特許第6443921号(P6443921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443921
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】ガス系消火設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 37/36 20060101AFI20181217BHJP
   A62C 35/02 20060101ALI20181217BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   A62C37/36
   A62C35/02 A
   G08B17/00 J
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-261411(P2014-261411)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-120035(P2016-120035A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−061986(JP,A)
【文献】 特開2001−061985(JP,A)
【文献】 特開2001−061989(JP,A)
【文献】 特開平07−265458(JP,A)
【文献】 特開平11−096488(JP,A)
【文献】 特開平08−280838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 37/36
A62C 35/02
G08B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防護区画に設けた操作箱と制御盤との間で各種信号を伝送するガス系消火設備に於いて、
前記制御盤と前記操作箱との間をシリアル伝送回線で接続し、前記制御盤と前記操作箱の間で各種の信号をシリアル伝送により送受信するシリアル伝送系と、
前記操作箱と前記制御盤との間を信号数に応じた数のパラレル伝送回線で接続し、前記操作箱から前記制御盤へ前記シリアル伝送系で送信する一部の所定信号をパラレル送信するパラレル伝送系と、
前記シリアル伝送系及び前記パラレル伝送系の両方により前記操作箱から同一のイベントを実行する信号を受信した場合又は前記シリアル伝送系及び前記パラレル伝送系何れか一方から前記所定信号を受信した場合に、当該受信した所定信号に基づく制御を行う前記制御盤の制御部と、
を設けたことを特徴とするガス系消火設備。
【請求項2】
防護区画に設けた操作箱と制御盤との間で各種信号を伝送するガス系消火設備に於いて、
前記制御盤と前記操作箱との間をシリアル伝送回線で接続し、前記操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号及び非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号の前記制御盤への送信を含む各種信号の送受信を行うシリアル伝送系と、
前記操作箱と前記制御盤との間を少なくとも1のパラレル伝送回線で接続し、前記操作箱に設けた前記起動スイッチの操作に基づく起動信号又は非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号を前記制御盤へ送信するパラレル伝送系と、
前記シリアル伝送系及び前記パラレル伝送系の両方により前記操作箱から前記起動信号又は前記非常停止信号を受信した場合、若しくは前記シリアル伝送系及び前記パラレル伝送系の何れか一方から前記起動信号又は前記非常停止信号を受信した場合に、当該起動信号又は当該非常停止信号に基づく制御を行う前記制御盤の制御部と、
を設けたことを特徴とするガス系消火設備。
【請求項3】
請求項2記載のガス系消火設備に於いて、
前記制御盤と前記操作箱の間を、電線管に通した、電源線、シリアル伝送線、シリアル伝送コモン線、パラレル伝送線、電源コモン線を兼ねたパラレル伝送コモン線の少なくとも5本の信号線により結線すると共にグランド線として機能する前記電線管を介して接続し、
前記シリアル伝送系は、前記制御盤に設けた第1シリアル送受信部と前記操作箱に設けた第2シリアル送受信部とを前記シリアル伝送線とシリアル伝送コモン線を介して接続し、前記操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号又は非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号の前記制御盤への送信を含む各種信号をシリアル伝送により送受信し、
前記パラレル伝送系は、前記操作箱に設けたパラレル送信部と前記制御盤に設けたパラレル受信部を前記パラレル伝送線と前記パラレル伝送コモン線を介して接続し、前記操作箱に設けた前記起動スイッチの操作に基づく起動信号を前記制御盤へ送信することを特徴とするガス系消火設備。
【請求項4】
防護区画に設けた操作箱と制御盤との間で各種信号を伝送するガス系消火設備に於いて、
前記制御盤と前記操作箱との間をシリアル伝送回線で接続し、前記操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号及び非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号の前記制御盤への送信を含む各種信号の送受信を行うシリアル伝送系と、
前記操作箱と前記制御盤との間を少なくとも2のパラレル伝送回線で接続し、前記起動スイッチの操作に基づく起動信号及び前記非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号を前記2のパラレル伝送回線の各々により前記制御盤へ送信するパラレル伝送系と、
前記シリアル伝送系及び前記パラレル伝送系の両方により前記操作箱から前記起動信号又は前記非常停止信号を受信した場合、若しくは前記シリアル伝送系及び前記パラレル伝送系の何れか一方から前記起動信号又は前記非常停止信号を受信した場合に、当該起動信号又は当該非常停止信号に基づく制御を行う前記制御盤の制御部と、
を設けたことを特徴とするガス系消火設備。
【請求項5】
請求項4記載のガス系消火設備に於いて、
前記制御盤と前記操作箱の間を、電線管に通した、電源線を兼ねたシリアル伝送線、電源コモン線を兼ねたシリアル伝送コモン線、2本のパラレル伝送線、パラレル伝送コモン線の少なくとも5本の信号線により結線すると共にグランド線として機能する前記電線管を介して接続し、
前記シリアル伝送系は、前記制御盤に設けた第1シリアル送受信部と前記操作箱に設けた第2シリアル送受信部とを前記シリアル伝送線と前記シリアル伝送コモン線を介して接続し、前記操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号と非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号の前記制御盤への送信を含む各種信号をシリアル伝送により送受信し、
前記パラレル伝送系は、前記操作箱に設けたパラレル送信部と前記制御盤に設けたパラレル受信部を前記2本のパラレル伝送線と前記パラレル伝送コモン線を介して接続し、前記操作箱に設けた前記起動スイッチの操作に基づく起動信号と前記非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号を前記制御盤へパラレル送信することを特徴とするガス系消火設備。
【請求項6】
請求項3又は5記載のガス系消火設備に於いて、
前記制御盤に設けた第1シリアル送受信部は、
前記操作箱へ送信するデジタル表示信号を回線電圧の変化による電圧モードで送信する電圧送信部と、
前記操作箱に設けたシリアル送受信回路から回線電流の変化による電流モードで送信されたデジタル制御信号を受信する電流受信部と、
を備え、
操作箱に設けた第2シリアル送受信部は、
制御盤へ送信するデジタル制御信号を回線電流の変化による電流モードで送信する電流送信部と、
制御盤に設けたシリアル送受信回路から回線電圧の変化による電圧モードで送信されたデジタル表示信号を受信する電圧受信部と、
を備えたことを特徴とするガス系消火設備。
【請求項7】
請求項5記載のガス系消火設備に於いて、
前記制御盤に設けた前記第1シリアル送受信部は、前記操作箱へ送信するデジタル表示信号として、少なくとも火災感知器による火災検知を示す火災表示信号、消火ガスの放出を示す放出表示信号、自動モードの設定を示す自動モード表示信号、手動モードの設定を示す手動モード表示信号、及び所定のガス放出条件が成立した場合に開始するカウントダウンの残り時間を示すカウントダウン表示信号のいずれかを送信し、
