(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラスは脆性材料であることから、機械的信頼性に関する性能には、実際の限界および認識されている限界があり、フレキシブルガラス構造体が代替技術として選択されることを促すためには、この限界を克服し、それを実証しなければならない。フレキシブルガラス基板は可撓性ポリマー技術と比較して幾つかの技術的利点を有する。技術的利点の1つは、ガラスは、屋外で使用される電子機器の主要な劣化機構に関与する水分または気体に対するバリアとして作用する能力を有することにある。第2の利点は、1つまたは複数のパッケージ基板層を減らすかまたは除くことによる、パッケージ全体の小型化(厚み)および軽量化が図れる可能性にある。他の利点は、ガラスに付随する表面品質が極めて優れており、汚れが容易に除けることにある。したがって、ガラスに付随する機械的信頼性に伴う性能の実際の限界および認識されている限界を克服することができれば、フレキシブルガラス構造体の使用を発展させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
素フレキシブルガラスの機械的信頼性を改善するための1つの技法が、フレキシブルガラス基板に1つまたは複数のポリマーの薄膜をラミネートすることである。機械的強度要件および予想される曲げ応力および最終用途の方向性に応じて、本明細書に開示する概念に従い、フレキシブルガラス−ポリマーラミネート基板を様々な形状および機械的要件に適合するように設計することができる。特に、所望の非平坦構造を有するフレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体を形成することができる。
【0006】
以下の詳細な説明にさらなる特徴および利点を記載するが、その一部は、記載内容から当業者に容易に理解され、あるいは発明の詳細な説明および添付の図面に例示する本発明を実施することによって認識されるであろう。前述の一般的な説明および後述の詳細な説明はいずれも本発明の単なる例示であって、特許請求される本発明の性質および特徴を理解するための概要または構成を提供することを企図するものであることを理解すべきである。
【0007】
添付の図面は、本発明の原理をより深く理解するために含まれるものであり、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は1つまたは複数の実施形態を例示しており、記載内容と一緒になって一例を挙げることによって、本発明の原理および作用を説明する役割を果たす。本明細書および図面に開示されている本発明の様々な特徴は任意のあらゆる組合せで用いることができることを理解すべきである。非限定的な例として、本発明の様々な特徴を以下に示す態様に従い互いに組み合わせることができる。
【0008】
第1の態様によれば、フレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体の成形方法において:
ポリマー層を、20℃を超え、かつポリマー層に隣接するフレキシブルガラス基板の作業温度よりも低い高温に加熱するステップであって、フレキシブルガラス基板の厚みは約0.3mm以下である、ステップと;
フレキシブルガラス基板をポリマー層と一緒に上記高温で付形するステップと;
フレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体が非平坦構造を維持するようにポリマー層を上記高温未満に冷却するステップと
を有してなる、方法が提供される。
【0009】
第2の態様によれば、フレキシブルガラス基板の非平坦構造が1つまたは複数の湾曲部分を含む、第1の態様の方法が提供される。
【0010】
第3の態様によれば、ポリマー層をフレキシブルガラス基板にラミネートするステップをさらに含む、第1または第2の態様の方法が提供される。
【0011】
第4の態様によれば、ラミネートステップが、ポリマー層を加熱するステップの最中に行われる、第3の態様の方法が提供される。
【0012】
第5の態様によれば、ポリマー層をフレキシブルガラス基板にラミネートするステップが、ポリマー層を加熱するステップの前に行われる、第3の態様の方法が提供される。
【0013】
第6の態様によれば、フレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体のガラスの総厚が、ラミネートの総厚の約1/3以上である、第1〜第5の態様の方法が提供される。
【0014】
第7の態様によれば、上記高温が約200℃未満である、第1〜第6の態様の方法が提供される。
【0015】
第8の態様によれば、フレキシブルガラス基板に付形するステップが、フレキシブルガラス基板を屈曲させる力を印加することを含む、第1〜第7の態様の方法が提供される。
【0016】
第9の態様によれば、ポリマー層を冷却する上記ステップが、約10℃毎分以下の速度でポリマー層を冷却することを含む、第1〜第8の態様の方法が提供される。
【0017】
