特許第6443723号(P6443723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443723
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】捲回機、及び電極の捲回方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20181217BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20181217BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20181217BHJP
   H01G 13/02 20060101ALI20181217BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALN20181217BHJP
【FI】
   H01M10/04 W
   H01G11/86
   H01G13/00 381
   H01G13/02 Z
   H01G13/02 301Z
   !H01M10/0587
【請求項の数】14
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-177253(P2014-177253)
(22)【出願日】2014年9月1日
(65)【公開番号】特開2016-51645(P2016-51645A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】吉竹 伸介
(72)【発明者】
【氏名】村上 聡
(72)【発明者】
【氏名】丸山 隼
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−068170(JP,A)
【文献】 特開2000−182658(JP,A)
【文献】 特開2011−246212(JP,A)
【文献】 特開平11−171379(JP,A)
【文献】 特開2003−297412(JP,A)
【文献】 特開昭59−096673(JP,A)
【文献】 特開2001−202986(JP,A)
【文献】 特開2012−188278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01G 11/86
H01G 13/00
H01G 13/02
H01M 10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の電極のロールから該電極を送り出すことが可能な供給部と、
前記供給部から送り出された前記電極を搬送する電極搬送部と、
帯状のセパレータを搬送するセパレータ搬送部と、
前記電極間に前記セパレータが位置するように、前記電極搬送部及び前記セパレータ搬送部によって搬送された前記電極及び前記セパレータを捲回する捲回部と、
搬送中の前記電極の短手方向の位置を検出するセンサ部と、
前記センサ部での検出結果に基づいて搬送中の電極の短手方向の位置を調整する電極調整部と、
新たなロールが前記供給部に配置されて該ロールから電極が最初に送り出されたときに、送り出される電極の長さであって前記新たなロールの外周面に位置していた先端からの電極の長さを検出する検出部と、
前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検出部での検出結果に基づき、前記電極における前記先端を含む先端部位が前記新たなロールから送り出されるまで前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を所定の速度である初期速度で維持し、前記新たなロールから前記先端部位が送り出された後は、前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を前記初期速度より大きい設定速度にする、捲回機。
【請求項2】
前記先端を含む先端部位の長さは、前記ロールから送り出される電極全体の長さの少なくとも0.6%以上である、請求項1に記載の捲回機。
【請求項3】
前記検出部は、前記ロールの直径、前記ロールの回転量、前記搬送部での電極の搬送距離、及び前記搬送部での電極の搬送速度、の少なくとも一つに基づき、前記ロールから送り出される前記電極の先端からの長さを検出する、請求項1又は2に記載の捲回機。
【請求項4】
前記電極調整部は、前記電極の搬送経路に沿って複数設けられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の捲回機。
【請求項5】
前記センサ部は、前記搬送経路に沿って複数設けられ、
前記複数の電極調整部のそれぞれは、対応するセンサ部での検出結果に基づいて前記電極の短手方向の位置を調整する、請求項4に記載の捲回機。
【請求項6】
少なくとも一つの電極調整部は、前記電極の搬送経路における前記センサ部が前記電極の短手方向の位置を検出する位置より下流位置において、前記電極の短手方向の位置を調整する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の捲回機。
【請求項7】
少なくとも一つの電極調整部は、前記電極の搬送経路における該搬送経路の中間位置より下流位置において、前記電極の短手方向の位置を調整する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の捲回機。
【請求項8】
前記電極は、正極と負極とを含み、
前記ロールは、正極ロールと負極ロールとを含み、
前記供給部は、前記正極ロールから前記正極を送り出す正極供給部と、前記負極ロールから前記負極を送り出す負極供給部と、を有し、
前記電極搬送部は、前記正極を搬送する正極搬送部と、前記負極を搬送する負極搬送部と、を有し、
前記捲回部は、前記正極と前記負極との間に前記セパレータが位置するように、該正極、該負極及び該セパレータを捲回し、
前記センサ部は、搬送中の前記正極の短手方向の位置を検出する正極センサ部と、搬送中の前記負極の短手方向の位置を検出する負極センサ部と、を有し、
前記電極調整部は、前記正極センサ部での検出結果に基づいて前記正極の短手方向の位置を調整する正極調整部と、前記負極センサ部での検出結果に基づいて前記負極の短手方向の位置を調整する負極調整部と、を有し、
前記検出部は、前記正極ロールから送り出される前記正極の先端からの長さを検出可能な正極検出部と、前記負極ロールから送り出される前記負極の先端からの長さを検出可能な負極検出部とを有し、
前記制御部は、前記正極検出部及び前記負極検出部での検出結果に基づいて、前記正極における前記先端を含む先端部位が前記正極ロールから送り出され、且つ前記負極における前記先端を含む先端部位が前記負極ロールから送り出された後、前記正極搬送部における前記正極の搬送速度、及び前記負極搬送部における前記負極の搬送速度を大きくする、請求項1〜のいずれか1項に記載の捲回機。
【請求項9】
帯状の電極のロールから該電極を送り出すことが可能な供給部と、
前記供給部から送り出された前記電極を搬送する電極搬送部と、
帯状のセパレータを搬送するセパレータ搬送部と、
前記電極間に前記セパレータが位置するように、前記電極搬送部及び前記セパレータ搬送部によって搬送された前記電極及び前記セパレータを捲回する捲回部と、
搬送中の前記電極の短手方向の位置を検出するセンサ部と、
前記センサ部での検出結果に基づいて搬送中の電極の短手方向の位置を調整する電極調整部と、
前記ロールから送り出される前記電極の先端からの長さを検出する検出部と、
前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検出部での検出結果に基づき、前記電極における前記先端を含む先端部位が前記ロールから送り出された後、前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を大きくし、
前記供給部は、前記ロールを該ロールの中心軸回りに回転させて該ロールから前記電極を送り出し可能な回転軸と、前記センサ部での検出結果に基づいて前記回転軸を該回転軸の軸芯方向に移動させるロール調整部と、を有する、捲回機。
【請求項10】
帯状の電極のロールから該電極を送り出すことが可能な供給部と、
前記供給部から送り出された前記電極を搬送する電極搬送部と、
帯状のセパレータを搬送するセパレータ搬送部と、
前記電極間に前記セパレータが位置するように、前記電極搬送部及び前記セパレータ搬送部によって搬送された前記電極及び前記セパレータを捲回する捲回部と、
搬送中の前記電極の短手方向の位置を検出するセンサ部と、
前記センサ部での検出結果に基づいて搬送中の電極の短手方向の位置を調整する電極調整部と、
前記ロールから送り出される前記電極の先端からの長さを検出する検出部と、
前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検出部での検出結果に基づき、前記電極における前記先端を含む先端部位が前記ロールから送り出された後、前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を大きくし、
前記捲回部は、軸芯回りに回転することによって前記電極及び前記セパレータを捲回する捲回軸と、前記センサ部での検出結果に基づいて前記捲回軸を該捲回軸の軸芯方向に移動させる軸調整部と、を有する、捲回機。
【請求項11】
帯状の電極のロールから該電極を送り出すことが可能な供給部と、
前記供給部から送り出された前記電極を搬送する電極搬送部と、
帯状のセパレータを搬送するセパレータ搬送部と、
前記電極間に前記セパレータが位置するように、前記電極搬送部及び前記セパレータ搬送部によって搬送された前記電極及び前記セパレータを捲回する捲回部と、
搬送中の前記電極の短手方向の位置を検出するセンサ部と、
前記センサ部での検出結果に基づいて搬送中の電極の短手方向の位置を調整する電極調整部と、
前記ロールから送り出される前記電極の先端からの長さを検出する検出部と、
前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記電極における前記先端を含む先端部位が前記ロールから送り出されるときの前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を制御する前期制御部と、前記検出部での検出結果に基づき、前記先端部位を除 く該電極の残りの部位が前記ロールから送り出されるときの前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を制御する後期制御部と、前記センサ部での検出結果に基づいて前記電極における長手方向に対する短手方向への湾曲量を検出する湾曲検出部と、を有し、
前記前期制御部は、前記検出部での検出結果に基づき、前記電極における前記先端部位が前記ロールから送り出された後、前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を大きくし、
前記後期制御部は、前記湾曲検出部によって検出された前記湾曲量に基づいて前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を変化させる、捲回機。
【請求項12】
前記後期制御部は、前記湾曲量が所定の大きさ以上のときに、前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を小さくする、請求項11に記載の捲回機。
【請求項13】
