(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
図14には従来の垂直多関節部アーム機構を示している。垂直多関節部アーム機構には位置に関して3自由度(x,y,z)、姿勢に関して3自由度(φ,θ,ψ)が要求され、一般的には根元3軸と呼ばれる回転関節部J1,J2,J3と手首3軸と呼ばれる回転関節部J4,J5,J6とからそれを実現している。例えば関節部J1,J4,J6にはねじり関節部、関節部J2,J3,J5には曲げ関節部が適用される。
【0003】
この種の多関節アーム機構では可動範囲内にも関わらず特異点というある特定方向の自由度が失われてしまう姿勢が無数に存在する。特異点姿勢では、直交座標と関節部角度の組との間の座標変換演算で解(ある座標位置を満足する関節部角度の組)が無数に存在して制御不能に陥り、また関節部に無限大の角速度を要求して特異点近傍で関節部の動きが急激に早くなり「暴走」が生じる。そのため特異点を避けて使用するか、あるいは手先移動速度を犠牲にする等で対処しているのが現状である。特異点としては例えば
図15(a)に示すように曲げ関節部J2,J3,J5を全てゼロ度とすることでねじり関節部J1,J4,J6の回転軸RA1,RA4,RA6が同軸となるいわゆる手首特異点と呼ばれる状況ではこれらねじり関節部J1,J4,J6の回転角を一義に決められない。この事態は少なくとも2つのねじり関節部が同軸に揃う状況で同様に発生する。その他特異点姿勢としては、
図15(b)に示すように手首3軸のための関節部J4,J5,J6の回転軸RA4,RA5,RA6の交点が、アーム基部をなすねじり関節部J1の回転軸RA1上に位置するいわゆる肩特異点、
図15(c)に示すように手首3軸のための関節部J4,J5,J6の回転軸RA4,RA5,RA6の交点が、根元3軸の曲げ関節部J2,J3の回転軸RA2,RA3を含む平面上に位置するいわゆる肘特異点などが知られている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係るロボットアーム機構を説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0008】
図1は、本実施形態に係るロボットアーム機構の外観斜視図である。
図2、
図3は
図1のロボットアーム機構の内部構造を示している。
図4は
図1のロボットアーム機構を図記号表現により示している。ロボットアーム機構は、略円筒形状の基部1と基部1に接続するアーム部2とを有する。ロボットアーム部2の先端にはエンドエフェクタと呼ばれる手先効果器3が取り付けられる。
図1では手先効果器3として対象物を把持可能なハンド部を図示している。手先効果器3としてはハンド部に限定されず、他のツール、またはカメラ、ディスプレイであってもよい。ロボットアーム部2の先端には任意の種類の手先効果器3に交換することができるアダプタが設けられていてもよい。
【0009】
ロボットアーム部2は、複数、ここでは6つの関節部J1,J2,J3,J4,J5,J6を有する。複数の関節部J1,J2,J3,J4,J5,J6は基部1から順番に配設される。一般的に、第1、第2、第3軸RA1,RA2,RA3は根元3軸と呼ばれ、第4、第5、第6軸RA4,RA5,RA6はハンド部3の姿勢を変化させる手首3軸と呼ばれる。根元3軸を構成する関節部J1,J2,J3の少なくとも一つは直動関節である。ここでは第3関節部J3が直動関節、特に伸縮距離の比較的長い関節部として構成される。第1関節部J1は台座面に対して例えば垂直に支持される第1回転軸RA1を中心としたねじり関節である。第2関節部J2は第1回転軸RA1に対して垂直に配置される第2回転軸RA2を中心とした曲げ関節である。第3関節部J3は、第2回転軸RA2に対して垂直に配置される第3軸(移動軸)RA3を中心として直線的に伸縮する関節である。第4関節部J4は、第3移動軸RA3に一致する第4回転軸RA4を中心としたねじり関節であり、第5関節部J5は第4回転軸RA4に対して直交する第5回転軸RA5を中心とした曲げ関節である。第6関節部J6は第4回転軸RA4に対して直交し、第5回転軸RA5に対して垂直に配置される第6回転軸RA6を中心とした曲げ関節である。
