特許第6443747号(P6443747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443747
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】計測データ処理装置と方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20181217BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20181217BHJP
   G01S 17/66 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   G01B11/24 A
   G01B11/02 Z
   G01S17/66
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-5553(P2015-5553)
(22)【出願日】2015年1月15日
(65)【公開番号】特開2016-130703(P2016-130703A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】中島 忠弘
【審査官】 梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−182496(JP,A)
【文献】 特開2005−283197(JP,A)
【文献】 特開2011−059905(JP,A)
【文献】 特開2010−071942(JP,A)
【文献】 特開平05−157523(JP,A)
【文献】 特開2011−196749(JP,A)
【文献】 特開2005−233716(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0088642(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102011103232(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 − 11/30
G01C 3/00 − 3/32
G01S 7/00 − 7/51
G01S 13/00 − 13/95
G01S 17/00 − 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ距離計が取得した計測データを処理する計測データ処理装置であって、
レーザ距離計は、レーザ光の射出方向毎に、物体上の計測点までの距離と、該計測点からの反射レーザ光のレベルとを、計測データとして取得し、
各射出方向における物体上の計測点までの前記距離と、該距離に対応する射出方向とに基づいて、設定座標系における各計測点の座標データが生成され、
前記座標データに基づいて、前記設定座標系において互いの距離が設定距離以内となる複数の前記計測点を、一次クラスタとして特定する一次クラスタ特定部と、
複数の計測点にそれぞれ関連付けられた複数の計測点関連値に対するしきい値であって、前記一次クラスタの中から一部の計測点を選択するための該しきい値を、複数の計測点からの反射レーザ光の前記レベル同士の関係に基づいて決定するしきい値決定部と、
前記しきい値により定まる範囲に属する複数の計測点関連値がそれぞれ関連付けられた複数の計測点を、前記一次クラスタから二次クラスタとして特定し、当該二次クラスタを同じ物体に対応するデータとして出力する二次クラスタ特定部と、を備える、ことを特徴とする計測データ処理装置。
【請求項2】
計測点関連値は、反射レーザ光の前記レベルであり、前記しきい値は、該レベルのしきい値であり、
前記しきい値決定部は、次式の関数fに従って、前記しきい値Rthを算出するように構成されており、

th=f(Rmin,Rmax

ここで、Rthは,関数fにおける従属変数であり、Rminは、一次クラスタに含まれる全ての計測点からの反射レーザ光のレベルの最小値であって関数fにおける独立変数であり、Rmaxは、一次クラスタに含まれる全ての計測点からの反射レーザ光のレベルの最大値であって関数fにおける独立変数であり、
前記二次クラスタ特定部は、前記一次クラスタから、反射レーザ光の前記レベルが前記しきい値以上となる計測点を二次クラスタとして特定する、ことを特徴とする請求項1に記載の計測データ処理装置。
【請求項3】
前記関数fは、

f(Rmin,Rmax)=Rmin+a×(Rmax−Rmin

であり、関数fにおいて、aは、0より大きく1より小さい定数である、ことを特徴とする請求項2に記載の計測データ処理装置。
【請求項4】
計測点関連値は、反射レーザ光の前記レベルであり、前記しきい値は、該レベルのしきい値であり、
前記しきい値決定部は、次式に従って、前記しきい値Rthを算出するように構成されており、

th=A−b×σ

ここで、Aは、一次クラスタにおける反射レーザ光のレベルの平均値であり、bは定数であり、σは、一次クラスタにおける反射レーザ光のレベルの第1標準偏差であり、
前記二次クラスタ特定部は、前記一次クラスタから、反射レーザ光の前記レベルが前記しきい値以上となる計測点を二次クラスタとして特定する、ことを特徴とする請求項1に記載の計測データ処理装置。
【請求項5】
前記しきい値決定部は、
一次クラスタの中から反射レーザ光の前記レベルが最大となる計測点を最大レベル計測点として選択し、
最大レベル計測点に、ゼロのインデックス値を計測点関連値として設定し、
設定座標系において、前記各射出方向と交差する方向を第1探索方向として、最大レベル計測点よりも第1探索方向の側で、最大レベル計測点に近い計測点から順に、これらの計測点に、それぞれ、等間隔で増える複数の正のインデックス値を計測点関連値として設定し、
設定座標系において、第1探索方向と反対方向を第2探索方向として、最大レベル計測点よりも第2探索方向の側で、最大レベル計測点に近い計測点から順に、これらの計測点に、それぞれ、等間隔で減る複数の負のインデックス値を計測点関連値として設定し、
インデックス値の第2標準偏差σを、次式により、反射レーザ光のレベルを重みにして算出し、
【数1】

ここで、Rは、反射レーザ光のレベルを示し、Kは、インデックス値を示し、nは、一次クラスタの計測点の数であり、RとKの添え字iは、一次クラスタの計測点を識別するための番号であり、1〜nの自然数の値をとり、Σは、全ての計測点iに関する総和を示し、
前記しきい値決定部は、前記しきい値として、−α×σである第1のしきい値、および、α×σである第2のしきい値を決定し、ここで、αは、正の実数であり、予め設定されており、
前記二次クラスタ特定部は、インデックス値が、前記第1のしきい値以上であって前記第2のしきい値以下となる複数の計測点を、二次クラスタとして特定する、ことを特徴とする請求項1に記載の計測データ処理装置。
【請求項6】
計測点関連値は、反射レーザ光の前記レベルであり、前記しきい値は、該レベルのしきい値であり、
を、予め定めた設定値とし、一次クラスタに含まれる全ての計測点についてレーザ距離計が取得した前記距離の平均値をrとして、
rがrより大きい場合には、前記しきい値決定部は、次式に従って、前記しきい値Rthを算出し、