第10の態様によれば、フレキシブルガラス基板の厚みが約75μm以下である、第1〜第9の態様の方法が提供される。
【0018】
第11の態様によれば、フレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体の成形方法において:
フレキシブルガラス基板をそこに適用されたポリマー層と一緒に付形するステップであって、フレキシブルガラス基板の厚みが約0.3mm以下である、ステップと、
フレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体が非平坦構造を維持するようにポリマー層を硬化させるステップと
を有してなる、方法が提供される。
【0019】
第12の態様によれば、ポリマー層を、20℃を超え、かつフレキシブルガラス基板の作業温度未満の高温に加熱するステップをさらに含む、第11の態様の方法が提供される。
【0020】
第13の態様によれば、上記高温が約200℃未満である、第12の態様の方法が提供される。
【0021】
第14の態様によれば、ポリマー層を硬化させるステップが、ポリマー層に紫外線を印加することを含む、第11〜第13の態様の方法が提供される。
【0022】
第15の態様によれば、フレキシブルガラス基板の非平坦構造が1つまたは複数の湾曲部分を含む、第11〜第14の態様の方法が提供される。
【0023】
第16の態様によれば、ポリマー層をフレキシブルガラス基板にラミネートするステップをさらに含む、第11〜第15の態様の方法が提供される。
【0024】
第17の態様によれば、フレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体のガラスの総厚が、ラミネートの総厚の約1/3以上である、第11〜第16の態様の方法が提供される。
【0025】
第18の態様によれば、フレキシブルガラス基板に付形するステップが、フレキシブルガラス基板を屈曲させるための力を印加することを含む、第11〜第17の態様の方法が提供される。
【0026】
第19の態様によれば、ポリマー層を硬化させるステップが、ポリマー層を約10℃毎分以下の速度で冷却することを含む、第11〜第18の態様の方法が提供される。
【0027】
第20の態様によれば、フレキシブルガラス基板の厚みが約75μm以下である、第11〜第19の態様の方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に示す詳細な説明においては、本発明の様々な原理を十分に理解するために、特定の詳細を開示する例示的な実施形態について説明するが、これらは説明を目的とするものであって限定を目的とするものではない。しかしながら、本開示の利点を有したまま、本明細書に開示した特定の詳細とは異なる他の実施形態で本発明を実施することができることは当業者に明らかであろう。さらに、本発明の様々な原理の説明が曖昧にならないように、公知の装置、方法および材料の説明を省略することができる。最後に、該当する場合は、類似の参照番号は類似の構成要素を指すものとする。
【0030】
本明細書においては、範囲を、「約」を付したある具体的な値から、および/または「約」を付した他の具体的な値までとして表すことができる。範囲をこのように表す場合、他の実施形態には、当該ある具体的な値から、および/または当該他の具体的な値までが包含される。同様に、先行詞「約」を用いることによって値を近似で表す場合、その具体的な値は他の実施形態を成すと理解されるであろう。各範囲の端点は、他の端点との関係において、および他の端点とは独立に、重要であることがさらに理解されるであろう。
【0031】
本明細書において用いられる、方向を表す語、例えば、上方に(up)、下方に(down)、右方に(right)、左方に(left)、前方に(front)、後方に(back)、最上部に(top)、最下部に(bottom)は、図面に描かれている図を参照することのみを目的として用いられるものであって、絶対的な配置を示唆することを意図するものではない。
【0032】
特に明記しない限り、本明細書に記載するどの方法も、そのステップを特定の順序で実施することが必要であると解釈されることを決して意図していない。したがって、方法クレームが、そのステップが従うべき順序を実際に列挙していない場合、または、それ以外の形で、特許請求の範囲または明細書において、そのステップが特定の順序に限定されることを具体的に述べていない場合は、いかなる点においても順序を示唆することを決して意図していない。このことは、ステップの順序または操作フローに関する論理の問題;文法構造または句読点から導かれる一般的意味;本明細書に記載される実施形態の数または種類等に関する、あらゆる可能な場合における、明示されていない解釈の基準にも適用される。
【0033】
本明細書において用いられる単数形は、文脈上そうでないことが明示されていない限り、複数の指示対象も包含する。したがって、例えば、1つの構成要素に言及する場合、文脈上そうでないことが明示されていない限り、2つ以上のこの種の構成要素を有する態様も包含される。
【0034】
