(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記記憶制御部は、前記取消ボタンが操作されると、取消対象のボタン操作情報を前記記憶部から消去するか、または取消対象のボタン操作情報を前記記憶部から消去せずに、少なくとも一部のボタン操作情報が取消対象である旨の情報を前記記憶部に追加で記憶することを特徴とする請求項3に記載の錠剤管理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、各錠剤に対応づけて電気的接点を設けて、錠剤が取り出されていない状態では、この電気的接点に電流が流れるようにし、錠剤が取り出されると、この電気的接点が切断して電流が流れないようにしていた。このため、すべての電気的接点に定期的に電流を流し、電流が流れなかった電気的接点については、対応する錠剤が取り出されたと判断していた。また、錠剤が取り出されたと判断した場合は、ブザーを鳴らすのが一般的であった。ブザーを鳴らすのは、錠剤の取り出しを正常に認識したことを使用者に知らせるためであるが、錠剤を取り出してから、時間をおいてブザーが鳴るようだと、使用者に違和感を与えてしまう。そこで、従来は、使用者に違和感を与えない程度の短い時間間隔(例えば、1秒間隔程度)で、すべての電気的接点に電流を流して、錠剤の取り出しをチェックしていた。
【0005】
このように、従来の手法では、錠剤の取り出しをチェックするために、まだ切断していないすべての電気的接点に定期的に電流を流さなければならず、消費電力が大きいという問題があった。
【0006】
この種の装置は、ボタン電池を内蔵していることが多いが、一つの装置内に収納されているすべての錠剤を使用者が服用する前に電池が切れてしまうと、錠剤の管理を正しく行えなくなる。この種の装置は、部材の製造コストを抑制するために、紙を材料として作製されていることが多く、電池を交換することが容易でないことが多い。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、部材コストを上昇させずに、また使い勝手を損なうことなく消費電力を大幅に削減可能な錠剤管理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様では、上下に順に折り重ねられる第1薄層、第2薄層および第3薄層と、
前記第2薄層および前記第3薄層の間に挿入される錠剤のそれぞれごとに設けられ、前記第1薄層の前記第2薄層に対向する面上に配置される接点導通部と、
前記錠剤のそれぞれごとに設けられ、前記接点導通部の位置に合わせて、前記第2薄層の前記第1薄層に対向する面上に分離して配置される2つの接点と、を備え、
前記第3薄層は、前記錠剤の少なくとも頂部が前記第3薄層の裏面から突出されるように、前記錠剤の外形形状に合わせてくり抜かれており、
前記錠剤を前記第3薄層の裏面側から表面の方向に押し込むと、一時的に前記2つの接点に前記接点導通部が接触され、その後に前記第2薄層および第3薄層の一部が破断されて前記錠剤が取り出されることを特徴とする錠剤収納装置が提供される。
【0009】
このように、錠剤を第3薄層の裏面側から表面の方向に押し込むと、一時的に2つの接点に接点導通部が接触して、これにより電流が流れるため、この電流を検知することで、錠剤の取り出しを把握できる。したがって、錠剤が取り出されたか否かを把握するために、定期的に電流を流す必要がなくなり、消費電力を削減できる。
【0010】
また、第1薄層の第2薄層に対向する面に、記接点導通部を取り囲むように第2薄層に接触される凸部を設けて、この凸部の頂部が第2薄層の表面に接触して、接点導通部と対応する2つの接点とが上下に離隔して配置されるようにすれば、錠剤の取り出しを行わないときに、2つの接点に接点導通部が接触しなくなる。
【0011】
