特許第6443731号(P6443731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6443731歯牙漂白装置および歯牙漂白装置の作動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443731
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】歯牙漂白装置および歯牙漂白装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/06 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   A61C19/06 Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-215145(P2014-215145)
(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公開番号】特開2015-163184(P2015-163184A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2017年5月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-17116(P2014-17116)
(32)【優先日】2014年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】安食 香織
(72)【発明者】
【氏名】蓑輪 利光
【審査官】 村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−500133(JP,A)
【文献】 特表2012−514498(JP,A)
【文献】 特開2009−165831(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/039906(WO,A1)
【文献】 特表2009−518840(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0127837(US,A1)
【文献】 米国特許第06976841(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を用いて歯面の漂白処理を行う歯牙漂白装置であって、
前記歯面に貼り付けることが可能なシート部材と、
前記シート部材に配置され、近傍の前記歯面の色調を検出する色調センサユニットと、
前記シート部材の、前記色調センサユニットの位置と対応する位置に配置され、前記色調センサユニットの検出結果に応じて、前記色調センサユニットの近傍の前記歯面に対して前記光を照射する動作を行う発光素子と、
前記色調センサユニットによって検出された前記歯面の色調に関する情報に基づいて、前記発光素子の発光輝度および発光時間を決定した後、決定された前記発光輝度および前記発光時間で前記発光素子を発光させる動作ユニットと、を有し、
前記色調センサユニットは、
前記発光素子とは異なる検出用発光素子と、前記検出用発光素子から出力された光の歯面からの反射光を受光する色調センサと、を含む、
歯牙漂白装置。
【請求項2】
前記シート部材の異なる位置に配置された複数の前記色調センサと、
前記シート部材の、前記複数の色調センサの位置とそれぞれ対応する位置に配置され、
対応する前記色調センサの検出結果に応じてそれぞれ動作する複数の前記発光素子と、
を有する、
請求項1に記載の歯牙漂白装置。
【請求項3】
前記シート部材は、隣接する複数の前歯の唇側の前記歯面を少なくとも含む所定の領域に貼り付けることが可能である、
請求項2に記載の歯牙漂白装置。
【請求項4】
前記色調センサおよび前記発光素子は、
前記シート部材を分割した複数の分割領域のそれぞれに配置され、
前記分割領域毎に、当該分割領域に配置された前記色調センサの検出値に基づいて、当該分割領域に配置された前記発光素子の動作を決定する動作決定部、を有する、
請求項3に記載の歯牙漂白装置。
【請求項5】
光を用いて歯面の漂白処理を行う歯牙漂白装置の作動方法であって、
前記歯牙漂白装置の動作を決定する動作決定部が、前記歯牙漂白装置を作動させるステップとして、
前記歯面に貼り付けることが可能なシート部材に配置された色調センサユニットにおいて、当該色調センサユニットの近傍の前記歯面の色調を検出するステップと、
前記シート部材の、前記色調センサユニットの位置と対応する位置に配置され、前記色調センサユニットの近傍の前記歯面に対して前記光を照射する発光素子を、前記色調センサの検出結果に応じて動作させるステップと、を有し、
