(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、放射能濃度の計測環境によっては、バックグラウンド放射能濃度が時間的に変化する場合がある。バックグラウンド放射能濃度が時間的に変化すると、本計測の計測値に重畳されたバックグラウンド放射能濃度と、バックグラウンド計測における放射能濃度が異なる。そうすると、計測値からバックグラウンド計測における放射能濃度の値を差し引いたとしても、適切なバックグラウンド補正が行われたとは言い難くなる。従って、バックグラウンド放射能濃度が時間的に変化する環境では、信頼できる放射能濃度を得ることが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、被計測物の信頼できる放射能濃度を得ることが可能な放射能濃度計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、放射性物質を含む被計測物の放射能濃度を得る放射能濃度計測装置において、被計測物の放射能濃度を示す計測検出値を得る被計測物用計測部と、放射能濃度が既知である第1の放射線源部における第1の放射能濃度を示す第1の基準検出値を得る第1の基準用計測部と、放射能濃度が既知である第2の放射線源部における第2の放射能濃度を示す第2の基準検出値を得る第2の基準用計測部と、第1の放射能濃度、第2の放射能濃度、第1の基準検出値及び第2の基準検出値を利用して変換関数を算出し、変換関数と計測検出値とを利用して被計測物の放射能濃度を算出する処理部と、を備え、第1の放射線源部及び第2の放射線源部は、被計測物に近接して配置され、第1の基準検出値及び第2の基準検出値は、計測検出値と同じタイミングで取得され、第1の放射能濃度の値は、第2の放射能濃度の値とは異なる。
【0007】
この構成によれば、第1の基準用計測部から、第1の放射能濃度と第1の基準検出値との組み合わせデータが得られる。また、第2の基準用計測部から、第2の放射能濃度と第2の基準検出値との組み合わせデータが得られる。そして、これらデータを利用することにより、処理部は、放射能濃度と検出値との関係を示す変換関数を算出する。そして、この変換関数に、計測検出値を適用することにより、被計測物の放射能濃度を得ることができる。ここで、第1及び第2の放射線源部は、被計測物の近傍に配置されているため、第1の放射線源部、第2の放射線源部及び被計測物は、略同等のバックグラウンド放射能濃度の環境に配置されることになる。そして、変換関数を利用した被計測物の放射能濃度により、バックグラウンド放射能濃度の影響は補正される。更に、第1及び第2の基準検出値は、被計測物の計測検出値と同じタイミングで取得されるため、放射能濃度の計測時におけるバックグラウンド放射能濃度に応じた補正が可能になる。従って、時間的にバックグラウンド放射能濃度が変化する計測環境下であっても、被計測物の信頼できる放射能濃度を得ることができる。
【0008】
被計測物用計測部は、被計測物に接触して計測検出値を計測する計測物用センサを有し、第1の基準用計測部は、第1の放射線源部に接触して第1の基準検出値を計測する第1の基準用センサを有し、第2の基準用計測部は、第2の放射線源部に接触して第2の基準検出値を計測する第2の基準用センサを有することとしてもよい。この構成によれば、計測検出値と、第1及び第2の基準検出値とを容易に計測することができる。
【0009】
被計測物用計測部は、計測物用センサが接触した被計測物の領域を覆う計測物用遮蔽体を更に有し、第1の基準用計測部は、第1の基準用センサが接触した第1の放射線源部の領域を覆う第1の基準用遮蔽体を更に有し、第2の基準用計測部は、第2の基準用センサが接触した第2の放射線源部の領域を覆う第2の基準用遮蔽体を更に有することとしてもよい。この構成によれば、計測物用センサから出力される計測検出値のS/N比を向上させることができる。また、第1及び第2の基準用センサから出力される第1及び第2の基準検出値のS/N比を向上させることができる。
【0010】