フレキシブルガラス基板を用いることにより、例えば、電子機器、パッケージ化および建築用途に使用される湾曲形状または何らかの形状に適合する(conformable)形状を得ることが可能になる。フレキシブルガラス基板は弾性を有するため、外力(フレキシブルガラス基板自体の外部から)を用いてフレキシブルガラス基板を予め定められた非平坦構造に屈曲させる、および/または形状を保持することができる。本明細書に記載するように、非平坦構造を有するフレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体は、フレキシブルガラス基板およびポリマー基板を用いて形成される。フレキシブルガラス−ポリマーラミネートは、自己支持型(free−standing)物体として(すなわち、ガラス−ポリマーラミネートに外力を一切加えなくても、フレキシブルガラス−ポリマーラミネートの非平坦構造を保持する)、非平坦構造を保持することができる。
【0035】
図1および
図2を参照すると、2つの例示的なフレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体10および50が図示されている。最初に
図1を参照すると、フレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体10は、第1フレキシブルガラス基板14から形成されている第1最外層ガラス12と、第2フレキシブルガラス基板18から形成されている第2最外層ガラス16と、第1および第2フレキシブルガラス基板14および18の間に挟持され、これらにラミネートされたポリマー材料22から形成されているポリマー層20とを含む。ポリマー材料22を第1および第2フレキシブルガラス基板14および18にラミネートするための接着層は使用しても使用しなくてもよい。一例として、ポリマー材料22は、第1および第2フレキシブルガラス基板14および18に、広い表面28、30および32、34のそれぞれの界面で直接結合するように選択することができる。
【0036】
フレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体10は非平坦構造を有する。本明細書において用いられる「非平坦構造」という語は、フレキシブル−ガラスポリマーラミネート構造体の少なくとも一部が、フレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体10を平らに広げた元の形状により定められる平面Pに対し外方向にまたはある角度で延在している3D形状を指す。
図1の例示的な実施形態において、フレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体10は、平面Pに対し互いに対向する外方向に延在し、ある程度起伏した非平坦構造を形成する、1つまたは複数の凸部(elevation)または湾曲部分36、38および40を有する。フレキシブルガラス−ポリマーラミネート10は、自己支持型物体として、一切の外力を加えることなく非平坦構造を保持することができる。その詳細を後により詳しく説明する。フレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体10は、3層を含むものとして示されているが、フレキシブルガラス基板およびポリマー層には、それぞれ、任意の好適な数の層を存在させることができる。
【0037】
図1には、最外ガラス層12および16ならびに起伏のある非平坦構造が図示されているが、他の構成も可能である。例えば、
図2には、フレキシブルガラス基板54から形成された最外ガラス層52およびポリマー材料58から形成された最外ポリマー層56を含むフレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体50が示されている。フレキシブルガラス−ポリマーラミネート50は比較的平滑性の高い形態にあり、平面Pの外側に延在する弧状の非平坦構造を有する。図示されているラミネート構造体50は、ガラス層52の外面が凸形状を成し、ポリマー層56の外面が凹形状を成すように示されているが、その逆であってもよい。さらに、図示されているラミネート構造体50は2層を有するが、フレキシブルガラス基板およびポリマー材料には、それぞれ、任意の好適な数の層を存在させることができる。
【0038】
本明細書に記載するフレキシブルガラス基板の厚みは、約0.3mm以下とすることができ、これらに限定されるものではないが、例えば、約0.01〜0.05mm、約0.05〜0.1mm、約0.1〜0.15mm、約0.15〜0.3mm(例えば、0.3、0.275、0.25、0.225、0.2、0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11、0.10、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01mm等)の厚みが挙げられる。薄肉のフレキシブルガラス基板を用いることにより、薄肉のポリマー層を使用して所望の非平坦構造を形成することが可能になる。例えば、幾つかの実施形態においては、
