【実施例1】
【0017】
<概要>
本実施例の蓄光表示板は、透光板本体に設けた凹部にゲル部材を充填するとともに、当該ゲル部材に埋設されるように配置される凹レンズ付きのLEDチップを有するものであり、その特徴は、透光板本体の屈折率よりもゲル部材の屈折率の方が大きいものとした点にあり、これによってゲルを介して透光板に凹レンズされた光が拡散して透光板内に広く行き渡るようにすることができるようにしたものである。
【0018】
<構成>
(全般)
図1は本実施例の蓄光表示板の構成の概要を示す図であって、断面図の状態で示したものである。本図に示すように、本実施例の蓄光表示板0100は、透光板本体0110と、反射層0120と、蓄光層0130と、ゲル部材0140と、LEDチップ配列基板0150と、凹レンズ付きのLEDチップ0160とを有する(本図の例では、ゲル部材と、凹レンズ付きのLEDチップは、複数箇所設けられているが、煩雑を避けるため一箇所にのみ符号を付した)。
【0019】
(透光板本体)
透光板本体は、LEDチップから発せられた光を透過させるように構成された板状の部材である。透光板本体の材料は、LEDチップから発せられた光が無駄なく蓄光層に照射されるようにするため、光の透過率が高いものであることが望ましく、例えば、透明性アクリル系樹脂又はガラス系樹脂、ゲル、石英等が挙げられる。LEDが紫外線LED(UVLED)である場合には、透光板本体の材料は、UVを透過させる性質を有するものである必要がある。かかるUV透過性を有する材料として、例えば石英ガラスや、フッ化カルシウム樹脂やフッ化マグネシウム樹脂などが挙げられる。透光板本体の縦横の寸法は、透光板本体からの光が蓄光層の全面に照射されるように、蓄光層の縦横の寸法と一致しているかそれ以上であることが望ましい。また、透光板本体の厚みの一例は約10mmである。
【0020】
透光板本体の材料は、ゲル部材よりも屈折率の小さなものが用いられる(本発明では、便宜上、透光体本体の屈折率を「第一屈折率」、ゲル部材の屈折率を「第二屈折率」と呼ぶ)。この点の詳細については、後述するゲル部材の説明中で合わせて説明する。
【0021】
(LEDチップ挿入凹部:全般)
図1に示す例では、透光板本体の裏面0110aには、複数のLEDチップ挿入凹部0111、0111、0111・・・が二次元的に設けられる。本明細書において透光板本体は、蓄光層に面している側の面を表面、その反対側の面を裏面と呼ぶ。従って、LEDチップ挿入凹部は透光板本体のうち蓄光層に面していない方の面に設けられる。「二次元的に」とは、複数のLEDチップ挿入凹部が透光板本体の裏面の同一平面内に配置されている状態をいう。例えば、透光板の裏面に縦数個×横数個のLEDチップ挿入凹部が格子状に配置されている状態が挙げられる。ただし、厳密に同一平面内である必要はなく、例えば複数のLEDチップ挿入凹部が極めて緩やかな曲面上に配置されているものであってもよい。
図1の例では、複数のLEDチップ挿入凹部が設けられる透光体本体の裏面が一つの平面であることが示されている。LEDチップ挿入凹部の設置数や間隔は、蓄光層や透光板本体の寸法、配置されるべきLEDチップの数などに応じて適切に設計される。
【0022】
(LEDチップ挿入凹部:内表面が凹レンズをなすもの)
さらに、LEDチップ挿入凹部は、その内表面が凹レンズをなすものであってもよい。「LEDチップ挿入凹部の内表面が凹レンズをなす」とは、LEDチップ挿入凹部の内表面が凹レンズの一方の面を形成しており、これにより当該凹部の表面側に位置する透光板本体部分が凹レンズ形状をなしていることを意味する。
図1に示したものもかかる例であって、LEDチップ挿入凹部の内表面が略半球状の凹面をなしており、当該凹部の表面側の透光板本体部分が当該内表面を一方の面とする凹レンズ(平凹レンズ)になっているものである。凹レンズは入射した光を拡散させる性質を有することから、LEDチップ挿入凹部をこのような形状とすることで、そうでない形状(図示は省略するが、例えば、LEDチップ挿入凹部の内表面の天井部分が平面である直方体形状のもの)の場合に比べて、さらに光を拡散させることが可能となる。
【0023】
(反射層)
