(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明の実施の形態に係る照明装置及び自動車について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
以降、本明細書において、「前方」とは、照明装置から光が出射する方向(光出射方向)であって、光が取り出される光取り出し方向であり、「後方」とは、「前方」と反対の方向である。また、「前方」は、自動車が前進する際の進行方向とし、自動車が前進する際の右側方(右側)を「右方向」、その反対方向(左側)を「左方向」とし、自動車の天井側を「上方」又は「上側」、その反対方向を「下方」又は「下側」としている。また、前後方向をZ軸方向とし、上下方向(鉛直方向)をY軸方向とし、左右方向(水平方向)をX軸方向としている。
【0012】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0013】
(実施の形態)
まず、本実施の形態に係る自動車100について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施の形態に係る自動車100を示す正面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態に係る自動車100は、四輪自動車などの車両の一例であって、車体110と、車体110の前方の左右部分に配置された前照灯120とを備える。自動車100は、例えば、ガソリンエンジンで駆動するガソリン自動車、又は、電気で駆動する電気自動車などである。
【0015】
前照灯120は、灯具であって、本実施の形態では、車両に用いられるヘッドランプ(車両用前照灯)である。前照灯120は、ハウジング121と、前面カバー122と、前面カバー122の後方に取り付けられた照明装置1とを備える。
【0016】
ハウジング121は、例えば、金属製の筐体であって、照明装置1からの光を出射する開口部を有する。前面カバー122は、透光性を有するヘッドランプカバーであり、ハウジング121の開口部に設けられる。ハウジング121と前面カバー122とは、ハウジング121の内部に水又は塵埃が浸入しないように封止されている。
【0017】
照明装置1は、前面カバー122の後方に配置され、ハウジング121に取り付けられている。照明装置1から出射する光は、前面カバー122を透過して外部に出射する。
図1に示すように、照明装置1は、灯具本体として、夜間用ロービーム光源2と、夜間用ハイビーム光源3と、昼間用光源4とを備える。
【0018】
[照明装置]
次に、本実施の形態に係る照明装置1について、
図1〜
図3を用いて説明する。
図2は、本実施の形態に係る照明装置1を示す断面図である。
図3は、本実施の形態に係る照明装置1を示す正面図である。なお、
図2は、照明装置1の中心を通る断面(具体的には、
図3に示すA−A断面)を示している。また、
図3は、一体に構成された夜間用ロービーム光源2及び昼間用光源4を示しており、夜間用ハイビーム光源3については示していない。
【0019】
照明装置1は、例えば車両用前照灯に用いられる車両用の照明装置である。本実施の形態では、照明装置1は、
図1に示す車体110の前方に光を出射する。
【0020】
夜間用ロービーム光源2は、すれ違いビームであるロービームを形成するための光学系であり、所定の照射パターンのロービーム5を形成して出射する。夜間用ロービーム光源2は、ロービーム5を出射することで、車両の前方下方領域を主に照射する。
図1〜
図3に示すように、夜間用ロービーム光源2は、昼間用光源4と一体に構成されている。
【0021】
夜間用ロービーム光源2は、
図2に示すように、ロービーム用発光モジュール10と、レンズ体20と、本体ケース30と、反射板40と、シールド部50とを備える。これらの各構成部材については、後で説明する。
【0022】
夜間用ハイビーム光源3は、走行ビームであるハイビームを形成するための光学系であり、所定の照射パターンのハイビームを形成して出射する。夜間用ハイビーム光源3は、ハイビームを出射することで、車両の前方の遠方領域を主に照射する。
図1に示すように、夜間用ハイビーム光源3は、夜間用ロービーム光源2及び昼間用光源4とは別体で構成されている。