図1を参照すると、ガラスの総厚Tg
tot(すなわち、フレキシブルガラス基板14および16のそれぞれの厚みTg
1およびTg
2の総和)はラミネートの総厚T
L(すなわち、Tg
1、Tg
2およびTp(Tpはポリマー層20の厚み))の約1/3以上である。フレキシブルガラス基板は、ガラス、ガラスセラミック、セラミック材料またはこれらの複合体から形成することができる。便宜上、本明細書全体を通して「フレキシブルガラス基板」または「ガラス層」という語を使用することができるが、これは参照のみに用いられる語であり、この種の基板または層は、これに替えて、上述の他の材料のいずれかから形成することもできる。フレキシブルガラス基板を形成するために、高品質のフレキシブルガラス基板を形成する溶融プロセス(例えば、ダウンドロー法)を用いることができる。溶融プロセスにより製造されるフレキシブルガラス基板の表面は、他の方法により製造されるガラスシートと比較して極めて優れた平坦性および平滑性を有することができる。溶融プロセスについては米国特許第3,338,696号明細書および米国特許第3,682,609号明細書に記載されている。他の好適なフレキシブルガラス基板形成方法としては、フロート法、アップドローおよびスロットドロー法が挙げられる。
【0039】
使用される具体的なフレキシブルガラス基板の作業温度よりも低い温度で自己支持型非平坦構造を形成するために、フレキシブルガラス基板およびポリマー材料の可撓性を利用してフレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体を形成するためのプロセスが開発されている。「作業温度」とは、フレキシブルガラス基板またはポリマー材料に付形して、冷却後にその形状を維持することができるような粘度まで軟化させるために、これらの材料を加熱すべき温度である。フレキシブルガラス基板の場合、作業温度は使用されるフレキシブルガラスの組成に依存するが、約1000°F(約540℃)を超える(約1500°F(約820℃)超等、約2000°F(約1100℃)超等)場合もある。ポリマー材料の作業温度は、フレキシブルガラス基板の作業温度よりもはるかに低くすることができる。幾つかの例においては、ポリマー材料の作業温度は、フレキシブルガラス基板の作業温度の約50パーセント以下(例えば、約40パーセント以下、約30パーセント以下、約25パーセント以下、約15パーセント以下、10パーセント以下等)とすることができる。ポリマー材料はフレキシブルガラス基板の作業温度よりも低い温度で付形することができるので、フレキシブルガラス基板を所望の自己支持型非平坦構造を保持するためにポリマー材料を使用することができる。
【0040】
ここでラミネート構造体の製造方法を説明する。
図3は、例示的な方法のステップを表すものであり、例示したステップは、特に断りのない限り、異なる順序で実施できることが理解される。さらに、特に断りのない限り、例示されていないステップも追加することができる。
図3に示すように、本発明の方法は、任意選択により、100において、厚みが約300μm以下(約50μm以下等)のフレキシブルガラス基板を提供するステップ102から開始することができる。フレキシブルガラス基板は、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラスおよびアルカリ土類ボロ−アルミノケイ酸塩ガラス(alkaline earth boro−aluminosilicate)等の様々な種類のガラスから選択されるガラスを提供することができるが、他の例においては他のガラス組成も用いることができる。
【0041】
ステップ104において、フレキシブル基板の広い面にポリマー材料を適用することができる。ポリマー材料は、フレキシブルガラス基板の片面に適用して1層のみのポリマー層を形成することもできるし(
図2)、あるいは複数の面に適用して複数のポリマー層を形成することもできる。ポリマー層に他のフレキシブルガラス基板を適用し、それによってガラス層の間にポリマー層を挟持することもできる(
図1参照)。さらなるフレキシブルガラス基板およびポリマー基板層を追加することもできる。中間接着層または他の種類の層をポリマー層およびガラス層の間に適用することもできる。多くの実施形態においては、フレキシブルガラス基板を、中間接着層を一切使用することなくポリマー材料に直接結合させることができる。
【0042】
さらに
図4も併せて参照すると、ステップ106において、成形装置110およびエネルギー112の印加を組み合わせることによって、フレキシブルガラス−ポリマー構造体のプリフォーム108に付形することができる。フレキシブルガラス−ポリマー構造体のプリフォーム108は、最初は平坦な(それによって平面Pが定められる(
