特許第6443812号(P6443812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6443812ハリコンドリンB類縁体の合成に有用な方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443812
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】ハリコンドリンB類縁体の合成に有用な方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/22 20060101AFI20181217BHJP
   A61K 31/357 20060101ALI20181217BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20181217BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20181217BHJP
【FI】
   C07D493/22
   A61K31/357
   !A61P35/00
   !C07B61/00 300
【請求項の数】16
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-532033(P2016-532033)
(86)(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公表番号】特表2016-540752(P2016-540752A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】US2014068834
(87)【国際公開番号】WO2015085193
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2017年11月30日
(31)【優先権主張番号】61/912,714
(32)【優先日】2013年12月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ルイス,ブライアン,エム
(72)【発明者】
【氏名】フ,ヨンボ
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,ヒュイミン
(72)【発明者】
【氏名】千葉 博之
(72)【発明者】
【氏名】小松 雄毅
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−501715(JP,A)
【文献】 AUSTAD,B.C. et al.,Commercial Manufacture of Halaven: Chemoselective Transformations En Route to Structurally Complex Macrocyclic Ketones,Synlett,2013年,Vol.24, No.3,p.333-337
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリブリンの合成中間体の調製方法であって、式(I):
【化30】

を有し、式中R1、R2、R3、R4、及びR5の各々は独立してシリル基である化合物を、アミドを含有する溶媒中でフッ素源と反応させて、中間体ER-811475:
【化31】

を生成することを含む方法であって、
アミドがN,N C1-C6ジアルキルC1-C6アルキルアミド又はN C1-C6アルキルC2-C6ラクタムである方法。
【請求項2】
中間体ER-811475が、中間体ER-811474:
【化32】

との混合物として生成される、請求項1の方法。
【請求項3】
アセトニトリル及び水の混合物を添加することをさらに含む、請求項2の方法。
【請求項4】
R1、R2、R3、R4、及びR5の各々がt-ブチルジメチルシリルである、請求項1から3のいずれか1の方法。
【請求項5】
フッ素源がフッ化テトラブチルアンモニウムである、請求項1から4のいずれか1の方法。
【請求項6】
溶媒がさらにテトラヒドロフランを含む、請求項1から5のいずれか1の方法。
【請求項7】
アミドがN,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル2-ピロリドン、N,N-ジエチルアセトアミド、又はN,N-ジメチルプロピオンアミドである、請求項1からのいずれか1の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1の方法によって生成したER-811475:
【化33】

をイミダゾールの共役酸と反応させて中間体ER-076349:
【化34】

を製造することを含む方法。
【請求項9】
エリブリンの製造方法であって、
a)請求項1からのいずれか1の方法によって中間体ER-811475:
【化37】

を生成し、
b)中間体ER-811475をケタール化して中間体ER-076349:
【化38】

を生成し、及び
c)ER-076349をアミノ化してエリブリン:
【化39】

を生成する工程を含む、方法。
【請求項10】
エリブリンを塩化して、エリブリンの薬学的に受容可能な塩を製造することをさらに含む、請求項の方法。
【請求項11】
前記塩がメシル酸塩である、請求項10の方法。
【請求項12】
ER-076349が、ER-811475をイミダゾールの共役酸と反応させることによって生成される、請求項から11のいずれか1の方法。
【請求項13】
工程c)が金属触媒の存在下にスルホニル化剤とER-076349を反応させてER-082892:
【化40】

を生成することを含む、請求項9から12のいずれか1の方法。
【請求項14】
エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を含有する医薬品の製造方法であって、
a)請求項から13のいずれか1の方法によってエリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を生成し又は製造を行い、及び
b)エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を処理し又は処理を行うことによってエリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を含有する医薬品とし、
それによってエリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を含有する医薬品を製造することを含む、方法。
【請求項15】
前記塩がメシル酸塩である、請求項14の方法。
【請求項16】
処理工程が、エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を配合すること、エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を処理して製剤とすること、エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を第2成分と組み合わせること、エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を凍結乾燥すること、エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩の第1バッチと第2バッチを組み合わせて第3のより大きなバッチとすること、エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を容器に入れること、エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を包装すること、エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を収容した容器にラベルを関連付けること、及びエリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を別の場所に輸送又は移動することの一つ又はより多くを含む、請求項14又は15の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハリコンドリンB類縁体、特に、明細書全体を通して以下ではその一般名であるエリブリンと称する、ER-086526の合成に有用な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非タキサン系微小管ダイナミクス阻害剤であるエリブリン(エリブリンメシレートとして、商品名ハラヴェン(登録商標)の下で市販されている)は、海洋天然産物であるハリコンドリンBの、構造的に簡略化された合成類縁体である。エリブリンその他のハリコンドリンB類縁体の合成方法は、米国特許第6,214,865号、第6,365,759号、第6,469,182号、第7,982,060号、及び第8,148,554に記載されており、これらの合成についてはここでの番号の参照により、本明細書に取り入れるものとする。ハリコンドリンB類縁体、特にエリブリン及びエリブリンメシレートの新規な合成方法が望まれている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は全般的に、エリブリンのようなハリコンドリンB類縁体、並びにその薬学的に受容可能な塩(例えばエリブリンメシレート)の合成に有用な、改善された方法を特徴とする。
【0004】
本発明は一つの側面において、エリブリンの合成における中間体を調製する方法を特徴とし、それは式(I)の化合物:
【化1】

式中、R1、R2、R3、R4及びR5の各々は独立してシリル基(例えばトリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、t-ブチルジメチルシリル(TBS)、t-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、又はトリフェニルシリル(TPS))を、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(例えばテトラヒドロフランとN,N-ジメチルアセトアミドの混合物として)、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル2-ピロリドン、N,N-ジエチルアセトアミド、又はN,N-ジメチルプロピオンアミドといった、N,N C1-C6ジアルキルC1-C6アルキルアミド又はN C1-C6アルキルC2-C6ラクタムのようなアミドを含有する溶媒中でフッ素源(例えばフッ化テトラブチルアンモニウム)と反応させて、中間体ER-811475を生成させる。
【化2】
【0005】
ER-811475は、そのC12位立体異性体であるER-811474との混合物で生成されうる。
【化3】
【0006】
この方法はさらに、アセトニトリルと水の混合物を添加して、ER-811475の収率を増大させるようにしてもよい。
【0007】
幾つかの実施形態では、R1、R2、R3、R4及びR5の各々はt-ブチルジメチルシリル(TBS)である。
【0008】
本発明はまた、エリブリンの合成における中間体を調製する方法を特徴とし、それはER-811475をイミダゾールの共役酸(例えばイミダゾール塩酸塩)と反応(例えばエタノール中)させて、中間体ER-076349を生成させる。
【化4】

ER-811475は、本明細書に記載のいずれの方法によっても製造できる。
【0009】
別の側面において本発明は、エリブリンの合成における中間体を調製する方法を特徴とする。この方法は、金属触媒(例えばジブチル錫オキシド)の存在下にER-076349をスルホニル化剤、例えばトシルクロリドと反応(例えばアセトニトリル中)させて、中間体:
【化5】

