して、その際に発生する吸着熱により水蒸気を生成する。温水には、例えば、鉄鋼産業や石油化学産業において、従来回収されずに廃棄されていた50〜100℃の排温水が例示される。本発明に係る蒸気生成装置では、従来廃棄されていた排温水から水蒸気を生成することができる。また、従来、排温水の廃棄には、冷却塔で冷却するなど、別途エネルギーを用いなければならなかった。しかしながら、本発明に係る蒸気生成装置によれば、そのような廃棄のための無駄なエネルギーを用いる必要もない。また、本発明に係る蒸気生成装置で生成された水蒸気は、生産プロセス等で利用でき、従来廃棄していた温熱を高品質なエネルギーに転嫁できる。更に、本発明に係る蒸気生成装置は、乾燥空気供給部を備えることで、ゼオライトに吸着されている吸着水を効果的に脱着させることができる。その結果、ゼオライトの再生が促進され、連続的に水蒸気を生成することができる。
【0009】
なお、ゼオライトの吸着熱を利用した吸着式ヒートポンプの原理自体は、例えば、特許文献2(特開2006−29605)に記載されているように、従来より知られている。しかしながら、これらは一般に、ゼオライトが充填された蒸気生成器内に熱交換器が内蔵され、その熱交換器に水を供給することで加熱/冷却をして蒸気発生(脱着)/蒸気吸着をさせる間接熱交換方式であった。そのため、従来の吸着式ヒートポンプは、本発明に係る蒸気生成装置のような、ゼオライトと温水との吸着熱によって供給温水自身を加熱して蒸気を発生させる直接熱交換方式と比較すると、熱交換性能が悪く、また、熱交換性能を向上するとなるとよりシステムが複雑化するといった問題があった。これに対し、本発明に係る蒸気生成装置は、熱交換器が内蔵されておらず、従来よりも簡易な構成でありながら、廃棄された温水を利用して水蒸気を生成することができる。なお、ゼオライトに代えて他の多孔質体を用いてもよい。他の多孔質体には、シリカゲル、アルミナ、酸化チタン、高分子収着剤が例示される。
【0010】
ここで、本発明に係る蒸気生成装置は、前記ゼオライト収容部、前記温水供給部、及び前記乾燥空気供給部を複数備え、前記複数のゼオライト収容部は、並列に配置され、前記温水供給部、及び前記乾燥空気供給部を制御する制御部を更に備え、前記制御部は、各ゼオライト収容部内におけるゼオライトの吸着及び脱着が連続して行われるよう、各温水供給部による温水の供給のタイミング、及び各乾燥空気供給部による乾燥空気の供給のタイミングを制御するようにしてもよい。
【0011】
ゼオライト収容部等を複数備え、複数のゼオライト収容部は、並列に配置する構成とすることで、一のゼオライト収容部のゼオライトが脱着している場合でも、他のゼオライト収容部のゼオライトで吸着することができる。そのため、装置全体として、より連続的に水蒸気を生成することができる。
【0012】
また、前記温水供給部は、前記ゼオライト収容部の下部に設けられ、前記蒸気排出部は、前記ゼオライト収容部の上部に設けられていてもよい。温水をゼオライトの下部から供給することで、水平方向の温水の分布を均一にすることができる。また、ゼオライトの水平方向の断面から一様に生成された水蒸気は、ゼオライトの上部から排出することができる。
【0013】
なお、前記温水供給部は、前記ゼオライト収容部の上部に設けてもよい。この場合、生成された水蒸気と供給される温水との熱交換を抑制するため、前記蒸気排出部は、前記ゼオライト収容部の下部に設けた方がよい。
【0014】
また、前記ゼオライト収容部は、内部に複数のゼオライト層を有するものでもよい。ゼオライト層は、1層でもよいが、複数とすることでより効率よく水蒸気を生成することができる。例えば、下段のゼオライト層を予熱用、上段のゼオライト層を蒸気生成用といったように、ゼオライト層毎に機能を割り当ててもよい。このようにすることで、より効率よく水蒸気を生成することができる。
【0015】
また、前記乾燥空気供給部は、前記ゼオライト収容部内における前記乾燥空気の速度が1.5m/sec以下となるように当該乾燥空気を供給するようにしてもよい。これにより、ゼオライトを再生する際、ゼオライト収容部内の存在する再生空気の偏流を抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係る蒸気生成装置は、前記温水供給部から供給される温水を加温する温水加温部を更に備える構成でもよい。これにより、水蒸気を生成する能力をより向上することができる。
【0017】
また、本発明に係る蒸気生成装置は、前記乾燥空気調整部から供給される乾燥空気の温度を調整する乾燥空気の温度調整部と、前記乾燥空気調整部から供給される乾燥空気の湿度を調整する乾燥空気の湿度調整部と、のうち少なくとも何れか一方を更に備える構成でもよい。温度調整部を備えることで、例えば供給される乾燥空気の温度を上げることで、ゼオライトを再生する能力をより向上することができる。また、湿度調整部を備えることで、例えば供給される乾燥空気の湿度を下げることで、ゼオライト内の水分除去をより効率よく行うことができる。その結果、ゼオライトを再生する能力をより向上することができる。
【0018】
また、本発明に係る蒸気生成装置は、前記ゼオライトの再生後に、前記ゼオライト収容部内の空気を真空引きして脱気する脱気部を更に備える構成でもよい。これにより、生成された水蒸気内に空気が存在することを抑制することができる。
【0019】
また、本発明に係る蒸気生成装置は、前記蒸気排出部から排出する蒸気の一部を前記ゼオライト収容部に供給し、当該ゼオライト収容部内のゼオライトを予熱する予熱部を更に備える構成でもよい。これにより、ゼオライトの一部を予熱することが可能となり、その結果、水蒸気を生成する能力をより向上することができる。
【0020】
また、本発明に係る蒸気生成装置は、前記ゼオライト収容部内の温度情報、又は圧力情報に基づいて、前記温水供給部による温水の供給のタイミング、又は、前記乾燥空気供給部による乾燥空気の供給のタイミングを制御する制御部を更に備える構成でもよい。これにより、より効率よく水蒸気の生成やゼオライトの再生を行うことができる。
【0021】
ここで、ゼオライト収容部に充填されたゼオライトと温水供給部から供給される温水とが接して、その際に発生する吸着熱により水蒸気を生成する際、ゼオライト収容部は、急激に温度変化(例えば、温度上昇)することが想定される。また、例えば、ゼオライト収容部が急激に温度上昇し、ゼオライト収容部の温度が高くなりすぎると、ゼオライト収容部の吸着量が低下することが考えられる。また、ゼオライト収容部が急激に温度変化すると、ゼオライト収容部が破損してしまうことも考えられる。そこで、本発明は、このようなゼオライト収容部の温度変化を緩和するようにしてもよい。
【0022】