図1))ものを用いることができる。他の実施形態においては、ガラス−ポリマー構造体のプリフォーム108は、他の何らかの形状に成形されたものであってもよい。錘114または他の何らかの外力源(例えば、押圧具、成形装置等)を用いてフレキシブルガラス−ポリマー構造体プリフォーム108に力を加える。印加されるエネルギー112としては、熱や放射線(例えば、紫外線)等の任意の好適なエネルギーを用いることができる。エネルギー112を印加しながら、フレキシブルガラス−ポリマー構造体のプリフォームを所望の非平坦構造に付形する。付形後にエネルギーを除き、ポリマー材料を、例えば、約10℃毎分以下の速度(約5℃毎分以下の速度等)で冷却すると、フレキシブルガラス−ポリマー構造体のプリフォーム108は、ポリマー層の強度および剛性により非平坦構造を保持する。約10℃毎分を超える冷却速度を用いることもできる。
【0043】
例えば、
図1を参照すると、湾曲部分36、38、40が付与されている場合、湾曲部分36、38、40は、フレキシブルガラス基板14または18のそれぞれの曲率半径Rgで一般に定められる様々な湾曲を有することができる。幾つかの例においては、各フレキシブルガラス基板14および18のそれぞれの曲率半径は、付形ステップの際に発生するフレキシブルガラス基板の応力を低減するために、最小曲率半径を上回るように維持することができる。例えば、フレキシブルガラス基板14、18が破損することなく曲げ半径5mmに屈曲することができる場合は、フレキシブルガラス−ポリマー構造体のプリフォーム108を最終非平坦構造に成形する際に、フレキシブルガラス基板14および18のそれぞれの曲げ半径が約5mm以上になるように付形を行うことができる。
【0044】
フレキシブルガラス基板の最小曲率半径Rgは、予め定められた等式を満たすように選択することができる。例えば、最小曲率半径を、次の等式:
【0046】
(式中、「E」は、ガラスのヤング率であり、「t」は、ガラスの厚みであり」、σ
maxは、フレキシブルガラス基板の所望の最大応力である)を満たすように選択することができる。
【0047】
上の等式(1)のガラスのパラメータおよび曲げ半径を適切に選択することにより、フレキシブルガラス基板14、18を屈曲させて幅広い範囲の曲率を得ることができる。例えば、σ
maxを15MPa、フレキシブルガラス基板14、18のヤング率を70GPa、厚みを50μmと想定すると、最小曲率半径は116.7mmと求めることができる。所望により、安全率を考慮すると、厚みが50μmであるフレキシブルガラス基板14、18の場合は、フレキシブルガラス基板14、18の曲率半径Rgは、最小曲率半径である20cmを上回るように維持することができる。しかしながら、これらの値は、使用されるフレキシブルガラス基板の種類や厚み等に応じて変化させることができる。部分36、38、40は類似の曲率半径を有するように示されているが、必ずしもそうである必要はない、すなわち、互いに異なる曲率半径を有することもできる。
【0048】
ステップ114に示すように、付形ステップ106が完了したら、この付形ステップ106によるフレキシブルガラス−ポリマーラミネートを得ることができ、ここでフレキシブルガラス−ラミネート構造体のプリフォームの形状(例えば、平坦)を、フレキシブルガラス基板の非平坦構造がポリマー材料によって保持されるように屈曲することができる。これに従い、ポリマー材料は、一旦固化したら、フレキシブルガラス基板の非平坦構造を保持する。しかしながら、ポリマー材料が固化する前に、成形装置、錘、クリップまたは他の何らかの保持構造を使用して、冷却プロセス中にポリマー材料が固化するまでフレキシブルガラスシートの非平坦構造を維持することができる。
【0049】
幾つかの実施形態においては、ポリマー材料をフレキシブルガラス基板にラミネートするステップと、フレキシブルガラス−ポリマーラミネートに付形するステップとは、少なくとも一部を同時に行うことができる。例えば、
図5を参照すると、金型または他の何らかの押圧機構(例えば、プレス)等の成形装置200を提供することができ、ここで、加熱されて軟化したポリマー材料202が成形装置200に、例えば押出機204を用いて適用される。加熱されたポリマー材料202は、成形装置200の単独の部分206(例えば、単層のポリマー層を得るために)に適用するか、または成形装置200の複数の部分206および208(例えば、複数のポリマー層を得るために)に適用することができる。さらに、加熱されたポリマー材料202は、部分206に任意の好適なパターンで適用することができる。
図6を参照すると、成形装置200の部分206および208は、フレキシブルガラス基板210を間に挟んだまま重ね合わせることができる。図から分かるように、成形装置200の部分206および208は、フレキシブルガラス基板210を所望の非平坦形状に変形させる付形面212および214を有することができ、ポリマー材料202が冷却されて固化する間、フレキシブルガラス基板210を非平坦形状に保持する。次いで、非平坦構造を有するフレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体を成形装置200から取り出して、その非平坦形状を保持することができる。この種のプロセスの他の例としては、フレキシブルガラス挿入部を有するポリマー射出成形機を用いることができる。ポリマーが金型に注入される際にフレキシブルガラスを非平坦形状に保持することができる。金型から取り出して冷却する間、フレキシブルガラスおよびポリマー構造体は非平坦形状を保持することができる。