前記後期制御部は、前記湾曲量が大きくなるのに応じて前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を小さくする、請求項11又は12に記載の捲回機。
【請求項14】
帯状のセパレータ、及び帯状の電極のロールから送り出された該電極を搬送しつつ、前記電極間に前記セパレータが位置するように前記搬送された電極及びセパレータを捲回する電極の捲回方法であって、
搬送中の電極の短手方向の位置を検出し、該検出結果に基づいて前記電極の短手方向の位置を調整することと
新たなロールから電極が最初に送り出されるときの該電極における所定長さの部位であって前記新たなロールの外周位置していた先端を含む先端部位を、前記新たなロールから所定の速度である初期速度で送り出し、前記新たなロールから前記先端部位を送り出した後該ロールから前記電極を前記初期速度より大きい設定速度で送り出すことと、を備える、電極の捲回方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極体を形成するために電極を捲回する捲回機、及び電極の捲回方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、集電体エッジ位置調整装置(以下、単に「調整装置」と称する。)を備えた電池用捲回機が知られている。前記調整装置は、集電体の幅方向の位置を検出するエッジ検出手段と、前記集電体を送り出すための送り出し軸と、前記エッジ検出手段からの信号に基づいて前記送り出し軸を軸方向に進退させる軸移動手段と、を備える(特許文献1参照)。前記調整装置では、前記エッジ検出手段により集電体の幅方向の位置が検出されると、前記送り出し軸が軸方向に進退し、これにより、該送り出し軸に捲回されている集電体の幅方向の位置が調整される。その結果、前記電池用捲回機の巻き取り位置に供給される集電体の幅方向の位置が調整される。
【0003】
前記電池用捲回機では、搬送中に集電体が搬送経路から該集電体の幅方向にずれたときに、このずれが前記調整装置によって修正される(即ち、搬送中の集電体の幅方向の位置が調整される)。このため、前記巻き取り位置において巻き取られた集電体(捲回群)における捲回軸方向の電極の位置のずれ(即ち、集電体が前記巻き取り位置において幅方向にずれることによって前記捲回群に生じる捲回軸方向の電極の位置のバラツキ)を抑えることができる。
【0004】
近年、前記捲回群の生産効率のさらなる向上が求められている。そのため、上記の電池用捲回機において、集電体の搬送速度をより高くすると共に、前記巻き取り位置での集電体の捲回速度も高くすることが考えられる。
【0005】
しかし、前記集電体の搬送速度が高くなると、搬送中の集電体が幅方向にずれる速さに前記送り出し軸の軸方向の進退が追従できず、前記巻き取り位置において巻き取られた集電体(前記捲回群)における捲回軸方向の電極の位置のずれが大きくなる場合がある。特に、集電体に湾曲(長手方向に対する短手方向への湾曲)した部位がある場合に、捲回群における捲回軸方向の電極の位置のずれが顕著になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−129260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、電極に湾曲している部位があっても該電極が捲回された電極体における捲回軸方向の電極の位置のずれを抑えることができる捲回機、及び電極の捲回方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意研究を行った結果、電極体を形成するための電極が捲回されているロールでは、該電極の製造方法に起因して、電極の先端部位(ロールの外周面に位置する電極端部(先端)を含む所定長さの電極の部位)において、電極の残りの部位に比べ、長手方向に対する短手方向への湾曲量が大きくなっている場合が多いことを知得した。詳しくは、次の通りである。
【0009】
電極は、帯状の金属箔の表面に短手方向の一端部を残して活物質を塗工し、この活物質が塗工された状態の金属箔を、ロールプレスした後に捲回してロールにし、該ロールを真空乾燥することによって形成される。前記真空乾燥は、前記活物質を前記金属箔に対して強固に固定するために行われる。
【0010】
この真空乾燥の際に、前記金属箔が熱によって伸びる。このとき、前記電極において、前記活物質が塗工された部位と前記活物質が塗工されていない部位とで、伸び率が異なる。また、前記伸びによって、捲回された電極が該ロールの内周面から外周面に向かってほどけようとするが、前記ロールの外周面において電極端部が固定されているため、ロールの外周面に近い部位ほど、前記ほどけようとする力が累積されて大きな力が加わる。その結果、前記電極における先端部位は、活物質の塗工されていない側端部を内にして大きく湾曲し易い、即ち、湾曲量が大きくなり易い。また、前記電極の製造工程において、ロールプレスの際にも、電極が湾曲する場合がある。
【0011】
そこで、この知見に基づき前記発明者らは、前記ロールでは、電極の先端部位において湾曲量が大きくなっている可能性が高いため、この電極端部を含む所定部位を捲回して(巻き取って)電極体を形成したときに前記電極体において前記湾曲に起因する捲回軸方向における電極の位置のずれが生じ易いことに着目し、以下の構成の捲回機、及び電極の捲回方法を創作した。
【0012】
本発明に係る捲回機は、
帯状の電極のロールから該電極を送り出すことが可能な供給部と、
前記供給部から送り出された前記電極を搬送する電極搬送部と、
帯状のセパレータを搬送するセパレータ搬送部と、
前記電極間に前記セパレータが位置するように、前記電極搬送部及び前記セパレータ搬送部によって搬送された前記電極及び前記セパレータを捲回する捲回部と、
搬送中の前記電極の短手方向の位置を検出するセンサ部と、
前記センサ部での検出結果に基づいて搬送中の電極の短手方向の位置を調整する電極調整部と、
前記ロールから送り出される前記電極の先端からの長さを検出可能な検出部と、
前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検出部での検出結果に基づき、前記電極における前記先端を含む先端部位が前記ロールから送り出された後、前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を大きくする。
【0013】
かかる構成では、電極体の生産効率を向上させるために電極が、通常、搬送されるときの搬送速度(設定速度)が高く設定されても、電極において大きく湾曲している可能性の高い部位(先端部位)がロールから送り出された後に電極の搬送速度を大きする、即ち、先端部位が搬送されるときの搬送速度(初期速度)を低く抑え(小さくし)、先端部位が搬送された後に電極の搬送速度を大きくすることで、電極体の生産効率を向上させつつ、搬送中の電極において前記湾曲に起因する短手方向へのずれが生じたときに電極調整部による電極の短手方向の位置調整が前記ずれに追従できなくなることを防いでいる。このため、電極の先端部位(大きく湾曲している可能性の高い部位)を捲回して形成された電極体においても、捲回軸方向の電極の位置のずれが抑えられる。
【0014】
前記先端を含む先端部位の長さは、前記ロールから送り出される電極全体の長さの少なくとも0.6%以上であることが好ましい。
【0015】
通常、製造時において電極に加わる熱によって、ロールの外周面に近い部位ほど、該ロールを構成する電極の湾曲量が大きくなる。このため、上記構成によれば、電極調整部による電極の短手方向の位置調整が追従できなくなるほど湾曲量の大きな部位(電極における先端から全長の0.6%以内の部位)が捲回されるまで、搬送速度が大きくなるのが確実に防がれる。これにより、電極の先端部位(大きく湾曲している可能性の高い部位)を捲回して形成された電極体においても、捲回軸方向の電極の位置のずれが確実に抑えられる。
【0016】
前記検出部は、前記ロールの直径、前記ロールの回転量、前記搬送部での電極の搬送距離、及び前記搬送部での電極の搬送速度、の少なくとも一つに基づき、前記ロールから送り出される前記電極の先端からの長さを検出してもよい。
【0017】
かかる構成によれば、ロールから送り出される電極の長さを直接測定しなくても、ロールの直径等の検出し易い値から、ロールから送り出される電極の長さを精度よく検出することができる。
【0018】
前記捲回機において、
前記電極調整部は、前記電極の搬送経路に沿って複数設けられることが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、搬送経路上の複数の位置において電極(搬送中の電極)が短手方向の位置を調整されるため、捲回部へ供給(搬送)される電極の短手方向への位置のずれがより抑えられ、形成された電極体における捲回軸方向の電極の位置のずれがより好適に抑えられる。
【0020】
このように複数の第一調整部が捲回機に設けられる場合、
前記センサ部は、前記搬送経路に沿って複数設けられ、
前記複数の電極調整部のそれぞれは、対応するセンサ部での検出結果に基づいて前記電極の短手方向の位置を調整することがより好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、センサ部によって検出された電極の短手方向の位置のずれを、該センサ部と対応する電極調整部が調整するため、各調整位置(即ち、各電極調整部が電極の位置調整を行う位置)での電極の位置調整の精度が向上する。これにより、捲回部において形成された電極体における捲回軸方向の電極のずれがより効果的に抑えられる。
【0022】
また、前記捲回機において、
少なくとも一つの電極調整部は、前記電極の搬送経路における前記センサ部が前記電極の短手方向の位置を検出する位置より下流位置において、前記電極の短手方向の位置を調整してもよい。
【0023】
かかる構成によれば、短手方向の位置が検出される位置より下流位置で電極の短手方向の位置調整が行われるため、センサ部によって実際に短手方向の位置が検出された電極の部位に対して電極調整部が位置調整することが可能となる。このため、電極の短手方向における位置調整がより精度よく行われる。
【0024】
また、前記捲回機において、
少なくとも一つの電極調整部は、前記電極の搬送経路における該搬送経路の中間位置より下流位置において、前記電極の短手方向の位置を調整することが好ましい。
【0025】
かかる構成によれば、捲回部に近い位置(搬送経路の中間位置より下流位置)で電極の短手方向の位置が調整されるため、捲回部から遠い位置(搬送経路の中間位置より上流位置)で電極の短手方向の位置が調整される場合に比べ、捲回部に供給される電極の短手方向の位置のずれが効果的に抑えられる。その結果、捲回部で形成された電極体における捲回軸方向の電極の位置のずれがより抑えられる。
【0026】
また、前記捲回機において、
前記供給部は、前記ロールを該ロールの中心軸回りに回転させて該ロールから前記電極を送り出し可能な回転軸と、前記センサ部での検出結果に基づいて前記回転軸を該回転軸の軸芯方向に移動させるロール調整部と、を有してもよい。
【0027】
かかる構成によれば、電極の送り出し位置においても該電極の短手方向の位置が調整されるため、捲回部で形成された電極体における捲回軸方向の電極の位置のずれがより抑えられる。
【0028】
また、前記捲回機において、
前記捲回部は、軸芯回りに回転することによって前記電極及び前記セパレータを捲回する捲回軸と、前記センサ部での検出結果に基づいて前記捲回軸を該捲回軸の軸芯方向に移動させる軸調整部と、を有してもよい。
【0029】
かかる構成によれば、捲回部において、捲回体(捲回軸に捲回された状態の電極及びセパレータ)に対し、該捲回体に供給される電極の短手方向の位置が調整されるため、捲回部で形成される電極体における捲回軸方向の電極の位置のずれがより抑えられる。