第1の放射線源部及び第2の放射線源部は、互いに異なる密度を有する放射線源体を含んでいてもよい。この構成によれば、被計測物と第1及び第2の放射線源部との密度差による影響を計算により補正する必要がなく、被計測物の放射能濃度を更に精度良く計測することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被計測物の信頼できる放射能濃度を得ることが可能な放射能濃度計測装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
放射能濃度計測装置は、フレキシブルコンテナバッグ(以下、単に「バッグ」ともいう)等に収容された放射性物質が含まれた被計測物の放射能濃度を計測する装置である。この放射能濃度計測装置は、バッグを開封して被計測物を取り出すことなく、バッグに収容した状態で被計測物の放射能濃度を計測する。
図1に示されるように、放射能濃度計測装置1は、被計測物用計測部2と、基準用計測部3,4と、処理部6と、を備えている。被計測物用計測部2及び基準用計測部3,4は、処理部6と接続され、計測検出値が処理部6に出力されると共に第1及び第2の基準検出値が処理部6に出力される。処理部6は、これら計測検出値及び基準検出値等のデータを利用して、被計測物7の放射能濃度を算出する。
【0015】
被計測物7は、例えば容積1m
3程度のバッグ8に収容されている。被計測物7には、放射性物質を含む土壌、汚泥、草木等がある。このバッグ8は、後述する有効検知領域9よりも大きい容積を有していることが好ましい。有効検知領域9よりも大きい場合には、放射能濃度計測装置1は、被計測物7の形状、大きさ、重量を問わずに放射能濃度を計測することが可能である。
【0016】
被計測物用計測部2は、放射能濃度センサ(計測物用センサ)11と、簡易遮蔽体(計測物用遮蔽体)12とを有している。放射能濃度センサ11は、バッグ8に接触させて、接触部近傍の有効検知領域9に存在する被計測物7の放射能濃度を計測するためのものである。放射能濃度センサ11は、例えば、放射線エネルギーを吸収して蛍光を発生させるシンチレータと、シンチレータで発生した光を電気信号に変換する光電変換部とを有する装置を有している。シンチレータには、例えば、NaI(Tl)シンチレータや、CsI(Tl)シンチレータが用いられる。このような放射能濃度センサ11からは、シンチレータで発生した光をカウントした値(CPS)が計測検出値として出力される。
【0017】
この放射能濃度センサ11は、簡易遮蔽体12により周囲を覆われている。簡易遮蔽体12は、バックグラウンド放射能濃度のキャンセルよりも、S/N比を確保するためのものである。より詳細には、放射能濃度センサ11は、計測面11aがバッグ8に接触させられ、計測面11a以外の部分が簡易遮蔽体12に覆われている。すなわち、放射能濃度センサ11近傍の有効検知領域9は、簡易遮蔽体12により覆われている。このような簡易遮蔽体12には、例えば、鉄や鉛といった放射線を遮断する能力を有する金属からなる部材が用いられる。
【0018】
また、被計測物用計測部2は、被計測物7の重量を計測するための重量計13を有している。この重量計13からは、被計測物7の重量値が処理部6に出力される。
【0019】
基準用計測部(第1の基準用計測部)3は、基準放射線源体(第1の放射線源部)3aと、放射能濃度センサ(第1の基準用センサ)11と、簡易遮蔽体(第1の基準用遮蔽体)12とを有している。また、基準用計測部(第2の基準用計測部)4は、基準放射線源体(第2の放射線源部)4aと、放射能濃度センサ(第2の基準用センサ)11と、簡易遮蔽体(第2の基準用遮蔽体)12とを有している。すなわち、基準用計測部3,4は、基準放射線源体3a,4aを有する点が被計測物用計測部2と異なっている。基準用計測部3の放射能濃度センサ11からは、シンチレータで発生した光をカウントした値(CPS)が第1の基準検出値として処理部6に出力される。基準用計測部4の放射能濃度センサ11からは、シンチレータで発生した光をカウントした値(CPS)が第2の基準検出値として処理部6に出力される。
【0020】
基準放射線源体3a,4aは、被計測物7と近接して配置されている。この近接した配置とは、被計測物7と基準放射線源体3a,4aとが同等のバックグラウンド放射線濃度の環境下に配置されることを意味している。また、基準放射線源体3a,4aは、互いに異なる既知の放射能濃度を有している。例えば、基準放射線源体3aは、無汚染、すなわち0Bq/kgの放射能濃度を有している。一方、基準放射線源体4aは、8000Bq/kgの放射能濃度を有している。また、基準放射線源体3a,4aは、被計測物7と略同等の密度を有する物質により構成されている。例えば、基準放射線源体3a,4aとしては砂が用いられる。