具体的には、本発明に係る蒸気生成装置において、前記ゼオライト収容部は、多孔質体としてのゼオライトの他に、非吸着性充填物を含むものでもよい。ゼオライト収容部に非吸着性充填物を充填することで、ゼオライト収容部の急激な温度変化を抑制することができる。換言すると、ゼオライト収容部の温度を制御することができる。その結果、ゼオラ
イト収容部の温度が高すぎる場合に懸念される、ゼオライト収容部の吸着量の低下を抑制することができる。また、ゼオライト収容部の吸着量を向上することができ、より効率よく水蒸気を生成することができる。更に、ゼオライト収容部の急激な温度変化による、ゼオライト収容部の劣化や破損の発生を抑制することができる。非吸着性充填物には、ガラスビーズ、アルミナが例示される。
【0023】
また、前記非吸着性充填物は、前記ゼオライト収容部内の温度変化に応じて、当該ゼオライト収容部に対する充填比率を変更してもよい。ゼオライト収容部内の温度変化の値は、実験等によって得ることができる。例えば、温水供給部をゼオライト収容部の下部に設けた場合には、ゼオライト収容部は、下部と比較して、上部の温度が高くなる。すなわち、ゼオライト収容部は、領域毎に温度変化が異なる。したがって、最も温度が高くなることが想定される領域の温度変化に応じて、非吸着性充填物の充填比率を変えてもよい。その結果、ゼオライト収容部の温度をより効果的に制御することができ、ゼオライト収容部の吸着量を更に向上することができ、より効率よく水蒸気を生成することができる。また、ゼオライト収容部の急激な温度変化による、ゼオライト収容部の劣化や破損の発生をより確実に抑制することができる。なお、非吸着性充填物の充填比率は、ゼオライト収容部の平均温度の温度変化に応じて変えてもよい。また、前記非吸着性充填物は、前記ゼオライト収容部内の領域毎の温度変化に基づいて、当該ゼオライト収容部に対する充填比率を異なるようにしてもよい。これにより、例えば温度変化が想定される領域のみ非吸着性充填物を充填することができる。
【0024】
ここで、本発明は、蒸気生成方法として特定することもできる。例えば、本発明は、内部にゼオライトが充填されたゼオライト収容部に、50〜100℃の温水を供給する温水供給ステップと、前記ゼオライト収容部のゼオライトに前記温水を吸着させることで発生した蒸気を排出する蒸気排出ステップと、前記ゼオライト収容部に、露点が−20℃以下の乾燥空気を供給し、前記ゼオライトを再生させる乾燥空気供給ステップと、を備える蒸気生成方法である。本発明に係る蒸気生成方法によれば、50〜100℃の排温水から水蒸気を生成でき、かつ、排温水の廃棄よりも少ない消費エネルギーで連続的に水蒸気を生成することができる。
【0025】
なお、前記ゼオライト収容部、前記温水供給部、及び前記乾燥空気供給部を複数備え、前記温水供給部、及び前記乾燥空気供給部を制御する制御ステップを更に備え、前記制御ステップでは、各ゼオライト収容部内におけるゼオライトの吸着及び脱着が連続して行われるよう、各温水供給部による温水の供給のタイミング、及び各乾燥空気供給部による乾燥空気の供給のタイミングを制御するようにしてもよい。
【0026】
また、前記温水供給ステップでは、前記ゼオライト収容部の下部から温水を供給し、前記蒸気排出ステップでは、前記ゼオライト収容部の上部から蒸気を排出してもよい。また、前記温水供給ステップでは、前記ゼオライト収容部の上部から温水を供給してもよい。この場合、前記蒸気排出ステップでは、前記ゼオライト収容部の下部から蒸気を排出した方がよい。
【0027】
また、前記乾燥空気供給ステップでは、前記ゼオライト収容部内における前記乾燥空気の速度が1.5m/sec以下となるように当該乾燥空気を供給してもよい。
【0028】
また、本発明に係る蒸気生成方法は、前記温水供給ステップにおいて供給される温水を加温する温水加温ステップを更に備えてもよい。
【0029】
また、本発明に係る蒸気生成方法は、前記乾燥空気調整ステップにおいて供給される乾燥空気の温度を調整する乾燥空気の温度調整ステップと、前記乾燥空気調整において供給
される乾燥空気の湿度を調整する乾燥空気の湿度調整ステップと、のうち少なくとも何れか一方を更に備えるものでもよい。
【0030】
また、本発明に係る蒸気生成方法は、前記ゼオライトの再生後に、前記ゼオライト収容部内の空気を真空引きして脱気する脱気ステップを更に備えるものでもよい。
【0031】
また、本発明に係る蒸気生成方法は、前記蒸気排出ステップにおいて排出される蒸気の一部を前記ゼオライト収容部に供給し、当該ゼオライト収容部内のゼオライトを予熱する予熱ステップを更に備えるものでもよい。
【0032】
また、本発明に係る蒸気生成方法は、前記ゼオライト収容部内の温度情報、又は圧力情報に基づいて、前記温水供給ステップにおける温水の供給のタイミング、又は、前記乾燥空気供給ステップにおける乾燥空気の供給のタイミングを制御する制御ステップを更に備えるものでもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、50〜100℃の排温水から水蒸気を生成でき、かつ、冷却塔などを用いた排温水の廃棄よりも少ない消費エネルギーで連続的に水蒸気を生成できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、第1実施形態に係る蒸気生成器における吸着および再生のサイクルを示す。
図2図2は、第1実施形態に係る蒸気生成器を含むシステムの構成を示す。
図3図3は、第1実施形態に係る蒸気生成器の断面図を示す。
図4図4は、第1実施形態に係る蒸気生成器を含むシステムにおける各種弁の開閉状態の一例を示す。
図5図5は、第1実施形態に係る蒸気生成器において、給水と蒸気排気の位置関係を示す。
図6図6は、第2実施形態に係る蒸気生成器の断面図を示す。
図7図7は、第3実施形態に係る蒸気生成器の断面図を示す。
図8図8は、第4実施形態に係る蒸気生成器を含むシステムの構成を示す。
図9図9は、第4実施形態に係る蒸気生成器を含むシステムにおける各種弁の開閉状態の一例を示す。
図10A図10Aは、第5実施形態に係る蒸気生成器について、温度センサの設置例を示す。
図10B図10Bは、第5実施形態に係る蒸気生成器について、再生工程を終了する際のゼオライトの温度と経過時間との関係を示す。
図10C図10Cは、第5実施形態に係る蒸気生成器について、再生工程を終了する際に行われる処理フローを示す。
図11A図11Aは、第6実施形態に係る蒸気生成器について、圧力センサの設置例を示す。
図11B図11Bは、第6実施形態に係る蒸気生成器について、減圧工程を終了する際の蒸気生成器内の圧力と経過時間との関係を示す。
図11C図11Cは、第6実施形態に係る蒸気生成器について、減圧工程を終了する際に行われる処理フローを示す。
図12A図12Aは、第7実施形態に係る蒸気生成器について、温度センサの設置例を示す。
図12B図12Bは、第7実施形態に係る蒸気生成器について、給水工程を終了する際の蒸気生成器内の温度と経過時間との関係を示す。