また、第1薄層の前記第2薄層に対向する面に、接点導通部を含む所定領域を第2薄層とは反対側に窪ませた凹部を設けて、錠剤の取り出しを行わない状態では、接点導通部と、対応する2つの接点とが、凹部によって上下に離隔して配置されるようにしてもよい。
【0012】
また、接点導通部を取り囲むように第1薄層に切れ目を設けて、2つの接点を取り囲むように第2薄層に切れ目を設けてもよい。
【0013】
また、本発明の一態様では、上下に順に折り重ねられる第1薄層、第2薄層および第3薄層と、
前記第2薄層および前記第3薄層の間に挿入される錠剤のそれぞれごとに設けられ、前記第1薄層の前記第2薄層に対向する面上に分離して配置される2つの接点と、を備え、
前記第2薄層は、前記錠剤の外形形状に合わせてくり抜かれており、
前記第3薄層は、前記錠剤の少なくとも頂部が前記第3薄層の裏面から突出するように、前記錠剤の外形形状に合わせてくり抜かれており、
前記錠剤を前記第3薄層の裏面側から押し込むと、導電材料からなる錠剤の取り出し面が一時的に前記2つの接点に接触して、その後に前記第1薄層および錠剤の取り出し面の一部が破断されて前記錠剤が取り出されることを特徴とする錠剤収納装置が提供される。
【0014】
このように、錠剤の取り出し面が第1薄層上の2つの接点に接触するか否かにより、錠剤の取り出しを検出することもできる。
【0015】
また、接点導通部と2つの接点を導電性インキで形成すれば、印刷技術を利用して容易に製造可能となり、製造コストを削減できる。
【0016】
また、本発明の一態様では、錠剤のそれぞれごとに設けられ、基板上に分離して配置される2つの接点と、
錠剤のそれぞれごとに設けられ、対応する前記2つの接点に接続される導電パターンと、
錠剤のそれぞれごとに設けられ、前記2つの接点に離隔して対向配置される接点導通部と、
錠剤を取り出した時刻情報と、取り出した錠剤の位置情報とを記憶する記憶部と、
錠剤を取り出す際の圧力により、一時的に対応する前記2つの接点に前記接点導通部が接触して、対応する前記導電パターンに電流が流れたことを検出し、該錠剤を取り出した時刻情報と、該錠剤の位置情報とを前記記憶部に記憶する制御を行う記憶制御部と、を備えることを特徴とする錠剤管理装置が提供される。
【0017】
このように、錠剤を取り出す際の圧力により、一時的に2つの接点に接点導通部が接触して導電パターンに電流が流れるため、定期的に導電パターンに電流を流す必要がなくなり、消費電力を削減できる。
【0018】
また、スタートボタンを設けることで、スタートボタンが押されたか否かで電力消費モードを切り替えることができ、より消費電力を削減できる。
【0019】
また、取消ボタンを設けることで、誤ったボタン操作を取り消すことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、部材コストを上昇させずに、また使い勝手を損なうことなく、消費電力を大幅に削減できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。以下に説明する実施形態では、個々にケースに収納された錠剤を収納する錠剤収納装置および錠剤管理装置について説明するが、本発明が対象とする錠剤は、必ずしも薬に限定されるものではなく、例えば、サプリメントでもよい。また、錠剤の形状やサイズ、数も特に問わない。錠剤は、個々の錠剤が個別のケースに収納されて、複数の錠剤が一つのパッケージになっているのが一般的であるが、本実施形態の錠剤収納装置および錠剤管理装置は、少なくとも一つのパッケージを収納可能とされている。
【0023】
なお、一つの錠剤を収納するケースが個別のパッケージになっていてもよいし、一つのケースの中に複数の錠剤が収納されていてもよい。
【0024】
また、本実施形態に係る錠剤収納装置および錠剤管理装置には、市販されている錠剤のパッケージをそのまま収納することも可能である。すなわち、本実施形態に係る錠剤収納装置および錠剤管理装置向けに新たに錠剤のパッケージを用意する必要はなく、市販のパッケージに合わせて本実施形態に係る錠剤収納装置および錠剤管理装置を作製すればよい。
