特許第6444070号(P6444070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6444070冷間成形用二軸延伸ポリアミドフィルム及びそれを用いた包材
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  • 特許6444070-冷間成形用二軸延伸ポリアミドフィルム及びそれを用いた包材 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444070
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】冷間成形用二軸延伸ポリアミドフィルム及びそれを用いた包材
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/02 20060101AFI20181217BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20181217BHJP
   C08K 5/526 20060101ALI20181217BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20181217BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20181217BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   C08L77/02
   C08K5/13
   C08K5/526
   C08J5/18CFG
   B32B27/00 C
   H01M2/02 K
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-125533(P2014-125533)
(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公開番号】特開2016-3305(P2016-3305A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】313016820
【氏名又は名称】興人フィルム&ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 誠
(72)【発明者】
【氏名】永江 修一
(72)【発明者】
【氏名】村上 武典
(72)【発明者】
【氏名】三浦 淑信
(72)【発明者】
【氏名】石原 晋一郎
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−189614(JP,A)
【文献】 特開2011−213929(JP,A)
【文献】 特開平04−004232(JP,A)
【文献】 特開2011−104946(JP,A)
【文献】 特開2013−256671(JP,A)
【文献】 特開2003−313321(JP,A)
【文献】 特開2004−074419(JP,A)
【文献】 特開2013−058326(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102069617(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
C08J 5/00 − 5/02
C08J 5/12 − 5/22
H01M 2/00 − 2/08
B29C 55/00 − 55/30
B29C 61/00 − 61/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂100重量部に対し、1種又は2種以上の酸化防止剤を0.01〜0.5重量部の範囲で含有するポリアミド樹脂組成物を原料とするポリアミドフィルムの少なくとも片面に、易接着層が塗工された、冷間成形用二軸延伸ポリアミド積層シートであって、
該ポリアミド樹脂は数平均分子量10000〜30000のナイロン6であり、
該酸化防止剤はN,N’−(1,6−ヘキサンジイル)ビス[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパンアミド]、2,2−ビス[[[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]オキシ]メチル]プロパン−1,3−ジオール1,3−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート)、6−tert−ブチル−4−[3−[(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]プロピル]−2−メチルフェノール、ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸](2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジイル)ビス(2,2−ジメチル−2,1−エタンジイル)、亜りん酸トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエステル、又は4,4’,4’’−[(2,4,6−トリメチルベンゼン−1,3,5−トリイル)トリス(メチレン)]トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)であり、
該易接着層は下記(a)、(b)及び(c)成分を含み、(a)及び(b)と、(c)との固形分重量比が98〜30/2〜70である塗工剤からなる、延伸後乾燥重量0.002〜0.200g/mの層であり、
(a)ガラス転移点(Tg)が40℃〜150℃である水系ポリウレタン樹脂、
(b)2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び/又は2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールジ[ポリオキシエチレン]エーテルである非イオン系界面活性剤、
(c)水溶性ポリエポキシ化合物、
該二軸延伸ポリアミド積層シートは一軸引張試験(試料幅15mm、チャック間距離100mm、引張速度200mm/min.)における4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)すべての50%モジュラス値が150MPa以上であり、
該二軸延伸ポリアミド積層シートの厚みは5〜50μmであることを特徴とする、
(1)pH4.7の低pH環境および/または長時間(3週間)の70℃の熱水環境における耐クラック性に優れ、
(2)該二軸延伸ポリアミド積層シートを基材層として用いたときに、50℃×90RH%の高温高湿度下、該基材層とアルミニウム箔層との間でのデラミネーションが発生せず且つ
(3)積層シートの成形性に優れた、
二軸延伸ポリアミド積層シート。
【請求項2】
少なくとも基材層、バリア層、シーラント層により形成された冷間成形用包材であって、
該基材層が請求項1に記載の冷間成形用二軸延伸ポリアミド積層シートであり、
該バリア層が厚み20〜100μmのアルミニウム箔層であり、
該冷間成形用包材の総厚みが200μm以下であることを特徴とする冷間成形用包材。
【請求項3】
電池ケースである、請求項に記載の冷間成形用包材。
【請求項4】
少なくとも基材層、バリア層及びシーラント層の順に積層して構成された、冷間成形用包材であって、
該基材層はポリアミド樹脂100重量部に対し、1種又は2種以上の酸化防止剤を0.01〜0.5重量部の範囲で含有するポリアミド樹脂組成物を原料とするポリアミドフィルムの少なくとも片面に、易接着層が塗工された冷間成形用二軸延伸ポリアミド積層シートであって、
該ポリアミド樹脂は数平均分子量10000〜30000のナイロン6であり、
