(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記左脚の第1の歩行フェーズの50%の時点は、前記右脚の第1の歩行フェーズの0%の時点に対応し、前記左脚の第2の歩行フェーズの0%の時点は、前記右脚の第1の歩行フェーズの50%の時点に対応する、
請求項1または2に記載のアシスト装置。
前記左脚の第1の歩行フェーズの50%の時点は、前記右脚の第1の歩行フェーズの0%の時点に対応し、前記左脚の第2の歩行フェーズの0%の時点は、前記右脚の第1の歩行フェーズの50%の時点に対応する、
請求項9または10に記載のアシスト方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の基礎となる知見]
本開示に関わる発明者ら、つまり、本発明者らは、「背景技術」で挙げた特許文献1及2に記載される技術を検討し、ユーザの歩行を支援つまりアシストする技術を検討した。特許文献1は、現在地から目的地までの最適な歩行経路を決定し、表示画面を介して当該歩行経路をユーザに提示する技術を開示している。特許文献2は、作動部材を介してアクチュエータの動力をユーザに付与することによって、ユーザの動作を補助する技術を開示している。そこで、本発明者らは、例えば、経路に沿ってユーザが歩行し進行することができるように、目的とする方向にユーザを進行させるためのアシスト力をユーザに付与するアシスト装置等を検討した。
【0012】
具体的には、本発明者らは、ユーザが装着するアシスト装置を検討した。そして、本発明者らは、ワイヤを介して、モータによる力をユーザに与えることで、直感的に歩行方向を誘導するアシスト装置を検討した。本発明者らは、このアシスト装置を、ユーザの左右の脚それぞれの股関節に対して、延びる方向が互いに交差するワイヤのペアを複数備える構成とした。さらに、本発明者らは、アシスト装置において、現在地から目的地までの経路に応じて、ワイヤを引っ張る方法を変化させることで、直進方向だけでなく、左右方向にユーザが方向転換する動作もアシストする構成を検討した。さらに、本発明者らは、ユーザによって曲がるための能力が異なるため、アシスト装置において、ユーザに合わせてワイヤを引っ張る力を変更することで、各ユーザに適合した歩行方向の誘導を直感的に行うことを可能にする構成を検討した。
【0013】
例えば、特許文献1及び2には、ワイヤを用いてアシスト力を付与することによって、ユーザの歩行方向を誘導する装置は開示されていない。本発明者らは、従来技術によると、ユーザが右方向に回転(旋回とも呼ぶ)する移動、又は、左方向に回転する移動をアシストする場合、ワイヤを用いて、ユーザにどのようなアシスト力を与えることでユーザの歩行方向を誘導できるのかが分からないという見解に至った。アシストのための具体的なパラメータとして、アシストのタイミング、駆動させるワイヤの選択方法、選択したワイヤの張力の大きさ等が考えられるが、歩行方向を誘導するための最適なパラメータは、未だ分かっていないため、これらのパラメータを特定することは新しい技術であるといえると、本発明者らは認識した。そこで、本発明者らは、目的とする方向に進行するようにユーザの動作にアシスト力を付与するアシスト装置等として、以下のようなアシスト装置等を考案した。
【0014】
本開示の一態様に係るアシスト装置は、ユーザの上半身に装着される上半身ベルトと、前記ユーザの左膝に装着される第1の膝ベルトと、前記ユーザの右膝に装着される第2の膝ベルトと、前記ユーザの前部において、前記上半身ベルト及び前記第1の膝ベルトを接続する第1のワイヤと、前記上半身ベルト及び前記第1の膝ベルトを接続し、且つ前記ユーザの前部において、前記第1のワイヤが延びる方向と交差する方向に延びる第2のワイヤと、前記ユーザの後部において、前記上半身ベルト及び前記第1の膝ベルトを接続する第3のワイヤと、前記上半身ベルト及び前記第1の膝ベルトを接続し、且つ前記ユーザの後部において、前記第3のワイヤが延びる方向と交差する方向に延びる第4のワイヤと、前記ユーザの後部において、前記上半身ベルト及び前記第2の膝ベルトを接続する第5のワイヤと、前記上半身ベルト及び前記第2の膝ベルトを接続し、且つ前記ユーザの後部において、前記第5のワイヤが延びる方向と交差する方向に延びる第6のワイヤと、前記ユーザの前部において、前記上半身ベルト及び前記第2の膝ベルトを接続する第7のワイヤと、前記上半身ベルト及び前記第2の膝ベルトを接続し、且つ前記ユーザの前部において、前記第7のワイヤが延びる方向と交差する方向に延びる第8のワイヤと、モータと備え、前記第1のワイヤ及び前記第4のワイヤは、前記第1の膝ベルトから上方に且つ前記ユーザの右方に向かって延び、前記第2のワイヤ及び前記第3のワイヤは、前記第1の膝ベルトから上方に且つ前記ユーザの左方に向かって延び、前記第5のワイヤ及び前記第8のワイヤは、前記第2の膝ベルトから上方に且つ前記ユーザの左方に向かって延び、前記第6のワイヤ及び前記第7のワイヤは、前記第2の膝ベルトから上方に且つ前記ユーザの右方に向かって延び、前記ユーザの左方向に回転する移動をアシストするとき、前記モータは、前記ユーザの左脚の第1の歩行フェーズの65%以上100%以下の期間、及び前記左脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間において、前記第2のワイヤ及び前記第4のワイヤに第1の閾値以上の張力を発生させ、前記ユーザの右脚の第1の歩行フェーズの65%以上100%以下の期間、及び前記右脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間において、前記第6のワイヤ及び前記第8のワイヤに前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記左脚の前記第2の歩行フェーズは、前記左脚の前記第1の歩行フェーズの次の歩行フェーズであり、前記右脚の前記第2の歩行フェーズは、前記右脚の前記第1の歩行フェーズの次の歩行フェーズである。
【0015】
上記態様において、左脚の第1の歩行フェーズの65%以上100%以下の期間は、左脚の遊脚期に含まれ、左脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間は、左脚の立脚期に含まれる。また、右脚の第1の歩行フェーズの65%以上100%以下の期間は、右脚の遊脚期に含まれ、右脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間は、右脚の立脚期に含まれる。また、第2のワイヤ及び第4のワイヤに発生する張力は、左脚に外旋動作させるように作用する。第6のワイヤ及び第8のワイヤに発生する張力は、右脚に内旋動作させるように作用する。アシスト装置は、遊脚期の左脚及び右脚をアシストすることによって、左脚及び右脚をそれぞれ左方向へ容易に外旋及び内旋させることができる。さらに、アシスト装置は、左脚及び右脚の着地直後も左脚及び右脚への上記アシストを継続するため、着地後の左足及び右足を左方向へ向けることができる。よって、アシスト装置のアシストを受けるユーザは、左方向に回転する移動を容易に且つ確実に行うことができる。なお、第1の閾値は、ユーザが、ワイヤに発生した張力により、左方向に回転する移動のための脚の外旋又は内旋動作が促されていると認知できるような張力であってもよく、例えば、40N(ニュートン)であってもよい。
【0016】
本開示の一態様に係るアシスト装置において、前記ユーザの右方向に回転する移動をアシストするとき、前記モータは、前記左脚の第1の歩行フェーズの65%以上100%以下の期間、及び前記左脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間において、前記第1のワイヤ及び前記第3のワイヤに第1の閾値以上の張力を発生させ、前記右脚の第1の歩行フェーズの65%以上100%以下の期間、及び前記右脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間において、前記第5のワイヤ及び前記第7のワイヤに前記第1の閾値以上の張力を発生させてもよい。
【0017】
上記態様において、第1のワイヤ及び第3のワイヤに発生する張力は、左脚に内旋動作させるように作用する。第5のワイヤ及び第7のワイヤに発生する張力は、右脚に外旋動作させるように作用する。よって、アシスト装置は、ユーザの左方向に回転する移動と同様に、右方向に回転する移動を容易に且つ確実に行うことができるように、ユーザをアシストすることができる。
【0018】
本開示の一態様に係るアシスト装置において、前記左脚の第1の歩行フェーズの50%の時点は、前記右脚の第1の歩行フェーズの0%の時点に対応し、前記左脚の第2の歩行フェーズの0%の時点は、前記右脚の第1の歩行フェーズの50%の時点に対応してもよい。
【0019】
本開示の一態様に係るアシスト装置は、さらに、制御回路及びメモリを備え、前記メモリは、前記モータを制御するためのプログラムを記録し、前記制御回路は、前記プログラムに基づいて、前記モータを制御してもよい。
【0020】
本開示の一態様に係るアシスト装置において、前記ユーザの左方向に回転する移動をアシストするとき、前記モータは、前記左脚の第1の歩行フェーズの65%以上90%以下の期間において、前記第2のワイヤ及び前記第4のワイヤに、第2の閾値以上の張力を発生させ、前記左脚の第1の歩行フェーズの90%超100%以下の期間、及び前記左脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間において、前記第2のワイヤ及び前記第4のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させ、前記第2の閾値は、前記第1の閾値よりも大きく、前記モータは、前記右脚の第1の歩行フェーズの65%以上90%以下の期間において、前記第6のワイヤ及び前記第8のワイヤに、前記第2の閾値以上の張力を発生させ、前記右脚の第1の歩行フェーズの90%超100%以下の期間、及び前記右脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間において、前記第6のワイヤ及び前記第8のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させてもよい。
【0021】
上記態様によると、アシスト装置は、遊脚期の末期及び立脚期において、ワイヤに発生させる張力を減少させる。これにより、ユーザは、左方向に回転する移動の際、脚を着地する直前及び直後において、アシスト装置のアシストに逆らって脚を移動させやすくなる。例えば、ユーザが、障害物を避ける、進行する人又は物との接触を避ける、飛来物を避ける等の動作をすることによって、歩行中にユーザの重心が予定外の変化をした場合でも、ユーザは、遊脚期の脚を安定した状態で着地させることができる。よって、アシスト装置は、ユーザの予定外の動作の変化に関わらず、ユーザの安定した動作を可能にする。なお、第2の閾値は、ユーザが、ワイヤに発生した張力により、脚が外旋又は内旋動作させられていると認知できるような張力であってもよい。このような第2の閾値は、ユーザが、アシスト装置によるアシストを受けつつ歩行する際に、ユーザに受け入れ可能な張力の最大値に対する割合を用いて決定されてもよい。例えば、第2の閾値は、ユーザに受け入れ可能な張力の最大値の一例100Nに対する80%の割合である80Nであってもよい。
【0022】
本開示の一態様に係るアシスト装置において、前記ユーザの右方向に回転する移動をアシストするとき、前記モータは、前記左脚の第1の歩行フェーズの65%以上90%以下の期間において、前記第1のワイヤ及び前記第3のワイヤに、第2の閾値以上の張力を発生させ、前記左脚の第1の歩行フェーズの90%超100%以下の期間、及び前記左脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間において、前記第1のワイヤ及び前記第3のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させ、前記第2の閾値は、前記第1の閾値よりも大きく、前記モータは、前記右脚の第1の歩行フェーズの65%以上90%以下の期間において、前記第5のワイヤ及び前記第7のワイヤに、前記第2の閾値以上の張力を発生させ、前記右脚の第1の歩行フェーズの90%超100%以下の期間、及び前記右脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間において、前記第5のワイヤ及び前記第7のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させてもよい。
【0023】
上記態様によると、アシスト装置は、ユーザの左方向に回転する移動と同様に、右方向に回転する移動においても、ユーザの予定外の動作の変化に関わらず、ユーザの安定した動作を可能にする。
【0024】
本開示の一態様に係るアシスト装置において、前記ユーザの左方向に回転する移動をアシストするとき、前記モータは、前記左脚の第1の歩行フェーズの65%以上80%未満の期間において、前記第2のワイヤ及び前記第4のワイヤに、前記第1の閾値以上第2の閾値未満の張力を発生させ、前記左脚の第1の歩行フェーズの80%以上90%以下の期間において、前記第2のワイヤ及び前記第4のワイヤに、前記第2の閾値以上の張力を発生させ、前記左脚の第1の歩行フェーズの90%超100%以下の期間、及び前記左脚の第2の歩行フェーズの0%以上10%以下の期間において、前記第2のワイヤ及び前記第4のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させ、前記第2の閾値は、前記第1の閾値よりも大きく、前記モータは、前記右脚の第1の歩行フェーズの65%以上80%未満の期間において、前記第6のワイヤ及び前記第8のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させ、前記右脚の第1の歩行フェーズの80%以上90%以下の期間において、前記第6のワイヤ及び前記第8のワイヤに、前記第2の閾値以上の張力を発生させ、前記右脚の第1の歩行フェーズの90%超100%以下の期間、及び前記右脚の第2の歩行フェーズの0%以上10%以下の期間において、前記第6のワイヤ及び前記第8のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させてもよい。
【0025】
上記態様によると、アシスト装置は、遊脚期の末期及び立脚期において、ワイヤに発生させる張力を減少させるだけでなく、ワイヤへの張力の発生開始直後も、ワイヤに発生させる張力を小さくする。これにより、第2の閾値以上の張力によるアシストをユーザが感じる期間が短くなる。このような場合、ユーザは、アシスト装置によって脚が動作させられているような感覚を抱かず、当該脚が向くべき方向が指し示めされている感覚を受け得る。よって、アシスト装置による強いアシストを好まないユーザに対しても、アシスト装置は、的確に且つ快適にアシストすることができる。また、アシスト装置を受けているユーザの動作の自由度が向上する。
【0026】
本開示の一態様に係るアシスト装置において、前記ユーザの右方向に回転する移動をアシストするとき、前記モータは、前記左脚の第1の歩行フェーズの65%以上80%未満の期間において、前記第1のワイヤ及び前記第3のワイヤに、前記第1の閾値以上第2の閾値未満の張力を発生させ、前記左脚の第1の歩行フェーズの80%以上90%以下の期間において、前記第1のワイヤ及び前記第3のワイヤに、前記第2の閾値以上の張力を発生させ、前記左脚の第1の歩行フェーズの90%超100%以下の期間、及び前記左脚の第2の歩行フェーズの0%以上10%以下の期間において、前記第1のワイヤ及び前記第3のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させ、前記第2の閾値は、前記第1の閾値よりも大きく、前記モータは、前記右脚の第1の歩行フェーズの65%以上80%未満の期間において、前記第5のワイヤ及び前記第7のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させ、前記右脚の第1の歩行フェーズの80%以上90%以下の期間において、前記第5のワイヤ及び前記第7のワイヤに、前記第2の閾値以上の張力を発生させ、前記右脚の第1の歩行フェーズの90%超100%以下の期間、及び前記右脚の第2の歩行フェーズの0%以上10%以下の期間において、前記第5のワイヤ及び前記第7のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させてもよい。
【0027】
上記態様によると、アシスト装置は、ユーザの左方向に回転する移動と同様に、右方向に回転する移動においても、アシスト装置による強いアシストを好まないユーザに対して、的確に且つ快適にアシストすることができる。
【0028】
本開示の一態様に係るアシスト方法は、ユーザに取り付けられた複数のワイヤを用いて、前記ユーザの移動をアシストするアシスト方法であって、前記複数のワイヤは、前記ユーザの上半身に装着される上半身ベルトと、前記ユーザの左膝に装着される第1の膝ベルトとを接続する第1〜第4のワイヤと、前記上半身ベルトと、前記ユーザの右膝に装着される第2の膝ベルトとを接続する第5〜第8のワイヤとを含み、前記第1のワイヤは、前記ユーザの前部において、前記第1の膝ベルトから上方に且つ前記ユーザの右方に向かって延び、前記第2のワイヤは、前記ユーザの前部において、前記第1の膝ベルトから上方に且つ前記ユーザの左方に向かって延び、且つ前記第1のワイヤが延びる方向と交差する方向に延び、前記第3のワイヤは、前記ユーザの後部において、前記第1の膝ベルトから上方に且つ前記ユーザの左方に向かって延び、前記第4のワイヤは、前記ユーザの後部において、前記第1の膝ベルトから上方に且つ前記ユーザの右方に向かって延び、且つ前記第3のワイヤが延びる方向と交差する方向に延び、前記第5のワイヤは、前記ユーザの後部において、前記第2の膝ベルトから上方に且つ前記ユーザの左方に向かって延び、前記第6のワイヤは、前記ユーザの後部において、前記第2の膝ベルトから上方に且つ前記ユーザの右方に向かって延び、且つ前記第5のワイヤが延びる方向と交差する方向に延び、前記第7のワイヤは、前記ユーザの前部において、前記第2の膝ベルトから上方に且つ前記ユーザの右方に向かって延び、前記第8のワイヤは、前記ユーザの前部において、前記第2の膝ベルトから上方に且つ前記ユーザの左方に向かって延び、且つ前記第7のワイヤが延びる方向と交差する方向に延び、前記ユーザの左方向に回転する移動をアシストするとき、前記ユーザの左脚の第1の歩行フェーズの65%以上100%以下の期間、及び前記左脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間において、前記第2のワイヤ及び前記第4のワイヤに第1の閾値以上の張力を発生させ、前記ユーザの右脚の第1の歩行フェーズの65%以上100%以下の期間、及び前記右脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間において、前記第6のワイヤ及び前記第8のワイヤに前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記左脚の前記第2の歩行フェーズは、前記左脚の前記第1の歩行フェーズの次の歩行フェーズであり、前記右脚の前記第2の歩行フェーズは、前記右脚の前記第1の歩行フェーズの次の歩行フェーズであり、前記第1〜第8のワイヤの張力は、少なくとも1つの制御回路が制御するモータによって調節される。上記態様によると、本開示の一態様に係るアシスト装置と同様の効果が得られる。
【0029】
本開示の一態様に係るアシスト方法において、前記ユーザの右方向に回転する移動をアシストするとき、前記左脚の第1の歩行フェーズの65%以上100%以下の期間、及び前記左脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間において、前記第1のワイヤ及び前記第3のワイヤに第1の閾値以上の張力を発生させ、前記右脚の第1の歩行フェーズの65%以上100%以下の期間、及び前記右脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間において、前記第5のワイヤ及び前記第7のワイヤに前記第1の閾値以上の張力を発生させてもよい。
【0030】
本開示の一態様に係るアシスト方法において、前記左脚の第1の歩行フェーズの50%の時点は、前記右脚の第1の歩行フェーズの0%の時点に対応し、前記左脚の第2の歩行フェーズの0%の時点は、前記右脚の第1の歩行フェーズの50%の時点に対応してもよい。
【0031】
本開示の一態様に係るアシスト方法において、前記ユーザの左方向に回転する移動をアシストするとき、前記左脚に関して、前記左脚の第1の歩行フェーズの65%以上90%以下の期間において、前記第2のワイヤ及び前記第4のワイヤに、第2の閾値以上の張力を発生させ、前記左脚の第1の歩行フェーズの90%超100%以下の期間、及び前記左脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間において、前記第2のワイヤ及び前記第4のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させ、ここで、前記第2の閾値は、前記第1の閾値よりも大きく、前記右脚に関して、前記右脚の第1の歩行フェーズの65%以上90%以下の期間において、前記第6のワイヤ及び前記第8のワイヤに、前記第2の閾値以上の張力を発生させ、前記右脚の第1の歩行フェーズの90%超100%以下の期間、及び前記右脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間において、前記第6のワイヤ及び前記第8のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させてもよい。
