特許第6443894号(P6443894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6443894
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】ラケットのガット張り支援装置
(51)【国際特許分類】
   A63B 51/14 20060101AFI20181217BHJP
   A63B 102/02 20150101ALN20181217BHJP
   A63B 102/04 20150101ALN20181217BHJP
【FI】
   A63B51/14
   A63B102:02
   A63B102:04
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-162001(P2017-162001)
(22)【出願日】2017年8月25日
【審査請求日】2018年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】517299113
【氏名又は名称】酒井 玲
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】酒井 玲
【審査官】 槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭43−23403(JP,B1)
【文献】 特開昭59−58977(JP,A)
【文献】 米国特許第7862455(US,B1)
【文献】 sinmarimo,テニス ストリングの張り方,You Tube [online] [video],2010年10月 6日,主に0:05〜0:25を参照。,[検索日 2018年9月11日],URL,https://www.youtube.com/watch?v=UORysksCwqA
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 51/00−51/16
A63B 102/02
A63B 102/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラケットに張られた一方のガットに交差させる他方のガットを、前記一方のガットの上下に交互に交差させることを支援するラケットのガット張り支援装置において、
前記他方のガットが直接的または間接的に接続され、第1磁石により形成された編み部と、
前記第1磁石が吸着する第2磁石が前記ラケットのフェース面側に配置され、前記他方のガットが張られる方向へ操作される操作部とを備えたラケットのガット張り支援装置。
【請求項2】
前記操作部は、前記一方のガットを検知するためのセンサ部と、前記第2磁石を、前記操作部内に格納した位置と前記操作部内から露出させる位置とに進退させる昇降部と、前記センサ部が、前記一方のガットを検知したときに、前記昇降部へ、前記第2磁石の進退を交互に指示する制御部とを備えた請求項1記載のラケットのガット張り支援装置。
【請求項3】
前記操作部は、前記一方のガットを検知するためのセンサ部と、前記第2磁石を、前記操作部内に格納した位置と前記操作部内から露出させる位置とに進退させる昇降部と、前記第1磁石と前記第2磁石とが離間した状態から吸着した状態になったことを検知すると前記第2磁石を前記操作部に引き込むよう前記昇降部へ指示し、前記センサ部が、前記一方のガットを検知すると前記第2磁石を元の位置に復帰するよう前記昇降部へ指示する制御部とを備えた請求項1記載のラケットのガット張り支援装置。
【請求項4】
前記昇降部は、前記第2磁石が先端に接続されたプランジャー部と、前記プランジャー部を進退させるソレノイド部とを備えたアクチュエータソレノイドにより形成された請求項2記載のラケットのガット張り支援装置。
【請求項5】
前記第1磁石は、前記操作部の進行方向側の面が円弧面に形成された請求項1から3のいずれかの項に記載のラケットのガット張り支援装置。
【請求項6】
前記編み部には、前記編み部に一端が接続され、他端が前記他方のガットに接続され、前記一方のガットより細く形成され、前記他方のガットを案内する案内用糸が接続された請求項1から4のいずれかの項に記載のラケットのガット張り支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラケットの一方のガットを張った後に交差する他方のガットを張ることを支援するラケットのガット張り支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラケットのガットは、一般的には先にメインと称される縦糸が張られ、次にクロスと称される横糸を交差させるが、このとき、横糸は、縦糸の上方と下方とを交互に通しながら張られる。