【0023】
夜間用ロービーム光源2及び夜間用ハイビーム光源3は、主に夜間に点灯する。また、夜間用ロービーム光源2及び夜間用ハイビーム光源3は、例えば、自動車100がトンネル内を走行中にも点灯してもよい。すなわち、夜間用ロービーム光源2及び夜間用ハイビーム光源3は、夜間に限らず、自動車100の周囲環境における輝度が低い場合に点灯される。例えば、夜間用ロービーム光源2及び夜間用ハイビーム光源3は、薄明視(0.001〜10cd/m
2)又は暗所視(0.001cd/m
2以下)の環境下で点灯される。例えば、運転者からの操作を受け付けることによって、夜間用ロービーム光源2及び夜間用ハイビーム光源3は点灯される。夜間用ロービーム光源2及び夜間用ハイビーム光源3を点灯させることで、運転者の視認性を向上させることができる。
【0024】
昼間用光源4は、例えば、昼間の明るい時間帯に点灯するためのDRL(Daytime Running Light)である。つまり、昼間用光源4は、対向車又は歩行者などに対して、自動車100の存在をより周知させる(すなわち、被視認性を向上させる)目的で点灯する光源である。本実施の形態では、昼間用光源4は、夜間用ロービーム光源2が点灯しているとき(具体的には、夜間)にも点灯されることを特徴としている。
【0025】
昼間用光源4は、夜間用ロービーム光源2の外周の少なくとも一部に配置されている。本実施の形態では、
図3に示すように、昼間用光源4は、正面視形状が環状であり、夜間用ロービーム光源2を囲むように配置されている。具体的には、昼間用光源4の正面視形状は円環状であり、夜間用ロービーム光源2の正面視形状が円形であり、昼間用光源4と夜間用ロービーム光源2とは、同心円状に配置されている。
【0026】
昼間用光源4は、デイライト用ビーム6を形成して出射する。昼間用光源4は、デイライト用ビーム6を出射することで、車両の前方下方領域の上方のオーバーヘッド領域を主に照射する。
図2及び
図3に示すように、昼間用光源4は、デイライト用発光モジュール60と、支持台70とを備える。
【0027】
以下、各構成部材の詳細について説明する。
【0028】
[発光モジュール]
ロービーム用発光モジュール10は、ロービーム形成用のLED(Light Emitting Diode)モジュールであって、前方下方領域、具体的には、路面を照射させるときに点灯する。
【0029】
ロービーム用発光モジュール10は、本体ケース30に固定されている。具体的には、基板12が本体ケース30の所定の戴置面に戴置されて固定されている。また、本実施の形態では、
図2に示すように、ロービーム用発光モジュール10は、光が上方側に出射するように基板12が横置き(水平置き)で配置されている。つまり、ロービーム用発光モジュール10(ロービーム用発光素子11)の光軸は、Y軸と平行である。
【0030】
図2に示すように、ロービーム用発光モジュール10は、ロービーム用発光素子11と、ロービーム用発光素子11が実装された基板12とを備える。ロービーム用発光素子11は、レンズ体20を通過する光を出射する発光素子である。具体的には、ロービーム用発光素子11は、ロービーム5を照射するときに発光する。
【0031】
デイライト用発光モジュール60は、デイライト用発光素子61と、デイライト用発光素子61が実装された基板62とを備える。デイライト用発光素子61は、デイライト用ビーム6を照射するときに発光する。
図3に示すように、デイライト用発光素子61は、複数設けられており、正面視において、レンズ体20の周囲に円環状に配置されている。
【0032】
デイライト用発光モジュール60は、支持台70に固定されている。具体的には、基板62が支持台70の所定の戴置面に戴置されて固定されている。また、本実施の形態では、
図2に示すように、デイライト用発光モジュール60は、光が前方側に出射するように基板62が縦置き(垂直置き)で配置されている。つまり、デイライト用発光モジュール60(デイライト用発光素子61)の光軸は、Z軸と平行である。
【0033】
ロービーム用発光モジュール10及びデイライト用発光モジュール60は、一例として、白色光源であり、例えば青色光を発する青色LEDチップと黄色蛍光体とを用いて白色光を出射するB−Yタイプの白色LED光源である。あるいは、ロービーム用発光モジュール10及びデイライト用発光モジュール60は、各々が青色光、赤色光及び緑色光を発するLEDチップを用いて白色光を出射する白色LED光源などでもよい。