反射層は、光を透光板本体内部方向に反射するためのものであり、透光板本体のLEDチップ挿入凹部以外の裏面の平面部に配置される。例えば、透光板に取り入れられたLED光のうち、臨界角以上の角度で透光板本体の表面に当たった光は透光板本体内に全反射し、透光板本体の裏面に達するが、透光板本体裏面に反射層を配置することで、この光が透光板本体の裏面側に射出されることなく、最終的にほぼすべての光が透光板本体の表面側から蓄光層に向けて射出されることが可能となる。反射層は、例えば酸化チタン等の反射材を透光板本体に塗布したり、かかる材料からなる反射フィルムを貼り付けたりして形成される。反射層の厚みの一例は、約0.2mmである。
【0024】
(蓄光層)
蓄光層は、光エネルギーを蓄え、蓄えた光エネルギーを徐々に光として放出するためのものであり、透光板本体の表面に配置される。蓄光層は、例えばアルミン酸ストロンチウム系蓄光材原料を透光板本体に塗布したり、かかる材料からなる蓄光フィルムを貼り付けたりして形成される。蓄光層の厚みの一例は、約1.2mmである。
【0025】
(LEDチップ配列基板)
LEDチップ配列基板は、LEDチップを配列するための基板であり、アルミニウム等の金属板等の上に回路等を配置したものである。LEDチップ配列基板の表面は、光を反射するように構成されていてもよい。これにより、前述の反射層と相まって、透光板の裏面側に向かった光のすべてを透光板内部方向に反射させることができる。
【0026】
(凹レンズ付きのLEDチップ)
図2に本実施例における凹レンズ付きのLEDチップの形状の一例を示す。凹レンズ付きのLEDチップ0260は、凹レンズ0261(左上がり斜線で示す)と、LEDチップ本体0262(右上がり斜線で示す)からなり、LEDチップ配列基板0250上に配列され、複数のLEDチップ挿入凹部のそれぞれにおいて、ゲル部材に埋設されるように配置される。凹レンズは、LEDチップ配列基板上に取り付けられ、同様にLEDチップ配列基板上に取り付けられたLEDチップ本体の発光面0250aを覆うように配置される。LEDチップと凹レンズの間に空間が設けられていることを妨げない。LEDは紫外線LEDであってもよい。
【0027】
当該凹レンズは、LEDチップから発せられた光を拡散させるためのものである。当該凹レンズの拡散角度はLEDチップからの光を十分拡散できる程度に広角であることが望ましく、例えば約120°〜140である。凹レンズは1枚の凹レンズ(両凹レンズ、平凹レンズ、凹メニスレンズのいずれか一)であってもよいが、これとは異なり、複数枚のレンズを組み合わせて全体として光が拡散するようにしてもよい。
図2に示したものは、1枚の平凹レンズである凹レンズが配置されている例である。このようにLEDチップを凹レンズ付きのものとすることで、指向性の高いLED光を拡散させることができ、この結果、凹レンズを備えないLEDチップを配置した場合に比較して、より少数個のLEDチップを配置した場合であっても、LED光を蓄光層の全面にまんべんなく照射することが可能となる。
【0028】
(ゲル部材)
ゲル部材は、透光板本体のLEDチップ挿入凹部に充填される。ゲル部材を充填する目的は、凹レンズ付きLEDチップから発せられた光が透光板内に取り入れられる際の減衰を抑え、光を効率よく透光板に取り入れることができるようにすることにある。さらに、本発明では、ゲル部材の屈折率(第二屈折率)を透光板本体の屈折率(第一屈折率)よりも大きいものとしている。その目的は、透光板本体に取り入れられる光をさらに拡散させることにある。即ち、LEDチップを凹レンズ付きのものとすることで、指向性の高いLED光を拡散させて透光板本体に取り入られるようにしているが、その際、ゲル部材を介して取り入れられるようにすることで、光をさらに拡散させることで、透光板本体に取り入れられる光が、透光板本体内の全体に行き渡るようにすることがより容易に実現できる。相対的に小さい屈折率を有する透光板本体と相対的に大きい屈折率を有するゲル部材の材料の組み合わせとしては、例えば、透光板本体が低屈折率の光学ガラス(屈折率1.43程度)又はPTFEなどの透明フッ素樹脂(屈折率1.35〜1.42程度)であり、ゲル部材が透明アクリル系ゲル(屈折率1.49程度)であるものが考えられる。
【0029】
図3は、ゲル部材と透光板本体の屈折率の関係について説明するための図である。本図おいて、透光板本体0310の屈折率(第一屈折率)n1の方が、ゲル部材0340の屈折率(第二屈折率)n2よりも小さい。このため、凹レンズ付きのLEDチップ0360から発せられた光の入射角θ1、θ2、θ3、θ4よりも、それぞれに対応する出射角θ5、θ6、θ7、θ8の方が大きいものとなり、光は透光板本体に拡散されて取り入れられる。