【0032】
本開示の一態様に係るアシスト方法において、前記ユーザの右方向に回転する移動をアシストするとき、前記左脚に関して、前記左脚の第1の歩行フェーズの65%以上90%以下の期間において、前記第1のワイヤ及び前記第3のワイヤに、第2の閾値以上の張力を発生させ、前記左脚の第1の歩行フェーズの90%超100%以下の期間、及び前記左脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間において、前記第1のワイヤ及び前記第3のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させ、ここで、前記第2の閾値は、前記第1の閾値よりも大きく、前記右脚に関して、前記右脚の第1の歩行フェーズの65%以上90%以下の期間において、前記第5のワイヤ及び前記第7のワイヤに、前記第2の閾値以上の張力を発生させ、前記右脚の第1の歩行フェーズの90%超100%以下の期間、及び前記右脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間において、前記第5のワイヤ及び前記第7のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させてもよい。
【0033】
本開示の一態様に係るアシスト方法において、前記ユーザの左方向に回転する移動をアシストするとき、前記左脚に関して、前記左脚の第1の歩行フェーズの65%以上80%未満の期間において、前記第2のワイヤ及び前記第4のワイヤに、前記第1の閾値以上第2の閾値未満の張力を発生させ、前記左脚の第1の歩行フェーズの80%以上90%以下の期間において、前記第2のワイヤ及び前記第4のワイヤに、前記第2の閾値以上の張力を発生させ、前記左脚の第1の歩行フェーズの90%超100%以下の期間、及び前記左脚の第2の歩行フェーズの0%以上10%以下の期間において、前記第2のワイヤ及び前記第4のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させ、ここで、前記第2の閾値は、前記第1の閾値よりも大きく、前記右脚に関して、前記右脚の第1の歩行フェーズの65%以上80%未満の期間において、前記第6のワイヤ及び前記第8のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させ、前記右脚の第1の歩行フェーズの80%以上90%以下の期間において、前記第6のワイヤ及び前記第8のワイヤに、前記第2の閾値以上の張力を発生させ、前記右脚の第1の歩行フェーズの90%超100%以下の期間、及び前記右脚の第2の歩行フェーズの0%以上10%以下の期間において、前記第6のワイヤ及び前記第8のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させてもよい。
【0034】
本開示の一態様に係るアシスト方法において、前記ユーザの右方向に回転する移動をアシストするとき、前記左脚に関して、前記左脚の第1の歩行フェーズの65%以上80%未満の期間において、前記第1のワイヤ及び前記第3のワイヤに、前記第1の閾値以上第2の閾値未満の張力を発生させ、前記左脚の第1の歩行フェーズの80%以上90%以下の期間において、前記第1のワイヤ及び前記第3のワイヤに、前記第2の閾値以上の張力を発生させ、前記左脚の第1の歩行フェーズの90%超100%以下の期間、及び前記左脚の第2の歩行フェーズの0%以上10%以下の期間において、前記第1のワイヤ及び前記第3のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させ、ここで、前記第2の閾値は、前記第1の閾値よりも大きく、前記右脚に関して、前記右脚の第1の歩行フェーズの65%以上80%未満の期間において、前記第5のワイヤ及び前記第7のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させ、前記右脚の第1の歩行フェーズの80%以上90%以下の期間において、前記第5のワイヤ及び前記第7のワイヤに、前記第2の閾値以上の張力を発生させ、前記右脚の第1の歩行フェーズの90%超100%以下の期間、及び前記右脚の第2の歩行フェーズの0%以上10%以下の期間において、前記第5のワイヤ及び前記第7のワイヤに、前記第1の閾値以上前記第2の閾値未満の張力を発生させてもよい。
【0035】
本開示の別の一態様に係るアシスト装置は、ユーザの上半身に装着される上半身ベルトと、前記ユーザの左膝に装着される第1の膝ベルトと、前記ユーザの右膝に装着される第2の膝ベルトと、前記ユーザの前部において、前記上半身ベルト及び前記第1の膝ベルトを接続する第1のワイヤと、前記上半身ベルト及び前記第1の膝ベルトを接続し、且つ前記ユーザの前部において、前記第1のワイヤが延びる方向と交差する方向に延びる第2のワイヤと、前記ユーザの後部において、前記上半身ベルト及び前記第1の膝ベルトを接続する第3のワイヤと、前記上半身ベルト及び前記第1の膝ベルトを接続し、且つ前記ユーザの後部において、前記第3のワイヤが延びる方向と交差する方向に延びる第4のワイヤと、前記ユーザの後部において、前記上半身ベルト及び前記第2の膝ベルトを接続する第5のワイヤと、前記上半身ベルト及び前記第2の膝ベルトを接続し、且つ前記ユーザの後部において、前記第5のワイヤが延びる方向と交差する方向に延びる第6のワイヤと、前記ユーザの前部において、前記上半身ベルト及び前記第2の膝ベルトを接続する第7のワイヤと、前記上半身ベルト及び前記第2の膝ベルトを接続し、且つ前記ユーザの前部において、前記第7のワイヤが延びる方向と交差する方向に延びる第8のワイヤと、モータと、前記ユーザの進行方向を決定する歩行方向決定部とを備え、前記モータは、前記ユーザの歩行方向が右向きである場合に、前記第1のワイヤ及び前記第3のワイヤ、又は、前記第5のワイヤ及び前記第7のワイヤに、異なるタイミングで第1の閾値以上の張力を加え、前記モータは、前記ユーザの歩行方向が左向きである場合に、前記第2のワイヤ及び前記第4のワイヤ、又は、前記第6のワイヤ及び前記第8のワイヤに、異なるタイミングで第1の閾値以上の張力を加える。上記態様によれば、アシスト装置は、ユーザが目的とする方向に進行するようにユーザの動作にアシスト力を付与することができる。
【0036】
本開示の別の一態様に係るアシスト装置において、前記歩行方向決定部は、前記ユーザの右又は左の歩行方向と逆方向の脚において、かかとが接地するタイミングからつま先が接地するタイミングまでの時間区間で、前記逆方向の脚を内旋方向に回転させるように前記ワイヤに張力を加えてもよい。上記態様によれば、アシスト装置からアシストを受けるユーザは、自身が進む方向に、当該方向と逆方向の脚の足先を向けて歩行するため、当該方向へ方向転換をすることができる。
【0037】
本開示の別の一態様に係るアシスト装置において、前記モータは、前記ユーザの右又は左の歩行方向と同方向の脚において、かかと接地を0%とした歩行フェーズにおける90%以上100%未満のタイミングで、前記同方向の脚を外旋方向に回転させるように前記ワイヤに張力を加えてもよい。上記態様によれば、アシスト装置からアシストを受けるユーザは、自身が進む方向に、当該方向と同方向の脚の足先を向けて歩行するため、当該方向へ方向転換をすることができる。
【0038】
本開示の別の一態様に係るアシスト装置は、前記上半身ベルトに加速度センサ、ジャイロセンサ及び地磁気センサを備え、前記歩行方向決定部は、前記加速度センサ、前記ジャイロセンサ及び前記地磁気センサから、ユーザが方向転換する際の歩行軌跡の曲率を算出し、前記曲率の算出位置で前記ワイヤに加えた張力を前記曲率によって評価してもよい。上記態様によれば、歩行方向決定部は、上記評価によって、ユーザが方向転換できる曲率とワイヤの張力のとの関係を求めることができる。よって、歩行方向決定部は、個々のユーザの方向転換角度及びワイヤ張力の関係に基づき、個々のユーザに適切な歩行経路を算出することができる。
【0039】
本開示の別の一態様に係るアシスト装置において、前記歩行方向決定部は、前記曲率の変化が緩やかになる張力を、前記ユーザの歩行方向誘導におけるワイヤ張力として決定してもよい。上記態様によれば、曲率の変化が緩やかになる張力の領域では、ワイヤの張力を変化させても、ユーザが曲がることができる方向転換角度が変化しない。よって、このような張力の領域の中で、小さい張力を、ユーザのアシストのためにワイヤに加える張力に決定することによって、アシスト装置の省エネルギー化が可能になる。
【0040】
本開示の別の一態様に係るアシスト装置において、前記歩行方向決定部は、方向転換が必要な場所での方向転換角度と、前記場所までの歩数とから、前記ユーザが進行する経路を設定してもよい。
【0041】
なお、上記の包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能な記録ディスク等の記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、例えばCD−ROM等の不揮発性の記録媒体を含む。
【0042】
[実施の形態]
以下、本開示の実施の形態に係るアシスト装置100等について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ(工程)、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、以下の実施の形態の説明において、略平行、略直交のような「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、略平行とは、完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行である、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。他の「略」を伴った表現についても同様である。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。さらに、各図において、実質的に同一の構成要素に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
【0043】
本実施の形態において、アシスト装置100を体に装着したユーザが目的地を選択すると、アシスト装置100が、目的地への経路上でのユーザが曲がるべき方向等を判定し、当該経路に沿ってユーザが歩行する支援を行うものとして、アシスト装置100を説明する。具体的には、曲がるべき方向へユーザが曲がるために、ユーザの身体へ回転動作(旋回動作とも呼ぶ)を能動的に支援するものとして、実施の形態に係るアシスト装置100を説明する。本実施の形態において、能動的支援とは、ユーザが進行方向を変更するために回転動作を行っているときに身体に必要な回転力を補助することだけでなく、回転動作を起こすための力を付与すること、及び、所望の方向へのユーザの身体の回転量を物理的に制御すること、つまり、ユーザの身体の向きを物理的に制御することを含み得る。本明細書において、アシスト装置100がユーザをアシストすることは、ユーザの動作を能動的に支援すること、及び、ユーザの動作を補助的に支援することのいずれをも含む。
【0044】
[1,アシスト装置の構成]
図1〜
図6を参照して、実施の形態に係るアシスト装置100を説明する。なお、
図1は、ユーザに装着されたアシスト装置100を斜め前方から見た斜視図である。
図2は、
図1のアシスト装置100及びユーザ1の正面図である。
図3は、
図1のアシスト装置100及びユーザ1の背面図である。
図4は、
図1のアシスト装置100を拡大した斜視図である。
図5は、実施の形態に係るアシスト装置100の機能的な構成を示すブロック図である。
図6は、
図4のアシスト装置100の各構成要素の配置を模式的に示す図である。
【0045】
図1〜
図5に示されるように、アシスト装置100は、ユーザ1の上半身に装着される上半身ベルト111と、ユーザ1の左右の膝近傍に装着される膝ベルト112a及び112bと、上半身ベルト111と膝ベルト112a及び112bとを繋ぐ複数のワイヤ110とを備える。さらに、アシスト装置100は、複数のワイヤ110のそれぞれに繋がれた複数のモータ114と、複数のワイヤ110それぞれに設けられた力センサ(force sensor)115と、複数のモータ114の動作を制御する制御部120とを備えている。また、アシスト装置100は、モータ114等に電力を供給する電源200を備えてもよい。電源200は、例えば、一次電池又は二次電池等であってもよい。
【0046】
上半身ベルト111は、ユーザ1の上半身に装着される。上半身ベルト111の例は、帯状の形状を有する。上半身ベルト111は、端部付近に、固定具を備える。固定具の例は、ベルクロ(登録商標)などの面ファスナ、フック、バックルなどの留め具、又は、テープ(hook and loop fastener、velcro(登録商標) tape)である。例えば、上半身ベルト111は、ユーザ1の腰部に巻回され、固定具により巻回された状態が維持されることにより、ユーザ1の腰に装着される。固定具の固定位置を調節することによって、巻回された上半身ベルト111の内径が変化する。これにより、上半身ベルト111の長さが調整できるため、腰部の周囲の長さが異なる様々なユーザ1が装着可能である。上半身ベルト111の材料の例は、非伸縮性の材料である。これにより、上半身ベルト111は、複数のワイヤ110により引っ張られても変形しにくい。ここで、「上半身」とは、ユーザの身体の肩から腰までの領域を含む。
図1〜
図5に示す上半身ベルト111は、ユーザ1の腰に装着される腰ベルトの構成を有しているが、ユーザ1の腰に加えて、又は、ユーザ1の腰とは別に、ユーザ1の肩及び/又は胸部等に装着される構成であってもよい。
【0047】
なお、上半身ベルト111は、筒状の形状を有していてもよく、この場合、筒状の形状の周長はユーザ1の腰部の周囲の長さよりも長い。上半身ベルト111は、上半身ベルト111の長さを、ユーザ1の腰の周囲の長さに調整するための調整機構を有する。調整機構は、例えば、面ファスナであり、面ファスナのフック面を有する部位が筒状の外周に当該外周から分岐するように配置され、筒状の外周面に面ファスナのループ面が配置される構成により実現されてもよい。つまり、面ファスナの部分で上半身ベルト111が折り返され、折り返し量に応じて、上半身ベルト111が形成する筒の内径が変化する。
【0048】
膝ベルト112aは、ユーザ1の左脚に装着され、膝ベルト112bは、ユーザ1の右脚に装着される。膝ベルト112a及び112bはそれぞれ、例えば、帯状の形状を有しており、端部付近に、固定具を備える。固定具の例は、ベルクロ(登録商標)などの面ファスナ、フック、バックルなどの留め具、又はテープである。膝ベルト112a及び112bはそれぞれ、ユーザの大腿部、又は膝上に装着される。例えば、膝ベルト112a及び112bは、ユーザ1の大腿部等に巻回され、固定具により巻回された状態が維持されることにより、ユーザ1の大腿部等に装着される。固定具の固定位置を調節することによって、巻回された膝ベルト112a及び112bの内径が変化する。これにより、膝ベルト112a及び112bの長さが調整できるため、脚の周囲の長さが異なる様々なユーザ1が装着可能である。膝ベルト112a及び112bは、股関節に装着されなくてもよい。人間の大腿部は、膝から尻にかけて、次第に太くなるという特徴がある。そのため、大腿部の中でも膝上に膝ベルト112a及び112bを装着することで、膝ベルト112a及び112bは、きつく締まっている場合、ワイヤ110から引っ張り力を受けてもその滑りが小さくなる。また、膝ベルト112a及び112bの材料の例は、非伸縮性の材料である。これにより、膝ベルト112a及び112bは、複数のワイヤ110により引っ張られても変形しにくい。ここで、膝ベルト112aは、第1の膝ベルトの一例であり、膝ベルト112bは、第2の膝ベルトの一例である。
【0049】
なお、膝ベルト112a及び112bは、筒状の形状を有していてもよく、この場合、筒状の形状の周長はユーザの大腿部の周囲の長さよりも長い。膝ベルト112a及び112bは、膝ベルト112a及び112bの長さを、ユーザ1の大腿部等の周囲の長さに調整するための調整機構を有する。調整機構は、例えば、面ファスナであり、面ファスナのフック面を有する部位が筒状の外周に当該外周から分岐するように配置され、筒状の外周面に面ファスナのループ面が配置される構成により実現されてもよい。つまり、面ファスナの部分で膝ベルト112a及び112bがそれぞれ折り返され、折り返し量に応じて、膝ベルト112a及び112bが形成する筒の内径が変化する。
【0050】
モータ114は、上半身ベルト111に固定されて配置されている。本実施の形態では、モータ114は、8つのモータ114a1〜114a8で構成されている。例えば、モータ114a1〜114a8は、上半身ベルト111が備える中空の収容部111a1〜111a4内に収容されてもよい。収容部111a1〜111a4は、上半身ベルト111と一体化されていてもよく、上半身ベルト111に着脱可能であってもよい。
図1〜
図4に示すように、複数の収容部111a1〜111a4が設けられてもよい。
図1〜
図4の例では、収容部111a1、111a2、111a3及び111a4はそれぞれ、ユーザ1の前部、左側部、背部及び右側部に配置されている。モータ114a1及び114a8が、収容部111a1に収容され、モータ114a2及び114a3が、収容部111a2に収容され、モータ114a4及び114a5が、収容部111a3に収容され、モータ114a6及び114a7が、収容部111a4に収容されている。そして、モータ114a1〜114a8は、上半身ベルト111と膝ベルト112a及び112bとの間のワイヤ110の長さを変更し、ワイヤ110の張力を調節する。
【0051】
本実施の形態では、モータ114a1〜114a8はそれぞれ、ワイヤ110が巻き付けられるプーリと、プーリを回転させるための駆動軸と、駆動軸を回転駆動する電動モータとを備える。しかしながら、モータ114a1〜114a8はそれぞれ、電動モータを備えてもよい。そして、上半身ベルト111がプーリ及び駆動軸を備えてもよい。この場合、電動モータの回転軸が、プーリの駆動軸と回転駆動力を伝達可能に接続される。なお、モータ114a1〜114a8の代わりに、例えば、リニアアクチュエータ、又は空気圧式若しくは液圧式のピストン等の、上半身ベルト111と膝ベルト112a及び112bとの間のワイヤ110の長さを調節できる装置が用いられてもよい。
【0052】
本実施の形態では、ワイヤ110は、8本のワイヤ110a1〜110a8で構成されている。そして、ワイヤ110a1〜110a8の長さを個別に調節するように、ワイヤ110a1〜110a8それぞれに、モータ114a1〜114a8が接続されている。
【0053】
ワイヤ110a1〜110a4それぞれの一方の端部は、左脚用の膝ベルト112aに固定され、ワイヤ110a1〜110a4それぞれの他方の端部は、モータ114a1〜114a4に接続されている。つまり、ワイヤ110a1〜110a4のそれぞれは、左脚用の膝ベルト112aとモータ114a1〜114a4との間を接続している。ワイヤ110a5〜110a8それぞれの一方の端部は、右脚用の膝ベルト112bに固定され、ワイヤ110a5〜110a8それぞれの他方の端部は、モータ114a5〜114a8に接続されている。つまり、ワイヤ110a5〜110a8のそれぞれは、右脚用の膝ベルト112bとモータ114a5〜114a8との間を接続している。本実施の形態では、モータ114a1〜114a8はそれぞれ、プーリを正回転又は逆回転させることによって、ワイヤ110a1〜110a8それぞれをプーリに巻き付ける又は巻き戻す。上述のようなワイヤ110a1〜110a8は、上半身ベルト111によってユーザ1の腰に固定され、膝ベルト112a及び112bによってユーザの左右の大腿部等に固定される。なお、1つのモータ114a1〜114a8が、2つ以上のワイヤ110a1〜110a8を駆動するように構成されてもよい。
【0054】
また、力センサ115は、8つの力センサ115a1〜115a8で構成されている。力センサ115a1〜115a8はそれぞれ、膝ベルト112a又は112bにおいて、ワイヤ110a1〜110a8それぞれに設けられる。力センサ115a1〜115a8は、上半身ベルト111に配置されてもよい。力センサ115a1〜115a8はそれぞれ、ワイヤ110a1〜110a8の張力を検出し、制御部120に出力する。力センサ115a1〜115a8は、ワイヤ110a1〜110a8の張力を検出できるものであればよく、例えば、ひずみゲージ式力センサ、圧電式力センサ等であってもよい。
【0055】
