(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス積層板の製造に採用されている従来の熱的手法は、一般に、積層板の外側層から積層板の内側コア層に向かって加熱または冷却するものであることを本発明者らは認識していた。このような加熱は、例えばマイクロ波吸収特性が著しく異なるガラス組成を有し得る積層板の、種々のガラス組成の熱的特性に対して非選択的である。こういった外側から内側への非選択的な手法では、典型的には外側ガラス層の温度および粘度を効果的に変化させることのみが可能であり、積層板の成形、切断、仕上げ、焼戻し、および再成形に特有の、特定の要件には対処することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本書では、ガラス積層板の種々の層の熱プロファイルおよび粘度プロファイルを、特にこれらの層が積層板構造の外側ガラスおよびコアガラスを意味する場合に管理するのに適した、ガラス積層板製造方法を提供する。本開示の製造方法は、(i)融合したガラス積層板の複数層での厚さ変動を最小にすること、(ii)ガラス積層板のエッジ仕上げの改善のために、特にシートが中心に張力がかかった露出したコアを有する場合、製造プロセスの温度場を制御および最適化すること、および(iii)ガラス積層板を、例えばハンドヘルド機器、TVのカバーガラス、および自動車用途、建築用途、さらに電化製品用途などの、3次元(3D)形状に成形する製造プロセス、にも非常に適している。ガラス積層板を切断する製造プロセスでは、本開示の製造方法を用いて積層シートの厚さに亘り所望の温度プロファイルを維持することで、中心張力を低減しかつ破壊の可能性を軽減することができる。
【0006】
本開示は、ガラス積層板のターゲット層を選択的に加熱することが可能であり、かつガラス積層板の厚さを通じて熱プロファイルおよび粘度プロファイルを制御することが可能な、製造プロセスを導入する。本書で開示される製造プロセスは、多層ガラス積層板の熱プロファイルを管理するために、その場での選択的加熱を採用する。より具体的には、本開示の特定の実施形態は、約300MHzから約300GHzまでのマイクロ波加熱を採用する。この加熱はマイクロ波のみの加熱でもよいし、あるいはマイクロ波加熱を赤外線(IR)、対流、および伝導などの従来の加熱手法と組み合わせて使用してもよい。
【0007】
ガラスの誘電損失は、そのガラスがマイクロ波加熱の影響を受け易い程度を定める。例えばいくつかの実施形態において、積層板融合に適した各ガラス層の誘電損失は、著しい違いを呈し得る。本書で開示されるマイクロ波放射加熱技術を使用すると、誘電損失がより高いガラス層を優先的に加熱することができ、さらにこの技術を使用すると、誘電損失の差が比較的大きいガラス層を作るためのガラス組成開発にフィードバックを与えることさえ可能である。本開示の概念は、ガラス積層板内に高分子層が存在しているかどうかに依存しない。実際に本開示のいくつかの実施形態は、高分子層を含まないガラス積層板の製造に特に適している。
【0008】
本開示の一実施の形態によれば、ガラス積層板を製造する方法が提供される。この方法によれば、マイクロ波吸収層とマイクロ波透過層とから成るガラス積層板が成形される。マイクロ波吸収層は、マイクロ波透過層の損失正接δ
Lよりも少なくとも半桁大きいマイクロ波損失正接δ
Hによって特徴付けられる。ガラス積層板の中のある領域が、マイクロ波放射に曝露される。この曝露される領域は、積層板横断高温区域温度プロファイルを有する、積層板横断高温区域を含む。高温区域温度プロファイルの実質的に全てのマイクロ波吸収層部分と、高温区域温度プロファイルの実質的に全てのマイクロ波透過層部分とは、マイクロ波放射が当たる前に、ガラス積層板の種々の層のガラス転移温度T
Gを上回っている。ガラス積層板に当たるマイクロ波放射の強度分布は、高温区域温度プロファイルのマイクロ波吸収層部分の温度を、高温区域温度プロファイルのマイクロ波透過層部分の温度よりも高い程度まで増加させるのに十分なものである。本開示の別の実施形態によれば、ガラス積層板の曝露される領域が約1×10