式中、R6がスルホニルの例えばER-082892を生成する。この反応は0℃よりも上で生じうる。ER-076349は、本明細書に記載のいずれの方法によっても製造できる。そうした方法はまた、塩基、例えば、トリエチルアミン又はN,N-ジイソプロピルエチルアミンといったC1-6トリアルキルアミンを添加することを含んでよい。
【0010】
本発明はまた、エリブリンの製造方法を特徴とする。この方法は、上述した方法のいずれかによって中間体ER-811475を製造し、ER-811475をケタール化して中間体ER-076349を製造し、そしてER-076349をアミノ化してエリブリン(ER-086526)を製造する。
【化6】

ER-811475をケタール化する工程は、本明細書に記載の方法のいずれかによってER-811475をER-076349に変換することを含んでよい。ER-076349をアミノ化してエリブリンを製造する工程は、本明細書に記載の方法のいずれかによってER-076349をER-082892に変換することを含んでよい。
【0011】
本発明はさらに、エリブリンを製造するための代替的な方法を特徴とする。この方法は、前述した方法のいずれかによって中間体ER-076349を製造し、ER-076349をアミノ化してエリブリンを製造することを含む。ER-076349をアミノ化してエリブリンを製造する工程は、本明細書に記載の方法のいずれかによってER-076349をER-082892に変換することを含んでよい。
【0012】
さらなる側面において、本発明はエリブリン製造のためのさらに別の方法を特徴とする。この方法は、本明細書に記載の方法のいずれかによって中間体ER-082892を製造し、ER-082892をアミノ化してエリブリンを製造することを含む。
【0013】
エリブリンを製造するいずれの方法も、さらにエリブリンを塩化して、エリブリンの薬学的に受容可能な塩(例えばエリブリンメシレート)を製造することを含んでよい。
【0014】
本発明はまた、エリブリン、又はその薬学的に受容可能な塩(例えばエリブリンメシレート)を含有する医薬品を製造する方法を特徴とする。この方法は、上述した方法のいずれかによってエリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を生成し又は製造を行い、エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を処理し又は処理を行うことによってエリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を含有する医薬品とし、それによってエリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を含有する医薬品を製造することを含む。
【0015】
処理工程は、エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩(例えばエリブリンメシレート)を配合すること、エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を処理して製剤とすること、エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を第2成分(例えば賦形剤又は薬学的に受容可能な担体)と組み合わせること、エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を凍結乾燥すること、エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩の第1バッチと第2バッチを組み合わせて第3のより大きなバッチとすること、エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を容器(例えば気密又は液密な容器)に入れること、エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を包装すること、エリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を収容した容器にラベルを関連付けること、及びエリブリン又はその薬学的に受容可能な塩を別の場所に輸送することの一つ又はより多くを含むことができる。
【0016】
以下の化学的な定義のいずれについても、原子記号に続く数は、特定の化学的部分に存在しているその元素の合計原子数を示す。理解されるように、本明細書において記載されるところでは、水素原子のような他の原子、或いは置換基は、原子の価数を満足するように、必要に応じて存在してよい。例えば非置換のC2アルキル基は、式-CH2CH3を有する。ヘテロアリール基における酸素、窒素、又は硫黄原子の数に対する参照は、複素環の一部を形成している原子のみを含んでいる。
【0017】
他に特段の記載がない限り、「アルキル」は1から12炭素の、直鎖又は分岐鎖の、飽和した環状(即ちシクロアルキル)又は非環状の炭化水素基を意味する。例示的なアルキル基は、C1-C8、C1-C6、C1-C4、C2-C7、C3-C12、及びC3-C6アルキルを含む。具体例には、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(即ちイソプロピル)、2-メチル-1-プロピル(即ちイソブチル)、1-ブチル、2-ブチル、1,1-ジメチルエチル(即ちtert-ブチル)などが含まれる。他に特記しない限り、本明細書の文脈で用いられるアルキル基は、任意選択で、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、オキソ、アルキルチオ、アルキレンジチオ、アルキルアミノ、[アルケニル]アルキルアミノ、[アリール]アルキルアミノ、[アリールアルキル]アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シリル、スルホニル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、又はアジドで置換される。
【0018】
「アルキルアミノ」は-NHRを意味し、ここでRはアルキルである。「[アルケニル]アルキルアミノ」は-NRR’を意味し、ここでRはアルキル、R’はアルケニルである。「[アリール]アルキルアミノ」は-NRR’を意味し、ここでRはアルキル、R’はアリールである。「[アリールアルキル]アルキルアミノ」は-NRR’を意味し、ここでRはアルキル、R’はアリールアルキルである。「ジアルキルアミノ」は-NR2を意味し、ここで各々のRは独立して選択されるアルキルである。
【0019】
「アルキレン」は2価のアルキル基を意味する。本明細書のいずれの文脈において用いるところでも、アルキレン基は、アルキル基と同様に任意選択で置換される。例えば非置換のC1アルキレン基は-CH2-である。
【0020】
「アルキレンジチオ」は、-S-アルキレン-S-を意味する。
【0021】
「アルキルチオ」は-SRを意味し、ここでRはアルキルである。
【0022】
他に特段の記載がない限り、「アルケニル」は2から12炭素の、直鎖又は分岐鎖の、環状又は非環状の炭化水素基を意味し、一つ又はより多くの炭素−炭素二重結合を含んでいる。例示的なアルケニル基は、C2-C8、C2-C7、C2-C6、C2-C4、C3-C12、及びC3-C6アルケニルを含む。具体例には、エテニル(即ちビニル)、1-プロペニル、2-プロペニル(即ちアリル)、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル(即ちクロチル)などが含まれる。本明細書のいずれの文脈において用いるところでも、アルケニル基はアルキル基と同様に任意選択で置換される。本明細書のいずれの文脈において用いるところでも、アルケニル基はまたアリール基で置換されてよい。
【0023】
「アルコキシ」は-ORを意味し、ここでRはアルキルである。
【0024】
「アリール」は一つ又はより多くの芳香環を有する単環又は多環の系を意味し、ここでの環系は炭素環式又は複素環式である。複素環式アリール基はまた、ヘテロアリール基とも呼ばれる。ヘテロアリール基は、O、N、及びSから独立して選択される1から4の原子を含む。例示的な炭素環式アリール基には、C6-C20、C6-C15、C6-C10、C8-C20、及びC8-C15アリールが含まれる。好ましいアリール基は、C6-10アリール基である。炭素環式アリール基の具体例には、フェニル、インダニル、インデニル、ナフチル、フェナントリル、アントラシル、及びフルオレニルが含まれる。例示的なヘテロアリール基には、O、N、及びSから独立して選択される1から4のヘテロ原子と1から6の炭素(例えばC1-C6、C1-C4、及びC2-C6)を有する単環が含まれる。単環式ヘテロアリール基は好ましくは、5員環から9員環を含む。多のヘテロアリール基は好ましくは、4から19の炭素原子(例えばC4-C10)を含む。ヘテロアリール基の具体例には、ピリジニル、キノリニル、ジヒドロキノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、ジヒドロキナゾリル、及びテトラヒドロキナゾリルが含まれる。他に特段の記載がない限り、本明細書のいずれの文脈においても、アリール基は任意選択的に、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、オキソ、アルキルチオ、アルキレンジチオ、アルキルアミノ、[アルケニル]アルキルアミノ、[アリール]アルキルアミノ、[アリールアルキル]アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シリル、スルホニル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、又はアジドで置換される。
【0025】
「アリールアルキル」は-R’R”を意味し、ここでR’はアルキレン、R”はアリールである。
【0026】
「アリールアルキルオキシ」は-ORを意味し、ここでRはアリールアルキルである。
【0027】
「アリールオキシ」は-ORを意味し、ここでRはアリールである。
【0028】
「カルボキシル」は、遊離酸、イオン、又は塩の形態の-C(O)OHを意味する。
【0029】
「フッ素源」は、(例えばシリルエーテルのヒドロキシ保護基を除去するため)溶解可能なフッ素イオン(即ちF-)の供給源となりうる化合物を意味し、例示的なフッ素源にはフッ化アンモニウム、フッ化ベンジルトリエチルアンモニウム、フッ化セシウム(即ちCsF)、1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボラート(即ちSelectfluor(登録商標))、フッ化水素酸(即ちHF)、ポリ[4-ビニルピリジニウムポリ(フッ化水素)]、フッ化カリウム(即ちKF)、フッ化水素ピリジン(即ちHF-ピリジン)、フッ化ナトリウム(即ちNaF)、フッ化テトラブチルアンモニウム(即ちTBAF)、フッ化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、及びトリス(ジメチルアミノ)スルホニウムジフルオロトリメチルシリケート(即ちTASF)が含まれる。