前記操作箱に設けた前記第2シリアル送受信部は、前記制御盤へ送信するデジタル制御信号として、少なくとも操作箱の扉の開放を示す扉開検知信号、起動スイッチの操作に基づく起動信号、非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号、自動モードの設定操作に基づく自動モード設定信号及び手動モードの設定操作に基づく手動モード設定信号のいずれかを送信することを特徴とするガス系消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護区画に設けた制御盤と操作箱との間で各種信号を伝送する二酸化炭素等の消火ガスを放出して火災を消火するガス系消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災発生時に二酸化炭素やハロンガス等の消火ガスを放出して火災を消火するガス系消火設備は、水損や汚損を嫌う機器を設置している室内において、消火による機器損失を最小限に抑えつつ迅速な消火を行うことを可能とする。
【0003】
このようなガス系消火設備は、制御盤に自動モードを設定していた場合には、防護区画に設置した2回線に接続された各火災感知器からの火災発報(2回線のAND発報)があった場合に、所定時間のカウントダウンを開始し、カウントダウンが終了すると、ガス放出条件が成立したと判断して、制御盤から起動装置に起動信号を出力して動作し、起動装置から二酸化炭素等の開放ガスを防護区画に対応したガス供給配管に設けた選択弁に供給して開くと共に消火ガス貯蔵容器の栓を開け、噴射ヘッドから消火ガスを放出する。
【0004】
また制御盤に手動モードを設定していた場合には、監視員が目視又は火災感知器の発報によって火災を発見し、操作箱の扉を開いて起動スイッチを押すことで制御盤がカウントダウンを開始し、カウントダウンが終了すると同様にして消火ガスを放出する。
【0005】
図9は、30年ほど前に設置された古いガス系消火設備に設けた制御盤と操作箱の間の結線図である。図9において、制御盤10には操作箱12からの起動信号と非常停止信号を受信する起動用受信部20、操作箱12に電源を供給する電源部22及び操作箱12側との通話連絡に使用する電話器をプラグで接続する電話ジャック25を備えた通話回路部24を設ける。
【0006】
また、操作箱12には、起動操作によりオンして起動信号を送信する起動スイッチ26、カウントダウン中の非常停止操作によりオンして非常停止信号を送信する非常停止スイッチ28、電源供給状態で点灯する電源灯30及び非常電話機のプラグを接続する電話ジャック32を設けている。
【0007】
制御盤10と操作箱12の間は、起動信号線S1、非常停止信号線S2、グランド線G、電源線KD、電源コモン線KDC、電話線T及び電話コモン線TCからなる6本の信号線でパラレル結線しており、これら6本の信号線は例えば6芯ケーブル等を使用することで、制御盤10と操作箱12との間に埋設設置した電線管を通して結線している。
【0008】
図10図9の後継設備として機能を拡張したガス系消火設備に設けた制御盤と操作箱の間の結線図であり、制御盤の操作機能と表示機能を操作箱にも設けるようにしている。
【0009】
図10において、操作箱12には、機能拡張に伴い、起動スイッチ26及び非常停止スイッチ28に加え、扉開検知スイッチ38、自動モード設定スイッチ40、手動モード設定スイッチ42を追加し、また制御盤10に表示用送信部34を設け、これに対応して操作箱12に、電源灯30に加え、放出起動灯46、火災灯48、自動モード表示灯50、手動モード表示灯52及び閉止弁閉表示灯54を設けており、操作箱12による操作機能を強化している。なお、閉止弁閉表示灯54は二酸化炭素の設備専用となる。
【0010】
このような制御盤10及び操作箱12の機能拡大に伴い、6本の制御用信号線S1〜S6、5本の表示用信号線S7〜S11、グランド線G、電源線KD、電源コモン線KDC、電話線T及び電話コモン線TCの合計16本の信号線でパラレル結線している。また制御盤10にはグランド線Gによる地絡を検出して警報させる地絡検出部36を設けている。
【0011】
図11図10の後継設備となったガス系消火設備の制御盤と操作箱の間の結線図であり、制御盤と操作箱との間の結線数を低減するため表示制御にシリアル伝送を採用している。
【0012】
図11において,制御盤10に表示用シリアル送信部56を設け、操作箱12に設けた表示用シリアル受信部58との間を2本の信号線KS1,KS2で接続し、制御盤10から表示制御信号をシリアル伝送している。また操作箱12にカウントダウンの残り時間を表示する2桁のカウントダウン表示器60を設けている。これにより制御盤10と操作箱12の表示機能を拡張しながらも信号線の本数を13本に低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平6−062432号公報
【特許文献2】特開平11−245809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで図9に示したような設置から30年近くが経過したガス系消火設備にあっては、設備を構成する機器が老朽化していることから、設備機能を維持する共に現在設置しているガス系消火設備と同等な機能を持たせるように設備のリニューアルを必要とする時期に達している。
【0015】
このような設備をリニューアルするための改修工事にあっては、建築段階での設備工事とは異なり、可能なかぎり既設の設備環境を生かした工事が必要となる。この場合、例えば図9に示した古い設備の制御盤と操作箱を、例えば図10又は図11に示した機能を拡張した制御盤と操作箱に交換する場合、既設の電線管に通している信号線が6本しかなく、図10の16本の信号線を必要とする場合、また図11の13本の信号線を必要とする場合のいずれについても交換することができない。
【0016】
この場合、制御盤と操作箱との間にリニューアルに伴い必要とする本数の信号線を敷設できれば問題ないが、既設の電線管の中に更に追加分の信号線を通すことは困難であり、また、新たに電線管を敷設して必要な本数の信号線を通すことは、施設の構造物の一部を壊して電線管を敷設する作業が必要となり、このような改修工事は行うことには無理があり、設備をリニューアルする場合の大きなネックとなっている。
【0017】
この問題を解決するため本願出願人にあっては、防護区画に設けた制御盤と操作箱の間を、電線管に通した電源線、電源コモン線、シリアル伝送線、シリアル伝送コモン線、電話線及び電話コモン線の6本の信号線により結線し、制御盤に設けた電源部を操作箱の電源部に電源線と電源コモン線を介して接続し、制御盤に設けたシリアル送受信部を操作箱に設けたシリアル送受信部にシリアル伝送線とシリアル伝送コモン線を介して接続し、制御盤に設けた通話回路部を操作箱の電話ジャックに電話線及び電話コモン線を介して接続し、制御盤と操作箱をグランド線として機能する電線管を介して接続するガス系消火設備を提案している。
【0018】
このガス系消火設備によれば、制御盤と操作箱との間で電源供給、シリアル伝送、グランド接続及び通話接続を行う場合、通常のシリアル伝送では少なくとも2本の信号線を必要とするため、電源供給の2本、グランド接続の1本、通話接続の2本を加えて、少なくとも合計7本の信号線を必要とするが、グランド線として電線管を使用することで、1本少ない6本で実現することができ、制御盤と操作盤を結線する信号線の数を大幅に低減し、設備構成を簡単にしてコストを低減可能とする。
【0019】
また、シリアル伝送線を電源線と兼ねることで制御盤と操作箱の間を5本の信号線と電線管または6本の信号線で:結線して電源供給、シリアル伝送、グランド接続及び通話接続を行うことを可能する。更に、シリアル伝送線を電源線と兼ねると共にシリアル伝送コモン線を電源コモン線と兼ねることで、制御盤と操作箱の間を4本の信号線と電線管または5本の信号線で結線して電源供給、シリアル伝送、グランド接続及び通話接続を行うことを可能する。
【0020】
また、制御盤と操作箱の間を6本の信号線で結線している古くなった既存のガス消火設備をリニューアルする場合、例えば6本の既設信号線と電線管を使用して、機能拡張を図った制御盤と操作箱に入れ替える改修工事を可能とし、既設信号線では本数が不足する改修工事のネックを解消し、古くなった設備のリニューアルを簡単且つ容易に押し進めることを可能とする。
【0021】
ところで、このような制御盤と操作箱の間のシリアル伝送にあっては、操作箱に設けた起動スイッチや非常停止スイッチ等の操作に基づく全ての制御信号をシリアル伝送により制御盤に送って例えばガス放出の起動制御やカウントダウン中の非常停止制御等を行っているが、シリアル伝送にあってはノイズ等による伝送障害により制御信号が正常に操作箱から制御盤に送られない可能性がある。
【0022】
一方、ガス系消火設備は噴射ヘッドからガス放出を開始すると途中でガス放出を止めることができないため、ガス放出の起動制御には高い確実性が要求され、ガス放出条件が成立した場合に所定時間のカウントダウンを行った後にガス放出しており、シリアル伝送された起動信号や非常停止信号を受信して、操作箱で起動スイッチや非常停止スイッチの操作が間違いなく行われたことを判断する必要があり、シリアル伝送の誤作動などにより起動信号や非常停止信号を受信して誤動作することを回避する必要がある。