4ポアズ(1×10
3Pa・s)未満の粘度で特徴付けられる、ガラス積層板を製造する方法が提供される。
【0009】
本開示の概念を、本書ではフュージョンドローによる製造を主に参照して説明しているが、この概念は、ガラスが比較的低粘度でマイクロ波放射を受ける、任意のガラス積層板製造プロセスに対して適用性を有すると意図されている。例えば限定するものではないが、本開示の概念は、プリフォーム延伸プロセス、圧延プロセス、フロートプロセス、および他の従来のおよびこれから開発される比較的高温の製造プロセスに対して適用性を有すること、そして繊維、管など他のガラス材料のプロセスが想定されるように板ガラスの製造に限定されないことが意図されている。
【0010】
本開示の特定の実施形態に関する以下の詳細な説明は、以下の図面と併せて読むと最も良く理解でき、このとき同様の構造は同じ参照番号で示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の教示によるガラス積層板製造方法を、
図1に概略的に示したダブルアイソパイプフュージョンプロセスを参照して便宜的に説明することができる。このフュージョンプロセスの詳細は、例えばコーニング社(Corning Incorporated)の米国特許第4,214,886号明細書、同第7,207,193号明細書、同第7,414,001号明細書、同第7,430,880号明細書、同第7,681,414号明細書、同第7,685,840号明細書、同第7,818,980号明細書、国際公開第2004094321(A2)号パンフレット、および米国特許出願公開第2009−0217705(A1)号明細書を含む、当技術で入手できる教示から容易に得ることができる。
【0013】
図1に示したように、積層板フュージョンプロセス10では、溶融した外側層のガラスが上方アイソパイプ20から溢れ出て、下部アイソパイプ30の堰の高さでコアガラスと合流する。この2側面が合流し、コア層42と外側層44とを含む3層の平坦な積層シート40が、コアアイソパイプの底部で形成される。積層シート40は、シート成形と応力管理のためにいくつかの熱区域を通過し得、その後、延伸下部で切断される。得られた平坦な積層シート40を、ハンドヘルド機器やTVカバーガラスなどの用途の3D形状を有するようにさらに処理してもよい。外側層44は、ガラス積層板の表皮すなわち被覆材を形成し得るが、いくつかの事例では完成した積層板の最外層ではない可能性もあることに留意されたい。
【0014】
本開示の方法論によれば、ガラス積層板、すなわち図示の実施形態の積層ガラスシート40は、マイクロ波吸収層とマイクロ波透過層とを備え、このマイクロ波吸収層はコア層42または外側層44のいずれかとすることができ、またマイクロ波透過層は、吸収層の選択によってコア層42または外側層44のいずれかに定められる。本開示の概念は、ガラス積層板がマイクロ波吸収コア層をマイクロ波透過外側層間に挟んで備えている場合、またはマイクロ波透過コア層をマイクロ波吸収外側層間に挟んで備えている場合に適用性を有する。説明のため、ここではコア層42をマイクロ波吸収層として指定し、かつ外側層44をマイクロ波透過層として指定する。本書において、マイクロ波「吸収」層または材料、およびマイクロ波「透過」層または材料に言及した場合には、マイクロ波エネルギーの100%の吸収または透過を必要とするものと取られるべきではない。むしろこの用語は本書では、「吸収」層/材料が透過するマイクロ波放射が「透過」層/材料よりも少ないといったような相対的な意味で利用され、逆もまた同様である。例えば、積層ガラスシート40の差別的な加熱を助けるために、マイクロ波吸収層42のマイクロ波損失正接δ
Hを、少なくとも、ガラス積層板が約1×10
2ポアズ(10Pa・s)から約1×10
13.3ポアズ(1×10
