(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るフィルム材の製造方法は、基材を準備する第1準備工程と、繊維の原料となる第1樹脂および第1溶媒を含む第1原料液を準備する第2準備工程と、熱硬化性の第2樹脂および第2溶媒を含む第2原料液を準備する第3準備工程と、基材上で第1原料液を噴射して、第1原料液から第1樹脂を含む繊維を生成させ、基材に繊維を堆積させる繊維堆積工程と、基材に堆積された繊維を覆うように、第2原料液を塗工する樹脂塗工工程と、塗工された第2原料液に含まれる第2溶媒を除去する乾燥工程と、を含む。これにより、耐熱性が高く、転写性に優れるフィルム材を生産性良く製造できる。フィルム材とは、例えば、ACF、NCF、ダイボンドフィルムなどである。
【0018】
第1樹脂の軟化開始温度ST1は、乾燥工程後の第2樹脂の軟化開始温度ST2より高いことが好ましい。フィルム材の耐熱性および転写性がさらに向上するためである。
【0019】
繊維堆積工程は、電界紡糸法により行われることが好ましい。生産性がさらに向上するためである。
【0020】
堆積される繊維の径は、1μm以下であることが好ましい。フィルム層を接合材料として回路部材間の接合に使用する場合、熱圧着時に熱硬化性樹脂の流動が阻害され難いためである。
【0021】
第2原料液は、さらに導電性材料を含むことが好ましい。これにより、得られるフィルム材をフィルム状の導電性接着剤として、互いに対向する電極を有する回路部材間の接続に利用できる。また、この場合、堆積された繊維の径が1μm以下であると、導電性材料が移動し易くなる。
【0022】
さらに、基材を搬送する搬送工程を含み、繊維堆積工程、樹脂塗工工程および乾燥工程は、搬送される基材に対して、連続的に行われることが好ましい。いわゆるロールツーロール(Roll to roll)工程によりフィルム材を製造することで、生産性がさらに向上する。
【0023】
本発明に係る製造装置は、基材を搬送ベルトに供給する基材供給部と、搬送される基材の上方で、繊維の原料となる第1樹脂および第1溶媒を含む第1原料液から第1樹脂を含む繊維を生成させ、生成した繊維を、基材に堆積させる繊維形成部と、繊維形成部の下流に配置され、搬送される基材の繊維が堆積された面に、繊維を覆うように、熱硬化性の第2樹脂および第2溶媒を含む第2原料液を塗工する樹脂塗工部と、樹脂塗工部の下流に配置され、搬送される基材に塗工された第2原料液に含まれる第2溶媒を除去して、フィルム材を形成する乾燥部と、乾燥部から送り出されるフィルム材を捲き取る回収部と、を具備する。これにより、耐熱性が高く、転写性に優れるフィルム材を生産性良く製造できる。
【0024】
第1樹脂の軟化開始温度ST1は、乾燥部から送り出されるフィルム材に付着する第2樹脂の軟化開始温度ST2より高いことが好ましい。フィルム材の耐熱性および転写性がさらに向上するためである。
【0025】
[製造方法]
以下、
図1A〜1C、3Aおよび3Bを参照しながら、本発明に係る製造方法の一実施形態を説明する。
図1A〜1Cは、本発明の一実施形態に係るフィルム材の製造方法を説明するための図である。
図1Bおよび1Cでは、便宜的に、基材1上に、繊維2Fと第2原料液40(または熱硬化性樹脂2R)とが、それぞれ単独の層状で積層されているように示しているが、これに限定されるものではない。繊維2Fは、その一部または全部が第2原料液40(または熱硬化性樹脂2R)に埋没あるいは浸漬している場合もある。
図3Aおよび3Bは、本発明の製造方法により得られるフィルム材のそれぞれ異なる一実施形態を模式的に示す断面図である。
【0026】
(1)第1、第2および第3準備工程
まず、基材1、繊維2Fの原料となる第1樹脂2Faおよび第1溶媒を含む第1原料液30ならびに、熱硬化性の第2樹脂および第2溶媒を含む第2原料液40を、それぞれ準備する。
【0027】
基材1は、フィルム層2を支持する支持体である。第1原料液30および第2原料液40は、フィルム材10を構成するフィルム層2の原料である(