【0030】
また、前記捲回機において、
前記電極は、正極と負極とを含み、
前記ロールは、正極ロールと負極ロールとを含み、
前記供給部は、前記正極ロールから前記正極を送り出す正極供給部と、前記負極ロールから前記負極を送り出す負極供給部と、を有し、
前記電極搬送部は、前記正極を搬送する正極搬送部と、前記負極を搬送する負極搬送部と、を有し、
前記捲回部は、前記正極と前記負極との間に前記セパレータが位置するように、該正極、該負極及び該セパレータを捲回し、
前記センサ部は、搬送中の前記正極の短手方向の位置を検出する正極センサ部と、搬送中の前記負極の短手方向の位置を検出する負極センサ部と、を有し、
前記電極調整部は、前記正極センサ部での検出結果に基づいて前記正極の短手方向の位置を調整する正極調整部と、前記負極センサ部での検出結果に基づいて前記負極の短手方向の位置を調整する負極調整部と、を有し、
前記検出部は、前記正極ロールから送り出される前記正極の先端からの長さを検出可能な正極検出部と、前記負極ロールから送り出される前記負極の先端からの長さを検出可能な負極検出部とを有し、
前記制御部は、前記正極検出部及び前記負極検出部での検出結果に基づいて、前記正極における前記先端を含む先端部位が前記正極ロールから送り出され、且つ前記負極における前記先端を含む先端部位が前記負極ロールから送り出された後、前記正極搬送部における前記正極の搬送速度、及び前記負極搬送部における前記負極の搬送速度を大きくしてもよい。
【0031】
かかる構成によれば、正極及び負極の先端部位(大きく湾曲している可能性の高い部位)を捲回して形成された電極体においても、正極及び負極の少なくとも一方の捲回軸方向における位置のずれが抑えられる。
【0032】
また、前記捲回機において、
前記制御部は、前記電極の先端部位が前記ロールから送り出されるときの前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を制御する前期制御部と、前記検出部での検出結果に基づき、前記先端部位を除く該電極の残りの部位が前記ロールから送り出されるときの前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を制御する後期制御部と、前記センサ部での検出結果に基づいて前記電極における長手方向に対する短手方向への湾曲量を検出する湾曲検出部と、を有し、
前記後期制御部は、前記湾曲検出部によって検出された前記湾曲量に基づいて前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を変化させてもよい。
【0033】
かかる構成によれば、先端部位以外に、湾曲量の大きな(所定の大きさ以上の)部位が電極にあったとしても、該部位を検出して電極搬送部での該部位の搬送速度を変化させることができる。このため、該捲回機により、長手方向の途中位置にも湾曲量の大きな部位がある電極を用いて電極体を形成しても、形成された電極体における捲回軸方向の電極の位置のずれが抑えられる。
【0034】
この場合、
前記後期制御部は、前記湾曲量が所定の大きさ以上のときに、前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を小さくしてもよい。
【0035】
かかる構成によれば、湾曲量が所定値(所定の大きさ)を超えたときに電極の搬送速度を小さくするといった簡単な制御によって、搬送される電極の途中位置に湾曲量の大きな部位が含まれていても、捲回部において形成された電極体における捲回軸方向の電極の位置ずれが抑えられる。
【0036】
また、
前記後期制御部は、前記湾曲量が大きくなるのに応じて前記電極搬送部における前記電極の搬送速度を小さくしてもよい。
【0037】
かかる構成によれば、湾曲量が大きい部位ほど、より小さな搬送速度で搬送されるため、搬送中の電極において前記湾曲に起因する短手方向へのずれが生じたときに電極調整部による電極の短手方向の位置調整が追従できなくなることを、より確実に防ぐことができる。
【0038】
また、本発明に係る電極の捲回方法は、
帯状のセパレータ、及び帯状の電極のロールから送り出された該電極を搬送しつつ、前記電極間に前記セパレータが位置するように前記搬送された電極及びセパレータを捲回する電極の捲回方法であって、
搬送中の電極の短手方向の位置を検出し、該検出結果に基づいて前記電極の短手方向の位置を調整すると共に、前記電極における所定長さの部位であって前記ロールの外周側にある電極端部を含む部位が前記ロールから送り出された後、前記電極の搬送速度を大きくする。
【0039】
かかる構成では、電極体の生産効率を向上させるために電極が、通常、搬送されるときの搬送速度(設定速度)が高く設定されても、電極において大きく湾曲している可能性の高い部位(先端部位)がロールから送り出された後に電極の搬送速度を大きくする、即ち、先端部位が搬送されるときの搬送速度(初期速度)を低く抑え(小さくし)、先端部位が搬送された後に電極の搬送速度を大きくすることで、電極体の生産効率を向上させつつ、搬送中の電極において前記湾曲に起因する短手方向へのずれが生じたときに電極の短手方向の位置調整が前記ずれに追従できなくなることを防いでいる。このため、電極の先端部位(大きく湾曲している可能性の高い部位)を捲回して形成された電極体においても、捲回軸方向の電極の位置のずれが抑えられる。
【発明の効果】
【0040】
以上より、本発明によれば、電極に湾曲している部位があっても該電極が捲回された電極体における捲回軸方向の電極の位置のずれを抑えることができる捲回機、及び電極の捲回方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、本実施形態に係る捲回機の概略構成図である。
図2図2は、電極、セパレータ及び電極体を示す図である。
図3図3は、位置調整部を説明するための図である。
図4図4は、供給部を説明するための図である。
図5図5は、制御部の構成を示すブロック図である。
図6図6は、電極の湾曲を説明するための図である。
図7図7は、捲回機における動作のフローを示す図である。
図8図8は、捲回機によって形成された電極体が組み込まれる蓄電素子の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の一実施形態について、図1図8を参照しつつ説明する。
【0043】
捲回機は、帯状(帯形状)の電極と帯状(帯形状)のセパレータとを捲回することで、電極体を形成する。本実施形態の捲回機は、例えば、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池に用いられる電極体を形成する。具体的に、捲回機は、図1に示すように、電極2を搬送する電極搬送部3と、セパレータ4を搬送するセパレータ搬送部5と、電極2及びセパレータ4を捲回する(巻き取る)捲回部6と、搬送中の電極2及びセパレータ4の位置を検出するセンサ部7と、搬送中の電極2及びセパレータ4の位置を調整する位置調整部8と、捲回機1の各構成要素を制御する制御部9と、を備える。本実施形態の捲回機1は、電極2等を送り出すことが可能な供給部10と、供給部10から送り出される電極2における先端からの長さを検出可能な検出部17と、備える。以下では、先ず、捲回機1によって捲回される(巻き取られる)電極2及びセパレータ4について図2を参照しつつ説明した後、捲回機1について具体的に説明する。
【0044】
本実施形態の電極2は、正極21と負極22とを含む。
【0045】
正極21は、帯状の金属箔211と、金属箔211の上に形成された正極活物質層212と、を有する。本実施形態の金属箔211は、例えば、アルミニウム箔である。正極21は、帯形状の短手方向の一方の端部に、正極活物質層212の非被覆部(正極活物質層212が形成されていない部位)を有する。
【0046】
正極活物質層212は、正極活物質と、バインダーと、を有する。正極活物質は、例えば、リチウム金属酸化物である。バインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデンである。正極活物質層212は、アセチレンブラック等の導電助剤をさらに有してもよい。
【0047】
以上のように構成される正極21は、以下のように製造される。先ず、帯状の金属箔211の表面に正極活物質等が塗工されて正極活物質層212が形成される。このとき、金属箔211の短手方向の一端部を残して正極活物質等が塗工される。正極活物質が塗布された金属箔211は、プレスされ、その後、ロール状に捲回される。そして、ロール(正極活物質層212が形成された金属箔211のロール)が、正極活物質層212を金属箔211に強固に固定するために真空乾燥され、正極21が完成する。
【0048】
負極22は、帯状の金属箔221と、金属箔221の上に形成された負極活物質層222と、を有する。本実施形態の金属箔221は、例えば、銅箔である。負極22は、帯形状の短手方向の他方(正極21の非被覆部と反対側)の端部に、負極活物質層222の非被覆部(負極活物質層222が形成されていない部位)を有する。
【0049】
負極活物質層222は、負極活物質と、バインダーと、を有する。負極活物質は、例えば、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素などの炭素材、又は、ケイ素(Si)などのリチウムイオンと合金化反応を生じる材料である。バインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデンである。負極活物質層222は、アセチレンブラック等の導電助剤をさらに有してもよい。
【0050】
以上のように構成される負極22は、正極21と同様にして製造される。即ち、負極22は、帯状の金属箔221の表面に負極活物質層222が短手方向の一端部を残して形成され、この負極活物質層222が形成された状態の金属箔221が、プレス後にロール状に捲回され、真空乾燥されることによって形成される。
【0051】
セパレータ4は、絶縁性を有する帯状の部材である。セパレータ4は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、ポリアミドなどの多孔質膜によって構成される。
【0052】
以上の正極21、負極22及びセパレータ4のそれぞれは、ロール状に捲回された状態(真空乾燥されたときのロールのままの状態)で、供給部10に配置される。即ち、本実施形態の捲回機1では、電極体23を形成するために、正極21のロール(正極ロール)Rと、負極22のロール(負極ロール)Rと、セパレータ4のロール(第一ロールR及び第二ロールR)と、が捲回機1の供給部10に配置される。
【0053】
次に、捲回機1の各構成について具体的に説明する。
【0054】
電極搬送部3は、正極21を搬送する正極搬送部31と、負極22を搬送する負極搬送部32と、を有する。電極搬送部3は、制御部9からの出力信号に基づき電極2の搬送速度を調整する。詳しくは、制御部9からの出力信号に基づき、正極搬送部31が正極21の搬送速度を調整すると共に、負極搬送部32が負極22の搬送速度を調整する。
【0055】
正極搬送部31は、少なくとも一つの搬送ローラ311を有し、供給部10から送り出された正極21を捲回部6まで搬送(案内)する。本実施形態の正極搬送部31は、複数の搬送ローラ311を有する。複数の搬送ローラ311は、正極21が所定の搬送経路を通って捲回部6に向かうように配置されている。複数の搬送ローラ311は、搬送される正極21に対して長手方向の略一定の張力が加わり、且つ、正極21が捲回部6に対して略一定の張力で送り込まれる(供給される)ように、それぞれ構成される。