最初に強く張られた縦糸の上下に、横糸を交互に通すことは面倒である。このような横糸を縦糸に対してスムーズに張るものとして特許文献1,2に記載の従来のラケットのガット張り支援装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、ラケットのフレーム打球部に予め張設されたガット縦糸を挿通挟持する一対の分割体からなり、分割体の各々のガット挿通孔をガット張設方向に交互に拡開するテーパ状に形成すると共に、分割体の正逆軸回動により各々のガット縦糸を交互に浮動させるラケットのガット張設装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、ラケットフレームを装着してその縦軸ならびに横軸方向に押圧変形させる押圧具と、ラケットフレーム枠内の横軸方向に互いに密接して一列に配列され、枠ハドルの揺動により縦ガットを交互に上下動する昇降扞、昇降扞の両端任意本数はラケットフレームの下面以下に降下させるように係脱自在とし、最終段の送りが完了したときに送り装置の係合を断つようにしたラケットのガット張り装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−28977号公報
【特許文献2】特公昭43−23403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、手操作により、縦糸が張られたラケットに横糸を張ることは面倒であり、多大な時間が掛かってしまう。
特許文献1,2に記載の従来のラケットのガット張り支援装置は、縦糸を押し上げたり、押し下げたりして、横糸を通すための直線状の隙間を作っている。
しかし、この従来のガット張り支援装置を用いて、強く張られた縦糸を押し上げたり、押し下げたりするにはかなり強い力が必要である。従って、機械的に縦糸を上下させると、縦糸に強く力が加わり、縦糸に損傷を及ぼすおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、先に張られた一方のガットに負担を掛けずにスムーズに他方のガットを交互に交差させることができるラケットのガット張り支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ラケットに張られた一方のガットに交差させる他方のガットを、前記一方のガットの上下に交互に交差させることを支援するラケットのガット張り支援装置において、前記他方のガットが直接的または間接的に接続され、第1磁石により形成された編み部と、前記第1磁石が吸着する第2磁石が前記ラケットのフェース面側に配置され、前記他方のガットが張られる方向へ操作される操作部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、他方のガットが直接的または間接的に接続された編み部の第1磁石を、操作部の第2磁石に吸着した状態で、一方のガットの上方を通過させれば、一方のガットの上側に他方のガットを通すことができる。また、他方のガットが接続された編み部の第1磁石を、操作部の第2磁石に吸着した状態で、第1の磁石を一方のガットに押し当てるようにして操作部を進行させれば、編み部の第1磁石は、一方のガットに押され、一旦、操作部の第2磁石から離れるが、第1磁石と第2磁石とが引き合い、他方のガットが一方のガットの下方を通過した後に、操作部の第2磁石に編み部の第1磁石を吸着させることができる。
従って、このような操作を繰り返すことで、一方のガットを移動させることなく、一方のガットの上方および下方を交互に、他方のガットを通すことができる。
【0010】
前記操作部は、前記一方のガットを検知するためのセンサ部と、前記第2磁石を、前記操作部内に格納した位置と前記操作部内から露出させる位置とに進退させる昇降部と、前記センサ部が、前記一方のガットを検知したときに、前記昇降部へ、前記第2磁石の進退を交互に指示する制御部とを備えることができる。
【0011】
センサ部が一方のガットを検出したときに、制御部が、昇降部に第2磁石の進退を交互に指示する。昇降部は、第2磁石を、操作部内に格納した位置と、操作部内から露出させる位置とに進退させる。
従って、制御部は、昇降部に、第2磁石を操作部内に格納した位置に指示したときには、一方のガットの上方に他方のガットを通すことができ、昇降部に、操作部内に格納した第2磁石を露出させる位置に指示したときには、一方のガットの下方に他方のガットを通すことができる。
【0012】
前記操作部は、前記一方のガットを検知するためのセンサ部と、前記第2磁石を、前記操作部内に格納した位置と前記操作部内から露出させる位置とに進退させる昇降部と、前記第1磁石と前記第2磁石とが離間した状態から吸着した状態になったことが検知されると、前記第2磁石を前記操作部に引き込むよう前記昇降部へ指示し、前記センサ部が、前記一方のガットを検知したときに、前記第2磁石を元の位置に復帰するよう前記昇降部へ指示する制御部とを備えることができる。
制御部が、第1磁石と第2磁石とが離間した状態で第1磁石が一方のガットの下方を通過して第1磁石と第2磁石とが再び吸着した状態となったことを検知すると、第2磁石を操作部に引き込むよう昇降部へ指示する。第2磁石が操作部内に引き込まれた状態で、操作部が進行することで、第2磁石に吸着した第1磁石を、一方のガットの上方に通過させることができる。
【0013】
前記昇降部は、前記第2磁石が先端に接続されたプランジャー部と、前記プランジャー部を進退させるソレノイド部とを備えたアクチュエータソレノイドにより形成されたものとすることができる。