【実施例】
【0050】
厚みが75μmである2枚のフレキシブルガラス基板を、ポリマー材料(感圧接着剤)を用いてラミネートすることにより、フレキシブルガラス−ポリマー構造体のプリフォームを得た。フレキシブルガラス−ポリマー構造体のプリフォームを、
図4に示すように配置した支持体および錘(各25g)と一緒に、室温でオーブンに装入した。オーブンを5℃毎分の速度で200℃の温度(フレキシブルガラス基板の作業温度を十分に下回る温度)まで加熱した。温度を200℃で1時間保持した後、5℃毎分の速度で冷却した。フレキシブルガラス−ポリマーラミネートを錘および支持体から取り外した後も、フレキシブルガラス−ポリマーラミネートはその非平坦構造を保持していた。
【0051】
図には上述のフレキシブルガラス基板をフレキシブルガラスシートとして示しているが、ロールプロセス(roll process)や作製(例えば、ダウンドロー)プロセス等の連続プロセスにおいて連続したフレキシブルガラス基板を用いることにより非平坦構造を有するフレキシブルガラスポリマーラミネート構造体を形成することもできる。例えば、
図7に、フレキシブルガラス基板の2つの例示的な供給源250を図示するが、他の供給源を用いることもできる。例えば、供給源250はダウンドローガラス成形装置252を含むことができる。略図に示したように、ダウンドローガラス成形装置252は、樋256の底部に成形用楔体254を含むことができ、ガラスが成形用楔体254の対向する側面258および260を流下する。次いで、溶融ガラスの2枚のシートは、成形用楔体254の基部262から離れて板引きされるに従い融合一体化する。そのようなものとして、フレキシブルガラスリボンの形態のフレキシブルガラス基板266は、溶融状態で板引き(fusion drawn)することにより、成形用楔体254の基部262を離れて下方向268へと横断し、ダウンドローガラス成形装置の下流に位置する下方領域264にそのまま進行させることができる。
【0052】
成形後のフレキシブルガラス基板266は、さらに切断やトリミング等の加工を施すことができる。連続フレキシブルガラスリボンの形態にあるフレキシブルガラス基板266を、成形装置268に送り出すかまたは導くことができる。成形装置268は
図5の成形装置200に類似するものであってもよく、フレキシブルガラス基板266に非平坦構造を付与するために使用される。図示した実施形態において、ポリマー材料270としては、ロール272からフレキシブルガラス基板266に供給される連続フィルムを用いることができる。ポリマー材料270はまた、硬化性材料またはコーティングの形態とすることもできる。成形装置268の両部分は重ね合わせることができ、ポリマー材料を、ヒーター275を用いて上に述べたように加熱した後、冷却(例えば、水冷または他の冷却方法を用いて)することにより、結果として得られるフレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体274に非平坦構造が付与される。フレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体に非平坦形状を付与するために使用することができる対向ローラ等の他の成形装置を使用することもできる。
【0053】
フレキシブルガラス基板266の他の例示的な供給源250としては、フレキシブルガラス基板266を巻回したスプール(coiled spool)276を挙げることができる。例えば、例えばダウンドロー方式のガラス成形装置252を用いてフレキシブルガラスリボンを板引きした後、フレキシブルガラス基板266を巻回して巻回スプール276とすることができる。したがって、供給源250が巻回スプール276を含む場合、フレキシブルガラス基板266は巻回スプール276から繰り出して、下方領域264に向けて下方向268へと横断させる。フレキシブルガラス基板を水平方向に繰り出す等の他の配置も可能である。
【0054】
本明細書に記載するラミネート構造体に使用するためのポリマー層は、様々なポリマー、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)またはサーモポリマー(thermopolymer)ポリオレフィン(TPO