【0025】
以下では、本発明の一実施形態に係る錠剤収納装置および錠剤管理装置を兼ねる錠剤管理カードについて主に説明する。本実施形態に係る錠剤管理カードは、紙またはプラスチックからなる1枚のシートを、錠剤の服用者が携帯しやすいように複数層に折り畳んだものである。
【0026】
図1は本発明の一実施形態に係る錠剤管理カード1の斜視図である。
図1(a)は錠剤管理カード1を折り畳んで最小サイズにしたものであり、このカード1の上面を上辺側に開くと、
図1(b)に示すように、複数のボタンB1〜B6が現れる。これらボタンB1〜B6は、服用者が各錠剤を服用する前または後に操作するものであり、その詳細は後述する。
【0027】
図1(b)の状態から、さらにボタン操作面3を下辺側、すなわち手前側に開くと、
図1(c)に示すように、複数の錠剤2が並んだ錠剤収納面4が現れる。これら錠剤2は、そのケースの頂部を押し込むことで、カード1の一部が破断して容易に取り出すことができる。すなわち、錠剤2は、通常の錠剤パッケージから取り出すのと同様の手順で取り出すことができる。
【0028】
使用者は、
図1(a)、
図1(b)、
図1(c)のいずれかの形態で錠剤管理カード1を使用し、各形態を任意に変更可能である。例えば、普段持ち歩くときは
図1(a)の形態にし、ボタン操作を行うときは
図1(b)の形態にし、錠剤を取り出すときは
図1(c)の形態にすることが可能である。
【0029】
図2(a)は
図1(b)のボタン操作面3を示す平面図、
図2(b)は
図1(c)の錠剤収納面4を示す平面図である。
【0030】
ボタン操作面3には、例えば、スタートボタンB1と、取消ボタンB2と、食事を摂る前か後かを選択する2つのボタンB3,B4と、体調が良いか悪いかを選択する2つのボタンB5,B6とが設けられている。なお、ボタン操作面3に設けられるボタンの種類と数は任意であり、適宜変更して構わない。
【0031】
錠剤収納面4には、カプセル状の錠剤2が縦横に並んでいる。
図2では、横に2個で、縦に3個の錠剤2が配置されているが、縦横に配置する錠剤2の数は任意であり、適宜変更して構わない。
【0032】
図3は
図1および
図2に示す錠剤管理カード1を使用する手順を示すフローチャートである。このカードは、例えば医療機関や店舗等で服用者に手渡される。このカードを受け取った服用者は、錠剤2の服用を開始する前に、まずスタートボタンB1を押す(ステップS1)。
【0033】
次に、食事を摂る前か後かによって、ボタンB3,B4のいずれかを押す(ステップS2)。引き続いて、服用者の現在の体調が良いか悪いかによって、ボタンB5,B6のいずれかを押す(ステップS3)。次に、服用者は予め決められた数の錠剤2を取り出す(ステップS4)。
【0034】
以上のステップS1〜S4は、次に錠剤2を服用する際にも繰り返される。このように、服用者は、錠剤2を服用するたびに、ボタン操作を行ってから錠剤2の服用を行う。
【0035】
なお、錠剤2の服用前にボタン操作を行う代わりに、錠剤2の服用後にボタン操作を行うようにしてもよい。また、錠剤2の服用前と服用後の両方について、ボタン操作を行うようにしてもよい。例えば、服用の効果を確かめるために、錠剤2を服用してから所定時間経過後に、アラーム等が自動的に鳴るようにして、その時点での体調等をボタン操作で入力するように服用者に促してもよい。
【0036】
このように、服用者がボタン操作をいつ行って、何を入力するかは、錠剤2の種類とボタン操作面3の構成によって決まり、ボタン操作面3をどのように構成するかは、特に限定されるものではない。
【0037】
服用者が行ったボタン操作の情報と錠剤2の取り出し状況は、錠剤管理カード1に内蔵されている通信モジュールに自動的に記録される。通信モジュールに記録される錠剤2の取り出し状況は、取り出した錠剤2の位置情報と、その錠剤2を取り出した時刻情報とを少なくとも含んでいる。
【0038】