前記動作させるステップは、前記色調センサユニットによって検出された前記歯面の色調に関する情報に基づいて、前記発光素子の発光輝度および発光時間を決定した後、決定された前記発光輝度および前記発光時間で前記発光素子を発光させるステップを含み、
前記色調センサユニットは、
前記発光素子とは異なる検出用発光素子と、前記検出用発光素子から出力された光の歯面からの反射光を受光する色調センサと、を含む、
歯牙漂白装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯牙漂白装置および歯牙漂白装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯牙の表面(以下「歯面」という)に光を照射することにより、歯面の漂白処理を行う装置(以下「歯牙漂白装置」という)が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の歯牙漂白装置は、マウスピース状部材を用いて、口腔内全体に所定の光を照射するように構成されている。ユーザは、例えば、所定の薬剤を歯面に塗布した後、歯牙漂白装置のマウスピース状部材を口にくわえ、光照射を開始させる。薬剤は、光の照射により活性化し、光の強度に応じた強さで歯面を漂白する。このような従来技術によれば、歯面の漂白処理を簡単に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−46421号公報
【特許文献2】特開2013−168575号公報
【特許文献3】特開2009−48837号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】相原聡、久保田節、「有機撮像デバイスの研究動向」、NHK技研 R&D No.132、NHK放送技術研究所、2012年3月、PP.4−11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、歯面の漂白処理を効果的に行うことは難しい。
【0007】
本開示は、歯面の漂白処理をより効果的に行うことができる、歯牙漂白装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る歯牙漂白装置は、光を用いて歯面の漂白処理を行う歯牙漂白装置であって、前記歯面に貼り付けることが可能なシート部材と、前記シート部材に配置され、近傍の前記歯面の色調を検出する色調センサユニットと、前記シート部材の、前記色調センサユニットの位置と対応する位置に配置され、前記色調センサユニットの検出結果に応じて、前記色調センサユニットの近傍の前記歯面に対して前記光を照射する動作を行う発光素子と、前記色調センサユニットによって検出された前記歯面の色調に関する情報に基づいて、前記発光素子の発光輝度および発光時間を決定した後、決定された前記発光輝度および前記発光時間で前記発光素子を発光させる動作ユニットと、を有し、前記色調センサユニットは、前記発光素子とは異なる検出用発光素子と、前記検出用発光素子から出力された光の歯面からの反射光を受光する色調センサと、を含む

【0009】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、方法で実現されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示の歯牙漂白装置によれば、歯面の漂白処理をより効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態1に係る歯牙漂白装置の構成の一例を示す図
図2】本開示の実施の形態2に係る歯牙漂白装置の外観の一例を示す図
図3】本実施の形態2におけるシートデバイスの使用状態の一例を示す図
図4】本実施の形態2におけるシートデバイスの構成の一例を示す図
図5】本実施の形態2に係る歯牙漂白装置の機能構成の一例を示す図
図6】本実施の形態2におけるブロック情報テーブルの内容の一例を示す図
図7】本実施の形態2における制御ルールテーブルの内容の一例を示す図
図8】本実施の形態2に係る歯牙漂白装置の動作の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
(基礎となった知見)
歯面の色は、歯毎あるいは歯の部分毎に異なっていることがある。歯をできるだけ均一な色にし、審美性を向上させるためには、例えば、着色の程度が高い部分に対しては、より積極的に光を照射することが好ましい。すなわち、歯面の漂白処理を効果的に行うためには、歯毎あるいは歯の部分毎に、漂白処理の必要度に応じた強度(発光強度および発光時間)で光を照射できることが望ましい。