th=Rmin+(Rmax−Rmin)×{1−(r/r)1/2

rがr以下である場合には、前記しきい値決定部は、一次クラスタに含まれる全ての計測点を二次クラスタとして特定する、ことを特徴とする請求項1に記載の計測データ処理装置。
【請求項7】
反射レーザ光のレベルは、強度、光量、または反射率である、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の計測データ処理装置。
【請求項8】
レーザ距離計が取得した計測データを処理する計測データ処理方法であって、
レーザ距離計は、レーザ光の射出方向毎に、物体上の計測点までの距離、および、該計測点からの反射レーザ光のレベルを、計測データとして取得し、各射出方向における物体上の計測点までの前記距離と、該距離に対応する射出方向とに基づいて、設定座標系における各計測点の座標データが生成された場合において、
(A)一次クラスタ特定部により、前記座標データに基づいて、前記設定座標系において互いの距離が設定距離以内となる複数の前記計測点を、一次クラスタとして特定し、
(B)複数の計測点にそれぞれ関連付けられた複数の計測点関連値に対するしきい値であって、前記一次クラスタの中から一部の計測点を選択するための該しきい値を、複数の計測点からの反射レーザ光の前記レベル同士の関係に基づいて、しきい値決定部により決定し、
(C)二次クラスタ特定部により、前記しきい値により定まる範囲に属する複数の計測点関連値がそれぞれ関連付けられた複数の計測点を、前記一次クラスタから二次クラスタとして特定し、当該二次クラスタを同じ物体に対応するデータとして出力する、ことを特徴とする計測データ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ距離計が取得した計測データを処理する計測データ処理装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、計測データ処理装置は、レーザ距離計により取得された計測データを処理する。本願において、レーザ距離計は、各射出方向にレーザ光を射出し、このレーザ光の反射光を受ける。これにより、射出方向毎に、当該射出方向と、レーザ光の射出時点と、反射レーザ光の受光時点とに基づいて、当該射出方向に存在する物体上の計測点の座標データが生成される。座標データは、予め定めた設定座標系における三次元位置を示す。計測データ処理装置は、各計測点の座標データに基づいて、設定座標系において、互いに近接する計測点をクラスタとして特定する。このように特定したクラスタは、例えば、物体の特徴(例えば形状)の抽出や物体の識別などに利用される。
【0003】
このような技術に関連する文献として、例えば、下記の特許文献1、2がある。
【0004】
特許文献1では、次のように、クラスタと歩行者を対応付けて、歩行者を先導するロボットの速度を制御している。レーザ距離計により位置を計測した多数の計測点のうち、互いに近接する複数の計測点をクラスタとして特定する。このようなクラスタを複数特定する。その後、複数のクラスタの中から歩行者の両足を示す可能性のある2つのクラスタの組を特定する。このように特定したクラスタの組に基づいて、ロボットと歩行者の隔離距離を求め、この隔離距離に応じて、歩行者を先導するロボットの速度を制御する。
【0005】
特許文献2では、次のように、クラスタと物体を対応付けて、物体を検出している。レーザ距離計により位置を計測した多数の計測点のうち、互いに近接する複数の計測点がクラスタとして特定される。このようなクラスタが複数特定される。その後、物体の推定存在領域内に、中心が位置するクラスタを、物体の近接クラスタ候補として選択する。このような近接クラスタ候補を複数特定する。複数の近接クラスタ候補の組み合わせを、物体に対応付ける。この対応付けにより物体を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−059905号公報
【特許文献2】特開2011−196749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、計測対象の物体の表面において、レーザ距離計からのレーザ光は、その進行方向と直交する面においてある程度の広がり(例えば、レーザ距離計から20mの遠距離位置においては直径300mmの円)を有する。そのため、レーザ距離計から見た場合における計測対象の物体の外縁に、レーザ光が照射された場合、レーザ光の一部は、計測対象の物体で反射されてレーザ距離計へ戻り、レーザ光の他の大部分が、計測対象の物体表面に当たらず計測対象の物体の後方へ進行する。このように計測対象の物体の外縁に射出されたレーザ光によっても、物体の位置が検出される。しかし、このようなレーザ光の断面中心は、物体から外れているので、このレーザ光の反射レーザ光に基づく座標データは、物体の位置を正確に示さない。
【0008】
このような座標データの計測点も、計測対象の物体に対応するクラスタに組み込まれてしまう。その結果、計測対象の物体に精度よく対応したクラスタを得ることができない。
【0009】
なお、このような問題を考慮して、互いに隣接する計測点同士の距離が設定距離以下であるときに、これらの計測点をクラスタにする場合に、この設定距離を小さくすることが考えられる。しかし、レーザ距離計の分解能が同じである場合に、設定距離を小さくしても、物体の位置を正確に示さない計測点をクラスタから除外できるとは限らず、しかも、クラスタを構成する計測点の数が不十分になる可能性がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、精度よく物体に対応するクラスタを得ることができる計測データ処理装置と方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明によると、レーザ距離計が取得した計測データを処理する計測データ処理装置であって、
レーザ距離計は、レーザ光の射出方向毎に、物体上の計測点までの距離と、該計測点からの反射レーザ光のレベルとを、計測データとして取得し、
各射出方向における物体上の計測点までの前記距離と、該距離に対応する射出方向とに基づいて、設定座標系における各計測点の座標データが生成され、
前記座標データに基づいて、前記設定座標系において互いの距離が設定距離以内となる複数の前記計測点を、一次クラスタとして特定する一次クラスタ特定部と、
複数の計測点にそれぞれ関連付けられた複数の計測点関連値に対するしきい値であって、前記一次クラスタの中から一部の計測点を選択するための該しきい値を、複数の計測点からの反射レーザ光の前記レベル同士の関係に基づいて決定するしきい値決定部と、
前記しきい値により定まる範囲に属する複数の計測点関連値がそれぞれ関連付けられた複数の計測点を、前記一次クラスタから二次クラスタとして特定し、当該二次クラスタを同じ物体に対応するデータとして出力する二次クラスタ特定部と、を備える、ことを特徴とする計測データ処理装置が提供される。
【0012】
本発明の計測データ処理装置は、例えば、以下のように構成される。
【0013】
計測点関連値は、反射レーザ光の前記レベルであり、前記しきい値は、該レベルのしきい値であり、
前記しきい値決定部は、一次クラスタに含まれる全ての計測点からの反射レーザ光のレベルの最小値と最大値との中間の値を、前記しきい値として決定し、
前記二次クラスタ特定部は、前記一次クラスタから、反射レーザ光の前記レベルが前記しきい値以上となる計測点を二次クラスタとして特定する。
【0014】
計測点関連値は、反射レーザ光の前記レベルであり、前記しきい値は、該レベルのしきい値であり、
前記しきい値決定部は、次式の関数fに従って、前記しきい値Rthを算出するように構成されており、