【0030】
「ハロゲン」はフルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを意味する。
【0031】
「ラクタム」は環式アミドを意味し、ここで環は炭素原子と一つの窒素原子からなる。
【0032】
「脱離基」は化学反応に際して置換される基を意味する。適切な脱離基は、例えばAdvanced Organic Chemistry, March, 4thEd., pp. 351-357, John Wiley and Sons, N.Y. (1992) に記載のように周知技術である。そのような脱離基には、ハロゲン、C1-C12アルコキシ(例えばC1-C8、C1-C6、C1-C4、C2-C7及びC3-C6アルコキシ)、C1-C12アルキルスルホネート(例えばC1-C8、C1-C6、C1-C4、C2-C7、C3-C12及びC3-C6アルキルスルホネート)、C2-C12アルケニルスルホネート(例えばC2-C8、C2-C6、C2-C4、C3-C12及びC3-C6アルケニルスルホネート)、炭素環式C6-C20アリールスルホネート(例えばC6-C15、C6-C10、C8-C20及びC8-C15アリールスルホネート)、C4-C19ヘテロアリールスルホネート(例えばC4-C10ヘテロアリールスルホネート)、単環式C1-C6ヘテロアリールスルホネート(例えばC1-C4及びC2-C6ヘテロアリールスルホネート)、(C6-C15)アリール(C1-C6)アルキルスルホネート、(C4-C19)ヘテロアリール(C1-C6)アルキルスルホネート、(C1-C6)ヘテロアリール(C1-C6)アルキルスルホネート、及びジアゾニウムが含まれる。アルキルスルホネート、アルケニルスルホネート、アリールスルホネート、ヘテロアリールスルホネート、アリールアルキルスルホネート、及びヘテロアリールアルキルスルホネートは、任意選択的に、ハロゲン(例えばクロロ、ヨード、ブロモ、又はフルオロ)、アルコキシ(例えばC1-C6アルコキシ)、アリールオキシ(例えばC6-C15アリールオキシ、C4-C19ヘテロアリールオキシ、及びC1-C6ヘテロアリールオキシ)、オキソ、アルキルチオ(例えばC1-C6アルキルチオ)、アルキレンジチオ(例えばC1-C6アルキレンジチオ)、アルキルアミノ(例えばC1-C6アルキルアミノ)、[アルケニル]アルキルアミノ(例えば[(C2-C6)アルケニル](C1-C6)アルキルアミノ)、[アリール]アルキルアミノ(例えば[(C6-C10)アリール](C1-C6)アルキルアミノ、[(C1-C6)ヘテロアリール](C1-C6)アルキルアミノ、及び[(C4-C19)ヘテロアリール](C1-C6)アルキルアミノ)、[アリールアルキル]アルキルアミノ(例えば[(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキル](C1-C6)アルキルアミノ、[(C1-C6)ヘテロアリール(C1-C6)アルキル](C1-C6)アルキルアミノ、[(C4-C19)ヘテロアリール(C1-C6)アルキル](C1-C6)アルキルアミノ)、ジアルキルアミノ(例えばジ(C1-C6アルキル)アミノ)、シリル(例えばトリ(C1-C6アルキル)シリル、トリ(C6-C10アリール又はC1-C6ヘテロアリール)シリル、ジ(C6-C10アリール又はC1-C6ヘテロアリール)(C1-C6アルキル)シリル、及び(C6-C10アリール又はC1-C6ヘテロアリール)ジ(C1-C6アルキル)シリル)、シアノ、ニトロ、又はアジドで置換されうる。アルケニルスルホネートは任意選択的に、炭素環式アリール(例えばC6-C15アリール)、単環式C1-C6ヘテロアリール、又はC4-C19ヘテロアリール(例えばC4-C10ヘテロアリール)で置換されうる。アリールスルホネートは任意選択的に、アルキル(例えばC1-C6アルキル)又はアルケニル(例えばC2-C6アルケニル)で置換されうる。本明細書における定義では、脱離基中に存在しているどのようなヘテロアリール基も、O、N、及びSから独立して選択される1から4のヘテロ原子を有する。適切な脱離基の具体例には、クロロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、メタンスルホネート(メシレート)、4-トルエンスルホネート(トシレート)、トリフルオロメタンスルホネート(トリフレート、OTf)、ニトロ−フェニルスルホネート(ノシレート)、及びブロモ−フェニルスルホネート(ブロシレート)が含まれる。脱離基はまた、技術的に知られているように、さらに置換されていてもよい。
【0033】
「オキソ」又は(O)は=Oを意味する。
【0034】
「薬学的に受容可能な塩」は、正しい医学的判断の範囲内にあり、過度の毒性、刺激、及びアレルギー反応等なしに人及び動物の組織と接触させて使用するのに適しており、合理的なベネフィット/リスク率と釣り合う塩を意味する。薬学的に受容可能な塩は、技術的に周知である。例えば薬学的に受容可能な塩は、Berge et al., J. Pharmaceutical Sciences 66:1-19, 1977及びPharmaceuticalSalts: Properties, Selection, and Use, (P.H. Stahl及びC.G. Wermuth編), Wiley-VCH,2008に記載されている。代表的な酸付加塩には、アセテート、アジペート、アルギネート、アスコルベート、アスパルテート、ベンゼンスルホネート、ベンゾエート、ビスルフェート、ボレート、ブチレート、カンフォレート、カンフェルスルホネート、シトレート、シクロペンタンプロピオネート、ジグルコネート、ドデシルスルフェート、エタンスルホネート、フマレート、グルコヘプトネート、グリセロホスフェート、ヘミスルフェート、ヘプトネート、ヘキサノエート、ハイドロブロマイド(即ちHBr)、ハイドロクロライド(即ちHCl)、ハイドロイオダイド(即ちHI)、2-ヒドロキシ-エタンスルホネート、ラクトビオネート、ラクテート、ラウレート、ラウリルスルフェート、マレート、マレエート、マロネート、メタンスルホネート(即ちメシレート)、2-ナフタレンスルホネート、ニコチネート、ニトレート、オレエート、オキサレート、パルミテート、パモエート、ペクチネート、ペルスルフェート、3-フェニルプロピオネート、ホスフェート、ピクレート、ピバレート、プロピオネート、ステアレート、スクシネート、スルフェート、タルトレート、チオシアネート、トルエンスルホネート(即ちトシレート)、ウンデカノエート、バレレート塩などを含む。
【0035】
「シリル」は-SiR3を意味し、ここでRの各々は独立してアルキル、アルケニル、アリール又はアリールアルキルである。シリル基の例には、トリ(C1-C6アルキル)シリル、トリ(C6-C10アリール又はC1-C6ヘテロアリール)シリル、ジ(C6-C10アリール又はC1-C6ヘテロアリール)(C1-C6アルキル)シリル、及び(C6-C10アリール又はC1-C6ヘテロアリール)ジ(C1-C6アルキル)シリルが含まれる。シリル基が2又はより多くのアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、又はアリールアルキル基を含むとき、これらの基は独立して選択されることが理解されよう。本明細書で定義するところでは、シリル基中に存在しているどのようなヘテロアリール基も、O、N、及びSから独立して選択される1から4のヘテロ原子を有する。シリル基は例えば、Greene's Protective Groups in Organic Synthesis, Wiley-Interscience,4th Edition, 2006に記載のように技術的に知られている。シリル基の具体的な例には、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、t-ブチルジメチルシリル(TBS)、t-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリイソプロビルシリル(TIPS)、及びトリフェニルシリル(TPS)エーテルが含まれる。シリル基は技術的に知られたようにして置換されてよい。例えば、フェニル、ベンジル、ナフチル、又はピリジニルといったアリール及びアリールアルキル基は、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシル、又はハロゲンで置換されうる。メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、t-ブチル、n-ブチル、及びsec-ブチルといったアルキル基、並びにビニル及びアリールといったアルケニル基はまた、オキソ、アリールスルホニル、ハロゲン、及びトリアルキルシリル基で置換されうる。
【0036】
「スルホニル」は-S(O)2Rを意味し、ここでRはアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、又はシリルである。例示的なスルホニル基において、RはC1-C12アルキル(例えばC1-C8、C1-C6、C1-C4、C2-C7、C3-C12、及びC3-C6アルキル)、C2-C12アルケニル(例えばC2-C8、C2-C6、C2-C4、C3-C12、及びC3-C6アルケニル)、炭素環式C6-C20アリール(例えばC6-C15、C6-C10、C8-C20、a及びC8-C15アリール)、単環式C1-C6ヘテロアリール(例えばC1-C4及びC2-C6ヘテロアリール)、C4-C19ヘテロアリール(例えばC4-C10ヘテロアリール)、(C6-C15)アリール(C1-C6)アルキル、(C4-C19)ヘテロアリール(C1-C6)アルキル、又は(C1-C6)ヘテロアリール(C1-C6)アルキルである。本明細書で定義するところでは、スルホニル基中に存在しているどのようなヘテロアリール基も、O、N、及びSから独立して選択される1から4のヘテロ原子を有する。例示的なスルホニル基には、トシル、トリフリル、及びメシルが含まれる。
【0037】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び請求の範囲から明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、ハリコンドリンB類縁体の合成方法を提供する。この方法は特に、エリブリン及びその薬学的に受容可能な塩の合成に有用である。
【化7】
【0039】
式(I)の化合物の合成
式(I)の化合物:
【化8】