該酸化防止剤はN,N’−(1,6−ヘキサンジイル)ビス[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパンアミド]、2,2−ビス[[[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]オキシ]メチル]プロパン−1,3−ジオール1,3−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート)、6−tert−ブチル−4−[3−[(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]プロピル]−2−メチルフェノール、ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸](2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジイル)ビス(2,2−ジメチル−2,1−エタンジイル)、亜りん酸トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエステル、又は4,4’,4’’−[(2,4,6−トリメチルベンゼン−1,3,5−トリイル)トリス(メチレン)]トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)であり、
該易接着層は下記(a)、(b)及び(c)成分を含み、(a)及び(b)と、(c)との固形分重量比が98〜30/2〜70である塗工剤からなる、延伸後乾燥重量0.002〜0.200g/mの層であり
(a)ガラス転移点(Tg)が40℃〜150℃である水系ポリウレタン樹脂、
(b)2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び/又は2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールジ[ポリオキシエチレン]エーテルである非イオン系界面活性剤、
(c)水溶性ポリエポキシ化合物、
該二軸延伸ポリアミド積層シートは一軸引張試験(試料幅15mm、チャック間距離100mm、引張速度200mm/min.)における4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)すべての50%モジュラス値が150MPa以上であり、
該二軸延伸ポリアミド積層シートの厚みは5〜50μmであり、
前記バリア層が厚み20〜100μmのアルミニウム箔層であ
該冷間成形用包材の総厚みが200μm以下である、
(1)pH4.7の低pH環境および/または長時間(3週間)の70℃の熱水環境における耐クラック性に優れ、
(2)50℃×90RH%の高温高湿度下、該基材層と該バリア層との間でのデラミネーションが発生せず且つ
(3)成形性に優れた、
冷間成形用包材。
【請求項5】
電池ケースである、請求項に記載の冷間成形用包材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷間成形用包材、特にリチウムイオン二次電池等の電池ケース用包材の主要基材として好適に用いられる、冷間成形用二軸延伸ポリアミドフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、燃料電池等、または液体、固体セラミック、有機物等の誘電体を含む液体コンデンサ、固体コンデンサ、二重層コンデンサ等の電解型コンデンサ等の化学的エネルギーを電気的エネルギーに変換する素子を含む種々の電池が、パソコン、携帯端末装置(携帯電話、PDA等)、ビデオカメラ、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星等に広く用いられている。これらの電池用外装体としては、金属をプレス加工して円筒状または直方体状に容器化した金属製缶、あるいは、プラスチックフィルム、金属箔等をラミネートして得られる積層体を袋状にしたもの(以下、外装体)が用いられていた。
【0003】
しかしながら、電池の外装体のうち、金属製缶タイプにおいては、容器外壁がリジッドであるため、ハード側を電池の形状に合わせて設計する必要があり、形状の自由度がなくなるという問題があった。また、金属製缶タイプは容器自体が厚いため、長時間使用時など電池が発熱した場合に放熱しにくいという欠点もあった。一方、積層体タイプは、金属端子の取出し易さや密封のし易さ、あるいは柔軟性を有するため、電子機器や電子部品の適当な空間に合わせた形状とすることができ、電子機器や電子部品自体の形状をある程度自由に設計することができる。さらに、薄膜で放熱性にも優れているため、発熱による異常放電を防止することも可能である。よって、積層体タイプは金属製缶タイプに比べて小型化、軽量化を図りやすい、および安全性が高い等の利点から、電池用外装体として主流になりつつある。
【0004】
積層体タイプの外装体を用いたリチウム電池の形態としては、包材を筒状に加工し、リチウム電池本体および正極および負極との各々に接続された金属端子を外側に突出した状態で収納し、開口部を熱接着して密封した袋タイプ(たとえば、特許文献1の図2参照)と包材を容器状に成形し、この容器内にリチウム電池本体および正極および負極との各々に接続された金属端子を外側に突出した状態で収納し、平板状の包材ないし容器状に成形した包材で被覆すると共に、四周縁を熱接着して密封した成形タイプ(たとえば、特許文献1の図3参照)が知られている。
【0005】
そして、成形タイプは袋タイプに比べて、電池本体をタイト(ぴったりとした状態)に収納することができるため、体積エネルギー密度を向上させることができると共に、リチウム電池本体の収納がし易いなどの利点がある。さらに、成形タイプのうち、冷間(常温)成形法は、加熱成形法に比べて加熱による強度物性の低下や熱収縮の発生など成形加工時に包材自体の特性が変化する危険性が低く、さらに成形装置も安価で、簡便であるとともに生産性も高いことから、現在主流の成形方法となっている。
【0006】
電池用外装体は、高度な防湿性、密封性、耐突刺性、耐ピンホール性、絶縁性、耐熱・耐寒性、耐電解質性(耐電解液性)、耐腐蝕性(電解質の劣化や加水分解により発生するフッ酸に対する耐性)等の電池としての性能、品質を保つための基本的な機能、物性に加え、近年では、用途が拡大するにつれて使用環境も様々であり、より過酷な環境下でも電池としての機能を果たすための長期的な耐久性、耐劣化性も求められている。高温高湿下、さらには低pH環境下といった過酷な条件下では、ポリアミド樹脂の強度低下が起こり、絞り成形後の残留応力によって基材表面にクラック(ひび割れ)が発生してしまう。特に、より深い成形、さらにシャープな成形となると、残留応力が残りやすく、クラックがより生じやすい。
【0007】
特許文献2では、基材層であるポリアミドフィルムの熱収縮応力、および引張強度をある範囲に限定することにより、積層体タイプ、特に冷間成形タイプの電池用外装体の主たる品質的な課題であった優れた冷間成形性の確保と各層間でのデラミネーションの抑制、さらに、ポリアミドフィルム表面に易接着コーティングを施すことによって高温高湿下でのデラミネーションを防止することに成功している。しかしながら、より長期的、もしくはポリアミド樹脂の強度低下が促進される、低pH環境のような過酷条件で発生するポリアミドフィルムのクラックについては言及していない。
【0008】
一方、ポリアミドフィルムの劣化防止を目的として、特にレトルト時の強度低下、白化防止を求められるような用途に耐劣化性フィルムが開発されている。(特許文献3)しかし、これを電池用外包材の基材として応用した例は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−74419号公報
【特許文献2】特開2013−189614号公報
