特許第6443923号(P6443923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443923
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】水噴霧ヘッド
(51)【国際特許分類】
   A62C 31/02 20060101AFI20181217BHJP
   A62C 3/00 20060101ALI20181217BHJP
   B05B 3/18 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   A62C31/02
   A62C3/00 J
   B05B3/18
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-13946(P2015-13946)
(22)【出願日】2015年1月28日
(65)【公開番号】特開2016-137098(P2016-137098A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−042293(JP,A)
【文献】 特開2000−051383(JP,A)
【文献】 特開平07−222820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 31/02
A62C 35/68
B05B 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災時に消火用水放水対象空間に放水する水噴霧ヘッドに於いて、
ヘッド本体のノズル取付部に装着し、前方にホルダ開口を形成すると共に内部にシリンダ穴を形成したノズルホルダと、
前記ノズルホルダのシリンダ穴に摺動自在に設け、前記ヘッド本体から消火用水の供給がない場合にリターンスプリングにより前記ノズルホルダ内の初期位置に保持し、前記ヘッド本体から消火用水の供給を受けた場合に前記リターンスプリングに抗して前進して前記ホルダ開口から先端を前方に突出するノズルと、
前記ノズルの初期位置で前記ノズルホルダのホルダ開口を閉鎖し、前記ヘッド本体から消火用水を受けた前記ノズルの前進により前記ホルダ開口を押し開いて前記ノズルの突出を許容するホルダ開口開閉機構と、
備え、
前記ノズルホルダのシリンダ穴の軸方向にガイド溝を形成すると共に、前記ノズルの外周に前記ガイド溝に嵌合して軸回りの動きを規制するガイド突起を設けたことを特徴とする水噴霧ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時に消火用水をトンネル内の散水対象空間に散水する水噴霧ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車専用道路等のトンネルには、トンネル内で発生する火災事故から人身及び車両を守るため、非常用設備が設置されている。このような非常用設備としては、火災の監視と通報のため火災検知器や非常電話が設けられ、また火災の消火や延焼防止のために消火栓装置が設けられ、更にトンネル躯体を火災から防護するために水噴霧ヘッドから加圧消火用水を散水させる水噴霧設備が設けられる。
【0003】
水噴霧設備は50メートル間隔の散水区画単位に1台の自動弁装置が設置され、5メートル間隔に配置した複数の水噴霧ヘッドに対し自動弁装置から加圧消火用水を供給して一斉に散水させる。
【0004】
水噴霧ヘッドは、トンネルの様な大きな散水対象空間に対し均等に散水するため、ヘッド本体に対し散水距離及び散水パターンの異なる複数のノズル、例えば超遠投ノズル、遠投ノズル及び近投ノズルを配置し、これらのノズルの散水パターンの組合せにより、トンネル内の散水対象空間に対し消火用水を略均一に散水するようにしている。
【0005】
10は従来の水噴霧ヘッドの一例を示した説明図である。図10に示すように、水噴霧ヘッドは、ヘッド本体100の下部に配管接続口101を形成し、ヘッド本体100の下部には斜め下向きに近投ノズル102を取り付け、その上には斜め上向きに遠投ノズル104を取り付け、更に、上部に横向きに超遠投ノズル106を取り付けている。