また、ワイヤ110a1〜110a8は、金属製のワイヤであってもよく、非金属ワイヤであってもよい。非金属ワイヤの例は、繊維ワイヤ又は繊維ベルトである。繊維ワイヤ又は繊維ベルトの材料の例は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、パラ型アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO(ポリ−パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、ポリアリレート繊維又は炭素繊維等である。本実施の形態では、8つの連結ベルト111b1〜111b8が、ワイヤ110a1〜110a8それぞれに沿い且つ上半身ベルト111から膝ベルト112a又は112bにわたって延びるように設けられている。これに限定するものではないが、連結ベルト111b1〜111b8は、上半身ベルト111及び膝ベルト112a又は112bと一体化されており、これらと同様の材料で形成されている。例えば、上半身ベルト111、膝ベルト112a及び112b、並びに、連結ベルト111b1〜111b8は、ユーザ1が装着する1つのアシスト機能付きのスーツを形成し得る。連結ベルト111b1〜111b8はそれぞれ、ワイヤ110a1〜110a8を内部に含み、ワイヤ110a1〜110a8を被覆している。連結ベルト111b1〜111b8をまとめて、連結ベルト111bと記載する場合もある。
【0056】
図2〜
図4及び
図6を参照して、ワイヤ110a1〜110a8の配置構成の詳細を説明する。ワイヤ110a1及び110a2は、ユーザ1の前部で互いに交差する方向に延びるように配置され、具体的には、互いに交差して配置されている。ワイヤ110a3及び110a4は、ユーザ1の背部(後部とも呼ぶ)で互いに交差する方向に延びるように配置され、具体的には、互いに交差して配置されている。ワイヤ110a5及び110a6は、ユーザ1の背部で互いに交差する方向に延びるように配置され、具体的には、互いに交差して配置されている。ワイヤ110a7及び110a8は、ユーザ1の前部で互いに交差する方向に延びるように配置され、具体的には、互いに交差して配置されている。
【0057】
なお、2つのワイヤが互いに交差する方向に延びるとは、2つのワイヤが延びる方向が交差することである。さらに、2つのワイヤの延びる方向が交差するとは、2つのワイヤが延びる方向が平行でないことであり、交点において交差していてもよく、交点を有さずに交差していなくてもよい。よって、2つのワイヤは、実際に、交点において交差していてもよく、交差していなくてもよい。このような互いに交差する方向に延びる2つのワイヤは、ユーザ1の外方からユーザ1を見たときに、
図2〜
図4に示すように交わっていてもよく、交わっていなくてもよい。当該2つのワイヤが交わっていない場合、後述するように、当該2つのワイヤは、例えば、V字状の形状を形成するように延びてもよく、互いから離れて延びてもよい。
【0058】
ここで、ワイヤ110a1〜110a8に対して、ワイヤが取り付けられる左右の脚と、ワイヤの配置位置であるユーザ1の前部又は背部と、上半身ベルト111における当該脚のワイヤの左右の取り付け位置とを表すように名称を付け、各ワイヤを区別する。これらの名称では、「左右の脚−ユーザ1の前後_上半身ベルトの左右取付位置」という順で位置に関する特徴を表している。例えば、名称「RF_right」の場合、右脚(Right)のユーザ1の前部(Front)のワイヤのうちの上半身ベルト上で右側(right)に取り付けられているワイヤということを意味している。名称「LR_left」の場合、左脚(Left)のユーザ1の背部(Rear)のワイヤのうちの上半身ベルト上で左側(left)に取り付けられているワイヤということを意味している。
【0059】
このような要領によって、第一ワイヤ110a1は、「LF_right」とも呼ばれ、第二ワイヤ110a2は、「LF_left」とも呼ばれる。第三ワイヤ110a3は、「LR_left」とも呼ばれ、第四ワイヤ110a4は、「LR_right」とも呼ばれる。第五ワイヤ110a5は、「RR_left」とも呼ばれ、第六ワイヤ110a6は、「RR_right」とも呼ばれる。第七ワイヤ110a7は、「RF_right」とも呼ばれ、第八ワイヤ110a8は、「RF_left」とも呼ばれる。このように、ユーザ1の左右の脚それぞれに、2組のクロスした、つまり交差する方向に延びるワイヤが配置される。ワイヤ110a1〜110a8を個別に引張することによって、左右の脚に様々な方向の力を付与することができる。上述のようなワイヤ110a1〜110a8とそれぞれの名称との関係は、下記の表1のようにまとめられる。
【0061】
また、これに限定するものではないが、本実施の形態では、ユーザ1の背部から前部に向かって見たとき、第一ワイヤ110a1及び第四ワイヤ110a4は、左脚の膝ベルト112aの左半分の領域と接続されており、第二ワイヤ110a2及び第三ワイヤ110a3は、膝ベルト112aの右半分の領域と接続されている。同様に、ユーザ1の背部から前部に向かって見たとき、第六ワイヤ110a6及び第七ワイヤ110a7は、右脚の膝ベルト112bの左半分の領域と接続されており、第五ワイヤ110a5及び第八ワイヤ110a8は、膝ベルト112bの右半分の領域と接続されている。
【0062】
膝ベルト112aにおける左半分の領域及び右半分の領域はそれぞれ、ユーザ1の矢状面(Sagittal plane)に略平行且つ膝ベルト112aを通る境界面に関して、左側の領域及び右側の領域としてもよい。同様に、膝ベルト112bにおける左半分の領域及び右半分の領域はそれぞれ、ユーザ1の矢状面に略平行且つ膝ベルト112bを通る境界面に関して、左側の領域及び右側の領域としてもよい。矢状面は、ユーザ1の身体の正中に対して平行に延び、身体を左右に分ける面である。
【0063】
上記境界面は、膝ベルト112a及び112bの中央付近を通り、膝ベルト112a及び112bそれぞれにおける左半分の領域の面積と右半分の領域の面積とを同一にする面であってもよく、膝ベルト112a及び112bの中央付近を通らない面であってもよい。例えば、後者の場合、境界面は、ユーザ1の脚が外旋又は内旋の動作する場合の中心軸を通る面であってもよい。脚の外旋及び内旋の動作の詳細は、後述する。
【0064】
また、第一ワイヤ110a1及び第四ワイヤ110a4は、膝ベルト112aから上方に且つユーザ1の右方に向かって延びる。具体的には、第一ワイヤ110a1及び第四ワイヤ110a4は、膝ベルト112aから上方に向かって延びつつユーザ1の右方に向かって延び、例えば、膝ベルト112aから右斜め上方に向かって延びる。第二ワイヤ110a2及び第三ワイヤ110a3は、膝ベルト112aから上方に且つユーザ1の左方に向かって延びる。具体的には、第二ワイヤ110a2及び第三ワイヤ110a3は、膝ベルト112aから上方に向かって延びつつユーザ1の左方に向かって延び、例えば、膝ベルト112aから左斜め上方に向かって延びる。第五ワイヤ110a5及び第八ワイヤ110a8は、膝ベルト112bから上方に且つユーザ1の左方に向かって延びる。具体的には、第五ワイヤ110a5及び第八ワイヤ110a8は、膝ベルト112bから上方に向かって延びつつユーザ1の左方に向かって延び、例えば、膝ベルト112bから左斜め上方に向かって延びる。第六ワイヤ110a6及び第七ワイヤ110a7は、膝ベルト112bから上方に且つユーザ1の右方に向かって延びる。具体的には、第六ワイヤ110a6及び第七ワイヤ110a7は、膝ベルト112bから上方に向かって延びつつユーザ1の右方に向かって延び、例えば、膝ベルト112bから右斜め上方に向かって延びる。
【0065】
本実施の形態では、互いに交差する方向に延びる2つのワイヤのペアに関して、第一ワイヤ110a1及び第二ワイヤ110a2がX字状に交差し、第三ワイヤ110a3及び第四ワイヤ110a4がX字状に交差し、第五ワイヤ110a5及び第六ワイヤ110a6がX字状に交差し、第七ワイヤ110a7及び第八ワイヤ110a8がX字状に交差する。しかしながら、ワイヤの配置構成は、これに限定されない。
【0066】
図7に示すように、例えば、第一ワイヤ110a1及び第二ワイヤ110a2が、V字状に配置されてもよい。この場合、第一ワイヤ110a1及び第二ワイヤ110a2は、膝ベルト112aから上方に、末広がりのテーパ形状を形成し得る。さらに、膝ベルト112a上において、第一ワイヤ110a1及び第二ワイヤ110a2は、
図7に示すように互いに接近していてもよく、
図8示すように互いから離れていてもよい。他のワイヤのペアについても同様である。なお、
図7及び
図8は、
図6のアシスト装置100におけるワイヤ110の配置の変形例を示す図である。
【0067】
又は、
図9に示すように、例えば、第一ワイヤ110a1及び第二ワイヤ110a2が、V字形状を上下反対にした形状に配置されてもよい。この場合、第一ワイヤ110a1及び第二ワイヤ110a2は、膝ベルト112aから上方に、先細のテーパ形状を形成し得る。さらに、上半身ベルト111上において、第一ワイヤ110a1及び第二ワイヤ110a2は、
図9に示すように互いに接近していてもよく、
図10に示すように互いから離れていてもよい。他のワイヤのペアについても同様である。なお、
図9及び
図10は、
図6のアシスト装置100におけるワイヤ110の配置の変形例を示す図である。
【0068】
図2〜
図4では、上半身ベルト111上において、第一ワイヤ110a1及び第八ワイヤ110a8の巻き取り部分、つまりプーリが、収容部111a1に集められ、第二ワイヤ110a2及び第三ワイヤ110a3の巻き取り部分が、収容部111a2に集められ、第四ワイヤ110a4及び第五ワイヤ110a5の巻き取り部分が、収容部111a3に集められ、第六ワイヤ110a6及び第七ワイヤ110a7の巻き取り部分が、収容部111a4に集められている。つまり、収容部111a1〜111a4それぞれから延びる2つのワイヤは、V字形状を上下反対にした形状を形成する。
【0069】
しかしながら、上半身ベルト111上でのワイヤ110a1〜110a8の配置は、上記配置に限定されない。例えば、第一ワイヤ110a1及び第八ワイヤ110a8の間、第二ワイヤ110a2及び第三ワイヤ110a3の間、第四ワイヤ110a4及び第五ワイヤ110a5の間、並びに、第六ワイヤ110a6及び第七ワイヤ110a7の間において、2つのワイヤの巻き取り部分は、当該2つのワイヤが交差しないように離れて配置されてもよく、当該2つのワイヤがX字状に交差するように配置されてもよい。
【0070】
また、上半身ベルト111並びに膝ベルト112a及び112bは、モータ114a1〜114a8が引っ張ることによりワイヤ110a1〜110a8に付与する張力を、ユーザ1の左右の脚に伝達する。このような上半身ベルト111並びに膝ベルト112a及び112bは、ワイヤ110a1〜110a8に張力が発生した場合に、張力を効果的に伝達するために、変形しないような剛性を有し、伸長しないような伸縮性を有してもよい。上半身ベルト111並びに膝ベルト112a及び112bを形成する材料の一例は、非伸縮性の材料である。このような上半身ベルト111並びに膝ベルト112a及び112bが、緩みなくユーザ1に装着されユーザ1の身体にフィットしていると、モータ114a1〜114a8の駆動力は、ワイヤ110a1〜110a8を介してユーザ1の脚に効率的に伝達し、ユーザ1の脚の動作を効果的にアシストする。
【0071】
上述のようなアシスト装置100において、例えば、モータ114a1及び114a2が駆動されて、第一ワイヤ110a1及び第二ワイヤ110a2の長さが短くされることで、第一ワイヤ110a1及び第二ワイヤ110a2に作用する張力が大きくなる。その結果、アシスト装置100は、膝と踵との距離を短くする方向に、ユーザ1の脚に力を作用させ、歩行時のユーザ1の足首の動きをアシストする、つまり補助及び誘導することができる。なお、本明細書において、アシストするとは、所定の方向にユーザが動作するために、ユーザの動作自体を補助することと、所定の方向への動作をユーザの身体に強いて身体の動きを誘導することとを含む。
【0072】
また、第一ワイヤ110a1及び第二ワイヤ110a2に対してそれぞれ、独立したモータ114a1及び114a2が、張力を発生させる。例えば、第一ワイヤ110a1及び第二ワイヤ110a2の張力を異なる値に設定することで、アシスト装置100は、ユーザ1の踵の左右の傾きに関するモーメント力を発生させることができ、ユーザ1の歩行時の足首の動きをアシストできる。
【0073】
次いで、
図5を参照して、アシスト装置100の制御部120及びその周辺の構成を説明する。
図5に示すように、アシスト装置100は、制御部120に加え、ユーザ1が進む目的地の位置情報を取得する目的地取得部130と、ユーザ1の現在の位置情報を取得する現在地取得部140と、記憶部150と、位置情報検出部160とを有している。
【0074】
(記憶部150)
記憶部150は、情報を格納することができ、且つ、格納した情報の取り出しを可能にする。記憶部150は、半導体メモリ又はハードディスク等であってもよい。
【0075】
(位置情報検出部160)
位置情報検出部160は、アシスト装置100を装着したユーザ1の位置に関する情報を検出する。ユーザ1の位置に関する情報の例は、ユーザ1の位置、及び位置を特定するための情報を含む。ユーザ1の位置の例は、地図等の地球を基準とする座標に基づく位置、特定のエリア内で設定された座標に基づく位置、及び基準点に対する相対的な位置等を含む。位置を特定するための情報の例は、ユーザ1の向き、進行方向、直線速度、角速度、及び加速度等を含む。上述のような位置を特定するための情報を用いることによって、ユーザ1の移動方向及び移動距離が算出可能であり、それにより、ユーザ1の位置の特定が可能である。
【0076】
位置情報検出部160は、検出結果を、制御部120及び現在地取得部140に出力する。位置情報検出部160は、検出結果をそのまま出力してもよく、検出結果に基づき、ユーザ1の現在位置を算出し、算出した現在位置を出力してもよい。例えば、位置情報検出部160は、加速度センサ及びジャイロセンサ(角速度センサとも呼ばれる)を含んでもよい。加速度センサは、一軸加速センサ、二軸加速度センサ及び三軸加速度センサのいずれであってもよい。加速度センサ及びジャイロセンサの計測結果から、ユーザ1の移動方向及び移動距離の検出が可能である。また、位置情報検出部160は、GPS(Global Positioning System)受信器及び/又は地磁気センサを含んでもよい。GPS受信器及び地磁気センサそれぞれの計測結果から、ユーザ1の現在位置の検出が可能である。これに限定するものではないが、本実施の形態では、加速度センサ、ジャイロセンサ、GPS受信器及び地磁気センサ等は、上半身ベルト111に配置される。
【0077】
(制御部120)
制御部120のアシスト装置100全体の動作を制御する。制御部120は、歩行方向決定部121と、駆動制御部122と、歩行タイミング検出部123とを、構成要素として有する。制御部120の構成要素、目的地取得部130及び現在地取得部140は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read−Only Memory)などからなるコンピュータシステム(図示せず)により構成されてもよい。制御部120の構成要素、目的地取得部130及び現在地取得部140の一部又は全部の機能は、CPUがRAMを作業用のメモリとして用いてROMに記録されたプログラムを実行することによって達成されてもよい。また、制御部120の構成要素、目的地取得部130及び現在地取得部140の一部又は全部の機能は、電子回路又は集積回路等の専用のハードウェア回路によって達成されてもよい。プログラムは、アプリケーションとして、インターネット等の通信網を介した通信、モバイル通信規格による通信、その他の無線ネットワーク、有線ネットワーク、又は放送等で提供されるものであってもよい。
【0078】
制御部120、目的地取得部130及び現在地取得部140は、個別に、コンピュータシステム又はハードウェア回路を構成してもよく、これらの少なくとも2つが一緒に、1つのコンピュータシステム又はハードウェア回路を構成してもよい。制御部120、目的地取得部130及び現在地取得部140が構成するコンピュータシステム又はハードウェア回路は、例えば、上半身ベルト111に搭載され、モータ114と共に収容部111a1〜111a4内に収容されてもよく、別の場所で、上半身ベルト111に埋め込まれてもよい。
【0079】
(目的地取得部130)
目的地取得部130は、ユーザ1の目的地の情報を取得する。目的地の情報の例は、目的地の位置、及び目的地の位置を特定するための情報を含む。目的地の位置の例は、地図上で決定される目的地の位置、並びに、現在位置から目的地までの距離及び方角等を含む。目的地の位置を特定するための情報の例は、目的地の住所、目的地に位置する施設の名称、及び目的地の場所の地名を含む。目的地の位置を特定するための情報と地図情報等とを用いることによって、目的地の位置が特定可能である。
【0080】
目的地取得部130は、アシスト装置100に設けられた入力装置、又は、アシスト装置100の外部の端末装置500から、ユーザ1等により入力された目的地の情報を取得する。端末装置500は、アシスト装置100を装着するユーザ1が携帯する端末装置であってよく、例えば、スマートフォン、スマートウオッチ、タブレット又はパーソナルコンピュータであってもよい。目的地取得部130は、取得した目的地の情報から、目的地の位置を特定して決定し、目的地の位置情報を制御部120に出力する。上述したように、目的地の情報は、目的地の位置を含んでいてもよく、目的地の位置を特定するための情報を含んでいてもよい。後者の場合、目的地取得部130は、地図情報等を参照し、目的地の位置を特定するための情報に基づき、目的地の位置を特定してもよい。地図情報は、例えば、記憶部150に格納されていてもよいし、アシスト装置100の外部から取得されてもよい。
【0081】
アシスト装置100の入力装置は、ボタン、スイッチ、キー、タッチパッド又は音声認識装置のマイク等であってもよい。目的地取得部130は、アシスト装置100の入力装置と有線通信してもよく無線通信してもよい。目的地取得部130は、端末装置500と有線通信してもよく無線通信してもよい。上記無線通信には、Wi−Fi(登録商標)(Wireless Fidelity)等の無線LAN(Local Area Network)が適用されてもよく、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等の近距離無線通信が適用されてもよい。このような目的地取得部130は、有線又は無線の通信回路を備えてもよく、アシスト装置100が備える有線又は無線の通信回路を通じて、有線通信又は無線通信を行ってもよい。
【0082】
例えば、目的地取得部130が、アシスト装置100の入力装置から目的地の情報を取得する場合、当該入力装置は、アシスト装置100に設けられた目的地設定ボタン及び音声認識装置のマイクで構成されてもよい。そして、目的地取得部130が、音声認識装置を構成してもよく、制御部120が、音声認識装置を構成してもよい。このような場合、ユーザ1等が目的地設定ボタンを押すことで、アシスト装置100では「音声認識モード」となる。そして、ユーザ1等が目的地の名称を発声することで、目的地取得部130等が音声情報から目的地を特定し、目的地を設定してもよい。これにより、目的地を設定する際に、ユーザ1等は、アシスト装置100以外のものを取り出す必要がなくなり、簡易に目的地を設定することができるようになる。また、例えば、当該入力装置は、アシスト装置100に設けられた特定位置ボタンを備えてもよい。特定位置ボタンに関して、ユーザ1の自宅又はユーザ1等が設定した施設等の毎度決まって訪れる場所の位置情報が、記憶部150等に登録されてもよい。この場合、ユーザ1等が特定位置ボタンを押すことで、目的地取得部130は、登録された場所を目的地に決定する。これにより、ユーザ1等は、簡易に目的地を設定でき、さらに、ユーザ1が頻繁に訪れる場所、例えば、自宅等を目的地として簡易に選択することができる。
【0083】
なお、本実施の形態において、目的地取得部130は、ユーザ1又はユーザ1以外の他者であるユーザ1等が入力した目的地の情報を取得し、目的地を決定していたが、これに限定されない。例えば、目的地取得部130は、目的地を常に一地点に設定していてもよい。この場合、現在地取得部140が、取得するユーザ1の現在位置の情報に基づき、ユーザ1が目的地から所定の距離を離れたことを認識すると、この認識情報を目的地取得部130に出力する。そして、目的地取得部130は、起動し、設定されている目的地の位置情報を制御部120へ出力してもよい。例えば、認知症患者がアシスト装置100のユーザである場合、アシスト装置100を装着した認知症患者自身が徘徊し、目的地から所定の距離を超えた場所に移動すると、アシスト装置100は、認知症患者が入所している施設等の目的地に認知症患者を誘導する。これにより、認知症患者の行方不明等が防がれ得る。
【0084】
(現在地取得部140)
現在地取得部140は、アシスト装置100を装着しているユーザ1の現在地を取得し、制御部120に出力する。さらに、現在地取得部140は、取得した現在地つまり現在位置と、目的地取得部130が特定した目的地の位置情報とから、現在地から目的地までの経路情報を算出し、制御部120に出力してもよい。現在地取得部140は、位置情報検出部160からユーザ1の現在位置の情報を取得する、又は、アシスト装置100を装着するユーザ1が携帯する端末装置500から、ユーザ1の現在位置の情報を取得する。現在地取得部140は、取得した現在位置の情報がユーザ1の現在位置である場合、当該情報をそのまま使用してもよい。現在地取得部140は、取得した現在位置の情報がユーザ1の現在位置を特定するための情報である場合、当該情報に基づきユーザ1の現在位置を算出してもよい。
【0085】