図3Aおよび3B参照)。フィルム材10を、回路部材同士を接合する接合材料(例えば、ACF、NCF、ダイボンドフィルムなど)として用いる場合、フィルム層2は一方の回路部材(以下、被転写体と称する場合がある)に熱転写され、基材1は剥離される。
【0028】
フィルム層2は、未硬化または半硬化状態であって、かつ、常温(例えば、20〜35℃)で固化している状態の第2樹脂(熱硬化性樹脂2R)と繊維状の第1樹脂(繊維2F)とを含む。なお、半硬化状態とは、完全に硬化していないものの、流動性を失った状態である。固化しているとは、流動性を失った状態であり、例えば、後述するように、第2原料液40を基材上に塗工する場合に、第2原料液40に含まれる第2溶媒の一部または全部が除去された状態である。
【0029】
[基材]
基材1の材質は特に限定されず、例えば、樹脂シート、紙シート、布シート、ガラス繊維シートなどを用いることができる。なかでも、取扱い性の点で、樹脂シートであることが好ましい。樹脂シートを構成する樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)などを用いることができる。なかでも、寸法安定性、耐溶剤性、コストの観点から、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。基材1の厚みも特に限定されないが、10〜100μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。
【0030】
基材1は、転写性の観点から、フィルム層2と対向する面が離型剤によりコーティングされていることが好ましい。離型剤としては、シリコーン樹脂、フッ素系化合物などが挙げられる。
【0031】
[第1原料液]
第1原料液30は、第1樹脂2Faおよび第1溶媒を含み、第1樹脂2Faは、第1溶媒に溶解している。第1原料液30からは、第1樹脂2Faを含む繊維2Fが形成される。換言すれば、第1樹脂2Faは、繊維の形状でフィルム層2に含まれる。繊維状の第1樹脂2Faの軟化点ST1(以下、単に「繊維2Fの軟化点ST1」と称する)は、未硬化または半硬化状態であって、かつ、固化している状態の熱硬化性樹脂2Rの軟化点ST2(以下、単に「熱硬化性樹脂2Rの軟化点ST2」と称する)より高いことが好ましい。これにより、熱転写時に、基材1がさらに剥離し易くなる。
【0032】
軟化点STは、樹脂が軟化し始める温度であり、熱機械分析装置(TMA)により測定される。具体的には、フィルム層2を所定の厚み(例えば、0.5mm)になるように重ね合わせ、所定の長さおよび幅(例えば、長さ30mm×幅5mm)に切り出して試料を作製する。得られた試料の長手方向の両端部を、それぞれ引っ張り冶具でチャッキングし、一定の温度で昇温させながら、微小な引っ張り荷重を加える。試料の伸び量が急激に大きくなるときの温度を、そのフィルム層2を形成する樹脂の軟化開始温度(軟化点)STとする(以下、同じ)。
【0033】
繊維2Fは、特に限定されない。なかでも、耐熱性の点で、第1樹脂2Faとして、エンプラが好ましく用いられる。エンプラは、一般的に、引っ張り強度500kg/cm
2以上の樹脂であるとされており、強度、耐衝撃性、耐熱性などに優れている。エンプラとしては、例えば、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)などが挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いても良い。なかでも、電界紡糸法に適している点で、PESが好ましい。
【0034】
軟化点ST1は、特に限定されない。軟化点ST1は、軟化点ST2より高いことが好ましく、特に耐熱性の点で、軟化点ST1は150〜250℃であることが好ましい。軟化点ST1の測定が困難である(軟化点がない)場合、繊維2Fは、軟化点ST2よりも十分に高い軟化点を有するものとする。
【0035】