【0021】
ここで、被計測物用計測部2における放射能濃度センサ11は、基準用計測部3,4における放射能濃度センサ11と同じ構成及び特性を有しているため、互いに交換することが可能である。これらの放射能濃度センサ11を定期的に入れ替えることにより、放射能濃度センサ11の故障や劣化異常を判定することが可能になる。より具体的には、本来、補正されて特性が揃えられた放射能濃度センサ11によれば、それぞれを入れ替えたとしても、検出値には許容誤差程度の差異しか現れないはずである。従って、許容誤差以上の検出値の差異が現れた場合には、3個の放射能濃度センサ11の何れかに故障が生じていることがわかる。このように、検出値の許容誤差からの逸脱の程度により、放射能濃度センサ11の劣化傾向の把握、異常判断、故障判断が可能になるので、放射能濃度センサ11におけるシンチレータの経年劣化や故障による不適切な計測を排除することができる。
【0022】
図2に示されるように、処理部6は、機能的構成要素として、計測検出値入力部14と、基準検出値入力部16と、基準放射能濃度入力部17と、変換関数算出部18と、計測値算出部19と、を有している。また、処理部6は、計測検出値及び基準検出値以外のデータ(例えば基準放射線源体3a,4aの放射能濃度)を入力するための入力装置21と、計算結果を表示する出力装置22とを更に備えている。処理部6は、コンピュータにおいて処理プログラムを実行することにより、コンピュータを本実施形態の処理部6として機能させることが可能になる。以下、各構成要素の機能について説明する。
【0023】
計測検出値入力部14は、被計測物用計測部2における放射能濃度センサ11と接続されて、放射能濃度センサ11から計測検出値が入力される。そして、計測検出値入力部14は、計測検出値を計測値算出部19に出力する。基準検出値入力部16は、基準用計測部3,4の放射能濃度センサ11と接続されて、それぞれの放射能濃度センサ11から第1の基準検出値及び第2の基準検出値が入力される。そして、基準検出値入力部16は、第1及び第2の基準検出値を変換関数算出部18に出力する。基準放射能濃度入力部17は、入力装置21と接続されて、基準放射線源体3aが有する既知の第1の放射能濃度と、基準放射線源体4aが有する既知の第2の放射能濃度とが入力される。そして、基準放射能濃度入力部17は、第1の放射能濃度及び第2の放射能濃度を変換関数算出部18に出力する。
【0024】
変換関数算出部18は、基準検出値入力部16から入力された第1の基準検出値及び第2の基準検出値と、入力装置21から入力された第1の放射能濃度及び第2の放射能濃度とを利用して、変換関数を算出する。より詳細には、変換関数を示す係数を算出する。変換関数が例えば1次関数であるとすると、変換関数は下記式(1)により示される。
BS=a×CS+b…(1)
ただし、a=(B2−B1)/(C2−C1)、b=B1−(B2−B1)/(C2−C1)×C1である。また、CSは被計測物7の計測検出値であり、C1は基準放射線源体3aの第1の基準検出値であり、B1は、基準放射線源体3aの第1の放射能濃度であり、C2は、基準放射線源体4aの第2の基準検出値であり、B2は、基準放射線源体4aの第2の放射能濃度である。
【0025】
計測値算出部19は、上記(1)式に計測検出値入力部14から入力された計測検出値CSを入力して、被計測物7の放射能濃度BSを算出する。そして、算出された被計測物7の放射能濃度BSを出力装置22に出力する。
【0026】
次に、放射能濃度計測装置1を利用してバッグ8に収容された被計測物7の放射能濃度を計測する工程について具体的に説明する。なお、以下に示す数値は、説明の便宜上例示するものである。
【0027】
図3の(a)部〜(c)部に示されるように、保管領域23からバッグ8aを運んでトラック24に載置し、トラック24に載せたバッグ8a内の被計測物7の放射能濃度BSを計測する。ここで、基準放射線源体3aの放射能濃度B1は、無汚染、すなわち0Bq/kgであり、基準放射線源体4aの放射能濃度B2は、8000Bq/kgであるとする。
【0028】
まず、