現在地取得部140は、端末装置500から現在位置の情報を取得する場合、端末装置500が備え得るGPS受信器、地磁気センサ、加速度センサ及びジャイロセンサ等の計測結果を用いて、ユーザ1の現在位置の情報を取得してもよい。現在地取得部140は、端末装置500と有線通信してもよく無線通信してもよい。無線通信は、目的地取得部130に関して上述した無線通信が適用されてもよい。このような現在地取得部140は、有線又は無線の通信回路を備えてもよく、アシスト装置100が備える有線又は無線の通信回路を通じて、有線通信又は無線通信を行ってもよい。
【0086】
本実施の形態において、現在地取得部140は、位置情報検出部160又は端末装置500のGPS受信器を用いて、ユーザ1の現在位置の情報を常に取得するが、これに限ったものではない。例えば、現在地取得部140は、GPS受信器から取得した現在位置の情報と、加速度センサ及びジャイロセンサの検知結果とを併用して、ユーザ1の現在位置の情報を取得してもよい。例えば、現在地取得部140は、ユーザ1による所定の動作が起こるたびに、GPS受信器で現在位置の情報を取得してもよい。それ以外の場合は、現在地取得部140は、加速度センサ及びジャイロセンサの検知結果を用いて、ユーザ1の移動方向及び移動量を検出してもよい。さらに、現在地取得部140は、検出した移動方向及び移動量をGPS受信器から取得した位置情報に随時加算することで、ユーザ1の現在位置を算出してもよい。
【0087】
アシスト装置100は、ユーザ1が交差点などで方向転換を行う動作等もアシストするため、ユーザ1が一歩進行する毎の細かい精度で、ユーザ1の現在位置、移動量及び移動方向を取得する必要がある。上述のように、アシスト装置100は、GPS受信器からの現在位置の情報だけを用いるのでなく、ユーザ1の実際の動きから算出した移動量及び移動方向をGPS受信器の位置情報に加算して得られるユーザ1の現在位置を用いる。これにより、アシスト装置100は、ユーザ1が方向転換する際の移動方向及び移動量を高い精度で認識し、その認識結果をユーザ1へのアシストに対応させることができる。つまり、アシスト装置100は、同じ経路を進む場合であっても、個々のユーザに応じたアシストの違いを調整すること等も可能にする。また、現在地取得部140がGPS受信器を介して現在位置の情報を取得するタイミングは、例えば、アシスト装置100を装着しているユーザ1が立ち止まる毎、又は、5分間毎等の所定の時間間隔としてもよい。
【0088】
(制御部120)
制御部120は、アシスト装置100の全体を制御する。制御部120は、目的地取得部130及び現在地取得部140と、互いに情報を送受信できる。例えば、制御部120は、目的地取得部130から取得する目的地の位置情報と、現在地取得部140から取得するユーザ1の現在位置及び/又は経路の情報とに基づき、各ワイヤ110a1〜110a8に与える動作を決定し、ユーザ1の股関節アシスト制御を行う。各ワイヤ110a1〜110a8に与える動作は、各ワイヤ110a1〜110a8へ張力を付与するタイミング、張力の大きさ及び張力の付与期間を含むワイヤの動作パターンである。
【0089】
制御部120の歩行方向決定部121は、目的地までの経路に応じて、ユーザ1を誘導する方向である歩行方向を決定する。なお、歩行方向決定部121は、目的地の位置情報とユーザ1の現在位置とに基づき、ユーザ1の経路を決定してもよい。制御部120の歩行タイミング検出部123は、ユーザ1にアシストを行うタイミングを決定するために、歩行のタイミングを検出する。歩行のタイミングは、歩行中におけるユーザ1にアシストを開始するタイミング、並びに、1歩の中での立脚期及び遊脚期などの相(フェーズ)を決めるタイミングを含み得る。例えば、歩行方向決定部121は、交差点等の方向転換ポイントに対して現在位置が何歩前の位置であるかを算出し、歩行タイミング検出部123が検出する歩行のタイミングに基づき、ユーザ1にアシストを開始するタイミングを決定する。制御部120の駆動制御部122は、歩行方向決定部121が決定した歩行方向と、歩行タイミング検出部123が検出した歩行のタイミングとから、上半身ベルト111に備え付けられたワイヤ110のモータ114の動作を制御する。各構成の詳細については、後述する。
【0090】
(歩行方向決定部121)
歩行方向決定部121は、目的地取得部130から目的地の位置情報を取得し、現在地取得部140からユーザ1の現在位置を取得する。さらに、歩行方向決定部121は、記憶部150から目的地及び現在位置を含む地図情報を取得する。歩行方向決定部121は、目的地取得部130及び現在地取得部140と情報を送受信できる。歩行方向決定部121は、取得した目的地の位置情報及び現在位置と地図情報とを用いて、目的地までの経路を算出し、算出した経路におけるユーザ1の進行方向である歩行方向を決定する。そして、歩行方向決定部121は、決定した歩行方向の情報を駆動制御部122に出力する。
【0091】
具体的には、歩行方向決定部121は、算出した経路上において、ユーザ1が方向転換を行う場所、例えば、交差点等を探し出し、その場所までの距離及び時間と、その場所における方向転換を行う角度である方向転換角度とを算出する。そして、歩行方向決定部121は、算出した距離、時間及び方向転換角度の情報を駆動制御部122に出力する。さらに、歩行方向決定部121は、方向転換を行う場所までの距離から、ユーザ1がその場所に到着するまでに要する歩数を予測し、予測した歩数の情報を上記の方向転換角度の情報と共に駆動制御部122に出力する。このような情報を取得することにより、駆動制御部122は、予定する方向転換を行うために必要なユーザ1へのアシストの量と、当該方向転換のためのアシストを開始するタイミングとを決定することができる。このようにして、アシスト量及びアシストタイミングを決定することで、駆動制御部122は、交差点等において、ワイヤ110を介したユーザ1に対して違和感のない歩行誘導を可能にする。なお、駆動制御部122の詳細は後述する。
【0092】
(歩行タイミング検出部123)
歩行タイミング検出部123は、アシスト装置100を装着するユーザ1の歩行周期を推定し、推定結果に基づき次の歩行フェーズを予測し、駆動制御部122に、予測した歩行フェーズに基づくアシストタイミングを出力する。歩行周期は、一方の脚のかかとが接地し、次に同じ脚のかかとが接地するまでの動作の時間の間隔又は連続動作である。歩行周期は、立脚期及び遊脚期からなる。
【0093】
歩行タイミング検出部123は、位置情報検出部160又は端末装置500の加速度センサのセンサ値、ジャイロセンサのセンサ値、又はユーザ1のかかと付近に設置された圧力センサのセンサ値に基づいて、ユーザ1のかかとが接地するタイミングを検出し、ユーザ1の1歩毎の歩行フェーズつまり歩行周期をリアルタイムで推定する。なお、ユーザ1の1歩とは、左右の脚のいずれかが1歩進むことである。例えば、ユーザ1の1歩は、左脚が接地してから次に左脚が接地するまでの期間である。そして、歩行タイミング検出部123は、推定した歩行周期に基づき、次の1歩における歩行フェーズ、立脚期及び遊脚期それぞれの開始時期及び継続時間を予測し、駆動制御部122に出力する。
【0094】
ここで、歩行フェーズ(gate phase)は、ユーザ1が1歩進む過程における歩行状態の時間的なタイミングを表す。歩行フェーズでは、ユーザ1の一方の脚が地面に着地したときが0%とされ、且つ、次にユーザ1の同じ脚が地面に着地したときが100%とされる。そして、歩行フェーズは、ユーザ1の歩行状態のタイミングを0%〜100%で表す。例えば、歩行フェーズの0%〜100%の値は、ユーザ1の一方の脚が地面に着地したときから次にユーザ1の同じ脚が地面に着地するときまでの経過時間に対応させてもよい。具体的には、ユーザ1の一方の脚が地面に着地したときから、次にユーザ1の同じ脚が地面に着地したときまでの時間が1sec(秒)の場合、ユーザ1の脚が地面に着地したときから0.5sec経過した時刻における歩行フェーズは、50%と表される。
【0095】
より具体的には、歩行タイミング検出部123は、加速度センサの情報に基づいて、ユーザ1の脚が地面に着地した時点を決定する。加速度センサに基づく脚の着地時点の推定方法は、例えば、IEEE TRANSACTIONS ON BIOMEDICAL ENGINEERING,VOL.52,NO.3,2005年,p.488,Fig.1,p.489,Fig.2を参照されたい。センサの他の例は、角度センサ(傾斜センサとも呼ばれる)である。例えば、ユーザ1の大腿部に角度センサを取り付け、歩行タイミング検出部123は、ユーザ1の股関節の角度を歩行情報として取得する。歩行タイミング検出部123は、ユーザ1の股関節の角度変化の周期に基づいて、歩行フェーズを算出する。
【0096】
なお、歩行タイミング検出部123は、加速度センサ及びジャイロセンサのセンサ値に基づいて歩行周期を推定する場合、加速度センサ及びジャイロセンサの信号波形から、歩行周期を推定してもよい。また、歩行タイミング検出部123は、ユーザ1のかかと付近の圧力センサのセンサ値に基づいて歩行周期を推定する場合、例えば、ユーザ1の靴底に取り付けられた圧力センサのセンサ値を用いてもよい。この場合、歩行タイミング検出部123は、圧力センサのセンサ値に対応する電圧値が所定の値以下になる時点をかかとの接地タイミングとして検出する。つまり、圧力センサにより所定値以上の圧力値が計測されている期間は、かかとが接地されていることを意味する。歩行タイミング検出部123は、上半身ベルト111等に配置された加速度センサ及びジャイロセンサに基づくタイミングよりも、靴そのものが接地したタイミングを取得することによって、より確実に歩行周期を推定することができる。
【0097】
上記のセンサのいずれを使用する場合であっても、歩行タイミング検出部123は、例えば、ユーザ1の直近の3歩のセンサ値から、1歩毎の歩行フェーズの0%〜100%の経過時間を推定し、3つの経過時間の平均値を算出してもよい。そして、歩行タイミング検出部123は、経過時間の平均値から次の1歩での歩行フェーズ100%の時刻を予測してもよい。さらに、歩行タイミング検出部123は、センサの信号波形から、1歩毎の歩行フェーズにおける立脚期及び遊脚期の開始タイミングを推定し、3歩の間で開始タイミングの平均値を算出してもよい。そして、歩行タイミング検出部123は、平均値に基づき、次の1歩での立脚期及び遊脚期の開始タイミングを予測してもよい。
【0098】
又は、歩行タイミング検出部123は、ユーザ1の直近の1歩のセンサ値から、1歩の歩行フェーズの0%〜100%の経過時間を推定し、推定した経過時間に基づき、次の1歩での歩行フェーズ100%の時刻を予測してもよい。さらに、歩行タイミング検出部123は、センサの信号波形から、1歩の歩行フェーズにおける立脚期及び遊脚期の開始タイミングを推定し、次の1歩での立脚期及び遊脚期の開始タイミングを予測してもよい。
【0099】
(駆動制御部122)
駆動制御部122は、歩行方向決定部121から取得する経路上におけるユーザ1の歩行方向の情報と、歩行タイミング検出部123から取得するユーザ1の予測された歩行フェーズの情報とを基に、ワイヤ110a1〜110a8の張力を調節するモータ114a1〜114a8の制御を行う。駆動制御部122は、モータ114a1〜114a8の起動及び停止、並びに、モータ114a1〜114a8それぞれによるワイヤ110a1〜110a8の引張量及び引張力を制御する。このとき、駆動制御部122は、モータ114a1〜114a8の起動及び停止、並びに、モータ114a1〜114a8の回転量及び回転トルクを制御する。
【0100】
具体的には、駆動制御部122は、歩行方向決定部121より、ユーザ1の現在地から目的地までの経路において、次の方向転換地点までの距離及び時間、並びに、方向転換地点における方向転換角度の情報を得る。
【0101】
歩行方向決定部121は、現在地から方向転換地点までに要するユーザ1の歩数と距離との比率からなる係数Caを算出し、方向転換地点での方向転換に要するユーザ1の歩数と方向転換角度との比率からなる係数Cbを算出する。係数Caは、(現在地から方向転換地点までにユーザ1が直進する距離)/(現在地から方向転換地点までにユーザ1が直進する歩数)で示される。係数Cbは、(方向転換地点におけるユーザ1の方向転換角度)/(方向転換に要するユーザ1の歩数)で示される。方向転換地点におけるユーザ1の方向転換角度は、方向転換地点の前後の間でのユーザ1の進行方向の方向角の差異である。駆動制御部122は、歩行方向決定部121から係数Ca及びCbを取得する。
【0102】
また、歩行タイミング検出部123は、ユーザ1の歩行中におけるかかとの接地タイミングを推定し、ユーザ1の次のかかと接地からその次のかかと接地までの時間を予測する。そして、駆動制御部122は、歩行タイミング検出部123の予測結果を取得する。
【0103】
駆動制御部122は、歩行方向決定部121及び歩行タイミング検出部123から取得した情報に基づき、ユーザ1に行うアシストの種類を決定する。アシストの種類には、後述する屈曲、伸展、外転、内転、外旋及び内旋のような、ユーザ1に対してアシストする脚の動作が含まれる。さらに、駆動制御部122は、アシストの種類に応じて、ワイヤ110a1〜110a8の中から、ユーザ1への動作のアシストを行うために引っ張るべきワイヤと、当該ワイヤに与える張力と、当該ワイヤを引っ張るタイミングとを決定する。なお、アシストの種類の決定は、歩行方向決定部121が行ってもよい。
【0104】
歩行方向決定部121及び歩行タイミング検出部123から取得される情報とアシストの種類との関係であるアシスト対応関係は、予め設定され、例えば、記憶部150に格納されている。引っ張られるワイヤと、ワイヤの張力と、ワイヤを引っ張るタイミングとの関係であるワイヤ−張力関係は、アシストの種類に応じて予め設定され、例えば、記憶部150に格納されている。また、ワイヤ−張力関係は、アシスト装置100のアシストでの制御実績に基づき、更新されてもよい。駆動制御部122は、記憶部150に格納されたアシスト対応関係及びワイヤ−張力関係の情報に基づき、ユーザ1に行うアシストの種類を決定し、決定したアシストの種類に対応するワイヤの制御を決定する。
【0105】
また、駆動制御部122は、歩行方向決定部121及び歩行タイミング検出部123から取得した情報、年齢、性別、体格及び体力等のユーザ1の情報、並びに脚へのアシストの介入程度等に基づき、ワイヤ−張力関係を変更して用いてもよい。ワイヤ−張力関係の詳細は、後述する。また、駆動制御部122は、決定したワイヤに与える張力及び引っ張るタイミングに応じて、当該ワイヤに繋がれたモータ114a1〜114a8の制御を行う。
【0106】
[2.アシスト装置の動作]
[2−1.アシスト装置の概略的な動作]
次に、実施の形態に係るアシスト装置100の概略的な動作を説明する。まず、
図11A及び
図11Bを参照して、アシスト装置100が、アシスト装置100を装着するユーザを出発地から目的地に歩行誘導する例を説明する。なお、
図11Aは、アシスト装置100を装着したユーザが、アシスト装置100によって誘導を受ける進行方向の例を示す図である。
図11Aに示すように、本例では、ユーザは、例えば、(I)右方向、(II)直進方向、及び(III)左方向の3つの誘導パターンを用いた進行の誘導を受ける。また、
図11Bは、ユーザの出発地から目的地までの経路の例を示す図である。
図11Bには、経路上においてユーザがアシスト装置100から受ける誘導パターンが示されている。ユーザは、経路上の現在位置に応じて、
図11Aに示すような3つの誘導パターンのいずれかを用いた誘導を、アシスト装置100から受ける。(I)右方向又は(III)左方向の誘導パターンでは、アシスト装置100は、ユーザの進行方向を右向き又は左向きに曲げるように、ユーザを右又は左に旋回させるアシスト力を、ワイヤ110を介してユーザに与える。(II)直進方向の誘導パターンでは、アシスト装置100は、ユーザに直進方向に歩行動作させるアシスト力をワイヤ110を介して与えてもよく、アシスト力を与えずに、ユーザに自律的に歩行させてもよい。後者の場合、アシスト装置100は、ユーザの進行方向が直進方向から逸脱した場合に、方向修正のためのアシスト力を付与してもよい。このように、アシスト装置100は、ワイヤ110を介したアシスト力による物理的な歩行誘導をユーザに与える。なお、アシスト力は、所定の動作をする際のユーザの身体の動きを補助する力であってもよく、所定の動作をすることをユーザの身体に半強制的又は強制的に強いる力であってもよい。
【0107】
上述の歩行誘導の際、例えば、アシスト装置100の歩行方向決定部121は、目的地取得部130から目的地の位置情報を取得し、現在地取得部140から出発地の位置情報つまりユーザの現在位置を取得する。また、歩行方向決定部121は、記憶部150から出発地から目的地までにわたる地図を取得する。歩行方向決定部121は、出発地の位置情報と目的地の位置情報と地図とを用いて、出発地から目的地までの経路を算出する。さらに、歩行方向決定部121は、経路上においてユーザに適用する誘導パターン(I)、(II)及び(III)を決定する。
【0108】
歩行誘導において、例えば、
図11Bに示すように、地図が交差点の情報を含む場合、経路上にある交差点で、ユーザに方向転換させる必要がある。このとき、アシスト装置100は、ユーザが交差点に進入するよりも前から、(I)右方向又は(III)左方向の所望の方向にユーザを方向転換させる、つまり旋回させるアシスト力の付与を開始する。そして、アシスト装置100は、ユーザが交差点を曲がり終えるまで、アシスト力を変化させつつ付与を継続する。旋回中にユーザに付与するアシスト力の詳細は後述する。よって、アシスト装置100は、出発地であるユーザの現在位置に基づき、経路上に設定した誘導パターンを選択し、選択した誘導パターンに従ってユーザの進行方向を物理的に誘導する。
【0109】
[2−2.アシスト装置の処理の流れ]
次いで、
図12を参照して、上述のようなアシスト装置100が行う経路の決定から経路に沿った歩行誘導までの処理の流れを説明する。
図12は、実施の形態に係るアシスト装置100がユーザの歩行方向を誘導する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0110】
(ステップS001)
目的地取得部130は、アシスト装置100を装着したユーザを誘導する目的地の情報を取得し、制御部120の歩行方向決定部121に目的地の位置情報を出力する。目的地取得部130は、アシスト装置100に設けられた入力装置、又はユーザが携帯する端末装置500へのユーザ等による入力を介して、目的地の情報を取得する。
【0111】
(ステップS002)
歩行方向決定部121は、現在地取得部140から、アシスト装置100の現在地情報、つまり、ユーザの現在位置を取得する。現在地取得部140は、アシスト装置100の位置情報検出部160、又は、端末装置500からユーザの現在位置を取得する。
【0112】
(ステップS003)
歩行方向決定部121は、目的地の位置情報と、ユーザの現在位置と、記憶部150に格納された目的地及び現在位置周辺の地図とから、現在位置から目的地までの経路を算出し、さらに、算出した経路におけるユーザの歩行方向の情報を決定する。歩行方向の情報は、経路上においてユーザが方向転換を行う場所までの距離及び時間、並びに、方向転換場所における方向転換角度等を含む。そして、歩行方向決定部121は、歩行方向の情報と、アシストモードONの信号とを、制御部120の駆動制御部122に出力する。アシストモードONの信号は、アシスト装置100がユーザの歩行をアシストする制御を実行する状態であることを示す信号である。アシストモードOFFの信号は、アシスト装置100がユーザの歩行をアシストする制御を実行しない状態であることを示す信号である。
【0113】
(ステップS004)
駆動制御部122は、歩行方向決定部121からアシストモードONの信号を受けとると、モータ114を制御して、ワイヤ110に張力を付与する。具体的には、駆動制御部122は、歩行タイミング検出部123が予測する歩行フェーズにおけるアシストタイミング情報を、歩行タイミング検出部123から受け取る。アシストタイミング情報は、歩行フェーズにおける立脚期及び遊脚期等の歩行状態の時間的なタイミング情報を含む。駆動制御部122は、アシストタイミング情報と、歩行方向決定部121から受け取った歩行方向の情報とに基づき、ユーザを直進させるようにワイヤ110の張力を制御するアシスト制御信号を、モータ114に出力する。
【0114】
(ステップS005)
歩行方向決定部121は、現在位置からの目的地までの経路上に方向転換が必要な場所である方向転換ポイントがあるか否かを判定する。歩行方向決定部121は、方向転換ポイントがある場合(ステップS005でYes)、ステップS006へ進み、方向転換ポイントが無い場合(ステップS005でNo)、ステップS004に戻る。
【0115】
(ステップS006)
歩行方向決定部121は、ユーザの現在位置と経路情報とに基づき、次にユーザが到達する方向転換ポイントにおいて、ユーザが方向転換する、つまり、曲がる方向が左方向であるか否かを判定する。歩行方向決定部121は、曲がる方向が左方向である場合(ステップS006でYes)、ステップS007へ進み、曲がる方向が右方向である場合(ステップS006でNo)、ステップS008へ進む。
【0116】
(ステップS007)