図12C図12Cは、第7実施形態に係る蒸気生成器について、給水工程を終了する際に行われる処理フローを示す。
図13A図13Aは、第8実施形態に係る蒸気生成器について、温度センサの設置例を示す。
図13B図13Bは、第8実施形態に係る蒸気生成器について、吸着工程を終了する際の蒸気生成器内の温度と経過時間との関係を示す。
図13C図13Cは、第8実施形態に係る蒸気生成器について、吸着工程を終了する際に行われる処理フローを示す。
図14A図14Aは、第9実施形態に係る蒸気生成器について、各種センサの設置例を示す。
図14B-1】図14B−1は、第9実施形態に係る蒸気生成器について、再生工程を終了する際の蒸気生成器内の露点と経過時間との関係を示す。
図14B-2】図14B−2は、第9実施形態に係る蒸気生成器について、再生工程を終了する際の蒸気生成器内の差圧と経過時間との関係を示す。
図14B-3】図14B−3は、第9実施形態に係る蒸気生成器について、再生工程を終了する際の蒸気生成器内の温度と経過時間との関係を示す。
図14C図14Cは、第9実施形態に係る蒸気生成器について、再生工程を終了する際に行われる処理フローを示す。
図15A図15Aは、比較例に係るゼオライト層の温度変化の一例のグラフを示す。
図15B図15Bは、図15Aのグラフにおける測定点を示す。
図16図16は、ラボ装置で行った、ゼオライト層の平均温度変化のグラフを示す。
図17図17は、ラボ装置の概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<背景>
化石燃料の資源的制約や地球温暖化問題などを背景として、省エネルギーの更なる要請はますます強まっている。石油危機を契機として、産業部門でのエネルギー消費は、他の運輸、民生部門で大きく伸びているのに対して、ほとんどゼロ成長であるものの、全消費量の過半数を占めていることからこれまで以上の削減が求められている。
【0036】
例えば鉄鋼分野の製鉄所では転炉フード、連続鋳造設備のモールド、鋼材加熱炉のスキッドなどの冷却に純水が用いられている。冷却水の出口温度は60〜90℃と低く、その排熱は従来の技術では回収が難しいため、ファンを設置した冷却タワーで、エネルギーを使って冷却し大気に捨てられている。このような未利用温水廃熱は粗鋼生産量1000万t/年規模の製鉄所において1000〜2000t/h発生している。
【0037】
一方、CO2分離・回収はCCSと革新的製鉄プロセスの2分野で、21分野あるCo
ol Earth−エネルギー革新技術計画の中核技術に位置付けられており、鉄鋼向けではNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の大きな戦略的事業の一つとしてCOURSE50(革新的製鉄プロセス技術開発)が進められている。COURSE50の中で実用化の期待が大きいアミン法(湿式のCO2吸着方法)はアミン液(CO2吸着液)を120℃以上に加熱する熱源が必要になる。また、COURSE50が目標とするCO2分離で△10%以上のCO2削減を達成するためには、粗鋼生産量が1000万t/年規模の製鉄所において200万t−CO2/年以上のCO2を分離する必要があり、それには140℃の水蒸気(120℃のアミン液との温度差20℃として)に換算して新たに180万t−蒸気/年相当の熱源が必要になる。
【0038】
この水蒸気量は現在製鉄所で使用される総水蒸気量とほぼ等しく、高炉などから発生す
る回収可能な高温排熱の大半を既に水蒸気で回収済みの国内製鉄所では、従来技術で更なる蒸気を回収し、CO2分離に必要な量を確保することは不可能である。従って、Coo
l Earth−エネルギー革新技術計画のロードマップ通りにCO2分離技術の導入を
進めるためには、化石燃料を使うボイラーを設置するか、従来水蒸気を使っていた設備のエネルギー源を電力などのより価値の高いエネルギーに振替える必要が出てくる。もちろんこれらの手段でもCO2は削減できるが、これらの方法はエネルギーの使用合理化に逆
行し、大きなコスト増加も招く。そこで、従来は棄てていた未利用温水廃熱からCO2
離に必要なエネルギーを再生し、回生する技術を開発・実用化することが極めて重要になる。一方、化学産業分野でのエネルギー消費量は、鉄鋼分野に次いで多く、二酸化炭素排出量に換算して全体の7%に及んでいる。なかでも石油化学産業でのエネルギー消費量は、化学産業の53%を占めている。しかし、石油化学業界の製造プラントのエネルギー効率は世界最高レベルにあるため、革新的な省エネルギー技術開発が喫緊の課題となっている。NEDO平成21年度エコイノベーション推進事業「石油化学業界における革新的エネルギー変換に関する探索研究」(平成21年度成果報告書09002771−0、09002773−0)によると、石油化学製品製造プラントで使用された温度領域別エネルギー量は、143℃以上の蒸気のエネルギー利用量が極めて大きい。また、同様の石油化学製品製造に係る排温水と排ガスの排熱量に関する排出温度領域別データからは、30〜50℃の排温水と80〜150℃程度の排ガスが主要な未利用廃熱であり、温水と排ガスの基準温度をそれぞれ30℃と80℃とすると、そのエネルギー量は製造時に使用した蒸気エネルギーの74%にも相当することが報告されている。このような現状から、50〜100℃の未利用廃熱(温水廃熱)から140℃以上の蒸気生成ヒートポンプのニーズは極めて高いと言える。
【0039】
<概要>
上述した背景を踏まえ、本発明者らは、従来廃棄されていた排温水を回収して、再生エネルギーを生成すべく、ゼオライトを用いた蒸気生成器を用いることとした。蒸気生成器とは、吸着式ヒートポンプである。ここで、図1は、第1実施形態に係る蒸気生成器における吸着および再生のサイクルを示す。基準状態(状態1)から排温水をゼオライトに吸着させ、蒸気生成器の温度を蒸気温度(状態2)まで予熱する(A:予熱工程)。その後、さらに圧力を上げて、蒸気生成器内に供給した排温水をゼオライトの吸着熱で加熱し、目的温度(状態3)の蒸気を生成する(B:吸着工程)。以上の操作は主に圧力を制御することによって行う。その後、減圧させ(減圧工程)状態4に達した後、ゼオライト粒子を減圧操作および乾燥空気に接触させて、状態1に戻す(C−D:再生(脱着)工程)。
【0040】
ゼオライトの吸着熱を利用した吸着式ヒートポンプの原理自体は、従来より知られている。但し、従来の吸着式ヒートポンプ(例えば、特許文献2(特開2006−29605))は、蒸気生成器内に熱交換器が内蔵され、その熱交換器に水を供給することで加熱/冷却をして蒸気発生(脱着)/蒸気吸着をさせる間接熱交換方式であり、直接熱交換方式に対して熱交換性能が悪く、熱交換機構の熱容量の増大によって熱ロスが多くなりシステムが複雑になる問題点があった。このような問題を解決するため、実施形態に係るゼオライトを用いた蒸気生成器では、蒸気生成器内のゼオライトに直接温水を供給し、ゼオライトと温水との吸着熱によって供給温水自身を加熱して蒸気を発生させる直接熱交換方式とした。また、再生工程において、−20℃以下の露点を有する乾燥空気を使用してゼオライトを再生することとした。以下、詳細に説明する。