図3の(a)に示されるように、バッグ8aをトラック24に載置し、計測検出値CSを取得する。このとき、保管領域23には5個のバッグ8b〜8fがある。これらバッグ8b〜8fは、バッグ8aの計測検出値CSの計測におけるバックグラウンド放射線源となり得る。また、基準放射線源体4aも放射性物質である。このため、基準放射線源体4aもバッグ8aの計測検出値CSの計測におけるバックグラウンド放射線源となり得る。従って、バッグ8aの計測への影響を抑制するため、バッグ8aと基準放射線源体4aとの間に遮蔽壁を設けることが好ましい。なお、基準放射線源体3aも放射性物質である場合には、バッグ8aと基準放射線源体3aとの間に遮蔽壁を設けることが好ましい。
図3の(a)の状態で計測を行った結果、例えば、以下の数値が得られたとする。
被計測物7の計測検出値CS:11000[CPS]
基準放射線源体3aの基準検出値C1:2000[CPS]
基準放射線源体3aの放射能濃度B1:0[Bq/kg]
基準放射線源体4aの基準検出値C2:10000[CPS]
基準放射線源体4aの放射能濃度B2:8000[Bq/kg]
【0029】
上記式(1)に放射能濃度B1,B2及び基準検出値C1,C2を代入すると、下記式(2)が得られる。この式(2)は、
図4のグラフG1に対応している。ここで、グラフG1上において、点P1は、基準放射線源体3aの計測データ(C1,B1=2000,0)を示している。点P2は、基準放射線源体4aの計測データ(C2,B2=10000,8000)を示している。
BS=CS−2000…(2)
そして、上記式(2)に被計測物7の計測検出値CS(=11000)を代入すると、バッグ8aに収容された被計測物7の放射能濃度BSは9000Bq/kgであることがわかる。
【0030】
次に、
図3の(b)に示されるように、バッグ8dをトラック24に載置し、計測検出値CSを取得する。このとき、保管領域23には2個のバッグ8e,8fがある。これらバッグ8e,8fは、バッグ8dの計測検出値CSの計測におけるバックグラウンド放射線源となり得る。しかし、
図3の(a)部に示された状況よりもバッグ8e,8fの数が少ないためバックグラウンド放射能濃度が変化していると予想される。具体的には、バックグラウンド放射能濃度は減少する傾向にあると予想される。
図3の(b)の状態で、計測を行った結果、例えば、以下の数値が得られたとする。
被計測物7の計測検出値CS:10000[CPS]
基準放射線源体3aの基準検出値C1:1000[CPS]
基準放射線源体3aの放射能濃度B1:0[Bq/kg]
基準放射線源体4aの基準検出値C2:9000[CPS]
基準放射線源体4aの放射能濃度B2:8000[Bq/kg]
【0031】
上記式(1)に放射能濃度B1,B2及び基準検出値C1,C2を代入すると、下記式(3)が得られる。この式(3)は、
図4のグラフG2に対応している。ここで、グラフG2上において、点P3は、基準放射線源体3aの計測データ(C1,B1=1000,0)を示している。点P4は、基準放射線源体4aの計測データ(C2,B2=9000,8000)を示している。
BS=CS−1000…(3)
そして、上記式(3)に被計測物7の計測検出値CS(=10000)を代入すると、バッグ8dに収容された被計測物7の放射能濃度BSは9000Bq/kgであることがわかる。
【0032】
次に、
図3の(c)部に示されるように、バッグ8fをトラック24に載置し、計測検出値CSを取得するこのとき、保管領域23にはバッグは存在しない。従って、バックグラウンド放射能濃度は、
図3の(a)部及び(b)部よりも更に小さい傾向にあると予想される。
図3の(c)の状態で、計測を行った結果、例えば、以下の数値が得られたとする。
被計測物7の計測検出値CS:9000[CPS]
基準放射線源体3aの基準検出値C1:0[CPS]
基準放射線源体3aの放射能濃度B1:0[Bq/kg]
基準放射線源体4aの基準検出値C2:8000[CPS]
基準放射線源体4aの放射能濃度B2:8000[Bq/kg]
【0033】
上記式(1)に放射能濃度B1,B2及び基準検出値C1,C2を代入すると、下記式(4)が得られる。この式(4)は、
図4のグラフG3に対応している。ここで、グラフG3上において、点P5は、基準放射線源体3aの計測データ(C1,B1=0,0)を示している。点P6は、基準放射線源体4aの計測データ(C2,B2=8000,8000)を示している。