【0006】
近投ノズル102、遠投ノズル104及び超遠投ノズル106の先端には想像線で示すようにキャップ108a,108b,108cを装着ししてノズル開口に対する汚れの付着を防止しており、また、近投ノズル102、遠投ノズル104及び超遠投ノズル106はバンド部110a,110b,110cを介してヘッド本体100側に脱落しないように固定している。
【0007】
このように近投ノズル102、遠投ノズル104及び超遠投ノズル106の先端に装着したキャップ108a,108b,108cは、ヘッド本体100に消火用水を供給した場合の各ヘッドからの散水により外れ開き、バンド部110a,110b,110cにより飛ばされずにヘッド本体100側に残っており、放水を停止した後に、高所作業により外れたキャップ108a,108b,108cを近投ノズル102、遠投ノズル104及び超遠投ノズル106に嵌め戻すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−355324号公報
【特許文献2】特開2012−105853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このようなノズル先端にキャップを設けてバンド部により脱落しないようにした水噴霧ヘッドにあっては、放水を停止した場合に、放水により外れたキャップを高所作業によりノズルに嵌め戻す作業を必要とし、この作業は、トンネル内の通行車両に対し車線規制を行った状態で、高所作業車を使用してキャップを嵌め戻す作業を必要とし、トンネル交通量を制約すると共に復旧作業に手間と時間がかかる問題がある。
【0010】
本発明は、放水停止に伴うキャップ嵌め戻し等の復旧作業を必要とすることなくノズル開口を閉鎖して汚れの付着を防止可能とする水噴霧ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(水噴霧ヘッド)
本発明は、火災時に消火用水をトンネル内の放水対象空間に放水する水噴霧ヘッドに於いて、
ヘッド本体のノズル取付部に装着し、前方にホルダ開口を形成すると共に内部にシリンダ穴を形成したノズルホルダと、
ノズルホルダのシリンダ穴に摺動自在に設け、ヘッド本体から消火用水の供給がない場合にリターンスプリングによりノズルホルダ内の初期位置に保持し、ヘッド本体から消火用水の供給を受けた場合に前記リターンスプリングに抗して前進してホルダ開口から先端を前方に突出するノズルと、
ノズルの初期位置でノズルホルダのホルダ開口を閉鎖し、ヘッド本体から消火用水を受けたノズルの前進によりホルダ開口を押し開いてノズルの突出を許容するホルダ開口開閉機構と、
を設けたことを特徴とする。
【0012】
(カバープレートを設けたホルダ開口開閉機構)
ホルダ開口開閉機構は、
ホルダ開口の端面にピン部材により開閉自在に設けたカバープレートと、
カバープレートを、前記ホルダ開口を閉鎖する方向に付勢するスプリングと、
を備える。
【0013】
(カバープレートの球状凹陥部)
カバープレートは、ノズル開口の開口穴に相対した位置に、内側に屈曲してノズル開口の開口穴に嵌合する球状凹陥部を設ける。
【0014】
(ゴムベロを設けたホルダ開口開閉機構)
ホルダ開口開閉機構は、ホルダ開口の端面に中心から外周方向に放射状の切込みを入れたゴムベロを設ける。
【0015】
(放水圧力によるノズル前進移動量)
ノズルは、初期位置でノズル先端をカバープレート又はゴムベロから所定間隔だけ後退した離れた位置に保持し、ヘッド本体から所定の放水圧力の供給を受けた場合に、ノズルからの放水を妨げない位置に前進してカバープレート又はゴムベロを開くようにノズルの前進移動量を設定する。
【0016】
(予告放水)
ヘッド本体から放水圧力より低い所定の予告放水圧力の供給を受けた場合に、ノズルを前進位置以外の位置に保持したまま予告放水圧力によりカバープレート又はゴムベロを開いて予告放水するように設定する。
【0017】
(ノズル回り止め)