【0041】
<実施形態>
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。以下に説明する実施形態は例示にすぎず、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0042】
<第1実施形態>
<<蒸気生成装置の構成>>
図2は、第1実施形態に係る蒸気生成器を含むシステム100の構成を示す。図3は、第1実施形態に係る蒸気生成器の断面図を示す。
【0043】
第1実施形態に係るシステム100は、蒸気生成器4、給水ポンプ5、温水供給管11、蒸気供給管12、圧縮空気供給管13、再生空気供給管9、真空排気管16、排水管14、排気管15、制御装置20等を備える。
【0044】
蒸気生成器4(本発明のゼオライト収容部に相当する)は、内部にゼオライトを収容する。図3に示すように、蒸気生成器4は、粒状のゼオライトが充填されたゼオライト層41の下部に設けられ、ゼオライト層41を受ける下金網42、ゼオライト層41の上部に設けられ、再生時のゼオライトの飛散を防止する上金網43、供給される温水を受け入れると共に再生空気を排出する供給口兼再生空気排出口45、ゼオライトを再生するために送り込まれる再生空気を受け入れる再生空気供給口46、生成した蒸気を排出する生成蒸気の排出口47、および圧力センサや温度センサなどの取り付け口48を備える。第1実施形態に係る蒸気生成器4は、所謂第1種圧力容器である。蒸気生成器4では、供給される温水がゼオライトに吸着され、吸着熱によって蒸気が生成される。
【0045】
給水ポンプ5は、温水が流れる温水供給管11に設けられ、50〜100℃の温水(排温水)を圧送する。温水供給管11は、一端が鉄鋼施設や石油化学施設からの温水(排温水)が流れる配管(図示せず)と接続され、温水供給管11の途中で分岐し、他端が蒸気生成器4(4−1,4−2,4−3)の下部の供給口兼再生空気排出口45と接続されている。温水供給管11には、給水ポンプ5に加えて、給水ポンプ5の下流側に温水を加温する温水の加温装置6、蒸気生成器4(4−1,4−2,4−3)への給水量を調整自在な給水弁23−1,23−2,23−3が設けられている。給水ポンプ5、温水供給管11、給水弁23−1,23−2,23−3は、本発明の温水供給部の機能を担う。
【0046】
蒸気供給管12は、蒸気生成器4で生成された蒸気が流れ、蒸気生成器4の外部に蒸気を利用する利用機器等や、蒸気を利用可能な施設等に供給する。蒸気供給管12は、一端が各蒸気生成器4−1,4−2,4−3の上部の生成蒸気の排出口47と接続され、蒸気供給管12が合流し、他端は蒸気を利用可能な利用機器等や施設等(シャワー室、サウナ、殺菌室など)に接続され、生成された蒸気が再生エネルギーとして利用される。蒸気供給管12の接続先は、蒸気を利用できればよく、利用機器や施設等に限定されない。排出された蒸気は、例えば、製鉄所におけるCO2分離に用いることができる。蒸気供給管1
2には、各蒸気生成器4−1,4−2,4−3の近傍(合流前の蒸気供給管)に蒸気供給弁21−1,21−2,21−3が設けられ、蒸気生成器4で生成された蒸気の供給、非供給の切り替えが可能である。蒸気供給管12、蒸気供給弁21−1,21−2,21−3は、本発明の蒸気排気部の機能を担う。
【0047】
圧縮空気供給管13は、コンプレッサ(図示せず)等で圧縮された空気が流れ、圧縮された空気を各蒸気生成器4−1,4−2,4−3へ供給する。圧縮空気供給管13は、一端が図示しないコンプレッサ等に接続され、他端が各蒸気生成器4−1,4−2,4−3の上部の再生空気供給口46に接続されている。圧縮空気供給管13には、パージ空気弁26−1,26−2,26−3が設けられている。
【0048】
再生空気供給管9は、温度と湿度が調整され、ゼオライトを再生するための空気(本発明の乾燥空気に相当する)が流れ、温度と湿度が調整された空気を各蒸気生成器4−1,4−2,4−3へ供給する。再生空気供給管9は、一端が送風機1に接続され、分岐後、他端が各蒸気生成器4−1,4−2,4−3の上部の再生空気供給口46に接続されている。第1実施形態では、各蒸気生成器4−1,4−2,4−3側の再生空気供給管9(分
岐後の再生空気供給管9の一部)と各蒸気生成器4−1,4−2,4−3側の圧縮空気供給管13(分岐後の圧縮空気供給管13の一部)とが共通配管となっている。再生空気供給管9には、送風機1の下流側に、再生空気供給管9を流れる空気を除湿する除湿機2が配置され、送風機1の下流側に、再生空気供給管9を流れる空気を加温する再生空気の加温装置3が設けられている。また、再生空気供給管9のうち、分岐後の再生空気供給管9には、更に再生空気弁24−1,24−2,24−3が設けられている。再生空気供給管9、送風機1、再生空気弁24−1,24−2,24−3は、本発明の乾燥空気供給部の機能を担う。また、除湿機2は、本発明の乾燥空気の湿度調整部に相当する。また、再生空気の加温装置3は、本発明の乾燥空気の温度調整部に相当する。
【0049】
真空排気管16は、各蒸気生成器4−1,4−2,4−3から真空引きされた空気が流れる。真空排気管16は、一端が各蒸気生成器4−1,4−2,4−3の下部の供給口兼再生空気排出口45に夫々接続され、合流後、他端が各蒸気生成器4−1,4−2,4−3の外部に開放されている。真空排気管16のうち、合流後の真空排気管16には、真空排気管のポンプ7が設けられ、合流前の真空排気管16には真空排気弁25−1,25−2,25−3が設けられている。真空排気管16、真空排気管のポンプ7、及び真空排気弁25−1,25−2,25−3は、本発明の脱気部の機能を担う。
【0050】
排気管15は、蒸気生成後に各蒸気生成器4−1,4−2,4−3内に残留する空気を排出する際、排出する空気が流れる。排気管15は、一旦が各蒸気生成器4−1,4−2,4−3の供給口兼再生空気排出口45に接続され、合流後、他端が各蒸気生成器4−1,4−2,4−3の外部に開放されている。合流前の排気管15には、排気弁22−1,22−2,22−3が設けられている。
【0051】
排水管14は、蒸気生成後に各蒸気生成器4−1,4−2,4−3内に残留する温水を排出する際、排出する温水が流れる。排水管14は、一端が各蒸気生成器4−1,4−2,4−3の供給口兼再生空気排出口45に接続され、合流後、他端が各蒸気生成器4−1,4−2,4−3の外部に開放されている。合流前の排水管14には、排水弁27−1,27−2,27−3が設けられている。