第1溶媒は、第1樹脂2Faを溶解できるものであれば特に限定されない。第1溶媒として、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(沸点202℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(沸点153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc、沸点165℃)、シクロヘキサノン(沸点156℃)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。第1原料液30における第1溶媒と第1樹脂2Faとの混合比率は、選定される第1溶媒の種類と第1樹脂2Faの種類により異なる。第1原料液30における第1溶媒の割合は、例えば、60質量%から95質量%である。第1原料液30には、第1溶媒以外の溶媒や各種添加剤などが含まれていても良い。
【0036】
[第2原料液]
第2原料液40は、第2樹脂(熱硬化性樹脂2R)および第2溶媒を含む。熱硬化性樹脂2Rは、好ましくは第2溶媒に溶解している。
【0037】
熱硬化性樹脂2Rは特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステルなどを主剤として含むことができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、取扱い性の点でエポキシ樹脂が好ましい。
【0038】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ポリエーテル型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂などが挙げられる。なかでも、接合性の点で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、常温で、液状であっても良いし、固形であっても良い。
【0039】
第2原料液40は、さらに、硬化剤および硬化促進剤などを含む。熱硬化性樹脂2Rがエポキシ樹脂である場合、硬化剤として、例えば、酸無水物、アミン化合物などが用いられる。硬化促進剤としては、イミダゾール系促進剤、リン系硬化促進剤、ホスホニウム塩系硬化促進剤、双環式アミジン類、有機金属錯体、ポリアミンの尿素化物などが用いられる。第2原料液40には、第2溶媒以外の溶媒や各種添加剤などが含まれていても良い。
【0040】
熱硬化性樹脂2Rの軟化点ST2は特に限定されないが、転写性の点で、40〜100℃であることが好ましい。また、耐熱性の点で、硬化後の熱硬化性樹脂2Rのガラス転移点Tgは、100〜150℃であることが好ましい。なお、ガラス転移点Tgは、DMA法により、昇温温度2℃/分、周波数1Hzの測定条件により測定される(以下、同じ)。繊維2Fの軟化点ST1は、耐熱性の点で、硬化後の熱硬化性樹脂2Rのガラス転移点Tgより高いことが好ましい。
【0041】
硬化後の熱硬化性樹脂2Rとは、熱硬化性樹脂2Rが硬化剤および硬化促進剤により硬化された状態の第2樹脂であり、熱硬化性樹脂2R、硬化剤および硬化促進剤を含んでいる。言い換えれば、硬化後の熱硬化性樹脂2Rは、フィルム層2のうち、繊維2F、および、後述する導電性材料が含まれる場合には導電性材料3を除いた部分を占める。
【0042】
第2溶媒は特に限定されないが、熱硬化性樹脂2Rの硬化温度よりも低い沸点を有することが好ましい。第2溶媒としては、例えば、トルエン(沸点110℃)、ヘキサン(沸点69℃)、酢酸エチル(沸点77℃)、メチルエチルケトン(沸点80℃)などが挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0043】
第2原料液40は、導電性材料を含んでいても良い。これにより、フィルム材10を、対向する回路部材同士を接続するためのACFのようなフィルム状導電性接着剤として用いることができる。
【0044】