【0023】
本発明は、操作箱の操作に基づき送信する制御信号による制御盤の制御動作の信頼性又確実性を更に向上可能とするガス系消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
(シリアル・パラレル多重伝送)
本発明は、防護区画に設けた操作箱と制御盤との間で各種信号を伝送するガス系消火設備に於いて、
制御盤と操作箱との間をシリアル伝送回線で接続し、制御盤と操作箱の間で各種の信号をシリアル伝送により送受信するシリアル伝送系と、
操作箱と制御盤との間を信号数に応じた数のパラレル伝送回線で接続し、操作箱から制御盤へシリアル伝送系で送信する一部の所定信号をパラレル送信するパラレル伝送系と、
シリアル伝送系及びパラレル伝送系の両方により操作箱から同一のイベントを実行する信号を受信した場合又はシリアル伝送系及びパラレル伝送系の何れか一方から所定信号を受信した場合に、当該受信した所定信号に基づく制御を行う制御盤の制御部と、
を設けたことを特徴とする。
【0025】
(起動信号又は非常停止信号のシリアル・パラレル多重伝送:パラレル1回線)
また、本発明の別の形態は、防護区画に設けた操作箱と制御盤との間で各種信号を伝送するガス系消火設備に於いて、
制御盤と前記操作箱との間をシリアル伝送回線で接続し、操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号及び非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号の制御盤への送信を含む各種信号の送受信を行うシリアル伝送系と、
操作箱と制御盤との間を少なくとも1のパラレル伝送回線で接続し、操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号又は非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号を制御盤へ送信するパラレル伝送系と、
シリアル伝送系及びパラレル伝送系の両方により操作箱から起動信号又は非常停止信号を受信した場合、若しくはシリアル伝送系及びパラレル伝送系の何れか一方から起動信号又は非常停止信号を受信した場合に、当該起動信号又は当該非常停止信号に基づく制御を行う制御盤の制御部と、
を設けたことを特徴とする。
【0026】
(起動信号又は非常停止信号の多重伝送系の詳細)
制御盤と操作箱の間を、電線管に通した、電源線、シリアル伝送線、シリアル伝送コモン線、パラレル伝送線、電源コモン線を兼ねたパラレル伝送コモン線の少なくとも5本の信号線により結線すると共にグラント線として機能する電線管を介して接続し、
シリアル伝送系は、制御盤に設けた第1シリアル送受信部と操作箱に設けた第2シリアル送受信部とをシリアル伝送線とシリアル伝送コモン線を介して接続し、操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号又は非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号の制御盤への送信を含む各種信号をシリアル伝送により送受信し、
パラレル伝送系は、操作箱に設けたパラレル送信部と制御盤に設けたパラレル受信部をパラレル伝送線とパラレル伝送コモン線を介して接続し、操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号又は非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号を制御盤へ送信する。
【0027】
(起動信号と非常停止信号のシリアル・パラレル多重伝送:パラレル2回線)
また、本発明の別の形態は、防護区画に設けた操作箱と制御盤との間で各種信号を伝送するガス系消火設備に於いて、
制御盤と操作箱との間をシリアル伝送回線で接続し、操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号及び非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号の制御盤への送信を含む各種信号の送受信を行うシリアル伝送系と、
操作箱と制御盤との間を少なくとも2のパラレル伝送回線で接続し、起動スイッチの操作に基づく起動信号及び非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号を2のパラレル伝送回線の各々により制御盤へ送信するパラレル伝送系と、
シリアル伝送系及び前記パラレル伝送系の両方により操作箱から起動信号又は非常停止信号を受信した場合、若しくはシリアル伝送系及びパラレル伝送系の何れか一方から起動信号又は非常停止信号を受信した場合に、当該起動信号又は当該非常停止信号に基づく制御を行う制御盤の制御部と、
を設けたことを特徴とする。
【0028】
(起動信号と非常停止信号の多重伝送系の詳細)
制御盤と操作箱の間を、電線管に通した電源線を兼ねたシリアル伝送線、電源コモン線を兼ねたシリアル伝送コモン線、2本のパラレル伝送線、パラレル伝送コモン線の少なくとも5本の信号線により結線すると共にグランド線として機能する電線管を介して接続し、
シリアル伝送系は、制御盤に設けた第1シリアル送受信部と操作箱に設けた第2シリアル送受信部とをシリアル伝送線とシリアル伝送コモン線を介して接続し、操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号と非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号の制御盤への送信を含む各種信号をシリアル伝送により送受信し、
パラレル伝送系は、操作箱に設けたパラレル送信部と制御盤に設けたパラレル受信部を2本のパラレル伝送線とパラレル伝送コモン線を介して接続し、操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号と非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号を制御盤へパラレル送信する。
【0029】
(シリアル伝送)
制御盤に設けた第1シリアル送受信部は、
操作箱へ送信するデジタル表示信号を回線電圧の変化による電圧モードで送信する電圧送信部と、
操作箱に設けたシリアル送受信回路から回線電流の変化による電流モードで送信されたデジタル制御信号を受信する電流受信部と、
を備え、
操作箱に設けた第2シリアル送受信部は、
制御盤へ送信するデジタル制御信号を回線電流の変化による電流モードで送信する電流送信部と、
制御盤に設けたシリアル送受信回路から回線電圧の変化による電圧モードで送信されたデジタル表示信号を受信する電圧受信部と、
を備える。
【0030】
(シリアル伝送信号の詳細)
制御盤に設けた第1シリアル送受信部は、操作箱へ送信するデジタル表示信号として、少なくとも火災感知器による火災検知を示す火災表示信号、消火ガスの放出を示す放出表示信号、自動モードの設定を示す自動モード表示信号、手動モードの設定を示す手動モード表示信号、及び所定のガス放出条件が成立した場合に開始するカウントダウンの残り時間を示すカウントダウン表示信号のいずれかを送信し、
操作箱に設けた第2シリアル送受信部は、制御盤へ送信するデジタル制御信号として、少なくとも操作箱の扉の開放を示す扉開検知信号、起動スイッチの操作に基づく起動信号、非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号、自動モードの設定操作に基づく自動モード設定信号及び手動モードの設定操作に基づく手動モード設定信号のいずれかを送信する。
【発明の効果】
【0031】
(シリアル・パラレル多重伝送による効果)
本発明は、制御盤と操作箱との間をシリアル伝送回線で接続し、制御盤と操作箱の間で各種の信号をシリアル伝送により送受信するシリアル伝送系と、操作箱と制御盤との間を信号数に応じた数のパラレル伝送回線で接続し、操作箱から制御盤へシリアル伝送系で送信する一部の所定信号をパラレル送信するパラレル伝送系と、シリアル伝送系及びパラレル伝送系の両方により操作箱から同一のイベントを実行する信号を受信した場合又はシリアル伝送系及びパラレル伝送系何れか一方から所定信号を受信した場合に、当該受信した所定信号に基づく制御を行う制御盤の制御部とを設けるようにしたため、操作箱から同じ所定信号をシリアル伝送系とパラレル伝送系で多重伝送することを可能とし、制御盤側の制御部では、制御動作の確実性を高める必要がある場合には、シリアル伝送系とパラレル伝送系による同じ所定信号を受信した場合に対応する制御動作を行い、一方、信頼性を向上する必要がある場合には、シリアル伝送系又はパラレル伝送系の何れかにより所定信号を受信した場合に対応する制御動作を行うことを可能とする。
【0032】
(起動信号又は非常停止信号のシリアル・パラレル多重伝送による効果)