服用者がボタン操作を誤った場合は、誤ったボタン操作の直後に取消ボタンB2を押すことで、取消ボタンB2を押す直前のボタン操作を取り消すことができる。この場合、取消ボタンB2を押す直前のボタン操作の情報を通信モジュールから消去してもよいし、あるいは、取り消すべきボタン操作の情報を消去せずに、その情報を取り消すことを示す情報を追加で通信モジュールに記憶してもよい。
【0039】
図4は通信モジュール10の内部構成を機能化したブロック図であり、実際の各回路部品やパターンの配置やサイズ、形状、個数は任意に変更可能である。
図4の通信モジュール10は、紙厚よりも薄い薄膜状であり、フィルム基板11の上に実装されるASIC(Application Specific Integrated Circuit)12と、水晶振動子13と、ボタン電池14と、スピーカ15と、フィルム基板11の長辺に沿って形成される複数のパッド16と、フィルム基板11の外縁部に沿って形成されるアンテナパターン17と、フィルム基板11上に形成される導電パターン18とを有する。
【0040】
図5はASIC12の内部構成の一例を示すブロック図である。
図4のASIC12は、服用者が押圧したスタートボタンB1、取消ボタンB2、およびその他のボタンB3〜B6の操作情報を時刻情報とともに時系列で記憶する記憶部21と、記憶部21に押圧情報を記憶する制御を行う制御部22と、不図示のホストコンピュータとの間で無線通信を行う無線通信部23とを有する。
【0041】
記憶部21は、服用者が押したボタンの種類を特定する情報と、そのボタンを押した時刻情報とを組にして記憶するとともに、服用者が取り出した錠剤2の位置情報と、その錠剤2を取り出した時刻情報とを組にして記憶する。
【0042】
無線通信部23は、ホストコンピュータとの間で、いわゆるNFC(Near Field Communication、近接無線通信)やBluetooth(登録商標)等の非接触通信を行って、情報の送受を行う。無線通信部23が無線通信に用いる方式や周波数帯域は特に制限されるものではなく、例えばNFCの場合は13.56MHzの帯域でISO14443に準拠した無線方式で無線通信を行い、Bluetoothの場合は規格で定めた周波数(例えば2.4GHz)で無線通信を行う。上述した記憶部21に記憶された各種情報は、無線通信部23を介してホストコンピュータに送信される。これにより、服用者が決められた間隔で錠剤2を服用したかどうかの情報や、錠剤2を服用中の服用者の体調等をホストコンピュータ側で把握でき、その服用者が錠剤を服用した効果をホストコンピュータ側で一元的に管理できる。
【0043】
NFCでは、規格上電力の送受もできるため、電池なしで通信モジュール10を駆動することも原理的には可能である。ただし、本実施形態の通信モジュール10は、スピーカ15も備えており、電力の消費量が比較的大きいため、ボタン電池14を搭載している。
なお、スピーカ15は必須ではない。
【0044】
ボタン電池14を搭載している以上、長期間使用すると、バッテリ切れを起こしてしまう。ところが、本実施形態に係る錠剤管理カード1は、製造コスト削減のために紙で作製されることも多く、筐体を破壊させずにボタン電池14を交換するのは困難である。そこで、本実施形態では、ボタン電池14の寿命をできるだけ延ばすための技術的工夫を施している。
【0045】
図6は本実施形態に係る錠剤管理カード1を展開した状態を示す展開図である。図示のように、本実施形態に係る錠剤管理カード1は、紙やプラスチックを材料とする一つのシート状基板30を複数層に折り重ねて作製される。
図6は、一つのシート状基板30を7層に折り重ねる例を示している。以下では、7層に折り重ねられる各層を第1薄層〜第7薄層31〜37と呼ぶ。本実施形態では、これら第1薄層31〜第7薄層37の順序に重ね合わされる例を説明する。すなわち、一番下に第1薄層31が置かれて、一番上に第7薄層37が配置される例を説明する。なお、錠剤管理カード1を何層の薄層で形成して、各薄層をどのような順序で重ね合わせるかは、任意に変更して構わない。