12.3Pa・s)までの間の粘度を呈する1以上の温度点で、マイクロ波透過層44の損失正接δ
Lよりも少なくとも半桁大きいものとしてもよい。
図2は、図示の全温度範囲に亘ってマイクロ波吸収層42を、マイクロ波透過層44の損失正接δ
Lよりも少なくとも半桁大きいマイクロ波損失正接δ
Hで特徴付けることができる実施形態を示している。実際には
図2に示したマイクロ波吸収層のマイクロ波損失正接δ
Hは、
図2に示した温度範囲の大部分に亘って、マイクロ波透過層の損失正接δ
Lよりも十分に一桁大きい。本書において「半桁」とは、特定のデータ参照での一桁分に関連する大きさの、2分の1の大きさを表すために示されるものであることに留意されたい。より具体的には、所与の温度で一桁分の大きさが、2つの値間での10倍の違いを表す場合、同じ温度での半桁とは、2つの値間での5倍の違いを表すことになる。
【0015】
実際には損失正接δ
Hを、幅広い範囲の粘度に亘って確実に、損失正接δ
Lよりも少なくとも半桁大きいものとすると有益であることが多い。ガラスの損失正接δは、誘電損失を誘電率で割った係数として定義され、ガラス内の電磁エネルギーの消散を定量化するガラスのパラメータである。一般に、相対的に高いマイクロ波損失正接δ
Hのガラスは、相対的に多量のマイクロ波エネルギーを吸収し、一方相対的に低いマイクロ波損失正接δ
Lのガラスは、相対的に少量のマイクロ波エネルギーを吸収する。特定の温度範囲を含む所与の温度での、ガラス積層板内の2つの異なる材料の各損失正接間の差を、本書ではガラスシートの損失正接差Δδと称する。
【0016】
マイクロ波吸収ガラスの組成は、アルカリ含有量が高いものなど本質的にマイクロ波吸収性のものでもよいし、あるいは特定のマイクロ波吸収成分をガラス組成に組み込むことによってマイクロ波吸収性とされたものでもよい。同様に、マイクロ波透過ガラスの組成は、本質的にマイクロ波透過性のものでもよいし、あるいはマイクロ波透過性を高めるよう選択された成分を追加することで透過性とされたものでもよい。本開示の概念は、特定のガラス組成に限定されない。
【0017】
マイクロ波処理の2つの重要なパラメータは、電力吸収Pとマイクロ波浸透深さDである。従来の加熱とは異なり、これらのパラメータは、材料の誘電特性とマイクロ波放射の周波数とに極めて依存する。これらの各パラメータは、幅広い範囲のプロセス柔軟性を提供するよう調整され得る。電力吸収Pは以下のように定義することができる。
【0019】
ここで、|E|は内部電界の大きさ、ε”
effは相対的な実効誘電損失係数、ε
0は自由空間の誘電率、fはマイクロ波周波数、σは総電気伝導率、ε’
rは比誘電率、そしてtanδは損失正接すなわち所与の量のエネルギーを蓄えるのに必要なエネルギー損失である。上の方程式から分かるように、材料が吸収する電力の程度に関し、材料の誘電特性が重要な役割を負う。吸収されるマイクロ波電力の大部分は、材料内で以下のように熱に変換される。
【0021】
ここで、Tは温度、tは時間、ρは密度、そしてC
pは熱容量である。この方程式は、加熱速度がガラスの損失正接に正比例することをさらに示している。これは、ガラス積層板のマイクロ波吸収層の加熱速度が、同じ積層板のマイクロ波透過層の加熱速度よりも大幅に速くなることを示している。
【0022】
材料の誘電特性はさらに、マイクロ波が材料内に浸透する深さを測定する際にも重要な役割を果たす。以下の方程式からから分かるように、tanδおよびε’
rの値が増加すると、特定の波長に対する浸透深さは次第に小さくなる。
【0024】
ここで、Dは入射電力が半分に減ったときの浸透深さであり、またλ
0はマイクロ波の波長である(サットン(Sutton)著、「セラミック材料のマイクロ波処理(Microwave Processing of Ceramic Materials)」、アメリカン・セラミック・ソサエティ・ブレティン(American Ceramic Society Bulletin)、1989年、第68巻、第2号参照)。浸透深さは、所与の材料全体に亘る加熱の均一性を判定する際に重要になり得る。一般に、相対的に周波数が高くかつ誘電損失特性が大きいと、表面を加熱することになり、一方相対的に周波数が低くかつ誘電損失特性が小さいと、より体積加熱をもたらすことになる。