【0010】
第1関節部J1のねじり回転によりアーム部2がハンド部3とともに旋回する。第2関節部J2の曲げ回転によりアーム部2がハンド部3とともに第2関節部J2の第2回転軸RA2を中心に起伏動をする。基部1を成すアーム支持体(第1支持体)11aは、第1関節部J1の回転軸RA1を中心に形成される円筒形状の中空構造を有する。第1関節部J1は図示しない固定台に取り付けられる。第1関節部J1が回転するとき、第1支持体11aはアーム部2の旋回とともに軸回転する。なお、第1支持体11aが接地面に固定されていてもよい。その場合、第1支持体11aとは独立してアーム部2が旋回する構造に設けられる。第1支持体11aの上部には第2支持部11bが接続される。
【0011】
第2支持部11bは第1支持部11aに連続する中空構造を有する。第2支持部11bの一端は第1関節部J1の回転部に取り付けられる。第2支持部11bの他端は開放され、第3支持部11cが第2関節部J2の回転軸RA2において回動自在に嵌め込まれる。第3支持部11cは第1支持部11a及び第2支持部に連通する鱗状の中空構造を有する。第3支持部11cは、第2関節部J2の曲げ回転に伴ってその後部が第2支持部11bに収容され、また送出される。アーム部2の直動関節部を構成する第3関節部J3の後部はその収縮により第1支持部11aと第2支持部11bの連続する中空構造の内部に収納される。
【0012】
第1関節部J1は円環形状の固定部と回転部とからなり、固定部において台座に固定される。回転部には第1支持部11aと第2支持部11bとが取り付けられる。第1関節部J1が回転するとき、第1、第2、第3支持体11a、11b、11cが第1回転軸RA1を中心としてアーム部2とハンド部3と共に旋回する。
【0013】
第3支持部11cはその後端下部において第2支持部11bの開放端下部に対して回転軸RA2を中心として回動自在に嵌め込まれる。それにより回転軸RA2を中心とした曲げ関節部としての第2関節部J2が構成される。第2関節部J2が回動すると、アーム部2がハンド部3とともに第2関節部J2の回転軸RA2を中心に垂直方向に回動、つまり起伏動作をする。第2関節部J2の回転軸RA2は、ねじり関節部としての第1関節部J1の第1回転軸RA1に垂直に設けられる。
【0014】
上記の通り関節部としての第3関節部J3はアーム部2の主要構成物を構成する。アーム部2の先端に上述のハンド部3が設けられる。第1乃至第6関節部J1−J6の回転、曲げ、伸縮によりハンド部3の2指ハンド16を任意の位置・姿勢に配置することが可能である。特に第3関節部J3の直動伸縮距離の長さは、基部1の近接位置から遠隔位置までの広範囲の対象にハンド部3で作用することを可能にする。
【0015】
第3関節部J3はそれを構成する直動伸縮アーム機構により実現される直動伸縮距離の長さが特徴的である。直動伸縮距離の長さは、
図2、
図3に示す構造により達成される。直動伸縮アーム機構は第1連結コマ列21と第2連結コマ列20とを有する。アーム部2が水平に配置される基準姿勢では、第1連結コマ列21は第2連結コマ列20の下部に位置し、第2連結コマ列20は第1連結コマ列21の上部に位置する。
【0016】