導電性材料3としては、例えば、銀粒子、はんだ粒子、絶縁性の球状粒子に金属めっきした粒子、ニッケル粒子などが挙げられる。金属めっきに用いられる金属としては、例えば、金、銀、ニッケル−リン合金、パラジウムなどが挙げられる。球状粒子の材料としては、シリカなどの無機材料や、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテルなどの耐熱性の樹脂などが挙げられる。なかでも、導電性の点で、はんだ粒子が好ましい。
【0045】
導電性材料3の含有量は特に限定されないが、接合性および導通性の観点から、第2原料液40に1〜10体積%含まれていることが好ましい。また、導電性材料3が粒子状である場合、その平均粒径D50も特に限定されない。なかでも、回路部材間の導通性の観点から、1〜10μmであることが好ましく、2〜5μmであることがより好ましい。なお、平均粒径D50とは、レーザー回折式の粒度分布測定装置により求められる体積粒度分布におけるメディアン径である(以下、同じ)。
【0046】
(2)繊維堆積工程
次に、
図1Aに示すように、基材1に繊維2Fを堆積させる。繊維2Fは、基材1上で第1樹脂2Faおよび第1溶媒を含む第1原料液30を噴射させ、第1溶媒を気化させながら繊維2Fを形成させる乾式紡糸法あるいは電界紡糸法により、基材1上に堆積される。なかでも、繊維径の小さな繊維を形成することができる点で、繊維2Fは電界紡糸法により形成されることが好ましい。電界紡糸法によれば、繊維2Fは、基材1上に、一本以上の繊維2Fがランダムに重なった(あるいは、絡まった)繊維の集合体である不織布状に堆積される。
【0047】
第1溶媒は、エンプラ等の高い軟化点を有する第1樹脂2Faを溶解させる場合、高い沸点を有している。しかし、上記方法によれば、第1原料液30が噴射されてから基材1上に繊維2Fが堆積されるまでの間に、熱あるいは電界によって第1溶媒は揮発し、基材1上にはほとんど残留しない。そのため、フィルム材10の製造工程において、第1溶媒を除去する工程は特に不要である。よって、フィルム材10の製造工程において熱硬化性樹脂2Rの硬化は進行し難い。その結果、フィルム材10を回路部材同士を接合する接合材料として用いる場合、熱転写工程において、フィルム層2と回路部材との密着性が損なわれず、回路部材同士の接合性が向上する。
【0048】
繊維2Fの繊維径は、1μm未満であることが好ましく、800nm未満であることがより好ましく、600nm未満であることが特に好ましい。また、繊維2Fの繊維径は、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、200nm以上であることが特に好ましい。フィルム層を接合材料として回路部材間の接合に使用する場合の熱圧着において、熱硬化性樹脂の流動が阻害され難いためである。さらに、繊維2Fの繊維径がこの範囲であれば、柔軟性に優れる。第2原料液40が粒子状の導電性材料3を含む場合、繊維2Fの繊維径は、導電性材料3の平均粒径D50よりも小さいことが好ましい。繊維2Fによって導電性材料3の移動が妨げられ難く、接合材料とした場合の導通性が確保し易くなるためである。
【0049】
ここで、繊維径とは、繊維の直径である。繊維の直径とは、繊維の長さ方向に対して垂直な断面の直径である。そのような断面が円形でない場合には、最大径を直径と見なしてよい。また、フィルム材10の一方の主面の法線方向から見たときの、繊維2Fの長さ方向に対して垂直な方向の幅を、繊維2Fの直径と見なしても良い。
【0050】
繊維2Fの単位面積当たりの質量は、フィルム層2の耐熱性の観点から、0.05〜5g/m
2であることが好ましく、0.1〜1g/m
2であることがより好ましい。
【0051】
