特許第6444021号(P6444021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6444021光学ガラス、光学ガラスブランク、プレス成型用ガラス素材、光学素子、およびそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444021
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】光学ガラス、光学ガラスブランク、プレス成型用ガラス素材、光学素子、およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/21 20060101AFI20181217BHJP
   C03C 3/064 20060101ALI20181217BHJP
   C03C 3/19 20060101ALI20181217BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   C03C3/21
   C03C3/064
   C03C3/19
   G02B1/00
【請求項の数】17
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-205432(P2013-205432)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-67522(P2015-67522A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年9月29日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】桑谷 俊伍
(72)【発明者】
【氏名】藤原 康裕
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−144063(JP,A)
【文献】 特開2011−144064(JP,A)
【文献】 特開2011−144065(JP,A)
【文献】 特開2011−144066(JP,A)
【文献】 特開2005−247659(JP,A)
【文献】 特開2011−136884(JP,A)
【文献】 特開昭61−146732(JP,A)
【文献】 特開2008−303112(JP,A)
【文献】 特開2010−260740(JP,A)
【文献】 特開2006−111499(JP,A)
【文献】 特開2005−255499(JP,A)
【文献】 特開2005−154248(JP,A)
【文献】 特開2004−002153(JP,A)
【文献】 特開2003−335549(JP,A)
【文献】 特開平05−270853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 3/16 − 3/21
C03C 3/064 − 3/068
G02B 1/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準のガラス組成において、
25含有量が20〜34質量%、
23含有量が10質量%以下、
Al23含有量が3%未満、
Li2O含有量が0質量%以上0.3質量%未満、
質量比(B23/P25)が0.123以上0.39未満、
質量比[TiO2/(TiO2+Nb25+WO3+Bi23+Ta25)]が0.10〜0.180の範囲、
質量比[(P25+B23+SiO2)/(Na2O+K2O+Li2O)]が1.39〜1.80の範囲、
質量比[(P25+B23+SiO2)/(TiO2+Nb25+WO3+Bi23+Ta25)]が0.51以上0.586以下、
であり、屈折率ndが1.790〜1.83の範囲であり、かつアッベ数νdが20〜24の範囲である光学ガラス。
【請求項2】
酸化物基準のガラス組成において、
25含有量が20〜34質量%、
23含有量が10質量%以下、
Al23含有量が3%未満、
質量比(B23/P25)が0.123以上0.39未満、
質量比[TiO2/(TiO2+Nb25+WO3+Bi23+Ta25)]が0.10〜0.180の範囲、
質量比[(P25+B23+SiO2)/(Na2O+K2O+Li2O)]が1.39〜1.80の範囲、
質量比[(P25+B23+SiO2)/(TiO2+Nb25+WO3+Bi23+Ta25)]が0.51以上0.586以下、
質量比[Li2O/(Na2O+K2O+Li2O)]が0.0115未満、
であり、屈折率ndが1.790〜1.83の範囲であり、かつアッベ数νdが20〜24の範囲である光学ガラス。
【請求項3】
Li2O含有量が0質量%以上0.3質量%未満である請求項2に記載の光学ガラス。
【請求項4】
質量比[SiO2/(SiO2+P25+B23)]が0.12以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項5】
25含有量が20〜24.61質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項6】
1050℃以下の液相温度を有する請求項1〜のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項7】
Sb23の外割添加量が0〜0.02%である請求項1〜のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項8】
Sb23の外割添加量が0%である請求項に記載の光学ガラス。
【請求項9】