ノズルホルダのシリンダ穴の軸方向にガイド溝を形成すると共に、ノズルの外周にガイド溝に嵌合して軸回りの動きを規制するガイド突起を設ける。
【0018】
(複数ノズル)
ヘッド本体に複数のノズル取付部を設けると共に、複数のノズル取付部に、放水距離の異なるノズルを摺動自在に収納すると共にホルダ開口開閉機構を備えたノズルホルダを装着する。
【0019】
(ノズルの種類)
ヘッド本体に装着した複数のノズルホルダに、近投ノズル、遠投ノズル及び超遠投ノズルを摺動自在に収納する。
【発明の効果】
【0020】
(基本的な効果)
本発明は、火災時に消火用水をトンネル内の放水対象空間に放水する水噴霧ヘッドに於いて、ヘッド本体のノズル取付部に装着し、前方にホルダ開口を形成すると共に内部にシリンダ穴を形成したノズルホルダと、ノズルホルダのシリンダ穴に摺動自在に設け、ヘッド本体から消火用水の供給がない場合にリターンスプリングによりノズルホルダ内の初期位置に保持し、ヘッド本体から消火用水の供給を受けた場合にリターンスプリングに抗して前進してホルダ開口から先端を前方に突出するノズルと、ノズルの初期位置でノズルホルダのホルダ開口を閉鎖し、ヘッド本体から消火用水を受けたノズルの前進によりホルダ開口を押し開いてノズルの突出を許容するホルダ開口開閉機構とを設けるようにしたため、放水を開始するとノズルホルダ内に収納しているノズルが押し出され、ホルダ開口を押し開いて突出して散水を開始し、その後、消火用水の供給を停止するとノズルがノズルホルダ内に戻ってホルダ開口を閉鎖し、従来のように散水で外れたキャップを嵌め戻すような復旧作業が不要となり、復旧作業に伴うトンネル内の通行規制も必要なくなる。
【0021】
また、ウォータハンマによる高圧が瞬時的に加わった場合、リターンスプリングを圧縮してノズルがストロークすることで、ノズル内の容積を増大し、ウォータハンマにより加わる圧力を抑制し、ノズル構成部品等の破損を防止可能とする。
【0022】
(カバープレートを設けたホルダ開口開閉機構による効果)
また、ホルダ開口開閉機構は、ホルダ開口の端面にピン部材により開閉自在に設けたカバープレートと、カバープレートを、前記ホルダ開口を閉鎖する方向に付勢するスプリングとを備えるようにしたため、カバープレートの閉鎖状態ではノズルホルダに収納したノズルの汚れを確実に防止し、消火用水を供給するとノズルの前進移動で確実にカバープレートを押し開いて散水を開始し、消火用水の供給を停止するとノズルのノズルホルダ内への後退によりカバープレートを自動的に閉じて自動復旧することを可能とする。
【0023】
(カバープレートの球状凹陥部による効果)
また、カバープレートは、ノズル開口の開口穴に相対した位置に、内側に屈曲してノズル開口の開口穴に嵌着する球状凹陥部を設けるようにしたため、ノズル開口にカバープレートに形成した球状凹陥部が嵌り込んで、ノズル開口を確実に閉鎖可能とし、また、消火用水の供給によるノズルの前進に対しノズル先端でカバープレートの球状凹陥部を押すことで、フラットとしたカバープレートに比べ、ノズルの前進に対するカバープレートの開方向への回動量を大きくでき、カバープレートをノズルからの散水を妨げることのない位置に確実に開くことを可能とする。
【0024】
(ゴムベロを設けたホルダ開口開閉機構による効果)
また、ホルダ開口開閉機構は、ホルダ開口の端面に中心から外周方向に放射状の切込みを入れたゴムベロを設けるようにしたため、ゴムベロの閉鎖状態ではノズルホルダに収納したノズルの汚れを確実に防止し、消火用水を供給するとノズルの前進移動で確実にゴムベロを押し開いて散水を開始し、消火用水の供給を停止するとノズルのノズルホルダ内への後退によりゴムベロを自動的に閉じて自動復旧することを可能とする。
【0025】
(放水圧力によるノズル前進移動量の効果)
また、ノズルは、初期位置でノズル先端をカバープレート又はゴムベロから所定間隔だけ後退して離れた位置に保持し、ヘッド本体から所定の放水圧力の供給を受けた場合に、ノズルからの放水を妨げない位置に前進してカバープレート又はゴムベロを開くようにノズルの前進移動量を設定するようにしたため、ホルダ開口部をカバープレート又はゴムベロで閉鎖したノズルホルダ内にノズルを収納していても、所定の放水圧力による消火用水が供給されると、ノズルの前進によりカバープレート又はゴムベロは散水を妨げることない位置に開き、ノズルから放水圧力に見合った散水を確実に行うことを可能とする。