【0052】
制御装置20は、各蒸気生成器4−1,4−2,4−3内の温度情報、又は圧力情報等に基づいて、温水の供給のタイミングや再生空気の供給のタイミングなどを制御する。制御装置20は、CPU(中央処理演算装置)、メモリ、操作部、表示部等を備え、CPUがメモリに格納された制御プログラムを実行することで、温水の供給のタイミングや乾燥空気の供給のタイミングなどを制御する。制御装置20は、各蒸気生成器4−1,4−2,4−3の温度センサや圧力センサ(図3では図示せず)、給水ポンプ5、温水の加温装置6、コンプレッサ(図示せず)、送風機1、除湿機2、再生空気の加温装置3、真空排気管のポンプ7、電磁弁からなる各種弁(給水弁23−1,23−2,23−3、蒸気供給弁21−1,21−2,21−3、パージ空気弁26−1,26−2,26−3、再生空気弁24−1,24−2,24−3、真空排気弁25−1,25−2,25−3、排気弁22−1,22−2,22−3、排水弁27−1,27−2,27−3)等と電気的に接続されており、給水ポンプ5、温水の加温装置6、コンプレッサ(図示せず)、送風機1、除湿機2、再生空気の加温装置3、真空排気管のポンプ7、各種弁等の動作を制御する。なお、図3では、制御装置20によってすべての機器や各種弁を制御可能に構成されているが、各機器や各種弁に制御装置を設け、各機器や各種弁は、時間により動作を個別に制御するようにしてもよい。
【0053】
<<動作例>>
図4は、第1実施形態に係る蒸気生成器を含むシステムにおける各種弁の開閉状態の一例を示す。図1で説明したように、第1実施形態に係る蒸気生成器では、予熱工程、吸着
工程、減圧工程、再生工程(脱着工程)が繰り返し行われる。図4では、吸着工程(図1の予熱工程、吸着工程に相当する)、排出工程(図1の減圧工程に相当する)、再生工程(図1の再生工程に相当する)、脱気工程(吸着工程に移行するための準備工程)に分け、各工程における各種弁の開閉状態と模式的な動作時間が示されている。
【0054】
図4の上段に示す、蒸気生成器4−1を例にみると、各蒸気生成器4−1では、排出工程から始まり、再生工程、脱気工程、吸着工程と続き、以後、排出工程、再生工程、脱気工程、吸着工程が繰り返されている。
【0055】
排出工程は、吸着工程後に行われ、排出工程では、排水弁27−1、パージ空気弁26−1はそれぞれ開、給水弁23−1、蒸気供給弁21−1、排気弁22−1、再生空気弁24−1、真空排気弁25−1が閉になる。その結果、圧縮空気が供給されながら蒸気生成器4−1内に残留する温水が排出される。排出工程が終了すると、再生工程へ進む。
【0056】
再生工程では、再生空気弁24−1、排気弁22−1はそれぞれ開、パージ空気弁26−1、真空排気弁25−1、給水弁23−1、排水弁27−1、蒸気供給弁24−1の各弁はそれぞれ閉である。再生空気は、送風機1で除湿機2に供給される。除湿機2では再生空気の露点が−20℃以下まで乾燥され、空気加温装置3に供給される。除湿機2は、例えばゼオライトなどの吸着材を添着したロータを備えたものである。再生空気が再生空気供給管9内、又はダクト(図示せず)内を流れる流速は、蒸気生成器4内の流速(1.5m/sec)に合わせて、再生空気供給管9内、又はダクトの径により設置することができる。蒸気生成器4内の流速は、例えば、蒸気生成器4内の流速が1.5m/secとなるように、送風機1をインバータ制御して所定の流速の再生空気を送風機1から供給し、蒸気供給弁21−1,21−2,21−3、排気弁22−1,22−2,22−3の各弁で風量を更に調整することができる。送風機1から供給する再生空気の所定の流速や、蒸気各弁による風量の調整は、再生空気供給管9やダクトの径や長さに応じて適宜設定することができる。また、蒸気生成器4内の流速は、送風機1を定出力運転とし、蒸気供給弁21−1,21−2,21−3、排気弁22−1,22−2,22−3の各弁を風量調整自在なダンパとして利用し、各蒸気生成器4内を流れる風量を調整してもよい。この場合は、送風機1から供給する再生空気の流速や、蒸気各弁による風量の調整は、再生空気供給管9やダクトの径や長さに応じて適宜設定することができる。空気加温装置3では再生空気は約120℃まで加温され蒸気生成器4−1に供給される。その結果、ゼオライトに吸着された吸着水が脱着され、ゼオライトが再生する。再生工程が終了すると、脱気工程へ進む。
【0057】
脱気工程では、再生空気弁24−1、排気弁22−1、蒸気供給弁21−1、給水弁23−1、パージ空気弁26−1、排水弁27−1の各弁はそれぞれ閉、真空排気弁25−1は開になり、真空ポンプ7により蒸気生成器4−1内が脱気される。脱気工程が終了すると、吸着工程へ進む。なお、再生工程の終了後、その都度脱気工程を行うことで、蒸気生成器4−1内に空気が混入することを抑制することができる。その結果、蒸気生成器4−1よりも下流側の配管や機器の腐食を抑制することができる。
【0058】
吸着工程では、真空排気弁25−1、蒸気排気弁21−1、排気弁22−1、再生空気弁24−1、パージ空気弁26−1、排水弁27−1の各弁は閉、給水弁23−1は開になり、温水が給水ポンプ5により蒸気生成器4−1に給水される。この給水は、ゼオライト層41が浸かるまで、具体的には給水される温水がゼオライト層41の上端となる上金網43に達するまで行われる。給水の制御は、水位計によって行ってもよく、また、予め設定した時間によって行ってもよい。その結果、蒸気生成器4−1内において、ゼオライトが温水に浸漬される状態となり、温水がゼオライトに吸着され、吸着反応により水蒸気が生成される。その後、蒸気供給弁21−1が開になり、生成された水蒸気のみが蒸気供
給弁21−1より排出される。
【0059】
蒸気生成器4−2は蒸気生成器4−1とタイミングをずらして動作し(図4の中段に示す)、さらに蒸気生成器4−3は蒸気生成器4−1、4−2とタイミングをずらして動作する(図4の下段に示す)。そして、各蒸気生成器4−1,4−2,4−3がタイミングをずらした状態で、かつ、それぞれ連続的に工程を繰り返すことにより、蒸気生成器を含むシステム100全体では、水蒸気が連続的に生成される。なお、生成された蒸気の温度は、出願人が試験装置を製作して試験した結果では、125〜155℃(平均140℃)となり、負荷側での利用に十分供され得ることが確認された。但し、上記の値は実験結果の一例にすぎず、生成される蒸気の温度は、より高温になるものと考えられる。
【0060】
図5は、第1実施形態に係る蒸気生成器において、給水と蒸気排気の位置関係を示す。第1実施形態に係る蒸気生成器4では、温水がゼオライト層41の下部から給水され、生成した水蒸気がゼオライト層41の上部から排出される。
【0061】
<<効果>>