【0056】
負極搬送部32は、少なくとも一つの搬送ローラ321を有し、供給部10から送り出された負極22を捲回部6まで搬送(案内)する。本実施形態の負極搬送部32は、複数の搬送ローラ321を有する。複数の搬送ローラ321は、負極22が所定の搬送経路を通って捲回部6に向かうように配置されている。複数の搬送ローラ321は、搬送される負極22に対して長手方向の略一定の張力が加わり、且つ、負極22が捲回部6に対して略一定の張力で送り込まれる(供給される)ように、それぞれ構成される。
【0057】
セパレータ搬送部5は、供給部10から送り出されたセパレータ4を捲回部6まで搬送する。本実施形態のセパレータ搬送部5は、第一搬送部51と、第二搬送部52と、を有する。各搬送部51,52は、供給部10から捲回部6までセパレータ4を互いに異なる搬送経路で搬送する。各搬送部51,52は、少なくとも一つの搬送ローラ511、521を有する。本実施形態の第一及び第二搬送部51,52は、複数の搬送ローラ511,521をそれぞれ有する。複数の搬送ローラ511,521は、搬送されるセパレータ4に対して長手方向の略一定の張力が加わり、且つ、セパレータ4が捲回部6に対して略一定の張力で送り込まれる(供給される)ように、それぞれ構成される。
【0058】
第一搬送部51は、セパレータ4が正極21と負極22との間に位置するように捲回部6に供給されるよう、該セパレータ4を搬送する。以下では、第一搬送部51によって搬送されるセパレータを第一セパレータ41と称することもある。第二搬送部52は、捲回部6において、第一搬送部51によって搬送されたセパレータ4と該第二搬送部52によって搬送されたセパレータ4との間に負極22が位置するよう、該セパレータ4を搬送する。以下では、第二搬送部52によって搬送されるセパレータを第二セパレータ42と称することもある。
【0059】
捲回部6は、電極2間にセパレータ4が位置するように、電極搬送部3及びセパレータ搬送部5によって搬送された電極2及びセパレータ4を捲回する。詳しくは、捲回部6は、正極21と負極22との間にセパレータ41,42が位置するように、正極21、負極22及びセパレータ41,42を捲回する。より詳しくは、捲回部6は、重なった状態の正極21、第一セパレータ41、負極22、及び第二セパレータ42を捲回する。この捲回部6は、電極2(詳しくは、正極21及び負極22)及びセパレータ4(詳しくは、第一セパレータ41及び第二セパレータ42)を捲回する捲回軸61を有する。捲回部6は、捲回軸61の回転数(回転量)を検出し、その検出結果を捲回信号として制御部9に出力する。
【0060】
捲回軸61は、該捲回軸61の軸芯610回りに回転することによって正極21、第一セパレータ41、負極22、及び第二セパレータ42を捲回する。この捲回軸61は、制御部9から入力される回転数信号に基づく回転数(回転速度)で回転する。具体的には、捲回軸61は、電極搬送部3及びセパレータ搬送部5における電極2及びセパレータ4の搬送速度と対応する回転数で回転する。捲回軸61の軸芯610は、該捲回軸61によって捲回される(巻き取られる)正極21、第一セパレータ41、負極22、及び第二セパレータ42の各短手方向と同方向に延びる。即ち、捲回部6では、正極21、第一セパレータ41、負極22、及び第二セパレータ42は、それぞれの短手方向が同方向となるように重ねられた状態で、捲回軸61によって捲回される。本実施形態の捲回軸61は、筒状の巻芯が取り付けられた状態で、該巻芯の外周面に正極21、第一セパレータ41、負極22、及び第二セパレータ42を捲回する(巻き取る)。
【0061】
センサ部7は、搬送中の電極2の短手方向の位置を検出する電極センサ部を有する。本実施形態の電極センサ部は、搬送中の正極21の短手方向の位置を検出する少なくとも一つの第一センサ部(正極センサ部)71と、搬送中の負極22の短手方向の位置を検出する少なくとも一つの第二センサ部(負極センサ部)72と、を有する。センサ部7は、搬送中のセパレータ4の短手方向の位置を検出する少なくとも一つの第三センサ部73も有する。各センサ部71,72,73は、検出結果をセンサ検出信号として制御部9にそれぞれ出力する。
【0062】
本実施形態の第一センサ部71は、正極21の搬送経路に沿って複数配置される。第一センサ部71は、正極21における短手方向の一方の端縁(エッジ)の位置を検出することにより、正極21の短手方向の位置を検出している。本実施形態の第二センサ部72は、負極22の搬送経路に沿って複数配置される。第二センサ部72は、第一センサ部71と同様、負極22における短手方向の一方のエッジの位置を検出することにより、負極22の短手方向の位置を検出している。本実施形態の第三センサ部73は、セパレータ41,42の搬送経路に沿って複数配置される。第三センサ部73は、第一センサ部71及び第二センサ部72と同様、セパレータ41,42における短手方向の一方のエッジの位置を検出することにより、セパレータ41,42の短手方向の位置を検出している。本実施形態では、第一搬送部51における第一セパレータ41の搬送路に沿って配置される第三センサ部73の数と、第二搬送部52におけるセパレータ42の搬送路に沿って配置される第三センサ部73の数とは、同数であるが、この構成に限定されない。即ち、第一搬送部51に配置される第三センサ部73の数と、第二搬送部52に配置される第三センサ部73の数とが、異なってもよい。
【0063】
位置調整部8は、センサ部7(詳しくは、電極センサ部)での検出結果に基づいて搬送中の電極2の短手方向の位置を調整する電極調整部80を有する。本実施形態では、複数の電極調整部80が、電極搬送部3における電極2の搬送経路に沿って配置されている。複数の電極調整部80のそれぞれは、複数のセンサ部71,72のうちの対応するセンサ部71,72による検出結果に基づいて、電極2の短手方向の位置を調整する。また、位置調整部8は、第三センサ部73での検出結果に基づいてセパレータ(第一及び第二セパレータ)41,42の短手方向の位置を調整する少なくとも一つのセパレータ調整部83も有する。
【0064】
少なくとも一つの電極調整部80は、電極2の搬送経路におけるセンサ部7が電極2の短手方向の位置を検出する位置より下流位置において、電極2の短手方向の位置を調整する。この構成によれば、電極2の搬送経路において、短手方向の位置が検出される位置より下流位置で電極2の短手方向の位置調整が行われる。このため、センサ部7によって実際に短手方向の位置が検出された電極2の部位に対して電極調整部80が位置調整する。その結果、電極2の短手方向の位置調整がより精度よく行われる。
【0065】
また、少なくとも一つの電極調整部80は、電極2の搬送経路の中間位置より下流位置において、電極2の短手方向の位置を調整する。この構成によれば、捲回部6に近い位置(前記中間位置より下流位置)で電極2の短手方向の位置が調整される。このため、捲回部6から遠い位置(前記中間位置より上流位置)で電極2の短手方向の位置が調整される場合に比べ、捲回部6に供給される電極2の短手方向のずれが効果的に抑えられる。その結果、捲回部6で形成された電極体23における捲回軸方向の電極2の位置のずれが抑えられる。
【0066】
詳しくは、電極調整部80は、第一センサ部71での検出結果に基づいて正極21の短手方向の位置を調整する少なくとも一つの正極調整部81と、第二センサ部72での検出結果に基づいて負極22の短手方向の位置を調整する少なくとも一つの負極調整部82と、を有する。
【0067】
本実施形態の正極調整部81は、正極21の搬送経路に沿って複数(本実施形態の例では第一センサ部71の数と同数)設けられる。具体的に、各正極調整部81は、正極21の搬送経路に沿って配置される複数の第一センサ部71とそれぞれ対応する位置に配置されている。本実施形態の例では、各正極調整部81は、正極21の搬送経路において、対応する第一センサ部71が正極21の短手方向の位置を検出する位置と隣接する位置であって前記検出する位置より下流位置にそれぞれ配置される。少なくとも一つの正極調整部81は、正極21の搬送経路の中間位置より下流位置に配置される。
【0068】
正極調整部81は、図3に示すように、一対のローラ811と、一対のローラ811を該ローラ811の軸芯方向に駆動する駆動部812と、を有する。一対のローラ811は、正極21の搬送経路において、該正極21を挟み込むように平行に配置される。また、各ローラ811は、正極21が長手方向に移動できるように軸芯回りにそれぞれ回転可能に構成される。駆動部812は、制御部9からの指示信号に基づいて、一対のローラ811を軸芯方向に移動させる。これにより、一対のローラ811に挟まれた状態で搬送されている正極21の短手方向の位置が調整される。
【0069】
本実施形態の負極調整部82は、負極22の搬送経路に沿って複数(本実施形態の例では第二センサ部72の数と同数)設けられる。具体的に、各負極調整部82は、負極22の搬送経路に沿って配置される複数の第二センサ部72とそれぞれ対応する位置に配置されている。本実施形態の例では、各負極調整部82は、負極22の搬送経路において、対応する第二センサ部72が負極22の短手方向の位置を検出する位置と隣接する位置であって前記検出する位置より下流位置にそれぞれ配置される。少なくとも一つの負極調整部82は、負極22の搬送経路の中間位置よりも下流位置に配置される。
【0070】
負極調整部82は、正極調整部81と同様の構成である。即ち、負極調整部82は、一対のローラ811と、一対のローラ811を該ローラ811の軸芯方向に駆動する駆動部812と、を有する。負極調整部82は、駆動部812が制御部9からの指示信号に基づいて一対のローラ811を軸芯方向に移動させることにより、一対のローラ811に挟まれた状態で搬送されている負極22の短手方向の位置を調整する。
【0071】
本実施形態のセパレータ調整部83は、第一搬送部51における第一セパレータ41の搬送経路に沿って複数(本実施形態の例では第一搬送部51における第三センサ部73の数と同数)設けられる。また、セパレータ調整部83は、第二搬送部52における第二セパレータ42の搬送経路に沿って複数(本実施形態の例では第二搬送部52における第三センサ部73の数と同数)設けられる。具体的に、各セパレータ調整部83は、セパレータ41,42の搬送経路に沿って配置される複数の第三センサ部73とそれぞれ対応する位置に配置されている。本実施形態の例では、各セパレータ調整部83は、セパレータ41,42の搬送経路において、第三センサ部73がセパレータ41,42の短手方向の位置を検出する位置と隣接する位置であって前記検出する位置より下流位置にそれぞれ配置される。少なくとも一つのセパレータ調整部83は、セパレータ41,42の搬送経路の中間位置よりも下流位置に配置される。
【0072】
セパレータ調整部83は、正極調整部81と同様の構成である。即ち、セパレータ調整部83は、一対のローラ811と、一対のローラ811を該ローラ811の軸芯方向に駆動する駆動部812と、を有する。セパレータ調整部83は、駆動部812が制御部9からの指示信号に基づいて一対のローラ811を軸芯方向に移動させることにより、一対のローラ811に挟まれた状態で搬送されているセパレータ41,42の短手方向の位置を調整する。
【0073】
供給部10は、電極2を電極搬送部3に送り出す電極供給部11と、セパレータ4をセパレータ搬送部5に送り出すセパレータ供給部12と、を有する。
【0074】
電極供給部11は、電極2のロール(正極ロールR、及び負極ロールR)を該ロールR,Rの中心軸回りに回転させて該ロールR,Rから電極2を電極搬送部3に送り出す(供給する)。本実施形態の電極供給部11は、正極搬送部31へ正極21を送り出す(供給する)正極供給部13と、負極搬送部32へ負極22を送り出す(供給する)負極供給部14と、を有する。