【特許文献3】特開平4−4232公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述のような、過酷条件での耐久性、特に長期間の高温高湿度下、低pH環境における耐クラック性を有する冷間成形用ポリアミドフィルムを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は本課題に鋭意研究を重ねた結果、特定の酸化防止剤を添加した二軸延伸ポリアミド樹脂を使用し、それを基材とした冷間成形用積層シートにおいて高温高湿度化、水中、あるいは低pH溶液、等の過酷条件下において、ポリアミド基材の劣化によるクラックや破断を抑制し、電池用包材に使用した場合等の耐久性、安全性を大きく改良することを見出した。
【0012】
具体的には、
[1]ポリアミド樹脂100重量部に対し、ヒンダードフェノール系もしくはリン系の内から選ばれる1種又は2種以上の酸化防止剤を0.01〜0.5重量部の範囲で含有するポリアミド樹脂組成物を原料とする耐久性に優れた冷間成形用二軸延伸ポリアミドフィルム、
[2]ヒンダードフェノール系もしくはリン系酸化防止剤が、N,N’−(1,6−ヘキサンジイル)ビス[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパンアミド]、2,2−ビス[[[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]オキシ]メチル]プロパン−1,3−ジオール1,3−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート)、6−tert−ブチル−4−[3−[(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]プロピル]−2−メチルフェノール、ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸](2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジイル)ビス(2,2−ジメチル−2,1−エタンジイル)、亜りん酸トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエステル、4,4’,4’’−[(2,4,6−トリメチルベンゼン−1,3,5−トリイル)トリス(メチレン)]トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)である[1]に記載の冷間成形用二軸延伸ポリアミドフィルム、[3]易接着層としてポリウレタン樹脂又はアクリル酸系共重合体樹脂が少なくとも片面に塗布された[1]又は[2]に記載の冷間成形用二軸延伸ポリアミドフィルム、
[4]易接着層が0.002〜0.200g/mである[3]に記載の冷間成形用二軸延伸ポリアミドフィルム、
[5]易接着層が下記のA、Bであって固形分重量比A/B=98〜30/2〜70から成る組成物が主成分である[4]に記載の冷間成形用二軸延伸ポリアミドフィルム、
A:三重結合の二つの隣接炭素原子にいずれも水酸基及びメチル基が置換されたアセチレングリコール及び/又はそのエチレンオキサイド付加物である非イオン系界面活性剤を含有した水系ポリウレタン樹脂
B:水溶性ポリエポキシ化合物
[6]一軸引張試験(試料幅15mm、チャック間距離100mm、引張速度200mm/min.)における4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)すべての50%モジュラス値が120MPa以上であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の冷間成形用二軸延伸ポリアミドフィルム、
[7]少なくとも基材層、バリア層、シーラント層により形成され、基材層が[1]〜[6]のいずれかに記載の冷間成形用二軸延伸ポリアミドフィルムであることを特徴とする耐久性に優れた冷間成形用包材、
[8]電池ケースである[7]に記載の冷間成形用包材、
を提供する。
ここで、本発明の好ましい態様のうち一つは、ポリアミド樹脂100重量部に対し、1種又は2種以上の酸化防止剤を0.01〜0.5重量部の範囲で含有するポリアミド樹脂組成物を原料とするポリアミドフィルムの少なくとも片面に、易接着層が塗工された、冷間成形用二軸延伸ポリアミド積層シートであって、
該ポリアミド樹脂は数平均分子量10000〜30000のナイロン6であり、
該酸化防止剤はN,N’−(1,6−ヘキサンジイル)ビス[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパンアミド]、2,2−ビス[[[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]オキシ]メチル]プロパン−1,3−ジオール1,3−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート)、6−tert−ブチル−4−[3−[(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]プロピル]−2−メチルフェノール、ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸](2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジイル)ビス(2,2−ジメチル−2,1−エタンジイル)、亜りん酸トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエステル、又は4,4’,4’’−[(2,4,6−トリメチルベンゼン−1,3,5−トリイル)トリス(メチレン)]トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)であり、
該易接着層は下記(a)、(b)及び(c)成分を含み、(a)及び(b)と、(c)との固形分重量比が98〜30/2〜70である塗工剤からなる、延伸後乾燥重量0.002〜0.200g/mの層であり、
(a)ガラス転移点(Tg)が40℃〜150℃である水系ポリウレタン樹脂、
(b)2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び/又は2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールジ[ポリオキシエチレン]エーテルである非イオン系界面活性剤、
(c)水溶性ポリエポキシ化合物、
該二軸延伸ポリアミド積層シートは一軸引張試験(試料幅15mm、チャック間距離100mm、引張速度200mm/min.)における4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)すべての50%モジュラス値が150MPa以上であり、
該二軸延伸ポリアミド積層シートの厚みは5〜50μmであることを特徴とする、
(1)pH4.7の低pH環境および/または長時間(3週間)の70℃の熱水環境における耐クラック性に優れ、
(2)該二軸延伸ポリアミド積層シートを基材層として用いたときに、50℃×90RH%の高温高湿度下、該基材層とアルミニウム箔層との間でのデラミネーションが発生せず且つ
(3)積層シートの成形性に優れた、
二軸延伸ポリアミド積層シート
である。
また、本発明の好ましい態様のうちもう一つは、少なくとも基材層、バリア層及びシーラ
ント層の順に積層して構成された、冷間成形用包材であって、
該基材層はポリアミド樹脂100重量部に対し、1種又は2種以上の酸化防止剤を0.01〜0.5重量部の範囲で含有するポリアミド樹脂組成物を原料とするポリアミドフィルムの少なくとも片面に、易接着層が塗工された冷間成形用二軸延伸ポリアミド積層シートであって、