また、本発明の別の形態にあっては、御盤と操作箱との間をシリアル伝送回線で接続し、操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号の制御盤への送信を含む各種信号の送受信を行うシリアル伝送系と、操作箱と制御盤との間を少なくとも1のパラレル伝送回線で接続し、操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号又は非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号を制御盤へ送信するパラレル伝送系と、シリアル伝送系及びパラレル伝送系の両方により操作箱から起動信号又は非常停止信号を受信した場合又はシリアル伝送系及びパラレル伝送系何れか一方から起動信号又は非常停止信号を受信した場合に、当該起動信号又は当該非常停止信号に基づく制御を行う制御盤の制御部とを設けるようにしたため、操作箱から同じ所定信号をシリアル伝送系とパラレル伝送系で多重伝送することを可能とし、ガス系消火設備の制御に重要な操作箱の起動スイッチの操作に基づく起動信号又は非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号について、制御盤側の制御部は、起動制御の確実性を高める必要がある場合には、シリアル伝送系とパラレル伝送系の両方から起動信号又は非常停止信号を受信した場合に起動制御又は非常停止制御を行い、一方、信頼性を向上する必要がある場合には、シリアル伝送系又はパラレル伝送系の何れかにより起動信号又は非常停止信号を受信した場合に起動制御又は非常停止制御を行い、一方の伝送系に障害があっても確実に起動制御を可能とする。
【0033】
(起動信号又は非常停止信号の多重伝送系による効果)
また、制御盤と操作箱の間を、電線管に通した、電源線、シリアル伝送線、シリアル伝送コモン線、パラレル伝送線、電源コモン線を兼ねたパラレル伝送コモン線の少なくとも5本の信号線により結線すると共にグランド線として機能する電線管を介して接続し、シリアル伝送系は、制御盤に設けた第1シリアル送受信部と操作箱に設けた第2シリアル送受信部とをシリアル伝送線とシリアル伝送コモン線を介して接続し、操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号又は非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号の制御盤への送信を含む各種信号をシリアル伝送により送受信し、パラレル伝送系は、操作箱に設けたパラレル送信部と制御盤に設けたパラレル受信部をパラレル伝送線とシリアル伝送コモン線を介して接続し、操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号又は非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号を制御盤へ送信するようにしたため、制御盤と操作箱との間で電源供給、シリアル伝送及び1回線のパラレル伝送を行う場合、通常は電源供給の2本、シリアル伝送の2本及び1回線パラレル伝送の2本の少なくとも合計6本の信号線を必要とするが、本発明にあってはシリアル伝送コモン線を電源コモン線と共用することで、1本少ない5本で実現し、また、電線管をグランド線とすることで専用のグランド線を不要とし、制御盤と操作盤を結線する信号線の数を大幅に低減し、設備構成を簡単にしてコストを低減可能とする。
【0034】
また、制御盤と操作箱の間を6本の信号線で結線している古くなった既存のガス消火設備をリニューアルする場合、6本の既設信号線の内の5本をそのまま使用すると共に電線管をグランド線として使用して、シリアル伝送とパラレル伝送の多重伝送による機能拡張を図った制御盤と操作箱に入れ替える改修工事を可能とし、既設信号線では本数が不足する改修工事のネックを解消し、古くなった設備のリニューアルを簡単且つ容易に押し進めることを可能とする。
【0035】
(起動信号と非常停止信号のシリアル・パラレル多重伝送による効果)
また、本発明の別の形態にあっては、制御盤と操作箱との間をシリアル伝送回線で接続し、操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号及び非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号の制御盤への送信を含む各種信号の送受信を行うシリアル伝送系と、操作箱と制御盤との間を少なくとも2のパラレル伝送回線で接続し、操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号及び非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号を制御盤へ送信するパラレル伝送系と、シリアル伝送系及びパラレル伝送系の両方により操作箱から起動信号又は非常停止信号を受信した場合若しくはシリアル伝送系及びパラレル伝送系何れか一方から起動信号又は非常停止信号を受信した場合に、当該起動信号又は当該非常停止信号に基づく制御を行う制御盤の制御部とを設けるようにしたため、操作箱から同じ所定信号をシリアル伝送系とパラレル伝送系で多重伝送することを可能とし、ガス系消火設備の制御に重要な操作箱の起動スイッチの操作に基づく起動信号及び非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号について、制御盤側の制御部は、起動制御や非常停止制御の確実性を高める必要がある場合には、シリアル伝送系とパラレル伝送系の両方から起動信号又は非常停止信号を受信した場合に起動制御又は非常停止制御を行い、一方、信頼性を向上する必要がある場合には、シリアル伝送系又はパラレル伝送系の何れかにより起動信号又は非常停止信号を受信した場合に起動制御又は非常停止制御を行い、一方の伝送系に障害があっても確実に起動制御及び非常停止制御を可能とする。
【0036】
(起動信号と非常停止信号の多重伝送系による効果)
また、制御盤と操作箱の間を、電線管に通した、電源線を兼ねたシリアル伝送線、電源コモン線を兼ねたシリアル伝送コモン線、2本のパラレル伝送線、シリアル伝送コモン線の少なくとも5本の信号線により結線すると共にグランド線として機能する電線管を介して接続し、シリアル伝送系は、制御盤に設けた第1シリアル送受信部と操作箱に設けた第2シリアル送受信部とをシリアル伝送線とシリアル伝送コモン線を介して接続し、操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号と非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号の制御盤への送信を含む各種信号をシリアル伝送により送受信し、パラレル伝送系は、操作箱に設けたパラレル送信部と制御盤に設けたパラレル受信部を2本のパラレル伝送線の各々とパラレル伝送コモン線を介して接続し、操作箱に設けた起動スイッチの操作に基づく起動信号と非常停止スイッチの操作に基づく非常停止信号を制御盤へパラレル送信するようにしたため、制御盤と操作箱との間で電源供給、シリアル伝送及び2回線のパラレル伝送を行う場合、通常は電源供給の2本、シリアル伝送の2本及び2回線パラレル伝送の3本の少なくとも合計7本の信号線を必要とするが、本発明にあっては、シリアル伝送線を電源線と共用すると共にシリアル伝送コモン線を電源コモン線と共用することで、2本少ない5本で実現し、また、電線管をグランド線とすることで専用のグランド線を不要とし、制御盤と操作盤を結語線する信号線の数を大幅に低減し、設備構成を簡単にしてコストを低減可能とする。
【0037】
また、制御盤と操作箱の間を電線管に通した6本の信号線で結線している古くなった既存のガス消火設備をリニューアルする場合、6本の既設信号線をそのまま使用すると共に電線管をグランド線として使用して、シリアル伝送とパラレル伝送の多重伝送による機能拡張を図った制御盤と操作箱に入れ替える改修工事を可能とし、既設信号線では本数が不足する改修工事のネックを解消し、古くなった設備のリニューアルを簡単且つ容易に押し進めることを可能とする。
【0038】
(シリアル伝送による効果)
制御盤に設けたシリアル送受信部は、操作箱へ送信するデジタル表示信号を回線電圧の変化による電圧モードで送信する電圧送信部と、操作箱に設けたシリアル送受信部から回線電流の変化による電流モードで送信されたデジタル制御信号を受信する電流受信部とを備え、操作箱に設けたシリアル送受信部は、制御盤へ送信するデジタル制御信号を回線電流の変化による電流モードで送信する電流送信部と、制御盤に設けたシリアル送受信部から回線電圧の変化による電圧モードで送信されたデジタル表示信号を受信する電圧受信部とを備えるようにしたため、電圧モードと電流モードによる双方向伝送(半二重)とすることで、シリアル伝送コモン線を電源コモン線と共用するか、あるいは、シリアル伝送線及びシリアル伝送コモン線を電源線及び電源コモン線を共用することができ、これにより既設設備の電線管に通して設置している6本の既設信号線を使用してシリアル伝送とパラレル伝送の多重伝送により機能拡を拡張した制御盤と操作箱を交換する改修工事を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】ガス系消火設備の全体構成を示した説明図