th=f(Rmin,Rmax

ここで、Rthは,関数fにおける従属変数であり、Rminは、一次クラスタに含まれる全ての計測点からの反射レーザ光のレベルの最小値であって関数fにおける独立変数であり、Rmaxは、一次クラスタに含まれる全ての計測点からの反射レーザ光のレベルの最大値であって関数fにおける独立変数であり、
前記二次クラスタ特定部は、前記一次クラスタから、反射レーザ光の前記レベルが前記しきい値以上となる計測点を二次クラスタとして特定する。
【0015】
このように、反射レーザ光のレベルの最大値と最小値の関数fを予め設定しておくことにより、適切なしきい値を決定できる。
【0016】
好ましくは、前記関数fは、

f(Rmin,Rmax)=Rmin+a×(Rmax−Rmin

であり、関数fにおいて、aは、0より大きく1より小さい定数である。
【0017】
このように、関数fを、反射レーザ光のレベルの最大値と最小値の一次関数とすることにより、適切なしきい値を簡単な計算により決定できる。また、この場合、後述するように、aを適切に定めることにより、精度のよい二次クラスタが生成されることを実施例において確認した。
【0018】
計測点関連値は、反射レーザ光の前記レベルであり、前記しきい値は、該レベルのしきい値であり、
前記しきい値決定部は、次式に従って、前記しきい値Rthを算出するように構成されており、

th=A−b×σ

ここで、Aは、一次クラスタにおける反射レーザ光のレベルの平均値であり、bは定数であり、σは、一次クラスタにおける反射レーザ光のレベルの第1標準偏差であり、
前記二次クラスタ特定部は、前記一次クラスタから、反射レーザ光の前記レベルが前記しきい値以上となる計測点を二次クラスタとして特定してもよい。
【0019】
このように、反射レーザ光のレベルの第1標準偏差を用いて、適切なしきい値を決定することもできる。
【0020】
前記しきい値決定部は、
一次クラスタの中から反射レーザ光の前記レベルが最大となる計測点を最大レベル計測点として選択し、
最大レベル計測点に、ゼロのインデックス値を計測点関連値として設定し、
設定座標系において、前記各射出方向と交差する方向を第1探索方向として、最大レベル計測点よりも第1探索方向の側で、最大レベル計測点に近い計測点から順に、これらの計測点に、それぞれ、等間隔で増える複数の正のインデックス値を計測点関連値として設定し、
設定座標系において、第1探索方向と反対方向を第2探索方向として、最大レベル計測点よりも第2探索方向の側で、最大レベル計測点に近い計測点から順に、これらの計測点に、それぞれ、等間隔で減る複数の負のインデックス値を計測点関連値として設定し、
インデックス値の第2標準偏差σを、次式により、反射レーザ光のレベルを重みにして算出し、
【数1】

ここで、Rは、反射レーザ光のレベルを示し、Kは、インデックス値を示し、nは、一次クラスタの計測点の数であり、RとKの添え字iは、一次クラスタの計測点を識別するための番号であり、1〜nの自然数の値をとり、Σは、全ての計測点iに関する総和を示し、
前記しきい値決定部は、前記しきい値として、−α×σである第1のしきい値、および、α×σである第2のしきい値を決定し、ここで、αは、正の実数であり、予め設定されており、
前記二次クラスタ特定部は、インデックス値が、前記第1のしきい値以上であって前記第2のしきい値以下となる複数の計測点を、二次クラスタとして特定してもよい。
【0021】
このように、計測点のインデックス値の第2標準偏差σを、反射レーザ光のレベルを重みを用いて求め、この第2標準偏差σを用いて、適切なしきい値を決定することもできる。
【0022】
または、計測点関連値は、反射レーザ光の前記レベルであり、前記しきい値は、該レベルのしきい値であり、
を、予め定めた設定値とし、一次クラスタに含まれる全ての計測点についてレーザ距離計が取得した前記距離の平均値をrとして、
rがrより大きい場合には、前記しきい値決定部は、次式に従って、前記しきい値Rthを算出し、