【0034】
また、ロービーム用発光モジュール10及びデイライト用発光モジュール60は、SMD(Surface Mount Device)構造及びCOB(Chip On Board)構造のいずれでもよい。
【0035】
SMD構造の場合、ロービーム用発光素子11及びデイライト用発光素子61は、例えば樹脂製の容器内にLEDチップ(ベアチップ)を実装して封止部材(蛍光体含有樹脂)で封入した構成のSMD型のLED素子である。一方、COB構造の場合、ロービーム用発光素子11及びデイライト用発光素子61は、LEDチップ(ベアチップ)そのものであり、LEDチップが基板12又は62に直接実装された構成である。この場合、基板12又は62に実装されたLEDチップは蛍光体含有樹脂などの封止部材によって封止される。
【0036】
基板12及び62は、例えば、アルミナなどのセラミックスからなるセラミックス基板、樹脂からなる樹脂基板、又は、金属をベースとして絶縁被覆されたメタルベース基板などである。基板12の平面視形状は、基板12が戴置される本体ケース30の戴置面の形状に応じた形状である。また、基板62の平面視形状は、
図3に示すように、円環状である。
【0037】
[レンズ体]
レンズ体20は、ロービーム用発光モジュール10及びシールド部50の前方に配置されている。具体的には、レンズ体20は、本体ケース30の開口部を覆うように設けられている。
【0038】
レンズ体20は、例えば、アクリル、ポリカーボネート又は環状オレフィン系の樹脂などの透明樹脂を用いた射出成形などにより作製することができる。例えば、レンズ体20は、球又は楕円球の半分である。ロービーム用発光素子11から上方に出射した光は、反射板40で反射されてレンズ体20に入射し、レンズ体20の光学作用を受けてレンズ体20の前方端面(湾曲面)から前方に向かって出射する。
【0039】
[本体ケース]
本体ケース30は、
図2に示すように、筒状のケースであり、内部にロービーム用発光モジュール10、反射板40及びシールド部50が配置されている。
【0040】
本体ケース30は、例えば、ロービーム用発光モジュール10で発生する熱を外部(大気中)に放熱するための放熱部材である。したがって、本体ケース30は、例えば、金属などの熱伝導率の高い材料を用いて形成される。本体ケース30は、例えば、アルミニウム合金を用いたアルミダイカスト製である。本体ケース30は、具体的には、ヒートシンクであり、複数の放熱フィン(図示せず)が設けられている。
【0041】
[反射板]
反射板40は、本体ケース30の内部に、かつ、ロービーム用発光モジュール10の上方に配置されている。反射板40は、ロービーム用発光モジュール10から上方に出射する光を前方斜め下方に反射させて、レンズ体20に入射させるような湾曲反射面を有する。
【0042】
例えば、反射板40は、耐熱樹脂を用いた樹脂成形によって形成され、その表面が鏡面化されている。例えば、反射板40を構成する樹脂成形体の一部の表面に金属蒸着膜(例えばアルミ蒸着膜)を形成することで、反射板40は形成される。なお、反射板40は、本体ケース30と一体に形成されてもよい。つまり、反射板40は、本体ケース30の内面の一部を鏡面化した部分であってもよい。
【0043】
[シールド部]
シールド部50は、ロービーム用発光モジュール10から出射する光の一部を遮光することによって所定の明暗境界であるカットオフラインを形成するための構造体である。シールド部50は、本体ケース30の内部に設けられている。シールド部50は、例えば耐熱樹脂を用いた樹脂成形によって形成することができる。なお、シールド部50は、樹脂製ではなく、金属製でもよい。例えば、シールド部50は、本体ケース30と一体に形成されてもよい。
【0044】
[支持台]
支持台70は、デイライト用発光モジュール60を支持する環状の台である。本実施の形態では、支持台70は、本体ケース30に固定されている。具体的には、支持台70は、本体ケース30の一部であって、レンズ体20を保持する部分の外周を覆うように設けられている。なお、支持台70は、例えば、本体ケース30と一体に構成されてもよい。