【0025】
マイクロ波透過ガラスはマイクロ波放射にほとんど影響を受けることはなく、したがってマイクロ波放射はマイクロ波透過ガラスを、エネルギーをほとんど損失せずに通過することができる。一方、マイクロ波吸収ガラスはマイクロ波放射と十分に結びついて、マイクロ波放射を熱へと散逸させる。このようなマイクロ波加熱は体積加熱となり得、したがってマイクロ波吸収ガラス層は、ガラス積層板の外側層であっても、あるいは内側層であっても、ガラスシートを構成している1以上の他の層よりも優先的および選択的に加熱され得る。
【0026】
図示の実施形態では、積層ガラスシート40のある領域が、マイクロ波発振器50から生じるマイクロ波放射に曝露されている(
図1に概略的に示されている)。シート40のこの曝露される領域は、シート横断高温区域温度プロファイルを有するシート横断高温区域を含み、この高温区域は、シート40のコア42に対応するマイクロ波吸収層部分とシート40の外側層44に対応するマイクロ波透過層部分とを含む。積層ガラスシート40のこの領域内のガラスシートは、既に加熱されたガラスシートである。より具体的には、マイクロ波処理の前に、ガラスシートの実質的に全てのこのマイクロ波吸収層部分および実質的に全てのこのマイクロ波透過層部分は、積層ガラスシート40の種々の層のガラス転移温度T
Gを上回る温度に達している。これらのガラス層は、従来の加熱、マイクロ波加熱、またはこの2つの組合せによってT
Gに達し得る。発生源50で生成されるマイクロ波放射は、マイクロ波吸収層部分の温度を、マイクロ波透過層部分の温度よりも大幅に増加させる。この差別的加熱は、様々な目的で使用することができる。例えば、本書で意図されている差別的加熱を利用して、製造プロセス中に積層ガラスシートの種々の製造パラメータを管理することができる。考えられる製造パラメータとしては、限定するものではないが、熱プロファイル管理、厚さ制御、粘度制御、応力制御などが挙げられる。いくつかの意図されている実施形態においてガラスシート製造プロセスは、本書で説明する差別的加熱の下流の切断作業で完了する。
【0027】
全高温区域の温度プロファイルは、吸収層部分および透過層部分を含め、ガラス転移温度T
Gを上回っているものとし得ると意図されている。多くの場合、全高温区域の温度プロファイルは、ガラス積層板の種々の層の液相温度を上回っている。特定の実施形態では例として、ガラス積層板に当たるときのマイクロ波放射の強度分布を簡単に調整することで、高温区域温度プロファイルのマイクロ波吸収層部分の温度を、ガラス積層板の厚さを通じて熱が拡散する速度よりも速い速度で増加させることができる。例えば、相対的に高いマイクロ波損失正接δ
Hで特徴付けられるマイクロ波吸収コア部分42を含む積層ガラスシートに対する加熱を示した
図3と、相対的に高いマイクロ波損失正接δ
Hで特徴付けられるマイクロ波吸収被覆材部分44を含む積層ガラスシートに対する加熱を示した
図4とに、意図される加熱速度を示す。
【0028】
本開示の概念の実施においては、マイクロ波吸収層およびマイクロ波透過層の各ガラス組成の粘度を参照すると都合がよいことが多い。いくつかの実施形態では、1200℃で約1×10
5ポアズ(1×10
4Pa・s)未満の粘度を呈するようにマイクロ波吸収層およびマイクロ波透過層の各ガラス組成を選択すること、そして積層板の種々の層がこの指定した粘度未満であるときにガラス積層板のある領域をマイクロ波放射に曝露することが好ましいことがある。また、900℃で約100ポアズ(10Pa・s)未満の粘度を呈するようにマイクロ波吸収層およびマイクロ波透過層の各ガラス組成を選択してもよいこと、そして積層板の種々の層が約1×10