【0030】
(まとめ)
以上のような構成により、凹レンズ付きLEDチップから発せられた光は、さらに拡散されて透光板本体に取り入られるので、すべての光が均一に透光板本体の表面全体から射出されて蓄光層を照射することができる。
【0031】
<処理の流れ>
次に、本実施例の蓄光表示板の製造方法について説明する。
図4は、本実施例の蓄光表示板の製造にかかる処理の流れの一例を示す図である。当該処理の流れは、透光板本体形成ステップと、LEDチップ配列基板形成ステップと、合体ステップとを有する。
【0032】
透光板本体形成ステップS0401は、透光板本体を形成するステップであり、透光板裏面の全体に反射層を形成する反射層形成サブステップS0402と、透光板表面に蓄光層を形成する蓄光層形成ステップS0403と、前記反射層が形成された透光板にLEDチップ挿入凹部を二次元的に設けるLEDチップ挿入凹部形成サブステップS0404とを有する。
【0033】
LEDチップ配列基板形成ステップS0405は、LEDチップ配列基板を形成するステップであり、LEDチップ配列用基板上に凹レンズ付きのLEDチップを配置するLEDチップ配置サブステップS0406を有する。
合体ステップS0407は、透光板本体とLEDチップ配列基板とを合体するステップであり、透光板本体の前記LED挿入凹部にゲル部材を充填するゲル部材充填サブステップS0408と、前記ゲル部材が充填された透光板本体の前記LED挿入凹部に前記凹レンズ付きLEDが埋設されるように前記透光板本体と前記LEDチップ配列基板とを接合する接合サブステップS0409とを有する。接合サブステップにおいては、透光板本体の裏面を上に向けた状態で、上方からLEDチップ配列基板を透光板本体に密着させることで両者が接合される。
【0034】
<効果>
本実施例の発明によれば、透光板の凹部に凹レンズ付きLEDを配置し、凹部内のすき間にゲルを充填した蓄光表示板であって、凹レンズ付LEDからゲルを介して透光板に取り入れられる光が透光板内にまんべんなく行き渡るように光の進行方向を拡散させることが可能な蓄光表示板及びその製造方法を提供することができる。
【実施例2】
【0035】
<概要>
本実施例の蓄光表示板は、LEDチップ配列基板のLEDチップ挿入凹部に重なる領域に配置される部分に貫通穴を設けるようにしたものであり、これにより、ゲル部材と凹レンズ付きLEDチップの間やゲル部材と透光板の間にすきまや気泡が生じないように凹部内の空間を完全に満たすようにゲルを充填できるようにした点に特徴がある。
【0036】
<構成>
本実施例の蓄光表示板は、実施例1の蓄光表示板と基本的に共通する。ただし、本実施例の蓄光表示板においては、LEDチップ配列基板のLEDチップ挿入凹部近辺に重なる領域に配置される部分に貫通穴が設けられる。以下、貫通穴の構成について説明する。その余の構成は実施例1で説明したところと同様であるから説明を省略する。
【0037】
(貫通穴)
図5は、本実施例の蓄光表示板の構成の概要を示す図である。本図に示すように、本実施例の蓄光表示板0500においては、LEDチップ配列基板0550のLEDチップ挿入凹部0511に重なる領域に配置される部分に貫通穴0551が設けられる(煩雑を避けるために一箇所のLEDチップ挿入凹部に対応するものについてのみ符号を付した)。
【0038】
貫通穴を設ける目的は、ゲル部材と凹レンズ付きLEDチップの間やゲル部材と透光板の間にすきまが生じないように凹部内の空間を完全に満たすようにゲルを充填できるようにすることにある。即ち、後述の処理の流れで説明するように、本実施例の蓄光表示板を製造する工程においては、透光板本体のLED挿入凹部に反射層が形成されている面を超えてゲル部材が充填され、その後、当該ゲル部材が充填された透光板本体のLED挿入凹部に凹レンズ付きLEDが埋設されるように透光板本体とLEDチップ配列基板とが接合される。接合の際に、LED挿入凹部に反射層が形成されている面を超えて充填されていたゲル部材が貫通穴を介してLEDチップ配列基板の裏面側(発光面側とは反対の側)に溢れ出るようにすることで、貫通穴がいわばゲル部材の逃げ場を提供する。この結果、接合後のLED挿入凹部の中には、ゲル部材と凹レンズ付きLEDチップの間やゲル部材と透光板の間にすきまが生じたり、ゲル部材内に気泡が生じたりすることがなく、凹部内の空間を完全に満たすようにゲル部材が充填される。