th=Rmin+(Rmax−Rmin)×{1−(r/r)1/2

rがr以下である場合には、前記しきい値決定部は、一次クラスタに含まれる全ての計測点を二次クラスタとして特定してもよい。
【0023】
この構成で、レーザ距離計から一次クラスタの計測点までの平均距離rに応じて、二次クラスタとして特定される計測点の数を変えることができる。すなわち、一次クラスタが多数の計測点からなる場合に、一次クラスタがレーザ距離計から遠くなるにつれて、物体の外縁で反射したレーザ光に対応する精度の低い計測点を取り除くように、二次クラスタとして特定される計測点の数を絞り、一次クラスタがレーザ距離計に近くなるにつれて、二次クラスタとして特定される計測点の数をより多く残す。詳しくは、次の通りである。
【0024】
物体の外縁に当たるレーザ光の断面中心は、物体から外れているので、このレーザ光の反射レーザ光に対応する計測点は、物体の位置を正確に表わしていない。また、物体の外縁に当たるレーザ光について、その一部が、該物体で反射され、その残りが、該物体に当たらず該物体の後方において他の物体で反射される場合には、このレーザ光の反射光に基づく計測距離は不正確になる。このように、物体の外縁で反射したレーザ光に対応する計測点は、該物体の位置を正確に表わしていない。
【0025】
レーザ光は、スポット光であり、物体がレーザ距離計から離れている(遠い)ほど、この物体の位置においてスポット光の径が大きくなる。したがって、物体がレーザ距離計から離れているほど、この物体に当たる全てのレーザ光の数に対する、この物体の外縁に当たるレーザ光の数の割合が大きくなる。
また、物体の外縁に当たるレーザ光は、その一部が該物体で反射され、その残りが該物体に当たらず該物体の後方へ進行する。したがって、物体の外縁に当たるレーザ光の反射光のレベルは小さくなる。
【0026】
そこで、反射レーザ光のレベルのしきい値Rthを上述のように求め、しきい値Rthにより、一次クラスタがレーザ距離計から遠くなるにつれて、物体の外縁で反射したレーザ光に対応する精度の低い計測点を取り除くように、二次クラスタとして特定される計測点の数を絞り、一次クラスタがレーザ距離計に近くなるにつれて、二次クラスタとして特定される計測点の数をより多く残す。その結果、物体の形状および大きさを正確に表した二次クラスタを得ることできる。
【0027】
反射レーザ光のレベルは、強度、光量、または反射率である。
【0028】
また、本発明によると、レーザ距離計が取得した計測データを処理する計測データ処理方法であって、
レーザ距離計は、レーザ光の射出方向毎に、物体上の計測点までの距離、および、該計測点からの反射レーザ光のレベルを、計測データとして取得し、各射出方向における物体上の計測点までの前記距離と、該距離に対応する射出方向とに基づいて、設定座標系における各計測点の座標データが生成された場合において、
(A)一次クラスタ特定部により、前記座標データに基づいて、前記設定座標系において互いの距離が設定距離以内となる複数の前記計測点を、一次クラスタとして特定し、
(B)複数の計測点にそれぞれ関連付けられた複数の計測点関連値に対するしきい値であって、前記一次クラスタの中から一部の計測点を選択するための該しきい値を、複数の計測点からの反射レーザ光の前記レベル同士の関係に基づいて、しきい値決定部により決定し、
(C)二次クラスタ特定部により、前記しきい値により定まる範囲に属する複数の計測点関連値がそれぞれ関連付けられた複数の計測点を、前記一次クラスタから二次クラスタとして特定し、当該二次クラスタを同じ物体に対応するデータとして出力する、ことを特徴とする計測データ処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0029】
レーザ光が物体の外縁に当たることにより、その一部のみが物体表面上の計測点で反射され、その大部分が該物体に当たらない場合には、このレーザ光の断面中心は物体から外れているため、当該計測点は、物体の位置を精度よく示さない。
そこで、本発明では、上述の一次クラスタの中から、一部の計測点を選択するためのしきい値を、各計測点からの反射レーザ光のレベル同士の関係に基づいて決定する。したがって、物体の位置を精度よく示さない上述の計測点が、二次クラスタから除外されるようにしきい値を決定できる。
【0030】
また、上述のしきい値を、反射レーザ光の前記レベル同士の関係に基づいて決定するので、各反射レーザ光のレベルが、同程度のノイズの影響を受けている場合には、このようなノイズに影響されることなく、適切にしきい値を決定することが可能となる。
【0031】
さらに、上述のしきい値を、反射レーザ光の前記レベル同士の関係に基づいて決定するので、レーザ距離計から物体までの距離に影響されることなく、適切にしきい値を決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態による計測データ処理装置を示すブロック図である。
図2】物体上の各計測点の位置をレーザ距離計で計測する場合の説明図である。
図3】本発明の実施形態による計測データ処理方法を示すフローチャートである。
図4】本実施形態による計測データ処理方法の実施例を示す。
図5図3のステップS2の一例を示すフローチャートである。
図6図3のステップS4の一例を示すフローチャートである。
図7】物体の識別に用いるヒストグラムを示す。
図8】しきい値の別の決定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0034】
図1は、本発明の実施形態による計測データ処理装置10を示すブロック図である。計測データ処理装置10は、レーザ距離計3が取得した計測データを処理する。
【0035】
図2は、物体1上の各計測点の位置をレーザ距離計3で計測する場合の説明図である。
