【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために本発明の構成では、プラグインモジュールとの電気的な接続を形成するコネクタであって、
当該コネクタがコネクタボディを備え、該コネクタボディは、電気的な線路を収容するための複数の通路を備えたコンタクトキャリヤ上側部分と、コネクタベースとを有し、該コネクタベースは、プラグインモジュールに設けられたつばを収容するように形成されており、
当該コネクタがコンタクトキャリヤ下側部分を備え、該コンタクトキャリヤ下側部分は、電気的な線路を収容するための複数の通路を有し、
前記コンタクトキャリヤ上側部分に設けられた前記通路は、前記コンタクトキャリヤ下側部分に設けられた前記通路に開口して、すなわち前記コンタクトキャリヤ下側部分に設けられた前記通路と整合して、電気的な線路を収容するための一貫して延びる通路を形成しており、
前記コンタクトキャリヤ下側部分は、プラグインモジュールのつばによって取り囲まれて、プラグインモジュールの複数のコンタクトを収容し、これにより当該コネクタ内の複数の電気的な線路と、プラグインモジュールの複数の電気的なコンタクトとの間の電気的な接続を形成するように構成されており、
当該コネクタが少なくとも1つのロックエレメントを備え、該ロックエレメントは、外側から当該コネクタ内に押込み可能であり、該ロックエレメントは、複数の電気的な線路を前記通路内に位置固定するために構成されている、
プラグインモジュールとの電気的な接続を形成するコネクタにおいて、
前記ロックエレメントは、一部が前記コンタクトキャリヤ上側部分内に延びていて、別の一部が前記コンタクトキャリヤ下側部分内に延びているようにした。
【0007】
本発明の好適な実施態様は、従属項の形の請求項および以下の説明から明らかとなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成では、コネクタが、コネクタボディを備え、このコネクタボディは電気的な線路を収容するための複数の通路を備えたコンタクトキャリヤ上側部分と、コネクタベースとを有し、この場合、コネクタベースは、コネクタが、電気的な接続を形成するためにプラグインモジュールに差し被される際に、プラグインモジュールに設けられたつばを収容するように形成されている。さらに、前記コネクタはコンタクトキャリヤ下側部分を備え、このコンタクトキャリヤ下側部分は、電気的な線路を収容するための複数の通路を有し、この場合、コンタクトキャリヤ上側部分に設けられた通路は、コンタクトキャリヤ下側部分に設けられた通路に開口して、すなわちコンタクトキャリヤ下側部分に設けられた通路と整合して、電気的な線路を収容するための一貫して延びる通路を形成する。コンタクトキャリヤ下側部分は、プラグインモジュールのつばによって取り囲まれて、プラグインモジュールの複数の電気的なコンタクトを収容し、これにより当該コネクタ内の複数の電気的な線路と、プラグインモジュールの複数の電気的なコンタクトとの間の電気的な接続を形成するように構成されている。さらに前記コネクタは、少なくとも1つのロックエレメントを備え、このロックエレメントは、外側から当該コネクタ内に押込み可能であり、このロックエレメントは、複数の電気的な線路を前記通路内に位置固定するために構成されている。このために、このロックエレメントは、一部がコンタクトキャリヤ上側部分内に延びていて、別の一部がコンタクトキャリヤ下側部分内に延びている。
【0009】
全体的には、このコネクタは、とりわけ車両内のワイヤハーネスの電気的な線路と制御装置との間の長寿命でかつ安定的な接続を提供するように構成され得る。この場合、ロックエレメントを用いて、特に小型構造のコネクタにおいても、電気的な線路を前記通路内に信頼性良く位置固定することができる。
【0010】
さらに、コネクタ内にロックエレメントを押し込むことにより、コネクタ内の電気的な線路が正しく位置決めされていることが確保され得る。これにより、コネクタがプラグインモジュールに差し被されると、プラグインモジュールの電気的なコンタクトと、コネクタ内の電気的な線路との間に電気的な接続が形成され得る。コネクタ内の電気的な線路が正しく位置決めされていないと、ロックエレメントをコネクタ内に押し込むことができないか、または過剰に力を加えないと押し込むことができない。したがって、ロックエレメントは、コネクタ内の電気的な線路の位置を検査するために役立つことができる。
【0011】