Sb23の外割添加量が0.010×100/(100−0.010)質量%以上である光学ガラスを除く、請求項1〜のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項10】
Nb25含有量が44.67%以上である請求項1〜のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる光学素子ブランク。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学ガラスからなるプレス成形用ガラス素材。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる光学素子。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学ガラスをプレス成形用ガラス素材に成形する工程を備えるプレス成形用ガラス素材の製造方法。
【請求項15】
請求項12に記載のプレス成形用ガラス素材を、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子ブランクを作製する工程を備える光学素子ブランクの製造方法。
【請求項16】
請求項11に記載の光学素子ブランクを研削および/または研磨することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法。
【請求項17】
請求項12に記載のプレス成形用ガラス素材を、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラス、光学ガラスブランク、プレス成形用ガラス素材、光学素子、およびそれらの製造方法に関する。詳しくは、耐失透性に優れる高屈折率・高分散特性を有するリン酸系光学ガラス、この光学ガラスからなる光学ガラスブランク、プレス成形用ガラス素材、光学素子、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスのネットワークフォーマーとしてリン酸を多く含む所謂リン酸系光学ガラスとしては、特許文献1〜3に記載されているように様々な屈折率を有するものが知られている。それらの中でも、高い屈折率とともに高分散特性(低アッベ数)を有する光学ガラスは、各種レンズなどの光学素子材料として需要が高い。例えば、高屈折率低分散性のレンズと組合せることにより、コンパクトで高機能な色収差補正用の光学系を構成することができるからである。さらに、高屈折率高分散特性のレンズの光学機能面を非球面化することにより、各種光学系の一層の高機能化、コンパクト化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−270853号公報
【特許文献2】特開平6−345481号公報
【特許文献3】特開平8−157231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レンズなどの光学素子を作製する方法としては、光学素子の形状に近似した光学素子ブランクと呼ばれる中間製品を作り、この中間製品に研削、研磨加工を施して光学素子を製造する方法が知られている。このような中間製品の作製方法の一態様としては、適量の熔融ガラスをプレス成形して中間製品とする方法(ダイレクトプレス法という)がある。また、他の態様としては、熔融ガラスを鋳型に鋳込みガラス板に成形し、このガラス板を切断して複数個のガラス片とし、このガラス片を再加熱、軟化してプレス成形により中間製品にする方法、適量の熔融ガラスをガラスゴブと呼ばれるガラス塊に成形し、このガラス塊にバレル研磨を施した後に再加熱、軟化してプレス成形し、中間製品を得る方法などがある。ガラスを再加熱、軟化してプレス成形する方法は、ダイレクトプレス法に対してリヒートプレス法と呼ばれる。
【0005】
また、光学素子を作製する方法としては、熔融ガラスからプレス成形用ガラス素材を作製し、このプレス成形用ガラス素材を成形型により精密プレス成形することにより光学素子を得る方法(精密プレス成形法という)も知られている。精密プレス成形法では、成形型成形面形状を転写することにより、研磨、研削等の機械加工を経ることなく、光学素子の光学機能面を形成することができる。
【0006】
以上記載したダイレクトプレス法、リヒートプレス法、精密プレス成形法のいずれにおいても、製造過程においてガラス中に結晶が析出してしまっては、優れた透明性を有する光学素子を得ることは困難となる。そのため、結晶析出が抑制された、即ち耐失透性の高い光学ガラスが求められている。
しかしながら、ガラスのネットワークフォーマーとしてリン酸を多く含むとともに、高屈折率付与成分および高分散性付与成分を含む組成の光学ガラスは、一般に失透傾向が強い。そのため、高屈折率・高分散特性を有するリン酸系光学ガラスにおける耐失透性を向上することは、従来困難であった。
【0007】
本発明の一態様は、高屈折率・高分散特性を有するとともに、耐失透性に優れるリン酸系光学ガラスを提供する。
更に本発明の一態様によれば、上述の光学ガラスからなる光学ガラスブランク、プレス成形用ガラス素材、光学素子、およびそれらの製造方法も提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、酸化物基準のガラス組成において、
25含有量が20〜34質量%、
23含有量が0質量%超かつ10質量%以下、
質量比(B23/P25)が0超かつ0.39未満、
質量比[TiO2/(TiO2+Nb25+WO3+Bi23+Ta25)]が0.059〜0.180の範囲、