第1連結コマ列21は、同一の断面コ字形状を有し、ピンにより背面箇所において列状に連結される複数の第1連結コマ23からなる。第1連結コマ23の断面形状及びピンによる連結位置により第1連結コマ列21はその背面方向BDに屈曲可能であるが逆に表面方向FDには屈曲不可な性質を備える。第2連結コマ列20は、第1連結コマ23と略等価な幅を有する略平板形状を有し、背面方向と表面方向とともに屈曲可能な状態でピンにより列状に連結される複数の第2連結コマ22からなる。第1連結コマ列21は第2連結コマ列20と先端部おいて結合コマ26により結合される。結合コマ26は、第1連結コマ23と第2連結コマ22とが一体的になった形状を有している。結合コマ26が始端となって、第3支持部11cから第2連結コマ列20が第1連結コマ列21とともに送り出されるときには、第1連結コマ列21と第2連結コマ列20とは互いに接合される。第1連結コマ列21と第2連結コマ列20とは先端部おいて結合コマ26により結合され、それぞれ後部において第3支持体11cの内部で堅持され引き抜き防止されることにより接合状態が保持される。第1連結コマ列21と第2連結コマ列20とが接合状態が保持されたとき、第1連結コマ列21と第2連結コマ列20の屈曲は制限され、それにより第1連結コマ列21と第2連結コマ列20とにより一定の剛性を備えた柱状体が構成される。第1連結コマ列21と第2連結コマ列20とが互いに離反するとき、屈曲制限を解除され、それぞれが屈曲可能状態に復帰する。第1連結コマ列21と第2連結コマ列20とは第3支持体11cの開口付近で接合され、送り出される。第1連結コマ列21と第2連結コマ列20とは第3支持体11cの内部で離反され、それぞれが屈曲可能状態となる。第1連結コマ列21と第2連結コマ列20とは個々に屈曲され、第1支持体11aの内部に別体として収容される。
【0017】
図2に示すように第2連結コマ22の内側には個々にリニアギア22aが形成されている。リニアギア22aは第2連結コマ22が直線状になったときに連結され、連続的なリニアギアを構成する。
図3に示すように第2連結コマ22は第3支持体11c内でローラR1とドライブギア24aとの間に挟まれる。リニアギア22aはドライブギア24aに噛み合わされる。モータM1によりドライブギア24aが順回転することにより第2連結コマ列20は第1連結コマ列21とともに第3支持体11cから送り出される。その際、第1連結コマ列21と第2連結コマ列20とは第3支持体11cの開口付近に設けられた一対の上下ローラR2,R4に挟まれ、相互に押圧され、接合された状態で第3移動軸RA3に沿って直線的に送り出される。モータM1によりドライブギア24aが逆回転することにより第2連結コマ列20と第1連結コマ列21とは第3支持体11cの内部であって上下ローラR2,R4の後方において接合状態を解除され、互いに離反される。離反された第2連結コマ列20と第1連結コマ列21とはそれぞれ屈曲可能な状態になり、第2、第3支持体11b、11cの内部に設けられたガイドレールにガイドされて第1回転軸RA1に沿う方向に屈曲され、第1支持体11aの内部に収容される。
【0018】
ハンド部3は、
図1に示すようにアーム部2の先に装備されている。ハンド部3は、第1、第2、第3関節部J1.J2.J3により任意位置に移動され、第4、第5、第6関節部J4、J5、J6により任意姿勢に配置される。ハンド部3は、開閉される2つの指部16a、16bを有している。第4関節部J4は、アーム部2の伸縮方向に沿ったアーム部2の中心軸、つまり第3関節部J3の移動軸RA3に典型的には一致する回転軸RA4を有するねじり関節である。第4関節部J4が回転すると、第4関節部J4から先端にかけてハンド部3が回転軸RA4を中心に回転する。
【0019】
第5関節部J5は、第4関節部J4の移動軸RA4に対して直交する回転軸RA5を有する曲げ関節部である。第5関節部が回転すると、第5関節部J5から先端にかけてハンド部16とともに上下に回動する。第6関節部J6は、第4関節部J4の回転軸RA4に直交し、第5関節部J5の回転軸RA5に垂直な回転軸RA6を有する曲げ関節である。第6関節部J6が回転するとハンド16が左右に旋回する。
【0020】
図4には