図2】ガス系消火設備に設けた制御盤の機能構成を操作箱を含む設備機器と共に示した説明図
図3】操作箱の外観を示した説明図
図4】操作箱の扉を開いて内部を示した説明図
図5】操作箱から制御盤へ起動信号を多重伝送する機能構成を示したブロック図
図6図5の制御盤と操作箱に設けたシリアル送受信部の機能構成を示したブロック図
図7】操作箱から制御盤へ起動信号と非常停止信号を多重伝送する機能構成を示したブロック図
図8図7の制御盤と操作箱に設けたシリアル送受信部の機能構成を示したブロック図
図9】制御盤と操作箱の間を6本の信号線で結線した従来設備を示した説明図
図10】制御盤の操作機能と表示機能を操作箱に持たせる機能拡張を図って16本の信号線でパラレル結線した従来設備を示した説明図
図11】制御盤から操作箱へ表示信号をシリアル伝送して13本の信号線に削減した従来設備を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0040】
[ガス系消火設備の概要]
(設備構成)
図1はガス系消火設備の全体構成図を示した説明図である。なお、図1の設備構成は一例であり、必要に応じて適宜の構成をとることができる。
【0041】
図1に示すように、ガス系消火設備にはガス系の消火設備を一括制御する制御盤10を設け、また防護区画A,Bとなる各部屋の外に操作箱12を設置している。操作箱12は起動スイッチと起動スイッチを保護する扉を備え、手動モードを設定している場合、人が火災を発見したときには、扉を開けて起動スイッチを操作することにより制御盤10に起動信号を送信し、消火剤としての消火ガスを放出させる。放出表示灯15は監視区域内に消火ガスが放出されていることを表示し、室内に入らないことを知らせる。
【0042】
噴射ヘッド14は消火ガスを室内に放出する。スピーカ13は消火ガスが放出されることを放送し、人が警戒区域内に存在する場合は直ちに避難することを促す。消火ガス貯蔵容器16は消火ガスを貯蔵する。
【0043】
起動装置18は防護区画A,Bに対応して設け、制御盤10から消火ガス放出用の起動信号を受けて内蔵したソレノイドの通電により開弁して二酸化炭素などの開放ガスを放出し、開放ガスにより選択弁17を開放させると共に消火ガス貯蔵容器16の栓を開ける。選択弁17は起動装置18の起動による開放ガスを受けて開き、火災の生じた防護区画A,Bの噴射ヘッド14に消火ガスを供給して噴射させる。
【0044】
火災感知器11は2回線の感知器回線で各防護区画A,Bの火災を監視している。圧力スイッチ21は消火ガス貯蔵容器16から消火ガスが放出されたことを検出し、制御盤10に検出信号を送り、火災の発生した監視区域に対応した放出表示灯15を点滅させる。ピストンレリーザ19は消火ガスが部屋に放出されたとき消火ガスを室外に漏れないようにダンパーで排煙口を閉じる。閉止弁23は消火ガス貯蔵容器16からの消火ガスの供給を手動で閉止する。
【0045】
このようなガス系消火設備において、制御盤10に自動モードを設定していた場合には、2系統の回線に接続された各火災感知器11からの火災発報(2回線のAND発報)があった場合に所定時間のカウントダウンを開始し、このカウントダウンが終了するとガス放出条件が成立したと判定し、制御盤10から起動装置18にガス放出信号を出力して動作し、起動装置18から二酸化炭素等の開放ガスを選択弁17に供給して開くと共に消火ガス貯蔵容器16の栓を開け、ガス供給配管介して噴射ヘッド14から火災検知した防護区画の室内に消火ガスを放出させる。
【0046】
また制御盤10に手動モードを設定していた場合には、監視員が目視又は火災感知器11の発報によって例えば防護区画Aの火災を発見し、防護区画Aの外側に設置している操作箱12の扉を開いて起動スイッチを押すことで起動信号を制御盤10に送信してカウントダウンを開始させ、カウントダウンが終了するとガス放出条件が成立したと判定し、自動モードの場合と同様にして防護区画の噴射ヘッド14から消火ガスを放出させる。
【0047】
このような自動モード又は手動モードを設定した場合の動作においては、制御盤10から各操作箱12へ、あるいは各操作箱12から制御盤10に対して、各種の信号が伝送される。
(制御盤の構成)
図2はガス系消火設備に設けた制御盤の機能構成を操作箱を含む設備機器と共に示した説明図である。
【0048】
図2に示すように、制御盤10は図1に示した防護区画A,Bの火災を監視すると共に火災に伴う消火ガスの放出制御を行うものであり、制御部100を備え、制御部100に対し表示部102、操作部104、警報部105、移報部106、電源部108及び蓄電池を備えた予備電源部110を設けている。
【0049】
制御部100に対し受信回路部112を接続し、受信回路部112から一つの防護区画に対し感知器回線を2回線引き出して火災感知器11をそれぞれ接続している。
【0050】
また、制御部100に対し操作箱送受信部114を接続し、操作箱送受信部114と防護区画の入口に設けた操作箱12との間を6本の信号線で接続している。
【0051】
制御部100には、受信回路部115を介して閉止弁23に設けた閉止弁閉検出スイッチを接続し、また、受信回路部116を介してガス放出を検出してオンする圧力スイッチ21を接続している。
【0052】
また、制御部100に対し受信回路部118と駆動回路部120を接続し、防護区画にシャッター130を設けている場合、駆動回路部120から閉鎖駆動信号をシャッター130に出力して閉鎖し、シャッター閉鎖信号を受信回路部118で受信するようにしている。
【0053】
また、制御部100は駆動回路部122を介して防護区画に設けたスピーカ13を接続し、ガス放出に先立つカウントダウン中に避難退避を促す放送音を出力するようにしている。
【0054】
また、制御部100に対し音響鳴動選択駆動回路部124を介してベル132及びサイレン134を接続し、ガス放出に先立つカウントダウン中に防護区画に設けたベル132又はサイレン134を鳴動して火災発生の報知と防護区画からの避難退避を促すようにしている。
【0055】
また、制御部100に対しては駆動回路部126を介して放出表示灯15を接続しており、圧力スイッチ21によるガス放出の検出信号を受信した場合に放出表示灯15をフリッカ駆動するようにしている。
【0056】
また、制御部100に対しては駆動回路部128を介して起動装置18を接続しており、カウントダウン終了で放出起動信号を起動装置18に出力して開放ガスを放出し、図1に示した選択弁17の開放及び消火ガス貯蔵容器16の開栓により噴射ヘッド14から消火ガスを放出させる。
【0057】
表示部102には、電源状態を示す電源灯、火災発生を示す火災灯、手動モードの設定を示す手動モード表示灯、自動モードの設定を示す自動モード表示灯、ガス放出までのカウントダウン残り時間を表示するカウントダウン表示器、ガス放出動作の起動を示す放出起動灯、ガス放出されたことを示す放出灯等を設けている。
【0058】
操作部104には、全ての防護区画での動作モードを一括して自動モード又は手動モードに切替えるキースイッチ、カウントダウン中にガス放出を停止させる非常停止スイッチ、警報を停止させる警報停止スイッチ、移報を停止させる移報停止スイッチ等を設けている。
【0059】
警報部105には警報音を出力するスピーカを設けている。また移報部106には、自動モード、手動モード、火災、起動、ガス放出等の移報信号を出力する無電圧接点回路を設けている。
【0060】
制御部100は、CPU、メモリ、各種入出力ポートを備えたコンピュータ回路或いはボード実装のディスクリート回路等で構成し、自動モード又は手動モードの設定に基づき防護区画に対するガス放出制御を行う。
【0061】
制御部100は、自動モードの設定状態を検知していた場合、防護区画に設けた2台の火災感知器11が火災を検知して動作する2回線発報を検知した場合に、所定時間のカウントダウンを開始し、カウントダウン終了を検知するとガス放出条件の成立と判定し、起動装置18に放出起動信号を出力する制御を行い、これにより開放動作した起動装置18から二酸化炭素等の開放ガスを図1に示した選択弁17に供給して駆動すると共に消火ガス貯蔵容器16の栓を開け、噴射ヘッド14から消火ガスを放出させる。
【0062】
また、制御部100は、手動モードの設定状態を検知していた場合には、監視員が目視又は火災感知器11の発報によって火災を発見して操作箱12の起動スイッチを押すことで起動信号を受信した場合に所定時間のカウントダウンを開始し、カウントダウンが終了するとガス放出条件の成立と判定して、起動装置18に放出起動信号を出力する制御を行い、これにより開放動作した起動装置18から二酸化炭素等の開放ガスを図1に示した選択弁17に供給して駆動すると共に消火ガス貯蔵容器16の栓を開け、噴射ヘッド14から消火ガスを放出させる。