【0075】
正極供給部13は、図4に示すように、正極ロールRが配置される回転軸131と、回転軸131を該回転軸131の軸芯方向に駆動するロール調整部132と、を有する。回転軸131は、正極ロールRを該正極ロールRの中心軸(回転軸131の軸芯)回りに回転可能に保持する。即ち、正極ロールRは、該正極ロールRの中心軸と回転軸131の軸芯とが一致するように回転軸131に取り付けられる。ロール調整部132は、センサ部7(詳しくは第一センサ部71)での検出結果に基づいて回転軸131を該回転軸131の軸芯方向に移動させる。詳しくは、ロール調整部132は、正極ロールRが配置された状態の回転軸131を回転させつつ、制御部9からの指示信号に基づいて回転軸131を該回転軸131の軸芯方向に移動させる。これにより、正極供給部13から正極搬送部31に送り出される正極21の短手方向の位置が調整される。
【0076】
負極供給部14は、正極供給部13と同様の構成である。即ち、負極供給部14は、回転軸131と、ロール調整部132と、を有する。このため、負極供給部14では、ロール調整部132が、負極ロールRが配置された状態の回転軸131を回転させつつ、制御部9からの指示信号に基づいて回転軸131を該回転軸131の軸芯方向に移動させる。これにより、負極供給部14から負極搬送部32に送り出される負極22の短手方向の位置が調整される。
【0077】
セパレータ供給部12は、第一搬送部51へ第一セパレータ41を送り出す(供給する)第一供給部15と、第二搬送部52へ第二セパレータ42を送り出す(供給する)第二供給部16と、を有する。
【0078】
第一供給部15及び第二供給部16のそれぞれは、正極供給部13と同様の構成である。即ち、第一供給部15及び第二供給部16のそれぞれは、回転軸131と、ロール調整部132と、を有する。このため、第一供給部15及び第二供給部16では、ロール調整部132が、セパレータ41,42のロール(第一ロールR及び第二ロールR)が配置された状態の回転軸131を回転させつつ、制御部9からの指示信号に基づいて回転軸131を該回転軸131の軸芯方向に移動させる。これにより、第一供給部15及び第二供給部16から第一搬送部51及び第二搬送部52に送り出されるセパレータ41,42の短手方向の位置がそれぞれ調整される。
【0079】
検出部17は、正極ロールRから送り出される正極21における先端からの長さを検出する正極検出部171と、負極ロールRから送り出される負極22における先端からの長さを検出する負極検出部172と、を有する。ここで、正極21の先端とは、正極供給部13に配置された時(即ち、正極21が引き出されていない状態)の正極ロールRにおいて該正極ロールRの外周面に位置する正極21の長手方向の一端である。同様に、負極22の先端とは、負極供給部14に配置された時の負極ロールRの外周面に位置する負極22の長手方向の一端である。
【0080】
具体的に、正極検出部171は、正極ロールRの径の変化に基づき、正極供給部13から送り出される正極21の先端からの長さを検出する。詳しくは、正極検出部171は、正極ロールRの直径を計測し、前記直径の変化から、正極ロールRから送り出された正極21の先端からの長さを検出する。同様に、負極検出部172も、負極ロールRの径の変化に基づき、負極供給部14から送り出される負極22の先端からの長さを検出する。各検出部171,172は、検出結果を長さ検出信号として制御部9にそれぞれ出力する。
【0081】
正極検出部171及び負極検出部172の具体的な構成は限定されない。例えば、正極検出部171は、正極ロールRの回転量、正極搬送部31での正極21の搬送距離、正極搬送部31での正極21の搬送速度等に基づいて、正極ロールRから送り出される正極21における先端からの長さを検出してもよい。また、正極検出部171は、正極ロールRの直径の変化、正極搬送部31での搬送距離、正極搬送部31での搬送速度等の複数のパラメータに基づいて正極21の先端からの長さを検出してもよい。負極検出部172においても同様である。
【0082】
制御部9は、捲回機1の全体制御を行い、例えば、マイクロプロセッサやメモリ等を備えるマイクロコンピュータを有する。図5に示すように、制御部9は、メモリ等に格納されている、例えば、ずれ抑制プログラム(電極2及びセパレータ4を捲回して形成した電極体23において捲回軸方向の電極2の位置のずれが抑えられるプログラム)が実行されることで、機能的に、位置制御部91と、湾曲検出部92と、速度制御部93と、を備える。また、本実施形態の制御部9は、前記ずれ抑制プログラムが実行されることで、機能的に、捲回量測定部96も備える。具体的に、制御部9は、位置調整部8(詳しくは、正極調整部81、負極調整部82、及びセパレータ調整部83)及び各ロール調整部132(以下、単に「調整部81〜83,132」とも称する。)を制御する位置制御部91と、電極2の湾曲量を検出する湾曲検出部92と、電極2及びセパレータ4の搬送速度を調整(制御)する速度制御部93と、を備える。詳しくは、以下の通りである。
【0083】
位置制御部91は、センサ部7からのセンサ検出信号に基づいて各調整部81〜83,132に指示信号をそれぞれ出力する。これにより、位置制御部91は、各調整部81〜83,132での電極2又はセパレータ4の短手方向への調整幅(移動距離)を制御する。この位置制御部91は、第一〜第五の位置制御部911〜915を有する。
【0084】
第一の位置制御部911は、第一センサ部71からのセンサ検出信号に基づいて、該第一センサ部71に対応する正極調整部81に対し、該正極調整部81よって調整する正極21の短手方向の距離(第一センサ部71での検出位置における正極21の搬送経路からの短手方向へのずれに相当する距離)を指示信号として出力する。
【0085】
第二の位置制御部912は、正極供給部13と対応する第一センサ部(本実施形態の例では、正極搬送部31の搬送経路において正極供給部13に最も近い第一センサ部)71からのセンサ検出信号に基づいて、正極供給部13のロール調整部132に対し、該ロール調整部132によって移動させる(進退させる)正極ロールRの中心軸方向の距離を指示信号として出力する。
【0086】
第三の位置制御部913は、第二センサ部72からのセンサ検出信号に基づいて、該第二センサ部72に対応する負極調整部82に対し、該負極調整部82よって調整する負極22の短手方向の距離(第二センサ部72での検出位置における負極22の搬送経路からの短手方向へのずれに相当する距離)を指示信号として出力する。
【0087】
第四の位置制御部914は、負極供給部14と対応する第二センサ部(本実施形態の例では、負極搬送部32の搬送経路において負極供給部14に最も近い第二センサ部)72からのセンサ検出信号に基づいて、負極供給部14のロール調整部132に対し、該ロール調整部132によって移動させる(進退させる)負極ロールRの中心軸方向の距離を指示信号として出力する。
【0088】
第五の位置制御部915は、第三センサ部73からのセンサ検出信号に基づいて、該第三センサ部73に対応するセパレータ調整部83に対し、該セパレータ調整部83よって調整するセパレータ41,42の短手方向の距離(第三センサ部73での検出位置におけるセパレータ41,42の搬送経路からの短手方向へのずれに相当する距離)を指示信号として出力する。
【0089】
湾曲検出部92は、センサ部7からのセンサ検出信号に基づいて電極2における長手方向に対する短手方向への湾曲量(以下、単に「湾曲量」とも称する。)を検出する。この湾曲検出部92は、第一及び第二湾曲検出部921,922を有する。ここで、湾曲検出部92において検出される電極2の湾曲量とは、電極2の長手方向に対する短手方向への湾曲、即ち、図6に示すような、電極2の長手方向と短手方向とを含む面に沿った湾曲の度合い(湾曲量)をいう。例えば、エッジ20に所定間隔をおいて二カ所の基準点(図6の三角参照)を設け、二つの基準点を結ぶ線αに対する、該線αの中央位置とエッジ20との距離βを、電極2の湾曲量として用いもよく、また、電極2のエッジ20の曲率等を湾曲量として用いてもよい。尚、図6では、電極2の湾曲を説明するために、湾曲量を実際の電極2の湾曲よりも誇張して表現している。
【0090】
第一湾曲検出部921は、第一センサ部71からのセンサ検出信号に基づいて正極21における湾曲量を検出する。具体的に、第一湾曲検出部921は、第一センサ部71による正極21の検出位置において、第一センサ部71によって検出された搬送中の正極21における短手方向の一方のエッジの位置変化から正極21の湾曲量を求める。そして、第一湾曲検出部921は、求めた湾曲量を出力信号として速度制御部93に出力する。本実施形態の第一湾曲検出部921は、複数の第一センサ部71のうちの少なくとも一つの第一センサ部71からのセンサ検出信号を用いて正極21の長手方向の各位置における湾曲量をそれぞれ求めるが、この構成に限定されない。第一湾曲検出部921は、各第一センサ部71からのセンサ検出信号を用い、各第一センサ部71における検出位置での正極21の湾曲量をそれぞれ求めるように構成されてもよい。
【0091】
第二湾曲検出部922は、第二センサ部72からのセンサ検出信号に基づいて負極22における湾曲量を検出する。具体的に、第二湾曲検出部922は、第一湾曲検出部921と同様に、搬送中の負極22における短手方向の一方のエッジの位置変化から、負極22の湾曲量を求め、求めた湾曲量を出力信号として速度制御部93に出力する。本実施形態の第一湾曲検出部921は、複数の第二センサ部72のうちの少なくとも一つの第二センサ部72からのセンサ検出信号を用いて負極22の長手方向の各位置における湾曲量をそれぞれ求めるが、この構成に限定されない。第二湾曲検出部922は、各第二センサ部72からのセンサ検出信号を用い、各第二センサ部72における検出位置での負極22の湾曲量をそれぞれ求めるように構成されてもよい。
【0092】
速度制御部93は、検出部17からの長さ検出信号と湾曲検出部92からの出力信号とに基づいて電極搬送部3における電極2の搬送速度、及びセパレータ搬送部5におけるセパレータ4の搬送速度を制御(調整)する。速度制御部93は、電極2における先端を含む部位(先端部位)が供給部に配置されたロールR,Rから送り出されるときの電極搬送部3における電極2の搬送速度を制御する前期制御部94と、検出部17での検出結果に基づき、先端部位を除く電極2の残りの部位がロールから送り出されるときの電極搬送部3における電極2の搬送速度を制御する後期制御部95と、を有する。この速度制御部93は、先端部位がロールR,Rから送り出された後、電極の搬送速度を大きくする。即ち、速度制御部93は、前期制御部94によって制御される搬送速度(電極2の先端部位が搬送されるときの搬送速度:初期速度)を低く抑え(小さくし)、後期制御部95によって制御される搬送速度(先端部位が搬送された後に電極2の搬送速度)を通常速度まで大きくする。具体的には、以下の通りである。
【0093】
前期制御部94は、検出部17からの長さ検出信号に基づいて、電極2の先端部位が電極搬送部3で搬送されている間、各搬送部(正極搬送部31、負極搬送部32、第一搬送部51、及び第二搬送部52)での搬送速度を制御する。詳しくは、前期制御部94は、正極21における先端を含む部位(正極21の先端部位)が正極ロールRから送り出されるとき、及び、負極22における先端を含む部位(負極22の先端部位)が負極ロールRから送り出されるとき、の少なくとも一方において、各搬送部(正極搬送部31、負極搬送部32、第一搬送部51、及び第二搬送部52)での搬送速度を制御する。前期制御部94は、初期速度(予め設定された一定の速度:後述する設定速度より小さい速度)で電極2及びセパレータ4が搬送されるように、各搬送部31,32,51,52を制御する。即ち、前期制御部94は、各搬送部31,32,51,52を低速搬送モードで作動させる。これにより、電極2の先端部位は、捲回部6において、残りの部位(各ロール(正極ロールR,負極ロールR)を構成する電極2における前記先端部位を除いた部位)に比べ、低速で捲回される。このとき、先端部位は、所定(一定)の張力で捲回部6に供給され、該張力が加わった状態で捲回される。