【0013】
しかしながら、上述の従来技術では、歯毎あるいは歯の部分毎に光の強度を調整することができないため、歯面の漂白処理を効果的に行うことが困難である。
【0014】
以下、本開示の各実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態1)
本開示の実施の形態1は、本開示の基本的態様の一例である。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る歯牙漂白装置の構成の一例を示す図である。
【0017】
図1において、歯牙漂白装置100は、光を用いて歯面の漂白処理を行う装置である。歯牙漂白装置100は、シート部材210、第1〜第M(複数)の色調センサ222〜222、および、第1〜第N(複数)の発光素子230〜230を有する。
【0018】
シート部材210は、歯面に貼り付けることが可能な部材である。
【0019】
第1〜第Mの色調センサ222〜222は、シート部材210に配置され、近傍の歯面の色調をそれぞれ検出する。
【0020】
第1〜第Nの発光素子230〜230は、シート部材210の、第1〜第Mの色調センサ222〜222の位置とそれぞれ対応する位置に配置されている。そして、第1〜第Nの発光素子230〜230は、それぞれ、対応する色調センサ222の検出結果に応じて、当該色調センサ222の近傍の歯面に対して、漂白処理に用いられる光を照射する動作を行う。
【0021】
このような歯牙漂白装置100は、歯面の各部分に対して、その部分の歯面状態に応じた光照射を行うことができるので、歯面の漂白処理を効果的に行うことができる。
【0022】
なお、歯牙漂白装置100は、シート部材210に、色調センサ222を、複数ではなく1つのみ配置していてもよい。また、歯牙漂白装置100は、発光素子230を、複数ではなく1つのみ配置していてもよい。
【0023】
(実施の形態2)
本開示の実施の形態2は、本開示を、上の前歯の唇側の歯面全体に貼り付けることができるシートに適用した場合の、具体的態様の一例である。
【0024】
<歯牙漂白装置の外観および構成>
まず、本実施の形態にかかる歯牙漂白装置の外観および構成について説明する。
【0025】
<歯牙漂白装置の外観>
図2は、本実施の形態に係る歯牙漂白装置の外観を示す図である。
【0026】
図2に示すように、歯牙漂白装置100は、シートデバイス200および制御部300を有する。
【0027】
シートデバイス200は、上の前歯の唇側の歯面全体(以下「前歯部分」という)を覆う大きさを有する、シート状のデバイスである。シートデバイス200は、伸縮性および柔軟性を有するシート部材を母材とし、歯面の立体形状に合わせて変形させることが可能となっている。図3は、一例として、シートデバイス200が前歯部分の歯面に取り付けられた状態を示す図である。
【0028】
前歯部分500には、予め、歯牙の漂白処理において光触媒として用いられる、所定の薬剤(例えば、酸化チタン)が塗布される。シートデバイス200は、かかる薬剤が塗布された前歯部分500に、図3に示すように貼り付けられる。シートデバイス200は、表面張力により、前歯部分500の歯面に密着した状態を維持することができるようになっている。十分な密着性を確保するために、スプリットガム、シリコン接着剤、あるいはラテックス接着剤等の、生体適合性のある粘着剤が併用されてもよい。
【0029】
また、シートデバイス200は、前歯部分500の大きさの違いに合わせて、複数のサイズから選択できることが望ましい。
【0030】
母材であるシート部材のうち歯面に密着する側の表面には、複数の色調センサユニットおよび複数の発光素子(図示せず)が、配置されている。色調センサユニットおよび発光素子の配置を含むシートデバイス200の詳細な構成については、後述する。
【0031】
シート部材としては、例えば、アクリロイル基末端ウレタンポリマーおよびアクリル系モノマーを含有するエネルギー線硬化性組成物の硬化物(特許文献2参照)を採用することができる。
【0032】
制御部300は、プラスチック等の素材から成る筐体により保護された装置部である。制御部300は、後述するが、各色調センサユニットおよび各発光素子の動作を制御する機能を有する。制御部300は、ケーブル400を介して、シートデバイス200に接続されている。
【0033】
ケーブル400は、図示しないが、動作決定部と各色調センサユニットおよび各発光素子とを接続する信号線を含む。なお、ケーブル400は、例えば、シートデバイス200が歯に貼り付けられた状態において、ユーザの服のポケットに制御部300を収納できる程度の長さを有することが望ましい。