本発明の別の実施態様では、ロックエレメントが、複数の電気的な線路を位置固定するために、櫛状に複数の櫛歯を備えており、これらの櫛歯は、電気的な線路を収容するための前記通路の横断面の少なくとも部分範囲へ押込み可能であり、これにより電気的な線路は、コンタクトキャリヤ上側部分とコンタクトキャリヤ下側部分とに押圧され、このときに位置固定される。
【0012】
本発明の構成に至る思想は、とりわけ以下に説明する認識に基づいているとみなすことができる:車両に取り付けられたセンサおよびアクチュエータの数ならびにセンサの情報を処理しかつアクチュエータを制御することのできる相応する制御ユニットの数は、増え続けている。しかし、車両内で、センサ、アクチュエータおよび制御ユニットのために提供されている空間は著しく制限されている恐れがあるので、車両のこれらのコンポーネントはますます小型化された構造で製造される傾向にある。このことは、コンポーネント間の電気的な接続を形成することのできる所属のコネクタおよびプラグインモジュールにも該当する。そこで、たとえばロックエレメントが、従来汎用されているようにコンタクトキャリヤ下側部分内にのみ案内され、したがって比較的小さな横断面しか有しない場合には、ロックエレメントの櫛歯が、特に小型化された構造において、コネクタ内への押込み時にワイヤハーネスコネクタから容易に破折してしまう恐れがあることが判った。
【0013】
コンタクトキャリヤ上側部分とコンタクトキャリヤ下側部分とにおけるロックエレメントの本発明における案内により、ロックエレメントの櫛歯の横断面を増大させることができるという利点が得られる。これにより、ロックエレメントおよび特にロックエレメントの櫛歯を一層頑丈に形成することができる。さらに、櫛歯の横断面の増大に基づき、ロックエレメントの案内が改善されるという利点も得られる。これにより、安定的でかつ長寿命の、ひいては信頼性の良い電気的な接続が保証され得る。
【0014】
本発明のさらに別の実施態様では、ロックエレメントが、コネクタ内の複数の電気的な線路を主として静摩擦により位置固定する。
【0015】
コンタクトキャリヤ上側部分にもコンタクトキャリヤ下側部分にもロックエレメントが案内され、ひいては櫛歯の横断面が増大されることに基づき、コネクタ内の電気的な線路が静摩擦によって位置固定される際に用いられ、かつロックエレメント自体がコネクタ内に保持される際に用いられる面を増大させることができる。これにより、コネクタ内の電気的な線路が、たとえば振動に基づいてずれ動く恐れもなくなり、ロックエレメントは信頼性良くコネクタ内に位置固定され得る。したがって、このことは電気的な接続の安定性および寿命を高めることができるので好適である。
【0016】
本発明のさらに別の実施態様では、コンタクトキャリヤ上側部分も、コンタクトキャリヤ下側部分も、コンタクトキャリヤ上側部分とコンタクトキャリヤ下側部分との間の境界面に、前記通路のそれぞれに接して、それぞれ互いに整合するように形成された切欠きを有しており、この切欠き内にロックエレメントを押し込むことができる。
【0017】
互いに整合するように形成された切欠き内に櫛歯を押し込むことにより、電気的な線路は、コンタクトキャリヤ上側部分に設けられた通路の壁にも、コンタクトキャリヤ下側部分に設けられた通路の壁にも押圧され、これにより位置固定され得る。
【0018】
本発明のさらに別の実施態様では、ロックエレメントの櫛歯が前記切欠き内に形状接続的に係合するように、つまり係合に基づいた嵌合により結合されるように、形成されている。
【0019】
ロックエレメントの櫛歯の、前記切欠き内に形状接続的に係合する構成により、第1に、櫛歯の表面全体を、電気的な線路およびロックエレメントの固定のために使用することができ、第2にコネクタ内での電気的な線路の正確な位置決めもしくは正しい位置を確保することができる。なぜならば、正しい位置からの小さなずれが生じただけでも、もはやロックエレメントをコネクタ内に押し込むことができなくなるか、または力を過剰に加えないと押し込むことができなくなるからである。
【0020】
本発明のさらに別の実施態様では、コネクタとロックエレメントとは、ロックエレメントが前記通路の長手方向延在方向に対して直交する横方向で当該コネクタ内に押込み可能となるように形成されている。
【0021】