以上説明した第1実施形態に係る蒸気生成器を含むシステム100では、蒸気生成器4内に充填されたゼオライトと給水ポンプ5によって圧送される温水(排温水)とが接して、その際に発生する吸着熱により水蒸気が生成される。生成された水蒸気は、140℃以上であり、製鉄所におけるCO2分離など、再生エネルギーとして利用することができる
。温水には、例えば、鉄鋼産業や石油化学産業において、従来回収されずに排気されていた50〜100℃の排温水が例示される。したがって第1実施形態に係る蒸気生成器を含むシステム100では、従来廃棄されていた排温水から水蒸気を生成することができる。また、従来、排温水の廃棄には、冷却塔で冷却するなど、別途エネルギーを用いなければならなかったが、第1実施形態に係る蒸気生成器を含むシステム100では、そのような廃棄のための無駄なエネルギーを用いる必要もない。また、本発明に係る蒸気生成装置で生成された水蒸気は、生産プロセス等で利用でき、従来廃棄していた温熱を高品質なエネルギーに転嫁できる。更に、第1実施形態に係る蒸気生成器を含むシステム100は、再生空気供給管9、送風機1、再生空気弁24−1,24−2,24−3、除湿機2、再生空気の加温装置3を備えることで、ゼオライトに吸着されている吸着水を効果的に脱着させることができる。その結果、ゼオライトの再生が促進され、連続的に水蒸気を生成することができる。また、各蒸気生成器4−1,4−2,4−3がタイミングをずらした状態で、かつ、それぞれ連続的に吸着工程、排出工程、再生工程、脱気工程を繰り返すことにより、蒸気生成器を含むシステム100全体では、水蒸気を連続的に生成することができる。
【0062】
また、第1実施形態に係る蒸気生成器を含むシステム100では、温水がゼオライト層41の下部から供給されるため、水平方向の温水の分布を均一にすることができる。また、ゼオライト層41の水平方向の断面から一様に生成された水蒸気は、ゼオライトの上部から排出することができる。
【0063】
以下、他の実施形態について説明するが、第1実施形態と同様の構成について同一符号を付し、詳細な説明は割愛する。
【0064】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態に係る蒸気生成器の断面図を示す。第2実施形態に係る蒸気生成器4では、ゼオライト層41の上方に温水供給ノズル200が設けられ、生成蒸気の排出口47がゼオライト層41の下部に設けられている。ゼオライト層41の上方に配した温水供給ノズル200により温水が給水される。なお、温水を蒸気生成器4内に保持するため、例えば供給口兼再生空気排出口45の下流側近傍にバタフライ弁を設け、これを閉と
してもよい。また、例えば、蒸気生成器4−1を例に説明すると、排水弁27−1、真空排気弁25−1、排気弁22−1、給水弁23−1を閉とし、対処してもよい。生成された水蒸気は、ゼオライト層41の下部の生成蒸気の排出口47から排出される。その結果、生成された水蒸気と供給される温水との熱交換を抑制することができる。
【0065】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態に係る蒸気生成器の断面図を示す。第3実施形態に係る蒸気生成器4は、ゼオライト層41が垂直方向において、互いに間隔を空けて2段設けられている。各ゼオライト層41は、ゼオライト層41を受ける下金網42、ゼオライト層41の上部に設けられ、再生時のゼオライトの飛散を防止する上金網43、圧力センサや温度センサなどの取り付け口48が設けられている。下段のゼオライト層41は予熱用、上段のゼオライト層41は蒸気生成用であり、ゼオライト層41毎に機能が割り当てられている。温水は、供給口兼再生空気排出口45から、下方から上方に供給し、下段のゼオライト層41が浸かるように供給するとよい。下段のみ浸かるようにすることで少ない供給量でより高温の蒸気を生成することができる。すなわち、より効率よく水蒸気を生成することができる。なお、ゼオライト層41は、3段以上設けてもよい。また、上段と下段のゼオライト層41の間から再生空気を供給するようにしてもよい。この場合、ゼオライト層41が1段のみの場合と比較して、再生空気が通過するゼオライト層41の層厚が薄くなり、再生空気の送風動力を低減することができる。
【0066】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態に係る蒸気生成器を含むシステムの構成を示す。第4実施形態では、各蒸気生成器4−1,4−2,4−3に接続された蒸気供給管12から分岐した分岐管12−1,12−2,12−3が設けられている。分岐管12−1,12−2,12−3には、生成された水蒸気の一部が流れる。分岐管12−1,12−2,12−3は、一端が蒸気供給管12に接続され、他端が隣接する蒸気生成器4−2に温水を供給する温水供給管11に接続されている。また、分岐管12−1,12−2,12−3には、夫々予熱蒸気弁28−1,28−2,28−3が設けられている。
【0067】
図9は、第4実施形態に係る蒸気生成器を含むシステムにおける各種弁の開閉状態の一例を示す。第4実施形態に係る蒸気生成器を含むシステム100では、脱気工程の後に、予熱工程が追加されている。予熱工程では、予熱蒸気弁28−1,28−2,28−3が開となり、水蒸気の一部が吸着工程の開始段階にある蒸気生成器に供給される。
【0068】
第4実施形態では、たとえば蒸気生成器4−1で生成された水蒸気の一部が吸着工程の開始段階にある蒸気生成器4−2に供給した後に給水される。そのため、水蒸気の一部を利用して、他の蒸気生成器のゼオライトを予熱することが可能となり、吸着能力を向上することができる。なお、第4実施形態のような運転(運転モード)では、並列に配置された蒸気生成器4廻りの管(例えば、蒸気生成器4−1に接続される分岐管12−1と蒸気生成器4−2に接続される排水管14)が直列接続される。また、第4実施形態のような運転では、ゼオライト層41が既定の加熱能力を発揮できなくなった状態、換言すると、吸着工程の終盤(吸着工程から減圧工程に切り替わる前)やゼオライト層41の吸着性能が落ちた状態で行われることが好ましい。上記のような、ゼオライト層41が既定の加熱能力を発揮できなくなった状態では、水蒸気の全てを予熱に用いるようにしてもよい。
【0069】
<第5実施形態>
図10Aは、第5実施形態に係る蒸気生成器について、温度センサの設置例を示す。図10Bは、第5実施形態に係る蒸気生成器について、再生工程を終了する際のゼオライトの温度と経過時間との関係を示す。図10Cは、第5実施形態に係る蒸気生成器について、再生工程を終了する際に行われる処理フローを示す。
【0070】