【0045】
支持台70は、例えば、デイライト用発光モジュール60で発生する熱を外部に放熱するための放熱部材である。したがって、支持台70は、例えば、金属などの熱伝導率の高い材料を用いて形成される。支持台70は、例えば、アルミニウム合金を用いたアルミダイカスト製である。
【0046】
[昼間用光源の詳細とその照明エリア]
続いて、本実施の形態に係る昼間用光源4の詳細とその照明エリアとについて、
図3を参照しながら説明する。
【0047】
本実施の形態では、昼間用光源4は、S/P比が2.0以上になるように構成されている。以下では、まずS/P比について説明する。
【0048】
S/P比は、明所視感度(Photopic)に対する暗所視感度(Scotopic)の比である。明所視感度は、光源のスペクトルに明所視での比視感度を乗じたものであり、暗所視感度は、光源のスペクトルに暗所視での比視感度を乗じたものである。
【0049】
人間の目は、周辺の環境の明るさに応じて比視感度が異なる。なお、比視感度とは、人間の目が光の波長毎に明るさを感じる強さを示す数値である。
【0050】
ここで、
図4は、明所視、暗所視及び薄明視のそれぞれにおける比視感度曲線を示す図である。
【0051】
図4に示すように、周囲の環境が暗くなるにつれて、比視感度のピークは、相対的に上昇しながら、短波長側にシフトする。これをプルキンエ現象という。例えば、明所視では、約555nmで約683lm/Wのピークが存在するのに対して、暗所視では、約507nmで約1699lm/Wのピークが存在する。
【0052】
図5は、暗所視においてS/P比が高い光源からの光に、人間が明るさをより感じることを説明するための図である。具体的には、
図5の(a)は、S/P比が1.75の光源からの第1の光201と、S/P比が2.18の光源からの第2の光202とのそれぞれの光のスペクトルを示している。
図5の(b)は、暗所視における比視感度曲線を示している。
図5の(c)は、暗所視における人間が感じる明るさを示す図である。
【0053】
人間の目が感じる明るさ(
図5の(c))は、光源の光のスペクトル(
図5の(a))に比視感度曲線(
図5の(b))を乗じたもので表される。したがって、
図5の(c)に示すように、暗所視においては、人間の目は、第2の光202を受けた場合、第1の光201を受けた場合よりも、領域210の分だけ明るく感じる。
【0054】
したがって、S/P比が高い光源から光を照射した場合、プルキンエ現象により、暗所視において、人間の目には、より明るく感じることができる。つまり、本実施の形態では、昼間用光源4のS/P比が2.0以上であるので、昼間用光源4を夜間などの暗所で点灯させた場合に、人間の目はより明るいと感じることができる。
【0055】
図6は、本実施の形態に係る照明装置1による夜間点灯時の照明エリア220を示す図である。具体的には、
図6は、夜間用ロービーム光源2が点灯している時の照明エリア220を示している。
【0056】
図6に示す照明エリア220は、自動車100が右側走行する国(例えば、アメリカ)などにおける照明エリアである。つまり、センターライン230より左側が対向車線231であり、センターライン230より右側が走行車線232である。
【0057】
照明エリア220は、ロービーム照明エリア221と、オーバーヘッド照明エリア222とを含んでいる。
【0058】
ロービーム照明エリア221は、車両の前方下方領域であり、夜間用ロービーム光源2から出射されたロービーム5が照射される領域である。具体的には、ロービーム照明エリア221は、車両前方の路面を主に含む領域であり、カットオフライン223より下方の領域である。カットオフライン223により、対向車線231については、水平線より上方に照明エリアを形成しない。これにより、対向車の運転者に不用意な眩しさを与えないようにすることができる。
【0059】
オーバーヘッド照明エリア222は、ロービーム照明エリア221の上方の領域である。具体的には、
図6に示すように、オーバーヘッド照明エリア222は、車両の前方の遠方の領域である。より具体的には、オーバーヘッド照明エリア222は、カットオフライン223より上の領域を含んでいる。なお、オーバーヘッド照明エリア222は、一部がロービーム照明エリア221と重複していてもよい。