昇降部をアクチュエータソレノイドとすることで、制御部からの指示により、第2磁石を、操作部内に格納した位置と、操作部内から露出させる位置とに進退させることができる。
従って、操作部を進行方向に進めるだけで、自動的に一方のガットに他方のガットを、上下交互に通すことができる。
【0014】
前記第1磁石は、前記操作部の進行方向側の面が円弧面に形成されていることで、第1磁石を一方のガットに押し当てたときに、第1磁石の円弧面に沿って一方のガットが第1磁石と第2磁石との間に入り込み、第1磁石を一方のガットに乗り上げさせることができる。従って、第1磁石を第2磁石からスムーズに引き離すことができ、第1磁石を一方のガットに乗り越えさせることができる。
【0015】
前記編み部には、前記編み部に一端が接続され、他端が前記他方のガットに接続され、前記一方のガットより細く形成され、前記他方のガットを案内する案内用糸が接続されたていることが望ましい。
編み部に直接的に他方のガットが接続され、一方のガットの上下に交互に他方のガットを交差させると、一方のガットと他方のガットとが摩擦により進行し難くなる。
編み部に一方のガットより細く形成された案内用糸が接続されていると、案内用糸を一方のガットの間をスムーズに通すことができるので、案内用糸に繋がる他方のガットを確実に通すことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のラケットのガット張り支援装置によれば、第1磁石を第2磁石に吸着させたまま、一方のガットの上方に他方のガットを通し、第1磁石を一旦、第2磁石から離して、一方のガットの下方に他方のガットを通すことで、一方のガットを無理やり上下に移動することなく、他方のガットを通すことができる。
従って、本発明のラケットのガット張り支援装置は、先に張られた一方のガットに負担を掛けずにスムーズに他方のガットを交互に交差させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態1に係るラケットのガット張り支援装置を示す図である。
図2図1に示すラケットのガット張り支援装置の使用状態を説明するための図であり、(A)から(D)は縦糸に横糸を交互に交差させることを説明するための図である。
図3】本発明の実施の形態2に係るラケットのガット張り支援装置を示す図である。
図4図3に示すラケットのガット張り支援装置の制御部の動作を説明するためのフローチャートである。
図5図3に示すラケットのガット張り支援装置の使用状態を説明するための図であり、(A)から(D)は縦糸に横糸を交互に交差させることを説明するための図である。
図6】本発明の実施の形態3に係るラケットのガット張り支援装置を示す図である。
図7図6に示すラケットのガット張り支援装置の制御部の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係るラケットのガット張り支援装置を図面に基づいて説明する。図1に示すラケットのガット張り支援装置10は、編み部20と、操作部30とを備えている。
【0019】
編み部20は、第1磁石21により形成されている。編み部20には、縦糸となるガット(図示せず)の間に横糸となるガット(図示せず)を案内する案内用糸S1の一端側を接続するための穴またはU字状の突起が形成されている。案内用糸S1は、縦糸より細く形成されている。また、案内用糸S1の他端側には、横糸が接続されている。
第1磁石21は、横糸が接続される側と反対となる側の面が円弧面に形成されている。本実施の形態1では、第1磁石21は縦糸となるガットより直径が大きい球状に形成されている。
【0020】
操作部30は、第1磁石21が吸着する第2磁石31を有している。この第2磁石31は、直方体状の筐体32の底面(ラケットのフェース面側)に配置されている。第2磁石31は、第1磁石21が吸着しやすいように板状としているが、他の形状としてもよい。
【0021】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係るラケットのガット張り支援装置10の使用状態について、図面に基づいて説明する。
まず、ラケットには、一方のガットが張られているものとする。一般的には、メインと称される縦糸が先に張られ、クロスと称される横糸が後に張られるため、この場合、一方のガットは、ラケットのシャフトに沿った方向に張られる縦糸となる。
従って、図2(A)から同図(D)に示す断面円形状のガットGは縦糸を示している。そして、編み部20には、案内用糸S1を介在させることで、間接的に横糸となるガット(図示せず)が接続されている。
【0022】
図2(A)に示すように、まず、編み部20に案内用糸S1が接続され、編み部20が操作部30の第2磁石31に吸着した状態で、進行方向Fへ操作部30を進めることで操作部30をガットGに接近させる。
図2(B)に示すように、操作部30がガットGに接近すると、作業者は、まず操作部30を引き上げることで、操作部30に吸着した編み部20に接続された案内用糸S1がガットGの上方を通過する。
【0023】