繊維堆積工程の後、樹脂塗工工程の前に、繊維2Fの飛散や切断を抑制するための保護シート(図示せず)を、基材1に、繊維2Fを挟むようにして張り合わせても良い。保護シートは特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート製のシートなどが用いられる。保護シートが積層された基材1は、その後、一旦、回収(例えば、リールへの巻き取りなど)されても良い。保護シートは、樹脂塗工工程の前に取り除かれる。繊維堆積工程および樹脂塗工工程が連続して行われる場合、保護シートは省略することができる。
【0052】
(3)樹脂塗工工程
続いて、
図1Bに示すように、基材1の繊維2Fが堆積された主面に、第2原料液40を塗工する。塗工の方法は特に限定されず、例えば、マイクログラビア法、スロットダイコーティング法、ナイフコーティング法などが挙げられる。
図1Bは、ノズル44から第2原料液40が吐出されている様子を示している。
【0053】
第2原料液40は、基材1に堆積された繊維2Fを覆うように塗工される。塗工された第2原料液40は繊維2F間の空隙にも浸透し、繊維2Fの一部または全部は第2原料液40に埋没あるいは浸漬する。そのため、繊維2Fと熱硬化性樹脂2Rとの密着性が良い。樹脂2Faと熱硬化性樹脂2Fとの軟化点が異なる場合、フィルム層2に熱を加えると、繊維2Fおよび熱硬化性樹脂2Fの軟化の程度は異なる。しかし、繊維2Fと熱硬化性樹脂2Rとの密着性が良好であるため、熱転写する際に、繊維2Fと熱硬化性樹脂2Rとの剥離が抑制される。
【0054】
第2原料液40の塗工により形成されるフィルム層前駆体2aの厚みは、第2溶媒を除去した後のフィルム層2の厚みTが5〜100μmとなる範囲であれば、特に限定されない。厚みTは、10〜30μmであることがより好ましい。フィルム層2の厚みTがこの範囲であれば、柔軟性が向上するとともに、これを接合材料として使用する電子部品の厚みを薄くすることができる。厚みTとは、フィルム層2の2つの主面の間の距離である。
【0055】
(4)乾燥工程
最後に、
図1Cに示すように、形成されたフィルム層前駆体2aに含まれる第2溶媒の一部または全部を除去することにより、フィルム層2が形成され、フィルム材10が得られる。第2溶媒の除去は、温風を利用した加熱乾燥や減圧乾燥により行うことができる。なかでも、簡便である点で加熱乾燥を用いることが好ましい。
図1Cは、温風51により、加熱乾燥を行う場合を示している。
【0056】
乾燥温度は、第2溶媒が除去され、かつ、熱硬化性樹脂2Rが硬化しない温度であれば特に限定されない。乾燥温度は、第2溶媒および熱硬化性樹脂2Rの種類によって適宜設定すればよい。例えば、第2溶媒としてトルエンおよび酢酸エチルを用い、熱硬化性樹脂2Rとしてエポキシ樹脂を用いる場合、乾燥温度は、70〜80℃程度である。上記のとおり、第2溶媒の除去は比較的穏やかな条件で行われる。しかし、第2原料液40は、フィルム層前駆体2aの外表面に多く存在するため、乾燥させ易い。熱硬化性樹脂2Rは、未硬化または半硬化状態であって、固化している状態でフィルム層2に含まれる。
【0057】
ブロッキングを抑制するために、フィルム材10には保護シート(図示せず)を積層しても良い。保護シートは特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート製のシートなどが用いられる。フィルム材10が長尺体である場合、フィルム材10は、その後、ロールに巻き取られても良い。巻き取られたフィルム材10は、所定の形状および大きさに裁断され、被転写体(例えば、回路部材)に熱転写される。
【0058】
(5)搬送工程
基材1を搬送する搬送工程が含まれる場合、
図2に示すように、繊維堆積工程、樹脂塗工工程および乾燥工程は、搬送される基材1に対して、連続的に行われることが好ましい。これにより、繊維堆積工程、樹脂塗工工程および乾燥工程の間、基材を回収(例えば、リールへの巻き取りなど)することなく、フィルム材を製造できるため、生産性がさらに向上する。また、製造設備の省スペース化も図れる。
図2では、基材1が長尺体である場合を示している。例えば、長尺の基材1を方向Dに搬送させながら、基材1上に繊維2Fを堆積させる。繊維2Fが堆積された基材1をそのまま搬送させながら、引き続き、第2原料液40の塗工を行う。さらに搬送させながら乾燥することにより、フィルム材10が得られる。