該ポリアミド樹脂は数平均分子量10000〜30000のナイロン6であり、
該酸化防止剤はN,N’−(1,6−ヘキサンジイル)ビス[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパンアミド]、2,2−ビス[[[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]オキシ]メチル]プロパン−1,3−ジオール1,3−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート)、6−tert−ブチル−4−[3−[(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]プロピル]−2−メチルフェノール、ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸](2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジイル)ビス(2,2−ジメチル−2,1−エタンジイル)、亜りん酸トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエステル、又は4,4’,4’’−[(2,4,6−トリメチルベンゼン−1,3,5−トリイル)トリス(メチレン)]トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)であり、
該易接着層は下記(a)、(b)及び(c)成分を含み、(a)及び(b)と、(c)との固形分重量比が98〜30/2〜70である塗工剤からなる、延伸後乾燥重量0.002〜0.200g/mの層であり
(a)ガラス転移点(Tg)が40℃〜150℃である水系ポリウレタン樹脂、
(b)2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び/又は2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールジ[ポリオキシエチレン]エーテルである非イオン系界面活性剤、
(c)水溶性ポリエポキシ化合物、
該二軸延伸ポリアミド積層シートは一軸引張試験(試料幅15mm、チャック間距離100mm、引張速度200mm/min.)における4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)すべての50%モジュラス値が150MPa以上であり、
該二軸延伸ポリアミド積層シートの厚みは5〜50μmであり、
前記バリア層が厚み20〜100μmのアルミニウム箔層であ
該冷間成形用包材の総厚みが200μm以下である、
(1)pH4.7の低pH環境および/または長時間(3週間)の70℃の熱水環境における耐クラック性に優れ、
(2)50℃×90RH%の高温高湿度下、該基材層と該バリア層との間でのデラミネーションが発生せず且つ
(3)成形性に優れた、冷間成形用包材
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、冷間成形用二軸延伸ポリアミドフィルムに関して、原料として所定の酸化防止剤を所定量添加したものを使用することで、成形後、過酷条件に曝しても強度低下を抑え、これによってクラック発生を抑制することが可能となった。また、少なくとも1面に特定の樹脂が薄く塗工され、異方性が少なく、引張強度が大きい二軸延伸ポリアミドフィルムを冷間成形用包材、特にリチウムイオン二次電池等の電池ケース用包材の主要基材として用いることにより、ヒートシールして密封する工程や高温高湿度の状態で長時間使用された場合においても、バリア層と基材層間でのデラミネーション発生せず、また、あらゆる金型形状や成形深さの冷間成形加工時においてもアルミニウム箔の破断やピンホール等の発生が無く、安定した成形性を確保することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】二軸延伸ポリアミドフィルムを製造するインライン樹脂塗工チューブラー延伸装置の工程図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態について説明する。
(二軸延伸ポリアミドフィルムの原料) 本発明の二軸延伸ポリアミドフィルム(以後、二軸延伸ポリアミドフィルム)の原料は、ポリアミド系樹脂であれば特に限定されるものでは無い。例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6,66,12共重合体、その他ナイロン系共重合体、ナイロンMXD6、アラミド、ポリアミドイミド(PAI)、芳香族ポリイミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリマレイミドアミン(PMIA)、ポリアミノビスマレイミド(PABM)などが挙げられるが、生産性や冷間成形性、強度物性を主としたフィルム物性の観点からナイロン6がもっとも好ましい。また、ナイロン6原料において、数平均分子量は10000〜30000が好ましく、特に好ましくは22000〜24000である。数平均分子量が10000未満の場合、得られた二軸延伸ポリアミドフィルムの衝撃強度や引張強度が不十分である。また数平均分子量が30000より大きい場合、分子鎖の絡み合いが著しく、延伸加工により過度なひずみが生じるため、延伸加工時に破断やパンクが頻繁に発生し、安定的に生産出来ない。
【0016】
(酸化防止剤)本発明に用いる酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系もしくはリン系の内から選ばれる1種又は2種以上を用いる。本発明に用いる酸化防止剤を例示すると、N,N’−(1,6−ヘキサンジイル)ビス[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパンアミド]、2,2−ビス[[[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]オキシ]メチル]プロパン−1,3−ジオール1,3−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート)、6−tert−ブチル−4−[3−[(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]プロピル]−2−メチルフェノール、ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸](2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジイル)ビス(2,2−ジメチル−2,1−エタンジイル)、亜りん酸トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエステル、4,4’,4’’−[(2,4,6−トリメチルベンゼン−1,3,5−トリイル)トリス(メチレン)]トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)等の内から選ばれる化合物の1種又は2種以上を使用する。
【0017】
ポリアミド系樹脂100重量部に対する酸化防止剤の割合が、0.01重量部より少ないと劣化防止効果が不十分となり、これを高温高湿下や低pH水溶液に長時間曝すと引張り破断強度等のフィルム強度が低下して、目的とする延伸フィルムとはならない。また、0.5重量部より多いとフィルムの表面に酸化防止剤がブリードアウトし易く、この面の印刷適性や接着性が損なわれる場合があり、酸化防止効果は一定量以上の添加で平衡に達するため、過剰に添加することは経済的な面で好ましくない。
【0018】
(塗工剤の原料)