【0046】
第1薄層31には、錠剤2の各位置に対応づけて、複数の接点導通部39が設けられている。接点導通部39の周囲には切れ目40すなわちミシン目が設けられており、服用者が錠剤2を押し込んで取り出すときに、この切れ目40から内側の接点導通部39の部分が錠剤2とともに取り外されるようになっている。また、切れ目40の外側には、接点導通部39を取り囲むように罫線41が設けられている。この罫線41は、接点導通部39よりも上方に突出されている。罫線41を設けた理由は後述する。
【0047】
第1薄層31の上に折り重ねられることになる第2薄層32には、錠剤2のそれぞれごとに、2つの接点42が設けられている。2つの接点42は互いに分離して配置されているが、第1薄層31上の対応する接点導通部39によって、これら2つの接点42は導通するようになっている。これら2つの接点42の周囲には、2つの接点42を取り囲むように切れ目43すなわちミシン目が設けられている。服用者が錠剤2を押し込んで取り出すときに、この切れ目43から内側の接点42の部分が錠剤2とともに取り外されるようになっている。
【0048】
第2薄層32の上に置かれる錠剤2のパッケージのさらに上に折り重ねられることになる第3薄層33は、錠剤2の少なくとも頂部が薄層面から突出するように、錠剤2の外形形状に合わせた孔部44によりくり抜かれている。
【0049】
第3薄層33の上に折り重ねられることになる第4薄層34には、ボタン操作面3上の各ボタンに対応して、それぞれ2つの接点47が設けられている。これら2つの接点47は互いに分離して配置されているが、第5薄層35上の対応する接点導通部45によって、これら2つの接点47は導通するようになっている。
【0050】
最終的に第4薄層34の上に折り重ねられることになる第5薄層35には、スタートボタンB1、取消ボタンB2およびその他のボタンのそれぞれに対応づけて、複数の接点導通部45が設けられている。これら接点導通部45のそれぞれと、対応する2つの接点47とで、ボタンB1〜B6のそれぞれが形成される。また、これら接点導通部45を取り囲むように凸形状の罫線46が設けられている。第5薄層35の接点導通部45が形成されている面の反対側の面がボタン操作面3である。
【0051】
第5薄層35の上に折り重ねられることになる第6薄層36には、通信モジュール10が接着剤にて実装されている。
図4に示したように、通信モジュール10には複数のパッド16が設けられており、これらパッド16に接続される導電パターン48が第2薄層32と第4薄層34上の各接点42,47まで延びている。
【0052】
第6薄層36の上に折り重ねられることになる第7薄層37には、特に何も形成されていないが、第7薄層37を第6薄層36の上に折り重ねることで、通信モジュール10を保護することができる。また、第7薄層37を第6薄層36の上に折り重ねた状態で、表に現れる第7薄層37の面には、必要に応じて、例えば錠剤管理カード1の使用上の注意等が記述される。
【0053】
図6の第1薄層31、第2薄層32、第4薄層34、第5薄層35および第6薄層36に設けられている導電パターン48、接点導通部39,45および接点42,47は、例えば導電インキで形成されている。したがって、
図6のシート状基板30は、印刷技術を利用して簡易に製造でき、大量生産にも容易に対応可能で、低コストで製造できる。また、
図6のシート状基板30の各薄層31〜37の表に現れている各面には、接着剤が塗布されており、各薄層を折り畳んだときに、隣接する薄層同士が密着接続されるようにしている。
【0054】
図7および
図8は
図6の展開されたシート状基板30を折り重ねる手順の一例を示す図である。まず、
図7(a)に示すように、第1薄層31および第2薄層32の境界線51と、第4薄層34および第5薄層35の境界線52と、第6薄層36および第7薄層37の境界線53とをそれぞれ谷折りする。これにより、