【0094】
また、後期制御部95は、正極21における残りの部位(正極ロールRを構成する正極21における前記正極の先端部位を除いた部位)が正極ロールRから送り出され、且つ、負極22における残りの部位(負極ロールRを構成する負極22における前記負極の先端部位を除いた部位)が負極ロールRから送り出されるときに、各搬送部31,32,51,52での搬送速度を制御する。後期制御部95は、設定速度(予め設定された一定の速度であって、初期速度より大きな速度)で電極2及びセパレータ4が搬送されるように、各搬送部31,32,51,52を制御する。即ち、後期制御部95は、各搬送部31,32,51,52を通常搬送モードで作動させる。本実施形態の後期制御部95は、第一センサ部71及び第二センサ部72からの検出信号に基づいて正極21又は負極22において湾曲量の大きい部位が検出されたときに、各搬送部31,32,51,52における搬送速度を小さくする。即ち、後期制御部95は、湾曲量の大きな部位が検出されると、各搬送部31,32,51,52を低速搬送モードで作動させる。詳しくは、後期制御部95は、通常、各搬送部31,32,51,52を通常搬送モードで作動させ、湾曲量が所定の大きさ以上になると、各搬送部31,32,51,52の搬送モードを通常搬送モードから低速搬送モードに切り替える。そして、後期制御部95は、正極ロールR及び負極ロールRの直径及び回転量、電極搬送部3での電極2の搬送距離及び搬送速度等から算出した電極2の搬送距離(以下、「トータル搬出距離」とも言う。)が所定値(予め設定された値)となったときに、各搬送部31,32,51,52の搬送モードを低速搬送モードから通常搬送モードに戻す(切り替える)。
【0095】
ここで、正極21の先端部位とは、正極21における先端を含む部位であって、以下の第一部位と、第二部位とを合わせた部位である。先端部位は、通常、正極供給部13に配置された正極ロールRから捲回部6の捲回軸61までの正極21の搬送経路の長さよりも、十分大きな長さを有する。この先端部位の長さは、正極ロールRから送り出される正極21全体の長さの少なくとも0.6%以上であることが好ましい。これにより、正極21の先端部位(大きく湾曲している可能性の高い部位)を捲回して形成された電極体においても、捲回軸61方向の正極21の位置のずれを確実に抑えることができる。詳しくは、以下の通りである。
【0096】
後述のように、正極21の製造時に加わる熱によって、ロールRの外周面に近い部位ほど、該ロールRを構成する正極21の湾曲量が大きくなる。そして、蓄電素子100(図8参照)の電極体を形成するための正極21において、捲回機1での電極調整部80による正極21の短手方向の位置調整が追従できなくなるほど湾曲量の大きな部位は、通常、ロールRを構成する正極21の先端から全長の0.6%以内の部位である。このため、前記先端部位の長さを前記0.6%以上とすることで、正極21において大きく湾曲している可能性の高い部位である先端部位を捲回して形成された電極体においても、捲回軸61方向の正極21の位置のずれが確実に抑えられる。
【0097】
第一部位は、正極21の先端から所定長さの部位であって、正極21の製造方法に起因した湾曲の湾曲量が大きい部位(即ち、湾曲量が所定の大きさ以上の部位)である。この湾曲量の大きい部は、以下の理由から生じる。
【0098】
正極21の製造工程の一つである前記真空乾燥では、正極21を構成する金属箔211(図2参照)が熱によって伸びる。このとき、正極21において、正極活物質層212が形成された部位と正極活物質層212が形成されていない部位とで、伸び率が異なる。また、前記伸びによって、正極ロールRの内周面から外周面に向かって捲回された正極21がほどけようとするが、真空乾燥時には該正極ロールRの外周面において正極21の端部(先端)が固定されているため、正極ロールRの外周面に近い部位ほど、前記ほどけようとする力が累積されて大きな力が加わる。その結果、正極ロールRにおいて、正極21の第一部位は、活物質の塗工されていない側端部を内にして大きく湾曲し、即ち、湾曲量が大きくなる。また、正極21の製造工程において、ロールプレスの際にも、正極21が湾曲する場合がある。
【0099】
尚、前記の「湾曲量が所定の大きさ以上の部位」における「所定の大きさ」につては後述する。
【0100】
第二部位は、第一部位が正極ロールRから送り出された後、捲回部6で該第一部位が捲回され終わったときの第一部位の終端(先端と反対側の端)から正極ロールRまでの部位である。
【0101】
本実施形態の後期制御部95は、第一〜第三速度制御部931〜933を有する。
【0102】
第一速度制御部931は、第一湾曲検出部921からの出力信号に基づいて、正極搬送部31における正極21の搬送速度を制御(調整)する。具体的に、第一速度制御部931は、正極21が一定速度(設定速度)で搬送されるように正極搬送部31を制御する。そして、第一速度制御部931は、入力される出力信号において湾曲量が所定の大きさ(予め設定された湾曲量の大きさ)以上になると、正極搬送部31における正極21の搬送速度を設定速度より小さくする。即ち、第一速度制御部931は、正極搬送部31の搬送モードを通常搬送モードから、該通常搬送モードより小さな搬送速度で正極21が搬送される低速搬送モードに、切り替える。続いて、第一速度制御部931は、通常搬送モードから低速搬送モードに切り替えた時点から、正極21のトータル搬出距離(正極ロールRの直径及び回転量、正極搬送部31での正極21の搬送距離及び搬送速度等から算出した正極21の搬送距離)が前記所定値となるまで正極21が正極ロールRから送り出されると、正極搬送部31における正極21の搬送速度を設定速度に戻す。即ち、第一速度制御部931は、正極搬送部31の搬送モードを低速搬送モードから、該低速搬送モードより大きな搬送速度で正極21が搬送される通常搬送モードに、切り替える。
【0103】
第二速度制御部932は、第二湾曲検出部922からの出力信号に基づいて、負極搬送部32における負極22の搬送速度を制御(調整)する。具体的に、第二速度制御部932は、負極22が一定速度(前記設定速度)で搬送されるように負極搬送部32を制御する。本実施形態の第二速度制御部932は、負極22が正極搬送部31での正極21の搬送速度と同じ速度(設定速度)で搬送されるように負極搬送部32を制御する。第二速度制御部932は、入力される出力信号において湾曲量が所定の大きさ(予め設定された湾曲量の大きさ)以上になると、負極搬送部32における負極22の搬送速度を設定速度より小さくする。即ち、第二速度制御部932は、負極搬送部32の搬送モードを通常搬送モードから低速搬送モードに切り替える。続いて、第二速度制御部932は、通常搬送モードから低速搬送モードに切り替えた時点から、負極22のトータル搬出距離(負極ロールRの直径及び回転量、負極搬送部32での負極22の搬送距離及び搬送速度等から算出した負極22の搬送距離)が前記所定値となるまで負極22が負極ロールRから送り出されると、負極搬送部32における負極22の搬送速度を設定速度に戻す。即ち、第二速度制御部932は、負極搬送部32の搬送モードを低速搬送モードから通常搬送モードに切り替える。
【0104】
ここで、第一及び第二速度制御部931,932が正極搬送部31及び負極搬送部32の搬送モードを切り替える閾値となる「所定の大きさ」とは、正極21及び負極22が設定速度で搬送された状態において湾曲に起因する正極21又は負極22の短手方向の位置のずれが生じたときに、このずれに正極調整部81又は負極調整部82が追随できなくなる(即ち、正極21の短手方向のずれが修正できなくなる)湾曲量の範囲の最小値である。
【0105】
以上の第一速度制御部931及び第二速度制御部932では、第一速度制御部931が正極搬送部31の搬送モードを切り替えると、同時に、第二速度制御部932も負極搬送部32の搬送モードを正極搬送部31の搬送モードと同じになるように切り替える。また、第二速度制御部932が負極搬送部32の搬送モードを切り替えると、同時に、第一速度制御部931も正極搬送部31の搬送モードを負極搬送部32の搬送モードと同じになるように切り替える。
【0106】
第三速度制御部933は、セパレータ搬送部5におけるセパレータ4の搬送速度を制御(調整)する。具体的に、第三速度制御部933は、セパレータ41,42が設定速度で搬送されるように第一搬送部51及び第二搬送部52を制御する。即ち、第三速度制御部933は、セパレータ41,42が正極搬送部31における正極21の搬送速度と同じ速度(設定速度)で搬送されるように第一搬送部51及び第二搬送部52を制御する。また、第三速度制御部933は、電極搬送部3(正極搬送部31及び負極搬送部32)の搬送モードが切り替えられると、同時に、第一搬送部51及び第二搬送部52の搬送モードを電極搬送部3の搬送モードと同じになるように切り替える。
【0107】
以上のように、電極搬送部3とセパレータ搬送部5とが同じ搬送モードとなるように同じタイミングで切り替えられることで、捲回部6に対して、正極21、負極22、及びセパレータ41,42が同じ速度で供給される。
【0108】
捲回量測定部96は、捲回部6からの捲回信号に基づいて捲回部6における電極2(正極21及び負極22)及びセパレータ4(第一セパレータ41及び第二セパレータ42)の捲回量を測定し、所定の長さの電極2及びセパレータ4が捲回された(捲回軸61によって巻き取られた)ことを検出すると、停止信号を速度制御部93等に出力する。
【0109】
以上のように構成される捲回機1では、図7及び以下のようにして電極2及びセパレータ4が捲回される。
【0110】
正極ロールR、負極ロールR、第一ロールR及び第二ロールRが、供給部10に配置される。各ロールR,R,R,Rから引き出された正極21、負極22、第一セパレータ41、及び第二セパレータ42は、各搬送部31,32,51,52における搬送経路上に配置される(図1参照)。このとき、捲回部6の捲回軸61には、筒状の巻芯が取り付けられている。この状態で、制御部9は、捲回部6の捲回軸61を回転させると共に、各供給部13〜16の回転軸131をそれぞれ回転させる。また、制御部9は、捲回軸61及び各回転軸131を回転させると同時に、各搬送部31,32,51,52も作動させる(ステップS1)。これにより、捲回軸61に取り付けられた巻芯の周囲に、正極21、負極22、第一セパレータ41、及び第二セパレータ42が捲回され始める。また、制御部9の捲回量測定部96は、各搬送部31,32,51,52が作動した時から、捲回信号に基づいて、捲回部6における電極2(正極21、負極22)及びセパレータ4(第一セパレータ41、第二セパレータ42)の捲回量を測定し始める。このとき、正極21及び負極22の先端部位が正極搬送部31及び負極搬送部32で搬送されているため、前期制御部94が各搬送部31,32,51,52を制御する。また、検出部17(正極検出部171及び負極検出部172)が、正極ロールR及び負極ロールRから送り出される正極21及び負極22の先端からの長さをそれぞれ検出する。
【0111】