本発明の易接着層に用いる塗工剤はポリウレタン樹脂、又はアクリル系共重合樹脂を主成分とし架橋剤にて架橋されていることが必要である。好ましい樹脂としては水系エマルジョン、架橋剤は水溶性架橋剤が塗工のしやすさや環境対応の点でも好ましい。以下樹脂の例を示すが、ポリウレタン樹脂、又はアクリル系樹脂で薄膜塗工でき、かつ適切な架橋剤による架橋構造によりに特に水や溶剤に対する樹脂自体の凝集力が極端に低下するものでなければ特にこだわらない。
【0019】
水系ポリウレタン樹脂としては、粒子径が小さく、安定性が良好な点から自己乳化型が好ましい。その粒子径は10〜100nm程度が良い。本発明に用いる水系ポリウレタン樹脂はそのガラス転移点(Tg)が40℃〜150℃が望ましい。Tgが40℃未満のものは塗工後ロール状に巻き取る際ブロッキングが発生し、密着の跡形が残り透明斑となり、更に激しい場合には巻き戻せず、無理に巻き戻すとフィルムが破断する。また、本発明はポリアミドフィルムに塗工後延伸するインライン塗工であるため、塗工後の乾燥温度及び延伸時にかかる温度よりTgが高すぎると、均一な塗膜を形成しにくい。これは連続した塗膜を形成する最低成膜温度(MFT)が一般にTg付近にあるためであり、150℃未満が好ましい。
【0020】
本発明において、水系ポリウレタン樹脂には、三重結合の二つの隣接炭素原子にいずれも水酸基及びメチル基が置換されたアセチレングリコール及び/又はそのエチレンオキサイド付加物である非イオン系界面活性剤が添加されることが好ましい。かかる界面活性剤としては、例えば日信化学工業(株)製のサーフィノール104、440等を例示することができる。添加量は、水系ポリウレタン樹脂の固形分に対し0.01〜1.0%であることが好ましい。
従来、塗工剤使用時の発泡と水の大きな表面張力によるフィルム等への均一な「濡れ」の困難さを解決するためには一般に2種類の界面活性剤(消泡剤、濡れ剤)を添加せねばならなかった。さらに多くの場合、消泡効果と濡れ効果は相反するため、一方を解決すれば、他方がかえって悪化するものであった。この界面活性剤を添加することにより、フィルムへの濡れが良くなり、塗工量が少なくても、均一の塗膜が得られるためコストダウンにもつながるのは勿論、消泡効果もあることから、塗工剤調製時及び塗工時の発泡によるトラブルも解消される。
【0021】
本発明に用いる水系ポリウレタンの架橋剤としては、水溶性エポキシ化合物、水溶性オキサゾリン化合物等、汎用の水溶性架橋剤が使用できるが、安全性の観点から水溶性ポリエポキシ化合物が特に好ましい。水溶性エポキシ化合物は水への溶解性があり、2個以上のエポキシ基を有する化合物であり、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類1モルとエピクロルヒドリン2モルとのエーテル化によって得られるジエポキシ化合物、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類1モルとエピクロルヒドリン2モル以上とのエーテル化によって得られるポリエポキシ化合物、フタル酸テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸等のジカルボン酸類1モルとエピクロルヒドリン2モルとのエステル化によって得られるジエポキシ化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
これら水溶性架橋剤は水系ポリウレタン樹脂と架橋し、塗膜の耐水性、耐溶剤性を向上せしめ、更にはポリアミドフィルムとの接着性にも寄与する。
【0022】
本発明における塗工剤には微粒子を添加してラミネート時の加工適性を向上することができる。塗工膜に微粒子が存在することにより、耐ブロッキング剤、及び巻き取り、印刷、ラミネート、塗工等の後加工工程での適度のすべり性を付与するすべり剤の機能が発現する。平均粒子径が0.001〜1.0μmの微粒子が使用され、好ましくは真球状の微粒子が用いられる。真球状微粒子とはその電子顕微鏡写真に於いて短径/長径が0.90以上であることを言う。微粒子が真球状の場合耐ブロッキング性、すべり性への効果がすぐれ、また、透明性の低下が少ないため好ましい。また、平均粒子径が0.001μm未満だと耐ブロッキング性、すべり性に効果がない。平均粒子径が1.0μmを超えると印刷適性が低下する。特に写真版印刷の場合、ハイライト部分でのインキ抜けが発生する。微粒子は無機系でも有機系でも良いが、製造工程中に変形して効果を失わない耐熱性が必要である。
【0023】
微粒子は無機、有機化合物特に限定されないが、好ましい微粒子として、例えば、日産化学工業(株)製のコロイダルシリカ"スノーテックス"ST−C(平均粒径0.010〜0.020μm)、ST−XS(平均粒径0.004〜0.006μm)等が挙げられる。
本発明において、界面活性剤を含んだ水系ポリウレタン樹脂(A)と、水溶性ポリエポキシ化合物(B)との配合比率A/Bの重量比は、固形分で98/2〜30/70が好ましい。A/Bの比率が98/2より大きいと架橋密度が減少し、耐水性、耐溶剤性、接着性が劣る。逆にA/Bの比率が30/70より小さくなると熟成中のブロッキングが問題点として残る。
また、微粒子(C)を配合量する場合は、界面活性剤を含んだ水系ポリウレタン樹脂(A)及び水溶性ポリエポキシ化合物(B)の合計量(A+B)との比率としてC/(A+B)は0.1/100〜10/100が好適である。この比率が0.1/100より小さいと耐ブロッキング性、すべり性に効果が不十分であり、逆に、10/100より大きくしても効果は変わらず経済的に不利である。
【0024】
界面活性剤を含んだ水系ポリウレタン樹脂脂、水溶性ポリエポキシ化合物及び微粒子を主成分とした水性塗工剤の塗工量は延伸後乾燥重量で0.002〜0.200g/m2 、好ましくは0.010〜0.050g/m2 であることが望ましい。0.002g/m2 未満であると均一な塗膜が得られず耐水性、接着性が不十分である。逆に0.200g/m2 以上塗工するとコート面/非コート面がブロッキングしやすくなる。また性能の向上も認められず、コストアップとなり好ましくない。
【0025】
アクリル系共重合樹脂としてはそのガラス転移点が40℃以上が好ましい。ガラス転移点が40℃未満のものは水溶性ポリエポキシ化合物で架橋・硬化させるために塗工後ロール状に巻き取り、30〜60℃で熟成する際ブロッキングが発生し、密着の跡形が残り透明斑となり、更に激しい場合には巻き戻せず、無理に巻き戻すとフィルムが破断するので好ましくない。
本発明に用いるアクリル系樹脂はアクリル酸エステル類及び/又はメタクリル酸エステル類等からなる主モノマーと、ポリアミド層との接着性を高めるための極性基を有するアクリル系モノマー及びエポキシ基と架橋反応に寄与する官能基を有するコモノマーが特に好ましく、その他に希望により更に前記のモノマーと共重合し得る中性モノマーとを共重合することにより得られる。
【0026】
前記の主モノマーのうちアクリル酸エステル類としては例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2エチルへキシル等、又、メタクリル酸エステル類としてはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2エチルへキシル等が挙げられる。
又、前記のコモノマーとしてはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸モノエステル等のα,β−不飽和カルボン酸類、メタクリル酸2ヒドロキシエチル、ポリエチレングリコールモノメタクリレート等のヒドロキシ化合物、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ化合物、アリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアミン類、N−メチルアクリルアミド等のアミド類、無水マレイン酸等の酸無水物などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらのモノマーの官能基はポリエポキシ化合物との架橋、プラスチックフィルムとの接着性等に寄与する。