図7(b)に示すように、第2薄層32、第4薄層34および第6薄層36のそれぞれが上になるように配置される。
【0055】
図7(b)の状態では、第2薄層32が第1薄層31の上に折り重ねられるが、上述したように、第1薄層31の接点導通部39の周囲には、接点導通部39を取り囲むように、第1薄層31の上方に突出された罫線41が予め形成されている。このため、第2薄層32を第1薄層31の上に折り重ねたときに、第1薄層31の罫線41の頂部が第2薄層32に接触することになり、罫線41の内側にある接点導通部39は、第2薄層32上の対応する2つの接点42には接触しない。
【0056】
また、
図7(b)の状態では、第4薄層34が第5薄層35の上に折り重ねられるが、第5薄層35の接点導通部45の周囲には、接点導通部45を取り囲むように、第5薄層35の上方に突出された罫線46が予め形成されている。このため、第4薄層34を第5薄層35の上に折り重ねたときに、第5薄層35の罫線46の頂部が第4薄層34に接触することになり、罫線41の内側にある接点導通部45は、第4薄層34上の対応する2つの接点47には接触しない。
【0057】
さらに、第5薄層35における接点導通部45が形成された面とは反対側の面(ボタン操作面3)には、
図2(a)に示すように、接点導通部45の位置に合わせて、各ボタンB1〜B6のマークと各ボタンの種類を示す文字情報とが印字されている。後述するように、この印字に従って、服用者がボタンB1〜B6のいずれかを押すと、そのボタンに対応する接点導通部45がその下の2つの接点47に接触して、接触している間だけ、導電パターン48に電流が流れて、ボタンが押されたことを通信モジュール10が認識するようになっている。
【0058】
また、
図7(b)の状態では、第7薄層37の上に第6薄層36が折り重ねられるため、第6薄層36上に実装された通信モジュール10は第7薄層37によって覆われて保護される。。 次に、
図8(a)に示すように、第2薄層32の上に錠剤2のパッケージ53が置かれて、さらにその上に、第3薄層33が折り重ねられる。第3薄層33には、錠剤2の形状に合わせた孔部44が形成されているため、錠剤2の頂部は、第3薄層33の上方に突出されることになる。
【0059】
次に、
図8(b)に示すように、第3薄層33の上に、第4薄層34および第5薄層35がに折り重ねられる。これにより、第5薄層35に形成されたボタン操作面3が上面側に視認可能に配置されることになる。この
図8(a)は、
図1(b)と同じ状態である。
【0060】
次に、
図8(c)に示すように、折り重ねられた第6薄層36および第7薄層37が第5薄層35のボタン操作面3の上にさらに折り重ねられる。この
図8(c)は、
図1(c)と同じ状態である。
【0061】
以上により、錠剤管理カード1が完成する。上述したように、服用者は、錠剤管理カード1を
図8(a)〜
図8(c)のいずれの形態にも任意に変更可能である。
【0062】
図9(a)〜
図9(c)は上述した錠剤管理カード1を折り重ねた状態での一つの錠剤部分の断面構造を示す図である。
図9(a)は錠剤2を取り出す前の断面図、
図9(b)は錠剤2の取り出し途中の断面図、
図9(c)は錠剤2の取り出し後の断面図である。なお、
図9の各断面図では、上から下に向かって、第1薄層31、第2薄層32および第3薄層33が順に配置されている。
【0063】
図9(a)に示すように、錠剤2を取り出す前は、接点導通部39の周囲に罫線41があるために、接点導通部39は2つの接点42に接触していない。ところが、服用者が錠剤2のケース54を押し込むと、その圧力により、2つの接点42が接点導通部39側に押されて、
図9(b)に示すように、2つの接点42が接点導通部39に接触する。これにより、2つの接点42に接続された導電パターン48に電流が流れて、その電流が通信モジュール10で検知される。
【0064】