図2(C)に示すように、操作部30が次のガットGに接近すると、作業者は、操作部30を下げて、操作部30に吸着した編み部20をガットGに押し付ける。そして、その状態のまま、操作部30を進行方向Fに進める。
そうすると、編み部20の第1磁石21は、ガットGに押され、ガットGの下方に移動することで、一旦、操作部30の第2磁石31から離れるが、図2(D)に示すように、編み部20の第1磁石21と操作部30の第2磁石31とが引き合い、案内用糸S1がガットGの下方を通過した後に、操作部30の第2磁石31に編み部20の第1磁石21が吸着する。
【0024】
このような図2(A)から同図(D)に示す操作を繰り返すことで、ガットGを無理やり上下に移動することなく、縦糸であるガットGの上方および下方を、交互に、案内用糸S1を通すことができる。
従って、このラケットのガット張り支援装置10は、先に張られたメインのガットGに負担を掛けずにスムーズにクロスの案内用糸S1を交互に交差させることができる。
【0025】
また、第1磁石21は、操作部30の進行方向F側の面が円弧面に形成された球状であるため、編み部20(第1磁石21)をガットGに押し当てたときに、第1磁石21の円弧面に沿ってガットGが第1磁石21と第2磁石31との間に入り込み、第1磁石21をガットGに乗り上げさせることができる。従って、第1磁石21を第2磁石31からスムーズに引き離すことができ、第1磁石21をガットGに乗り越えさせることができる。
このようにして、ガットGに案内用糸S1を通すと、案内用糸S1を引っ張り、案内用糸S1に繋がる横糸となるガットを、ガットG同士の間に案内させることができる。
【0026】
なお、本実施の形態1では、案内用糸S1の案内により横糸となるガットを、縦糸となるガットGに通していたが、横糸となるガットを直接的に編み部20に接続するようにしてもよい。
しかし、横糸となるガットを編み部20に直接的に接続し、ガットG同士の間に横糸となるガットを通そうとすると、ガットGと横糸となるガットとが擦れ合い進み難くなり、第1磁石21から第2磁石31が剥がれ落ちる可能性がある。
従って、ガットGより細く形成された案内用糸S1を、編み部20と横糸となるガットとの間に介在させることで、案内用糸S1をガットG同士の間にスムーズに通すことができるので、案内用糸S1に繋がる横糸となるガットを確実に通すことができる。
【0027】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係るラケットのガット張り支援装置を図面に基づいて説明する。なお、図3および図5においては図1と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図3に示すラケットのガット張り支援装置11は、編み部20と、操作部40とを備えている。
【0028】
操作部40は、第1磁石21が吸着する第2磁石31を有している。この第2磁石31は、直方体状の筐体32の底面に配置されている。
この操作部40の筐体32には、センサ部41と、昇降部42と、制御部43とを備えている。
【0029】
センサ部41は、一方のガット(縦糸)を検知するものである。センサ部41は、例えば、発光ダイオードと、発光ダイオードの光を検知するフォトトランジスタとが並べられたフォトリフレクタとすることができる。
昇降部42は、第2磁石31を、操作部40内に格納した位置と、操作部40内から露出させる位置とに進退させるものである。
昇降部42は、例えば、第2磁石31が先端に接続されたプランジャー部421と、プランジャー部421を進退させるソレノイド部422とを備えたアクチュエータソレノイドとすることができる。
本実施の形態2では、昇降部42を、ソレノイド部422に通電するとプランジャー部421が引き込まれ、非通電状態とするとプランジャー部421が突出するスプリングを備えたプル型のアクチュエータソレノイドとしている。
制御部43は、センサ部41が、一方のガットを検知したときに、昇降部42へ、第2磁石31の進退を交互に指示するものである。
【0030】
以上のように構成された本発明の実施の形態2に係るラケットのガット張り支援装置11の動作および使用状態について、図面に基づいて説明する。
まず、実施の形態1と同様に、ラケットには、メインと称される縦糸が張られているものとする。
【0031】
図4に示すように、制御部43は、センサ部41からの信号を監視しており、非検出状態であれば、ステップS10を繰り返す。
図5(A)に示すように、まず、編み部20に案内用糸S1が接続され、編み部20が操作部30の第2磁石31に吸着した状態で、操作部30をガットGに接近させる。操作部30がガットGに接近することで、センサ部41がガットGを検知する。
【0032】
センサ部41がガットGを検知したことが制御部43に通知されると、制御部43は、昇降部42に、前回、第2磁石31の引き込みを指示したか否かを判断する(ステップS20)。
この判断は、制御部43が、前回、第2磁石31の引き込みを指示した場合には「はい」となり、昇降部42への指示が初回である場合や、第2磁石31が操作部40内に引き込まれた位置から元の位置に復帰するように、制御部43が指示した場合には、「いいえ」となる。