歩行方向決定部121は、ステップS003で決定した歩行方向の情報に基づき、左方向にユーザを誘導するための信号を、駆動制御部122に出力する。駆動制御部122は、受け取った信号にしたがって、モータ114を制御することによって、ユーザに左方向に方向転換させるようにワイヤ110の張力を制御する。なお、歩行方向の情報は、歩行転換ポイントにおいて、ユーザの左右の脚が1歩毎に行う動作に関する情報、つまり、左方向の方向誘導パターンの情報も含む。これにより、駆動制御部122は、ユーザの左右の脚の動作を1歩毎に制御する。
【0117】
(ステップS008)
歩行方向決定部121は、ステップS003で決定した歩行方向の情報に基づき、右方向にユーザを誘導するための信号を、駆動制御部122に出力する。駆動制御部122は、受け取った信号にしたがって、モータ114を制御することによって、ユーザに右方向に方向転換させるようにワイヤ110の張力を制御する。なお、歩行方向の情報は、歩行転換ポイントにおいて、ユーザの左右の脚が1歩毎に行う動作に関する情報、つまり、右方向の方向誘導パターンの情報も含む。これにより、駆動制御部122は、ユーザの左右の脚の動作を1歩毎に制御する。
【0118】
(ステップS009)
ステップS007及びステップS008のそれぞれで、アシスト装置100による方向転換ポイントでのユーザの方向転換の誘導が完了した後、歩行方向決定部121は、現在位置及び目的地の位置情報に基づき、ユーザが目的地に到達したか否かを判定する。歩行方向決定部121は、ユーザが目的地に到達していなければ(ステップS009でNo)、ステップS004へ進み、ユーザが目的地に到達していれば(ステップS009でYes)、ユーザを目的地にまで誘導する処理を終了する。
【0119】
[2−3.アシスト装置がアシストする基本的な動作]
次いで、アシスト装置100がアシストする基本的な動作を説明する。具体的には、アシスト装置100が、アシスト装置100を装着するユーザに付与するアシスト力と、ユーザの動作との関係を説明する。アシスト装置100は、8つのモータ114a1〜114a8を用いて8つのワイヤ110a1〜110a8の張力を個別に変更することによって、アシスト装置100を装着するユーザの左右の脚にアシスト力を与え、左右の脚に種々の動作をさせる。
【0120】
例えば、
図13A〜
図13Cには、アシスト装置100がアシストするユーザの右脚の動作例が示されている。なお、
図13A〜
図13Cは、アシスト装置100が遊脚期の右脚にアシスト力を与える例を示しているが、アシスト装置100は、立脚期の右脚にアシスト力を与えてもよい。また、アシスト装置100は、ユーザの左脚に対しても、右脚と同様の動作をさせることができる。
【0121】
アシスト装置100は、
図13Aに示すように、ユーザの右脚股関節に対して、屈曲及び伸展させるアシスト力を付与することができる。また、アシスト装置100は、
図13Bに示すように、ユーザの右脚股関節に対して、外転及び内転させるアシスト力を付与することができる。また、アシスト装置100は、
図13Cに示すように、ユーザの右脚股関節に対して、外旋及び内旋させるアシスト力を付与することができる。屈曲及び伸展のアシスト力は、ユーザの直進方向の歩行をアシストすることができ、これにより、ユーザのエネルギー代謝を下げるという効果をもたらす。外転、内転、外旋及び内旋のアシスト力は、ユーザの方向転換をアシストすることができる。
【0122】
なお、股関節の屈曲は、大腿部を前方向に動かす動きであり、股関節の伸展は、大腿部を後方向に動かす動きである。外転は、大腿部をユーザの体幹の中心から左右方向の外側(右脚であれば右側、左脚であれば左側)に動かす動きであり、脚を開くように股関節を基点に脚を回動させる動作である。内転は、大腿部をユーザの体幹の中心に向かって左右方向の内側(右脚であれば左側、左脚であれば右側)に動かす動きであり、脚を閉じるように股関節を基点に脚を回動させる動作である。外旋は、大腿部をユーザの外側(右脚であれば右回転方向、左脚であれば左回転方向)に回転させる動きであり、足のつま先を外側に向けるように股関節を中心に大腿部を外向きに回転させる動作である。内旋は、大腿部をユーザの内側(右脚であれば左回転方向、左脚であれば右回転方向)に回転させる動きであり、足のつま先を内側に向けるように股関節を中心に大腿部を内向きに回転させる動作である。このように、アシスト装置100は、3自由度6方向の動作を誘導することができるアシスト力を、左右の脚に付与することができる。
【0123】
さらに、
図14A〜
図19Bを参照して、アシスト装置100が誘導するつまりアシストするユーザの動作と、ワイヤ110a1〜110a8を介してユーザに与えられるアシスト力との関係を説明する。
【0124】
図14A及び
図14Bを参照すると、アシスト装置100がユーザの左脚及び右脚の股関節の屈曲をアシストするケースが示されている。
図14Aでは、駆動制御部122は、左脚を屈曲させるために、モータ114a1及び114a2を駆動し、ワイヤ110a1及び110a2の張力を増加させる。
図10Bでは、駆動制御部122は、右脚を屈曲させるために、モータ114a7及び114a8を駆動し、ワイヤ110a7及び110a8の張力を増加させる。本実施の形態では、ワイヤ110a1及び110a2の張力は同等とされ、ワイヤ110a7及び110a8の張力は同等とされるが、互いに異なっていてもよい。駆動制御部122は、ワイヤの張力の制御を、力センサ115a1〜115a8の検出結果に基づき、行ってもよく、モータ114a1〜114a8の駆動量に基づき、行ってもよい。
【0125】
これに限定するものではないが、本実施の形態では、屈曲前の平常時にも、ワイヤ110a1〜110a8それぞれに張力がかけられており、その張力は、ワイヤがたるまない程度、例えば、10N(ニュートン)以下、より好ましくは、5N以下である。そして、左脚及び右脚を屈曲させるために、ワイヤ110a1及び110a2の張力、並びに、ワイヤ110a7及び110a8の張力がそれぞれ、例えば、40N以上100N以下の値に引き上げられる。左脚を例に説明する。健康的な20歳代〜40歳代の成人男性であるユーザに対して、ワイヤ110a1及び110a2に40N以上の張力を作用させる。このとき、ユーザは、左脚に屈伸方向の力が作用し、且つ左脚の屈伸が促されていることを明確に自覚することができる。ワイヤ110a1及び110a2に80N超の張力が作用すると、ユーザの左脚は、屈伸方向に持ち上げられる。また、ワイヤ110a1及び110a2に作用する張力が、20N以下である場合、ユーザは、ワイヤ110a1及び110a2の張力による抵抗をほとんど感じずに現状の動作を継続する。なお、上記の張力の数値は、一例であり、ユーザの年齢、性別、体格、体力、脚の動作の種類、脚へのアシストの介入程度等に応じて、適宜変更され得る。
【0126】
図15A及び
図15Bを参照すると、アシスト装置100がユーザの左脚及び右脚の股関節の伸展をアシストするケースが示されている。
図15Aでは、駆動制御部122は、左脚に伸展させるために、ワイヤ110a3及び110a4の張力を増加する。
図15Bでは、駆動制御部122は、右脚に伸展させるために、ワイヤ110a5及び110a6の張力を増加する。この伸展時のワイヤの張力は、屈曲時のワイヤの張力と同様であってもよい。
【0127】
図16A及び
図16Bに、アシスト装置100がユーザの左脚及び右脚の股関節の外転をアシストするケースが示されている。
図16Aでは、駆動制御部122は、左脚に外転させるために、ワイヤ110a2及び110a3の張力を増加する。
図16Bでは、駆動制御部122は、右脚に外転させるために、ワイヤ110a6及び110a7の張力を増加する。この外転時のワイヤの張力は、屈曲時又は伸展時のワイヤの張力と同様であってもよい。
【0128】
図17A及び
図17Bに、アシスト装置100がユーザの左脚及び右脚の股関節の内転をアシストするケースが示されている。
図17Aでは、駆動制御部122は、左脚を内転させるために、ワイヤ110a1及び110a4の張力を増加する。
図17Bでは、駆動制御部122は、右脚を内転させるために、ワイヤ110a5及び110a8の張力を増加する。この内転時のワイヤの張力は、屈曲時、伸展時又は外転時のワイヤの張力と同様であってもよい。
【0129】
図18A及び
図18Bに、アシスト装置100がユーザの左脚及び右脚の股関節の外旋をアシストするケースが示されている。
図18Aでは、駆動制御部122は、左脚を外旋させるために、ワイヤ110a2及び110a4の張力を増加する。
図18Bでは、駆動制御部122は、右脚を外旋させるために、ワイヤ110a5及び110a7の張力を増加する。この外旋時のワイヤの張力は、屈曲時、伸展時、外転又は内転時のワイヤの張力と同様であってもよい。
【0130】
図19A及び
図19Bに、アシスト装置100がユーザの左脚及び右脚の股関節の内旋をアシストするケースが示されている。
図19Aでは、駆動制御部122は、左脚を内旋させるために、ワイヤ110a1及び110a3の張力を増加する。
図19Bでは、駆動制御部122は、右脚を内旋させるために、ワイヤ110a6及び110a8の張力を増加する。この内旋時のワイヤの張力は、屈曲時、伸展時、外転、内転又は外旋時のワイヤの張力と同様であってもよい。
【0131】
上述のような各脚へのアシスト動作とワイヤ110a1〜110a8の張力との関係は、下記の表2のようにまとめられる。
【0133】
上述では、駆動制御部122は、1つの脚の動作をアシストするために、2つのワイヤの張力を増加させた。このとき、駆動制御部122は、他の6つのワイヤの張力を現状に維持するように、ユーザの動作に合わせてモータ114を制御しワイヤの張力を調整してもよく、6つのワイヤに張力が作用しないように、6つワイヤのモータ114を停止してもよい。
【0134】
また、上述の例では、駆動制御部122は、1つの脚の動作をアシストするために選択した2つのワイヤの張力を、同等としたが、これに限ったものではない。例えば、外転、内転、外旋及び内旋の動作のアシスト時、駆動制御部122は、脚の前部に位置するワイヤの張力をよりも、脚の後部に位置するワイヤの張力を小さくしてもよい。このように脚が回動又は旋回する場合、脚の前部と後部とでは、アシスト力の作用ラインと股関節の回転軸との距離である股関節のモーメントアームが異なる。このため、脚の前部のワイヤ及び後部のワイヤに同等の張力を与えると、想定しているトルクが脚に出力されないことがある。また、筋肉又は贅肉のつきかたなどにより脚及び腰の形状に個人差もあるため、個人に応じて、前部のワイヤ及び後部のワイヤの張力のバランスを調整してもよい。
【0135】
上述のようなアシスト装置100は、ユーザの歩行中、ユーザが立脚期及び遊脚期に生じるトルクに合わせて、屈曲及び伸展方向のアシスト力であるアシストトルクをメインに、ユーザに付与し、ユーザの歩行動作をアシストすることができる。さらに、アシスト装置100は、ユーザの歩行方向を誘導する場合、外転、内転、外旋又は内旋方向のアシストトルクをユーザに付与し、それにより、ユーザを所望の方向に誘導することを可能にする。
【0136】
[2−4.アシスト装置の歩行方向誘導動作]
アシスト装置100におけるユーザの歩行方向の誘導動作の詳細を説明する。
図20A及び
図20Bを参照すると、アシスト装置100が、交差点においてユーザが直角に曲がるように歩行方向を誘導する例が示されている。
図20Aでは、ユーザの現在位置である計測地点から曲がるべき交差点までの間の距離及びユーザの歩数の例が示されている。アシスト装置100の歩行方向決定部121は、計測地点の位置と経路情報とから、計測地点から交差点までの距離を算出し、算出した距離から当該交差点までに要する歩数を算出する。本例では、計測地点から交差点までの距離は、6mであり、計測地点から交差点までの歩数は、6歩である。また、歩行方向決定部121は、経路情報から、交差点でユーザが右方向に90度で曲がる必要があることを決定する。
【0137】
そして、歩行方向決定部121は、
図20Bに示すように、直進方向のアシスト、右方向のアシスト及び直進方向のアシストを順次実施することを決定し、駆動制御部122に出力する。具体的には、歩行方向決定部121は、各アシストについて、タイミング、期間、アシストの程度等を、1歩毎に決定する。例えば、ユーザが左右の脚で1歩ずつ進む間に45度曲がるようにアシストする場合、歩行方向決定部121は、左右の脚で2歩ずつ、計4歩で交差点を曲がれるように、例えば、交差点の2歩分手前の位置を右方向のアシスト開始タイミングに決定する。駆動制御部122は、歩行方向決定部121が決定した右方向のアシスト開始タイミングと、歩行タイミング検出部123が検出する歩行のタイミングとから、ワイヤ110の張力を制御し、ユーザに右方向に曲がるアシスト力を付与する。こうすることで、ユーザは、交差点に差し掛かる前の2歩と交差点通過後の2歩とで、90度曲がることが可能である。
【0138】
なお、歩数と距離との関係については、ユーザが直進歩行を行っている際に、例えば、上半身ベルト111に配置された位置情報検出部160の加速度センサが検知する進行方向の加速度に基づき、歩行方向決定部121が算出してもよい。具体的には、歩行方向決定部121は、進行方向の加速度波形からユーザの1歩毎の時間を検出する。さらに、歩行方向決定部121は、対象とする歩数に対応する時間と、進行方向の加速度の変化とから、当該時間におけるユーザの移動距離を算出してもよい。又は、歩行方向決定部121は、GPS受信器から当該時間におけるユーザの移動距離を取得してもよい。歩行方向決定部121は、同一時間内の歩数及び移動距離に基づき、ユーザの歩数と距離との関係を算出する。例えば、
図21に示すように、ユーザによって、歩数と距離との関係は異なる。このため、歩行方向決定部121は、上述したような方法により、直進歩行中に算出を行う。なお、
図21は、アシスト装置100を用いた場合の複数のユーザにおける歩数と距離との関係の例を示す図である。また、歩行方向決定部121は、ユーザが直進歩行中であるか否かを、位置情報検出部160の加速度センサ及びジャイロセンサの計測結果から判定してもよく、GPS受信器の計測結果から判定してもよい。
【0139】
また、歩数と方向転換角度との関係についても、歩数と距離との関係と同様である。例えば、歩行方向決定部121は、ユーザが曲がる動作を開始するタイミング及び終了するタイミングを、位置情報検出部160の加速度センサ及びジャイロセンサ、又は、GPS受信器の計測結果から判定する。さらに、歩行方向決定部121は、加速度センサ及びジャイロセンサ、又は、GPS受信器の計測結果から、ユーザが方向転換した角度も算出する。さらにまた、歩行方向決定部121は、加速度センサの加速度波形から、ユーザが方向転換するのに要した歩数を算出する。そして、歩行方向決定部121は、歩数と方向転換角度との関係を対応づける。上述の関係付けは、アシスト装置100によるアシストがある状態での計測結果から求められてもよく、アシスト装置100によるアシストがない状態での計測結果から求められてもよい。
【0140】
ユーザに応じて、1歩で曲がることができる方向転換角度には差がある。このため、例えば、歩数に対する方向転換角度が小さい、例えば、2歩で10度しか曲がることができないユーザの場合、歩行方向決定部121は、90度曲がるために、交差点の9歩手前からアシストを開始するように決定してもよい。又は、現在地から交差点までに9歩分の距離が取れない場合、歩行方向決定部121は、ワイヤ110の張力つまりアシスト力を強めて、1歩でユーザが方向転換する角度を大きくすることもできる。
【0141】
次に、
図22A及び
図22Bを参照すると、アシスト装置100が、曲がり角においてユーザが複数回にわたって曲がることで直角に方向転換するように歩行方向を誘導する例が示されている。
図22Aでは、ユーザは、
図20Aと同様に右方向に直角な方向に向かって曲がるが、1つの曲がり動作での方向転換角度が小さい。
図22Aに示すように、例えば、ユーザが、最終的には90度曲がるが、45度の方向転換を行ったあと、再度45度の方向転換する場合、アシスト装置100は、
図20Aの例よりも方向転換地点に近い開始地点で、右方向のアシストを開始する。又は、アシスト装置100は、アシストするためにワイヤ110に付与する張力を、
図20Aの例よりも低く抑える。これにより、ユーザは自然に方向を転換することができる。
【0142】
そして、
図22Aに示すような経路に沿ってユーザが進行するようにアシストする場合、アシスト装置100は、
図22Bに示すように、直進方向のアシスト、右方向のアシスト、直進方向のアシスト、右方向のアシスト及び直進方向のアシストを順次実施する。例えば、ユーザが左右の脚で1歩ずつ進む間に45度曲がるようにアシストする場合、アシスト装置100は、1つめの方向転換地点の1歩前から右方向のアシストを開始し、その後、再度直進方向のアシストを行った後、再度次の方向転換地点の1歩前から右方向のアシストを開始する。これにより、アシスト装置100は、最終的に、ユーザを90度曲がるようにアシストする。
【0143】
なお、上述の例では、アシスト装置100は、歩数と曲がることができる角度との関係のユーザによる違いから、アシスト開始タイミングを前後に調整し、それにより、様々なユーザの方向転換を可能にしたが、これに限ったものではない。アシスト装置100は、ユーザに応じてアシスト開始タイミングを変えず、アシストのためにワイヤ110に付与する張力を変えてもよい。
【0144】
例えば、
図23A及び
図23Bを参照すると、アシスト装置100が、互いの間の距離が短い2つの曲がり角を含む経路に沿って、ユーザの歩行方向を誘導する例が示されている。
図23Aに示すように、目的地までの経路において、90度の方向転換の後、すぐに、例えば、2歩から4歩の距離で、90度の方向転換がある場合、アシスト装置100が、アシスト開始タイミングを早くしても、ユーザが2つめの方向転換を行うことができない可能性がある。
【0145】
例えば、アシスト装置100がアシストする場合、ユーザは通常、片脚の1歩で、約5〜30度の方向転換角度で曲がることができる。この場合、2つめの方向転換を行うためのユーザの歩数が不足する場合がある。また、
図23Aでは、
図23Bに示すように、ユーザは、右方向のアシストを受けた後、すぐに左方向のアシストを受けることになる。ユーザには、右方向にアシストを受けた直後、右方向にアシストされている感覚が残り、ユーザは、このような感覚を有したまま、左方向のアシストを受けることになる。このような場合、ユーザは、自身の感覚に混乱を生じ、左方向のアシストに対応できない場合がある。このため、アシスト装置100は、アシストにおけるワイヤ110の張力を通常よりも大きくすることで、ユーザの1歩における方向転換角度を大きくしてもよい。これにより、アシスト装置100は、経路に沿ってユーザの歩行方向を誘導する。
【0146】
しかしながら、アシスト装置100は、ユーザの1歩における方向転換角度を大きくしても、ユーザが曲がりきれないと判定する場合、経路を変更してもよい。例えば、歩行方向決定部121は、上記の判定を行い、その結果、
図24A及び
図24Bに示す例のように、方向転換の回数を減らし、方向転換地点までの距離を大きくするように経路を再度設定してもよい。この例では、アシスト装置100は、
図24Bに示すように、直進方向のアシスト、右方向のアシスト及び直進方向のアシストを順次行う。なお、方向転換の回数を減らすことによって、アシスト装置100のエネルギー消費量が低減するという効果も得られる。
【0147】
[2−5.アシスト装置の方向転換アシスト動作の詳細]
さらに、アシスト装置100がユーザの方向転換をアシストする動作の詳細を説明する。具体的には、ユーザの方向転換の際、アシスト装置100が張力を増加させるワイヤ110と、当該ワイヤ110の張力を増加させるタイミングとの関係を説明する。上述したように、アシスト装置100の駆動制御部122は、アシストの種類に応じたワイヤ−張力関係に基づき、張力を増加させるワイヤ110と、当該ワイヤ110の引張力と、当該ワイヤ110の張力を増加させるタイミングとを決定し、ユーザの動作をアシストする。以下で説明する動作は、このワイヤ−張力関係に基づく動作の例である。
【0148】
[2−5−1.方向転換アシストの第一のパターンの動作]
まず、アシスト装置100がユーザの方向転換をアシストする動作の第一のパターンの動作を説明する。
図25には、第一のパターンの動作に関して、ユーザを左方向に方向転換させる場合のアシスト装置100におけるワイヤ110の張力を増加させるタイミングと、張力が増加されるワイヤ110との組み合わせ例が示されている。
図25には、ユーザの各状態及びその位置が上面図及び側面図で示されている。さらに、
図25には、張力が増加されるワイヤが示されている。さらにまた、
図25では、ユーザの左右の脚の状態と、上記ワイヤの張力の状態つまりワイヤ張力の入力プロフィールと、歩行フェーズとが関係付けて示されている。ワイヤ張力の入力プロフィールは、各ワイヤに与えられる最大張力(張力ゲインとも呼ばれる)に対するワイヤ張力の割合を示す。例えば、各ワイヤの張力ゲインが100Nである場合、実際に付与される張力は、入力プロフィール×張力ゲインで表される。そして、歩行フェーズ0〜100%の間において、アシスト装置100は、最大張力を100Nとして、ワイヤ張力を変化させながら生み出す。
【0149】
図25には、ユーザを左方向に誘導するために、ワイヤ110a2、110a4、110a6及び110a8の張力が増加される例が示されている。つまり、アシスト装置100は、左脚を外旋し、且つ右脚を内旋するためのアシストを行う。
図25において、左脚の歩行フェーズを基準とし、左脚の歩行フェーズにおいて、左脚のかかとの接地を0%とし、右脚のかかとの接地を50%としている。つまり、これに限定するものではないが、本実施の形態では、左脚の歩行フェーズの0%は、右脚の歩行フェーズの50%と同時期である。