【0034】
<シートデバイスの構成>
図4は、シートデバイス200の構成の一例を示す図である。なお、ここでは、シートデバイス200の全体のうち代表的な部分のみを図示する。
【0035】
図4において、シートデバイス200は、シート部材210に、色調センサユニット220および発光素子ユニット230が埋め込まれた構成を有する。
【0036】
色調センサユニット220は、白色光を出力する検出用発光素子221と、検出用発光素子221から出力された光の歯面からの反射光を受光する色調センサ222とを含む。検出用発光素子221の発光面および色調センサ222の受光面は、シート部材210の歯面に密着する側の面(以下「内側面」という)において露出している。すなわち、色調センサユニット220は、シートデバイス200が前歯部分に貼り付けられた状態において、近傍の歯面の色調を検出する。
【0037】
但し、色調センサ222の受光面は、シート部材210の内側面の位置よりもシート部材210の内部側に、位置していることが望ましい。例えば、色調センサ222は、シート部材210の内側面が歯面に密着した状態において、受光面が歯面から100マイクロメートル程度離隔するように配置される。
【0038】
発光素子230の発光面は、シート部材210の内側面において露出している。すなわち、発光素子230は、シートデバイス200が前歯部分に貼り付けられた状態において、近傍の歯面に対して、光を照射する。発光素子230は、例えば、漂白処理のための所定の波長の光(以下「漂白光」という)を出力する、LED(light emitting diode)素子あるいは複数のLED素子から成る発光ユニットである。本実施の形態において、発光素子230の発光輝度は可変であるものとする。
【0039】
検出用発光素子221、色調センサ222、および発光素子230は、できるだけ小型であることが望ましい。
【0040】
小型の色調センサ222としては、例えば、非特許文献1に記載の、有機半導体によりRGBの3原色を捉えることができるデバイスを採用することができる。非特許文献1に記載の色調センサは、印刷により微細に作成することが可能である。
【0041】
小型の検出用発光素子221および発光素子230としては、例えば、特許文献3に記載の、高分子ポリマーを利用し、印刷によって作成される、有機LED素子を採用することができる。
【0042】
<シートデバイスの制御単位>
本実施の形態において、シートデバイス200の動作は、シートデバイス200を、数mm四方程度の大きさの、細かい複数の領域に分割した分割領域毎に、制御される。以下、シートデバイス200の各分割領域およびその制御単位は、「ブロック」という。
【0043】
1つのブロックには、少なくとも1つの色調センサユニット220と、少なくとも1つの発光素子230とが、配置されているものとする。シートデバイス200における色調センサユニット220および発光素子230の配置密度は、一様であってもよいし、ブロック毎に異なってもよいし、ブロック内において異なってもよい。
【0044】
本実施の形態において、シートデバイス200には、L個のブロックが設定されているものとする。そして、1つのブロックには、複数の色調センサユニット220および複数の発光素子230が属しているものとする。また、L個のブロックの間で、面積はほぼ同一であり、色調センサユニット220および発光素子230の配置密度もほぼ同一であるものとする。
【0045】
<歯牙漂白装置の機能構成>
図5は、歯牙漂白装置100の機能構成の一例を示す図である。
【0046】
図5において、歯牙漂白装置100は、シートデバイス200に配置された第1〜第Mの色調センサユニット220〜220および第1〜第Nの発光素子230〜230と、制御部300に配置された情報格納部310および動作決定部320を有する。
【0047】
情報格納部310は、ブロック情報テーブルおよび制御ルールテーブルを予め格納している。ブロック情報テーブルは、上述のブロックのそれぞれにどの色調センサユニット220および発光素子230が属するか、を規定したテーブルである。制御ルールテーブルは、色調センサユニット220の検出結果に応じて発光素子230をどのように動作させるか、を規定したテーブルである。
【0048】
図6は、ブロック情報テーブルの内容の一例を示す図である。
【0049】
図6に示すように、ブロック情報テーブル610は、ブロックの識別情報611に対応付けて、当該ブロックに配置された色調センサユニット220の識別情報612を記述している。また、ブロック情報テーブル610は、ブロックの識別情報611に対応付けて、当該ブロックに配置された発光素子230の識別情報613を記述している。