【0039】
以上に述べた貫通穴を設ける意義について改めて
図6を用いて説明する。(a)は、蓄光表示板の製造工程において、透光板本体とLEDチップ配列基板の接合前の状態、(b)は接合後の状態を示している。(a)の状態においては、透光板本体のLED挿入凹部に反射層0620が形成されている面を超えてゲル部材が充填されている。また、LEDチップ配列基板0650のLEDチップ挿入凹部0611に重なる領域に配置される部分に貫通穴0651が設けられている(煩雑を避けるために一箇所のLEDチップ挿入凹部に対応するものについてのみ符号を付した)。そこで、(b)に示すように透光板本体とLEDチップ配列基板を接合すると、LED挿入凹部に反射層が形成されている面を超えて充填されていたゲル部材は、貫通穴を介してLEDチップ配列基板の裏面側に溢れ出る。このため、接合に際してLED挿入凹部内に外部から空気が入り込む余地がなく、接合後のLED挿入凹部の中にすきまや気泡を生じさせることなく、凹部内の空間を完全に満たすようにゲル部材を充填することができる。
【0040】
<処理の流れ>
次に、本実施例の蓄光表示板の製造方法について説明する。
図7は、本実施例の蓄光表示板の製造にかかる処理の流れの一例を示す図である。当該処理の流れは、実施例1で説明した処理の流れと基本的に共通する。ただし、本実施例では、LEDチップ配列基板形成ステップS0705は、LEDチップ配置サブステップS0706の次に、前記LEDチップ配列用基板上の前記透光板本体の前記LEDチップ挿入凹部近辺に貫通穴を形成する貫通穴形成サブステップS0707を有する。なお、LEDチップ配置サブステップと貫通穴形成サブステップは逆の順序で処理されるものであってもよい。また、合体ステップS0708のゲル部材充填サブステップS0709においては、透光板本体の前記LED挿入凹部に前記反射層が形成されている面を超えてゲル部材が充填される。さらに、合体ステップは、接合サブステップS0710の次に、LEDチップ配列用基板の裏面側に溢れ出たゲル部材を拭き取り、その上に別の基板を被せて蓋をするように配置するサブステップを有していてもよい。
【0041】
<効果>
本実施例の発明によれば、実施例1と同様の蓄光表示板であって、さらにゲル部材と凹レンズ付きLEDチップの間やゲル部材と透光板の間にすきまや気泡が生じないように凹部内の空間を完全に満たすようにゲルを充填した蓄光表示板及びその製造方法を提供することが可能となる。
【実施例3】
【0042】
<概要>
本実施例の蓄光表示板は、LEDチップ挿入凹部の内表面が凹レンズをなすものであって、当該凹レンズの焦点距離よりもLEDチップの凹レンズの焦点距離の方が大きいものとすることで、透光板本体に取り入れられる光をさらに拡散させることを可能にした点に特徴がある。
【0043】
<構成>
本実施例の蓄光表示板は、実施例1又は2の蓄光表示板と基本的に共通する。ただし、本実施例の蓄光表示板においては、LEDチップ挿入凹部の内表面が凹レンズをなすものであって、しかも当該凹レンズの焦点距離がLEDチップの凹レンズの焦点距離よりも小さい。凹レンズは、レンズ径が同じであれば、その焦点距離が小さいほど、光はより拡散する方向に進むことから、本実施例の構成によれば、LEDチップから発せられた光をさらに拡散させた状態で透光板本体に取り入れることが可能となる。
【0044】
図8は、本実施例の蓄光表示板における凹レンズの焦点距離の関係について説明するための概念図である。(a)は、LEDチップ挿入凹部の内表面がなす凹レンズ0801の焦点距離f1がLEDチップの凹レンズ0802の焦点距離f2よりも小さい(短い)例を示す。また、(b)は、比較の参考のために、LEDチップ挿入凹部の内表面がなす凸レンズの焦点距離f1´の方がLEDチップの凹レンズの焦点距離f2よりも大きい(長い)例を示す。そこで、例えばLEDチップから本図に太線Lで示した方向に光が発せられた場合、(a)に示す本実施例の場合の方が、(b)に示す比較例に比べて、LEDチップ挿入凹部の内表面がなす凹レンズから、より拡散された状態で透光板本体に取り入れられることとなる。
【0045】
<効果>
本実施例の発明によれば、凹レンズ付LEDからゲル部材を介して透光板に取り入れられる光が透光板内にまんべんなく行き渡るように光の進行方向をさらに拡散させることが可能となる。