【0150】
左脚の歩行フェーズにおいて、左脚の立脚期は0%以上60%以下の期間であり、遊脚期は60%超100%未満の期間である。また、右脚の歩行フェーズにおいて、右脚の遊脚期は60%超100%未満の期間であり、立脚期は100%以上160%以下の期間である。言い換えると、左脚の歩行フェーズにおいて、右脚の遊脚期は10%超50%未満の期間であり、立脚期は50%以上110%以下の期間である。
【0151】
なお、右脚の歩行フェーズにおいて、右脚の遊脚期の60%超100%未満の期間は、第1の歩行フェーズに含まれ、立脚期の100%以上160%以下の期間は、第1の歩行フェーズの次の第2の歩行フェーズに含まれる。つまり、100%以上160%以下の期間は、第2の歩行フェーズの0%以上60%以下の期間である。このように、以下の説明において、100%以上の数値を用いて表す歩行フェーズは、0%〜100%の数値を用いて表す歩行フェーズの次の歩行フェーズを意味する。
【0152】
ユーザを左方向へと誘導する場合、アシスト装置100は、右脚の歩行フェーズの115%付近のタイミングで、右脚に内旋のアシスト力を与える。上記タイミングは、ユーザの右足のかかとが接地した後、右足のつま先が接地するまでの区間に含まれるタイミングである。このタイミングは、右脚の立脚期に含まれる。このとき、アシスト装置100により、ワイヤ110a6及び110a8に、同時に、第1の閾値以上の張力を加える。ここでのワイヤ110a6及び110a8の張力の一例は、100Nである。なお、第1の閾値は、ユーザが、ワイヤに発生した張力により、左方向に回転する移動のための脚の動作が促されていると認知できるような張力であってもよく、例えば、100Nの40%である40Nである。
【0153】
さらに、アシスト装置100は、左脚の歩行フェーズが100%になる直前の期間に、左脚に対して外旋のアシスト力を加える。100%になる直前の期間の例は、65%から90%の期間に含まれるいずれかのタイミングである。このとき、アシスト装置100は、ワイヤ110a2及び110a4に、同時に、例えば100Nの張力を加える。アシスト装置100は、左脚の遊脚期において、左脚にアシスト力を加える。
【0154】
具体的には、アシスト装置100は、右脚の歩行フェーズの115%以上140%以下の期間の全体において、右脚の内旋をアシストするために、ワイヤ110a6及び110a8の張力を連続的に増加し、その他のワイヤの張力を増加しない。なお、歩行フェーズの115%以上140%以下の期間は、歩行フェーズを0〜100%を用いて表す場合、15%以上40%以下の期間である。
【0155】
さらに、アシスト装置100は、左脚の歩行フェーズの65%以上90%以下の期間の全体において、左脚の外旋をアシストするために、ワイヤ110a2及び110a4の張力を連続的に増加し、その他のワイヤの張力を増加しない。
図25において、各ワイヤの張力が増加される際の張力のプロフィールは、台形の波形を形成する。これは、急激な張力の増加及び急激な張力の減少がユーザに与える負荷を低減するためである。なお、アシスト装置100は、右脚の歩行フェーズの115%以上140%以下の期間、及び、左脚の歩行フェーズの65%以上90%以下の期間において、張力の増加を一時的に中断してもよい。このような場合、アシスト装置100がユーザの脚に与える負荷が低減し、ユーザがアシスト装置100の作用により感じる負担が低減する。
【0156】
図25に示すワイヤ張力の入力プロフィールは、駆動制御部122がモータ114に信号を出力してから、実際にワイヤ110に張力が発生するまでの時間の遅れを考慮して、所望の時点よりも、歩行フェーズで数%早めに、ワイヤ110の張力が立ち上がるように設定されている。例えば、右脚へのアシストに関して、右足のつま先が接地するタイミングは、右脚の歩行フェーズにおいて、実際には120%程度のタイミングである。しかしながら、ワイヤ110の張力の出力の遅れを考慮して、約5%程度早いタイミングでワイヤ110の張力が立ち上がるように、右脚に関するワイヤ張力の入力プロフィールが作成されている。また、左脚へのアシストに関して、左足のかかとが接地する直前に左脚の股関節が外旋するように、アシスト装置100はアシストを行う。そこで、ワイヤの張力の出力の遅れを考慮し、アシストの終了が左脚の歩行フェーズでおおよそ100%のタイミングになるように、左脚に関するワイヤ張力の入力プロフィールは、左脚の歩行フェーズの65%以上90%以下の期間で外旋を連続的にアシストするように作成されている。
【0157】
図26を参照すると、ユーザを右方向に方向転換させる場合のアシスト装置100におけるワイヤ110の張力を増加させるタイミングと、張力が増加されるワイヤ110との組み合わせ例が、
図25と同様に示されている。
図26は、ユーザを右方向に誘導するために、ワイヤ110a1、110a3、110a5及び110a7の張力が増加される例である。つまり、アシスト装置100は、左脚を内旋し、右脚を外旋するアシストを行う。
図26は、右脚の歩行フェーズを基準とし、右脚の歩行フェーズにおいて、右脚のかかとの接地を0%とし、左脚のかかとの接地を50%としている。右脚の歩行フェーズにおいて、右脚の立脚期は0%以上60%以下の期間であり、遊脚期は60%超100%未満の期間である。また、左脚の歩行フェーズにおいて、左脚の遊脚期は60%超100%未満の期間であり、左脚の立脚期は100%以上160%以下の期間である。ユーザを右方向へと誘導する場合、アシスト装置100は、まず、左脚の歩行フェーズの115%付近のタイミングで、左脚に内旋のアシスト力を与える。上記タイミングは、ユーザの左足のかかとが接地した後、左足のつま先が接地するまでの区間に含まれるタイミングである。このとき、アシスト装置100は、ワイヤ110a1及び110a3に、同時に、例えば100Nの張力を加える。
【0158】
さらに、アシスト装置100は、右脚の歩行フェーズが100%になる直前の期間に、例えば、65%から90%の期間に含まれるいずれかのタイミングで、右脚に対して外旋のアシスト力を加える。このとき、アシスト装置100は、ワイヤ110a5及び110a7に、同時に、例えば100Nの張力を加える。
【0159】
具体的には、アシスト装置100は、左脚の歩行フェーズの115%以上140%以下の期間の全体において、左脚の内旋をアシストするために、ワイヤ110a1及び110a3の張力を連続的に増加し、その他のワイヤの張力を増加しない。なお、歩行フェーズの115%以上140%以下の期間は、歩行フェーズを0〜100%を用いて表す場合、15%以上40%以下の期間である。
【0160】
さらに、アシスト装置100は、右脚の歩行フェーズの65%以上90%以下の期間の全体において、右脚の外旋をアシストするために、ワイヤ110a5及び110a7の張力を連続的に増加し、その他のワイヤの張力を増加しない。これに限定するものではないが、本実施の形態では、
図26における左脚及び右脚に関するワイヤ張力の入力プロフィールは、
図25における左脚及び右脚に関するワイヤ張力の入力プロフィールを左右で入れ替えたものと同等である。
図26におけるワイヤ張力の入力プロフィールも、
図25の場合と同様に、アシスト装置100における張力の出力の遅れを考慮して、作成されている。
【0161】
なお、本実施の形態において、方向転換のアシストを行う際のワイヤ110の張力はどのワイヤであっても100Nとしたが、これに限ったものではない。ユーザによって、股関節のモーメントアーム及び脚の長さが異なるため、同じワイヤ110に同じ張力を与えた場合でも、股関節が受けるアシストトルクがユーザによって異なる。なお、アシストトルクは、ワイヤ張力×モーメントアームで求められる。したがって、ユーザに応じて異なる張力をワイヤ110に与えてもよい。痩せているユーザよりも太っているユーザの方が、股関節のモーメントアームが大きくなる。このため、例えば、腹囲100cm以上のような太ったユーザの場合、張力を60Nとし、腹囲70cm以下のような痩せたユーザの場合、張力を120Nとしてもよい。これにより、太ったユーザ及び痩せたユーザが受けるアシストトルクが同等になり得る。
【0162】
また、ユーザの脚の長さに応じて、張力を変更してもよい。例えば、上半身ベルト111並びに膝ベルト112a及び112bがユーザの身体の同じ部位に取り付けられた場合、ユーザの脚の長さ、具体的には大腿部の長さが短くなるほど、ユーザの冠状面におけるワイヤ110の傾きが大きくなる。このため、ワイヤ110に同じ張力を与えた場合でも、大腿部の長さが短い程、外旋及び内旋の方向であるねじり方向のアシストトルクが大きくなる。よって、脚が長いユーザに対して、外旋及び内旋でのワイヤ110の張力を大きくすることによって、脚が長いユーザも脚が短いユーザと同等のアシストを受けることができる。また、屈伸及び伸展方向のアシストでは、脚が長いユーザの方が、ワイヤ110の張力の縦方向つまり上下方向の力成分を大きく受けるため、脚が長いユーザに対するワイヤ110の張力を小さくしてもよい。このように、ユーザ毎の体型及び脚の長さに応じて、ワイヤ張力を調整することで、ユーザに無理のないアシストトルクを与えることが可能となる。
【0163】
また、内旋及び外旋の各アシストにおいて、ユーザの脚の前後におけるワイヤ張力を同じとしたが、これに限ったものではない。例えば、脚の前側に配置されているワイヤの張力を、脚の後側に配置されているワイヤの張力よりも大きくしてもよい。後側のワイヤはユーザの臀部を経由するため、ユーザの後側のモーメントアームは、前側と比較して大きくなり、これにより、ユーザの後側で股関節に作用するアシストトルクは、ユーザの前側よりも大きくなる。したがって、前側のワイヤの張力をより大きくすることで、アシスト装置100は、方向誘導における内旋及び外旋のアシストを、ユーザの前後でバランスよく行うことができる。
【0164】
なお、
図25及び
図26では、ワイヤ張力の入力プロフィールの波形は、シンプルな四角形、具体的には台形としているが、これに限ったものではない。三角波又はガウシアン波形を用いて、入力プロフィールの波形を作成してもよい。例えば、矩形及び台形等の四角形の波形で入力プロフィールを作成した場合、ワイヤ張力の急な立ち上がり又は急な降下が起こることがある。このような張力変化は、ユーザに対してアシストの違和感を与える可能性がある。そこで、例えば、入力プロフィールの波形を三角波とした場合、最大張力までのワイヤ張力の立ち上がりを、徐々に変化する緩やかなものにしてもよい。これにより、アシスト装置100は、ユーザの脚を慎重に回転させることができ、急なワイヤ張力の変化によるユーザの転倒等の危険性も減らすことができる。
【0165】
また、実際のヒト歩行において、脚が生み出す屈曲及び伸展トルク、並びに、内旋及び外旋トルクは、なめらかに連続的に変化する。このため、入力プロフィールの波形は、ガウシアン波形が適用されてもよい。ガウシアン波形は、例えば、下記の式1に示されるようなガウス関数を用いて、複数のガウス関数を足し合わせる、つまり重ね合わせることで作成した波形であってもよい。このとき、複数のガウス関数の重ね合わせ方法のうち、実際のヒトの歩行時の脚のトルクの波形に最も近い重ね合わせ方法が見つけ出され、入力プロフィールの波形の生成に適用される。このような方法を見つけ出すことは、ガウスフィッティングとも呼ばれる。これにより、ヒトの歩行に近い形でアシストトルクを付与することができるため、より自然なアシストが可能になる。
【0167】
具体的には、ガウス関数は、μ,σの変数(パラメータとも呼ぶ)のペアを持ち、これらの2つのパラメータによって、ガウス関数の波形が決まる。μにより、ガウス関数の波のピークを示す時間が決まり、σにより、ガウス関数の波の幅が決まる。よって、2つのパラメータの様々な組み合わせにより、様々なガウス関数が生成され得る。
【0168】
ヒトの歩行時の脚に生じるトルクの振幅をガウス関数に乗じた関数は、横軸を時間(単位:秒)とし、縦軸をトルク(単位:Nm)とする波形を形成する。振幅の例は、ヒトの歩行時の脚の最大トルクであり、例えば20Nm等である。そして、複数のガウス関数を重ね合わせて、実際のヒトの歩行時の脚のトルク及び時間の波形に最も近い重ね合わせ方法が見つけ出される。このとき、様々な2つのパラメータμ,σを有するn個のガウス関数f
1(x),f
2(x),・・・,f
n(x)を用いて、実際のヒトの歩行データに対してガウスフィッティングを行うことによって、ガウス関数が得られる。さらに、得られた複数のガウス関数を重ね合わせることによって、新たなガウス関数が得られる。この新たなガウス関数の2つのパラメータμ,σを調整することで、アシストの入力プロフィールを作成することができる。
【0169】
また、各アシストにおけるワイヤ張力の入力プロフィールの付与期間は、各歩行フェーズを0〜100%を用いて表す場合、各脚の立脚期では当該脚の歩行フェーズの15%以上40%以下の期間とし、各脚の遊脚期では当該脚の歩行フェーズの65%以上90%以下の期間としたが、これに限ったものではない。例えば、左方向への誘導時の左脚の外旋のアシスト、及び右方向への誘導時の右脚の外旋のアシストにおいて、前述した期間での入力プロフィールでは、ユーザによっては、遊脚期終了時に外旋状態の脚が元の状態に戻ってしまう場合ある。この場合、外旋のアシストが方向誘導へ与える影響力が小さくなる可能性がある。そのようなユーザに対しては、遊脚期における外旋のアシスト期間を長くして、例えば、かかとの接地後も外旋のアシストが続くようにしてもよい。こうすることで、ユーザは、必然的に足が外側に開いた状態で接地することになり、より方向転換を行いやすくなる。アシスト装置100は、上記ユーザに対するアシストの実績から、アシスト期間の延長を判定してもよく、予め入力されたユーザの情報により、アシスト期間の延長を判定してもよい。
【0170】
例えば、
図27を参照すると、ユーザを右方向に方向転換させる場合のアシスト装置100におけるワイヤ110の張力を増加させるタイミングと、張力が増加されるワイヤ110との組み合わせの別例が、
図26と同様に示されている。
図27は、右脚の外旋のアシストが、かかとの接地後も行われる場合のワイヤ張力の入力プロフィールを示す。
図27の例では、アシスト装置100は、右脚に外旋のアシスト力を与え、このとき、右脚の歩行フェーズにおいて、65%以上110%以下の期間の全体において、ワイヤ110a5及び110a7の張力を連続的に増加する。これにより、ユーザは、遊脚期を超えて右脚の外旋のアシストを受け、右足が完全に接地するまで右脚の外旋状態を維持し、目的の方向に向けた状態で右足を着地させる。よって、方向転換誘導の効果が少ないユーザであっても、アシスト装置100による方向転換誘導の効果が向上する。
【0171】
[2−5−2.方向転換アシストの第二のパターンの動作]
アシスト装置100がユーザの方向転換をアシストする動作の第二のパターンの動作を説明する。アシスト装置100は、第一のパターンの動作では、左脚の遊脚期及び右脚の立脚期に左脚及び右脚にアシスト力を付与する、又は、左脚の立脚期及び右脚の遊脚期に左脚及び右脚にアシスト力を付与していた。第二のパターンの動作では、アシスト装置100は、主に左脚及び右足の遊脚期にそれぞれ、左脚及び右脚にアシスト力を付与する。
【0172】
図28を参照すると、第二のパターンの動作に基づき、ユーザを左方向に方向転換させる場合のアシスト装置100におけるワイヤ110の張力を増加させるタイミングと、張力が増加されるワイヤ110との組み合わせ例が、
図25と同様に示されている。アシスト装置100は、ユーザを左方向に誘導するために、ワイヤ110a2、110a4、110a6及び110a8の張力を増加し、左脚を外旋し、右脚を内旋するアシストを行う。
【0173】
ユーザを左方向へと誘導する際、アシスト装置100は、まず、右脚の歩行フェーズの65%の付近のタイミングで、右脚に内旋のアシスト力を与える。上記タイミングは、ユーザの右脚の遊脚期に含まれ、ユーザの左足のかかとが接地してから、左足のつま先が接地するまでの間のタイミングでもある。このとき、アシスト装置100は、ワイヤ110a6及び110a8に、同時に、第1の閾値以上の張力を加え、例えば100Nの張力を加える。上記第1の閾値は、第一のパターンの動作の第1の閾値と同じである。アシスト装置100は、右脚の歩行フェーズの65%以上120%以下の期間の全体において、右脚に内旋のアシスト力を連続的に与える。右脚の歩行フェーズの120%は、左脚の歩行フェーズの70%に相当する。このとき、右脚は立脚期にあり、左脚は遊脚期にある。また、右脚への内旋のアシストにおいて、ワイヤ110a6及び110a8の張力は、右脚の歩行フェーズの約68%以上110%以下の期間の全体において、100Nの最大値を連続的にとる。
【0174】
さらに、アシスト装置100は、左脚の歩行フェーズの65%の付近のタイミングで、左脚に外旋のアシスト力を与える。上記タイミングは、ユーザの左脚の遊脚期に含まれ、ユーザの右足のかかとが接地してから、右足のつま先が接地するまでの間のタイミングでもある。このとき、アシスト装置100は、ワイヤ110a2及び110a4に、同時に、第1の閾値以上の張力を加え、例えば100Nの張力を加える。アシスト装置100は、左脚の歩行フェーズの65%以上120%以下の期間の全体において、左脚に外旋のアシスト力を連続的に与える。左脚の歩行フェーズの120%は、右脚の歩行フェーズの170%に相当する。このとき、左脚は立脚期にあり、右脚は遊脚期にある。また、左脚への外旋のアシストにおいて、ワイヤ110a2及び110a4の張力は、左脚の歩行フェーズの約68%以上110%以下の期間の全体において、100Nの最大値を連続的にとる。
【0175】
なお、右脚及び左脚それぞれにおいて、歩行フェーズの65%以上120%以下の期間のうち、65%以上100%以下の期間は、1つの歩行フェーズ(第1の歩行フェーズと呼ぶ)に含まれ、100%以上120%以下の期間は、第1の歩行フェーズの次の歩行フェーズに含まれる。
【0176】
上述から、ワイヤ110a6及び110a8の張力が最大となる期間と、ワイヤ110a2及び110a4の張力が最大となる期間とが、重複していない。つまり、ユーザの左脚及び右脚が一緒に最大張力による強いアシスト力を受けることがない。さらに、立脚期にありユーザを支えている脚は、アシスト装置100によるアシスト力を受けない。よって、ユーザは、自身を支えている脚を安定した状態に維持することができる。
【0177】
また、遊脚期にある脚が、アシスト装置100によるアシスト力を受けるため、アシスト装置100は、小さいアシスト力でユーザの脚を方向転換することができる。さらに、アシスト力の付与が、遊脚期にある脚が着地した直後まで継続されるため、ユーザは、着地した足の向きを、方向転換の方向、つまり曲がるべき方向に維持することができる。これにより、スムーズなユーザの方向転換が可能になる。
【0178】
また、上述では、アシスト装置100は、第二のパターンの動作によりユーザを左方向へ方向転換させたが、左方向と同様に、ユーザを右方向へ方向転換させることができる。例えば、第二のパターンの動作での右方向への方向転換に関連するワイヤ及びワイヤ張力の入力プロフィールは、
図29のように示すことができる。この場合、アシスト装置100は、まず、左脚の歩行フェーズの65%以上120%以下の期間の全体において、ワイヤ110a1及び110a3の張力を増加させて、左脚に内旋のアシスト力を連続的に与える。左脚への内旋のアシストにおいて、ワイヤ110a1及び110a3の張力は、左脚の歩行フェーズの約68%以上110%以下の期間の全体において、最大値を連続的にとる。次いで、アシスト装置100は、右脚の歩行フェーズの65%以上120%以下の期間の全体において、ワイヤ110a5及び110a7の張力を増加させて、右脚に外旋のアシスト力を連続的に与える。右脚への外旋のアシストにおいて、ワイヤ110a5及び110a7の張力は、右脚の歩行フェーズの約68%以上110%以下の期間の全体において、最大値を連続的にとる。左脚の歩行フェーズの120%は、右脚の歩行フェーズの70%に相当する。
【0179】
また、上述では、アシスト装置100は、ユーザを左方向へ方向転換させる場合、まず、右脚にアシスト力を付与し、その後に、左脚にアシスト力を付与したが、上記と反対に、最初に、左脚にアシスト力を付与してもよい。同様に、アシスト装置100は、ユーザを右方向へ方向転換させる場合、まず、左脚にアシスト力を付与し、その後に、右脚にアシスト力を付与したが、上記と反対に、最初に、右脚にアシスト力を付与してもよい。
【0180】
[2−4−3.方向転換アシストの第三のパターンの動作]
アシスト装置100がユーザの方向転換をアシストする動作の第三のパターンの動作を説明する。アシスト装置100の第三のパターンの動作は、第二のパターンの動作において、ワイヤに付与する張力の入力プロフィールの形状を変更したものである。具体的には、第三のパターンの動作では、入力プロフィールにおける立ち下がり部分、つまり張力の降下部分の傾斜が、第二のパターンの動作よりも緩やかにされている。
【0181】
図30を参照すると、第三のパターンの動作に基づき、ユーザを左方向に方向転換させる場合のアシスト装置100におけるワイヤ110の張力を増加させるタイミングと、張力が増加されるワイヤ110との組み合わせ例が、
図28と同様に示されている。アシスト装置100は、ユーザを左方向に誘導するために、ワイヤ110a2、110a4、110a6及び110a8の張力を増加し、左脚を外旋し、右脚を内旋するアシストを行う。
【0182】