【0063】
ここで、制御部100は、操作箱12の起動スイッチの操作による起動信号を、後の説明で明らかにするシリアル伝送系とパラレル伝送系のそれぞれを介した多重伝送により受信しており、初期設定として確実性モードを設定していた場合は、シリアル伝送系とパラレル伝送系の両方から起動信号を受信した場合にカウントダウンを開始し、また、信頼性モードを設定していた場合は、シリアル伝送系とパラレル伝送系の何れか一方から起動信号を受信した場合にカウントダウンを開始する制御を行う。
【0064】
また、制御部100は、自動モード又は手動モードの何れにおいても、火災を検知した場合には火災表示信号を、カウンタダウンを開始した場合には残り時間を示すカウントダウン表示信号を、ガス放出動作の起動を検知した場合には放出起動表示信号を、閉止弁の閉止を検知した場合は閉止弁閉表示信号を、シリアル伝送系により操作箱12へ送信して表示させる制御を行う。
【0065】
(操作箱の構成)
図3は防護区画に設けた操作箱の外観を示した説明図、図4は操作箱の扉を開いた内部を示した説明図である。
【0066】
図3に示すように、操作箱12は、その扉62の前面側に、消火ガス放出前のカウントダウン時間を表示するカウントダウン表示器60、消火ガスの放出を非常停止するための非常停止スイッチ28、運転モード又は手動モードのモード選択を行うためのキースイッチ45、火災発生を示す火災灯48、ガス放出動作が起動されたことを示す放出起動灯46、操作箱12の電源状態を示す電源灯30、消火ガスを放出させないための閉止弁23が閉じているときに点滅する閉止弁閉表示灯54、手動モード運転時に点灯する手動モード表示灯52、自動モード運転時に点灯する自動モード表示灯50を設けている。
【0067】
また操作箱12は、図4に示すように、扉62を開いた際に露出する内部に、消火ガスの放出を手動で指示するための起動スイッチ26、扉62が開かれたことを検知する扉開検知スイッチ38を設けている。
【0068】
[起動信号を多重伝送する制御盤と操作箱の機能と結線]
(信号線6本による結線)
図5は操作箱から制御盤へ起動信号を多重伝送する機能構成を6本の信号線及び電線管による結線と共に示したブロック図である。
【0069】
図5に示すように、制御盤10には制御部100と操作箱送受信部114を設け、操作箱送受信部114には、第1シリアル送受信部として機能するシリアル送受信部70、パラレル受信部72及び電話ジャック25を備えた通話回路部24を設けている。
【0070】
また操作箱12には、第2シリアル送受信部として機能するシリアル送受信部74、パラレル送信部75、表示回路部76及び電話ジャック32を設けている。シリアル送受信部74に対しては操作部として、起動スイッチ26、非常停止スイッチ28、扉開検知スイッチ38、自動モード設定スイッチ40、手動モード設定スイッチ42及びランプテストスイッチ44を入力接続している。
【0071】
このうち起動スイッチ26はパラレル送信部75にも入力接続しており、起動スイッチ26を操作した場合に起動信号をシリアル送受信部74及びパラレル送信部75から制御盤10へ多重伝送可能としている。なお、自動モード設定スイッチ40と手動モード設定スイッチ42は図3に示したキースイッチ45により操作される。
【0072】
表示回路部76に対しては表示部として、電源灯30、放出起動灯46、火災灯48、自動モード表示灯50、手動モード表示灯52及び2桁表示のカウントダウン表示器60を設けている。
【0073】
制御盤10に設けた操作箱送受信部114と操作箱12の間は、電線管35に通した、電源線KD、パラレル伝送線KP、電源コモン線を兼ねたパラレル伝送コモン線KPC、シリアル伝送線S、シリアル伝送コモン線SCの5本で結線しており、これに電話線Tを加えると6本の信号線により結線している。
【0074】
具体的には、制御盤10に設けた電源部108(図2参照)からの正負の電源ラインを、電源線KDと電源コモン線を兼ねたパラレル伝送コモン線KPCを介して操作箱12の電源部となる正負の電源ラインに接続している。
【0075】
また、制御盤10に設けたシリアル送受信部70を、シリアル伝送線Sとシリアル伝送コモン線SCを介して操作箱12に設けたシリアル送受信部74に接続している。また、操作箱12に設けたパラレル送信部75をパラレル伝送線KPと電源コモン線を兼ねたパラレル伝送コモン線KPCを介して制御盤10に設けたパラレル受信部72に接続している。
【0076】
このようにパラレル伝送コモンKPCを電源コモン線と共用しており、電源供給及びパラレル伝送に必要なコモン線は1本で済む。なお、通話接続にもパラレル伝送コモンKPCを共用している。
【0077】
制御盤10の金属筐体に設けたグランド端子G1及び操作箱12の金属筐体に設けたグランド端子G2は、グランド接続によりグランド線として機能する電線管35に接続しており、電線管35をグランド線として使用することで、制御盤10と操作箱12のグランド電位を同電位としている。
【0078】
また制御盤10に地絡検出部36を設けて電線管35に接続しており、地絡検出部36はグランド線として機能する電線管35の電位を監視し、所定の電圧範囲を超えた場合又は下がった場合に地絡を検出して制御部100から障害警報を出力させる。
【0079】
なお、操作盤10と操作箱12の間で複数の電線管を継ぎながら設置している設備では、途中で非導電性の電線管が使用されている場合があり、この場合には導電性の電線管の間でグランドを接続していくことで対応できる。
【0080】
(パラレル伝送系)
制御盤10と操作箱12との間のパラレル伝送系は、パラレル伝送線KPとパラレル伝送コモン線KPCを介して接続したパラレル送信部75とパラレル受信部72で構成する。
【0081】
パラレル受信部72は例えばパラレル伝送線KPとパラレル伝送コモン線KPCの間に所定の回線電圧を印加するプルアップ回路であり、また、パラレル送信部75は非常停止スイッチ28をパラレル伝送線KPとパラレル伝送コモン線KPCの間に接続する例えば信号ラインであり、非常停止スイッチ28をオン操作すると、パラレル伝送線KPからパラレル伝送コモン線KPCに回線電流が流れ、パラレル受信部72の受信電圧が低下し、これを制御部100で検知してパラレル伝送系による起動信号の受信を検知する。
【0082】
(シリアル伝送系)
制御盤10と操作箱12との間のシリアル伝送系は、シリアル伝送線Sとシリアル伝送コモン線SCを介して接続したシリアル送受信部70,74で構成する。
【0083】
図6は制御盤と操作箱に設けたシリアル送受信部の機能構成を示したブロック図である。図6に示すように、制御盤10に設けたシリアル送受信部70は、伝送制御部78、電圧送信部80及び電流受信部82を備える。
【0084】
電圧送信部80はシリアル伝送線Sに制御盤10側から所定の回線電圧+Vsを常時印加しており、この状態で伝送制御部78を介して入力した操作箱12へ送信する所定形式のデジタル表示信号を回線電圧の変化による電圧パルス列に変換して電圧モードで送信する。即ち電圧送信部80は、伝送制御部78を介して入力するデジタル表示信号について、回線電圧+Vsをビット0に対応した基底レベルとし、ビット1に対応して電源電圧+Vsより所定値高い電圧を印加することで生成した電圧パルスを送信する。
【0085】
電流受信部82は、操作箱12に設けたシリアル送受信部74から回線電流の変化による電流パルス列に変換して電流モードで送信されたデジタル制御信号を受信して伝送制御部78に出力する。
【0086】
また、操作箱12に設けたシリアル送受信部74は、伝送制御部84、電圧受信部86及び電流送信部88を備える。電圧受信部86は、制御盤10のシリアル送受信部70に設けた電圧送信部80から回線電圧の変化による電圧パルス列に変換して電圧モードで送信されたデジタル表示信号を受信して伝送制御部84に出力する。
【0087】
ここで、制御盤10から操作箱12へシリアル伝送系により送信されるデジタル表示信号には、電源表示信号、放出起動表示信号、火災表示信号、自動モード表示信号、手動モード表示信号及びカウントダウン表示信号が含まれる。
【0088】
電流送信部88は伝送制御部84を介して入力した制御盤10へ送信する所定形式のデジタル制御信号を回線電流の変化による電流パルス列に変換して電流モードで送信する。即ち、電流送信部88は、伝送制御部84を介して入力するデジタル制御信号を電流信号に変換して送信する場合、定常的に流れている一定の消費電流をビット0に対応した基底電流とし、ビット1に対応して所定値だけ電流を増加させることで生成した電流パルスを送信する。
【0089】
ここで、操作箱12から制御盤10へシリアル伝送系により送信されるデジタル制御信号には、起動スイッチ26の操作に基づく起動信号、非常停止スイッチ28の操作に基づく非常停止信号、扉開検知スイッチ38の動作に基づく扉開検知信号、自動モード設定スイッチ40の操作による自動モード設定信号手動モード設定スイッチ42の操作による手動モード設定信号が含まれる。