質量比[(P25+B23+SiO2)/(Na2O+K2O+Li2O)]が1.39〜1.80の範囲、
であり、屈折率ndが1.78〜1.83の範囲であり、かつアッベ数νdが20〜25の範囲である光学ガラス、
に関する。
【0009】
上述の一態様にかかる光学ガラスは、必須成分としてP25を含むリン酸系光学ガラスであって、更に必須成分としてB23およびTiO2を含み、かつ上述の含有量および質量比を満たすことにより、1.78〜1.83の範囲の屈折率ndおよび20〜25の範囲のアッベ数νdという高屈折率高分散特性を有するとともに、優れた耐失透性を示すことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、ダイレクトプレス法、リヒートプレス法、精密プレス成形法のいずれにも好適な、高屈折率高分散特性を有するリン酸系光学ガラスを提供することができる。更なる一態様によれば、上述の光学ガラスからなる光学素子ブランク、プレス成型用ガラス素材、および光学素子も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[光学ガラス]
本発明の一態様にかかる光学ガラスは、酸化物基準のガラス組成において、P25含有量が20〜34質量%、B23含有量が0質量%超かつ10質量%以下、質量比(B23/P25)が0超かつ0.39未満、質量比[TiO2/(TiO2+Nb25+WO3+Bi23+Ta25)]が0.059〜0.180の範囲、質量比[(P25+B23+SiO2)/(Na2O+K2O+Li2O)]が1.39〜1.80の範囲であり、屈折率ndが1.78〜1.83の範囲であり、かつアッベ数νdが20〜25の範囲である光学ガラスである。
以下、その詳細について説明する。
【0012】
前述の通り、本発明では光学ガラスのガラス組成を酸化物基準で表示する。ここで「酸化物基準のガラス組成」とは、ガラス原料が熔融時にすべて分解されて光学ガラス中で酸化物として存在するものとして換算することにより得られるガラス組成をいうものとする。また、特記しない限り、ガラス組成は質量基準で表示するものとする。
本発明におけるガラス組成は、ICP−AES(Inductively Coupled Plasma - Atomic Emission Spectrometry)により求められたものである。また、本分析方法により求められた分析値は、±5%程度の測定誤差を含んでいる。また、本明細書および本発明において、構成成分の含有量が0%とは、この構成成分を実質的に含まないことを意味し、この構成成分の含有量が不純物レベル程度以下であることを指す。
【0013】
25はリン酸系光学ガラスにおいてガラス形成成分として欠かせない成分である。リン酸系ガラスは比較的低い温度でガラスを熔解することができ、可視域の透過率が高いという特徴を有する。ガラスの耐失透性向上の観点から、P25含有量の下限は20%以上、好ましくは21%以上である。また、上限は34%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは24%以下である。
【0014】
23は、リン酸系光学ガラスに適量添加することにより耐失透性を高める作用を有する成分である。そのため上述の光学ガラスには必須成分として、0%超導入する。B23含有量は、好ましくは2%以上、より好ましくは6%以上である。ただし、過剰量含まれると高屈折率・高分散特性を実現することが困難となるため、その含有量は10%以下とする。好ましくは9%以下、より好ましくは8%以下である。
ここでB23含有量が0%とは、B23がガラス中に不純物レベル程度に微量に含有されている場合を含む。したがって、B23含有量0%超とは、B23が不純物レベル程度を超えて含有されていることを指す。具体的には、例えば700ppm(質量比)以上、または1000ppm(質量比)以上である。
【0015】
25、B23のそれぞれの含有量については、先に記載の通りである。更に上述の光学ガラスにおいては、高屈折率・高分散特性を有するリン酸系光学ガラスの耐失透性を高めるために、P25含有量とB23含有量との質量比(B23/P25)を、0超かつ0.39未満とする。より好ましい下限は0.15、さらに好ましい下限は0.25である。より好ましい上限は0.38である。
【0016】
SiO2は、上述の光学ガラスに含まれていてもよい任意成分である。高屈折率化の観点からは、その含有量は2%以下であることが好ましく、1.2%以下であることが好ましく、1.0%以下であることが好ましく、0.4%以下であることが更に好ましく、0.3%以下であることが一層好ましく、0.3%未満であることがより一層好ましく、導入しなくても(SiO2含有量が0%でも)よい。
また、耐失透性向上と溶解性の観点からは、SiO2、P25およびB23の合計含入量に対するSiO2含有量の質量比[SiO2/(SiO2+P25+B23)]は、0.12以下であることが好ましく、0〜0.04の範囲であることが、より好ましい。
【0017】
上述の光学ガラスは、Li2O、Na2OおよびK2Oからなる群から選択されるアルカリ金属酸化物の一種以上を必須成分として含む。これらアルカリ金属酸化物量(二種以上含まれる場合は、それらの合計含有量)を、上記のP25、B23およびSiO2の合計含有量に対して規定することにより、優れた耐失透性を示す高屈折率・高分散リン酸系光学ガラスを得ることができる。詳しくは、上述の光学ガラスでは、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量に対するP25、B23およびSiO2の合計含有量の質量比[(P25+B23+SiO2)/(Na2O+K2O+Li2O)]は、1.39〜1.80の範囲である。この質量比が1.39を下回ると、耐失透性を維持することが困難となる。質量比[(P25+B23+SiO2)/(Na2O+K2O+Li2O)]は、好ましくは1.40以上であり、より好ましくは1.42以上であり、更に好ましくは1.43以上であり、一層好ましくは1.45以上である。他方、高屈折率・高分散特性維持の観点から、質量比[(P25+B23+SiO2)/(Na2O+K2O+Li2O)]は、好ましくは1.67以下であり、より好ましくは1.60以下である。