図30の例では、アシスト装置100は、まず、右脚の歩行フェーズの65%以上120%以下の期間の全体において、右脚に内旋のアシスト力を連続的に与える。また、右脚への内旋のアシストにおいて、ワイヤ110a6及び110a8の張力が、右脚の歩行フェーズの約68%以上90%以下の期間の全体において、最大値を連続的にとる。ここでのワイヤ110a6及び110a8の張力の最大値の一例は、100Nである。よって、アシスト装置100は、右脚の歩行フェーズの65%以上90%以下の期間において、ワイヤ110a6及び110a8に、第2の閾値以上の張力を加える。なお、第2の閾値は、第1の閾値よりも大きい値である。第2の閾値は、ユーザが、アシスト装置100によるアシストを受けつつ歩行する際に、ユーザに受け入れ可能な張力の最大値に対する割合を用いて決定されてもよい。例えば、第2の閾値は、ユーザに受け入れ可能な張力の最大値の一例である100Nに対する80%の割合である80Nであってもよい。なお、上記第1の閾値は、第一のパターンの動作での第1の閾値と同じである。
【0183】
ワイヤ110a6及び110a8の張力の入力プロフィールは、歩行フェーズの10%を超える期間にわたって、本例では、右脚の歩行フェーズの90%超120%以下の期間全体にわたって、ワイヤ張力を次第に減少する線形を描く。よって、アシスト装置100は、右脚の歩行フェーズの90%超120%以下の期間において、ワイヤ110a6及び110a8に、第1の閾値以上第2の閾値未満の張力を加える。さらに、本例では、ワイヤ張力は、右脚の遊脚期の末期において、10%以上の期間の歩行フェーズにわたって、減少する。そして、本例では、ワイヤ張力の入力プロフィールは、右脚の歩行フェーズの90%超120%以下の期間の全体において、凹曲線を描く。この場合、ワイヤ張力は、歩行フェーズが進むに従って、減少する割合を小さくする、つまり、減少の勾配を緩やかにする。
【0184】
さらに、アシスト装置100は、左脚の歩行フェーズの65%以上120%以下の期間の全体において、左脚に外旋のアシスト力を連続的に与える。また、左脚への外旋のアシストにおいて、ワイヤ110a2及び110a4の張力が、左脚の歩行フェーズの約68%以上90%以下の期間の全体において、最大値を連続的にとる。ここでのワイヤ110a2及び110a4の張力の最大値の一例は、100Nである。よって、アシスト装置100は、左脚の歩行フェーズの65%以上90%以下の期間において、ワイヤ110a2及び110a4に、第2の閾値以上の張力を加える。なお、左脚の歩行フェーズの65%は、右脚の歩行フェーズの115%に相当する。
【0185】
ワイヤ110a2及び110a4の張力の入力プロフィールは、歩行フェーズの10%を超える期間にわたって、本例では、左脚の歩行フェーズの90%超120%以下の期間全体にわたって、ワイヤ張力を次第に減少する線形を描く。よって、アシスト装置100は、左脚の歩行フェーズの90%超120%以下の期間において、ワイヤ110a2及び110a4に、第1の閾値以上第2の閾値未満の張力を加える。さらに、本例では、ワイヤ張力は、左脚の遊脚期の末期において、10%以上の期間の歩行フェーズにわたって、減少する。そして、本例では、ワイヤ張力の入力プロフィールは、左脚の歩行フェーズの90%超120%以下の期間の全体において、凹曲線を描く。この場合、ワイヤ張力は、歩行フェーズが進むに従って、減少する割合を小さくする、つまり、減少の勾配を緩やかにする。
【0186】
上述から、遊脚期にある脚は、アシスト装置100によるアシスト力を受けるが、上記脚が受けるアシスト力は、遊脚期の末期から徐々に弱められる。このため、ユーザは、アシスト力を受けている脚が着地する直前に、アシスト力に逆らって脚を動かすことが容易にできるようになる。例えば、ユーザは、アシスト力を受けている脚が着地するときの足の向きを、自身で調整することができる。これにより、ユーザが、障害物を避ける、進行する人又は物との接触を避ける、飛来物を避ける等の動作をすることによって、歩行中にユーザの重心が予定外の変化をした場合でも、ユーザは、遊脚期の脚を安定した状態で着地させることができる。
【0187】
なお、アシスト装置100が、ユーザの重心の予定外の変化を検出し、検出結果に基づき、第三のパターンの動作を採用してもよい。この場合、アシスト装置100は、8つのワイヤ110a1〜110a8の動きを、モータ114a1〜114a8の挙動を介して検出し、検出したワイヤ110a1〜110a8の動きに基づき、ユーザの重心の予定外の変化を検出してもよい。例えば、ユーザの重心が予定外に変化することによって、ユーザがバランスを崩し姿勢を変化させると、ワイヤ110a1〜110a8のいずれかが、モータ114a1〜114a8から引き出される場合がある。これにより、ユーザの重心の予定外の変化を検出することが可能である。又は、アシスト装置100は、位置情報検出部160の加速度センサ及びジャイロセンサの計測結果から、ユーザの動きを検出し、検出されたユーザの動きに基づき、ユーザの重心の予定外の変化を検出してもよい。
【0188】
また、上述では、アシスト装置100は、第三のパターンの動作によりユーザを左方向へ方向転換させたが、左方向と同様に、ユーザを右方向へ方向転換させることができる。例えば、第三のパターンの動作での右方向への方向転換に関連するワイヤ及びワイヤ張力の入力プロフィールは、
図31のように示すことができる。この場合、アシスト装置100は、まず、左脚の歩行フェーズの65%以上120%以下の期間の全体において、ワイヤ110a1及び110a3の張力を増加させて、左脚に内旋のアシスト力を連続的に与える。左脚への内旋のアシストにおいて、ワイヤ110a1及び110a3の張力は、左脚の歩行フェーズの約68%以上90%以下の期間の全体において、最大値を連続的にとる。ワイヤ110a1及び110a3の張力の入力プロフィールは、左脚の歩行フェーズの90%超120%以下の期間全体にわたって、ワイヤ張力を次第に減少するように、凹曲線の線形を描く。次いで、アシスト装置100は、右脚の歩行フェーズの65%以上120%以下の期間の全体において、ワイヤ110a5及び110a7の張力を増加させて、右脚に外旋のアシスト力を連続的に与える。右脚への外旋のアシストにおいて、ワイヤ110a5及び110a7の張力は、右脚の歩行フェーズの約68%以上90%以下の期間の全体において、最大値を連続的にとる。ワイヤ110a5及び110a7の張力の入力プロフィールは、右脚の歩行フェーズの90%超120%以下の期間の全体にわたって、ワイヤ張力を次第に減少するように、凹曲線の線形を描く。左脚の歩行フェーズの120%は、右脚の歩行フェーズの70%に相当する。
【0189】
また、上述では、アシスト装置100は、ユーザを左方向へ方向転換させる場合、まず、右脚にアシスト力を付与し、その後に、左脚にアシスト力を付与したが、上記と反対に、最初に、左脚にアシスト力を付与してもよい。同様に、アシスト装置100は、ユーザを右方向へ方向転換させる場合、まず、左脚にアシスト力を付与し、その後に、右脚にアシスト力を付与したが、上記と反対に、最初に、右脚にアシスト力を付与してもよい。
【0190】
[2−5−4.方向転換アシストの第四のパターンの動作]
アシスト装置100がユーザの方向転換をアシストする動作の第四のパターンの動作を説明する。アシスト装置100の第四のパターンの動作は、第三のパターンの動作において、ワイヤに付与する張力の入力プロフィールの形状を変更したものである。具体的には、第四のパターンの動作では、入力プロフィールにおける立ち上がり部分、つまり張力の上昇部分の傾斜が、第三のパターンの動作よりも緩やかにされている。
【0191】
図32を参照すると、第四のパターンの動作に基づき、ユーザを左方向に方向転換させる場合のアシスト装置100におけるワイヤ110の張力を増加させるタイミングと、張力が増加されるワイヤ110との組み合わせ例が、
図30と同様に示されている。アシスト装置100は、ユーザを左方向に誘導するために、ワイヤ110a2、110a4、110a6及び110a8の張力を増加し、左脚を外旋し、右脚を内旋するアシストを行う。
【0192】
図32の例では、アシスト装置100は、まず、右脚の歩行フェーズの65%以上110%以下の期間の全体において、右脚に内旋のアシスト力を連続的に与える。また、右脚への内旋のアシストにおいて、ワイヤ110a6及び110a8の張力が、右脚の歩行フェーズの80%以上90%以下の期間の全体において、最大値を連続的にとる。ここでのワイヤ110a6及び110a8の張力の最大値の一例は、100Nである。よって、アシスト装置100は、右脚の歩行フェーズの80%以上90%以下の期間において、ワイヤ110a6及び110a8に、第2の閾値以上の張力を加える。なお、上記第2の閾値は、第三のパターンの動作の第2の閾値と同じである。
【0193】
ワイヤ110a6及び110a8の張力の入力プロフィールは、歩行フェーズの10%を超える期間にわたって、本例では、右脚の歩行フェーズ65%以上80%未満の期間全体にわたって、ワイヤ張力を次第に増加する線形を描く。よって、アシスト装置100は、右脚の歩行フェーズの65%以上80%未満の期間において、ワイヤ110a6及び110a8に、第1の閾値以上第2の閾値未満の張力を加える。なお、上記第1の閾値は、第一のパターンの動作での第1の閾値と同じである。
【0194】
さらに、当該入力プロフィールは、歩行フェーズの10%を超える期間にわたって、本例では、右脚の歩行フェーズの90%超110%以下の期間全体にわたって、ワイヤ張力を次第に減少する線形を描く。本例では、ワイヤ張力を減少する期間が、第三のパターンの動作よりも短くなっている。また、本例では、ワイヤ張力は、右脚の遊脚期の末期において、10%以上の期間の歩行フェーズにわたって、減少する。よって、アシスト装置100は、右脚の歩行フェーズの90%超110%以下の期間において、ワイヤ110a6及び110a8に、第1の閾値以上第2の閾値未満の張力を加える。
【0195】
そして、本例では、ワイヤ張力の入力プロフィールは、右脚の歩行フェーズの65%以上80%未満の期間及び90%超110%以下の期間の全体において、凹曲線を描く。増加時のワイヤ張力は、歩行フェーズが進むに従って、増加する割合を大きくする。減少時のワイヤ張力は、歩行フェーズが進むに従って、減少する割合を小さくする。
【0196】
さらに、アシスト装置100は、左脚の歩行フェーズの65%以上110%以下の期間の全体において、左脚に外旋のアシスト力を連続的に与える。また、左脚への外旋のアシストにおいて、ワイヤ110a2及び110a4の張力が、左脚の歩行フェーズの80%以上90%以下の期間の全体において、最大値を連続的にとる。ここでのワイヤ110a2及び110a4の張力の最大値の一例は、100Nである。よって、アシスト装置100は、左脚の歩行フェーズの80%以上90%以下の期間において、ワイヤ110a2及び110a4に、第2の閾値以上の張力を加える。なお、左脚の歩行フェーズの65%は、右脚の歩行フェーズの115%に相当する。
【0197】
ワイヤ110a2及び110a4の張力の入力プロフィールは、歩行フェーズの10%を超える期間にわたって、本例では、左脚の歩行フェーズの65%以上80%未満の期間全体にわたって、ワイヤ張力を次第に増加する線形を描く。よって、アシスト装置100は、左脚の歩行フェーズの65%以上80%未満の期間において、ワイヤ110a2及び110a4に、第1の閾値以上第2の閾値未満の張力を加える。
【0198】
さらに、当該入力プロフィールは、歩行フェーズの10%を超える期間にわたって、本例では、左脚の歩行フェーズの90%超110%以下の期間全体にわたって、ワイヤ張力を次第に減少する線形を描く。本例では、ワイヤ張力を減少する期間が、第三のパターンの動作よりも短くなっている。また、本例では、ワイヤ張力は、左脚の遊脚期の末期において、10%以上の期間の歩行フェーズにわたって、減少する。よって、アシスト装置100は、左脚の歩行フェーズの90%超110%以下の期間において、ワイヤ110a2及び110a4に、第1の閾値以上第2の閾値未満の張力を加える。
【0199】
そして、本例では、ワイヤ張力の入力プロフィールは、左脚の歩行フェーズの65%以上80%未満の期間及び90%超110%以下の期間の全体において、凹曲線を描く。増加時のワイヤ張力は、歩行フェーズが進むに従って、増加する割合を大きくする。減少時のワイヤ張力は、歩行フェーズが進むに従って、減少する割合を小さくする。
【0200】
上述から、遊脚期にある脚は、アシスト装置100によるアシスト力を受けるが、上記脚が受けるアシスト力は、初期において徐々強められ、遊脚期の末期から徐々に弱められる。このため、ユーザは、アシスト力の受け始めと、アシスト力を受けている脚が着地する直前とに、アシスト力に逆らって脚を動かすことが容易にできるようになる。さらに、上記脚が受けるアシスト力が最大値をとる期間が、第二のパターン及び第三のパターンよりも大幅に短くなっている。このような場合、脚にアシスト力を受けても、ユーザがアシスト力を感じる期間が短い。このため、アシスト力を受けるユーザは、当該脚が向きを変えるように動かされている感覚を抱かず、当該脚が向くべき方向が指示されている感覚を受け得る。また、歩行中にユーザの重心が予定外の変化をした場合でも、ユーザは、遊脚期の脚を安定した状態で着地させることができる。
【0201】
また、上述では、アシスト装置100は、第四のパターンの動作によりユーザを左方向へ方向転換させたが、左方向と同様に、ユーザを右方向へ方向転換させることができる。例えば、第四のパターンの動作での右方向への方向転換に関連するワイヤ及びワイヤ張力の入力プロフィールは、
図33のように示すことができる。この場合、アシスト装置100は、まず、左脚の歩行フェーズの65%以上110%以下の期間の全体において、ワイヤ110a1及び110a3の張力を増加させて、左脚に内旋のアシスト力を連続的に与える。左脚への内旋のアシストにおいて、ワイヤ110a1及び110a3の張力は、左脚の歩行フェーズの80%以上90%以下の期間の全体において、最大値を連続的にとる。ワイヤ110a1及び110a3の張力の入力プロフィールは、左脚の歩行フェーズの65%以上80%未満の期間全体にわたって、ワイヤ張力を次第に増加するように、凹曲線の線形を描く。また、入力プロフィールは、左脚の歩行フェーズの90%超110%以下の期間全体にわたって、ワイヤ張力を次第に減少するように、凹曲線の線形を描く。
【0202】
次いで、アシスト装置100は、右脚の歩行フェーズの65%以上110%以下の期間の全体において、ワイヤ110a5及び110a7の張力を増加させて、右脚に外旋のアシスト力を連続的に与える。右脚への外旋のアシストにおいて、ワイヤ110a5及び110a7の張力は、右脚の歩行フェーズの80%以上90%以下の期間の全体において、最大値を連続的にとる。ワイヤ110a5及び110a7の張力の入力プロフィールは、右脚の歩行フェーズの65%以上80%未満の期間全体にわたって、ワイヤ張力を次第に増加するように、凹曲線の線形を描く。また、入力プロフィールは、右脚の歩行フェーズの90%超110%以下の期間全体にわたって、ワイヤ張力を次第に減少するように、凹曲線の線形を描く。左脚の歩行フェーズの110%は、右脚の歩行フェーズの60%に相当する。
【0203】
また、上述では、アシスト装置100は、ユーザを左方向へ方向転換させる場合、まず、右脚にアシスト力を付与し、その後に、左脚にアシスト力を付与したが、上記と反対に、最初に、左脚にアシスト力を付与してもよい。同様に、アシスト装置100は、ユーザを右方向へ方向転換させる場合、まず、左脚にアシスト力を付与し、その後に、右脚にアシスト力を付与したが、上記と反対に、最初に、右脚にアシスト力を付与してもよい。
【0204】
[2−5−5.方向転換アシストの変形例]
アシスト装置100は、ユーザの1つの方向転換を誘導する際、ユーザの左脚及び右脚のそれぞれに対して、内旋、外旋等の動作をアシストしていたが、これに限ったものではない。アシスト装置100は、ユーザの1つの方向転換を誘導する際、ユーザの片脚をアシストしてもよい。例えば、内旋のアシストと外旋のアシストとの間で、ユーザが受ける効果の大きさが、ユーザによって異なる。このため、アシスト装置100は、ユーザに応じて、より高いアシストの効果が見込める脚を選択してもよい。この場合、アシスト装置100は、ユーザによる通知に基づき、より高いアシストの効果が見込める脚を選択してもよい。例えば、左方向への誘導の場合、ユーザが、左脚の外旋のアシストの方が右脚の内旋のアシストよりも効果があると感じた場合、ユーザは、アシスト装置100の図示しない入力装置、又は、アシスト装置100の外部の端末装置500を用いて、「左脚の外旋のアシストの選択」を決定してもよい。つまり、ユーザが自身にとって効果が大きいと感じる方の脚を選択してもよい。
【0205】
図34A及び
図34Bを参照すると、アシスト装置100が、ユーザの片脚にアシスト力を付与して、ユーザを左方向に誘導する例が示されている。
図34Aは、ユーザを左方向に方向転換させる場合にアシスト装置100がワイヤ110a2及び110a4の張力を増加させる例を示す。
図34Bは、ユーザを左方向に方向転換させる場合にアシスト装置100がワイヤ110a6及び110a8の張力を増加させる例を示す。なお、本例は、第一のパターンの動作をベースとする。本例の場合、アシスト装置100は、
図34Aに示すように、左脚の遊脚期にワイヤ110a2及び110a4の張力を増加する、又は、
図34Bに示すように、右脚の立脚期にワイヤ110a6及び110a8の張力を増加する。
【0206】
また、
図35A及び
図35Bを参照すると、アシスト装置100が、ユーザの片脚にアシスト力を付与して、ユーザを右方向に誘導する例が示されている。
図35Aは、ユーザを右方向に方向転換させる場合にアシスト装置100がワイヤ110a1及び110a3の張力を増加させる例を示す。
図35Bは、ユーザを右方向に方向転換させる場合にアシスト装置100がワイヤ110a5及び110a7の張力を増加させる例を示す。なお、本例も、第一のパターンの動作をベースとする。本例の場合、アシスト装置100は、
図35Aに示すように、左脚の立脚期にワイヤ110a1及び110a3の張力を増加する、又は、
図35Bに示すように、右脚の遊脚期にワイヤ110a5及び110a7の張力を増加する。
【0207】
上述から、ユーザの方向転換を誘導する際、アシスト装置100が張力を付与するワイヤの数量が、第一〜第四のパターンの動作と比較して半分になる。このため、アシスト装置100の電力消費量が低減し、例えば、アシスト装置100が備える一次電池又は二次電池等の電源200の長時間の使用が可能となる。さらに、アシスト装置100は、1つのワイヤに張力を付与することによって方向転換の誘導が可能であるユーザに対して、例えば、ユーザの前部のワイヤに張力を付与することによって、方向転換を誘導してもよい。一般的に、ユーザの前部のワイヤへの張力の付与は、ユーザの後部のワイヤへの張力の付与よりも、ユーザの方向転換の誘導に効果的である。1つのワイヤへの張力の付与により、電源200のさらなる長時間の使用が可能となる。
【0208】
なお、上述のように、アシスト装置100は、張力を付与するワイヤの数量を減少しても、ユーザの方向転換を誘導することができるが、ユーザを所定の方向へ確実に誘導するためには、張力を付与するワイヤの数量が多くもよい。つまり、アシスト装置100は、ユーザの片脚をアシストするよりも、両脚をアシストすることによって、効果的なユーザの誘導を可能にする。
【0209】
また、アシスト装置100は、第一〜第四のパターンの動作によりユーザの方向転換を誘導する際、ユーザの左脚及び右脚に対して、内旋又は外旋するようにアシストしたが、これに限ったものではない。アシスト装置100は、例えば、ユーザの左脚及び右脚に対して、内転又は外転するようにアシストしてもよい。
【0210】
図36A及び
図36Bを参照すると、遊脚期の右脚を外転及び内転するアシスト力を受けたユーザの動作の例が示されている。
図36Aに示すように、ユーザが、アシスト装置100から遊脚期の右脚を外転するアシスト力、つまりトルクを受けると、ユーザの重心は、右方向、つまり、アシスト力を受ける右脚の方向に移動する。これにより、ユーザは、重心の移動方向である右方向へ方向転換するように誘導される。
図36Bに示すように、ユーザが、アシスト装置100から遊脚期の右脚を内転するアシスト力を受けると、ユーザの重心は、左方向、つまり、アシスト力を受ける右脚と反対の方向に移動する。これにより、ユーザは、左方向へ方向転換するように誘導される。また、ユーザが、遊脚期の左脚に外転又は内転するアシスト力を受けた場合、上述の右脚の場合と逆方向に、つまり、左方向又は右方向に誘導される。
【0211】
図37A及び
図37Bを参照すると、立脚期の左脚を外転及び内転するアシスト力を受けたユーザの動作の例が示されている。
図37Aに示すように、ユーザが、アシスト装置100から立脚期の左脚を外転するアシスト力を受けると、ユーザの重心は、右方向、つまり、アシスト力を受ける左脚と反対の方向に移動する。これにより、ユーザは、右方向へ方向転換するように誘導される。
図37Bに示すように、ユーザが、アシスト装置100から立脚期の左脚を内転するアシスト力を受けると、ユーザの重心は、左方向、つまりアシスト力を受ける左脚の方向に移動する。これにより、ユーザは、左方向へ方向転換するように誘導される。また、ユーザが、立脚期の右脚に外転又は内転するアシスト力を受けた場合、上述の左脚の場合と逆方向に、つまり、左方向又は右方向に誘導される。
【0212】