は、技術的に知られた方法(例えば米国特許第6,214,865号、第6,365,759号、第6,469,182号、第7,982,060号、及び第8,148,554号、国際公開WO 99/65894、WO 2005/118565、及びWO 2011/094339、Chase et al. Syn. Lett. 2013; 24(3):323-326、Austad et al.Syn. Lett. 2013; 24(3):327-332、及びAustad et al. Syn. Lett. 2013; 24(3):333-337に記載の如き。これらの合成方法は、ここでの参照によって本明細書に取り入れられる)を用いて合成可能である。一例ではスキーム1に示すように、分子のC14-C35部分(例えばER-804028)がC1-C13部分(例えばER-803896)に結合されてC1-C35非環状中間体(例えばER-804029)が生成され、そして追加的な反応が行われて、式(I)の化合物(例えばER-118046)が生成される。
【化9】
【0040】
式(I)を有する他の化合物は、C1-C13及び/又はC14-C35フラグメントに別の保護基を用いることによって生成可能である。
【0041】
一つの具体例では、C14-C35スルホネートフラグメント(即ちER-804028)を脱プロトン化、例えばリチウム化し、続いてC1-C13アルデヒドフラグメント(即ちER-803896)と結合させることで、ジアステレオマーアルコールの混合物(即ちER-804029)が与えられる。追加的な保護基操作及び酸化と、それに続くスルホニル基の除去、及び分子間Nozaki-Hiyama-Kishi(NHK)反応によって中間体がもたらされ、これは酸化されると式(I)の化合物(即ちER-118046)を与える。
【0042】
式(I)の化合物のエリブリンへの変換
式(I)の化合物をエリブリンへと変換するスキームは、以下の如くである(スキーム2)。
【化10】
【0043】
スキーム2に概略を示したように、式(I)の化合物からのシリルエーテルヒドロキシ保護基(即ちR1、R2、R3、R4及びR5)の脱保護、及び続いての平衡化によって、ER-811475が与えられる(工程A)。ER-811475のケタール化によってER-076349がもたらされる(工程B)。C35一級アルコールの活性化(例えばC35トシレートとして)の結果、式(II)の化合物となり、式中のXは脱離基(例えばハロゲン、メシレート、又はトシレート)である(工程C)。続いてアミン官能性を導入するとエリブリンがもたらされる(工程D)。当業者はまた、上記のスキームのバリエーションが考えられることを理解するであろう。
【0044】
工程A:式(I)の化合物のER-811475への変換
方法A1:THF中でのフッ素源での脱保護
式(I)の化合物をER-811475に変換するための一つの方法をスキーム3に示す。
【化11】
【0045】
溶媒としてのテトラヒドロフラン中、式(I)の化合物をフッ素源(例えばフッ化テトラブチルアンモニウム)で処理し、イミダゾールの共役酸(例えばイミダゾール塩酸塩)で平衡化させると、ER-811475がそのC12立体異性体であるER-811474との4:1混合物中に得られる。
【0046】
方法 A2:アミド、例えばDMAC中でのフッ素源での脱保護
式(I)の化合物をER-811475に変換するための代替的な方法をスキーム4に示す。
【化12】
【0047】
アミド、例えばN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)を溶媒として(例えばテトラヒドロフラン(THF)及びDMACの混合物)、式(I)の化合物をフッ素源(例えばフッ化テトラブチルアンモニウム)で処理し、イミダゾールの共役酸(例えばイミダゾール塩酸塩)で平衡化させると、ER-811475が得られる。DMACを共溶媒として反応中に添加すると、C12位における選択性の改善(例えば18:1対4:1)及び反応時間の短縮(例えば7-10日から1-2 日へ)という結果が得られる。アセトニトリルと水の混合物を添加すると、ER-811475の収率が増加する。他のアミドには、N,N C1-C6ジアルキルC1-C6アルキルアミド又はN C1-C6アルキルC2-C6ラクタムが含まれ、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル2-ピロリドン、N,N-ジエチルアセトアミド、又はN,N-ジメチルプロピオンアミドの如きを使用してよい。
【0048】
工程B:ER-811475からER-076349へのケタール化
方法B1:ピリジンの共役酸でのケタール化
ER-811475のケタール化方法をスキーム5に示す。
【化13】
【0049】
ピリジンの共役酸(例えばピリジニウムp-トルエンスルホネート(PPTS))を用いたER-811475のケタール化(例えばジクロロメタン中)と、それに続いてのアセトニトリル及び水からの結晶化により、ER-076349がもたらされる。
【0050】
方法B2:イミダゾールの共役酸でのケタール化
ER-811475からER-076349へのケタール化の代替的な方法をスキーム6に示す。
【化14】
【0051】
ER-811475からER-076349への変換は、イミダゾールの共役酸(例えばイミダゾール塩酸塩)を用いたER-811475のケタール化(例えばエタノール中)、及び続いてのカラムクロマトグラフィを通じて達成可能である。PPTSをイミダゾール塩酸塩で置き換えると、後処理(例えば反応混合物の濃縮)中にC12位の異性化が低減される結果となる。溶媒をジクロロメタンからエタノールに変えると、より環境的に好ましいプロセスとなる。
【0052】
工程C:ER-076349から式(II)の化合物への活性化
方法C1:トシルクロリド及びピリジンでの活性化
ER-076349の活性化方法をスキーム7に示す。
【化15】
【0053】
ER-076349をトシルクロリド及び塩基(例えばピリジン)と(例えばジクロロメタン中)22℃で反応させると、式(II)の化合物(即ちER-082892)がもたらされる。
【0054】
方法C2:Ts2O、コリジン、及びピリジンでの活性化
ER-076349の活性化のための代替的な方法をスキーム8に示す。
【化16】
【0055】
ER-076349を(例えばジクロロメタン中)、4-トルエンスルホン酸無水物(Ts2O)及び塩基(例えば2,4,6-コリジンとピリジンの組み合わせ)で-10℃において処理すると、式(II)の化合物(即ちER-082892)がもたらされる。
【0056】
方法C3:メシルクロリドでの活性化
ER-076349を活性化するための別の方法をスキーム9に示す。
【化17】