【0018】
耐失透性向上の観点からは、上述の光学ガラスがLi2Oを含む場合には、Li2O含有量は0.3%未満とすることが好ましい。より好ましくは0.2%以下である。耐失透性をより一層向上する観点からは、Li2Oを含まないこと(Li2O含有量が0%)が、好ましい。同様の観点から、アルカリ金属酸化物の合計含有量に対するLi2O含有量を抑えることが好ましい。具体的には、質量比[Li2O/(Na2O+K2O+Li2O)]は、0.0115未満とすることが好ましく、0.003以下とすることがより好ましい。
【0019】
その他のアルカリ金属酸化物のNa2OおよびK2Oは、少なくとも一方、好ましくは少なくともNa2O、より好ましくは両方を、上述のガラスに添加することができる。屈折率低下抑制の観点からは、Na2O含有量に対するK2O含有量の質量比K2O/Na2Oは、0.52以下であることが好ましく、0.40以下であることがより好ましい。なお質量比K2O/Na2Oは、例えば0.20以上であることができる。
また、Na2O含有量は、例えば0%以上とすることができ、8%以上であることが好ましく、11%以上であることがより好ましい。K2O含有量は、例えば0%以上とすることができ、2%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましい。
耐失透性の観点からは、上述の光学ガラスのNa2O含有量は、例えば16%以下とすることができ、15%以下であることが好ましく、14%以下であることがより好ましい。同様の観点から、K2O含有量は、6%以下とすることが好ましく、より好ましくは5%以下である。
アルカリ金属酸化物の含有量(複数種含む場合には、それらの合計含有量)は、10%以上とすることが好ましく、耐失透性維持の観点からは、30%以下とすることが好ましく、20%以下とすることがより好ましい。好ましい下限は15%である。
【0020】
TiO2は、適量添加することにより、ガラスに高屈折率・高分散特性を与えることができる成分であり、上述の光学ガラスに必須成分として導入する。ただし、高屈折率・高分散特性、および耐失透性を維持するために、その含有量は、他の高屈折率・高分散特性を与えることができる成分であるNb25、WO3、Bi23、Ta25の含有量に対して、TiO2、Nb25、WO3、Bi23、およびTa25の合計含有量に対するTiO2含有量の質量比[TiO2/(TiO2+Nb25+WO3+Bi23+Ta25)]が0.059〜0.180の範囲となる量とする。この質量比が0.059を下回ると、上述の高屈折率・高分散特性を得ることが困難となる。また、着色抑制の観点から、上限は0.180とする。質量比[TiO2/(TiO2+Nb25+WO3+Bi23+Ta25)]について、下限は0.10以上であることが好ましく、0.12以上であることがより好ましい。上限は、0.178以下であることが好ましく、0.170以下であることがより好ましく、0.135以下であることがさらに好ましい。高屈折率・高分散特性の観点から、TiO2含有量は6%以上であることがより好ましい。また、ガラスの溶解性の維持および着色抑制の観点からは、11%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましい。
【0021】
更に上述の光学ガラスでは、耐失透性向上の観点から、P25、B23およびSiO2の合計含有量を、高屈折率・高分散特性付与成分であるTiO2、Nb25、WO3、Bi23およびTa25の合計含有量に対して、質量比[(P25+B23+SiO2)/(TiO2+Nb25WO3Bi23+Ta25)]が0.49以上となる量とすることが好ましく、0.51以上がより好ましく、0.52以上とすることがさらに好ましい。また、高屈折率・高分散特性を維持する観点からは、質量比[(P25+B23)/(TiO2+Nb25WO3Bi23+Ta25)]を0.58以下とすることが好ましい。
【0022】
上述のTiO2、Nb25、WO3、Bi23、およびTa25の合計含有量は、高屈折率化の観点から、47%超であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。また、ガラス安定性の観点からは、TiO2、Nb25、WO3、Bi23、およびTa25の合計含有量は、60%以下であることが好ましく、55%以下であることがより好ましい。
【0023】
Nb25は、高屈折率・高分散特性を得るために有用な成分であり、また耐久性を高める効果のある成分でもある。耐失透性維持および着色抑制の観点からは、Nb25含有量は47%以下とすることが好ましい。一方、高屈折率・高分散特性を維持する観点からは、Nb25含有量は19%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、43%以上であることがより好ましい。
【0024】