レーザ距離計3は、レーザ光を射出して計測データを取得する。すなわち、レーザ距離計3は、射出方向毎に、レーザ距離計3から物体1上の計測点までの距離、および、該計測点からの反射レーザ光のレベルを、計測データとして取得する。レーザ距離計3は、例えば、レーザレンジファインダ(LRF:laser range finder)である。本実施形態では、レーザ距離計3からのレーザ光の射出方向は、互いに一定の微小角度ずつずれている。
【0036】
レーザ距離計3が、射出するレーザ光は、レーザ距離計3からの距離に応じて、レーザ光の進行方向と直交する方向にある程度の広がり(例えば、図2に示す直径R1またはR2)を有する。したがって、レーザ距離計3からのレーザ光は、その一部がレーザ距離計3により近い物体1で反射され、その残りが、この物体1の後方にある他の物体1で反射される場合がある。この場合、レーザ距離計3は、射出した1つのレーザ光に対して、2つの反射レーザ光を、異なる時点で検出する。これを考慮して、本実施形態では、レーザ距離計3は、射出した1つのレーザ光に対して、複数の(2つの)反射レーザ光を、それぞれ、複数の時点で検出した場合には、次の(a)(b)いずれかにより、反射レーザ光を検出する。
(a)レーザ距離計3から最も近い位置で反射した反射レーザ光を、計測点からの反射レーザ光とする。他の反射レーザ光は、計測データに反映されない。
(b)複数の反射レーザ光のうち、後述する反射レーザ光のレベルが最大のものを、計測点からの反射レーザ光とする。他の反射レーザ光は、計測データに反映されない。
【0037】
反射レーザ光のレベルは、例えば、反射レーザ光の強度である。ここで、反射レーザ光の強度は、反射レーザ光の進行方向と直交する平面による反射レーザ光の断面における、単位面積あたりのレーザ光の強さである。
代わりに、反射レーザ光のレベルは、反射レーザ光の光量であってもよい。ここで、反射レーザ光の光量は、反射レーザ光の進行方向と直交する平面による反射レーザ光の断面全体における光量(光のエネルギー)の合計である。
代わりに、反射レーザ光のレベルは、レーザ距離計3が射出したレーザ光の強度に対する、レーザ距離計3が検出した計測点からの反射レーザ光の強度の割合(すなわち、レーザ光の反射率)であってもよい。ここで、レーザ光の強度および反射レーザ光の強度は、レーザ光の進行方向と直交する平面によるレーザ光の断面における、単位面積あたりのレーザ光の強さである。
【0038】
計測データ処理装置10は、図1に示すように、座標データ生成部5と、一次クラスタ特定部7と、しきい値決定部9と、二次クラスタ特定部11と、記憶部13を含む。
【0039】
座標データ生成部5は、レーザ距離計3が取得した計測データに基づいて、各計測点の位置を設定座標系において示す座標データを生成する。すなわち、座標データ生成部5は、射出方向毎に、該射出方向における物体1上の計測点までの上述の距離と、該射出方向とに基づいて、物体1上の該計測点の座標データを生成する。座標データは、物体1上の各計測点の位置を設定座標系において示す数値データである。
【0040】
設定座標系は、例えば、地上に対して固定された静止座標系であるが、これに限定されない。本実施形態では、設定座標系は、三次元空間の座標系である。この設定座標系は、例えば、図2の例では、互いに直交するX軸とY軸とZ軸を有する座標系Sである。
【0041】
なお、座標データ生成部5は、計測データ処理装置10の構成要件でなくてもよい。この場合、座標データ生成部5は、レーザ距離計3に組み込まれていてもよいし、座標データ生成部5およびレーザ距離計3から独立して設けられていてもよい。
【0042】
一次クラスタ特定部7は、座標データ生成部5が生成した座標データに基づいて、設定座標系において互いの距離が設定距離以内となる複数の計測点を、一次クラスタとして特定する。これにより、設定座標系において、互いに近接している計測点からなる一次クラスタが特定される。また、レーザ距離計3の三次元的な計測可能範囲に複数の物体1が互いに分離して存在する場合には、一次クラスタ特定部7は、物体1毎に一次クラスタを特定する。
【0043】
しきい値決定部9は、複数の計測点にそれぞれ関連付けられた複数の計測点関連値に対するしきい値であって、一次クラスタの中から一部の計測点を選択するための該しきい値を、複数の計測点からの反射レーザ光のレベル同士の関係に基づいて決定する。本実施形態では、計測点関連値は、反射レーザ光のレベルであり、しきい値は、該レベルのしきい値である。
【0044】
二次クラスタ特定部11は、しきい値決定部9が決定したしきい値に基づいて、一次クラスタから、複数の計測点を二次クラスタとして特定し、当該二次クラスタを同じ物体1に対応するデータとして出力する。本実施形態では、二次クラスタ特定部11は、一次クラスタから、反射レーザ光のレベルが、上述のしきい値以上となる複数の計測点を二次クラスタとして特定する。
【0045】
記憶部13は、座標データ生成部5と一次クラスタ特定部7としきい値決定部9と二次クラスタ特定部11が用いるデータを記憶する。記憶部13は、レーザ距離計3から受けた計測データと、座標データ生成部5が生成した各計測点の座標データと、一次クラスタ特定部7が特定した一次クラスタと、しきい値決定部9が決定したしきい値と、二次クラスタ特定部11が特定した二次クラスタを記憶する。
【0046】
しきい値決定部9と二次クラスタ特定部11について、より詳しく説明する。
【0047】
しきい値決定部9は、同じ物体1に対応する一次クラスタに含まれる全ての計測点からの反射レーザ光のレベルにおける最小値と最大値との中間の値を、上述のしきい値として決定する。例えば、しきい値決定部9は、一次クラスタに含まれる全ての計測点からの反射レーザ光のレベルのうち、その最小値と最大値を選択し、選択した最小値と最大値との中間の強度を、上述のしきい値として決定する。
【0048】
本実施形態によると、しきい値決定部9は、次の関数fに従って、しきい値Rthを算出するように構成されており、