ER-076349を(例えばジクロロメタン中)、メシルクロリド及び塩基(例えば2,4,6-コリジン)と0℃において反応させると、式(II)の化合物(即ちB-2294)がもたらされる。
【0057】
方法C4:トシルクロリド及び塩基での活性化
ER-076349の活性化のための別の方法をスキーム10に示す。
【化18】
【0058】
ER-076349(例えばアセトニトリル中)の活性化は、触媒(例えばジブチル錫オキシド)の存在下に、トシルクロリド及び塩基(例えば、トリエチルアミン及びN,N-ジイソプロピルエチルアミンの如きC1-C6トリアルキルアミン)で処理(例えば26から28℃)することによって達成可能である。ジブチル錫オキシドの使用は、例えば、プロセスをより堅固なものとし(例えば水分に対する反応感度を低下させ)、プロセスの操作効率を改善する(例えば共沸乾燥工程を除去することによって)。ピリジン及び/又はコリジンをN,N-ジイソプロピルエチルアミンで置き換え、触媒としてジブチル錫オキシドを添加すると、一級アルコールの選択性が改善される(例えばモノトシル化:ジトシル化比が、96:4から99.8:0.2に改善される)。溶媒としてのジクロロメタンをアセトニトリルで置き換えると、環境的により好ましいプロセスとなり、温度を-10℃から26℃-28℃に変えると操作効率と収率が増大する。
【0059】
工程D:式(II)の化合物のエリブリンへのアミノ化
方法D1:スタウジンガー(Staudinger)経路
式(II)の化合物をアミノ化する方法をスキーム11に示し、式中Xは脱離基(例えばOTs)である。
【化19】
【0060】
式(II)の化合物(例えばER-082892)のエリブリンへのアミノ化は、アジ化ナトリウムで処理し、得られたアジ化物をスタウジンガー反応条件下にトリメチルホスフィンで還元することによって達成可能である。
【0061】
方法D2:エポキシド開環経路
式(II)の化合物をアミノ化してエリブリンとする代替的な方法をスキーム12に示し、式中Xは脱離基(例えばOTs)である。
【化20】
【0062】
この方法では、式(II)の化合物(例えばER-082892)のアミノ化は、アルコール性水酸化アンモニウムにより処理し、その結果エポキシドをin situで結晶化させ、それをさらにアンモニアと反応させてエリブリンとすることを通じて達成可能である。スタウジンガー経路をエポキシド開環経路で置き換えることは、有害な試薬の使用を排除し、操作効率を改善する結果となる。
【0063】
エリブリンの塩化
エリブリンの薬学的に受容可能な塩(例えばエリブリンメシレート)は、技術的に知られた方法によって形成可能である(例えば化合物の最終的な単離及び精製に際してin situで、又は遊離塩基を適切な酸と反応させることによって別個に)。一例では、水及びアセトニトリル中、エリブリンはメタンスルホン酸(即ちMsOH)及び水酸化アンモニウムで処理される。この混合物は濃縮される。残留物はジクロロメタン−ペンタンに溶解され、この溶液は無水ペンタンに添加される。その結果得られる沈殿は、高真空でろ過及び乾燥され、スキーム13に示すようにエリブリンメシレートをもたらす。
【化21】
【0064】
種々の中間体の合成について上述した方法のどのような組み合わせも、式(I)の化合物をエリブリンに変換させるために利用可能である(例えば方法A1-B2-C1-D1、A1-B2-C2-D1、A1-B2-C1-D2、A2-B1-C1-D1、A2-B2-C1-D1、A2-B1-C2-D1、A2-B1-C1-D2、A2-B2-C2-D1、A2-B2-C1-D2、A2-B1-C2-D2、A2-B2-C2-D2、A2-B1-C3-D1、A1-B2-C3-D1、A2-B2-C3-D1、A2-B1-C3-D2、A1-B2-C3-D2、A2-B2-C3-D2、A1-B1-C4-D1、A2-B1-C4-D1、A1-B2-C4-D1、A1-B1-C4-D2、A2-B2-C4-D1、A2-B1-C4-D2、A1-B2-C4-D2、及びA2-B2-C4-D2)。
【実施例】
【0065】
実験手順
工程A:ER-118046からER-811475への変換
方法A1:
ER-811475:(1R,2S,3S,4S,5S,6RS,11S,14S,17S,19R,21R,23S,25R,26R,27S,31R,34S)-25-[(2S)-2,3-ジヒドロキシプロピル]- 2,5-ジヒドロキシ-26-メトキシ-19-メチル-13,20-ビス(メチレン)-24,35,36,37,38,39-ヘキサオキサヘプタシクロ[29.3.1.13,6.14,34.111,14.117,21.023,27]ノナトリアコンタン-8,29-ジオン
【化22】