WO3およびBi23は、高屈折率・高分散特性を得るために添加可能な成分である。例えば、上述の光学ガラスおけるWO3含有量、Bi23含有量は、それぞれ15%以下とすることができる。着色抑制の観点からは、WO3含有量、Bi23含有量は、それぞれ12%以下とすることが好ましく、6%以下とすることが好ましく、0%としてもよい。さらに、WO3の上限は、好ましくは13%未満であり、より好ましくは3%未満であり、更に好ましくは2%以下である。
【0025】
Ta25は、屈折率調整のために添加可能な任意成分である。その含有量は、例えば0〜2%とすることができる。好ましくは、Ta25含有量の上限値は2%未満である。
【0026】
上述の光学ガラスには、アルカリ土類金属酸化物MgO、CaO、SrOおよびBaOの一種または二種以上が含まれていてもよい。MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量は、例えば0〜10%の範囲とすることができる。アルカリ土類金属酸化物は、ガラス安定性を高める作用を有する成分であるが、屈折率の低下や分散性の低下を招く場合があるため、合計含有量は2%以下に抑えることが好ましく、0%であってもよい。
また、各アルカリ土類金属酸化物の含有量については、MgO含有量の好ましい下限値は0%以上であり、好ましい上限値は5%以下である。CaO含有量は好ましい下限値は0%以上であり、好ましい上限値は1%未満である。SrO含有量の好ましい下限値は0%以上であり、好ましい上限値は5%以下である。BaO含有量の好ましい下限値は0%以上であり、好ましい上限値は7%未満であり、より好ましくは6%以下である。
【0027】
上述の光学ガラスには、更に任意成分として、屈折率調整のためにZnO、Al23を添加することもできる。ZnO含有量は、5%未満とすることが好ましく、0%であってもよい。一方、Al23含有量は、3%未満とすることが好ましく、2%以下とすることがより好ましく、0%であってもよい。また、La23、Y23、Gd23、Cs2O、ZrO2、PbO等の成分を、それぞれ例えば0〜1%の範囲の量で、本発明の目的を損わない範囲で添加してもよい。ただし、PbOは環境影響上、使用を控えることが望まれる成分であるから、PbOは導入しないことが好ましい。また、Fを酸化物基準で、2%以下の量、好ましくは2%未満の量で添加することもできる。均質なガラスを得る観点からは、Fを導入しないことが好ましい。また、Sb23は、外割添加量として、例えば0〜0.1%の範囲の量で上述の光学ガラスに添加してもよい。Sb23の外割添加量は、着色防止の観点から、0〜0.02%の範囲が好ましい。
【0028】
以上、上述の光学ガラスのガラス組成について説明した。次に、上述の光学ガラスのガラス特性について説明する。
【0029】
上述の光学ガラスは、1.78〜1.83の範囲の屈折率ndおよび20〜25の範囲のアッベ数νdを有する高屈折率高分散光学ガラスである。屈折率ndの下限は好ましくは1.790以上、より好ましくは1.800以上、上限は好ましくは1.820未満、より好ましくは1.815以下である。アッベ数νdの下限は好ましくは21以上、より好ましくは22以上、上限は好ましくは24以下、より好ましくは23以下である。以上の屈折率ndおよびアッベ数νdを有する光学ガラスは、光学系において有用である。
【0030】
上述の光学ガラスは、優れた耐失透性を示すことができる高屈折率・高分散特性を有する光学ガラスである。耐失透性の指標の1つとしては、液相温度を挙げることができる。上述の光学ガラスは、例えば1050℃以下の液相温度を示すことができ、1000℃以下の液相温度を示すこともできる。なお上述の光学ガラスの液相温度の下限は、例えば900℃以上であるが、特に限定されるものではない。
液相温度の低いガラスは、軟化点付近での失透安定性が高いため、リヒートプレスのための加熱や精密プレス成形における加熱においてガラス中に結晶が析出することを防ぐことができる。また、液相温度の低いガラスは、低温で流出させることができるため、熔融ガラスを流出する際の温度を低くすることができる。ここでの温度を低くすることにより、ダイレクトプレス法による光学素子ブランク作製時や精密プレス成形法に用いるプレス成形用ガラス素材の作製時においてガラス中に結晶が析出することを防ぐことが可能となる。
また、熔融ガラスを流出する際の温度を低くすることにより、揮発による脈理発生を抑えること、および光学特性変動を低減することもできる。
更に、液相温度を低くすることにより、熔解を行うルツボのガラスによる侵蝕を抑えることができる。その結果、ルツボを構成する白金などの物質が、侵蝕によってガラス中に混入し異物となることや、イオンとして溶け込んでガラスの着色を引き起こすことを回避することができる。
【0031】
ガラス転移温度は、ガラス安定性の観点からは、500℃以上であることが好ましい。他方、良好なプレス成形性を得る観点からは、ガラス転移温度は低いことが好ましく、例えば570℃以下であることが好適である。
【0032】
以上説明したように、上述の光学ガラスは、高屈折率・高分散特性を有する、ダイレクトプレス法、リヒートプレス法、精密プレス法のいずれの方法にも好適なガラスである。
【0033】
光学ガラスは、目的のガラス組成が得られるように、原料である酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物などを秤量、調合し、十分に混合して混合バッチとし、熔融容器内で加熱、熔融し、脱泡、攪拌を行い均質かつ泡を含まない熔融ガラスを作り、これを成形することによって得ることができる。具体的には公知の熔融法を用いて作ることができる。
【0034】