BS=CS…(4)
そして、上記式(4)に被計測物7の計測検出値CS(=9000)を代入すると、バッグ8fに収容された被計測物7の放射能濃度BSは9000Bq/kgであることがわかる。
【0034】
ここで、
図4に示されたグラフG1,G2,G3を参照すると、計測環境が異なるごとに、互いに異なる傾向を示している。より詳細には、それぞれのグラフG1,G2,G3のX切片が変化している。このX切片は、放射能濃度BSがゼロである計測物を計測した時に放射能濃度センサ11から出力される計測検出値CSである。すなわち、バックグラウンド放射能濃度に相当する。そうすると、保管領域23に多数のバッグ8b〜8fが存在していた状態(
図3の(a)参照)であるときに最も大きいバックグラウンド放射能濃度が計測され、保管領域23にバッグが存在していない状態(
図3の(c)参照)であるときに最も小さいバックグラウンド放射能濃度が計測されていることがわかる。従って、放射能濃度計測装置1は、バックグラウンド放射能濃度が計測ごとに変化する環境においても、信頼できる放射能濃度の値を得られる。
【0035】
放射能濃度計測装置1によれば、基準用計測部3から、放射能濃度B1と基準検出値C1との組み合わせデータが得られる。また、基準用計測部4から、放射能濃度B2と基準検出値C2との組み合わせデータが得られる。そして、これらデータを利用することにより、処理部6は、放射能濃度BSと計測検出値CSとの関係を示す変換関数(上記式(1)〜(4)参照)を算出する。そして、この変換関数に計測検出値CSを適用することにより、被計測物7の放射能濃度BSを得ることができる。
【0036】
ここで、基準放射線源体3a,4aは、被計測物7の近傍に配置されているため、基準放射線源体3a,4a及び被計測物7は、略同等のバックグラウンド放射能濃度の環境に配置されることになる。そして、変換関数を利用して被計測物7の放射能濃度BSが算出されるので、バックグラウンド放射能濃度の影響は補正される。更に、基準検出値C1,C2は、被計測物7の計測検出値CSと同じタイミングで取得されるため、放射能濃度BSの計測時におけるバックグラウンド放射能濃度に応じた補正が可能になる。従って、時間的にバックグラウンド放射能濃度が変化する計測環境下であっても、被計測物7の信頼できる放射能濃度BSを得ることができる。
【0037】
また、被計測物用計測部2は、被計測物7に接触して計測検出値CSを計測する放射能濃度センサ11を有し、基準用計測部3は、基準放射線源体3aに接触して基準検出値C1を計測する放射能濃度センサ11を有し、基準用計測部4は、基準放射線源体4aに接触して基準検出値C2を計測する放射能濃度センサ11を有している。この構成によれば、計測検出値CSと、基準検出値C1,C2とを容易に計測することができる。
【0038】
被計測物用計測部2及び基準用計測部3,4は、簡易遮蔽体12を更に有している。この構成によれば、放射能濃度センサ11から出力される計測検出値CS及び基準検出値C1,C2のS/N比を向上させることができる。
【0039】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0040】
例えば、放射能濃度計測装置1は、第1及び第2の基準用計測部に加え、更に第3の基準用計測部や第4の基準用計測部というように、2個以上の基準用計測部を備えていてもよい。このような構成によれば、基準用計測部の数に対応して、放射能濃度と基準検出値との組み合わせデータが複数得られる。このため、変換関数を、2次関数や3次関数といった高次の関数としたり、複数のデータを利用して近似関数とすることが可能になる。従って、計測検出値から放射能濃度へ変換する変換精度を向上させることができる。
【0041】
被計測物7の放射能濃度の計測精度を向上させるため、第1の放射線源部及び前記第2の放射線源部が、互いに異なる密度を有する放射線源体を含み、基準検出値を得る場合に、被計測物7の密度に応じて、略同等の密度を有する基準放射線源を適宜選択するようにしてもよい。例えば、被計測物7が土壌である場合には、当該土壌と同等の密度を有する基準放射線源を選択してもよい。また、被計測物7が草木である場合には、当該草木と同等の密度を有する基準放射線源を選択してもよい。