n-ヘプタン中のER-118046(0.580 kg、0.439 mol、1当量)を真空下(in vacuo)、50℃以下で濃縮した。残留物を無水テトラヒドロフラン(THF)(19.7 L)中に溶解し、イミダゾール塩酸塩(0.142 kg、1.36 mol、3.1当量)で緩衝したフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)(THF中1.0 M溶液、2.85 L、2.85 mol、6.5当量)で、10-25℃において処理した。C34/C35-ジオールのレベル(3%以下)を確認した後、トルエン(7.6kg)及び水(8.7 kg)を抽出のために添加した。水層を分離し、トルエン(5.0 kg)及びTHF(5.2 kg)で抽出が行った。水層は流出させ、有機層は最初の抽出物と合わせた。合わせた有機層は真空下、35℃以下で濃縮した。濃縮時に、遊離のペンタオールはER-811475及びER-811474に変換された。残りの遊離ペンタオールのレベルが5%以上の場合は、アセトニトリル(ACN)(3.3 kg)及び水(0.42 kg)が添加され、レベルが5%未満に下がるまで、真空下に35℃未満で共沸蒸留した。完了後、残留物をさらに真空中、35℃以下においてアセトニトリル(4.6 kg)で共沸蒸留した。残留物はジクロロメタン(7.7 kg)で希釈し、真空下に35℃未満で共沸蒸留し、ER-811475とER-811474の混合物(4:1)を得た。
【0066】
方法A2:
【化23】

n-ヘプタン中のエノンER-118046(135 g)の溶液を、真空下に41℃又はそれ未満で濃縮した。残留物を無水テトラヒドロフラン(THF)(2.03 L)及びN,N-ジメチルアセトアミド(675 mL)に溶解し、次いで16℃から18℃において、イミダゾール塩酸塩(31.5g)で緩衝したフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)(THF中0.97 mol/L溶液、685 mL)で処理した。この混合物は16℃から18℃で47時間撹拌し、反応の進行をHPLCでモニターした。反応中間体であるC34/C35-ジオールの残存レベルが3%又はそれ未満となった後、アセトニトリル(608 mL)及び水(203 mL)を添加した。遊離のペンタオールの残存レベルが5%未満に低下するまで、混合物を16℃から18℃で45時間撹拌した。ER-811475/ER-811474を含む反応混合物(二つのジアステレオマーの18:1の混合物)は、さらに精製を行うことなしに次の工程で使用しうる。
【0067】
工程B:ER-811475からER-076349へのケタール化
方法B1:
ER-076349:(1S,3S,6S,9S,12S,14R,16R,18S,20R,21R,22S,26R,29S,31R,32S,33R,35R,36S)-20-[(2S)-2,3-ジヒドロキシプロピル]-21-メトキシ-14-メチル-8,15-ビス(メチレン)-2,19,30,34,37,39,40,41-オクタオキサノナシクロ[24.9.2.13,32.13,33.16,9.112,16.018,22.029,36.031,35]ヘンテトラコンタン-24-オン
【化24】

ER-811474との混合物中のER-811475(0.329 kg、0.439 mol、1当量)をジクロロメタン(DCM;7.7 kg)中に溶解し、ジクロロメタン(1.7 kg)中のピリジニウムp-トルエンスルホネート(PPTS; 0.607 kg、2.42 mol、5.5当量)溶液で10-20℃において処理した。得られた混合物を10-20℃で撹拌した。主たるジアステレオマーは反応してジオールであるER-076349をもたらし、より少量のジアステレオマーER-811474は未反応のままであった。ER-811475の残存レベルが1%を超えている場合は、ジクロロメタン(0.15 kg)中の追加のPPTS(0.055 kg)を添加し、10-20℃で反応を継続させた。完了後、反応混合物は直接、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)(200 L)で予備平衡したシリカゲルカラムに入れた。また反応容器はジクロロメタン(3.1 kg)で洗浄し、洗液をカラムに入れた。カラムは順次、(1)メチルt-ブチルエーテル(125 L)、(2)アセトニトリル(125 L)中96% v/vのメチルt-ブチルエーテル、(3)アセトニトリル(250 L)中50% v/vのメチルt-ブチルエーテル、及び(4)アセトニトリル(225 L)で溶出させた。所望の画分を合わせ、真空下に35℃未満で濃縮し、アセトニトリル(4.6 kg)で真空下に35℃未満で共沸蒸留した。残存物はアセトニトリル(0.32 kg)及び水(0.54 kg)で溶解し、ER-076349の種結晶(0.27 g、0.36 mmol)と追加の水(2.70 kg)を用いて結晶化を行った。得られた結晶をろ過し、結晶溶媒に対する回収率が80%以上になるまで、ろ液の重量をモニターした。結晶をさらに水(2.7 kg)で洗浄し、ジクロロメタン(10.8 kg)中に溶解し、溶液を真空下、25℃以下で濃縮した。残留物はアセトニトリル(2.1 kg)で希釈し、真空下に40℃以下で濃縮してER-076349を得た(ER-118046から55-75%の収率)。
【0068】
方法B2:
【化25】