続いて、前期制御部94は、正極搬送部31、負極搬送部32、第一搬送部51、及び第二搬送部52における正極21、負極22、第一セパレータ41、第二セパレータ42(以下、単に「正極21等」とも称する。)の搬送速度を、初期速度までそれぞれ上昇させる。そして、前期制御部94は、各搬送部31,32,51,52での搬送速度が初期速度まで上昇すると、各搬送部31,32,51,52での搬送速度を初期速度で維持させる(ステップS2)。即ち、速度制御部93は、各搬送部31,32,51,52を低速搬送モードで運転させる。このように、電極2(正極21及び負極22)において湾曲している可能性の高い部位(先端部位)が正極ロールR及び負極ロールRから送り出されるときの電極2の搬送速度(初期速度)を設定速度より小さくすることで、搬送中の電極2において前記湾曲に起因する短手方向へのずれが生じたときの正極調整部81及び負極調整部82による電極2の短手方向の位置調整が前記ずれに追従できなくなることを防いでいる。
【0112】
各搬送部31,32,51,52において正極21等が搬送されている間は、センサ部7(第一〜第三センサ部71,72,73)は、正極21等の短手方向の位置をそれぞれ検出し続ける。
【0113】
第一〜第五の位置制御部911〜915は、各センサ部71,72,73からのセンサ検出信号に基づいて各調整部81,82,83,132を制御し、各搬送経路における正極21等の短手方向の位置をそれぞれ調整する。具体的に、各位置制御部911〜915は、正極21等が各搬送部31,32,51,52において搬送経路から短手方向にずれたときに、各調整部81,82,83,132を作動させて正極21等の短手方向の位置を調整し、搬送経路に戻す。このように、捲回機1では、正極21等の搬送中は、各センサ部71,72,73での検出結果に基づき、正極21、負極22、第一セパレータ41、及び第二セパレータ42の短手方向の位置がそれぞれ調整され続ける。
【0114】
尚、複数の搬送ローラ311によって高速で帯状の正極21等を搬送すると、正極21等の湾曲に関係なく搬送経路において正極21等の短手方向への位置ずれが生じる場合があり、この場合も、前記短手方向の位置の調整によって前記ずれが修正される。
【0115】
制御部9が、検出部17からの長さ検出信号によって、正極21及び負極22の少なくとも一方の先端部位が各ロールR,Rから送り出されたと判断する(ステップS3:Yes)、即ち、正極21及び負極22の少なくとも一方の第一部位(所定長さの部位)が捲回部6において低速で捲回されたと判断すると、各搬送路31,32,51,52の速度制御が、前期制御部94による制御から後期制御部95による制御に切り替わる。これにより、各搬送部31,32,51,52での正極21等の搬送速度が初期速度より大きくなる。即ち、各搬送部31,32,51,52の搬送モードが、低速搬送モードから通常搬送モードに切り替わる(ステップS4)。このとき、制御部9は、捲回部6での捲回速度を正極21等の搬送速度の上昇に応じて上昇させるように、回転数信号を捲回部6に向けて出力する。即ち、制御部9は、捲回部6の捲回軸61の回転数を上げる。尚、低速搬送モードで電極2が搬送されている間、所定の張力が加わった状態で電極2の第一部位(所定長さの部位)が捲回部6において捲回されている。
【0116】
この後期制御部95による制御に切り替わった後も、各位置制御部911〜915は、各センサ部71,72,73での検出結果に基づいて各調整部81,82,83,132を制御し、正極21等の短手方向の位置調整を続ける。
【0117】
一方、制御部9が、正極21及び負極22の両方の先端部位が各ロールR,Rから、未だ、送り出されていないと判断する(ステップS3:No)と、捲回機1は、ステップS2に戻って低速搬送モードでの電極2等の捲回動作を続ける。即ち、前期制御部94が、各搬送部31,32,51,52を制御し続ける。
【0118】
各搬送部31,32,51,52の制御が前期制御部から後期制御に切り替わった後、捲回量測定部96は、捲回部6において所定の長さの正極21等が捲回されたと判断する(ステップS5:Yes)と、即ち、所定の長さの正極21等が捲回されたことを検出すると、停止信号を出力し、捲回機1における正極21等の捲回動作を停止させる(ステップS12)。一方、捲回量測定部96は、捲回部6において所定の長さの正極21等が捲回されていないと判断すると(ステップS5:No)、即ち、所定の長さの正極21等が捲回されたことを検出していなければ、停止信号を出力しない。このため、捲回機1は、正極21等の捲回動作を続ける。
【0119】
また、各搬送部31,32,51,52の制御が前期制御部から後期制御に切り替わると、湾曲検出部92が、第一センサ部71及び第二センサ部72での検出結果に基づいて、正極21及び負極22の長手方向の各位置における湾曲量(湾曲量)を求め始める。
【0120】
通常搬送モードに切り替わった後、湾曲検出部92が、検出された湾曲量(正極21及び負極22の少なくとも一方の湾曲量)が所定の大きさ未満でないと判断する(ステップS6:No)と、第一〜第三速度制御部931〜933は、各搬送部31,32,51,52を制御して、正極21等の搬送速度を設定速度より小さくする。本実施形態の第一〜第三速度制御部931〜933は、正極21等の搬送速度を設定速度から初期速度まで下げる。即ち、第一〜第三速度制御部931〜933は、各搬送部31,32,51,52の搬送モードを、通常搬送モードから低速搬送モードに切り替える(ステップS7)。このとき、制御部9は、捲回部6での捲回速度を正極21等の搬送速度の低下に応じて低下させるように、回転数信号を捲回部6に向けて出力する。即ち、制御部9は、捲回部6の捲回軸61の回転数を下げる。この低速搬送モードの間も、各位置制御部911〜915は、各センサ部71,72,73での検出結果に基づいて各調整部81,82,83,132を制御し、正極21等の短手方向の位置調整を続ける。
【0121】
このように、搬送モードが低速搬送モードに切り替えられることで、搬送ローラ311,321による「搬送によって生じる(即ち、湾曲に関係なく生じる)短手方向の位置ずれ」より大きくずれる場合の多い「湾曲に起因する位置ずれ」が生じても、正極調整部81及び負極調整部82による正極21及び負極22の短手方向の位置調整が前記ずれに追従できなくなることが防がれる。
【0122】
一方、湾曲検出部92が、検出された湾曲量が所定の大きさより小さい(所定の大きさ未満である)と判断している間は(ステップS6:Yes)、捲回機1は、通常搬送モードでの電極2等の捲回動作を続ける。
【0123】
低速搬送モードでの運転中に、捲回量測定部96が、捲回部6において所定の長さの正極21等が捲回されたと判断する(ステップS8:Yes)と、停止信号を出力し、捲回機1における正極21等の捲回動作を停止させる(ステップS12)。一方、捲回量測定部96は、捲回部6において所定の長さの正極21等が捲回されていないと判断すると(ステップS8:No)、停止信号を出力しない。このため、捲回機1は、正極21等の捲回動作を続ける。
【0124】
続いて、後期制御部95が、低速搬送モードでの運転開始時点から、正極21及び負極22の少なくとも一方のトータル搬出距離が所定値(予め設定された値)になるまで正極21及び負極22がロールR1,R2から送り出されたと判断すると(ステップS9:Yes)、第一〜第三速度制御部931〜933は、各搬送部31,32,51,52の搬送モードを、低速搬送モードから通常搬送モードに切り替える(ステップS10)即ち、第一〜第三速度制御部931〜933は、各搬送部31,32,51,52での正極21等の搬送速度を設定速度まで上昇させる。このとき、制御部9は、捲回部6での捲回速度も、前記搬送速度の上昇と共に上昇させるように、回転数信号を捲回部6に向けて出力する。
【0125】
一方、後期制御部95が、低速搬送モードでの運転開始時点から、正極21及び負極22のいずれのトータル搬送距離も所定値になっていないと判断している間は(ステップS9:No)、捲回機1は、低速搬送モードでの正極21等の捲回動作を続ける。
【0126】
以上のように、制御部9は、第一〜第三速度制御部931〜933によって、通常(湾曲量が所定の大きさより小さい状態では)、各搬送部31,32,51,52を通常搬送モードで作動させる。そして、制御部9は、所定の大きさ以上の湾曲量が検出されると、その後、電極2が各ロールR,Rから送り出されてトータル搬出距離が所定値になるまで、各搬送部31,32,51,52を低速搬送モードで作動させる。
【0127】
低速搬送モードから通常搬送モードに切り替わった後、該通常搬送モードでの運転中に、捲回量測定部96が、捲回部6において所定の長さの正極21等が捲回されたと判断する(ステップS11:Yes)と、停止信号を出力し、捲回機1における正極21等の捲回動作を停止させる(ステップS12)。一方、捲回量測定部96は、捲回部6において所定の長さの正極21等が捲回されていないと判断すると(ステップS11:No)、捲回機1は、ステップS6に戻り、湾曲量を検出しつつ通常搬送モードでの正極21等の捲回動作を続ける。
【0128】
捲回量測定部96によって、捲回部6において所定の長さの正極21等が捲回されたと判断された場合、制御部9は、各搬送部31,32,51,52、各供給部13〜16、及び捲回部6を停止させる(ステップS12)。続いて、捲回部6では、正極21、負極22、及びセパレータ41,42が切断され(ステップS13)、電極体23が完成する。
【0129】
このようにして製造された電極体23がケースに組み込まれることで、図8に示すような非水電解質二次電池等の蓄電素子100が形成される。尚、前記蓄電素子100は、電極体23、電極体23を収容するケース103、及びケース103の外側に配置される外部端子104等、を備える。また、蓄電素子100は、ケース103の内部に、電極体23と外部端子104とを導通させる集電体等も備える。
【0130】
捲回機1では、完成した(所定の長さの正極21等が捲回された)電極体23が捲回軸61から外されると、捲回軸61に、再度、巻芯が取り付けられた後、捲回軸61による巻芯周囲への正極21、負極22、及びセパレータ41,42の捲回が始まってステップS5に戻る。このとき、速度制御部93は、後期制御部95によって各搬送部31,32,51,52を制御する。
【0131】
尚、各ステップにおいて、供給部10の正極ロールR又は負極ロールRがなくなると、捲回機1は一旦停止する。そして、新たな正極ロールR又は負極ロールRが供給部10に配置されると、捲回機1は、ステップS1に戻って作動し始める。即ち、各搬送部31,32,51,52は、正極21及び負極22の少なくとも一方の先端部位を搬送している状態では、速度制御部93の前期制御部94によって制御され、正極21の先端部位以外の部位(残りの部位)を搬送し且つ負極22の先端部位以外の部位(残りの部位)を搬送している状態では、速度制御部93の後期制御部95によって制御されている。
【0132】
以上の捲回機1によれば、電極体23の生産効率を向上させるために電極2が、通常、搬送されるときの搬送速度(設定速度)が高く設定されても、電極2(詳しくは、正極21及び負極22)において湾曲している可能性の高い部位(先端部位)がロールR,Rから送り出された後に電極2の搬送速度を大きくする、即ち、先端部位が搬送されるときの搬送速度(初期速度)を低く抑え(小さくし)、先端部位が搬送された後に電極の搬送速度を通常速度まで大きくする。これにより、捲回機1では、搬送中の電極2において前記湾曲に起因する短手方向へのずれが生じたときに電極調整部80(詳しくは、正極調整部81及び負極調整部82)による電極2の短手方向の位置調整が前記ずれに追従できなくなることを防いでいる。このため、電極2の先端部位(大きく湾曲している可能性の高い部位)を捲回して形成された電極体23においても、捲回軸方向の電極2の位置のずれが抑えられる。