TM:ポリエチレン、ポリプロピレン、ブロック共重合体ポリプロピレン(BCPP)またはゴムのポリマー/フィラーブレンド)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンおよび置換ポリエチレン、ポリヒドロキシブチレート酪酸、ポリヒドロキシビニルブチレート、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリビニルアセチレン、透明熱可塑性材料、透明ポリブタジエン、ポリシアノアクリレート、セルロース系ポリマー、ポリアクリレートおよびポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリスルフィド、ポリビニルブチラール、ポリメタクリル酸メチルおよびポリシロキサンのうちの任意の1種または複数種を含むことができる。プレポリマーまたは予備混合物(pre−compound)として堆積/塗工した後に変換することができる、エポキシ樹脂、ポリウレタン、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂等のポリマーを使用することも可能である。多くのディスプレイおよび電気的用途には、アクリル系ポリマー、シリコーンおよびこの種の構造補助(structural aiding)層(例えば、Du Pontから市販されているSentryGlas(登録商標))が好ましいであろう。ポリマー層は、一部の用途には透明なものを用いることができるが、他の用途では必ずしも透明である必要はない。
【0055】
さらに、各ポリマー層は、それ自体が、ヤング率が異なり、ポワソン比が異なり、および/または層厚さが異なる異種ポリマーから作製されたラミネート構造または複合構造を有することができる。ポリマー材料は、バルク層全体に有機成分および無機成分の両方を分散させた、フィラーを含む複合体系であってもよい。この場合、複合体層は、本明細書に記載したようにガラス−ポリマーラミネートを有利に構成するために利用することができる、実際の厚み、実際のヤング率、実際のポワソン比等の、層全体の実効値を見出すために平均化(homogenized)することができる。例えば複合体は、上述の材料および/または金属(ステンレス鋼、ニッケル、銅、貴金属、金属酸化物等)の任意の組合せから製造することができる。
【0056】
本明細書に記載するガラス−ポリマーラミネートは、実装デバイスの機能層(mounting device−functional layer)の基板として使用することもできるし、あるいは、デバイス内の封止層もしくはバリア層として使用することもできる。デバイスは、電子機器、例えば、ディスプレイスクリーン(例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機LEDディスプレイ、フラットパネルディスプレイ等)、発光素子または太陽電池モジュールとすることができる。機能層としては、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)、ダイオード、フォトダイオード、トライオード、光電池、フォトカプラ、透明電極、カラーフィルタまたは導電層を挙げることができる。ガラス−ポリマーラミネートは、ディスプレイスクリーンにカバーとして貼合して使用することができる。ガラス−ポリマーラミネートは、OLED(小分子蛍光色素(small molecule fluorescence)(SMF)および発光ポリマー(LEP))用の基板/封止剤としてのみならず、電子活性層を含む他のデバイス(例えば、有機光検出器、有機太陽電池、薄膜トランジスタ(TFT)アレイおよびOLED用TFT)用の基板/封止剤としても使用することができる。他の用途としては、LEP製品用のもの、例えば、パターン化されていない(un−patterned)バックライトおよび他の光源、または標識、英数字ディスプレイ、ドットマトリクス等のパターン化されたデバイスおよび他の高解像度ディスプレイである。さらに、別々のフレキシブルガラスまたはポリマー層上にデバイスを完全にまたは部分的に作製した後、集合させて、最終的なラミネート構造体とすることができる。この場合、デバイスは、ポリマー層およびフレキシブルガラス層の間に存在することができる。
【0057】
ガラス−ポリマーラミネートは、電子機器の保護要素として使用する場合は、実質的に透明な構造体とすることができ、ガラス−ポリマーラミネートは、厚みが5〜300マイクロメートルのガラス層と、厚みが50マイクロメートル〜1cm以上の範囲にあるポリマー層とを含む複合構造体である。これに関連して、ガラス−ポリマーラミネートの成形性により、屈曲および/または捻転させた後、その形状を固定することによって、完全に平坦な形状とは異なる形状に変形させることが可能になる。
【0058】
ガラス層およびポリマー層は、回分式プロセスに従い、シート形態で供給することができる。別法として、ガラス層をシート形態で供給し、ポリマー層を連続したロールから供給することができる。さらなる可能性として、ガラス層およびポリマー層は両方共連続したロールから得られる。複合構造体は、ガラス層およびポリマー層を、例えば、回分式プロセス、連続ロール・ツー・ロールプロセスまたは半回分式プロセス(この場合、ポリマー層は連続フィルムであり、ガラス層はシート形態である)に従いラミネートすることによって形成することができる。ガラス層および/またはポリマー層の厚みは一定であってもよいし、あるいは厚みが変化してもよい。
【0059】