その結果、ロックエレメントの1つの櫛歯が、複数の通路内の複数の電気的な線路を同時に位置固定し得るようになる。なぜならば、もしも櫛歯が前記通路の長手方向延在方向に沿って押し込まれるようにすると、通路1つ当たり1つの櫛歯がロックエレメントに設けられていなければならないからである。さらに、本発明の構成では、櫛歯を通路の長手方向延在方向に沿って押し込むような構成と比較して、櫛歯の横断面を、より大きく形成することができる。なぜならば、特にコネクタの小型化された構造においては、通路の直径が比較的小さく形成されているので、櫛歯を通路の長手方向延在方向に沿って押し込むような構成では、櫛歯の横断面を大きく形成することができないからである。
【0022】
本発明のさらに別の実施態様では、コネクタの互いに反対の側に位置する2つの側で、少なくとも2つのロックエレメントが、コネクタ内に押込み可能である。
【0023】
コネクタの互いに反対の側に位置する2つの側で2つのロックエレメントを押し込むことにより、各ロックエレメントの櫛歯を一層短く形成することができる。これにより、ロックエレメントは一層安定的でかつ一層頑丈に形成され得ると同時に、櫛歯は、著しく長い櫛歯を備えた1つのロックエレメントしか設けられていないような構成に比べて、簡単には破折し得なくなる。なぜならば、本発明の構成では、てこ力が小さくなり得るからである。しかし、両ロックエレメントの櫛歯の長さは同一である必要はなく、両ロックエレメントの櫛歯の互いに異なる長さが設定されていてよい。個々のロックエレメントの櫛歯も、その長さに関して互いに異なっていてよい。しかし、特にコネクタの小型化された構造においては、唯一つのロックエレメントしか有しないコネクタの構成も十分に考えられる。
【0024】
本発明のさらに別の実施態様では、前で説明した実施態様において、2つのロックエレメントが、コネクタ内に押込み可能な櫛歯の数に関して互いに異なっている。
【0025】
一般に、1つのコネクタ内には、種々の目的、たとえば電流案内や信号伝送のための電気的な線路が収納されている。これらの電気的な線路はその数に関してもその直径に関しても種々異なっている。電気的な線路の種々異なる直径に基づき、これらの電気的な線路を貫通案内するための通路も種々異なる直径を有していてよい。たとえばコネクタ内部で電流線路と信号線路とを十分に分離するためには、コネクタの所定の部分範囲には、電流線路のための通路しか設けられておらず、別の部分範囲には、信号線路のための通路しか設けられていなくてもよい。これらの通路は、直径や、これらの通路が相並んで配置されている列の数の点で互いに異なっていてよい。このことにより、全ての電気的な線路を正しく位置決めしかつ位置固定し得るようにするためには、コネクタの各部分範囲における通路の列の数に相当し得る、種々異なる個数の櫛歯を有するロックエレメントがコネクタ内に押し込まれなければならないことが必要となり得る。
【0026】
本発明のさらに別の実施態様では、ロックエレメントが、単一部品として一体に形成されている。
【0027】
ロックエレメントの一体の形成に基づき、ロックエレメントの安定性を一層高めることができ、かつコネクタのための製作プロセスを単純化することができる。なぜならば、少数の個別コンポーネントしか必要とならないからである。このことは、さらに製作プロセスのためのコストを減少させることができる。
【0028】
本発明のさらに別の実施態様では、ロックエレメントが、プラスチックから成っている。
【0029】
負荷耐性を有すると同時にある程度のフレキシブル性を有する材料としてのその材料特性に基づいて、プラスチックはロックエレメントの要求に好適に応えることができる。さらに、プラスチックは比較的僅かな製造コストをかけるだけで、たとえば射出成形により所望の形状にもたらすことができるので、製作プロセスを安価に形成することができる。しかし、ロックエレメントのための別の材料も十分に考えられる。
【0030】
本発明はさらに、本発明によるコネクタと、該コネクタを収容するためのプラグインモジュールとを備えたコネクタシステムに関する。このコネクタシステムは、たとえば自動車内のワイヤハーネスと制御装置との間の電気的な接続を形成するために役立つことができる。この場合、プラグインモジュールは制御装置に取り付けられていてよく、そしてコネクタは車両のワイヤハーネスに接続されていてよい。
【0031】
念のため付言しておくと、本発明の実施態様の可能な特徴および利点は、コネクタもしくはコネクタシステムの種々異なる構成に関して説明されている。当業者であれば、別の実施態様および場合によっては相乗効果を得るために、前記特徴を適宜に組み合わせるか、もしくは入れ替えることができることが判る。
【0032】
以下に、本発明の実施形態を図面につき説明するが、ただし以下の説明も図面も、本発明を限定するものではない。