[光学素子ブランク、プレス成型用ガラス素材、およびそれらの製造方法]
本発明の他の一態様は、
上述の光学ガラスからなる光学素子ブランク;
上述の光学ガラスからなるプレス成形用ガラス素材;
上述の光学ガラスをプレス成形用ガラス素材に成形する工程を備えるプレス成形用ガラス素材の製造方法;および、
上述のプレス成形用ガラス素材を、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子ブランクを作製する工程を備える光学素子ブランクの製造方法、
に関する。
【0035】
光学素子ブランクとは、目的とする光学素子の形状に近似し、光学素子の形状に研削、研磨しろを加えた光学素子母材である。光学素子ブランクの表面を研削、研磨することにより、光学素子が仕上げられる。上述の光学ガラスからなるプレス成形用ガラス素材を加熱により軟化した状態で、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子ブランクを作製することができる。上述の光学ガラスは、優れた耐失透性を示すことができるため、プレス成形時の加熱によりガラス中に結晶が析出することを防ぐことができる。
【0036】
プレス成形用ガラス素材のプレス成形は、加熱して軟化した状態にあるプレス成形用ガラス素材をプレス成形型でプレスすることにより行うことができる。加熱、プレス成形は、ともに大気中で行うことができる。プレス成形用ガラス素材の表面に、窒化硼素などの粉末状離型剤を均一に塗布し、加熱、プレス成形すると、ガラスと成形型の融着を確実に防止できるほか、プレス成形型の成形面に沿ってガラスをスムーズに延ばすことができる。プレス成形後にアニールしてガラス内部の歪を低減することにより、均質な光学素子ブランクを得ることができる。
【0037】
一方、プレス成形用ガラス素材とは、プリフォームとも呼ばれ、そのままの状態でプレス成形に供されるものに加え、切断、研削、研磨などの機械加工を施すことによりプレス成形に供されるものも含む。切断方法としては、ガラス板の表面の切断したい部分にスクライビングと呼ばれる方法で溝を形成し、溝が形成された面の裏面から溝の部分に局所的な圧力を加えて、溝の部分でガラス板を割る方法や、切断刃によってガラス板をカットする方法などがある。また、研削、研磨方法としてはバレル研磨などが挙げられる。
【0038】
[光学素子およびその製造方法]
本発明の他の一態様は、
上述の光学ガラスからなる光学素子;
上述の光学素子ブランクを研削および/または研磨することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法(以下、「方法A」という);
上述のプレス成形用ガラス素材を、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法(以下、「方法B」という)、
に関する。
【0039】
方法Aにおいて、研削、研磨は公知の方法を適用すればよく、加工後に光学素子表面を十分洗浄、乾燥させるなどすることにより、内部品質および表面品質の高い光学素子を得ることができる。方法Aは、各種球面レンズ、プリズムなどの光学素子を製造する方法として好適である。
【0040】
方法Bにおけるプレス成形は、光学素子の光学機能面をプレス成形型の成形面を転写することにより形成する精密プレス成形法(モールドオプティクス成形とも呼ばれる。)により行うことができる。ここで、光学素子の光線を透過したり、屈折させたり、回折させたり、反射させたりする面を光学機能面と呼ぶ。例えばレンズを例にとると、非球面レンズの非球面や球面レンズの球面などのレンズ面が光学機能面に相当する。精密プレス成形法は、プレス成形型の成形面を精密にガラスに転写することにより、プレス成形で光学機能面を形成する方法である。つまり光学機能面を仕上げるために研削や研磨などの機械加工を加える必要がない。精密プレス成形法は、レンズ、レンズアレイ、回折格子、プリズムなどの光学素子の製造に好適であり、特に非球面レンズを高生産性のもとに製造する方法として最適である。
【0041】
精密プレス成形法の一実施態様では、表面が清浄状態のプリフォームを、プリフォームを構成するガラスの粘度が105〜1011Pa・sの範囲を示すように再加熱し、再加熱されたプリフォームを上型、下型を備えた成形型によってプレス成形する。成形型の成形面には必要に応じて離型膜を設けてもよい。なお、プレス成形は、成形型の成形面の酸化を防止する上から、窒素ガスや不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。プレス成形品は成形型より取り出され、必要に応じて徐冷される。成形品がレンズなどの光学素子の場合には、必要に応じて表面に光学薄膜をコートしてもよい。
【0042】
このようにして、屈折率ndが1.78〜1.83の範囲であり、アッベ数νdが20〜25の範囲であって、各種成形法に好適なリン酸系光学ガラスからなるレンズ、レンズアレイ、回折格子、プリズムなどの光学素子を製造することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例に基づき更に説明する。但し本発明は、実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0044】
1.光学ガラスおよび精密プレス成形用プリフォームに関する実施例、比較例