図1のロボットアーム機構を図記号表現により示している。ロボットアーム機構は、根元3軸を構成する第1関節部J1と第2関節部J2と第3関節部J3、さらに手首3軸を構成する第4関節部J4と第5関節部J5と第6関節部J6とにより3つの位置自由度と3つの姿勢自由度を実現する。第1関節部J1は、第1支持部11aと第2支持部11bとの間に配設されており、回転軸RA1を中心としたねじり関節として構成されている。回転軸RA1は第1関節部J1の固定部が設置される台座の基準面BPに垂直に配置される。回転軸RA1に平行にZ軸を規定する。説明の便宜上、Z軸を中心とした第1関節部J1の回転とともに回転する回転座標系(XYZ)を規定する。
【0021】
第2関節部J2は回転軸RA2を中心とした曲げ関節として構成される。第2関節部J2の回転軸RA2は回転座標系上のX軸に平行に設けられる。第2関節部J2の回転軸RA2は第1関節部J1の回転軸RA1に対して垂直な向きに設けられる。さらに第2関節部J2の回転軸RA2は、第1関節部J1の回転軸RA1に対してY軸方向に離された位置に配置される。つまり第2関節部J2はその回転軸RA2が第1関節部J1の回転軸RA1と第2関節部J2の回転軸RA2とに直交する方向に第1関節部J1の回転軸RA1から離れた位置に配置される。その方向に第2関節部J2の回転軸RA2は第1関節部J1の回転軸RA1から所定距離(オフセット距離)L1を離されている。それにより第2関節部J2はその回転軸RA2が第1関節部J1に対してその回転軸RA1に交差しない(オフセット)された状態で設けられる。第2関節部J2の回転軸RA2が第1関節部J1の回転軸RA1に対して上記方向にオフセット距離L1をオフセットされるように、第2支持体11bは第1支持体11aとともに構造されている。第1関節部J1に第2関節部J2を接続する仮想的なアームロッド部分(リンク部分)は、先端が直角に曲がった2つの鈎形状体が組み合わされたクランク形状を有している。この仮想的なアームロッド部分は、中空構造を有する第1、第2支持体11a、11bにより構成される。
【0022】
なお、第2関節部J2の回転軸RA2が第1関節部J1の回転軸RA1に対して上記の通りオフセットされるように第2関節部J2を第1関節部J1に対して構造上配置することには、第2関節部J2の構造的中心を第1関節部J1の構造的中心に対してオフセット距離L1だけY軸方向にオフセットして配置することはもちろん、それに加えてX軸方向、つまり第2関節部J2の回転軸RA2に沿った方向にも任意距離をオフセットして配置する構成を含んでいる。
【0023】
第3関節部J3は移動軸RA3を中心とした直動関節として構成される。第3関節部J3の移動軸RA3は第2関節部J2の回転軸RA2に対して垂直な向きに設けられる。第2関節部J2の回転角がゼロ度、つまりアーム部2の起伏角がゼロ度であってアーム部2が水平な基準姿勢においては、第3関節部J3の移動軸RA3は、第2関節部J2の回転軸RA2とともに第1関節部J1の回転軸RA1にも垂直な方向に設けられる。回転座標系上では、第3関節部J3の移動軸RA3はX軸及びZ軸に対して垂直なY軸に平行に設けられる。さらに、第3関節部J3の移動軸RA3は、第2関節部J2の回転軸RA2から、その回転軸RA2及び移動軸RA3に直交する方向に離されている。第3関節部J3の移動軸RA3と第2関節部J2の回転軸RA2との間の距離(オフセット距離)はL2である。移動軸RA3は回転軸RA2に交差しない(オフセットされている)。
【0024】
このように第3関節部J3の移動軸RA3は、第2関節部J2の回転軸RA2に対して垂直に設けられ、且つ第2関節部J2の回転軸RA2からオフセット距離L2を離された位置に配置されており、このように第3関節部J3の移動軸RA3が第2関節部J2の回転軸RA2に対して位置するように、第3関節部J3が第2関節部J2に対して構造上配置されている。第2関節部J2に第3関節部J3を接続する仮想的なアームロッド部分(リンク部分)は、先端が垂直に曲がった鈎形状体を有している。この仮想的なアームロッド部分は、第2、第3支持体11b、11cにより構成される。