【0060】
オーバーヘッド照明エリア222は、昼間用光源4から出射されたデイライト用ビーム6によって照射される領域である。したがって、オーバーヘッド照明エリア222に照射される光は、S/P比が高い光源から発せられた光である。このため、オーバーヘッド照明エリア222内、及び、その近傍が、人間の目にはより明るく感じられる。
【0061】
例えば、自動車100の前方の遠方の路肩領域224は、オーバーヘッド照明エリア222内又はその近傍の領域である。このため、人間(運転者)の目には、路肩領域224がより明るく見える。
【0062】
自動車100が市街地などを走行している場合は、対向車又は歩行者が頻繁に現れる可能性が高いため、通常の場合、ハイビームではなく、ロービームを照射しながら走行する。ロービームを照射している場合に、本実施の形態に係るオーバーヘッド照明エリア222が形成されていない時は、例えば、路肩領域224の明るさは十分ではない。このため、遠方の視認性は低く、十分な安全運転を行うことができない。
【0063】
これに対して、本実施の形態では、上述したように、プルキンエ現象により、路肩領域224が運転者にとって明るく見える。このように、遠方の視認性を高めることができるので、運転者は、より安全運転を行うことができる。
【0064】
なお、昼間用光源4がデイライト用ビーム6を照射するエリア(本実施の形態では、オーバーヘッド照明エリア222)は、例えば、欧州の規定では、25cm
2以上200cm
2以下であると定められている。このように、昼間用光源4は、使用される国又は地域などに応じて所定の規定を順守する必要がある。
【0065】
また、本実施の形態では、昼間用光源4は、調光機能を有する。具体的には、昼間用光源4は、夜間用ロービーム光源2が点灯している場合に、夜間用ロービーム光源2が点灯していない場合より減光する。簡単に言い換えると、昼間用光源4は、夜間点灯時は、昼間点灯時よりも減光する。
【0066】
具体的には、
図3に示すように、複数のデイライト用発光素子61は、第1発光素子61aと、第2発光素子61bとを含んでいる。具体的には、第1発光素子61aと第2発光素子61bとは、等間隔に交互に配置されている。
【0067】
第1発光素子61aは、デイライト用ビーム6を照射するときに発光する。また、第1発光素子61aは、夜間用ロービーム光源2が点灯しているときには発光しない。簡単に言い換えると、第1発光素子61aは、昼間のみに発光する。
【0068】
第2発光素子61bは、夜間用ロービーム光源2が点灯している場合に点灯する。なお、第2発光素子61bは、デイライト用ビーム6を照射するときにも発光する。簡単に言い換えると、第2発光素子61bは、昼間及び夜間ともに発光する。なお、第2発光素子61bは、夜間のみに発光してもよい。
【0069】
これにより、昼間用光源4は、夜間用ロービーム光源2が点灯している場合に、夜間用ロービーム光源2が点灯していない場合よりも減光することができる。
【0070】
また、第2発光素子61bは、S/P比が第1発光素子61aより大きい。例えば、第2発光素子61bは、
図5の(a)に示す第2の光202を発し、第1発光素子61aは、
図5の(a)に示す第1の光201を発する。
【0071】
例えば、第1発光素子61aは、450nmの波長を主成分とする青色光を発する青色LEDチップと、YAG黄色蛍光体とを用いて構成された白色LEDである。第1発光素子61aのS/P比は、例えば、
1.75である。第1発光素子61aが発する光は、例えば、色温度が約5000K(いわゆる昼白色)になる。
【0072】
一方で、第2発光素子61bは、450nmの波長を主成分とする青色光を発する青色LEDチップと、LAG黄色蛍光体と、SCASN黄色蛍光体とを用いて構成された白色LEDである。第2発光素子61bのS/P比は、例えば、
2.18である。第2発光素子61bが発する光は、例えば、色温度が約8000K(いわゆる明光色)になる。
【0073】
以上の構成により、夜間には、S/P比が高い第2発光素子61bから光を発するので、夜間における車両の前方の遠方における視認性を高めることができる。
【0074】
[照明装置の機能構成]
続いて、本実施の形態に係る照明装置1の機能構成について、
図7を用いて説明する。