【0133】
しかも、本実施形態の捲回機1では、電極2の先端部位を除いた部位(途中位置)の搬送中において、湾曲量が所定値(所定の大きさ)を超えたときに電極2の搬送速度を小さくする(即ち、搬送モードを切り替える)といった簡単な制御によって、搬送される電極2が途中位置に湾曲している部位を含んでいても、捲回部6において形成された電極体23における捲回軸方向の電極2の位置のずれが好適に抑えられる。
【0134】
本実施形態の捲回機1では、電極調整部80(詳しくは、正極調整部81及び負極調整部82)は、電極2の搬送経路に沿って複数設けられている。このため、搬送経路上の複数の位置において搬送中の電極2が短手方向の位置を調整され、これにより、捲回部6へ供給(搬送)される電極2の短手方向の位置のずれがより抑えられる。その結果、形成された電極体23における捲回軸方向の電極2の位置のずれがより好適に抑えられる。
【0135】
また、本実施形態の捲回機1では、第一センサ部71及び第二センサ部72によって検出された電極2の短手方向の位置のずれを、該第一センサ部71及び該第二センサ部72と対応する正極調整部81及び負極調整部82が調整する。このため、各調整位置(各正極調整部81及び各負極調整部82が正極21及び負極22の短手方向の位置調整を行う位置)での電極2の位置調整の精度が向上する。これにより、捲回部6において形成された電極体23における捲回軸方向の位置のずれがより効果的に抑えられる。
【0136】
また、本実施形態の捲回機1では、電極供給部11(詳しくは、正極供給部13及び負極供給部14)が、回転軸131を該回転軸131の軸芯方向に駆動するロール調整部132をそれぞれ有している。このため、電極供給部11における電極2(詳しくは正極21及び負極22)の送り出し位置においても、該電極2の短手方向の位置が調整される。これにより、捲回部6で形成された電極体23における捲回軸方向の電極2の位置のずれがより抑えられる。
【0137】
尚、本発明の捲回機及び電極の捲回方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0138】
捲回機1において、通常搬送モードでの正極21等の搬送速度の具体的な制御は、限定されない。即ち、上記実施形態の捲回機1における通常搬送モードでは、正極21等の搬送速度は、一定であるが、これに限定されず、正極21等の搬送速度は、変化してもよい。例えば、捲回機1において、搬送中の電極2における短手方向の位置以外の可変要素等を検出可能なセンサ部が設けられ、このセンサ部での検出結果に基づいて電極2等の搬送速度を変化させるフィードバック制御等が行われてもよい。
【0139】
また、上記実施形態の捲回機1の後期制御部95は、検出された湾曲量が所定の大きさを超えたときに、正極21等を、設定速度より小さな所定の速度(低速搬送モード)で搬送し、低速搬送モードに切り替わった時点から正極21等がトータル搬出距離だけ供給部10から送り出された後、搬送モードを切り替えて正極21等を設定速度(通常搬送モード)で搬送するが、この構成に限定されない。例えば、後期制御部95は、検出した湾曲量に基づいて正極21等の搬送速度が変化する構成であってもよい。具体的に、後期制御部95は、検出された湾曲量が大きくなるのに応じて正極21等の搬送速度を小さくする構成であってもよい。この場合、後期制御部95は、検出された湾曲量が小さくなるのに応じて正極21等の搬送速度を大きくする。
【0140】
かかる構成によれば、湾曲量が大きい部位ほど、より小さな搬送速度で搬送されるため、搬送中の電極2において前記湾曲に起因する短手方向へのずれが生じたときに電極調整部80による電極の短手方向の位置調整が追従できなくなることを、より確実に防ぐことができる。
【0141】
また、後期制御部95は、電極2の湾曲量が所定の大きさ未満でない(即ち、所定の大きさ以上である)と判断したときに、この判断結果を、当該判断結果が得られたときに捲回部6で形成されている(捲回されている)電極体23でなく、該電極体23の次に形成される電極体23における正極21等の捲回時に反映させる構成であってもよい。即ち、後期制御部95は、前記所定の大きさ以上の湾曲量が検出されても、正極21等を捲回部6に通常搬送モードで搬送し続け、前記所定の大きさ以上の湾曲量が検出されたときに捲回部6で形成されていた電極体23の次に形成される電極体23の形成時に、最初(捲き始め)から最後(巻き終わり)まで、低速搬送モードで電極2を捲回部6に搬送する構成でもよい。かかる構成によれば、捲回部6における正極21等の捲き始めから捲き終わりまでの間、正極21等が捲回部6に供給されるときの該正極21等に加わる張力、及び該正極21等の搬送速度がそれぞれ一定(同じ)となるため、形成される電極体23の品質がより向上する。
【0142】
上記実施形態の捲回機1では、先端部位を搬送するときの搬送速度と、電極2の先端部位を除いた部位(他の部位)における湾曲量の大きな部位(湾曲量が所定の大きさ以上の部位)を搬送するときの搬送速度とが同じであるが、異なっていてもよい。即ち、捲回機1において、先端部位を搬送する速度より、他の部位を搬送する速度の方が大きい、又は小さくてもよい。
【0143】
上記実施形態の捲回機1では、正極21及び負極22のいずれの先端部位も正極搬送部31及び負極搬送部32において搬送されていないときに、正極21及び負極22の長手方向の各位置における湾曲量を求め、湾曲量が所定の大きさ以上のときに、各搬送部31,32,51,52の搬送モードを低速搬送モードに切り替える構成(制御)であるが、この構成に限定されない。即ち、捲回機1は、正極21及び負極22の少なくとも一方の先端部位が搬送部31,32において搬送されているとき以外は、各搬送部31,32,51,52の搬送モードが通常搬送モードとなるように構成(制御)されてもよい。
【0144】
上記実施形態の捲回機1における捲回部6は、捲回軸61が軸芯610回りに回転し、軸芯610方向に移動しない構成であるが、この構成に限定されない。捲回部6は、捲回軸61の軸芯610方向の位置を調整する軸調整部を有してもよい。例えば具体的に、軸調整部は、センサ部7(第一〜第三センサ部71〜73)での検出結果に基づいて、捲回軸61を軸芯610方向に移動させる。詳しくは、軸調整部は、正極21、負極22、及びセパレータ41,42を捲回している状態(即ち、軸芯610回りに回転している状態)の捲回軸61を、制御部9からの指示信号に基づいて軸芯610方向に移動させる。かかる構成によれば、捲回部6において、捲回体(捲回軸61に捲回された状態の電極2及びセパレータ4)に対する該捲回体に供給される電極2及びセパレータ4の短手方向の位置(相対位置)が調整されるため、捲回部6で形成される電極体23における捲回軸方向の電極2及びセパレータ4の位置のずれが抑えられる。
【0145】
上記実施形態の捲回機1に設けられた各センサ部(第一〜第三センサ部)71〜73は、電極2又はセパレータ4の短手方向における一方のエッジ(端縁)の位置を検出するが、この構成に限定されない。例えば、各センサ部71〜73は、ラインセンサ等のように短手方向における両方のエッジの位置を検出する構成でもよく、撮像素子等のように電極2等の画像を取得する構成でもよい。
【0146】
上記実施形態の捲回機1では、正極21及び負極22の両方の湾曲量を検出している(求めている)が、正極21及び負極22の少なくとも一方の湾曲量を検出する構成でもよい。かかる構成によっても、捲回部6で形成された電極体23において、正極21及び負極22の少なくとも一方の捲回軸方向における位置のずれを抑えることができる。
【0147】
上記実施形態の捲回機1の供給部10、詳しくは、正極供給部13、負極供給部14、第一供給部15、及び第二供給部16は、正極21等が送り出されてロールR〜Rが無くなると、新たなロールR〜Rを補充する(配置する)構成であるが、この構成に限定されない。例えば、正極供給部13は、複数の正極ロールRが配置され、一つの正極ロールRが無くなると、自動的に別の正極ロールRから正極21が送り出される構成でもよい。具体的に、正極供給部13は、一つの正極ロールRが無くなるときに、該正極ロールRを構成する正極21の終端(正極ロールRの内周面側にある正極21の端部)と、他の正極ロールRを構成する正極21の始端(正極ロールRの外周面側にある正極21の端部と、が自動で接続され、前記一つの正極ロールRに引き続き前記他の正極ロールRから正極21を送り出す構成でもよい。他の供給部(負極供給部14、第一供給部15、第二供給部16)も同様である。
【0148】
この場合、正極ロールR及び負極ロールRのいずれかのロールが交換されたときに、速度制御部93は、各搬送部31,32,51,52の制御を後期制御部95から前期制御部94に切り替える(即ち、捲回機1は、上記の動作フローにおいてステップS1に戻る)。
【0149】
上記実施形態の捲回機1では、各調整部(正極調整部81、負極調整部82、及びセパレータ調整部83)は、正極21等の搬送経路において、対応するセンサ部(第一〜第三センサ部71〜73)での検出位置(センシング位置)より下流位置に設けられているが、この構成に限定されない。例えば、各調整部81,82,83は、正極21等の搬送経路において、対応するセンサ部71,72,73による検出位置より上流位置に設けられてもよい。
【0150】
上記実施形態の捲回機1では、例えば、一つの第一センサ部71での検出結果に基づいて一つの正極調整部81が正極21の短手方向の位置を調整(修正)するが、この構成に限定されない。例えば、捲回機は、少なくとも一つの第一センサ部71での検出結果に基づいて、複数(第一センサ部71の数より大きい数)の正極調整部81が正極21の短手方向の位置を修正する構成であってもよく、複数の第一センサ部での検出結果に基づいて、少なくとも一つ(第一センサ部71の数より小さい数)の正極調整部81が正極21の短手方向の位置を修正する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0151】
1…捲回機、2…電極、20…エッジ、21…正極、211…金属箔、212…正極活物質層、22…負極、221…金属箔、222…負極活物質層、23…電極体、3…電極搬送部、31…正極搬送部、311…搬送ローラ、32…負極搬送部、321…搬送ローラ、4…セパレータ、41…第一セパレータ、42…第二セパレータ、5…セパレータ搬送部、51…第一搬送部、511…搬送ローラ、52…第二搬送部、6…捲回部、61…捲回軸、610…軸芯、7…センサ部、71…第一センサ部、72…第二センサ部、73…第三センサ部、8…位置調整部、80…電極調整部、81…正極調整部、811…ローラ、812…駆動部、82…負極調整部、83…セパレータ調整部、9…制御部、91…位置制御部、911…第一の位置制御部、912…第二の位置制御部、913…第三の位置制御部、914…第四の位置制御部、915…第五の位置制御部、92…湾曲検出部、921…第一湾曲検出部、922…第二湾曲検出部、93…速度制御部、931…第一速度制御部、932…第二速度制御部、933…第三速度制御部、94…前期制御部、95…後期制御部、10…供給部、11…電極供給部、12…セパレータ供給部、13…正極供給部、131…回転軸、132…ロール調整部、14…負極供給部、15…第一供給部、16…第二供給部、17…検出部、171…正極検出部、172…負極検出部、R…正極ロール(ロール)、R…負極ロール(ロール)、R…第一ロール、R…第二ロール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8