【0050】
例えば、第1のブロックの識別情報611には、第1および第2の色調センサユニット220、220の識別情報612と、第1〜第4の発光素子230〜230の識別情報とが、対応付けられている。これは、第1〜第4の発光素子230〜230が、第1および第2の色調センサユニット220、220の近傍に配置されているためである。
【0051】
第1および第2の色調センサユニット220、220が色調を検出することができる歯面の領域と、第1〜第4の発光素子230〜230が漂白光を照射することができる歯面の領域とは、対応している。したがって、このようなブロックを単位として、色調センサユニット220の検出結果に基づいた発光素子230の動作の制御を行うことにより、各部の漂白処理の必要度に応じた強度で漂白光を照射することが可能となる。
【0052】
図7は、制御ルールテーブルの内容の一例を示す図である。
【0053】
図7に示すように、制御ルールテーブル620は、各色調センサユニット220によって検出される値のレベル(以下「色調レベル」という)621に対応付けて、発光素子230の発光輝度に対応する制御値622を記述している。また、制御ルールテーブル620は、色調レベルに対応付けて、発光素子230の発光時間に対応する制御値623を記述している。
【0054】
色調レベル621は、例えば、色の濃さのレベルである。但し、歯の色は、個人差が大きい。したがって、色調レベル621は、例えば、前歯部分の色調の平均値を基準とした、相対的な色の濃さのレベルとしてもよい。例えば、「C0」という色調レベル621は、漂白が不要なほど白い歯面の色に対応し、「C1」という色調レベル621は、比較的白いが漂白処理を行うことが好ましい歯面の色に対応する。より濃い色に相当する色調レベル621ほど、より高い発光輝度の制御値622と、より長い発光時間の制御値623とが、対応付けられている。
【0055】
制御値622、623は、例えば、全てのブロックにおいて、面積、並びに、色調センサユニット220および発光素子230の配置密度が、ほぼ同一であるという前提において、実験や経験則に基づき、適切な値が設定されている。発光輝度の制御値622は、発光素子230毎の制御値であってもよいし、ブロック毎の制御値であってもよい。
【0056】
図5の動作決定部320は、制御部300とシートデバイス200とを接続するケーブル400およびシートデバイス200に埋め込まれた信号線(図示せず)を介して、第1〜第Mの色調センサユニット220〜220および第1〜第Nの発光素子230〜230のそれぞれに接続されている。すなわち、動作決定部320は、各色調センサユニット220に対して制御信号を出力してその動作を制御し、各色調センサユニット220から出力される検出値を入力することができる。また、動作決定部320は、各発光素子230に対して制御信号を出力してその動作を制御することができる。
【0057】
動作決定部320は、シートデバイス200のブロック毎に、当該ブロックに配置された色調センサユニット220の検出値に基づいて、当該ブロックに配置された発光素子230の動作を決定する。このとき、動作決定部320は、ブロック情報テーブル610(図6参照)および制御ルールテーブル620(図7参照)を参照して、各発光素子230の動作を決定する。そして、動作決定部320は、決定した内容で、各発光素子230を動作させる。
【0058】
なお、制御部300は、図示しないが、例えば、CPU(central processing unit)、制御プログラムを格納したROM(read only memory)等の記憶媒体、およびRAM(random access memory)等の作業用メモリを有する。この場合、制御部300の各部の機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。
【0059】
また、制御部300は、図示しないが、電源部と、キースイッチ等の操作部とを有する。電源部は、上記CPUおよびシートデバイス200を動作させるための電源を供給する。操作部は、ユーザから、歯面への光照射を開始させる操作を含む各種操作を受け付ける。
【0060】
このような構成により、歯牙漂白装置100は、歯面の各部分に対し、その部分の状態に応じた適切な強度で、漂白光の光照射を行うことができる。
【0061】
<歯牙漂白装置の動作>
次に、歯牙漂白装置100の動作について説明する。
【0062】
図8は、歯牙漂白装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0063】