【0059】
[フィルム材]
次に、
図3を参照しながら、本発明に係るフィルム材の一実施形態を説明する。
上記の方法により製造されるフィルム材10は、基材1と、基材1の一方の主面に配置されたフィルム層2と、を備える。フィルム層2は、熱硬化性樹脂2Rおよび繊維2Fを含む。繊維2Fは、熱硬化性樹脂2Rの軟化点ST2よりも高い軟化点ST1を有することが好ましい。フィルム層2の耐熱性がさらに向上するためである。
【0060】
基材1に繊維2Fを堆積させた後、熱硬化性樹脂2Rを付与しているため、フィルム層2の厚み方向において、繊維2Fの体積割合は一方向に勾配を有している。例えば、フィルム層2の厚みをTとするとき、フィルム層2の基材1側の表面から0.5Tまでの領域における繊維2Fの体積割合VF1
0.5は、フィルム層2の他方の表面から0.5Tまでの領域における2F繊維の体積割合VF2
0.5よりも大きい(
図3A参照)。そのため、フィルム材10は転写性に優れる。軟化点の高い繊維2Fが、基材1側により多く配置されている場合、フィルム層2は基材1からさらに剥離され易くなる。軟化点の低い熱硬化性樹脂2Rが被転写体により多く対向する場合、被転写体との密着性はさらに向上する。
【0061】
繊維2Fの体積割合は、フィルム材10の主面に対して垂直な断面を写真に取り、フィルム層2の基材1側の表面から所定の位置までの領域に含まれる繊維2Fの面積を求める。これを、フィルム層2の基材1側の表面から所定の位置までの領域の面積で除することによって求めることができる。繊維2Fの面積は、例えば、撮影された画像を二値化処理することにより、繊維2Fが占める部分を特定して、算出することができる。
【0062】
特に、転写性の観点から、フィルム層2の基材1側の表面から0.15Tまでの領域における繊維2Fの体積割合VF1
0.15が、フィルム層2の他方の表面から0.85Tまでの領域における繊維2Fの体積割合VF2
0.85よりも大きい(体積割合VF1
0.15>体積割合VF2
0.85)ことが好ましい(
図3B参照)。
【0063】
体積割合VF1
0.15は、0.5〜1であることが好ましく、0.6〜1であることがより好ましい。フィルム層2の基材1側の表面から0.15Tまでの領域の多くを繊維2Fが占めることにより、剥離性はさらに向上する。また、体積割合VF2
0.85は、密着性の観点から、0〜0.4であることが好ましく、0〜0.2であることがより好ましい。
【0064】
フィルム層2全体に対する繊維2Fの体積割合VFは、0.01〜0.5であることが好ましく、0.04〜0.5であることがより好ましい。体積割合VFがこの範囲であれば、フィルム層2は、柔軟性に優れる。これにより、被転写体との密着性がさらに向上する。さらに、回路部材同士の接合材料として使用する場合、体積割合VFがこの範囲であれば、圧着の際に熱硬化性樹脂2Rの流動が妨げられ難い。そのため、回路部材同士の接合性が向上する。
【0065】
フィルム材10は、熱硬化性樹脂2Rが硬化しないような比較的低温(例えば、100℃以下)で熱転写される。そのため、被転写体との密着性の観点から、フィルム層2は常温においても柔軟であることが好ましい。
【0066】
フィルム層2の常温での柔軟性は、例えば、引張り強度により表わされる。引張り強度は、引張り試験機を用いて測定することができる。具体的には、フィルム層2を所定の厚さ(例えば、0.1mm)になるように重ね合わせ、所定の長さおよび幅(例えば、長さ30mm×幅5mm)に切り出して試料を作製する。得られた試料の長手方向の両端部を、それぞれ引っ張り冶具でチャッキング(チャッキング間隔20mm)し、一定の速度(例えば、速度100mm/分)で、引っ張り冶具を離間させる。試料が破断したときの強度を、フィルム層2の引張り強度とする。このようにして測定されるフィルム層2の引張り強度は、10〜200mNであることが好ましく、20〜100mNであることがより好ましい。