th=f(Rmin,Rmax

ここで、xは,関数fにおける従属変数であり、Rminは、上述の最小値であって関数fにおける独立変数であり、Rmaxは、上述の最大値であって関数fにおける独立変数である、
【0049】
好ましい一例では、関数fは、次の式で表わされる。

f(Rmin,Rmax)=Rmin+a×(Rmax−Rmin

この関数fにおいて、aは,0より大きく1より小さい定数である。aは、予め設定されている。
【0050】
この式において、Rmaxは、一次クラスタに含まれる全ての計測点からの反射レーザのレベルのうち最大値であり、Rminは、一次クラスタに含まれる全ての計測点からの反射レーザ光のレベルのうち最小値である。また、この式において、aは、0より大きく1より小さい。aは、例えば、0.5である。
【0051】
二次クラスタ特定部11は、一次クラスタから、反射レーザ光のレベルが上述のしきい値以上となる計測点を二次クラスタとして特定する。また、二次クラスタ特定部11は、特定した二次クラスタを同じ物体1に対応するデータとして出力する。複数の一次クラスタが、一次クラスタ特定部7により特定されている場合には、二次クラスタ特定部11は、一次クラスタ毎に二次クラスタを特定する。
【0052】
次に、本発明の実施形態による計測データ処理方法を説明する。この方法は、上述の計測データ処理装置10を用いて行われる。図3は、本発明の実施形態による計測データ処理方法を示すフローチャートである。
【0053】
図3に示すように、計測データ処理方法を実施する前に、ステップS0を行う。ステップS0では、上述したレーザ距離計3により、レーザ光の射出方向毎に、物体1上の計測点までの距離と、該計測点からの反射レーザ光のレベルとを、計測データとして取得する。
【0054】
ステップS1において、座標データ生成部5により、各射出方向における物体1上の計測点までの距離と、該距離に対応する射出方向とに基づいて、各計測点の座標データを生成する。
【0055】
ステップS2において、一次クラスタ特定部7により、各計測点の座標データに基づいて、設定座標系において互いの距離が設定距離以内となる複数の計測点を、一次クラスタとして特定する。すなわち、設定座標系において、一次クラスタの各計測点は、この一次クラスタに含まれる他のいずれかの計測点との距離が上述の設定距離以内となる。
【0056】
ステップS3において、しきい値決定部9により、一次クラスタの中から一部の計測点を選択するためのしきい値を、複数の計測点からの反射レーザ光のレベルの関係に基づいて決定する。本実施形態では、しきい値決定部9により、反射レーザ光のレベルのしきい値を、各計測点からの反射レーザ光のレベル同士の関係に基づいて決定する。
【0057】
ステップS4において、二次クラスタ特定部11により、上述のしきい値に基づいて、一次クラスタから、複数の計測点を二次クラスタとして特定する。本実施形態では、二次クラスタ特定部11により、一次クラスタから、反射レーザのレベルが上述のしきい値以上となる計測点を選択し、選択した複数の計測点を二次クラスタとして特定する。また、ステップS4において、二次クラスタ特定部11により、特定した二次クラスタを同じ物体1に対応するデータとして出力する。
【0058】
図4は、本実施形態による計測データ処理方法の実施例を示す。図4(A)は、ステップS4の処理により、1つの一次クラスタから特定された1つの二次クラスタを示す。図4(A)において、横軸は、図2に示す設定座標系SのX軸であり、縦軸は、設定座標系SのY軸である。また、図4(A)(B)において、白丸は、計測点を示す。
図4(B)は、図4(A)の計測点からの反射レーザ光のレベルを示す。図4(B)において、横軸は、レーザ距離計3のレーザ射出角(レーザ光の射出方向)を示し、縦軸は、反射レーザ光のレベル(この例では、強度)を示す。また、図4(B)において、反射レーザ光の強度の最小値と最大値、および、ステップS3で決定したしきい値も示している。
【0059】
図4において、一次クラスタは、計測点(1)〜(8)から形成されており、これらの計測点(1)〜(8)のうち、計測点(1)〜(5)が二次クラスタとして特定された。図4の実施例では、物体1の実際のX軸方向寸法は300mmであり、一次クラスタによる物体1のX軸方向寸法は、600mm程度であるが、二次クラスタによる物体1のX軸方向寸法は、350mm程度になっている。したがって、二次クラスタは、精度よく、物体1の存在領域を示している。
【0060】
ステップS2の具体例を説明する。図5は、図3のステップS2の一例を示すフローチャートである。図5の例では、ステップS2は、ステップS21〜ステップS24を含む。
【0061】
ステップS21では、各計測点の座標データに基づいて、設定座標系において互いの距離が上述の設定距離以内となる複数の計測点を1つのクラスタとして、1または複数のクラスタを抽出する。すなわち、設定座標系において、各クラスタの各計測点は、このクラスタに含まれる他のいずれかの計測点との距離が上述の設定距離以内となる。
【0062】
ステップS22では、ステップS21で抽出した複数のクラスタの中から、1つのクラスタを選択する。ステップS21で抽出したクラスタが1つである場合には、ステップS22では、このクラスタを選択する。
【0063】
ステップS23では、ステップS22で選択したクラスタについて、このクラスタの形状(すなわち、クラスタの複数の計測点により形成される形状)と、設定形状とのずれが設定範囲内であるかどうかを判断する。または、ステップS23では、ステップS22で選択したクラスタについて、このクラスタの寸法と、設定寸法とのずれが設定範囲内であるかどうかを判断する。設定形状は、検出対象の物体1の形状であり、予め設定されており、記憶部13に記憶されている。設定寸法は、検出対象の物体1の寸法であり、予め設定されており、記憶部13に記憶されている。
【0064】
ステップS23の判断結果が肯定である場合には、すなわち、上述のずれが設定範囲内である場合には、ステップS23の判断対象となったクラスタを一次クラスタとして特定し、そうでない場合には、ステップS23の判断対象となったクラスタのデータを削除する。特定された一次クラスタは、記憶部13に登録される。
【0065】
ステップS24では、ステップS21で抽出したクラスタの全てについて、ステップS23を行ったかどうかを判断する。この判断結果が肯定である場合には、ステップS3へ進む。そうでない場合には、ステップS24からステップS22へ戻り、戻ったステップS22において、別の1つのクラスタを、ステップS21で抽出した複数のクラスタから選択する。したがって、ステップS24の判断結果が肯定になるまで。ステップS22とステップS23を繰り返す。
【0066】
上述したステップS23は、特定の物体1を検出する場合に行われることが好ましい。一方、上述したステップS23を省略してもよい。例えば、特定の物体1を検出するのではなく、レーザ距離計3の計測可能範囲内に存在する物体1をすべて検出する場合には、上述したステップS23を省略することが好ましい。ステップS23を省略する場合には、ステップS22〜ステップS24も省略する。すなわち、ステップS21で抽出したクラスタを一次クラスタとして特定し、ステップS3へ進む。
【0067】
ステップS4の具体例を説明する。図6は、図3のステップS4の一例を示すフローチャートである。図6の例では、ステップS4は、ステップS41〜ステップS46を含む。
【0068】
ステップS41では、ステップS2で特定した複数の一次クラスタの中から、1つの一次クラスタを選択する。ステップS2で特定した一次クラスタが1つである場合には、ステップS41では、この一次クラスタを選択する。
【0069】
ステップS42では、ステップS41で選択した一次クラスタの中から、1つの計測点を選択する。
【0070】
ステップS43では、ステップS42で選択した計測点からの反射レーザ光のレベルが、ステップS3で決定したしきい値以上であるかどうかを判断する。この判断結果が肯定である場合には、すなわち、計測点からの反射レーザ光のレベルがしきい値以上である場合には、この計測点を一次クラスタとして残し、そうでない場合には、この計測点を一次クラスタから除外する。
【0071】
ステップS44では、ステップS41で選択した一次クラスタの中に、まだステップS42で選択すべき計測点があるかを判断する。例えば、ステップS41で選択した一次クラスタの中に、まだステップS42で選択していない計測点があるかを判断する。ステップS44の判断結果が肯定である場合には、ステップS42へ戻り、そうでない場合には、ステップS45へ進む。ステップS44からステップS42へ戻った場合には、戻ったステップS42において、まだ選択されていない計測点を1つ選択する。