歯牙漂白装置100は、ユーザの前歯部分にシートデバイス200が装着された状態で、ユーザにより動作開始を指示する操作が行われると、以下に説明する処理を開始する。
【0064】
まず、ステップS1100において、第1〜第Mの色調センサユニット220〜220は、それぞれ、近傍の歯面の色調を検出し、検出結果を動作決定部320へ出力する。
【0065】
そして、ステップS1200において、動作決定部320は、ブロック毎に、そのブロックに属する複数の色調センサユニット220の検出結果の平均値(以下「ブロック検出値」という)を取得する。動作決定部320は、制御ルールテーブル620を参照し、ブロック毎に、ブロック検出値に対応する色調レベルに対応する、発光輝度の制御値622および発光時間の制御値623(図7参照)を、そのブロックに適用する制御内容として決定する。なお、検出結果の平均値を用いるのは、より信頼性の高いデータを得るためである。
【0066】
そして、ステップS1300において、動作決定部320は、各発光素子230に対して、決定した制御内容を適用する。すなわち、動作決定部320は、各ブロックにおける漂白光の光照射を、決定された発光輝度で開始させる。また、動作決定部320は、タイマ(図示せず)等を用いて、計時を開始する。
【0067】
そして、ステップS1400において、動作決定部320は、光照射中のブロックのうち、決定された発光時間が経過したブロックが存在するか否かを判定する。動作決定部320は、決定された発光時間が経過したブロックが存在する場合(S1400:YES)、処理をステップS1500へ進める。また、動作決定部320は、決定された発光時間が経過したブロックが存在しない場合(S1400:NO)、処理をステップS1600へ進める。
【0068】
ステップS1500において、動作決定部320は、光照射中のブロックのうち、決定された発光時間が経過したブロックの、光照射を停止させる。すなわち、該当するブロックに属する発光素子230の発光を停止させる。そして、動作決定部320は、処理をステップS1600へ進める。
【0069】
ステップS1600において、動作決定部320は、光照射中のブロックが存在するか否かを判断する。動作決定部320は、光照射中のブロックが存在する場合(S1600:YES)、処理をステップS1400へ戻す。また、動作決定部320は、光照射中のブロックが存在しない場合(S1600:NO)、一連の処理を終了させる。
【0070】
このような動作により、歯牙漂白装置100は、ブロック毎に、歯面の色調に応じて照射する漂白光の強度を決定し、決定された強度で光照射が行われるように、各発光素子230の動作を制御することができる。
【0071】
<歯牙漂白装置の効果>
以上のように、本実施の形態に係る歯牙漂白装置100は、歯面の各部分に対し、その部分の色の状態に応じて、適切な強度で光照射を行うことができる。
【0072】
したがって、本実施の形態に係る歯牙漂白装置100は、歯毎あるいは歯の部分毎に歯面の色が異なる場合であっても、前歯部分の全体をバランス良く漂白処理することができる。すなわち、本実施の形態に係る歯牙漂白装置100は、歯面の漂白処理を効果的に行うことができる。
【0073】
また、本実施の形態に係る歯牙漂白装置100は、両手が空いた状態で漂白光の光照射を行うことができるため、他の作業や動作を行いながら使用することができる。
【0074】
また、本実施の形態に係る歯牙漂白装置100は、漂白処理を行うための光源から歯面までの距離が短いため、同じ照射量を得るのに電力消費量を抑えることができ、環境に配慮した漂白処理を実現することができる。
【0075】
<歯牙漂白装置の変形例>
なお、色調センサユニット220の検出用発光素子221は、必ずしも設けなくてもよい。例えば、白色光を出力する共通の光源を制御部300等に配置し、光ファイバを介して、各ブロックに白色光を分配してもよい。
【0076】
また、動作決定部320は、発光強度および発光時間のうち、一方を固定値とし、他方を色調に応じて調整してもよい。あるいは、動作決定部320は、ブロック毎に、発光を行うか否かのみを決定してもよい。また、動作決定部320は、各発光素子230を周期的に点滅させ、その点滅周期あるいはデューティ比を、対応する色調センサユニット220の検出結果に応じて制御してもよい。
【0077】
また、制御部300は、例えば、頭部、耳たぶ、あるいは首に装着することができる形状を有していてもよい。また、制御部300は、首に掛けるためのストラップを備えていてもよい。あるいは、制御部300は、シートデバイス200と一体的に形成される等、口腔内に収容されて使用されるように構成されていてもよい。