上述から、アシスト装置100は、例えば、ユーザを右方向に方向転換するように誘導する場合、右脚に対して、遊脚期に外転のアシストを行い、立脚期には内転のアシストを行う。また、アシスト装置100は、左脚に対して、遊脚期に内転のアシストを行い、立脚期には外転のアシストを行う。これにより、アシストを受けている間、ユーザの体の重心が常に右方向に移動するため、ユーザは、右方向へ方向転換するように誘導される。左方向への方向転換についても、ユーザの体の重心が常に左方向に移動するように、アシスト装置100は、右脚に対して、遊脚期に内転のアシストを行い、立脚期には外転のアシストを行う。また、アシスト装置100は、左脚に対して、遊脚期に外転のアシストを行い、立脚期には内転のアシストを行う。
【0213】
例えば、
図38には、外転及び内転のアシストを用いてユーザを右方向に方向転換させる場合のアシスト装置100におけるワイヤ110の張力を増加させるタイミングが示されている。
図38に示すように、アシスト装置100は、右脚の立脚期にワイヤ110a5及び110a8の張力を増加することで、ユーザの右脚に内転のアシスト力を与える。さらに、アシスト装置100は、右脚の遊脚期にワイヤ110a6及び110a7の張力を増加することで、ユーザの右脚に外転のアシスト力を与える。また、アシスト装置100は、左脚の遊脚期にワイヤ110a1及び110a4の張力を増加することで、ユーザの左脚に内転のアシスト力を与える。さらに、アシスト装置100は、左脚の立脚期にワイヤ110a2及び110a3の張力を増加することで、ユーザの左脚に外転のアシスト力を与える。これにより、ユーザの重心が右方向に移動する。
【0214】
なお、上述では、アシスト装置100は、各脚に対して、立脚期及び遊脚期の間で、外転方向及び内転方向の互いに異なる方向にトルクをかけたが、これに限ったものではない。例えば、上述では、アシスト装置100は、左脚及び右脚に対して、4種類のアシスト力、つまりアシストトルクを加えたが、4種類のアシストトルクの一部を加えてもよい。例えば、右方向への方向転換の誘導であれば、アシスト装置100は、遊脚期の右脚を外転させるアシストトルクと、立脚期の左脚を外転させるアシストトルクとを加えてもよい。又は、アシスト装置100は、遊脚期の右脚を外転させるアシストトルクと、遊脚期の左脚を内転させるアシストトルクとを加えてもよい。ユーザが4種類のアシストトルクを受ける場合、左脚及び右脚が一緒に外転又は内転のアシストトルクを受ける。これにより、ユーザが体感する信号が多くなるため、ユーザによっては、混乱を生み、逆効果となる可能性がある。したがって、アシスト装置100は、特定のタイミング、又は、各脚において特定の期間にアシストトルクをかけてもよい。
【0215】
また、第一〜第四のパターンの動作によるユーザの脚の外旋及び内旋をアシストするケースと、上述のユーザの脚の外転及び内転をアシストするケースとを組み合わせてもよい。この場合、アシスト装置100は、脚の外旋及び内旋のためのワイヤ張力の入力プロフィールと、脚の外転及び内転のためのワイヤ張力の入力プロフィールとを足し合わせたワイヤ張力の入力プロフィールを用いてもよい。アシスト装置100は、外旋及び内旋のアシストトルクを与えることにより、ユーザの足先の向きを変更し、外転及び内転のアシストトルクを与えることにより、ユーザの重心を移動させ、これにより、ユーザの方向転換の誘導を効果的にすることができる。
【0216】
[3.実施例]
実施の形態に係るアシスト装置100を用いて、ユーザの歩行方向を誘導した実施例の結果を、
図39〜
図42に示す。実施例1では、アシスト装置100は、ユーザAに対して、第一のパターンの動作により歩行方向を誘導した。実施例2では、アシスト装置100は、ユーザBに対して、第一のパターンの動作により歩行方向を誘導した。
図39及び
図40を参照すると、アシスト装置100を用いて歩行方向の誘導を受けたユーザA及びBそれぞれの歩行軌跡を上方から見た図が示されている。
図39は実施例1の結果を示し、
図40は実施例2の結果を示す。
図39及び
図40において、横軸のX方向位置は、ユーザA及びBの進行方向である直進方向に沿う位置であり、縦軸のY方向位置は、当該直進方向に垂直な方向の位置である。アシスト装置100を装着したユーザA及びBは、目隠しをした状態でX方向の正方向へ歩き、その歩行過程においてアシスト装置100を用いた歩行方向の誘導を受けた。
図39及び
図40では、Xの値が0の位置にユーザが到達した時点から、アシスト装置100による歩行方向の誘導が開始された。
【0217】
図39及び
図40において、破線で示す軌跡は、
図25に示されるような左方向への方向転換の誘導を受けたユーザの歩行軌跡である。一点鎖線で示す軌跡は、
図26に示されるような右方向への方向転換の誘導を受けたユーザの歩行軌跡である。実線で示す軌跡は、進行方向へ直進する誘導を受けたユーザの歩行軌跡である。進行方向へ直進する誘導では、立脚期の脚に、伸展のアシストが行われた。また、各歩行軌跡は、複数回の歩行を試行して得られた歩行軌跡の平均歩行軌跡である。
図39及び
図40より、アシスト装置100を装着したユーザは、アシスト装置100が入力する方向、つまり、誘導する方向へと曲がって歩行することが示されている。さらに、
図39及び
図40においてユーザA及びBを比較すると、ユーザBの方が、大きく曲がって歩行していることから、個人に応じてアシスト装置100によるアシスト効果が異なることが示されている。
【0218】
また、
図41及び
図42を参照すると、
図39及び
図40の各歩行軌跡上の各点での歩行軌跡の曲率と、この点においてアシスト装置100がワイヤ110に付与した張力との関係が、示されている。
図41及び
図42において、縦軸は、歩行軌跡の曲率を示し、横軸は、ワイヤの張力を示す。なお、曲率1/rは、歩行軌跡上の各点において、この点での歩行軌跡の線形を円で近似し、その円の半径rの逆数を算出することによって求められる。
【0219】
図41及び
図42において、
図39及び
図40と同様に、破線は、左方向への誘導のケースを示し、一点鎖線は、右方向への誘導のケースを示し、実線は、直進方向への誘導のケースを示す。
図41及び
図42によると、左方向への方向転換の誘導を示す破線と、右方向への方向転換の誘導を示す一点鎖線とについて、直進方向への誘導を示す実線と比較して、ユーザA及びBの両方での曲率が大きくなっている。これにより、アシスト装置100による方向転換の誘導の効果があることが示されている。
【0220】
また、
図41及び
図42を比較すると、ユーザBの方が、ユーザAよりも曲率が大きくなっている。さらに、ユーザA及びBのいずれにおいても、特に、ワイヤ張力が40N以上であると、方向転換の誘導効果が大きいことが示されている。したがって、各ユーザに付与するワイヤ張力と、方向転換における各ユーザの曲率とを対応づけることで、各ユーザの方向転換の方向及び方向転換角度に必要なワイヤ張力を決定することが可能になる。このため、アシスト装置100は、経路の途中地点で、あらゆる方向及び方向転換角度でのユーザの歩行方向の誘導を行うことができる。
【0221】
[4.アシスト装置の動作の変形例]
図41及び
図42に関して上述したように、実施の形態に係るアシスト装置100は、ユーザの歩行軌跡の曲率と当該曲率に対応するワイヤ張力との関係を、ユーザ毎に算出してもよい。そして、アシスト装置100は、算出した関係に基づき、ユーザにアシスト力を付与するタイミングと、アシスト力の付与のためのワイヤ張力とを決定してもよい。この場合、アシスト装置100は、ユーザに対して複数回の歩行方向の誘導を行う。そして、アシスト装置100は、誘導の際、上半身ベルト111に配置された位置情報検出部160の加速度センサ、ジャイロセンサ及び地磁気センサ等からなる慣性計測装置(IMU(Inertial Measurement Unit)とも呼ばれる)から計測結果を取得する。なお、アシスト装置100は、ユーザが携帯する端末装置500から加速度、角速度及び地磁気等の計測結果を取得してもよい。そして、アシスト装置100の歩行方向決定部121は、計測結果からユーザの歩行軌跡を算出し、歩行軌跡上の各点での曲率を算出する。歩行方向決定部121は、算出した曲率を、当該曲率を算出した点において張力が付与されたワイヤ110及び付与された張力と対応付けて、記憶部150に記録する。
【0222】
アシスト装置100がユーザを経路に沿って誘導する場合、歩行方向決定部121は、経路データ及び地図情報に基づき、経路上の方向転換点での方向転換角度つまり曲がる角度と、方向転換点の前後の経路長とを取得する。さらに、歩行方向決定部121は、ユーザが方向転換点を曲がりきるために必要な歩数と、ユーザがたどる歩行軌跡の曲率とを算出する。アシスト装置100の駆動制御部122は、記憶部150に記憶されるワイヤ張力及び曲率の関係のデータベースと算出された曲率とを照合することによって、張力を付与するワイヤ110、ワイヤ110に張力を付与するタイミング、及びワイヤ110に付与する張力を決定する。この場合、駆動制御部122は、照合結果に基づき、記憶部150に記憶されるワイヤ−張力関係を変更することによって、上記決定をしてもよい。
【0223】
例えば、
図41及び
図42を参照すると、ユーザAの場合、付与するワイヤ張力が60N以上の領域では、曲率の増加量が小さいため、アシスト装置100によるアシスト効果がほぼ変わらないことが示される。また、ユーザBの場合、付与するワイヤ張力が80N以上の領域では、曲率が減少するため、このような領域にワイヤ張力を増加しても、アシスト装置100によるアシスト効果の向上に、ほぼ効果がないことが示される。このため、アシスト装置100は、ユーザに関するワイヤ張力と歩行軌跡の曲率との関係のデータベースを事前に構築する際に、各ユーザにおける有効なワイヤ張力の上限を決定することができ、例えば、ユーザAの場合に60N、ユーザBの場合に80N等に決定する。よって、アシスト装置100は、歩行方向の誘導におけるアシスト効果を大きくするために、付与するワイヤ張力を大きくするだけでなく、ユーザ毎のワイヤ張力の上限を考慮して、ワイヤ張力を決定することができる。これにより、アシスト装置100は、より省電力であっても、そうでない場合と同等のアシスト効果を生み出すことができる。また、アシスト装置100は、付与するワイヤ張力の上限に対応する歩行軌跡の曲率を記録し用いることで、各ユーザが経路中の方向転換を行うために要する歩数を算出することができ、最適な歩行方向の誘導を可能にする。
【0224】
なお、本変形例において、アシスト装置100は、歩行軌跡の曲率を算出するために、上半身ベルト111に配置された位置情報検出部160の慣性計測装置の計測結果を用いたが、これに限ったものではない。アシスト装置100は、方向転換のアシストのために張力を増加させていないワイヤ、つまりアシストに使用しないワイヤ110の長さ変化から、ユーザの股関節の角度変化を推定し、ユーザの方向転換角度を推定してもよい。アシスト装置100は、ワイヤ110の長さ変化を、ワイヤ110に接続されたモータ114の動作量から算出してもよい。なお、ワイヤ110の長さとは、ワイヤ110において、モータ114と膝ベルト112a又は112bとの間に存在する部分の長さである。
【0225】
例えば、
図43A及び
図43Bに示すように、アシスト装置100は、ユーザに左方向への方向転換を誘導する場合、第一のパターンの動作では、ワイヤ110a2及び110a4の張力を増加することで遊脚期の左脚の外旋をアシストする。さらに、アシスト装置100は、ワイヤ110a6及び110a8の張力を増加することで立脚期の右脚の内旋をアシストする。このとき、左脚の周りに配置された他のワイヤ、つまりアシストに使用しないワイヤ110a1及び110a3は、ユーザの左脚が外旋方向に曲がる際にモータ114a1及び114a3から引き出され、ワイヤ110a1及び110a3が長くなる。また、右脚の周りに配置された他のワイヤ、つまりアシストに使用しないワイヤ110a5及び110a7は、ユーザの右脚が内旋方向に曲がる際にモータ114a5及び114a7から引き出され、ワイヤ110a5及び110a7が長くなる。なお、アシスト装置100が、ユーザを右方向への方向転換を誘導する場合も、アシスト装置100がユーザの脚の動作をアシストする際に、アシストに使用しないワイヤ110が長くなる。
【0226】
アシスト装置100は、モータ114を用いて、アシストに使用しないワイヤ110を、ユーザが負荷を感じないほどの張力、例えば、5N程度の張力で常に引っ張っている。このため、脚の動作によりユーザの股関節の角度が変化すると、各ワイヤ110は、モータ114に引き込まれる又は引き出されることによって、その長さを変化させる。このとき、各モータ114は、各ワイヤ110の長さの変化に同調して動作する。よって、アシスト装置100は、各モータ114の動作量から、各ワイヤ110の長さの変化量を取得することができる。
【0227】
また、ユーザの股関節が回転すると、ユーザの歩行方向が変化する。このため、アシスト装置100のアシストを受けている脚におけるアシストに使用していないワイヤ110の長さの変化と、ユーザの方向転換の歩行軌跡における曲率との間には、相関がある。したがって、歩行軌跡における曲率は、当該歩行軌跡上の各点においてアシストを受けている脚におけるアシストに使用していないワイヤ110の長さ変化から、算出可能である。これにより、アシスト装置100は、慣性計測装置等のセンサを上半身ベルト111等に余分に取り付けることなく、ユーザの歩行軌跡の曲率を算出することができる。
【0228】
また、実施の形態に係るアシスト装置100は、
図44に示すように、パターン記憶部151をさらに備えてもよい。なお、
図44は、実施の形態に係るアシスト装置100の変形例の機能的な構成を示すブロックである。パターン記憶部151は、記憶部150と同様に、半導体メモリ又はハードディスク等で構成されてもよく、記憶部150に含まれてもよい。
【0229】
パターン記憶部151は、駆動制御部122から情報を受け取って格納し、パターン記憶部151に格納した情報が駆動制御部122によって取り出されることが可能であるように構成されている。具体的には、パターン記憶部151は、ユーザがアシスト装置100を使用するたびに、ユーザ情報と、駆動制御部122が出力した制御情報とを対応付けて記憶する。駆動制御部122は、ユーザがアシスト装置100を使用する場合、当該ユーザに対応する制御情報をパターン記憶部151から取得し、取得した制御情報を使用してモータ114を制御する。例えば、駆動制御部122は、制御情報として、ユーザの歩行方向を誘導する際にワイヤ110に付与したワイヤ張力と、ユーザを誘導した際の歩行軌跡の曲率との関係式を、ワイヤ張力を付与したワイヤ110と対応付けてパターン記憶部151に記憶する。また、駆動制御部122は、制御情報として、ユーザを誘導する経路上の方向転換点での方向転換に対して、アシストを行った歩数、アシスト開始地点から方向転換点までの距離等を、方向転換点でのユーザの方向転換角度と対応付けて、パターン記憶部151に記憶する。さらに、アシスト装置100による歩行方向の誘導では曲がりきれない方向転換点が経路上に発生した場合、駆動制御部122は、制御情報として、方向転換点での方向転換角度と、方向転換のためのアシストの開始地点から方向転換点までの距離とを対応付けて、パターン記憶部151に記憶する。
【0230】
例えば、アシスト装置100を使ったユーザUが、前回使用時に、90度の方向転換を要する方向転換点を右方向に曲がるのに左右の脚で6歩必要とし、左方向に曲がるのに左右の脚で8歩必要としたとする。駆動制御部122は、前回の使用時でユーザUの方向転換のアシストのために制御したワイヤ110、当該ワイヤ110に付与したワイヤ張力、及び当該ワイヤ張力の付与タイミングを、パターン記憶部151に記憶させる。そして、歩行方向決定部121が、ユーザUの次回使用時に、例えば、
図23Aに示すように、ユーザUが、第1の方向転換点で右方向に90度方向転換した後、第2の方向転換点で左方向に90方向転換する経路を決定する。この経路において、アシスト装置100により誘導されるユーザUは、第1の方向転換点での方向転換を6歩で完了すると、第2の方向転換点での方向転換を、第1の方向転換点での方向転換直後の4歩で完了する必要がある。この歩数は、左方向への方向転換にユーザUが必要とする歩数の8歩に対して不足する。このような場合、歩行方向決定部121は、パターン記憶部151にあるデータから、ユーザUは第2の方向転換点で左方向に曲がることができないと判定し、経路を修正する。このように、前回のデータをパターン記憶部151に記憶し、再利用することで、アシスト装置100は、歩行の誘導のエラーを抑えることができ、ユーザのより安全な使用を可能にする。
【0231】
また、アシスト装置100は、同一のユーザに対して行うアシストの方法を、一定に固定しなくてもよい。アシスト装置100のようなヒトの身体に対してアクティブに作用する装置は、使用回数が増えるにつれ、当該装置から受ける作用の慣れがユーザに発生するという特徴を持つ。このため、駆動制御部122は、パターン記憶部151に制御情報を記憶させる際、記憶されている制御情報のデータを、新しい制御情報で毎回更新し、最新のユーザの状態にあったデータに制御情報のパラメータを調整してもよい。これにより、アシスト装置100は、各ユーザの最新の状態に最適なアシスト方法を構築することができ、それにより、より確実に、ユーザを経路に沿って目的地まで誘導することができる。
【0232】
また、パターン記憶部151は、ユーザ情報及び制御情報だけでなく、ユーザがアシスト装置100を装着した時期、及び、その時のユーザの服装も記憶してもよい。例えば、ユーザが薄着である夏期では、ユーザが厚着である冬期と比較して、ユーザのモーメントアームが小さくなる。これにより、アシスト装置100が、ワイヤ110に同一の張力を付与しても、夏期にユーザの脚が受けるトルクは、冬期よりも小さくなる。したがって、例えば、アシスト装置100は、冬期と比較して、夏期に各ワイヤ110に付与する張力を、1.2倍等に割り増ししてもよい。
【0233】
[5.効果]
上述したように、本開示の実施の形態に係るアシスト装置100は、ユーザの股関節の動作をアシストする。アシスト装置100は、股関節の3方向の動作のアシストを行うために、延びる方向が互いに交差する2つのワイヤによるペアを複数備える。具体的には、各脚に、2つのペアのワイヤが配置されている。そして、各ペアのワイヤが延びる方向が互いに交差することから、アシスト装置100は、屈曲及び伸展方向だけでなく、外旋及び内旋方向、外転及び内転方向に脚の動作をアシストすることが可能である。アシスト装置100は、ユーザの歩行中に、所定のタイミングで所定のワイヤを引っ張ることで、ユーザの脚に外旋、内旋、外転又は内転方向のアシストトルクを発生させ、ユーザの歩行方向を誘導することができる。そして、アシスト装置100を装着したユーザが、アシスト装置100に目的地を設定すると、アシスト装置100は自動的に、ユーザを動かし、目的地まで誘導することができる。これにより、ユーザは、手に何を持たない手軽な状態で、アシスト装置100によって、行くべき方向に誘導されるため、例えば、ユーザが、認知症患者であっても、行方不明になることなく、元の場所に帰ってくることができる。
【0234】
[6.その他]
以上、1つ又は複数の態様に係るアシスト装置等について、実施の形態及び変形例に基づいて説明したが、本開示は、実施の形態及び変形例に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態及び変形例に施したものや、異なる実施の形態及び変形例における構成要素を組み合わせて構築される形態も、1つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0235】
例えば、実施の形態及び変形例に係るアシスト装置100において、制御部120がモータ114を動作させてワイヤ110に張力を発生させるタイミング、及び、張力の入力プロフィールに関する歩行フェーズの数値は、実施の形態及び変形例に記載した数値に限定されない。上記タイミング及び張力の入力プロフィールに関する歩行フェーズの数値は、実施の形態及び変形例に記載した数値に対して差異を有してよく、例えば、歩行フェーズで数%の差異を有していてもよい。
【0236】
実施の形態及び変形例に係るアシスト装置100において、ワイヤ110a1〜110a8のそれぞれにモータ114a1〜114a8が設けられていたが、これに限定されず、1つのモータが複数のワイヤに接続されてもよい。例えば、アシスト装置100は、右脚の内旋動作をアシストする場合、ワイヤ110a2及び104a4に張力を発生させた。このような場合、1つのモータが、ワイヤ110a2及び104a4を引っ張ってもよい。つまり、アシスト装置は、2つのワイヤに対して1つのモータが設けられるように、例えば、4つのモータを備えてもよい。
アシスト装置(100)は、ユーザの上半身に装着される上半身ベルト(111)と前記ユーザの左膝に装着される第1の膝ベルト(112a)及び前記ユーザの右膝に装着される第2の膝ベルト(112b)とを接続するワイヤ(110)と、モータ(114)とを備える。前記モータは、前記ユーザの左方向に回転する移動をアシストするとき、前記ユーザの左脚の第1の歩行フェーズの65%以上100%以下の期間、及び前記左脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間において、第2のワイヤ(110a2)及び第4のワイヤ(110a4)に第1の閾値以上の張力を発生させ、前記ユーザの右脚の第1の歩行フェーズの65%以上100%以下の期間、及び前記右脚の第2の歩行フェーズの0%以上20%以下の期間において、第6のワイヤ(110a6)及び第8のワイヤ(110a8)に前記第1の閾値以上の張力を発生させる。