ポリマー層としては、プレポリマーまたは予備混合物として堆積/塗工した後、変換することができる、エポキシ樹脂、ポリウレタン、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、UV硬化性アクリレート、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂等のポリマーを使用することができる。ガラス層およびポリマー層のラミネートは、層の間に接着剤(glue/adhesive)を使用して行うことができる。その場合、接着剤を2枚の基板の一方または両方に予め塗工しておくことができ、あるいはラミネートプロセスの最中に、室温または高温下に、押圧するかまたは押圧せずに、供給することもできる。UV硬化した接着剤も適している。ポリマー層は、ヒートシール型接着剤を予め塗工したポリマーシートの形態とすることができる。ポリマー層のガラス層へのラミネートおよび/または堆積は、ガラスの製作プロセスに統合することができる、すなわち、ガラスを製作ラインから取り出した後(依然として高温であるかまたは温かいかまたは低温である)、ポリマーで被覆する。
【0060】
ラミネートによる形成に替えて、複合体のポリマー層を回分式または連続式プロセスでガラス層上に塗工することができる。ポリマーのガラス上への塗工は、ディップコーティング、スプレーコーティング、溶液スピンコーティング、溶液ブレードコーティング、メニスカスコーティング、スロットダイコーティングで行ってもよいし、あるいは溶融ポリマーをガラス層上に塗工することによって行ってもよい。すなわち、(i)ポリマーが既にフィルムとして存在し、ガラスにラミネートされる状況および(ii)ポリマーがフィルム形態で存在せず、ガラス上にディップコーティングやスプレーコーティング等で塗工される状況という異なる状況を考慮することが可能である。プレポリマーは(ii)の場合に適用することができる。しかしながら、上述の他のポリマーのうちの数種は(ii)の場合に塗工することができる。この例においては、ポリマーは、ガラス上に主として、溶液から、溶融物からまたはプレポリマーとして塗工することによりコーティングすることができる。
【0061】
電子機器の製造においては、層の一部または全部を加工ステップに付すことが通常は必要である。例えば、半導体性共役ポリマーであるポリ(フェニレンビニレン)(PPV)等のエレクトロルミエンッセント有機材料が存在する場合、この層の堆積は、通常、溶媒中のポリマー前駆体を、例えば、スピンコーティングによって堆積させ、次いでこの層を後続の処理ステップに付すことにより前駆体を最終ポリマーに変換することにより行われるであろう。したがって、これらの処理ステップ中に、下層となるガラス−ポリマーラミネートが存在する場合は、前駆体層のスピンコーティングに使用される溶媒および後段で前駆体をポリマーに変換する際に溶媒を追い出すために用いられる温度に耐えることができなければならない。したがって、ガラス−ポリマーラミネートのポリマー層は適切な品質を有することが必要である。例えば、ガラス−ポリマーラミネートが高温に曝される場合、ポリマー層のガラス転移温度(および接着剤が使用される場合はその作業温度)はこれらの温度を上回るべきである。例えば、150℃を超える温度が可能である。さらに、特定の状況下においては、ポリマー層は、ポリマーに使用される混合キシレン等の溶媒層、MEH PPV等の可溶性共役ポリマーに使用されるTHFに耐性を有するべきである。
【0062】
上述のフレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体は、フレキシブルガラス基板を非平坦構造に固定するためにより薄肉のポリマー層またはより弾性率の低いポリマー層を使用することを可能にする、超薄肉のフレキシブルガラス基板を利用するものである。ポリマー層の厚みはガラス層の厚みの3倍以下(例えば、2倍以下、ほぼ同一の厚み等)とすることができる。超薄肉フレキシブルガラス基板は、より厚肉のガラス基板と比較して、屈曲時の応力をはるかに低くすることができる。このより低い曲げ応力により、より厚肉のガラス基板と比較して曲げ半径をはるかに小さくすることができる。
【0063】
電子機器以外でも、上述のフレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体は、建築物の表面装飾、保護コーティング、エレクトロクロミック調光窓(electrochromatic window)、耐火面、防弾ガラス要件に適合させるために必要な様々な構成の多層構造体等の他の分野に使用することができる。同様に、フレキシブルガラス−ポリマーラミネート構造体は、有機/薄膜、PV、OLEDディスプレイ、照明等の用途に使用するためのフィルム、構造体および/またはデバイスを酸素および水分の侵入/透過から保護するためのバリア材として作用することができる。
【0064】
本発明の上述の実施形態、特に、任意の「好ましい」実施形態は、単に実施可能な例を、単に本発明の様々な原理を明確に理解するために記載したものであることを強調すべきである。本発明の趣旨および様々な原理から実質的に逸脱することのない、本発明の上述の実施形態の多くの変形形態および修正形態が可能である。この種の修正形態および変形形態はいずれも本開示および本発明の範囲内に包含され、以下に示す特許請求の範囲により保護されることを意図している。