第5実施形態に係る蒸気生成器4には、ゼオライト層41の温度を検知する温度センサ71が設けられている。制御装置20は、再生工程において、タイマで設定された時間(t)と温度センサ71が検出する温度(T)とに基づいて再生工程を終了する。具体的には、再生工程において、あらかじめタイマで設定された時間(t)が経過するか、若しくは、温度センサ71で検出された温度(T)が上昇後、所定温度になると、再生空気を供給する再生空気弁24−1,24−2,24−3が閉となるように制御される。ここで、図10Bに示すように、再生後の空気の温度は再生の前半は残留水の蒸発潜熱により再生空気温度が一時低下し、再生の進行とともに温度が上昇するといった挙動を示す。そこで、制御装置20は、ゼオライト層41の下部に設けられた温度センサ71により再生後の空気の温度を検出し、前述のタイマで設定された時間(t)のタイムアップまたは当該温度(T)のどちらかの条件を満足するときに再生工程が終了する。その結果、再生工程に要する時間の最適化を実現することができる。
【0071】
<第6実施形態>
図11Aは、第6実施形態に係る蒸気生成器について、圧力センサの設置例を示す。図11Bは、第6実施形態に係る蒸気生成器について、減圧工程を終了する際の蒸気生成器内の圧力と経過時間との関係を示す。図11Cは、第6実施形態に係る蒸気生成器について、減圧工程を終了する際に行われる処理フローを示す。
【0072】
第6実施形態に係る蒸気生成器4には、蒸気生成器4内の圧力を検知する圧力センサ81が設けられている。制御装置20は、減圧工程において、タイマで設定された時間(t)と圧力センサ81が検出する圧力(P)とに基づいて減圧工程を終了する。具体的には、減圧工程において、あらかじめタイマで設定された時間(t)が経過するか、若しくは、圧力センサ81で検出された圧力(P)が低下後、所定圧力になると、蒸気生成器4内の水を排出する排水弁27−1,27−2,27−3が閉となるように制御される。ここで、図11Bに示すように、減圧中の蒸気生成器4内の圧力は、徐々に低下する挙動を示す。そこで、制御装置20は、圧力センサ81により蒸気生成器4内の圧力(P)を検出し、前述のタイマで設定された時間(t)のタイムアップまたは当該圧力(P)のどちらかの条件を満足するときに減圧工程が終了する。その結果、減圧工程に要する時間の最適化を実現することができる。
【0073】
<第7実施形態>
図12Aは、第7実施形態に係る蒸気生成器について、温度センサの設置例を示す。図12Bは、第7実施形態に係る蒸気生成器について、給水工程を終了する際の蒸気生成器内の温度と経過時間との関係を示す。図12Cは、第7実施形態に係る蒸気生成器について、給水工程を終了する際に行われる処理フローを示す。給水工程とは、吸着工程において給水ポンプ5が温水を供給する工程を意味する。
【0074】
第7実施形態に係る蒸気生成器4には、蒸気生成器4内の温度を検出する温度センサ72がゼオライト層41の上側に設けられている。制御装置20は、給水工程において、タイマで設定された時間と温度センサ72が検出する温度とに基づいて給水工程を終了する。具体的には、給水工程において、あらかじめタイマで設定された時間が経過するか、若しくは、温度センサ72で検出された温度が低下後、所定温度になると、給水弁23−1,23−2,23−3が閉となるように制御される。ここで、図12Bに示すように、給水中の蒸気生成器4内の温度は、上昇後、徐々に低下する挙動を示す。そこで、制御装置20は、温度センサ72により蒸気生成器4内の温度を検出し、前述のタイマのタイムアップまたは当該温度のどちらかの条件を満足するときに給水工程を終了する。その結果、給水工程に要する時間の最適化を実現することができる。
【0075】
<第8実施形態>
図13Aは、第8実施形態に係る蒸気生成器について、温度センサの設置例を示す。図13Bは、第8実施形態に係る蒸気生成器について、吸着工程を終了する際の蒸気生成器内の温度と経過時間との関係を示す。図13Cは、第8実施形態に係る蒸気生成器について、吸着工程を終了する際に行われる処理フローを示す。吸着工程の終了に関する処理は、第7実施形態で説明した給水工程の終了後に行われる。
【0076】
第8実施形態に係る蒸気生成器4には、蒸気生成器4内の温度を検出する温度センサ73が蒸気生成器4の最上部に設けられている。制御装置20は、吸着工程において、タイマで設定された時間(t)と温度センサ73が検出する温度(T)とに基づいて吸着工程を終了する。具体的には、吸着工程において、あらかじめタイマで設定された時間が経過するか、若しくは、温度センサ73で検出された温度が低下後、所定温度になると、蒸気供給弁21−1,21−2,21−3が閉となるように制御される。ここで、図13Bに示すように、給水中の蒸気生成器4内の温度は、上昇後、徐々に低下する挙動を示す。そこで、制御装置20は、温度センサ73により蒸気生成器4内の温度を検出し、前述のタイマで設定された時間(t)のタイムアップまたは当該温度(T)のどちらかの条件を満足するときに吸着工程を終了する。その結果、吸着工程に要する時間の最適化を実現することができる。
【0077】
<第9実施形態>
図14Aは、第9実施形態に係る蒸気生成器について、各種センサの設置例を示す。図14Aでは、例として、蒸気生成器4−1の周辺のみを示す。図14Bは、第9実施形態に係る蒸気生成器について、再生工程を終了する際の蒸気生成器内の露点、圧力、及び温度と経過時間との関係を示す。図14Cは、第9実施形態に係る蒸気生成器について、再生工程を終了する際に行われる処理フローを示す。
【0078】
第9実施形態に係る蒸気生成器4には、露点センサ92、差圧センサ91、温度センサ74が設けられている。露点センサ92は、排気管15に設けられ、排気される空気の露点を検出する。差圧センサ91は、再生空気供給管9と排気管15とを跨ぐ配管に設けられ、再生空気の供給前後の差圧を検出する。温度センサ71は、蒸気生成器4内のゼオライト層41よりも低い位置に設けられ、蒸気生成器4内の温度を検出する。制御装置20は、再生工程において、露点センサ92で検出された露点(TD)、差圧センサ91で検出された差圧(P)、温度センサ74で検出された温度(T)のうち少なくとも何れか一つが所定値となった場合に再生工程を終了する。具体的には、露点センサ92で検出された露点(TD)、差圧センサ91で検出された差圧(P)、温度センサ74で検出された温度(T)のうち少なくとも何れか一つが所定値になると、再生空気弁24−1,24−2,24−3が閉となるように制御される。ここで、図14B−1に示すように、再生工程中の露点(TD)は、徐々に低下する挙動を示す。また、図14B−2に示すように、再生工程中の差圧(P)は、徐々に上昇する挙動を示す。また、図14B−3に示すように、再生工程中の温度(T)は、低下後、徐々に上昇する挙動を示す。そこで、制御装置20は、露点センサ92で検出された露点(TD)、差圧センサ91で検出された差圧(P)、温度センサ74で検出された温度(T)のうち少なくとも何れか一つが所定値となった場合に再生工程を終了する。その結果、再生工程に要する時間の最適化を実現することができる。