【0027】
又、前記の共重合し得る中性モノマーとしてはスチレン、αメチルスチレン等のスチレン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリロニトリル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルアルキルエーテル類、エチレン、プロピレン、1−ブテン等のαオレフィン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0028】
本発明に用いるアクリル系共重合樹脂およびエポキシ架橋剤は水溶性が好ましい。有機溶剤溶液では引火爆発の危険性、急性、慢性の中毒及び高価な有機溶剤を使用することによりコストアップ等の問題点があり、本発明においては水系塗工剤を用いることが好ましい。しかし水溶性を付与するために必要最小限の有機溶剤を使用してもよい。
【0029】
前記の共重合体が水性分散液の場合は水溶液に比べて製膜性に劣り、接着性、耐水性、耐溶剤性に問題点があるので、酸或いは塩基の添加等により水溶化してから用いるのが好ましい。この際、用いる水性分散液は乳化剤を用いないで乳化したものが好ましい。また、少量の水溶性有機溶剤を使用して溶液重合したものは有機溶剤溶液に酸または塩基を添加することにより水溶化して用いる事もできるが、水溶化の方法はこれらに限定されるものではない。
【0030】
本発明に用いるアクリル系共重合樹脂の分子量は2,000以上100,000以下が好ましい。分子量が2,000未満であると耐水性、耐溶剤性、耐擦傷性が劣り、分子量が100,000を超えると水溶化が困難になり、かつ粘度も上昇し取扱いが困難になる。ここでいう分子量とはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリメタクリル酸メチルホモポリマー換算の重量平均分子量を指す。
【0031】
本発明に用いる水溶性ポリエポキシ化合物は水への溶解性があり、2個以上のエポキシ基を有する化合物であり、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類1モルとエピクロルヒドリン2モルとのエーテル化によって得られるジエポキシ化合物、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類1モルとエピクロルヒドリン2モル以上とのエーテル化によって得られるポリエポキシ化合物、フタル酸テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸等のジカルボン酸類1モルとエピクロルヒドリン2モルとのエステル化によって得られるジエポキシ化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
これらポリエポキシ化合物は本発明に用いるアクリル系共重合樹脂の架橋性官能基と架橋し、塗膜の耐水性、耐溶剤性を向上せしめ、更にはプラスッチックフィルムとの接着性にも寄与する。
【0032】
(二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法) 本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、前記ポリアミド系樹脂に前記酸化防止剤を配合した後、溶融押し出し冷却して原反フィルムを作成し、未延伸原反フィルムに対して、MD、およびTDそれぞれ延伸倍率が2.8〜4.0倍となる条件で二軸延伸加工を施した後、180〜220℃の温度条件で熱処理することにより得られる。延伸倍率は、MD、およびTDそれぞれ2.8〜4.0倍の範囲であることが好ましく、特に好ましくは3.0〜3.4倍の範囲である。延伸倍率が2.8倍未満である場合、得られた二軸延伸ポリアミドフィルムの衝撃強度や引張強度が不十分である。また4.0倍以上の場合、延伸により過度な分子鎖のひずみが発生するため、延伸加工時に破断やパンクが頻繁に発生し、安定的に生産出来ない。二軸延伸方式としては、例えばチューブラー方式やテンター方式による同時二軸延伸、あるいは逐次二軸延伸が挙げられるが、縦横の強度バランスの点で、チューブラー法による同時二軸延伸が好ましい。このように二軸延伸加工を施すことにより、特に強度物性が飛躍的に向上し、耐久性に優れた冷間成形用二軸延伸ポリアミドフィルムを得ることが出来る。
得られた延伸フィルムを熱ロール方式またはテンター方式、あるいはそれらを組み合わせた熱処理設備に任意の時間投入し、好ましくは185〜215℃、特に好ましくは190〜210℃で熱処理を行うことにより、本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムを得ることができる。
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みは、5〜50μm、より好ましくは10〜30μmであることが好ましい。厚みが5μmよりも小さい場合は、ラミネート包材の耐衝撃性が低くなり、冷間成形性が不十分となる。一方、50μmを超えると形状維持の強度は向上するものの、特に破断防止や成形性の向上への効果は小さく、体積エネルギー密度を低下させるだけである。
二軸延伸ポリアミドフィルムの4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)における50%モジュラス値は、一軸引張試験(試料幅15mm、標点間距離50mm、引張速度200mm/min)により得られた応力−ひずみ曲線から求める。この応力−ひずみ曲線において、4方向における50%モジュラス値は、いずれも120MPa以上であることが好ましく、さらに好ましくは150MPa以上である。これにより、特に成形深さが比較的小さい金型形状を成形する場合において、安定した成形性を確保出来る。本発明の50%モジュラス値は、後述の実施例に記載した方法で得られる。
【0033】
(易接着樹脂塗工二軸延伸ポリアミド積層シートの製造方法)
本発明の易接着樹脂塗工二軸延伸ポリアミド積層シートは原反ないしは延伸フィルに前記樹脂を適当な分散液あるいは溶液で希釈した塗工剤を塗工後乾燥することで得られる。塗工剤は熱処理前に塗工されることが好ましい。これにより易接着樹脂は熱処理によってフィルムと凝集力が飛躍的に高まり、より強固な塗工層を形成することができる。樹脂塗工の方法は特に限定されるものでなく所定の薄膜塗工量が得られればよい。延伸前に塗工する方が後の延伸工程で塗工層が薄くなるので、塗工し易さの観点から好ましい。例えばグラビア塗工で固形分1g/m2塗工した後、MD及びTD共3.2倍の延伸を実施すれ
ば延伸後の塗工量は0.1g/m2となる。
【0034】
二軸延伸ポリアミド積層シートの厚みは、5〜50μm、より好ましくは10〜30μmであることが好ましい。厚みが5μmよりも小さい場合は、ラミネート包材の耐衝撃性が低くなり、冷間成形性が不十分となる。一方、50μmを超えると形状維持の強度は向上
するものの、特に破断防止や成形性の向上への効果は小さく、体積エネルギー密度を低下させるだけである。
【0035】
