特許第6444071号(P6444071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444071
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   H01R13/42 E
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-126329(P2014-126329)
(22)【出願日】2014年6月19日
(65)【公開番号】特開2015-5515(P2015-5515A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2017年3月7日
(31)【優先権主張番号】10 2013 211 455.9
(32)【優先日】2013年6月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング パーデ
【審査官】 藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−027701(JP,A)
【文献】 特開平11−233186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40 −13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグインモジュールとの電気的な接続を形成するコネクタ(10)であって、
当該コネクタ(10)がコネクタボディ(12)を備え、該コネクタボディ(12)は、電気的な線路を収容するための複数の通路(29c)を備えたコンタクトキャリヤ上側部分(24)と、コネクタベース(14)とを有し、該コネクタベース(14)は、プラグインモジュールに設けられたつばを収容するように形成されており、
当該コネクタ(10)がコンタクトキャリヤ下側部分(26)を備え、該コンタクトキャリヤ下側部分(26)は、電気的な線路を収容するための複数の通路(29d)を有し、
前記コンタクトキャリヤ上側部分(24)に設けられた前記通路(29c)は、前記コンタクトキャリヤ下側部分(26)に設けられた前記通路(29d)と整合して、電気的な線路を収容するための一貫して延びる通路(29c,29d)を形成しており、
前記コンタクトキャリヤ下側部分(26)は、プラグインモジュールのつばによって取り囲まれて、プラグインモジュールの複数のコンタクトを収容し、これにより当該コネクタ(10)内の複数の電気的な線路と、プラグインモジュールの複数の電気的なコンタクトとの間の電気的な接続を形成するように構成されており、
当該コネクタ(10)が少なくとも1つのロックエレメント(18a,18b)を備え、該ロックエレメント(18a,18b)は、外側から当該コネクタ(10)内に押込み可能であり、該ロックエレメント(18a,18b)は、複数の電気的な線路を前記通路(29c,29d)内に位置固定するために構成されている、
プラグインモジュールとの電気的な接続を形成するコネクタ(10)において、
前記ロックエレメント(18a,18b)は、前記通路(29c,29d)内において、一部が前記コンタクトキャリヤ上側部分(24)内に延びていて、別の一部が前記コンタクトキャリヤ下側部分(26)内に延びていることを特徴とする、プラグインモジュールとの電気的な接続を形成するコネクタ。
【請求項2】
前記ロックエレメント(18a,18b)は、複数の電気的な線路を位置固定するために、櫛状に複数の櫛歯(20a,20b)を備えており、該櫛歯(20a,20b)は、電気的な線路を収容するための前記通路(29c,29d)の横断面の少なくとも部分範囲へ押込み可能であり、これにより電気的な線路が、前記コンタクトキャリヤ上側部分(24)と前記コンタクトキャリヤ下側部分(26)とに押圧されて位置固定される、請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ロックエレメント(18a,18b)は、複数の電気的な線路を主として静摩擦により位置固定する、請求項記載のコネクタ。
【請求項4】
前記コンタクトキャリヤ上側部分(24)も、前記コンタクトキャリヤ下側部分(26)も、前記コンタクトキャリヤ上側部分(24)と前記コンタクトキャリヤ下側部分(26)との間の境界面に、前記通路(29c,29d)のそれぞれに接して、それぞれ互いに整合するように形成された切欠き(28)を有しており、該切欠き(28)内に前記ロックエレメント(18a,18b)が押し込まれるようになっている、請求項2または3記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ロックエレメント(18a,18b)の櫛歯(20a,20b)は前記切欠き(28)内に形状接続的に係合するように形成されている、請求項4記載のコネクタ。
【請求項6】
当該コネクタ(10)と前記ロックエレメント(18a,18b)とは、前記ロックエレメント(18a,18b)が前記通路(29c,29d)の長手方向延在方向に対して直交する横方向で当該コネクタ(10)内に押込み可能となるように形成されている、請求項から5までのいずれか1項記載のコネクタ。
【請求項7】
当該コネクタ(10)の互いに反対の側に位置する2つの側で、少なくとも2つの前記ロックエレメント(18a,18b)が、当該コネクタ(10)内に押込み可能である、請求項から6までのいずれか1項記載のコネクタ。
【請求項8】
前記2つのロックエレメント(18a,18b)は、当該コネクタ(10)内に押込み可能な前記櫛歯(20a,20b)の数に関して互いに異なっている、請求項7記載のコネクタ。
【請求項9】
前記ロックエレメント(18a,18b)は、単一部品として一体に形成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のコネクタ。
【請求項10】