服用者がさらに錠剤2を押し込むと、
図9(c)に示すように、第1薄層31の切れ目40から内側部分と、第2薄層32の切れ目43から内側部分とが錠剤2とともに破断されて、接点導通部39自体がなくなるため、導電パターン18には電流が流れなくなる。
【0065】
このように、本実施形態では、服用者が錠剤2の取り出し動作を開始していないときは、2つの接点42間には電流は流れない。服用者が錠剤2を取り出そうとして錠剤2を押し込んだときに、瞬間的に2つの接点42と接点導通部39とが接触して導電パターン18に電流が流れ、錠剤2が完全に取り外されると、また電流は流れなくなる。したがって、本実施形態では、錠剤2を取り出すときに、瞬間的に電流が流れるだけであり、この電流を通信モジュール10で検知することにより、錠剤2が取り出されたことを把握できる。
【0066】
各錠剤2に対応する2つの接点42には、
図6に示すように、それぞれ専用の導電パターン48が接続されて、通信モジュール10までつながっている。よって、通信モジュール10は、どの導電パターン48に電流が流れたかにより、どの位置の錠剤2が取り出されたかを把握できる。したがって、通信モジュール10は、導電パターン48に電流が流れたことを検知すると、その導電パターン48に対応する錠剤2の位置情報と、その錠剤2が取り出された時刻情報とを組にして、記憶部21に記憶する。
【0067】
従来は、錠剤2が取り出されない限り、電流が流れるような閉回路を各錠剤2ごとに設けていたため、定期的に各閉回路に電流を流して、錠剤2が取り出されたか否かをチェックする必要があった。これに対して、本実施形態では、錠剤2が取り出される直前に導電パターン18に一瞬だけ電流が流れるような回路方式を採用するため、定期的に導電パターン18に電流を流す必要はなくなり、従来に比べて消費電力を大幅に削減できる。
【0068】
なお、錠剤管理カード1の断面構造は、
図9(a)〜
図9(c)に示したものに限定されない。例えば、
図9(d)〜
図9(f)は錠剤管理カード1の断面構造の第1変形例を示す図である。この第1変形例では、
図9(d)に示すように、第1薄層31には、接点導通部39の配置場所を含めてその周辺部に凹部55が形成されている。したがって、第2薄層32を第1薄層31上に折り重ねたときに、第1薄層31上の接点導通部39は、第2薄層32上の対応する2つの接点42に接触しない。
【0069】
この状態で、服用者が錠剤2を押し込むと、
図9(e)に示すように、2つの接点42が錠剤2とともに接点導通部39側に押し込まれて、2つの接点42が接点導通部39に接触し、2つの接点42に接続された導電パターン18に電流が流れる。
【0070】
図9(e)の状態からさらに服用者が錠剤2を押し込むと、
図9(f)に示すように、第1薄層31の切れ目40から内側部分と第2薄層32の切れ目43から内側部分がともに破断されて、錠剤2が外部に取り出されるとともに、導電パターン18には電流が流れなくなる。
【0071】
このように、
図9(d)〜
図9(f)に示す第1変形例は、第1薄層31に罫線41を設ける代わりに凹部55を設けた点で
図9(a)〜
図9(c)と異なっている。凹部55は、第1薄層31上の各接点導通部39に対応づけて設けられているが、この種の凹部55は例えば第1薄層31をエンボス加工することで、比較的容易に形成可能である。
【0072】
また、
図9(d)〜
図9(f)に示す第1変形例に係る錠剤管理カード1は、
図6に示したシート状基板30とほぼ同様のものを利用して作製でき、
図9(a)〜
図9(c)に示す錠剤管理カード1からの変更が容易である。
【0073】
一方、
図9(g)〜
図9(i)は錠剤管理カード1の断面構造の第2変形例を示す図である。この第2変形例では、上述した2つの例と異なり、接点導通部39に対応するものが基板30上に形成されておらず、その代わりに、錠剤2のパッケージの取り出し面55を接点導通部39の代わりに利用するものである。錠剤2のパッケージの取り出し面55は、通常はアルミニウム等の導電材料で形成されている。したがって、この取り出し面55を接点導通部39の代わりに利用できる。