【0025】
なお、第3関節部J3の移動軸RA3が第2関節部J2の回転軸RA2に対して上記の通りオフセットされるように第3関節部J3を第2関節部J2に対して構造上配置することには、第3関節部J3の中心線(移動軸RA3)を第2関節部J2の構造的中心に対してオフセット距離L2だけオフセットして配置することはもちろん、それに加えてX軸方向、つまり第2関節部J2の回転軸RA2に沿った方向にも任意距離をオフセットして配置する構成を含んでいる。
【0026】
第4関節部J4は回転軸RA4を中心としたねじり関節として構成される。第4関節部J4の回転軸RA4は第3関節部J3の移動軸RA3に略一致するよう配置される。第5関節部J5は回転軸RA5を中心とした曲げ関節として構成される。第5関節部J5の回転軸RA5は第3関節部J3の移動軸RA3及び第4関節部J4の回転軸RA4に略直交するよう配置される。第6関節部J6は回転軸RA6を中心としたねじり関節として構成される。第6関節部J6の回転軸RA6は第4関節部J4の回転軸RA4及び第5関節部J5の回転軸RA5に略直交するよう配置される。第6関節部J6は手先効果器としてのハンド部3を旋回するために設けられており、その回転軸RA6が第4関節部J4の回転軸RA4及び第5関節部J5の回転軸RA5に略直交する曲げ関節として実装されていてもよい。
【0027】
図5に示すように第1関節部J1の回転軸RA1に対する第2関節部J2の回転軸RA2のオフセット距離L1は、第2関節部J2の回転軸RA2に対する第3関節部J3の移動軸RA3のオフセット距離L2とは異なる。
図5(a)に示すように第1関節部J1の回転軸RA1に対する第2関節部J2の回転軸RA2のオフセット距離L1は、第2関節部J2の回転軸RA2に対する第3関節部J3の移動軸RA3のオフセット距離L2より長く設定される。
図5(b)に示すように第1関節部J1の回転軸RA1に対する第2関節部J2の回転軸RA2のオフセット距離L1は、第2関節部J2の回転軸RA2に対する第3関節部J3の移動軸RA3のオフセット距離L2より短く設定されてもよい。
【0028】
なお
図6(a)に示すように、第1関節部J1の回転軸RA1に対する第2関節部J2の回転軸RA2のオフセット距離L1を所定値に維持し、第2関節部J2の回転軸RA2に対する第3関節部J3の移動軸RA3のオフセット距離L2をゼロ値してもよい。つまり第1関節部J1の回転軸RA1に対して第2関節部J2の回転軸RA2をオフセットさせ、第2関節部J2の回転軸RA2に対しては第3関節部J3の移動軸RA3はオフセットさせないで第2関節部J2の回転軸RA2に対しては第3関節部J3の移動軸RA3を直交させてもよい。また
図6(b)に示すように、第2関節部J2の回転軸RA2に対する第3関節部J3の移動軸RA3のオフセット距離L2を所定値に維持し、第1関節部J1の回転軸RA1に対する第2関節部J2の回転軸RA2のオフセット距離L1をゼロ値にしてもよい。つまり第2関節部J2の回転軸RA2に対して第3関節部J3の移動軸RA3をオフセットさせ、第1関節部J1の回転軸RA1に対しては第2関節部J2の移動軸RA2はオフセットさせないで第1関節部J1の回転軸RA1に対しては第2関節部J2の回転軸RA2を直交させてもよい。
【0029】
本実施形態によれば複数の関節部J1−J6の特に根元3軸のうちの少なくとも一つの曲げ関節部を直動関節部に換装し、さらに
図5に示すように第1関節部J1の回転軸RA1に対して第2関節部J2の回転軸RA2をオフセット距離L1だけ離間し、第2関節部J2の回転軸RA2に対して第3関節部J3の移動軸RA3をオフセット距離L1と異なるオフセット距離L2だけ離間させることにより、また