【0026】
(予告放水圧力によるノズル前進移動量の効果)
また、ヘッド本体から放水圧力より低い所定の予告放水圧力の供給を受けた場合に、ノズルを前進位置以外の位置に保持したまま予告放水圧力によりカバープレート又はゴムベロを開いて予告放水するように設定するようにしため、圧力の低い予告放水のための消火用水の供給に対しノズルホルダは初期位置に保持されて殆ど動くことがなく、予告放水圧力となる消火用水によりカバープレート又はゴムベロを少し開き、カバープレート又はゴムベロの開き具合で限られた量の消火用水を放水対象空間に散水し、トンネル内の視界を妨げることのなく本格放水の開始を予告する予告放水を可能とする。
【0027】
(ノズル回り止めの効果)
また、ノズルホルダのシリンダ穴の軸方向にガイド溝を形成すると共に、ノズルの外周にガイド溝に嵌合して軸回りの動きを規制するガイド突起を設けるようにしたため、ノズルによっては軸回りの散水に方向性をもたせている場合があり、このように方向性をもつノズルにつき、消火用水の供給によりノズルを回転することなくノズルホルダからカバープレートを押し開いて突出することで方向性をもつ散水を可能とする。
【0028】
(複数ノズルによる効果)
また、ヘッド本体に複数のノズル取付部を設けると共に、複数のノズル取付部に、放水距離の異なるノズルを摺動自在に収納すると共にホルダ開口開閉機構を備えたノズルホルダを装着し、ヘッド本体に装着した複数のノズルホルダに、近投ノズル、遠投ノズル及び超遠投ノズルを摺動自在に収納するようにしたため、ヘッド本体に設けている複数のノズルにつき、消火用水の供給によりノズルホルダ内に収納しているノズルを押し出して、ホルダ開口を押し開いて突出することにより散水を開始し、その後、消火用水の供給を停止するとノズルがノズルホルダ内に戻ってホルダ開口を自動的に閉鎖し、従来のように散水で外れたキャップを嵌め戻す復旧作業が不要となり、復旧作業に伴うトンネル内の通行規制も必要なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】トンネル水噴霧設備の設置状態をトンネル断面で示した説明図
図2】本発明による水噴霧ヘッドの実施形態を示した説明図
図3】近投ノズルユニットの構造を示した断面図
図4】消火用水を供給した場合の近投ヘッドユニットの散水動作を示した説明図
図5】近投ノズルユニットの予告放水による動作を示した説明図
図6】ノズルの回転を規制する遠投ノズルユニットの構造を示した説明図
図7】カバープレートとしてゴムベロを設けた近投ノズルユニットの他の実施形態を示した断面図
図8図7の近投ノズルユニットの予告放水による動作を示した説明図
図9】消火用水を供給した場合の図7の近投ノズルユニットの散水動作を示した説明図
図10】従来の水噴霧ヘッドの一例を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
[トンネル水噴霧設備の概要]
図1はトンネル水噴霧設備の設置状態をトンネル断面で示した説明図である。図1に示すように、トンネル壁面10の上部に対してはコンクリート躯体内を通して水噴霧配管16を立ち上げており、トンネル壁面10から突出した部分に水噴霧ヘッド18を設けている。
【0031】
水噴霧配管16は給水本管12に分岐接続しており、途中に自動弁装置14を設けている。自動弁装置14はトンネル内の火災時に遠隔制御により開制御され、給水本管12に消火ポンプから加圧給水された消火用水を、水噴霧配管16を通して水噴霧ヘッド18に供給し、水噴霧ヘッド18からトンネル路面11及びトンネル壁面10を含む放水対象空間に消火用水を放水して、トンネル躯体の防護及び火災の抑制を行う。
【0032】
[水噴霧ヘッドの構成]
(水噴霧ヘッドの概要)