【0067】
フィルム層2が導電性材料3を含む場合、フィルム層2の体積割合VFの小さい領域に導電性材料3が多く含まれていることが好ましい。例えば、体積割合VFが体積割合VF1
0.15>体積割合VF2
085の関係を満たす場合、フィルム層2の基材1側の表面から0.15Tまでの領域における導電性材料3の体積割合VP1
0.15は、フィルム層2の他方の表面から0.85Tまでの領域における導電性材料3の体積割合VP2
0.85よりも小さい(体積割合VP1
0.15<体積割合VP2
0.85)ことが好ましい。この場合、フィルム層2の基材1側の表面から0.15Tの位置までの領域に導電性材料3は含まれていないことがより好ましい。なお、熱圧着工程により、導電性材料3は、対向電極同士の間にある繊維2F同士の空隙に入り込むため、対向電極同士の間に繊維2Fが存在していても、導通は確保される。
【0068】
繊維2Fは、例えば不織布状でフィルム層2の基材1側に含まれる。不織布の平均厚みは、接合性の観点から、フィルム層の厚みTに対して0.05T〜0.2Tであることが好ましい。具体的には、不織布の平均厚みは、1〜3μmであることが好ましい。
【0069】
平均厚みとは、例えば、不織布の任意の10箇所の厚みの平均値である。厚みとは、不織布の2つの主面の間の距離である。具体的に、不織布の厚みは、上記と同じようにフィルム材10の断面を写真に取り、フィルム層2の基材1とは反対側の表面上にある任意の1地点から基材1まで、当該表面に対して垂直な線を引いたとき、この線と重なる繊維2Fのうち、最も離れた位置にある2つの繊維2Fの間の距離として求められる。他の任意の複数地点(例えば、9地点)についても同様にして不織布の厚みを算出し、これらを平均化した数値を、不織布の平均厚みとする。上記厚みの算出に際しては、二値化処理された画像を用いても良い。
【0070】
[製造装置]
以下、
図4を参照しながら、本発明に係る製造装置100の一実施形態を説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る製造装置の構成例を示す図である。製造装置100では、基材1は、製造ラインの上流から下流に搬送される。
【0071】
[基材供給部]
基材供給部200は、製造装置100の最上流に配置されており、例えばロール状に捲回された長尺の基材1を第1搬送コンベア21に供給する。この場合、基材1は供給リール22に捲回されており、供給リール22はモータ23の駆動により回転する。
【0072】
[繊維形成部]
基材1は、第1搬送コンベア21により、繊維形成部300に移送される。繊維形成部300は、繊維紡糸機構として、例えば電界紡糸機構を具備する。電界紡糸機構は、繊維形成部300内の上方に設置された第1原料液30を放出するための放出体33と、放出された第1原料液30をプラスに帯電させる帯電手段(後述参照)と、放出体33と対向するように配置された基材1を上流側から下流側に搬送する第2搬送コンベア34と、を備えている。第2搬送コンベア34は、基材1とともに繊維2Fを収集するコレクタ部として機能する。
【0073】
放出体33の基材1の主面と対向する側には、第1原料液30の放出口(図示せず)が複数箇所設けられている。放出口と基材1との距離は、製造装置の規模にもよるが、例えば、100〜600mmである。放出体33は、繊維形成部300の上方に設置された、基材1の搬送方向と平行な第1支持体35から下方に延びる第2支持体36により、自身の長手方向が基材1の主面と平行になるように支持されている。
【0074】
帯電手段は、放出体33に電圧を印加する電圧印加装置37と、第2搬送コンベア34と平行に設置された対電極38とで構成されている。対電極38は接地(グランド)されている。これにより、放出体33と対電極38との間には、電圧印加装置37により印加される電圧に応じた電位差(例えば20〜200kV)を設けることができる。なお、帯電手段の構成は、特に限定されない。例えば、対電極38はマイナスに帯電されていても良い。また、対電極38を設ける代わりに、第2搬送コンベア34のベルト部分を導体から構成してもよい。