【0078】
また、シートデバイス200は、図3に示すサイズよりも小さくてもよいし大きくてもよい。また、制御部300には、上の前歯部分に貼り付けるためのシートデバイス200と、下の前歯部分に貼り付けるためのシートデバイス200とが、接続されていてもよい。
【0079】
また、シートデバイス200を十分な耐水性を備えるように構成した場合、ユーザは、水を口腔内に含ませた状態で、歯牙漂白装置100を使用することが可能となる。この場合、発光素子230の光照射によって口腔内の温度が高くなり過ぎるのを防ぐことができる。
【0080】
また、以上説明した実施の形態2における制御部300の機能の一部または全部は、携帯電話機等、他の機能を主目的とする装置に配置されていてもよい。
【0081】
また、上記機能は、ネットワーク上のサーバに配置されていてもよい。すなわち、歯牙漂白装置の一部の機能をクラウド化してもよい。この場合、動作決定部は、少なくとも通信部を備え、かかるサーバに歯面の色調レベルに関するデータを送信して、各ブロックに適用すべき発光強度および発光時間を取得する必要がある。
【0082】
また、歯牙漂白装置100は、ブロック毎に、そのブロックについての動作のみを行う動作決定部320を設けてもよい。
【0083】
(本開示のまとめ)
本開示の歯牙漂白装置は、光を用いて歯面の漂白処理を行う歯牙漂白装置であって、前記歯面に貼り付けることが可能なシート部材と、前記シート部材に配置され、近傍の前記歯面の色調を検出する色調センサと、前記シート部材の、前記色調センサの位置と対応する位置に配置され、前記色調センサの検出結果に応じて、前記色調センサの近傍の前記歯面に対して前記光を照射する動作を行う発光素子と、を有する。
【0084】
なお、上記歯牙漂白装置は、前記シート部材が前記歯面に貼り付けられた状態において、前記色調センサの近傍の前記歯面に対して、前記色調センサが前記色調を検出するための光を照射する、検出用発光素子、を有してもよい。
【0085】
また、上記歯牙漂白装置は、前記シート部材の異なる位置に配置された複数の前記色調センサと、前記シート部材の、前記複数の色調センサの位置とそれぞれ対応する位置に配置され、対応する前記色調センサの検出結果に応じてそれぞれ動作する複数の前記発光素子と、を有してもよい。
【0086】
また、上記歯牙漂白装置において、前記シート部材は、隣接する複数の前歯の唇側の前記歯面を少なくとも含む所定の領域に貼り付けることが可能であってもよい。
【0087】
また、上記歯牙漂白装置において、前記色調センサおよび前記発光素子は、前記シート部材を分割した複数の分割領域のそれぞれに配置され、前記分割領域毎に、当該分割領域に配置された前記色調センサの検出値に基づいて、当該分割領域に配置された前記発光素子の動作を決定する動作決定部、を有してもよい。
【0088】
また、上記歯牙漂白装置において、前記動作決定部は、前記発光素子の発光輝度および発光時間の少なくとも1つを、対応する前記色調センサの検出値に応じて調整してもよい。
【0089】
本開示の歯牙漂白装置は、第1歯面と第2歯面と含む歯面に貼り付けることが可能で、第1位置と前記第1位置に対応する第2位置を含むシートと、前記第1位置に配置され、第1歯面近傍の色調を検出する色調センサと、前記第2位置に配置され、前記検出された色調に応じて、前記第2歯面に対して光を照射する発光素子と含む。
【0090】
本開示の歯牙漂白方法は、光を用いて歯面の漂白処理を行う方法であって、前記歯面に貼り付けることが可能なシート部材に配置された色調センサにおいて、当該色調センサの近傍の前記歯面の色調を検出するステップと、前記シート部材の、前記色調センサの位置と対応する位置に配置され、前記色調センサの近傍の前記歯面に対して前記光を照射する発光素子を、前記色調センサの検出結果に応じて動作させるステップと、を有する。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示は、歯面の漂白処理をより効果的に行うことができる歯牙漂白装置および歯牙漂白方法として有用である。
【符号の説明】
【0092】
100 歯牙漂白装置
200 シートデバイス
210 シート部材
220 色調センサユニット
221 検出用発光素子
222 色調センサ
230 発光素子
300 制御部
310 情報格納部
320 動作決定部
400 ケーブル
図1
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図3
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図8