図2は本発明による水噴霧ヘッドの実施形態を示した説明図である。図2に示すように、本実施形態の水噴霧ヘッド18は、ヘッド本体20を有し、ヘッド本体20の下部に配管接続口21を形成し、ヘッド本体20の下部には斜め下向きに近投ノズル取付部22aを生成し、そこに近投ノズルユニット24を取り付けている。また、ヘッド本体20の下部には斜め上向きに遠投ノズル取付部22bを形成し、そこに遠投ノズルユニット25を取り付けている。更に、ヘッド本体20の上部に横向きに超遠投ノズル取付部22cを形成し、そこに超遠投ノズルユニット26を取り付けている。
【0033】
近投ノズルユニット24、遠投ノズルユニット25及び超遠投ノズルユニット26は、それぞれの開口側に開閉自在なカバープレート46を設け、ノズルユニットの開口側を閉鎖している。
【0034】
(近投ノズルユニットの構成)
図3は近投ヘッドユニットの構造を示した断面図であり、図3(A)に軸方向の断面を示し、図3(B)に開口側の端面を示す。
【0035】
図3に示すように、近投ノズルユニット24は、ヘッド本体の近投ノズル取付部22aにねじ込み固定しており、取付ホルダ28、ノズルホルダ30、リターンスプリング35、近投ノズル38、シールリング42、カバープレート46を備えたホルダ開口開閉機構44で構成している。
【0036】
取付ホルダ28は左側の取付けねじ部により近投ノズル取付部22aにねじ込み固定して内部に流入路を形成し、右側にノズルホルダ30をねじ込み固定している。
【0037】
ノズルホルダ30は内部にシリンダ穴32を形成し、シリンダ穴32内に近投ノズル38を摺動自在に収納している。シリンダ穴32の右側の環状溝にはシールリング42を配置し、シールリング42に近投ノズル38を通してシリンダ穴32側をシールしている。また、近投ノズル38の左側端部には鍔部40を一体に形成し、鍔部40とシリンダ穴32の右側端部との間にリターンスプリング35を配置し、近投ノズル38を左側に付勢し、近投ノズル38をノズル先端がカバープレート46から所定間隔離れて後退した位置となる図示の初期位置に保持している。
【0038】
ノズルホルダ30の右側のホルダ開口面36にはホルダ開口34を形成し、ホルダ開口34を通して近投ノズル38を前方に移動可能としている。ホルダ開口面36には、ホルダ開口開閉機構44として、端面にビス54で円弧状の固定プレート52を固定し、固定プレート52に固定ピン48によりカバープレート46を回動自在に設けている。また固定ピン48にはコイルスプリング50を設けており、スプリング端50aをカバープレート46の外側に当接し、反対側のスプリング端50bを固定プレート52側に当接しており、これによりカバープレート46を閉鎖方向に付勢している。
【0039】
カバープレート46は円盤状の板部材であるが、ノズル開口38aに相対した中央部分を内側に球状に押し込んだ球状凹陥部46aを形成しており、球状凹陥部46aに合せてノズル開口38aを球状に刳り貫き、ノズル開口38aに球状凹陥部46aが入るようにしてカバープレート46でホルダ開口34を閉鎖している。
【0040】
(近投ノズルユニットの散水動作)
図4は消火用水を供給した場合の近投ノズルユニットの散水動作を示した説明図である。
【0041】
近投ノズルユニット24は、消火用水の供給のない通常状態では、図3(A)に示すように、リターンスプリング35の力により近投ノズル38をノズルホルダ30内に収納した初期位置に保持しており、このときカバープレート46はコイルスプリング50の力によりホルダ開口34及びノズル開口38aを閉鎖する位置に閉じており、内部に収納した近投ノズル38のノズル開口38aの汚れを防いでいる。
【0042】
トンネル内での車両事故により火災が発生した場合、監視センタからの制御による消火ポンプの起動及び自動弁装置の自動弁開制御によりヘッド本体に所定の放水圧力となる消火用水が供給される。この消火用水の供給を受けた近投ノズルユニット24は、シリンダ穴32に消火用水が流入することで、近投ノズル38が水圧による力を受け、図4に示すように、リターンスプリング35を圧縮しながら右方向(前方)に移動し、近投ノズル38はカバープレート46を押し開きながら前進してホルダ開口34から突出し、この状態でノズル開口38aからトンネル内の放水対象空間に消火用水を散水する。