【0074】
第2変形例では、
図9(g)に示すように、第1薄層31上に、接点導通部39の代わりに、各錠剤2ごとに2つの接点42が分離して形成されている。そして、これら2つの接点42に対向するように、錠剤2のパッケージの取り出し面55が配置されている。
【0075】
また、服用者が錠剤2の取り出しを開始していないときに、2つの接点42がパッケージの取り出し面55に接触しないように、第1薄層31とパッケージの取り出し面55の間には、第2薄層32が配置されており、この第2薄層32には、錠剤2の位置に合わせて孔部56が形成されている。
【0076】
服用者が錠剤2を押し込むと、
図9(h)に示すように、錠剤2のパッケージの取り出し面55が対応する2つの接点42側に押されて、2つの接点42に接触する。これにより、2つの接点42間が導通して、これら接点42に接続された導電パターン48に電流が流れる。
【0077】
服用者がさらに錠剤2を押し込むと、
図9(i)に示すように、第1薄層31の切れ目40から内側部分と錠剤2の取り出し面55がともに破断されて、導通パターン48には電流は流れなくなる。
【0078】
図9(g)〜
図9(i)に示す第2変形例は、前述した2つの例と異なり、2つの接点42に接触する接点導通部39の代わりに、錠剤2のパッケージの取り出し面55を用いるため、構造をより簡略化できるが、錠剤管理カード1の展開図は
図6とは異なったものになる。
【0079】
なお、第2変形例を採用する場合は、錠剤2のパッケージの取り出し面55が導電性に優れていることが必須要件となる。パッケージによっては、その取り出し面55に錠剤2の名称等を印刷している場合があり、印刷に用いるインキによっては、導電性が損なわれるおそれがある。よって、このような場合は、第2変形例を採用するのは好ましくない。
【0080】
このように、本実施形態では、錠剤2を取り出す前と錠剤2を取り出した後では、各錠剤2に対応する2つの接点42に接続された導電パターン48に電流が流れないようにし、錠剤2を取り出すために錠剤2を押し込んだときだけ、一時的に導電パターン48に電流が流れるようにするため、この電流を通信モジュール10で検知することで、錠剤2を取り出したことを正しく把握できる。
【0081】
本実施形態によれば、従来のように各錠剤2に対応した導電パターン48に定期的に電流を流して錠剤2の取り出しをチェックする必要がなくなり、従来に比べて大幅に消費電力を削減できる。本実施形態のような錠剤管理カード1は、電池の交換が困難であるため、消費電力を削減して電池の寿命を延ばせるという効果は実用上非常に大きい。
【0082】
また、本実施形態における導電パターン48は、各錠剤2ごとに別個に設けられて、いずれも通信モジュール10に接続されているため、どの導電パターン48に電流が流れたかによって、取り出された錠剤2の位置情報と時刻情報とを自動的に通信モジュール10に記憶できる。
【0083】
なお、上述した実施形態では、取り出した錠剤2の位置情報と時刻情報とを記憶する機能の他に、スタートボタンB1、取消ボタンB2およびその他のボタンを服用者に操作させて、その操作情報を記憶する機能を設ける例を説明したが、これらボタンは必ずしも必須ではなく、単に錠剤2の収納と、取り出した錠剤2の位置情報と時刻情報とを記憶する機能だけを備えていてもよい。
【0084】
また、上述した本実施形態の機能に、種々の追加の機能を付加してもよい。例えば、服用者が決められた間隔で錠剤2を服用するように、錠剤2を服用すべき時間になると、通信モジュール10にてアラーム音を鳴動させてもよい。あるいは、人工合成の音声にて錠剤2を服用すべき時間であることを知らせてもよい。
【0085】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。