2ポアズ(10Pa・s)未満の粘度で特徴付けられる場合にマイクロ波曝露を行ってもよいことも意図されている。
【0029】
図1に概略的に示されているように、マイクロ波放射は1以上のマイクロ波発生源50から生じ、このマイクロ波放射は、マルチモードキャビティを用いた場合などでは比較的拡散し得、またはシングルモードマイクロ波発生源の処理を用いた場合などでは比較的集中し得る。比較的集中する発生源に関し、いくつかの実施形態では、マイクロ波発生源は比較的高周波の発生源、すなわち約28GHzで動作するジャイロトロンになることが意図され、またそのエネルギーを研磨されたミラーまたは他のマイクロ波反射表面を用いて、特定の点に導いたり、あるいは特定の領域へと逸らしたりすることができる。集中した曝露は、小さい要素に対して、またはガラス積層板のターゲット領域が比較的小さい場合に、有益になり得ると意図されている。
【0030】
これらの発生源は、積層ガラスシートの層横断方向における浸透を実質的に完全なものとするような電力および周波数に関連して、集合的に構成してもよい。本書で開示される方法の種々の実施形態において、マイクロ波放射は、波長が1m程度の長いものから1mm程度の短いものにまで及ぶ電磁波、あるいは同等に周波数が300MHz(0.3GHz)から300GHzまでの間の電磁波を含むことに留意されたい。本開示の特定の実施形態は、約1000Wで約2.45GHzまたはCバンド(5.8〜7GHz)のマイクロ波放射を利用する。いくつかの実施形態では、マイクロ波放射が、積層ガラスシートに少なくとも約0.5mm(深さ)浸透させるための電力および周波数に関連して集合的に構成された発生源から生じたものであることを、必要とすることは珍しいことではない。
【0031】
図1は、積層ガラスシートが、ダブルアイソパイプフュージョンプロセスの下部コアアイソパイプの底部付近でマイクロ波放射に曝露される実施形態を示しているが、本開示の概念は、限定するものではないがアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、およびアルカリアルミノケイ酸塩のフュージョンドロープロセスを含む任意のフュージョンドロープロセスの、高温区域内の積層シートがマイクロ波放射に曝露される、任意の用途への適用性を有すると意図されている。本書においてガラス積層板製造プロセスでの「高温区域」とは、補足の熱源が熱をガラス積層板へと導くシート切断前の任意の区域、または、シートが能動的に冷却されていないシート切断前の任意の区域であることに留意されたい。ダブルアイソパイプフュージョンプロセスに関するものなど、いくつかの実施形態では、マイクロ波放射は下部コアアイソパイプの底部「付近」で積層板を曝露し得るが、このとき「付近」という用語は、放射エネルギーの強度分布の大部分が、下部コアアイソパイプの底部から約1mの範囲内で積層ガラスシートに当たる状態を示すと理解されたい。
【0032】
さらに意図されている用途は、より一般に、ガラス積層板が1以上の熱区域を通過して形成されるプロセスに関し、このプロセスでは、熱区域の下流で続いて切断され得るガラス積層板の製造パラメータを管理する。この場合マイクロ波放射は、1以上の熱区域内でガラス積層板をマイクロ波に曝露するよう集合的に構成された、1以上のマイクロ波発生源から生じる。マイクロ波吸収コア層がガラス積層板のマイクロ波透過外側層間に挟まれている場合、マイクロ波放射と熱区域とを組み合わせて、マイクロ波吸収コア層の厚さ寸法を制御することができる。マイクロ波透過層が、マイクロ波吸収外側層間に挟まれたマイクロ波透過コア層として存在している場合、それらとマイクロ波放射が協働して、マイクロ波吸収外側層のエッジ仕上げを制御する。より具体的には、積層ガラスシートのエッジ仕上げに本書で開示される方法論を利用すると、IR加熱のみを使用した場合よりもコア層をより冷たく、より粘性に、さらにより堅く維持したまま、マイクロ波吸収被覆材を優先的に加熱および溶融させることができる。溶融した被覆層と、固体の溶融していないコアとを備えた積層シートを用いると、被覆層およびコア層の両方が溶融している場合に比べて、優れた挙動を有した清浄な完成エッジを作り出すことができる。