図7は、本実施の形態に係る照明装置1の構成を示すブロック図である。
【0075】
図7に示すように、照明装置1は、夜間用ロービーム光源2と、夜間用ハイビーム光源3と、昼間用光源4と、制御部130と、操作部140と、メモリ150と、報知部160とを備える。なお、夜間用ロービーム光源2、夜間用ハイビーム光源3及び昼間用光源4については、上述した通りであるので、以下では説明を省略する。
【0076】
制御部130は、夜間用ロービーム光源2、夜間用ハイビーム光源3及び昼間用光源4のそれぞれの点灯及び消灯を制御する。また、制御部130は、図示しないエンジンに接続されており、自動車100の動作を制御する。つまり、制御部130は、エンジン制御部(ECU)及び照明制御部の機能を有する。
【0077】
本実施の形態では、制御部130は、夜間用ロービーム光源2が点灯している場合に、昼間用光源4を点灯させる。具体的には、制御部130は、夜間用ロービーム光源2が点灯している場合に、夜間用ロービーム光源2が点灯していない場合よりも少ない光量で、昼間用光源4を点灯させる。簡単に言い換えると、制御部130による制御によって、昼間用光源4は、昼間点灯時の光量よりも少ない光量で、夜間にデイライト用ビーム6を照射する。例えば、制御部130は、夜間用ロービーム光源2が点灯している場合には、第2発光素子61bのみを発光させ、夜間用ロービーム光源2が点灯していない場合には、第1発光素子61a及び第2発光素子61bの両方を発光させる。
【0078】
操作部140は、制御部130を介して、照明装置1の点灯及び消灯を操作する。具体的には、操作部140は、運転者からの操作指示を受け付けて、当該操作指示に基づいて夜間用ロービーム光源2及び夜間用ハイビーム光源3の点灯及び消灯を操作する。
【0079】
メモリ150は、例えば、動作プログラムなどを格納している。メモリ150は、例えば、ROM(Read Only Memory)などの記憶部である。動作プログラムは、例えば、照明装置1の点灯及び消灯に関わる動作、及び、自動車1の走行などに関わる動作を制御するためのプログラムである。
【0080】
報知部160は、自動車100の故障を運転者に報知する。本実施の形態では、報知部160は、夜間用ロービーム光源2が点灯している場合に、昼間用光源4が点灯していないときに、運転者に報知する。具体的には、報知部160は、警報を発する警報部であり、アラーム音などを出力することで、運転者に報知する。なお、報知部160は、例えば、表示部であり、運転者に視覚を通じて報知してもよい。また、報知部160は、夜間用ロービーム光源2を点灯させようとした場合に、夜間用ロービーム光源2が点灯しなかった場合にも、運転者に報知してもよい。
【0081】
なお、制御部130、操作部140、メモリ150及び報知部160は、例えば、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROMなどの記憶媒体、RAM(Random Access Memory)などの作業用メモリ、及び、通信回路などによって構成される。
【0082】
[点灯動作]
続いて、本実施の形態に係る自動車100の動作のうち、主に照明装置1の点灯及び消灯に関わる動作について、
図8を用いて説明する。
図8は、本実施の形態に係る自動車100の動作のうち、主に照明装置1の点灯及び消灯に関わる動作を示すフローチャートである。
【0083】
まず、制御部130は、操作部140が受け付けた指示に基づいて自動車100のエンジンを始動する(S10)。次に、制御部130は、昼間用光源4を点灯させる(S12)。具体的には、制御部130は、第1発光素子61a及び第2発光素子61bの両方を発光させることで、昼間用光源4を点灯させる。
【0084】
このように、本実施の形態では、エンジンを始動させた場合には、必ず昼間用光源4を点灯させる。これにより、昼間用光源4の点灯忘れを防止し、自動車100の被視認性を高めることができる。
【0085】
次に、操作部140が所定の操作を受け付けるまで待機する(S14でNo)。操作部140が所定の操作を受け付けた場合(S14でYes)、制御部130は、受け付けた操作が夜間用光源のオン操作(点灯指示)であるか否かを判定する(S16)。例えば、自動車100が夜間、又は、トンネル内などを走行している場合には、運転者によって夜間用光源のオン操作が行われる。