表1、2に示す組成の光学ガラスが得られるように、各ガラス成分に対応する酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物等のガラス原料を所定の割合に150〜300g秤量し、十分に混合して調合バッチとした。これを白金ルツボに入れ、1000〜1250℃で攪拌しながら空気中で2〜4時間、ガラスの熔解を行った。熔解後、熔融ガラスを40×70×15mmのカーボンの金型に流し、ガラス転移温度まで放冷してから直ちにアニール炉に入れ、ガラスの転移温度範囲で約1時間アニールして炉内で室温まで放冷し、各光学ガラスを作製した。
下記方法により、各光学ガラスの屈折率、アッベ数、ガラス転移温度、および液相温度を測定した。
【0045】
測定方法
(1)屈折率(nd)およびアッべ数(νd)
徐冷降温速度を−30℃/時にして得られた光学ガラスについて測定した。
(2)ガラス転移温度Tg
示差走査熱量計(DSC(Differential Scanning Calorimetry))により、昇温速度10℃/分にして測定した。
(3)液相温度LT
ガラス試料5〜20ccを任意温度に設定した試験炉に2時間保持し、倍率10〜100倍の光学顕微鏡により結晶の有無を観察し、液相温度を測定した。
(4)失透性評価
1cm角ガラス試料を、そのガラスのガラス転移温度Tgに設定した第1の試験炉で10分間加熱し、さらにそのガラスのTgプラス10℃に設定した第2の試験炉に10分間加熱した後、結晶または白濁の有無を光学顕微鏡(観察倍率:10〜100倍)で確認した。結晶も白濁も確認されなかった場合は○、結晶および白濁の少なくとも一方が確認された場合は×と判定した。本明細書では、耐失透性の指標として、以上の評価結果を用いた。
【0046】
測定結果を、表1、2に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
比較例として、本発明の一態様にかかる光学ガラスとはガラス組成が相違する特開平6−345481号公報記載の実施例2、3、6の組成の光学ガラスが得られるように、上述の実施例と同様の方法により光学ガラスを作製した。作製した光学ガラスについて、上述の失透性評価を行ったところ、評価結果はいずれも「×」であった。
【0050】
他の比較例として、本発明の一態様にかかる光学ガラスとはガラス組成が相違する特開平5−270853号公報記載の実施例10の組成の光学ガラスが得られるように、上述の実施例と同様の方法により光学ガラスを作製した。作製した光学ガラスについて実施例と同様の方法により屈折率およびアッベ数の測定を行ったところ、ndは1.76202、νdは25.24であり、上述の光学ガラスが満たす光学特性を有さないことが確認された。
本発明の一態様にかかる光学ガラスとはガラス組成が相違する特開平6−345481号公報記載の実施例4についても同様の評価を行ったところ、ndは1.72914、νdは26.22であり、上述の光学ガラスが満たす光学特性を有さないことが確認された。
【0051】
表1に示す実施例の光学ガラスが得られる高品質かつ均質化された熔融ガラスを白金合金製のパイプから連続流出させた。流出する熔融ガラスをパイプ流出口から滴下させ、複数のプリフォーム成形型で次々と受け、浮上成形法により複数個の球状のプリフォームを成形した。なお、流出時のガラスの温度は液相温度よりも数℃高温とした。
【0052】
実施例の光学ガラスから得られたプリフォームは、顕微鏡で観察できる結晶はなく、透明かつ均質であった。これらのプリフォームはいずれも失透しておらず、高い質量精度のものが得られた。
【0053】
実施例の光学ガラスから、滴下法に変えて降下切断法を用いてプリフォームを作製した。降下切断法により得られたプリフォームにも同様に失透が認められず、高質量精度のプリフォームが得られた。また、滴下法、降下切断法ともプリフォームに分離の際の痕跡は認められなかった。白金製パイプを使用しても、白金合金製パイプと同様、熔融ガラスの流出によってパイプが破損することはなかった。
【0054】
2.光学素子に関する実施例
上述のプリフォームの表面に必要に応じてコーティングを施し、成形面に炭素系離型膜を設けたSiC製の上下型および胴型を含むプレス成形型内に導入し、窒素雰囲気中で成形型とプリフォームを一緒に加熱してプリフォームを軟化し、精密プレス成形して上記各種ガラスからなる非球面凸メニスカスレンズ、非球面凹メニスカスレンズ、非球面両凸レンズ、非球面両凹レンズの各種レンズを作製した。なお、精密プレス成形の各条件は前述の範囲で調整した。
【0055】
このようにして作製した各種レンズを観察したところ、レンズ表面に傷、クモリ、破損は全く認められなかった。
【0056】
こうしたプロセスを繰り返し行い、各種レンズの量産テストを行ったが、ガラスとプレス成形型の融着などの不具合は発生せず、表面および内部ともに高品質のレンズを高精度に生産することができた。このようにして得たレンズの表面には反射防止膜をコートしてもよい。
【0057】
次いで、上述のプリフォームと同様のものを加熱、軟化し、別途、予熱したプレス成形型に導入し、精密プレス成形して上記各種ガラスからなる非球面凸メニスカスレンズ、非球面凹メニスカスレンズ、非球面両凸レンズ、非球面両凹レンズの各種レンズを作製した。なお、精密プレス成形の各条件は前述の範囲で調整した。
【0058】
このようにして作製した各種レンズを観察したところ、分相による白濁等は認められず、レンズ表面に傷、クモリ、破損は全く認められなかった。
【0059】
こうしたプロセスを繰り返し行い、各種レンズの量産テストを行ったが、ガラスとプレス成形型の融着などの不具合は発生せず、表面および内部ともに高品質のレンズを高精度に生産することができた。このようにして得たレンズの表面には反射防止膜をコートしてもよい。
【0060】