【0033】
さらに意図されている実施形態では、積層ガラスシートが3Dの積層ガラスシート成形型内に設けられ、マイクロ波透過層が外側層として、さらにマイクロ波吸収層がコア層として設けられる。この型がマイクロ波放射に曝露される。コア層および外側層は、マイクロ波吸収コア層の温度を上昇させて型内での積層ガラスシートの成形を可能にすると同時に、外側層が熱的に誘導されて型の型表面で成形されたりあるいは型表面と反応したりするのを抑制することができる程度に、積層ガラスシートの損失正接差Δδが大きくなるよう構成される。より具体的には、本開示の選択的加熱方法論は、被覆材を比較的加熱されていない状態としたままでマイクロ波吸収コアの優先的加熱を促進するため、積層ガラスシートの3D成形において型の寿命を延ばすことができる。その結果、比較的低温の外側層が型と反応したり、あるいは型に合わせて成形されたりする可能性が低くなり、すなわち型の寿命と表面の品質との両方が改善される。型のコーティングを使用する場合には、マイクロ波透過性となるように設計してもよい。
【0034】
本書で示した技術は、ガラス積層板の被覆材−コア界面間の相互拡散および失透を促進するプロセス、およびガラス積層板の厚さに亘る熱管理を最適化するプロセスで利用し得ることがさらに意図されている。本開示の概念を利用して、さらにガラス積層板の熱強化を高めることもできる。例えば、1以上のマイクロ波吸収コア層と1以上のマイクロ波透過外側層とを含む積層板では、あまり加熱されていない方の外側層が放熱材の役割を果たし、そのためコア層と外側層との間の温度差を高める。
【0035】
本開示の構成要素が特定の状態で、特定の性質を具現化するようまたは特定の形で機能するよう「構成」されるという本書での記述は、目的用途の記述ではなく構造的記述であることに留意されたい。より具体的には、ある構成要素が「構成」されている様態に本書で言及するときにはその構成要素の現存の物理的条件を示し、従ってその構成要素の構造的特性に関する明確な記述と受け取られるべきである。
【0036】
本書において「好適」、「通常」、および「典型的」などの用語が使用されるとき、これらの用語は請求される発明の範囲を制限するために用いられるものではないこと、あるいは請求される発明の構造または機能に対して特定の特徴が重大、不可欠、または重要であることすら意味するために用いられるものではないことに留意されたい。むしろ、これらの用語は単に本開示の実施形態の特定の態様を識別するため、あるいは本開示の特定の実施形態において利用し得るまたは利用し得ない代替または追加の特徴を強調するためのものである。
【0037】
本発明を説明および画成するために、「実質的に」という用語は、任意の定量比較、値、測定値、または他の表現に起因し得る、固有の不確実さの度合いを表すために本書で用いていることに留意されたい。さらに「実質的に」という用語は、論じている主題の基本的機能に変化を生じさせることなく、記載した基準から定量的表現を変動させ得る度合いを表すために本書で使用する。
【0038】
本開示の主題を詳細にかつその特定の実施形態を参照して説明してきたが、本書で開示したこの種々の詳細は、特定の部材が本開示に添付の各図面に示されている場合でさえ、本書で説明した種々の実施形態に不可欠な構成要素の部材をこの詳細が示しているわけではないと考えるべきであることに留意されたい。むしろ、本書に添付される請求項のみを、本開示と本書で説明される種々の発明の対応する範囲とを幅広く表したものと考えるべきである。さらに、添付の請求項において画成される本発明の範囲から逸脱することなく、改変および変形が可能であることは明らかであろう。より具体的には、本開示のいくつかの態様は好適または特に有利であるものとして本書において識別されているが、本開示は必ずしもこれらの態様に限定されるものではないと意図されている。