【0043】
また、カバープレート46は近投ノズル38を通った消火用水が直接当たって開放方向に動き、これと近投ノズル38の前進移動とにより図4の開放した散水状態となる。
【0044】
このとき開放したカバープレート46は、前進した近投ノズル38の外周面に球状凹陥部46aが当たって開かれた状態となり、近投ノズル38のノズル開口38aからの散水を妨げることのない大きく開いた位置に開放保持する。
【0045】
また、カバープレート46に球状凹陥部46aを設けたことで、ノズル先端で球状凹陥部46aを押し開くこととなり、近投ノズル38の前進移動に対しカバープレート46を開き度合を大きくすることができる。
【0046】
また、水噴霧ヘッドからの放水には、予告放水と本格放水があり、本格放水圧力に対し予告放水圧力は、放水量を抑えるためにそれより低い放水圧力としている。図4の近投ノズルユニット24の放水動作は、本格放水のための所定の放水圧力の消火用水を供給した場合であり、この場合、近投ノズル38からの放水を妨げない位置にカバープレート46を開く近投ノズル38の所定の前進移動量Lとなるように、シリンダ穴32の長さ、近投ノズル38の受圧面積、リターンスプリング35のスプリング荷重等を設定している。
【0047】
また、図1に示した水噴霧設備にあっては、自動弁装置14を開制御した場合、自動弁装置14の1次側に接続している水噴霧配管16に空気が残っていること等に起因して、自動弁装置14に設けた主弁の急激な開放によってウォーターハンマーとして知られた水撃作用を発生する場合があり、トンネル側壁天井となる高い位置に設置している水噴霧ヘッド18に設けているノズルが破損する場合がある。
【0048】
本実施形態の近投ノズルユニット24は、ウォータハンマによる高圧が瞬時的に加わった場合、リターンスプリング35を圧縮して近投ノズル38がストロークすることで、近投ノズル38内の容積を増大し、これによりウォータハンマにより加わる圧力上昇を抑制してノズル構成部品等の破損を防止可能とする。
【0049】
(近投ノズルユニットの予告放水動作)
図5は近投ノズルユニットの予告放水による動作を示した説明図である。予告放水は、本格放水に先立って少ない量の放水を行ってトンネル内を通行している車両の運転者に本格放水の開始を予告するものであり、本格放水の放水圧力に対しそれより低い圧力で消火用水を供給する。
【0050】
このように水噴霧ヘッドに予告放水のための消火用水の供給が行われた場合、近投ノズル38はリターンスプリング35の力により初期位置に保持されており、また、近投ノズル38が動いたとしてもカバープレート46に当ることのない僅かな動きであり、カバープレート46が消火用水の圧力を受けて僅かに開いた半開き状態となり、トンネル内の視界を妨げることなく僅かな量の散水により本格放水の開始を予告する予告放水を可能とする。
【0051】
(方向性をもつノズルの実施形態)
図6はノズルの回転を規制する遠投ノズルユニットの構造を示した説明図であり、図6(A)に軸方向の断面を示し、図6(B)に放水側の端面を示す。
【0052】
図6に示す遠投ノズルユニット25のノズルホルダ30内に収納している遠投ノズル70は、ノズル側方にノズル開口72を形成しており、消火用水を供給した場合の遠投ノズル70の前進移動に対し、軸回りに動かないように散水方向を所定の方向に規制する必要がある。
【0053】
そこで、遠投ノズルユニット25は、ノズルホルダ30に設けたシリンダ穴32の軸方向にガイド溝60を形成し、これに対応して遠投ノズル70の左側の鍔部40ガイド突起62を形成して、ガイド溝60に摺動自在に嵌合している。また遠投ノズル70の先端にはカバープレート46の球状凹陥部46aが入る球状凹部74を形成している。それ以外の構造は図3の実施形態と同じであることから、同一符号を付して説明は省略する。
【0054】
遠投ノズルユニット25は、消火用水の供給を受けると、ノズルホルダ30のシリンダ穴32に沿って遠投ノズル70が前進移動してノズル先端によりカバープレート46を押し開いて突出することで散水するが、このときガイド溝60に沿って遠投ノズル70のガイド突起62が移動することで、遠投ノズル70の軸回りの回転を規制し、遠投ノズル70の方向性を確保した散水を可能とする。