【0086】
受け付けた操作が夜間用光源のオン操作である場合(S16でYes)、制御部130は、受け付けたオン操作が夜間用ロービーム光源2及び夜間用ハイビーム光源3のいずれのオン操作であるかを判定する(S18)。受け付けた操作が夜間用ロービーム光源2のオン操作である場合(S18でYes)、制御部130は、夜間用ロービーム光源2を点灯させ、かつ、昼間用光源4を減光する(S20)。例えば、制御部130は、第1発光素子61aの発光を停止し、第2発光素子61bのみを発光させる。以降、ステップS14に戻り、他の操作指示を受け付けるまで待機する。
【0087】
また、受け付けた操作が夜間用ハイビーム光源3のオン操作である場合(S18でNo)、制御部130は、夜間用ハイビーム光源3を点灯させる(S22)。このとき、昼間用光源4を減光又は消灯してもよい。以降、ステップS14に戻り、他の操作指示を受け付けるまで待機する。
【0088】
受け付けた操作が夜間用光源のオン操作ではない場合(S16でNo)、制御部130は、夜間用光源のオフ操作であるか否かを判定する(S24)。夜間用光源のオフ操作である場合(S24でYes)、制御部130は、夜間用光源を消灯し、昼間用光源4を増光する(S26)。具体的には、制御部130は、夜間用ロービーム光源2及び夜間用ハイビーム光源3の両方を消灯し、昼間用光源4を増光する。例えば、制御部130は、第1発光素子61a及び第2発光素子61bの両方を発光させることで、昼間用光源4を増光する。なお、例えば、自動車100がトンネル内から出た場合などに、夜間用光源のオフ操作が行われる。以降、ステップS14に戻り、他の操作指示を受け付けるまで待機する。
【0089】
受け付けた操作が夜間用光源のオフ操作でもない場合(S24でNo)、制御部130は、エンジンのオフ操作であるか否かを判定する(S28)。受け付けた操作がエンジンのオフ操作である場合(S28でYes)、点灯している光源を全て消灯し、自動車100のエンジンを停止する(S30)。これにより、光源の消し忘れによるバッテリーの消耗などを防止することができる。
【0090】
受け付けた操作がエンジンのオフ操作でもない場合(S28でNo)、対応する操作を行なった後、ステップS14に戻り、他の操作指示を受け付けるまで待機する。
【0091】
なお、ステップS20において、夜間用ロービーム光源2を点灯させた時に、昼間用光源4が点灯しなかった場合には、制御部130は、報知部160を介して運転者に報知する。具体的には、報知部160は、制御部130による制御に基づいて警報を発する。これにより、運転者に昼間用光源4が故障していることを知らせることができる。
【0092】
[まとめ]
以上のように、本実施の形態に係る照明装置1は、車両用の照明装置1であって、車両の前方下方領域であるロービーム照明エリア221を主に照射する夜間用ロービーム光源2と、ロービーム照明エリア221の上方のオーバーヘッド照明エリア222を主に照射する昼間用光源とを備える。また、例えば、本実施の形態に係る自動車100は、照明装置1と、照明装置1が前方に配置された車体110とを備える。
【0093】
これにより、昼間用光源4がオーバーヘッド照明エリア222を照射するので、例えば、夜間に昼間用光源4を点灯させた場合に、夜間における遠方の視認性を高めることができる。特に、夜間用ロービーム光源2を点灯している場合に、昼間用光源4を点灯させることで、自動車100の前方の遠方の視認性を高めることができる。
【0094】
また、本実施の形態では、例えば、昼間用光源4は、夜間用ロービーム光源2の外周の少なくとも一部に配置されている。
【0095】
これにより、昼間用光源4と夜間用ロービーム光源2とを近接して配置させることができるので、照明装置1を小型化することができる。また、輝度の高い夜間用ロービーム光源2の近傍に昼間用光源4を配置することで、グレアを感じにくくすることができる。したがって、歩行者などに車体110の幅を認識させやすくすることができ、より安全性を高めることができる。
【0096】
また、本実施の形態では、例えば、昼間用光源4は、夜間用ロービーム光源2が点灯している場合に、夜間用ロービーム光源2が点灯していない場合より減光する。
【0097】