【0090】
更に、デジタル表示信号及びデジタル制御信号の形式は、同期信号、送信元アドレス、送信先アドレス、コマンド、チェックコード等を含む形式とする。
【0091】
このような2本の信号線を使用して異なる方向にデジタル信号を電圧モードと電流モードで伝送するシリアル伝送は、R型として知られたアドレスを設定した火災感知器単位に火災を監視して受信機で火災警報を出力する火災報知設備で本願出願人が実用化しており、受信機から引き出した感知器回線は電源兼用信号線として使用する必要があり、このため火災感知器に対する電源供給と受信機と火災感知器との間の信号伝送を同時に行うシリアル伝送系を構成している。
【0092】
火災感知器のように消費電力が少ない場合には電源供給線をシリアル伝送線に兼用でき、また、本実施形態の操作箱のように消費電力が比較的大きい場合には専用の電源線と電源コモン線を設けるが望ましく、本実施形態では電源コモン線についてはシリアル伝送に共用することができる。また、後述する他の実施形態のように、操作箱側の消費電流を一定に保つ工夫を行うことで、シリアル伝送線及びシリアル伝送コモン線を電源線及び電源コモン線と共用し、電源線及び電源コモン線を省略することもできる。
【0093】
(多重伝送に基づく制御)
図5に示した制御盤10の制御部100は、必要に応じて所定の操作により確実性モードを初期設定していた場合、シリアル伝送系及びパラレル伝送系の両方、即ちシリアル送受信部70とパラレル受信部72の両方から操作箱12に設けた起動スイッチ26の操作に基づく起動信号を受信した場合にカウントダウンを開始し、カウントダウン終了でガス放出条件の成立と判定して図2に示した起動装置18に放出起動信号を出力する制御を行い、これにより開放動作した起動装置18から二酸化炭素等の開放ガスを図1に示した選択弁17に供給して駆動すると共に消火ガス貯蔵容器16の栓を開け、噴射ヘッド14から消火ガスを放出させる。
【0094】
また、図5に示した制御盤10の制御部100は、必要に応じて所定の操作により信頼性モードを初期設定していた場合、シリアル伝送系及びパラレル伝送系の何れか一方、即ちシリアル送受信部70又はパラレル受信部72の何れか一方から操作箱12に設けた起動スイッチ26の操作に基づく起動信号を受信した場合にカウントダウンを開始し、カウントダウン終了でガス放出条件の成立と判定して図2に示した起動装置18に放出起動信号を出力する制御を行い、これにより開放動作した起動装置18から二酸化炭素等の開放ガスを図1に示した選択弁17に供給して駆動すると共に消火ガス貯蔵容器16の栓を開け、噴射ヘッド14から消火ガスを放出させる。
【0095】
制御部100に対する信頼性モードの設定は例えばノイズによりシリアル伝送系の障害が懸念される場合に設定する。また制御部100に対する確実性モードの設定はシリアル伝送系の安定した動作が可能な場合に設定する。また、信頼性モードと確実性モードの設定は、制御盤10に接続している複数の操作箱12毎に異なった設定とすることも可能である。
【0096】
なお、図5の実施形態では、起動スイッチ26の操作による起動信号をパラレル伝送しているが、これに代えて非常停止スイッチ28の操作による非常停止信号をパラレル伝送するようにしても良い。
【0097】
(既存設備のリニューアル)
図5に示した制御盤10と操作箱12の間を6本の信号線で結線する構成は、例えば図9に示した制御盤10と操作箱12の間を6本の信号線で結線している古い設備をリニューアルするための改修工事に適用する。
【0098】
即ち、図9に示した古い設備に設置している制御盤10と操作箱12を撤去し、その間を結線していた6本の信号線はそのまま電線管に通したまま残し、図1乃至図6に実施形態に示した制御盤10と操作箱12を新たに設置し、既設の6本の信号線と電線管により図5に示すように結線する改修工事を行う。
【0099】
この制御盤10と操作箱12を新たなものに交換する改修工事にあっては、それ以外の図1に示した設備機器については、耐用年数を過ぎているか、耐用年数に近づいているものは新品に交換するが、それ以外の機器は旧設備のものをそのまま残し、交換した新たな制御盤10に図2に示すように接続する。
【0100】
このように古くなった既存のガス消火設備の電線管に通して制御盤と操作箱の間を結線している6本の既設信号線をそのまま使用すると共に電線管をグランド線に使用することで、機能拡張を図った制御盤と操作箱に入れ替える改修工事が可能となり、既設信号線では本数が不足するという改修工事のネックを解消し、古くなった設備のリニューアルを簡単且つ容易に押し進めることができる。
【0101】
[起動信号と非常停止信号を多重伝送する制御盤と操作箱の機能と結線]
(制御盤と操作箱の機能と結線)
図7は、本発明の他の実施形態として、起動信号と非常停止信号を多重伝送する制御盤と操作箱の機能構成を示したブロック図である。
【0102】
図7に示すように、制御盤10には、制御部100と操作箱送受信部114を設け、操作箱送受信部114には、第1シリアル送受信部として機能するシリアル送受信部70、パラレル受信部72及び電話ジャック25を備えた通話回路部24を設けている。また操作箱12には、第2シリアル送受信部として機能するシリアル送受信部74、パラレル送信部75、表示回路部76及び電話ジャック32を設けている。
【0103】
本実施形態では、制御盤10に設けた操作箱送受信部114と操作箱12の間をパラレル伝送線KP1,KP2、パラレル伝送コモン線KPC、電源線を兼ねたシリアル伝送線S、電源コモン線を兼ねたシリアル伝送コモン線SCの5本の信号線により結線し、更に、電話線Tを加えた6本の信号線により結線している。
【0104】
具体的には、操作箱12に設けたパラレル送信部75と制御盤10に設けたパラレル受信部72の間を、パラレル伝送線KP1,KP2の各々とパラレル伝送コモン線KPCのパラレル2回線で接続し、これに対応して操作箱12に設けたパラレル送信部75に起動スイッチ26と非常停止スイッチ28を並列に入力接続し、且つ、起動スイッチ26と非常停止スイッチ28はシリアル送受信部74にも並列に入力接続している。
【0105】
また、制御盤10に設けたシリアル送受信部70を、電源線を兼ねたシリアル伝送線Sと電源コモン線を兼ねたシリアル伝送コモン線SCを介して操作箱12に設けたシリアル送受信部74に接続している。
【0106】
これにより起動スイッチ26を操作した場合の起動信号又は非常停止スイッチ28を操作した場合の非常停止信号を、シリアル伝送とパラレル伝送により制御盤10へ多重伝送可能としている。
【0107】
ここで、制御盤10に設けたシリアル送受信部70を、電源線を兼ねたシリアル伝送線Sと電源コモン線を兼ねたシリアル伝送コモン線SCを介して操作箱12に設けたシリアル送受信部74に接続することで、電源線と電源コモン線の2本の信号線を省略しており、電源供給及びシリアル伝送に必要な信号線は2本で済み、3本の信号線を起動信号と非常停止信号のパラレル伝送に割り当てることができる。
【0108】
操作箱12のシリアル送受信部74に対しては、操作部として、パラレル送信部75に入力接続した起動スイッチ26と非常停止スイッチ28に加え、扉開検知スイッチ38、自動モード設定スイッチ40、手動モード設定スイッチ42及びランプテストスイッチ44を入力接続している。なお、自動モード設定スイッチ40と手動モード設定スイッチ42は図3に示したキースイッチ45により操作される。
【0109】
また操作箱12の表示回路部76に対しては、表示部として、電源30、放出起動46、火災灯48、自動モード表示灯50、手動モード表示灯52、閉止弁閉表示灯54及び2桁表示のカウントダウン表示器60を接続している。
【0110】
制御盤10の金属筐体に設けたグランド端子G1及び操作箱12の金属筐体に設けたグランド端子G2は、グランド接続によりグランド線として機能する電線管35に接続しており、電線管35をグランド線として使用することで、制御盤10と操作箱12のグランド電位を同電位としている。
【0111】
また制御盤10に地絡検出部36を設けて電線管35に接続しており、地絡検出部36はグランド線Gとして機能する電線管35の電位を監視し、所定の電圧範囲を超えた場合又は下がった場合に地絡を検出して制御部100から障害警報を出力させる。
【0112】
(パラレル伝送系)
制御盤10と操作箱12との間のパラレル伝送系は、パラレル伝送線KP1,KP2とパラレル伝送コモン線KPCを介して接続したパラレル送信部75とパラレル受信部72で構成する。
【0113】
パラレル受信部72は例えばパラレル伝送線KP1,KP2の各々とパラレル伝送コモン線KPCの間に所定の回線電圧を印加するプルアップ回路であり、また、パラレル送信部75は起動スイッチ26及び非常停止スイッチ28をパラレル伝送線KP1,KP2の各々とパラレル伝送コモン線KPCの間に接続する例えば信号ラインであり、起動スイッチ26又は非常停止スイッチ28をオン操作すると、回線電圧が印加されたパラレル伝送線KP1又はKP2からパラレル伝送コモン線KPCに回線電流が流れ、パラレル受信部72の受信電圧が低下し、これを制御部100で検知してパラレル伝送系による起動信号又は非常停止信号の受信を検知する。