【0055】
(超遠投ノズルユニット)
図3乃至図5は近投ヘッドユニット24を例にとり、また図6は遠投ノズルユニット25を例にとっているが、図2に示した超遠投ノズルユニット26は、ノズルホルダに収納する超遠投ノズルが各々固有の構造をとる点で相違し、超遠投ノズルに方向性がない場合は図3乃至図5に示した近投ノズルユニット24の場合とノズル構造を除き基本的に同じになり、また、超遠投ノズルに方向性がある場合は、図6に示した遠投ノズルユニット25の場合とノズル構造を除いて基本的に同じになる。
【0056】
[ノズルユニットの他の実施形態]
図7は近投ノズルユニットの他の実施形態を示した断面図であり、図7(A)に軸方向の断面(図7(B)のA−A断面)を示し、図7(B)に開口側の端面を示す。
【0057】
図7に示すように、近投ノズルユニット24は、ヘッド本体の近投ノズル取付部22aにねじ込み固定しており、取付ホルダ28、ノズルホルダ30、リターンスプリング35、近投ノズル38及びシールリング42で構成しており、この点は図3の実施形態と同じになることから、同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
本実施形態は、ホルダ開口開閉機構44としてゴムベロ80を設けたことを特徴とする。ゴムベロ80は円形のゴムプレートであり、中心から外周方向に放射状に複数本の切込82を入れており、ノズルホルダ30の開口端にリングプレート84により挟み込むようにビス86で取付け固定している。
【0059】
図8図7の近投ノズルユニットによる予告放水を示した説明図である。水噴霧ヘッドに予告放水のための消火用水の供給が行われた場合、図8に示すように、近投ノズル38はリターンスプリング35の力により初期位置に保持されており、また、近投ノズル38が動いたとしてもゴムベロ80に当ることのない僅かな動きであり、ゴムベロ80が消火用水の圧力を受けて切込82の入った部分を僅かに押し開いた半開き状態となり、トンネル内の視界を妨げることなく僅かな量の散水により本格放水の開始を予告する予告放水を可能とする。
【0060】
図9図7の近投ノズルユニットに消火用水を供給した場合の散水動作を示した説明図である。トンネル内での火災発生に伴い消火ポンプによりヘッド本体に本格放水のための所定の放水圧力となる消火用水が供給されと、近投ノズル38が水圧による力を受けてリターンスプリング35を圧縮しながら右方向(前方)に移動し、近投ノズル38はゴムベロ80を押し開きながら前進してホルダ開口34から突出し、ノズル開口38aからトンネル内の放水対象空間に消火用水を散水する本格放水を行う。
【0061】
このようにカバープレートしてゴムベロを設けた近投ノズルユニット24のホルダ開口開閉機構は、図2に示した遠投ノズルユニット25及び超遠投ノズルユニット26について同様に適用できる。
【0062】
[本発明の変形例]
上記の実施形態は、トンネル水噴霧設備に使用する水噴霧ヘッドを例にとるものであったが、それ以外の用途に使用するノズル開口を閉鎖する必要のある水噴霧ヘッドについて、同様に適用できる。
【0063】
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0064】
10:トンネル壁面
18:水噴霧ヘッド
20:ヘッド本体
24:近投ノズルユニット
25:遠投ノズルユニット
26:超遠投ノズルユニット
28:取付ホルダ
30:ノズルホルダ
32:シリンダ穴
34:ホルダ開口
35:リターンスプリング
36:ホルダ開口面
38:近投ノズル
40:鍔部
42:シールリング
44:ホルダ開口開閉機構
46:カバープレート
48:固定ピン
50:コイルスプリング
52:固定プレート
60:ガイド溝
62:ガイド突起
70:遠投ノズル
80:ゴムベロ
82:切込
84:リングプレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10