プレス成形型の成形面の形状を適宜、変更し、プリズム、マイクロレンズ、レンズアレイなどの各種光学素子を作製することもできる。
【0061】
3.光学素子ブランクおよび光学素子に関する実施例
表1に示す実施例の各ガラスが得られる清澄、均質化した熔融ガラスを用意し、白金製パイプから一定流量で連続して流出し、パイプ下方に水平に配置した一側壁が開口した鋳型に流し込み、一定の幅を厚みを有するガラス板に成形しつつ、鋳型の開口部から成形したガラス板を引き出した。引き出されたガラス板を、アニール炉内でアニール処理し、歪を低減し、脈理や異物が無く、着色の少ない上記各光学ガラスからなるガラス板を得た。
次に、これら各ガラス板を縦横に切断し、同一寸法を有する直方体形状のガラス片を複数個得た。さらに複数個のガラス片をバレル研磨して、目的とするプレス成形品の重量にあわせ、プレス成形用ガラスゴブとした。
なお、上述の方法とは別に、熔融ガラスを一定流速で白金製ノズルから流出し、このノズルの下方に多数の受け型を次々と移送して所定質量の熔融ガラス塊を次々と受け、これら熔融ガラス塊を球または回転体形状に成形し、アニール処理してからバレル研磨して目的とするプレス成形品の質量にあわせ、プレス成形用ガラスゴブとしてもよい。
【0062】
上述各ガラスゴブの全表面に粉末状の離型剤、例えば窒化ホウ素粉末を塗布し、ヒーターで加熱、軟化してから上型および下型を備えたプレス成形型内に投入し、プレス成形型で加圧して目的とするレンズ形状に研削、研磨による取り代を加えたレンズに近似した形状の各レンズブランクを成形した。
【0063】
続いて、各レンズブランクをアニール処理して歪を低減した。冷却したレンズブランクに研削、研磨加工を施して、目的とするレンズに仕上げた。なお、一連の工程は大気中で行った。得られた各レンズとも優れた光透過性を備えていた。レンズには必要に応じて反射防止膜などの光学多層膜をコートすることもできる。
このようなレンズにより、良好な撮像光学系を構成することができる。
なお、プレス成形型の形状、ガラスゴブの体積を適宜設定することにより、プリズム等その他の光学素子を製造することもできる。
【0064】
最後に、前述の各態様を総括する。
【0065】
一態様によれば、酸化物基準のガラス組成において、P25含有量が20〜34質量%、B23含有量が0質量%超かつ10質量%以下、質量比(B23/P25)が0超かつ0.39未満、質量比[TiO2/(TiO2+Nb25+WO3+Bi23+Ta25)]が0.059〜0.180の範囲、質量比[(P25+B23+SiO2)/(Na2O+K2O+Li2O)]が1.39〜1.80の範囲であり、屈折率ndが1.78〜1.83の範囲であり、かつアッベ数νdが20〜25の範囲の高屈折率・低分散特性を有する、優れた耐失透性を有する光学ガラスを提供することができる。
【0066】
上述の光学ガラスは、先に記載した組成調整を行うことにより、1050℃以下の液相温度を示すことができる。
【0067】
より一層優れた耐失透性と、高屈折率・高分散特性とを両立する観点から、上述の光学ガラスは、以下の1つ以上のガラス組成を満たすことが、好ましい。
【0068】
質量比[SiO2/(SiO2+P25+B23)]が0.12以下である;
Li2O含有量が0質量%以上0.3質量%未満である;
質量比[Li2O/(Na2O+K2O+Li2O)]が0.0115未満である;
Li2O含有量が0質量%以上0.3質量%未満である;
質量比[(P25+B23+SiO2)/(TiO2+Nb25+WO3+Bi23+Ta25)]が0.49以上である。
以上説明した光学ガラスは、ダイレクトプレス法、リヒートプレス法、精密プレス法のいずれにおいても失透を抑制することができるため、光学素子ブランク、プレス成形用ガラス素材、および光学素子を得るためのガラスとして、好適なものである。
【0069】
即ち、他の態様によれば、上述の光学ガラスからなる光学素子ブランク、プレス成形用ガラス素材、および光学素子が提供される。
【0070】
他の態様によれば、上述の光学ガラスをプレス成形用ガラス素材に成形する工程を備えるプレス成形用ガラス素材の製造方法が提供される。
【0071】
また、他の態様によれば、上述のプレス成形用ガラス素材を加熱により軟化した状態で、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子ブランクを作製する工程を備える光学素子ブランクの製造方法も提供される。
【0072】
更に他の態様によれば、上述の光学素子ブランクを研削および/または研磨することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法も提供される。
【0073】
更に別の態様によれば、上述のプレス成形用ガラス素材を加熱により軟化した状態で、プレス成形型を用いて精密プレス成形することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法も提供される。
【0074】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、上述の例示されたガラス組成に対し、明細書に記載の組成調整を行うことにより、本発明の一態様にかかる光学ガラスを得ることができる。
また、明細書に例示または好ましい範囲として記載した事項の2つ以上を任意に組み合わせることは、もちろん可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、ガラスレンズ、レンズアレイ、回折格子、プリズムなどの各種光学素子の製造分野において有用である。