【0072】
ステップS45では、ステップS43の判断結果が肯定となることにより残された複数の計測点を、二次クラスタとして、記憶部13に登録する。
【0073】
ステップS46では、ステップS2で特定された一次クラスタを全てステップS41で選択したかを判断する。この判断結果が肯定である場合には、ステップS45で登録した二次クラスタを出力し、そうでない場合には、ステップS41へ戻る。ステップS46からステップS41へ戻った場合には、戻ったステップS41において、まだ選択されていない一次クラスタを1つ選択する。
【0074】
図6のフローにおいて、1つの一次クラスタについて、ステップS42を最初に行う時には、このステップS42で選択する計測点は、好ましくは、一次クラスタのうち、反射レーザ光のレベルが最大となる計測点(以下、最大レベル計測点という)である。この場合には、1つの一次クラスタについて、2回目以降のステップS42を、以下の処理(P)(P)のように行う。
なお、設定座標系において、レーザ距離計3から計測点へのレーザ光の射出方向と交差する方向(好ましくは、設定座標系の座標軸の方向)を、第1探索方向とする。また、設定座標系において、第1探索方向と逆となる方向を第2探索方向とする。
【0075】
(P)設定座標系において、最大レベル計測点よりも第1探索方向の側にある複数の計測点については、第1探索方向における最大レベル計測点からの距離が小さい計測点ほど、先のステップS42で選択される。この手順で、最大レベル計測点よりも第1探索方向の側にある計測点を選択し、この計測点についてステップS43の判断結果が否定となったら、最大レベル計測点よりも第1探索方向の側においては、ステップS42で選択すべき計測点はなくなったとして、最大レベル計測点よりも第1探索方向の側における計測点の選択を終了する。
【0076】
(P)設定座標系において、最大レベル計測点よりも第2探索方向の側にある複数の計測点については、第2探索方向における最大レベル計測点からの距離が小さい計測点ほど、先のステップS42で選択される。この手順で、最大レベル計測点よりも第2探索方向の側にある計測点を選択し、この計測点についてステップS43の判断結果が否定となったら、最大レベル計測点よりも第2探索方向の側においては、ステップS42で選択すべき計測点はなくなったとして、最大レベル計測点よりも第2探索方向の側における計測点の選択を終了する。
【0077】
上述の処理(P)(P)を行う場合、一例では、最大レベル計測点よりも第1探索方向の側にある計測点の選択と、最大レベル計測点よりも第2探索方向の側にある計測点の選択とを、交互に行う。例えば、図4(A)の一次クラスタの場合には、第1探索方向は図2の設定座標系SのX軸方向であり、第2探索方向はX軸方向と反対方向(負のX軸方向)である。したがって、図4(A)については、最初のステップS42で、最大レベル計測点(1)を選択し、以降のステップS42では、計測点(2)(3)(4)(5)の順で選択し、次のステップS42では、計測点(6)を選択する。計測点(6)に関するステップS43の判断結果が否定になるので、この時点で、第1探索方向の側にある計測点の選択を終了する。したがって、計測点(8)についてはステップS43の判断を行わない。同様に、第2探索方向の側にある計測点の選択については、計測点(7)に関するステップS43の判断結果が否定になるので、この時点で、第2探索方向の側にある計測点の選択を終了する。
【0078】
上述の処理(P)(P)を行う場合、別の例では、最初に、最大レベル計測点よりも第1探索方向の側の計測点の選択を開始し、最大レベル計測点よりも第1探索方向の側においてステップS42で選択すべき計測点はなくなった(すなわち、ステップS43の判断結果が否定になった)後に、最大レベル計測点よりも第2探索方向の側の計測点の選択を開始する。もしくは、最初に、最大レベル計測点よりも第2探索方向の側の計測点の選択を開始し、最大レベル計測点よりも第2探索方向の側においてステップS42で選択すべき計測点はなくなった(すなわち、ステップS43の判断結果が否定になった)後に、最大レベル計測点よりも第1探索方向の側の計測点の選択を開始する。
【0079】
上述の処理(P)(P)により選択した計測点のうち、ステップS43の判断が肯定となった複数の計測点は、上述と同様に、ステップS45において二次クラスタとして登録される。
【0080】
上述の計測データ処理装置10は、特定された二次クラスタを、図1のように、物体検出装置20に出力する。
物体検出装置20は、例えば、以下の処理Pまたは処理Pを行う。
【0081】
(処理P
物体検出装置20は、二次クラスタに基づいて、物体1を認識する。例えば、物体検出装置20は、二次クラスタに基づいて、例えば、物体1の形状(例えば曲率)もしくは寸法を抽出する。物体検出装置20は、抽出した形状または寸法と、物体検出装置20に記憶された設定物体データとを比較する。設定物体データは、予め登録した物体の形状データまたは寸法データと、該物体の識別データとを互いに対応づけたデータである。このような設定物体データが、複数の物体毎に物体検出装置20に記憶されている。物体検出装置20は、抽出した形状または寸法との一致度が設定値以上となる形状データまたは寸法データが、複数の設定物体データの中に存在するかを判断する。この判断結果が肯定の場合、物体検出装置20は、該形状データまたは寸法データに対応する識別データを出力する。
【0082】
なお、物体検出装置20に記憶されている設定物体データの数は、1つであってもよい。この場合、物体検出装置20は、抽出した形状または寸法と形状データまたは寸法データとの一致度が設定値以上となる場合には、二次クラスタは検出対象の物体1のものであるとして、その旨を出力する。
【0083】
(処理P
物体検出装置20は、二次クラスタに基づいて図7に示すヒストグラムを生成する。図7のヒストグラムは、計測点からの反射レーザ光のレベルと、計測点の数との関係を示す。
図7のヒストグラムにおいて、横軸は、二次クラスタに含まれる各計測点からの反射レーザ光のレベルを示す。ただし、横軸は、正規化された反射レーザ光のレベルを示す。図7の例では、横軸において、各計測点からの反射レーザ光のレベルは、これらのレベルの最大値で正規化されている。すなわち、図7の横軸では、この最大値を1として、各計測点からの反射レーザ光のレベルを、最大値に対する比で表している。
図7のヒストグラムにおいて、縦軸は、反射レーザ光のレベルの範囲(図7の例では、幅0.1の各範囲)に属する、二次クラスタの計測点の数を示す。ただし、縦軸は、正規化された計測点の数を示す。図7の例では、縦軸において、計測点の数は、反射レーザ光のレベルの各範囲における計測点の数の最大値で正規化されている。すなわち、図7の横軸では、この最大値を1として、各範囲の計測点の数を、最大値に対する比で表している。
【0084】
物体検出装置20は、生成したヒストグラムを、設定ヒストグラムデータと比較する。設定ヒストグラムデータは、複数の設定ヒストグラムと、これらの設定ヒストグラムにそれぞれ対応する物体1の識別データとを含む。各設定ヒストグラムは、この設定ヒストグラムに対応する物体1のデータであり、予め作成されている。各設定ヒストグラムは、物体検出装置20が生成するヒストグラムに相当するデータ(図7と同じデータ)である。物体検出装置20は、生成したヒストグラムとの一致度が設定値以上となる設定ヒストグラムを、設定ヒストグラムデータの中から選択する。物体検出装置20は、選択した設定ヒストグラムに対応する物体1の識別データを出力する。
【0085】
なお、物体検出装置20が記憶する設定ヒストグラムの数は、1つであってもよい。この場合、物体検出装置20は、生成したヒストグラムと設定ヒストグラムとの一致度が設定値以上である場合に、二次クラスタは検出対象の物体1のものであるとして、その旨を出力する。
【0086】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変更例1、2または3を採用してもよい。この場合、以下で述べない点は上述と同じである。
【0087】
(変更例1)
しきい値決定部9は、上述のしきい値を次のように決定してもよい。
【0088】
しきい値決定部9は、次式に従って、しきい値Rthを算出するように構成されており、