【0033】
図5(A)に示す例では、センサ部41が検出したガットGが最初のガットGであるため、ステップS20の判断は「いいえ」となる。
従って、制御部43は、プランジャー部421をソレノイド部422に引き込み、第2磁石31を操作部40内に引き込むよう、ソレノイド部422に通電することで、昇降部42に指示する(ステップS30)。
【0034】
図5(B)に示すように、ソレノイド部422への通電によりプランジャー部421が引き込まれることで、プランジャー部421の先端に接続された第2磁石31が操作部40内に格納した位置へ移動する。
第2磁石31の移動に伴い、第2磁石31に吸着した状態の第1磁石21が、第2磁石31と一緒に操作部40内に格納される。
センサ部41がガットGを検知してから所定時間経過するまで、制御部43が昇降部42に引き込みを指示し続け、この状態のまま操作部40がガットGを通過することで、編み部20(第1磁石21)に接続された案内用糸S1がガットGの上方を通る。
【0035】
図5(B)に示すように、センサ部41が、最初のガットGを通過して、次のガットGに至るまで、センサ部41がガットGを検出できないことから、制御部43はステップS10を繰り返す。
更に、操作部40が進行方向Fに向かって進むと、図5(C)に示すように、センサ部41が、次のガットGを検出する。
【0036】
センサ部41がガットGを検知したことが制御部43に通知されると、制御部43は、昇降部42に、前回、第2磁石31の引き込みを指示したか否かを判断する(ステップS20)。
図5(B)に示すように、前回は、センサ部41がガットGを検出したときに、制御部43は、第2磁石31を引き込むように昇降部42に指示した。
従って、今回は、図5(C)に示すように、制御部43は、第2磁石31が操作部40内に引き込まれた位置から元に位置に復帰するように、昇降部42に指示する(ステップS40)。
【0037】
そうすると、編み部20の第1磁石21は、ガットGに押され、一旦、操作部30の第2磁石31から離れるが、図5(D)に示すように、編み部20と操作部30の第2磁石31とが引き合い、案内用糸S1がガットGの下方を通過した後に、操作部30の第2磁石31に編み部20の第1磁石21が吸着する。
【0038】
このように、操作部40を進行方向Fに進めるだけで、ガットGに案内用糸S1を、自動的に上下交互に通すことができる。
このとき、ガットGを無理やり上下に移動することなく、案内用糸S1を通すことができるため、このラケットのガット張り支援装置11は、先に張られたメインのガットGに負担を掛けずにスムーズにクロスの案内用糸S1を交互に交差させることができる。
【0039】
ガットGの間に案内用糸S1を通すことができれば、実施の形態1のときの同様に、案内用糸S1に繋がる横糸となるガットを引っ張り、縦糸となるガットGの間に横糸となるガットを通すことができる。
【0040】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係るラケットのガット張り支援装置を図面に基づいて説明する。なお、図6においては図3および図5と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図6(A)から同図(D)に示すラケットのガット張り支援装置12は、案内用糸S2が導電性を有しており、編み部20に一端側が接続されていると共に、操作部50の制御部44に他端側が接続されている。また、制御部44は、第2磁石31と配線により接続されている。
従って、第2の磁石31と第1磁石21とが吸着した状態では、制御部44は、第2磁石31と第1磁石21と案内用糸S2とを通して導通した状態を検知することができ、第2磁石31と第1磁石21とが離間することで、非導通状態を検知することができる。
【0041】
案内用糸S2は、実施の形態1と同様に、横糸となるガットより細く形成されている。案内用糸S2は、フレームのフェース部分の幅方向の一側から他側まで、操作部50を進行させたときに、フェース部分の他側に位置する第1磁石21から、フェース部分の一側の貫通孔であって、ガットを挿通させるフェース部分の貫通孔を通り、操作部50まで繋がっている必要があるため、案内用糸S2の長さは、少なくともフェース部分の横幅の2倍より長く形成されている。
【0042】
制御部44と接続する案内用糸S2の他端側には、制御部44と接続容易とし、横糸となるガットと接続容易とするために、ピンタイプのコネクタが圧着されている。
【0043】
以上のように構成された本発明の実施の形態3に係るラケットのガット張り支援装置12の動作および使用状態について、図面に基づいて説明する。
【0044】
図7に示すように、まず、制御部44は、センサ部41からの信号を監視しており、縦糸であるガットGを検出したか否かを判定する(ステップS110)。
図6(A)に示すように、まず、編み部20に案内用糸S2が接続され、編み部20が操作部30の第2磁石31に吸着した状態で、操作部30をガットGに接近させる。操作部30がガットGに接近することで、センサ部41がガットGを検知する。