図6に示すようにオフセット距離L1とオフセット距離L2との一方をゼロ値として、回転軸RA1と回転軸RA2、回転軸RA2と移動軸RA3の一方だけを離間させることにより、
図5、
図6に示すようにアーム部2を最大に伸ばすよう曲げ関節部J2,J5を回転させたとしても、ねじり関節部J1の回転軸RA1は他のねじり関節部J4の回転軸RA4とはオフセット距離L1とオフセット距離L2の差だけずれる配置が実現されるので
図13(a)、
図13(b)に示すようにねじり関節部J1の回転軸RA1とねじり関節部J4の回転軸RA4とは一直線に揃うことはなく、したがって当該特異点姿勢を構造上解消することが実現される。
【0030】
なお、
図7に示すように曲げ関節部J2,J5の回転軸RA2,RA5が垂直方向に一直線状に配列されあたかも特異点姿勢とも考えられるものであるが、本実施形態では第3関節部J3を直動関節としたことにより第3関節部J3の伸縮により当該配列を回避できるのであるから特異点姿勢ではなく、したがって特異点姿勢を構造上効果的に解消され得ていることが容易に理解されるであろう。
【0031】
さらに本実施形態においては
図8に示すように第1関節部J1の回転軸RA1に対する第2関節部J2の回転軸RA2のオフセット距離L1が、第1関節部J1の回転軸RA1に対する第2関節部J2の回転軸RA2のオフセット距離L2より長い場合において、第5関節部J5の回転軸RA5と第6関節部J6の回転軸RA6との間の距離L3が、オフセット距離L1とオフセット距離L2との差(L1−L2)と相違するよう第5関節部J5と第6関節部J6とが配設される。
図8(a)に示すように第5関節部J5の回転軸RA5と第6関節部J6の回転軸RA6との距離L3が、オフセット距離L1とオフセット距離L2との差(L1−L2)より短く設けられ、または
図8(b)に示すように第5関節部J5の回転軸RA5と第6関節部J6の回転軸RA6との間の距離L3が、オフセット距離L1とオフセット距離L2との差(L1−L2)より長く設けられる。
【0032】
同様に
図9に示すように第1関節部J1の回転軸RA1に対する第2関節部J2の回転軸RA2のオフセット距離L1が、第1関節部J1の回転軸RA1に対する第2関節部J2の回転軸RA2のオフセット距離L2より短い場合において、第5関節部J5の回転軸RA5と第6関節部J6の回転軸RA6との間の距離L3が、オフセット距離L1とオフセット距離L2との差(L2−L1)と異なるよう第5関節部J5と第6関節部J6とが配設される。
図9(a)に示すように第5関節部J5の回転軸RA5と第6関節部J6の回転軸RA6との間の距離L3が、オフセット距離L1とオフセット距離L2との差(L2−L1)より短く設けられ、または
図9(b)に示すように第5関節部J5の回転軸RA5と第6関節部J6の回転軸RA6との距離L3が、オフセット距離L1とオフセット距離L2との差(L2−L1)より長く設けられる。
【0033】
回転軸RA5と回転軸RA6との距離L3が、オフセット距離L1とオフセット距離L2との差と実質的に同一であるとき、
図13(a)に示すように基準姿勢から曲げ関節部J2を90度回転させ、曲げ関節部J5を逆方向に90度回転させた場合、また
図13(b)に示すように基準姿勢から曲げ関節部J2を90度回転させ、曲げ関節部J5を同方向に90度回転させた場合には、ねじり関節部J1の回転軸RA1とねじり関節部J6の回転軸RA6とは一直線に揃う特異点姿勢が生じる。しかし
図8、
図9に示したように回転軸RA5と回転軸RA6との距離L3を、オフセット距離L1とオフセット距離L2との差と相違させるように第5関節部J5と第6関節部J6とを配設することにより、
図8(a)、
図9(a)に示すようにねじり関節部J1の回転軸RA1とねじり関節部J6の回転軸RA6とを、回転軸RA5と回転軸RA6との距離L3を、オフセット距離L1とオフセット距離L2との差から減算した距離だけオフセットさせることができ、ねじり関節部J1の回転軸RA1とねじり関節部J6の回転軸RA6とが一直線に揃う特異点姿勢を構造上解消することができる。同様に