【0075】
放出体33は、導体で構成されており、長尺の形状を有し、その内部は中空になっている。中空部は第1原料液30を収容する収容部となる。第1原料液30は、放出体33の中空部と連通するポンプ32の圧力により、第1原料液タンク31から放出体33の中空に供給される。そして、第1原料液30は、ポンプ32の圧力により、放出口から基材1の主面に向かって放出される。放出された第1原料液30は、帯電した状態で放出体33と第2搬送コンベア34との間の空間を移動中に静電爆発を起し、繊維状物(繊維2F)を生成する。このようにして生成された繊維2Fの平均繊維径は、例えば1μm以下である。
【0076】
なお、基材1は、繊維2Fが堆積された後、一旦、回収(例えば、ロール状に捲回)されても良い。この場合、上記のとおり、基材1には保護シートを積層することが好ましい。
【0077】
[樹脂塗工部]
続いて、基材1は、第2搬送コンベア34により、樹脂塗工部400に搬送される。
図4では、ナイフコーティング法により塗工する場合を示している。
【0078】
樹脂塗工部400は、樹脂塗工部400内の上方に設置された第2原料液40を収容し、基材1に供給する第1原料液タンク41と、第1原料液タンク41から供給される第1原料液を基材に塗工するノズル44と、塗工量を調整するナイフコーター42と、基材1をより下流に搬送する第3搬送コンベア43とを備える。第2原料液40の塗工量は、繊維2Fを覆うことのできる程度であれば、特に限定されない。例えば、フィルム材10におけるフィルム層2の厚みTが5〜100μmとなる範囲になるように、塗工量を調製すれば良い。
【0079】
[乾燥部]
第2原料液40が塗工された基材1は、第3搬送コンベア43により、乾燥部500に搬送され、第2溶媒の一部または全部が除去される。乾燥部500では、基材1の上方に配置された温風発生機50から基材1に温風51を送り、第2溶媒を気化することにより除去する。温風51の温度は、第2溶媒が気化する温度であって、熱硬化性樹脂2Rが硬化しない温度であれば特に限定されず、第2溶媒および熱硬化性樹脂2Rの種類によって適宜設定することができる。
【0080】
[回収部]
第4搬送コンベア52により乾燥部500から搬出されたフィルム材10は、搬送ローラ61を介して、より下流側に配置されている回収部600に回収される。回収部600は、搬送されてくるフィルム材10を捲き取る回収リール62を内蔵していても良い。この場合、回収リール62はモータ63の駆動により回転する。
【0081】
製造装置100は、乾燥部500と回収部600との間に、保護シートを積層する積層部および/または得られたフィルム材10(あるいはフィルム層2のみ)を所望の大きさおよび形状に裁断する裁断部(いずれも図示せず)を備えていても良い。保護シートは特に限定されず、上記と同じものが例示できる。裁断の方法も特に限定されない。例えば、回転式カッターまたはストレート型カッター等を用いてせん断する方法が挙げられる。
【0082】
繊維形成部300、樹脂塗工部400および乾燥部500は、
図4に示すように、連結されて一つの装置を構成していても良い。この場合、基材1が、繊維形成部300、樹脂塗工部400および乾燥部500を移動する間、基材1は一度も回収(例えば、ロール状に捲回)されることなく、フィルム材10を製造することが可能となる(いわゆる、ロールツーロール(Roll to roll)製法)。そのため、生産性はさらに向上する。さらに、繊維形成部300と樹脂塗工部400との間および/または樹脂塗工部400と乾燥部500との間に回収部(例えば、リール)を配置する必要がないため、省スペース化が図れる。
【0083】
あるいは、基材1が繊維形成部300を経た後、一旦、基材1を回収し、離れた場所にある樹脂塗工部400および乾燥部500へと搬送されても良い。この場合、既存の樹脂塗工部および乾燥部を利用することができるというメリットがある。