【0079】
<第10実施形態>
第10実施形態に係る蒸気生成器4は、ゼオライト層41に非吸着性充填物(ガラスビーズ、又はアルミナ)が充填されている。その他の点については、第1実施形態に係る蒸気生成器4の構成と同じである(図2図3参照)。したがって、第10実施形態に係る蒸気生成器4においても、温水供給管11の他端は、蒸気生成器4(4−1,4−2,4
−3)の下部の供給口兼再生空気排出口45と接続されている。そのため、温水は、ゼオライト層41の下部から供給される。
【0080】
非吸着性充填物(ガラスビーズ、又はアルミナ)は、ゼオライト層41の温度変化に応じて、ゼオライト層41に対する充填比率を変更することができる。ゼオライト層41の温度変化の値は、実験等によって得ることができる。例えば、ゼオライト層41が温度上昇した際の最高温度の基準温度を定めるとともに基準温度に対する非吸着性充填物の基準充填量を定める。そして、実験によって得られたゼオライト層41の最高温度が基準温度よりも低い場合には、基準充填量よりも少ない量の非吸着性充填物を充填し、実験によって得られたゼオライト層41の最高温度が基準温度よりも高い場合には、基準充填量よりも多い量の非吸着性充填物を充填することができる。
【0081】
ここで、図15Aは、比較例に係るゼオライト層の温度変化の一例のグラフを示す。図15Bは、図15Aのグラフにおける測定点を示す。測定点について、「NO.24」は、ゼオライト層の下面を意味し、「NO.16」は、ゼオライト層の下部を意味し、「NO.10」は、ゼオライト層の中間部を意味し、「NO.4」は、ゼオライト層の上部を示す。
【0082】
比較例では、第10実施形態に係る蒸気生成器と異なり、ゼオライト層に非吸着性充填物が充填されていない。換言すると、比較例は、第1実施形態に係る蒸気生成器4に近い構成である。したがって、この比較例では、温水供給管の他端が、蒸気生成器の下部の供給口兼再生空気排出口と接続されており、温水は、ゼオライト層の下部から供給される。
【0083】
図15Aに示すように、比較例では、ゼオライト層の下部(NO.16)の最高温度は、約200℃であり、ゼオライト層の中間部(NO.10)の最高温度は、約250℃であり、ゼオライト層の上部(NO.4)の最高温度は、約275℃となっている。吸着工程開始前、換言すると脱気工程終了時のゼオライト層の温度は、何れも50℃前後であり、ゼオライト層の温度は、短時間で200℃以上まで急激に上昇することが確認された。
【0084】
図16は、ラボ装置で行った、ゼオライト層の平均温度変化のグラフを示す。図17は、ラボ装置の概要を示す。ラボ装置200は、ゼオライト、又はゼオライト及び非吸着性充填物(ガラスビーズ、又はアルミナ)を含むゼオライト層201を収容する容器202、容器202、及び水203を収容する容器本体204、容器本体204の下部に設けられ、容器本体204内の水203を加熱して水蒸気を発生させるヒータ205を備える。ゼオライト、又はゼオライト及び非吸着性充填物を含むゼオライト層201の厚さは、8〜15mmである。このようなラボ装置200において、容器202の底部から約5mmの高さにおいて温度センサを6カ所設置(図17の「×」は、温度センサの設置位置の一部を示す)して、ゼオライト層201の温度を測定し、6カ所で測定された温度から、ゼオライトのみ、ゼオライト+ガラスビーズ、ゼオライト+アルミナ、夫々のゼオライト層201の平均温度を算出した。図16に示すように、ゼオライトのみのゼオライト層201の平均温度の最高温度は、約219℃である。これに対し、非吸着性充填物としてガラスビーズを含むゼオライト層201(ガラスビーズ充填)の平均温度の最高温度は、約196℃であり、非吸着性充填物としてアルミナを含むゼオライト層201(アルミナ充填)の平均温度の最高温度は、約186℃である。ゼオライト層201に非吸着性充填物(ガラスビーズ、又はアルミナ)を充填することで急激な温度上昇を抑制できることが確認できた。
【0085】
以上説明したように、ゼオライト層41に非吸着性充填物(ガラスビーズ、又はアルミナ)を充填することで、ゼオライト層41の急激な温度変化(本実施形態では温度上昇)を抑制することができる。その結果、ゼオライト層41の温度が高すぎる場合に懸念され
る、ゼオライト層41の吸着量の低下を抑制することができる。換言すると、ゼオライト層41の吸着量を向上することができ、より効率よく水蒸気を生成することができる。また、ゼオライト層41の急激な温度変化による、ゼオライト層41の劣化や破損の発生を抑制することができる。
【0086】
なお、上述したように、温水をゼオライト層41の下部から供給した場合、ゼオライト層41は、下部と比較して、上部の温度が高くなる。ゼオライト層41は、温水の供給位置などにより、領域毎に温度変化が異なる。したがって、最も温度が高くなる領域の温度変化に応じて、非吸着性充填物の充填比率を変えるようにしてもよい。また、ゼオライト層41を多段構成とし、非吸着性充填物の充填比率をゼオライト層41の段に応じて変えるようにしてもよい。これにより、吸着性能の低下や劣化が考えられるゼオライト層41の段(領域)のみ、非吸着性充填物を充填することができる。
【0087】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係る蒸気生成器を含むシステムはこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。例えば、下金網42や上金網43に代えて、パンチング鋼板を用いてもよい。また、本発明に係る蒸気生成器を含むシステムは、様々な技術への適用が可能である。例えば、除湿機を連続使用するためには吸着材を再生する必要があるが、この再生のための加熱手段として例えば加熱用熱交換器に蒸気生成器4からの排水や蒸気供給管12中から分岐された蒸気、蒸気供給管12の供給先からの凝縮蒸気等を用いることができる。また、例えば、実施形態に係る蒸気生成器を含むシステムを医療機関に設置することで、実施形態に係るシステムからの排熱を用いて、蒸気を医療器具の殺菌や厨房での加熱に用いることもできる。
【符号の説明】
【0088】
1・・・送風機
2・・・除湿機
3・・・再生空気の加温装置
4・・・蒸気生成器
5・・・給水ポンプ
6・・・温水の加温装置
7・・・真空排気管のポンプ
9・・・再生空気供給管
11・・・温水供給管
12・・・蒸気供給管
13・・・圧縮空気供給管
14・・・排水管
15・・・排気管
16・・・真空排気管
41・・・ゼオライト層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B-1】
図14B-2】
図14B-3】
図14C
図15A
図15B
図16
図17