ER-811475(ER-811474との混合物中)に対し、イミダゾール塩酸塩(85.5 g)の水溶液(68 mL)を添加した。この溶液を真空下、28℃又はそれ未満で濃縮した。残留物をエタノール(2.69 kg)に溶解した。得られた混合物を21℃から24℃で、43時間撹拌した。主たるジアステレオマー(ER-811475)は反応してジオールであるER-076349をもたらし、より少量のジアステレオマー(ER-811474)は未反応のままであった。この反応は、ER-811475の消失に関してHPLCによってモニターした。ER-811475の残存レベルが1%未満になった後、溶液を真空下に37℃又はそれ未満で濃縮した。トルエン(1.35L)を添加し、溶液を真空下に37℃又はそれ未満で共沸蒸留した。テトラヒドロフラン(THF)(4.20 kg)、トルエン(1.76 kg)、及び水(2.03 L)を添加して抽出を行った。水層を分離し、有機層を水(1.01 L)で洗浄した。水層は合わせて、トルエン(1.18 kg)及びTHF(1.20 kg)で抽出した。水層を流出させ、有機層を最初の抽出物と合わせた。この合わせた有機層は真空下に37℃又はそれ未満で濃縮した。トルエン(675mL)を添加し、溶液を真空下、38℃又はそれ未満において共沸蒸留した。濃縮物をジクロロメタン(1.01 L)で希釈し、メチルt-ブチルエーテル(55.1 Lより多い)で予備平衡したシリカゲルカラム(5.511 kg)へと入れた。カラムは順次、メチルt-ブチルエーテル(40.8 L)、アセトニトリル(24.9 L)中 95% v/vのメチルt-ブチルエーテル、アセトニトリル(83.6 L)中40% v/vのメチルt-ブチルエーテル、及びアセトニトリル(76.3 L)で溶出させて、ER-804028から未反応中間体. 反応不純物、及びキャリーオーバー不純物を除去する。所望とする画分は合わせられ、真空下で32℃又はそれ未満で濃縮されて、ER-076349が与えられる(分析値62.02g、2工程での収率84.0%)。残留物は真空下、29℃又はそれ未満でアセトニトリルと共沸蒸留され、さらに精製することなく次の工程で使用可能である。
【0069】
工程C及びD:ER-076349のエリブリンへの変換
方法C2+D2:
エリブリン:(1S,3S,6S,9S,12S,14R,16R,18S,20R,21R,22S,26R,29S,31R,32S,33R,35R,36S)-20-[(2S)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロビル]-21-メトキシ-14-メチル-8,15-ビス(メチレン)-2,19,30,34,37,39,40,41-オクタオキサノナシクロ[24.9.2.13,32.13,33.16,9.112,16.018,22.029,36.031,35]ヘンテトラコンタン-24-オン
【化26】

ER-076349(0.259 kg、0.354 mol、1当量)がトルエン(4.7 kg)中に溶解され、真空下に25℃未満で共沸蒸留された。残留物をトルエン(4.5 kg)で希釈して、水分量をモニターするためのトルエン溶液を得た。水分量は、カール-フィッシャー(KF)滴定法により測定した。KF値が125 ppmを超える場合は、水分量が125 ppm以下に低下するまで、溶液を真空下に25℃未満で共沸蒸留し、トルエン(4.5kg)で希釈した。KF値が目標値に達したら、溶液を濃縮し、無水ジクロロメタン(6.5 kg)中に溶解した。無水ジクロロメタン(84.1g)中の2,4,6-コリジン(0.172 kg、1.27 mol、4当量)及びピリジン(0.0014 g、0.018 mol、0.05当量)を添加し、混合物を冷却した。この反応混合物に対し、無水ジクロロメタン(3.4 kg)中のTs2O(0.124 kg、0.380 mol、1.07当量)溶液を、反応温度が-10℃以下を維持する速度で添加し、混合物を-10℃以下で撹拌した。ER-076349の残存量が3%未満となるか、対応するビス-トシレートの生成が4%を超えたら、水(1.0 kg)を添加して反応混合物を急冷した。混合物を加温し、次いでイソプロピルアルコール(IPA)(20.5 kg)及び水酸化アンモニウム(NH4OH; 25.7 kg)を連続して、10-30℃で添加した。エポキシドが完全に消費されたら(目標0.85%以下、必要ならNH4OHを余分に添加)、反応混合物を真空下、30℃未満で濃縮した。その残留物に対し、ジクロロメタン(20.7 kg)と、十分な量の緩衝液NaHCO3/Na2CO3/水(9/9/182 w/w/w、5.166 kgを超えない)を添加し、抽出を行った。有機層を分離し、水層をジクロロメタン(8.6 kg)で抽出した。有機層を分離し、最初の抽出物と合わせた。合わせた有機層を真空下、30℃未満で濃縮した。濃縮物をアセトニトリル(4.0 kg)で希釈し、次いでアセトニトリル(200 L)で予備平衡させたシリカゲルカラムに入れた。カラムは順次、(1)アセトニトリル(100 L)、(2)90.0/7.5/2.5 v/v/vのアセトニトリル/水/200 mMのNH4OAc水溶液(152.4 L)、(3)85.8/11.7/2.5 v/v/vのアセトニトリル/水/200 mMのNH4OAc水溶液(152.4 L)、(4)83.5/14.0/2.5 v/v/vのアセトニトリル/水/200 mMのNH4OAc水溶液(152.6 L)、及び(5)80.0/17.6/2.4 v/v/vのアセトニトリル/水/200 mMのNH4OAc水溶液(100.2 Lより多い)で溶出させた。所望の画分を合わせ、NH4OHを添加して内部pHを5.5-9.0に維持しながら、真空下に40℃以下で濃縮した。この残留物に対し、ジクロロメタン(13.9 kg)及び十分な量の緩衝液NaHCO3/Na2CO3/水(9/9/182 w/w/w、15.51 kgを超えない)を添加し、抽出を行った。有機層を分離し、水層をジクロロメタン(8.7 kg)で抽出した。有機層を分離し、最初の抽出物と合わせた。合わせた有機層は真空下、30℃未満で濃縮した。残留物はn-ペンタン(6.12 kg)中75% v/vの無水ジクロロメタンに溶解し、ろ過した。ろ液は真空下に30℃未満で濃縮し、アセトニトリル(2.1kg)で希釈し、真空下に35℃以下で濃縮してエリブリンを得た(収率75-95%)。
【0070】
方法C3+D1:
【化27】