図8(b)、
図9(b)に示すようにねじり関節部J1の回転軸RA1とねじり関節部J6の回転軸RA6とを、回転軸RA5と回転軸RA6との距離L3から、オフセット距離L1とオフセット距離L2との差を減算した距離だけオフセットさせることができ、ねじり関節部J1の回転軸RA1とねじり関節部J6の回転軸RA6とが一直線に揃う特異点姿勢を構造上解消することができる。
【0034】
なお、
図10に例示する特定の条件の下では、曲げ関節部J5の回転軸RA5と曲げ関節部J6の回転軸RA6との間の距離L3が、オフセット距離L1とオフセット距離L2との差(L1−L2)に一致する構造を採用してもよい。当然にして曲げ関節部J2の起伏角(回転角)θ1にはその構造上の回転限界がある。なお曲げ関節部J2の起伏角(回転角)θ1はアーム部2が水平姿勢、換言すると直動関節部J3の移動軸RA3が水平にあるときの角度をゼロ度として上方をプラス角、下方をマイナス角として表したものである。また曲げ関節部J5の回転角θ2は曲げ関節部J5とねじり関節部J6との中心点間軸(リンク軸)LA56が直動関節部J3の移動軸RA3に一致するときの角度をゼロ度として上方をプラス角、下方をマイナス角として表したものである。
図10では最大起伏角(最大回転角)をθ1maxと表記する。また曲げ関節部J5の回転角θ2にもその構造上の回転限界があり、その最大回転角をθ2maxと表記する。ねじり関節部J4が基準角、つまり曲げ関節部J5の回転軸RA5が曲げ関節部J2の回転軸RA2に対して平行になる姿勢において、これら曲げ関節部J2の最大回転角θ1maxと曲げ関節部J5の最大回転角θ2maxをもってしても曲げ関節部J5とねじり関節部J6のリンク軸LA56が水平には至らない条件の下では、ねじり関節部J6の回転軸RA6はねじり関節部J1の回転軸RA1に対して平行になることはなく、したがって当該姿勢は特異点姿勢にはならないといえる。典型的には、曲げ関節部J2の最大回転角θ1maxが90°未満であり、曲げ関節部J5の最大回転角θ2maxが(90°+(90°−θ1max))未満である。この条件においては、本実施形態に係るロボットアーム機構は、曲げ関節部J5の回転軸RA5とねじり関節部J6の回転軸RA6との間の距離L3が、オフセット距離L1とオフセット距離L2との差(L1−L2)に一致するかもしれない。
【0035】
なお、
図13(c)に示すように基準姿勢から曲げ関節部J2を90度以外の角度に回転させ、さらにねじり関節部J6の回転軸RA6が垂直になるよう曲げ関節部J5を回転させた場合、ねじり関節部J1の回転軸RA1とねじり関節部J6の回転軸RA6とが一直線に揃う特異点姿勢が起こりうる。
【0036】
本実施形態では
図11に示すように当該特異点姿勢を構造上生じさせないために、曲げ関節部J2がその構造上の最大起伏角θmax(この場合は90°超)まで回転した状態でねじり関節部J6の回転軸RA6がねじり関節部J1の回転軸RA1の手前で停止するように、リンク長(関節中心点間距離)d0−d5の組み合わせが調整される。
図12に示すようにd0は第1関節部J1と第2関節部J2との間のリンク長、d1は第1関節部J1と第2関節部J2との間のリンク長、d2は第2関節部J2と第3関節部J3との間のリンク長、d3+△d(△dは直動関節部J3の最大伸長距離)は第2関節部J2と第4関節部J4との間のリンク長、d4は第4間接部J4と第5関節部J5との間のリンク長距離、d5は第5間接部J5と第6関節部J6との間のリンク長である。
【0037】
本実施形態によれば可動範囲内での様々な特異点姿勢の発生を構造上の工夫により解消又は減少させることができる。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。