【0045】
センサ部41がガットGを検知したことが制御部44に通知されると、制御部44は、昇降部42に、前回、第2磁石31の引き込みを指示したか否かを判断する(ステップS120)。
この判断は、制御部44が、前回、第2磁石31の引き込みを指示した場合だけでなく、昇降部42への指示が初回である場合に「はい」となり、その他の場合には、「いいえ」となる。
図6(A)に示す例では、センサ部41が検出したガットGが最初のガットGであるため、ステップS120の判断は「はい」となり、ステップS110へ移行する。
【0046】
操作部50がこのまま進行することで、図6(B)に示すように、センサ部41がガットGの位置からずれ非検知状態となる。また、編み部20の第1磁石21がガットGに押され、一旦、操作部30の第2磁石31から離れる。
従って、制御部44は、ステップS110からステップS130へ移行して、第1磁石21と第2磁石31とが離間した状態から再び吸着した状態になったか否かを判定するが、第1磁石21と第2磁石31とは離間した状態であるため、「いいえ」となって、ステップS110へ移行する。
【0047】
図6(C)に示すように、更に、操作部50が進行することで、案内用糸S2がガットGの下方を通過してガットGを乗り越えた後に、編み部20の第1磁石21が、操作部30の第2磁石31と引き合い、第1磁石21が第2磁石31に吸着する。
制御部44が、ステップS110からステップS130へ移行したときに、第1磁石21と第2磁石31とが吸着した状態に変化したことにより、ステップS140にて、プランジャー部421をソレノイド部422に引き込み、第2磁石31を操作部40内に引き込むよう、ソレノイド部422に通電することで、昇降部42に指示してステップS110へ移行する。
【0048】
第2磁石31が操作部40内に引き込まれた状態で、操作部50が進行することで、第2磁石31に吸着した第1磁石21がガットGの上方を通過するため、案内用糸S2をガットGの上方に通すことができる。
【0049】
このとき、センサ部41がガットGを検知したことが制御部44に通知されても(ステップS110)、制御部44が、前回、昇降部42に第2磁石31の引き込みを指示しているため(ステップS120)、「はい」となり、何もせず、ステップS110へ移行する。
【0050】
そして、図6(D)に示すように、センサ部41がガットGを検知したことが制御部44に通知されると(ステップS110)、制御部44は、前回、昇降部42に対して何もしなかったため「いいえ」と判定する(ステップS120)。
従って、制御部44は、第2磁石31が操作部40内に引き込まれた位置から元に位置に復帰するように、昇降部42に指示する(ステップS150)。
制御部44から昇降部42に指示が出力されることで、図6(A)に示す状態に戻る。
【0051】
このように、操作部50を進行方向Fに進めるだけで、ガットGに案内用糸S2を、自動的に上下交互に通すことができる。
このとき、ガットGを無理やり上下に移動することなく、案内用糸S2を通すことができるため、このラケットのガット張り支援装置12は、先に張られたメインのガットGに負担を掛けずにスムーズにクロスの案内用糸S2を交互に交差させることができる。
【0052】
また、昇降部42の復帰のタイミングはセンサ部41で検知するものの、昇降部42による第2磁石31の引き込みは、離れた第1磁石21と第2磁石31とが吸着するタイミングにより行われるため、ガットGの張られた間隔が不揃いでも、確実に昇降部42を引き込んだり復帰させたりすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のラケットのガット張り支援装置は、テニスやバトミントンなどのガット張りに好適である。
【符号の説明】
【0054】
10,11,12 ラケットのガット張り支援装置
20 編み部
21 第1磁石
30,40,50 操作部
31 第2磁石
32 筐体
41 センサ部
42 昇降部
421 プランジャー部
422 ソレノイド部
43,44 制御部
G ガット
S1,S2 案内用糸
F 進行方向
【要約】
【課題】先に張られた一方のガットに負担を掛けずにスムーズに他方のガットを交互に交差させることができるラケットのガット張り支援装置を提供する。
【解決手段】ガット張り支援装置10は、ラケットに張られた縦糸であるガットGに交差させる横糸となる案内用糸S1を、ガットGの上下に交互に交差させることを支援するものである。ガット張り支援装置10は、案内用糸S1が接続され、第1磁石21により形成された編み部20と、第1磁石31が吸着する第2磁石31がラケットのフェース面側に配置され、案内用糸S1が張られる方向へ操作される操作部30とを備えている。第1磁石21を第2磁石31に吸着した状態で操作部30を進行させれば、第1磁石21が、一旦、第2磁石31から離れるが、互いに引き合い第1磁石21を第2磁石31に吸着させることができるので、案内用糸S1をガットGの上下に交互に交差させることができる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7