MsCl(CH2Cl2中0.3 M、98 μL、0.030 mmol)を0℃において、2,4,6-コリジン(7 μL、0.054 mmol)、ER-076349(20.8 mg、0.028 mmol)、及びCH2Cl2 (1 mL)の混合物に対し、40分間かけて滴下して添加した。4℃で76時間後、NaHCO3の飽和水溶液-ブラインの1:4混合物で反応を急冷し、CH2Cl2で抽出を4回行った。抽出物を合わせてNa2SO4で乾燥し、濃縮した。粗生成物をトルエン(3 mL)中に溶解し、濃縮し、分取TLC(1.5% MeOH-EtOAc)によって精製して、メシル酸塩B-2294を得た(21.4 mg、95%)。テトラ-n-ブチルアンモニウムアジド(ジメチルホルムアミド中0.2 M、0.5 mL、0.10 mmol)を室温で、ジメチルホルムアミド(2 mL)中のメシル酸塩B-2294溶液(21.4 mg、0.026 mmol)に添加し、83℃に加温した。83℃で3.5時間撹拌した後、反応混合物を室温まで冷却し、トルエンで希釈し、濃縮し、分取TLC (80% 酢酸エチル-ヘキサン) で精製して、B-1922を得た (18 mg、92%)。THF (3.2 mL)中のアジ化B-1922(24.6 mg、0.032 mmol)溶液に対し、室温でMe3P(テトラヒドロフラン中1 M)及びH2O (0.8 mL) を連続的に添加した。混合物を22時間撹拌し、トルエンで希釈し、濃縮し、フラッシュクロマトグラフィ[ステップ勾配は、10% MeOH-EtOAcに続いてMeOH-EtOAc-30%NH4OH水溶液(9:86:5)]によって精製し、所望とする一級アミン(23.3 mg)を得た。これは1H-NMRによれば、〜1%のトリメチルフォスフィンオキシドを含んでいた。ベンゼンから凍結乾燥し、高圧下に2日間放置するとエリブリンが得られた(20.3 mg、87%)。
【0071】
方法C4+D2:
【化28】

ジオールER-076349(58.3 g)をアセトニトリル(935 mL)中に溶解させた。アセトニトリル(117 mL)中のジブチル錫オキシド(0.99 g)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(28.5mL)の懸濁液を添加した。アセトニトリル(117 mL)中TsCl(30.5 g)の溶液をこの反応混合物へと、反応温度を26℃から28℃に維持する速度で添加し、混合物を26℃から28℃で撹拌した。HPLCにより、ER-076349の消費に関して反応をモニターした。ER-076349の残存レベルが3%未満となり反応時間が27時間を超えた後、15℃から20℃でイソプロピルアルコール(IPA)(4.58 kg)及び水酸化アンモニウム(5.82 kg)を連続添加した。混合物を15℃から20℃で66時間撹拌し、反応中間体ER-809681の消費に関して反応をHPLCでモニターした。ER-809681の残存レベルが0.85%又はそれ未満に達した後、反応混合物を真空下、29℃又はそれ未満で濃縮した。この残留物に対し、ジクロロメタン(4.64 kg)及び十分な量のNaHCO3/Na2CO3/水の緩衝液(9/9/182 w/w/w)(530 mL)を添加し、抽出を行った。有機層を分離し、水層をジクロロメタン(1.94 kg)で抽出した。この有機層を分離し、最初の抽出物と合わせた。合わせた有機層は真空下、25℃又はそれ未満で濃縮した。濃縮物はアセトニトリル(1.17 L)で希釈し、次いで、アセトニトリル(55.1 L超)で予備平衡したシリカゲルカラム(5.511 kg)に入れた。カラムは順次、アセトニトリル(29.6 L)、90.0/7.5/2.5 v/v/vのアセトニトリル/水/200 mMのNH4OAc水溶液(46.2 L)、 85.8/11.7/2.5 v/v/vのアセトニトリル/水/200 mMのNH4OAc水溶液(45.8 L)、83.5/14.0/2.5 v/v/vのアセトニトリル/水/200 mMのNH4OAc水溶液(46.5 L)、80.0/17.6/2.4 v/v/vのアセトニトリル/水/200 mMのNH4OAc水溶液(29.8 L)で溶出させて、未反応中間体及び反応不純物を除去した。所望とする画分は合わせて、水酸化アンモニウムを添加して内部pHを5.5から9.0に維持しながら、真空下に36℃又はそれ未満で濃縮した。その残留物に対し、ジクロロメタン(3.98 kg)及び十分な量のNaHCO3/Na2CO3/水の緩衝液(9/9/182 w/w/w)(2.02 kg)を添加し、抽出を行った。有機層を分離し、水層をジクロロメタン(2.48 kg)で抽出した。その有機層を分離し、最初の抽出物と合わせた。合わせた有機層は真空下に、24℃又はそれ未満で濃縮した。残留物はn-ペンタン(1.03 L)中75% v/vの無水ジクロロメタンで希釈し、ろ過した。ろ液は真空下に25℃又はそれ未満で濃縮し、エリブリンを得た。残留物はアセトニトリル(392 mL)とジクロロメタン(69 mL)で希釈して、エリブリンのアセトニトリル/ジクロロメタン溶液(分析値49.11g、補正収率85.3%)を得た。この溶液は真空下に29℃又はそれ未満で濃縮して、次の工程に用いた。
【0072】
エリブリンの塩化
エリブリンメシレートへの塩化:
エリブリンメシレート:(2R,3R,3aS,7R,8aS,9S,10aR,11S,12R,13aR,13bS,15S,18S,21S,24S,26R,28R,29aS)-2-[(2S)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロピル]-3-メトキシ-26-メチル-20,27-ジメチリデンヘキサコサヒドロ-11,15:18,21:24,28-トリエポキシ-7,9-エタノ-12,15-メタノ-9H,15H-フロ[3,2-i]フロ[2',3':5,6]ピラノ[4,3-b][1,4]ジオキサシクロペンタコシン-5(4H)-オンメタンスルホネート
【化29】

ER-086526-00(46.68 g)をアセトニトリル(591 mL)及び水(31 mL)に溶解し、アセトニトリル(624mL)中のメタンスルホン酸(MsOH、4.09 mL)及びNH4OH(187 mL)の溶液で処理する。この混合物は真空下に24℃又はそれ未満で濃縮し、無水アセトニトリル(234 mL)を用いて真空下に24℃又はそれ未満で繰り返して共沸蒸留し、水を除去した。残留物はn-ペンタン(1.10 L)中75% v/vの無水ジクロロメタンに溶解し、ろ過した。ろ液は真空下に24℃又はそれ未満で濃縮した。残留物はn-ペンタン(1.16 L)中、50% v/vの無水ジクロロメタンに溶解し、この溶液はフィルタを介して、別の反応容器に入れた無水ペンタン(3.26 kg)中に移した。得られた沈殿物を29時間撹拌した。沈殿物をろ過し、n-ペンタン(2.92 kg)で洗浄し、残留溶媒レベルが目標値:n-ペンタン≦25000 ppm、2-メチルブタン≦1000 ppm、2,2-ジメチルブタン≦1000 ppm、及びシクロペンタン≦1000 ppmに達するまで、真空中に窒素流の下で乾燥した。乾燥後、沈殿物を真空中に混合してエリブリンメシレートを得た(総量45.95 g、補正収率83.8%)。この製剤原料はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のボトルに入れた。PTFEボトルはアルミニウムでラミネートした袋中に包装した。
【0073】
他の実施形態
当業者には、本発明の範囲及び思想から逸脱することなしに、本発明について記載した方法の種々の修正及び変更を行いうることが明らかであろう。本発明は特定の実施形態について説明したが、請求の範囲に記載した発明は、そうした実施形態へと不当に限定されるものでないことが理解されるべきである。実際に、関連技術の当業者にとって自明な、本発明を実施するための記述された態様の種々の変更は、本発明の範囲内にあることが意図されている。