これにより、昼間用光源4の昼間点灯としての輝度を確保しつつ、夜間点灯時には、輝度を抑えて必要以上に眩しく照射することを抑制することができる。したがって、例えば、法規などで定められた範囲内での明るさで、遠方の視認性を高めることができる。
【0098】
また、本実施の形態では、例えば、昼間用光源4が発する光のS/P比は、2.0以上である。
【0099】
これにより、いわゆるプルキンエ現象により、オーバーヘッド照明エリア222内及びその近傍において、人間の目により明るく感じさせることができる。したがって、例えば、法規などで定められた範囲内での明るさでも、遠方の視認性を高めることができる。
【0100】
また、本実施の形態では、例えば、昼間用光源4は、第1発光素子61aと、第1発光素子61aよりS/P比が大きい第2発光素子61bとを備え、第2発光素子61bは、夜間用ロービーム光源2が点灯している場合に、発光する。
【0101】
これにより、例えば、昼間点灯に適切な第1発光素子61aと、夜間点灯に適切な第2発光素子61bとを備えることで、昼間点灯及び夜間点灯のそれぞれで適した照明を行うことができる。したがって、例えば、光源による消費電力を抑制しつつ、遠方の視認性を高めることができる。
【0102】
また、本実施の形態では、例えば、自動車100は、さらに、夜間用ロービーム光源2が点灯している場合に、昼間用光源4が点灯していないときに、自動車100の運転者に報知する報知部160を備える。
【0103】
これにより、夜間用ロービーム光源2が点灯している時に昼間用光源4が点灯しない場合に、運転者に知らせることができる。例えば、夜間用ロービーム光源2が点灯している場合には、昼間用光源4が点灯しているか否かは運転者にとっては判断しにくい。よって、この場合に、運転者に報知することで、いち早く照明装置1の故障を知らせることができる。
【0104】
(その他)
以上、本発明に係る照明装置及び自動車について、上記実施の形態及びその変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0105】
例えば、上記実施の形態では、第1発光素子61aを夜間に発光させないことで、昼間用光源4を減光させたが、これに限らない。例えば、昼間用光源4が1種類のみの発光素子(例えば、第2発光素子61b)を備える場合、当該発光素子の発光量を調節することで、減光してもよい。
【0106】
例えば、昼間用光源4を、昼間はDC駆動することで、100%発光させるのに対して、夜間はAC駆動することで、減光してもよい。つまり、所定の周期内で発光素子に電流を供給する期間を制御することで、夜間点灯時に減光することができる。例えば、夜間では、所定の周期内の30%の期間のみ電流を供給することで、昼間点灯時の30%の輝度で発光させることができる。あるいは、発光素子へ流す電流量を小さくすることで、夜間点灯時に減光してもよい。
【0107】
また、例えば、上記実施の形態では、夜間用ロービーム光源2及び昼間用光源4と、夜間用ハイビーム光源3とが別体で構成される例について示したが、夜間用ロービーム光源2及び昼間用光源4と、夜間用ハイビーム光源3とは一体に構成されてもよい。これにより、照明装置1をより小型化することができる。
【0108】
また、例えば、上記実施の形態では、夜間用ロービーム光源2と昼間用光源4とを一体に構成する例について示したが、これらを別体で構成してもよい。
【0109】
また、例えば、上記の実施の形態では、自動車100が2つの照明装置1(前照灯120)を備える例について示したが、これに限らない。例えば、自動車100は、例えば、車体110の左右に2つずつの照明装置1など、3つ以上の照明装置1を備えてもよく、あるいは、1つのみの照明装置1を備えてもよい。
【0110】
また、例えば、上記実施の形態では、発光素子の一例としてLEDを例示したが、半導体レーザなどの半導体発光素子、有機EL(Electro−Luminescence)又は無機EL素子などの発光素子を用いてもよい。
【0111】
また、例えば、上記実施の形態では、自動車100として四輪自動車を例示したが、二輪自動車などのその他の自動車でもよい。
【0112】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。