th=A−b×σ

ここで、Aは、一次クラスタにおける反射レーザ光のレベルの平均値であり、bは、予め定めた定数であり、σは、一次クラスタにおける反射レーザ光のレベルの第1標準偏差である。なお、bは、正の実数または負の実数である。bは、実験により求められてよい。
【0089】
平均値Aと、第1標準偏差σは、次の[数2]で表される。
【0090】
【数2】
【0091】
[数2]において、Rは、反射レーザ光のレベルを示し、Rの添え字iは、一次クラスタの計測点を識別するための番号である。nは、一次クラスタの計測点の数である。したがって、iは、1〜nの自然数の値をとる。Σは、全ての計測点に関する総和を示す。
【0092】
(変更例2)
しきい値決定部9は、上述のしきい値を次のように決定してもよい。
【0093】
図8は、この変更例2によるしきい値の決定方法を説明するための図である。図8において、横軸は、後述するように計測点関連値として計測点に設定されたインデックス値を示し、縦軸は、反射レーザ光のレベルを示す。また、図8において、白丸は計測点を示す。
【0094】
まず、しきい値決定部9は、一次クラスタの全ての計測点のうち、反射レーザ光のレベルが最大となる計測点(最大レベル計測点)を選択する。しきい値決定部9は、図8のように、この最大レベル計測点のインデックス値(すなわち、計測点関連値)をゼロに設定する。
【0095】
次に、しきい値決定部9は、設定座標系において、レーザ光の各射出方向と交差する方向を第1探索方向として、最大レベル計測点よりも第1探索方向の側で、最大レベル計測点に近い計測点から順に、これらの計測点に、それぞれ、等間隔で増える複数の正のインデックス値を計測点関連値として設定する。例えば、次のように正のインデックス値を設定する。設定座標系において、最大レベル計測点よりも第1探索方向側に位置し、最大レベル計測点に最も近い計測点にインデックス値として1を設定する。次に、しきい値決定部9は、設定座標系において、最大レベル計測点よりも第1探索方向側で、1のインデックス値が設定された計測点の次に最大レベル計測点に近い計測点に、2のインデックス値を設定する。このように、設定座標系において、最大レベル計測点よりも第1探索方向側で計測点を探索し、最大レベル計測点に近い計測点から順に、インデックス値1、2、3・・・を設定する。すなわち、インデックス値が小さい計測点ほど、最大レベル計測点からの距離が小さい。図8の例では、1〜7のインデックス値が、それぞれの計測点に設定されている。
【0096】
同様に、設定座標系において第1探索方向と反対方向を第2探索方向として、最大レベル計測点よりも第2探索方向の側で、最大レベル計測点に近い計測点から順に、これらの計測点に、それぞれ、上述の等間隔で減る複数の負のインデックス値を設定する。例えば、次のように負のインデックス値を計測点関連値として設定する。しきい値決定部9は、設定座標系において、最大レベル計測点よりも第2探索方向側に位置し、最大レベル計測点に最も近い計測点にインデックス値として−1を設定する。次に、しきい値決定部9は、設定座標系において、最大レベル計測点よりも第2探索方向側で、−1のインデックス値が設定された計測点の次に最大レベル計測点に計測点に、−2のインデックス値を設定する。このように、設定座標系において、最大レベル計測点よりも第2探索方向側で計測点を探索し、最大レベル計測点に近い計測点から順に、インデックス値−1、−2、−3・・・を設定する。すなわち、インデックス値が小さい計測点ほど、最大レベル計測点からの距離が大きい。図8の例では、−1〜−6のインデックス値が、それぞれの計測点に設定されている。
【0097】
なお、この変更例2における第1探索方向と第2探索方向は、図4に関連して述べた第1探索方向と第2探索方向と同じである。なお、ゼロのインデックス値と、このインデックス値に最も近い正負の各インデックス値との間隔も上述の等間隔である。
【0098】
その後、しきい値決定部9は、インデックス値の第2標準偏差σを、反射レーザ光のレベルを重みにして算出する。すなわち、しきい値決定部9は、次の[数3]により第2標準偏差σを算出する。
【0099】
【数3】
【0100】
この式において、Rは、反射レーザ光のレベルを示し、Kは、インデックス値を示す。RとKの添え字iは、一次クラスタの計測点を識別するための番号である。nは、一次クラスタの計測点の数である。したがって、iは、1〜nの自然数の値をとる。Σは、全ての計測点に関する総和を示す。
【0101】
次いで、しきい値決定部9は、上述のしきい値として、−α×σである第1のしきい値、および、α×σである第2のしきい値を決定する。ここで、αは、正の実数であり、予め設定されている。図8の例では、α=1である。
【0102】
この場合、二次クラスタ特定部11は、インデックス値が、第1のしきい値以上であって第2のしきい値以下となる複数の計測点を、二次クラスタとして特定する。
【0103】
なお、インデックス値は、上述の例に限定されない。すなわち、上述の等間隔の大きさは、1でなくてもよい。
【0104】
(変更例3)
しきい値決定部9は、上述のしきい値を以下のように決定してもよい。
【0105】
を、予め定めた設定値とし、一次クラスタに含まれる全ての計測点について、レーザ距離計3が取得した、レーザ距離計3からこれらの計測点までの距離の平均値をrとする。rは、レーザ距離計3からの距離の設定値(例えば、2m)であって、レーザ距離計3に近すぎる距離を意味する。
【0106】
rがrより大きい場合には、しきい値決定部9は、次式に従って、しきい値Rthを算出する。

th=Rmin+(Rmax−Rmin)×{1−(r/r)1/2

rがr以下である場合には、しきい値決定部9は、一次クラスタに含まれる全ての計測点を二次クラスタとして特定する。
【符号の説明】
【0107】
1 物体、3 レーザ距離計、5 座標データ生成部、7 一次クラスタ特定部、9 しきい値決定部、10 計測データ処理装置、11 二次クラスタ特定部、13 記憶部、20 物体検出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8