【0114】
(シリアル伝送系)
制御盤10と操作箱12との間のシリアル伝送系は、シリアル伝送線Sとシリアル伝送コモン線SCを介して接続したシリアル送受信部70,74で構成する。
【0115】
図8図7の制御盤と操作箱に設けたシリアル送受信部の機能構成を示したブロック図である。
【0116】
図8に示すように、制御盤10に設けたシリアル送受信部70は、伝送制御部78、電圧送信部80及び電流受信部82を備え、また、操作箱12に設けたシリアル送受信部74は、伝送制御部84、電圧受信部86及び電流送信部88を備え、この点は図6の場合と基本的に同じになるが、両者の間を、電源線を兼ねたシリアル伝送線Sと、電源コモン線を兼ねたシリアル伝送コモン線SCで結線している点で相違する。
【0117】
このように制御盤10から操作盤12にシリアル伝送系を利用して電源を供給するため、制御盤10側のシリアル送受信部70に設けた電圧送信部80は、図2に示した電源部108から操作箱12側へ供給する電源電圧+Vcの印加を受け、この電源電圧+Vcを電源線を兼ねたシリアル伝送線Sと電源コモン線を兼ねたシリアル伝送コモン線SCにより操作箱12に電源として供給している。
【0118】
また、伝送制御部78を介して入力するデジタル表示信号について電圧送信部80は、電源電圧+Vcをビット0に対応した基底レベルとし、ビット1に対応して電源電圧+Vcより所定値高い電圧を印加することで生成した電圧パルスを送信する。これにより操作箱12側はデジタル表示信号のシリアル中においても常に安定した電源供給を制御盤10側から受けることができる。
【0119】
また、操作箱12側のシリアル送受信部74には、電圧受信部86の出力電圧から操作箱12側の電源電圧+Vcを生成する電源部90を設けている。電源部90は定電流機能を備え、電源部90から操作箱負荷に供給する電源電流を一定に保つようにしている。このような電源部90の定電流機能により、制御部10側のシリアル送受信部70から操作箱側のシリアル送受信部74にシリアル伝送線Sとシリアル伝送コモン線SCを介して流れる定常状態での消費電流(負荷電流)を略一定となるようにしている。
【0120】
このため操作箱12側のシリアル送受信部74に設けた電流送信部88は、伝送制御部84を介して入力するデジタル制御信号を電流信号に変換して送信する場合、定常的に流れている一定の消費電流をビット0に対応した基底電流とし、ビット1に対応して所定値だけ電流を増加させることで生成した電流パルスを送信する。
【0121】
また、操作箱12の消費電流は常に一定とは限らず、動作状態により消費電流が変化する。このため電源部90に定電流機能を設けていた場合、表示動作等により消費電流が定電流値を超えると電源電圧がドロップする場合がある。これを解消するため電源部90に設けた定電流回路部の出力側に容量の大きなコンデンサを設け、消費電流の一時的な増加に対する電圧ドロップを抑えるようにしている。
【0122】
(多重伝送に基づく制御)
図7に示した制御盤10の制御部100は、必要に応じて所定の操作により確実性モードを初期設定していた場合、シリアル伝送系及びパラレル伝送系の両方、即ちシリアル送受信部70とパラレル受信部72の両方から操作箱12に設けた起動スイッチ26の操作に基づく起動信号を受信した場合にカウントダウンを開始し、カウントダウン終了でガス放出条件の成立と判定して図2に示した起動装置18に放出起動信号を出力する制御を行い、これにより開放動作した起動装置18から二酸化炭素等の開放ガスを図1に示した選択弁17に供給して駆動すると共に消火ガス貯蔵容器16の栓を開け、噴射ヘッド14から消火ガスを放出させる。
【0123】
また、制御盤10の制御部100は、確実性モードの設定状態で、ガス放出条件を判断してカウントダウン中に、シリアル伝送系及びパラレル伝送系の両方、即ちシリアル送受信部70とパラレル受信部72の両方から操作箱12に設けた非常停止スイッチ28の操作に基づく非常停止信号を受信した場合にカウントダウンを中断して解除する制御を行い、消火ガスの放出制御を停止させる。
【0124】
また、図7に示した制御盤10の制御部100は、必要に応じて所定の操作により信頼性モードを初期設定していた場合、シリアル伝送系又はパラレル伝送系の何れか一方、即ちシリアル送受信部70又はパラレル受信部72の何れか一方から操作箱12に設けた起動スイッチ26の操作に基づく起動信号を受信した場合にカウントダウンを開始し、カウントダウン終了でガス放出条件の成立と判定して図2に示した起動装置18に放出起動信号を出力する制御を行い、これにより開放動作した起動装置18から二酸化炭素等の開放ガスを図1に示した選択弁17に供給して駆動すると共に消火ガス貯蔵容器16の栓を開け、噴射ヘッド14から消火ガスを放出させる。
【0125】
また、図7に示した制御盤10の制御部100は、信頼性モードを設定した状態で、ガス放出条件を判断してカウントダウン中に、シリアル伝送系又はパラレル伝送系の何れか一方、即ちシリアル送受信部70又はパラレル受信部72の何れか一方から操作箱12に設けた非常停止スイッチ28の操作に基づく非常停止信号を受信した場合に、カウントダウンを中断して解除する制御を行い、消火ガスの放出制御を停止させる。
【0126】
制御部100に対する信頼性モードの設定は例えばノイズによりシリアル伝送系の障害が懸念される場合に設定する。また制御部100に対する確実性モードの設定はシリアル伝送系の安定した動作が可能な場合に設定する。また、信頼性モードと確実性モードの設定は、制御盤10に接続している複数の操作箱12毎に異なった設定とすることも可能である。
【0127】
なお、図7に示した操作箱12にはカウントダウン表示器60を設けているが、制御盤10から操作箱12へ電源線を兼ねたシリアル伝送線Sと電源コモン線を兼ねたシリアル伝送コモン線SCによる電源供給電力は電源部90による制約を受けることから、消費電力を低減するために、カウントダウン表示器60として残像機能を備えた7セグメント表示器を使用することが望ましい。
【0128】
(既存設備のリニューアル)
図7に示した制御盤10と操作箱12の間を6本の信号線及び電線管で結線して起動信号と非常停止信号を多重伝送する構成は、図9に示した制御盤10と操作箱12の間を6本の信号線で結線している古い設備をリニューアルするための改修する場合、図9に示した古い設備に設置している制御盤10と操作箱12を撤去し、その間を結線していた6本の信号線はそのまま電線管に通したまま残し、図7の実施形態に示した制御盤10と操作箱12を新たに設置し、既設の6本の信号線と電線管により図7に示すように結線する改修工事を行う。
【0129】
このように古くなった既存のガス消火設備の電線管に通して制御盤と操作箱の間を結線している6本の既設信号線及び電線管を使用して、シリアル伝送系とパラレル伝送系により起動信号及び非常停止信号を多重伝送して制御する機能拡張を図った制御盤と操作箱に入れ替える改修工事が可能となり、既設信号線では本数が不足するという改修工事のネックを解消し、古くなった設備のリニューアルを簡単且つ容易に押し進めることができる。
【0130】
[本発明の変形例]
(新設設備)
上記の実施形態は、6本の既設信号線を利用して既設の制御盤と操作箱を本実施形態の機能を拡張した制御盤と操作箱に入れ替えるリニューアルのための改修工事を例にとっているが、新設するガス系消火設備についても同じ構成をそのまま適用することができ、この場合には、制御盤と操作箱とを結線する信号線の本数が6本となり、図10及び図11に示した同等の機能を備えたガス系消火設備に対し信号線数を大幅に低減して設備工事が簡単となり、コスト低減を可能とする。
【0131】
(その他)
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0132】
10:制御盤
11:火災感知器
12:操作箱
13:スピーカ
14:噴射ヘッド
15:放出表示灯
16:消火ガス貯蔵容器
17:選択弁
18:起動装置
21:圧力スイッチ
23:閉止弁
24通話回路部
25,32:電話ジャック
26:起動スイッチ
28:非常停止スイッチ
30:電源灯
35:電線管
36:地絡検出部
38:扉開検知スイッチ
40:自動モード設定スイッチ
42:手動モード設定スイッチ
44:ランプテストスイッチ
46:放出起動灯
48:火災灯
50:自動モード表示灯
52:手動モード表示灯
54:閉止弁閉表示灯
60:カウントダウン表示器
70,74:シリアル送受信部
72:パラレル受信部
75:パラレル送信部
76:表示回路部
78,84:伝送制御部
80:電圧送信部
82:電流受信部
86:電圧受信部
88:電流送信部
90:電源部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11