(ラミネート包材の構成) ラミネート包材は、前記した二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくともいずれか一方の面に、1層あるいは2層以上他の基材を積層して構成されている。具体的に、他基材としては、高い防湿性を付与するための純アルミニウム箔またはアルミニウム−鉄系合金の軟質材からなるアルミニウム箔層、および密封性や耐薬品性を付与するためのポリエチレン、ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリエチレン、エチレン―アクリレート共重合体、アイオノマー樹脂、ポリ塩化ビニル等の未延伸フィルムからなるヒートシール層が挙げられる。一般に、アルミニウム箔層を含むラミネート包材は、冷間成形時にアルミニウム箔層の破断やピンホールが生じ易いため冷間成形に適していない。しかし本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムを含むラミネート包材は、優れた成形性、耐衝撃性および耐ピンホール性を有するため、冷間での張出し成形や深絞り成形等の際に、アルミニウム層の破断を抑制できる。
【0036】
二軸延伸ポリアミドフィルムを含むラミネート基材の総厚みは200μm以下であることが好ましい。厚みが200μmを超える場合、冷間成形によるコーナー部の成形が困難となり、シャープな形状の成形品が得られない場合がある。
【0037】
アルミニウム箔層の厚みは20〜100μmであることが好ましい。これにより、成形品の形状を良好に保持することが可能となり、また酸素や水分等が包材内へ侵入することを防止できる。アルミニウム箔層の厚みが20μm未満である場合、ラミネート包材の冷間成形時にアルミニウム箔層の破断が生じ易く、また、破断しない場合でもピンホール等が発生し易くなるため、包材中に酸素や水分等が侵入してしまう場合がある。一方、アルミニウム箔層の厚みが100μmを超える場合、冷間成形時の破断やピンホール発生防止の効果も大きく改善されるわけではなく、総厚みが厚くなるだけで好ましくない。
【0038】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムを含むラミネート包材は、張出し成形、または深絞り成形などの冷間(常温)成形法により加工可能な性能を有する包材であり、包材総厚みが薄いにもかかわらず強度が大きいため、シャープな成形が可能であり、かつ成形時にアルミニウム箔の破断やピンホールの発生を防止したラミネート包材である。さらに、高温高湿、熱水、低pH水溶液に長時間曝すような過酷環境下を想定した試験においても基材表面にクラックを生じないことが特徴である。
【0039】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムを含むラミネート包材が使用される分野、および用途としては、特に腐食性の高い電解液を使用し、かつ水分や酸素の侵入を極度に嫌うリチウム二次電池用包材にもっとも適しているが、それ以外の軽量化、小型化を必要とする一次電池、二次電池などにおいても、電池ケースとして軽量で、シャープな形状の成形性が要求される場合に使用可能である。また電池用包材以外としては、ヒートシール性、耐薬品性、成形性などに優れているため、医薬品、化粧品、写真用薬品その他腐食性の強い有機溶剤を含む内容物のための容器用材料としても利用可能な包材である。
【実施例】
【0040】
以下に実施例および比較例を用いて、本発明を具体的に説明する。
参考例
【0041】
(二軸延伸ポリアミドフィルムの製造)ナイロン6ペレット(相対粘度3.48)100重量部に対してBASF社製のヒンダードフェノール系酸化防止剤"イルガノックス1098"を0.1重量部ドライブレンドさせたものを、押出機中、255℃で溶融混練した後、溶融物をダイスから円筒状のフィルムとして押出し、引き続き水で急冷して原反フィルムを作製した。この原反フィルムを一対の低速ニップロール1間に挿通した後、中に空気を圧入しながらヒーター2、およびヒーター3で加熱すると共に、延伸終了点にエアーリング4よりエアーを吹き付けることにより、チューブラー法によるMD、およびTD同時二軸延伸フィルム5を得た。延伸倍率は、MDが3.0倍、TDが3.2倍であった。
次に、この延伸フィルム5を熱ロール式、およびテンター式熱処理設備にそれぞれ投入し、210℃で熱処理を実施し両端をトリミング後2枚に開き、片面にぬれ指数が50〜58dyn/cmになるようにコロナ処理を施した後、二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。なお、二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みは25μmであった。
【0042】
(二軸延伸ポリアミドフィルムの50%モジュラス値評価方法) 二軸延伸ポリアミドフィルムの50%モジュラス値の評価方法は、オリエンテック製―テンシロン(RTC−1210−A)を使用し、試料幅15mm、チャック間100mm、引張速度200mm/minにて実施した。二軸延伸ポリアミドフィルム18は、23℃×50%の環境下で2時間調湿後、0℃(MD)方向/45°方向/90°(TD)方向/135°方向の4方向についてそれぞれ測定を行った。得られた応力−ひずみ曲線に基づいて、各方向での50%モジュラス値を求めた。
【0043】
(二軸延伸ポリアミドフィルムの高温高湿耐性評価方法)
幅15mmにカットした短冊状の試料を、40℃、90%RH環境下に60日間さらした後、23℃×50%の環境下に24時間放置し、調湿した。その後、オリエンテック製―テンシロン(RTC−1210−A)を使用し、チャック間100mm、引張速度200mm/minにて、任意の方向に引張試験を行った。40℃、90%RH環境下にさらしていない試料の破断強度を100%とし、それに対する浸漬後の試料の破断強度の割合をパーセンテージで表したものを強度保持率とした。
【0044】
(二軸延伸ポリアミドフィルムの温水耐性評価方法)
幅15mmにカットした短冊状の試料を、pH7.0、70℃に加熱した水に浸漬させ、温度を保持したまま3日間静置した。3日後、試料を取り出した後、水分を拭き取り、23℃×50%の環境下に24時間放置し、調湿した。その後、オリエンテック製―テンシロン(RTC−1210−A)を使用し、チャック間100mm、引張速度200mm/minにて、任意の方向に引張試験を行った。温水にさらしていない試料の破断強度を100%とし、それに対する浸漬後の試料の破断強度の割合をパーセンテージで表したものを強度保持率とした。
【0045】
(二軸延伸ポリアミドフィルムの低pH温水耐性評価方法)幅15mmにカットした短冊状の試料を、酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液にてpH4.7に調整し、70℃に加熱した水溶液中に浸漬させ、温度を保持したまま3日間静置した。3日後、試料を取り出し、流水で充分にすすいだ後、水分を拭き取り、23℃×50%の環境下に24時間放置し、調湿した。その後、オリエンテック製―テンシロン(RTC−1210−A)を使用し、チャック間100mm、引張速度200mm/minにて、任意の方向に引張試験を行った。酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液に浸漬していない試料の破断強度を100%とし、それに対する浸漬後の試料の破断強度の割合をパーセンテージで表したものを強度保持率とした。
【0046】
(二軸延伸ポリアミドフィルムの熱収縮応力評価方法) 二軸延伸ポリアミドフィルムの熱収縮応力は、SIIナノテクノロジー製−EXSTAR−TMA/SS6100を使用し、試料幅3mm、チャック間15mm、30〜245℃(昇温速度:10℃/min.)の温度プログラムにて測定した。二軸延伸ポリアミドフィルムは、23℃×50%の環境下で2時間調湿後、170〜210℃で見られる最大熱収縮応力値をMD、およびTDそれぞれについて測定した。
【0047】
(冷間成形方法)二軸延伸ポリアミドフィルムを含むラミネート包材の冷間成形した。具体的には、まず得られた二軸延伸ポリアミドフィルムを基材層とし、コロナ処理を施した面をアルミニウム側としてアルミニウム箔(AA8079−O材、厚み32μm)、および未延伸ポリプロピレンフィルム〔パイレンフィルムCT−P1128(商品名)、東洋紡績製、厚み30μm〕をそれぞれドライラミネート(ドライ塗布量4.0g/m)することによりラミネート包材を得た。なお、ドライラミネート用の接着剤としては、東洋モートン(株)TM−K55/東洋モートン(株)CAT−10(配合比100/8)を用いた。また、ドライラミネート後のラミネート包材は、60℃で72時間エージングを行った。このようにして得られたラミネート包材は、23℃×50%の環境下で2時間調湿後、圧縮用金型(38mm×38mm)を用いて、未延伸ポリプロピレンフィルム側から最大荷重10MPaで成形深さが4.5mmになるように冷間(常温)にて成形した。
【0048】
(デラミネーション発生状況評価方法)前記方法で冷間成形したラミネート包材について、デラミネーション発生の有無を目視にて確認した。
【0049】
(高湿度下デラミネーション耐性評価方法)デラミネーション発生評価にてデラミネーションが見られなかった成形品を、高温高湿下条件50℃×90%RHに1週間放置し、更にデラミネーションが発生しないかを目視にて確認した。
【0050】
(成形品の耐クラック性評価方法)デラミネーション発生状況評価にてデラミネーションが見られなかった成形品を酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液にてpH4.7に調整し、70℃に加熱した水溶液中に浸漬させ、温度を保持したまま静置した。1日毎に成形品のONy基材表面を目視で観察し、3週間クラックの有無を確認した。また、同様の試験をpH=4.7の水溶液をpH=7.0の水に変えて行った。
【0051】
参考例
参考例1において、使用する酸化防止剤をBASF社製’’イルガノックス1010’’を0.3重量部に変えて同様に行った。
【0052】
参考例
参考例1において、使用する酸化防止剤を住友化学(株)製’’スミライザーGA80’’を0.15重量部と、同じく’’スミライザーGP’’を0.03重量部に変えて同様に行った。
【0053】
参考例
参考例1において、使用する酸化防止剤をBASF社製’’イルガフォス168’’を0.2重量部に変えて同様に行った。
【0054】
参考例
参考例1において、使用する酸化防止剤をBASF社製’’イルガモッド295’’を0.2重量部に変えて同様に行った。
【0055】
参考例
参考例1において、使用する酸化防止剤を住友化学(株)製’’スミライザーTP−D’’を0.2重量部に変えて同様に行った。
【0056】
参考例
参考例1において、使用する酸化防止剤をBASF社製’’イルガノックス1222’’を0.1重量部に変えて同様に行った。
【0057】
参考例
参考例1において、使用する酸化防止剤をBASF社製’’イルガノックス1330’’を0.2重量部に変えて同様に行った。
【0058】
参考例
参考例1において、熱処理温度を195℃に変え、成形深さを6.0mmに変えて同様に行った。
【0059】
参考例10
参考例9において、使用する酸化防止剤をBASF社製’’イルガノックス1010’’を0.3重量部に変えて同様に行った。
【0060】
参考例11
参考例9において、使用する酸化防止剤を住友化学(株)製’’スミライザーGA80’’を0.15重量部と、同じく’’スミライザーGP’’を0.03重量部に変えて同様に行った。
【0061】
実施例12
(塗工剤の製造法)
塗工剤A:武田薬品工業(株)製の自己乳化型ポリウレタン樹脂"タケラック"W−6010にナガセ化成工業(株)製の水溶性ポリエポキシ化合物"デナコール"EX−521(ポリグリセロールポリグリシジルエーテル)、日信化学工業(株)製の"サーフィノール440"、及び日産化学工業(株)製のコロイダルシリカ"スノーテックス"ST−C(平均粒径10〜20nm)を70/30/0.05/5の配合比で加え、水で希釈した。
【0062】
(二軸延伸ポリアミド積層シートの製造) ナイロン6ペレット(相対粘度3.48)100重量部に対してBASF社製のヒンダードフェノール系酸化防止剤’’イルガノックス1098’’を0.1重量部ドライブレンドさせたものを、押出機中、255℃で溶融混練した後、溶融物をダイスから円筒状のフィルムとして押出し、引き続き水で急冷して原反フィルムを作製した。次に、図1に示したように、原反の両面に予めコロナ処理し濡れ指数を上げた後、オフセットグラビアコートにより塗工剤Aを固形分で0.3g/m2
両面塗工し乾燥した。この原反フィルムを一対の低速ニップロール1間に挿通した後、中に空気を圧入しながらヒーター2、およびヒーター3で加熱すると共に、延伸終了点にエアーリング4よりエアーを吹き付けることにより、チューブラー法によるMD、およびTD同時二軸延伸フィルム5を得た。延伸倍率は、MDが3.0倍、TDが3.2倍であった。次に、この延伸フィルム5を熱ロール式、およびテンター式熱処理設備にそれぞれ投入し、210℃で熱処理を実施し両端をトリミング後2枚に開くことにより片面に樹脂塗工された二軸延伸ポリアミド積層シートを得た。なお、二軸延伸ポリアミド積層シートの厚みは25μm、樹脂塗工量は0.03g/m2であった。得られた二軸延伸ポリアミド
積層シートを用いて、実施例1に示す各評価を実施した。
【0063】
実施例13
実施例12において、使用する酸化防止剤をBASF社製"イルガノックス1010"を0.3重量部に変えて同様に行った。
【0064】
実施例14
実施例12において、使用する酸化防止剤を住友化学(株)製"スミライザーGA80"を0.15重量部と、同じく"スミライザーGP"を0.03重量部に変えて同様に行った。
【0065】
比較例1
参考例1において、酸化防止剤を使用しなかった以外は同様に行った。
【0066】
比較例2
参考例9において、酸化防止剤を使用しなかった以外は同様に行った。
【0067】
比較例3
参考例1において、成形深さを4.5mmから6.0mmに変えた以外は同様に行った。
【0068】
比較例4
参考例1において、酸化防止剤の添加量を0.005重量部に変えた以外は同様に行った。
【0069】
比較例5
実施例12において、酸化防止剤を使用しなかった以外は同様に行った。
【0070】
表1に示すように、酸化防止剤を添加した参考例1〜11及び実施例12〜14では耐クラック性評価におけるクラック発生が見られなかった。また、加えて170〜210℃における熱収縮応力の最大値をMD、TDともに5.0MPa以下に、かつ一軸引張試験における4方向すべての破断強度を280MPa以上、50%モジュラス値が150MPa以上に調整した参考例9〜11及び実施例12〜14においては、成形深さを6.0mmにしてもデラミネーションが見られなかった。さらに、ポリウレタン樹脂を片面に塗工された実施例12〜14においては、高湿度下におけるデラミネーションも無く、耐クラック性と優れた成形性、高湿度下でのデラミネーションの抑制を両立することが出来た。
【0071】
一方、酸化防止剤を使用していない比較例1,2および5と、酸化防止剤の添加量が0.005%と少ない比較例4では、耐クラック性評価においてpH4.7の条件では3日後に、pH7.0の条件では7日後にクラックが発生した。一軸引張試験における4方向すべての破断強度が280MPa以上、50%モジュラス値が150MPa以上にを満たしていない基材使用し、6.0mmの深さで成形した比較例3では、成形後にデラミネーションが見られた。
【0072】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は冷間成形用包材、特にリチウムイオン二次電池等の電池ケース用包材の主要基材として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0074】
1塗工装置
2 チューブラー延伸装置のニップロール
3 チューブラー延伸装置の予熱ヒーター
4 チューブラー延伸装置の主熱ヒーター
5 チューブラー延伸装置の冷却エアーリング
6 チューブラー延伸時のフィルム
図1