前記ロックエレメント(18a,18b)は、プラスチックから成っている、請求項1から9までのいずれか1項記載のコネクタ。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載のコネクタ(10)と、該コネクタ(10)を収容するためのプラグインモジュールとを備えたコネクタシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば自動車における制御ユニットに用いられるワイヤハーネスコネクタのような、プラグインモジュール(Steckmodul)との電気的な接続を形成するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては、エンジンルームやボディスペースに多数の電気的および電子的な制御装置が取り付けられる。これらの制御装置は互いにかつ車両の別のコンポーネント、たとえばセンサやアクチュエータに電気的に接続されなければならない。
【0003】
このためには、制御装置がプラグインモジュールを装備していてよい。プラグインモジュールに設けられたメールマルチプルコネクタには、たとえば電流供給および信号伝送のための数100個の電気的なコンタクトが設けられていてよい。プラグインモジュールには、電気的な接続を形成するために、ワイヤハーネスに接続されている対応するコネクタを差し被せることができる。
【0004】
電流供給または信号伝送の不具合に基づいた制御装置の故障を回避するためには、ワイヤハーネスとコネクタとの間の長寿命でかつ安定的な電気的な接続が保証されていなければならない。このためには、コネクタ内の電気的な線路がしばしば二次ロック機構によってコネクタ内部での所定の位置に位置固定され、この位置では、コネクタがプラグインモジュールに差し被せられている場合に、コネクタ内の電気的な線路がプラグインモジュールの電気的なコンタクトに接続されていることが確保されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、冒頭で述べたコネクタを改良して、特にコネクタの小型化された構造において、信頼性の良い電気的な接続を保証することのできるような、車両のワイヤハーネス用のコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために本発明の構成では、プラグインモジュールとの電気的な接続を形成するコネクタであって、
当該コネクタがコネクタボディを備え、該コネクタボディは、電気的な線路を収容するための複数の通路を備えたコンタクトキャリヤ上側部分と、コネクタベースとを有し、該コネクタベースは、プラグインモジュールに設けられたつばを収容するように形成されており、
当該コネクタがコンタクトキャリヤ下側部分を備え、該コンタクトキャリヤ下側部分は、電気的な線路を収容するための複数の通路を有し、
前記コンタクトキャリヤ上側部分に設けられた前記通路は、前記コンタクトキャリヤ下側部分に設けられた前記通路に開口して、すなわち前記コンタクトキャリヤ下側部分に設けられた前記通路と整合して、電気的な線路を収容するための一貫して延びる通路を形成しており、
前記コンタクトキャリヤ下側部分は、プラグインモジュールのつばによって取り囲まれて、プラグインモジュールの複数のコンタクトを収容し、これにより当該コネクタ内の複数の電気的な線路と、プラグインモジュールの複数の電気的なコンタクトとの間の電気的な接続を形成するように構成されており、
当該コネクタが少なくとも1つのロックエレメントを備え、該ロックエレメントは、外側から当該コネクタ内に押込み可能であり、該ロックエレメントは、複数の電気的な線路を前記通路内に位置固定するために構成されている、
プラグインモジュールとの電気的な接続を形成するコネクタにおいて、
前記ロックエレメントは、一部が前記コンタクトキャリヤ上側部分内に延びていて、別の一部が前記コンタクトキャリヤ下側部分内に延びているようにした。
【0007】
本発明の好適な実施態様は、従属項の形の請求項および以下の説明から明らかとなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成では、コネクタが、コネクタボディを備え、このコネクタボディは電気的な線路を収容するための複数の通路を備えたコンタクトキャリヤ上側部分と、コネクタベースとを有し、この場合、コネクタベースは、コネクタが、電気的な接続を形成するためにプラグインモジュールに差し被される際に、プラグインモジュールに設けられたつばを収容するように形成されている。さらに、前記コネクタはコンタクトキャリヤ下側部分を備え、このコンタクトキャリヤ下側部分は、電気的な線路を収容するための複数の通路を有し、この場合、コンタクトキャリヤ上側部分に設けられた通路は、コンタクトキャリヤ下側部分に設けられた通路に開口して、すなわちコンタクトキャリヤ下側部分に設けられた通路と整合して、電気的な線路を収容するための一貫して延びる通路を形成する。コンタクトキャリヤ下側部分は、プラグインモジュールのつばによって取り囲まれて、プラグインモジュールの複数の電気的なコンタクトを収容し、これにより当該コネクタ内の複数の電気的な線路と、プラグインモジュールの複数の電気的なコンタクトとの間の電気的な接続を形成するように構成されている。さらに前記コネクタは、少なくとも1つのロックエレメントを備え、このロックエレメントは、外側から当該コネクタ内に押込み可能であり、このロックエレメントは、複数の電気的な線路を前記通路内に位置固定するために構成されている。このために、このロックエレメントは、一部がコンタクトキャリヤ上側部分内に延びていて、別の一部がコンタクトキャリヤ下側部分内に延びている。
【0009】
全体的には、このコネクタは、とりわけ車両内のワイヤハーネスの電気的な線路と制御装置との間の長寿命でかつ安定的な接続を提供するように構成され得る。この場合、ロックエレメントを用いて、特に小型構造のコネクタにおいても、電気的な線路を前記通路内に信頼性良く位置固定することができる。
【0010】
さらに、コネクタ内にロックエレメントを押し込むことにより、コネクタ内の電気的な線路が正しく位置決めされていることが確保され得る。これにより、コネクタがプラグインモジュールに差し被されると、プラグインモジュールの電気的なコンタクトと、コネクタ内の電気的な線路との間に電気的な接続が形成され得る。コネクタ内の電気的な線路が正しく位置決めされていないと、ロックエレメントをコネクタ内に押し込むことができないか、または過剰に力を加えないと押し込むことができない。したがって、ロックエレメントは、コネクタ内の電気的な線路の位置を検査するために役立つことができる。
【0011】
本発明の別の実施態様では、ロックエレメントが、複数の電気的な線路を位置固定するために、櫛状に複数の櫛歯を備えており、これらの櫛歯は、電気的な線路を収容するための前記通路の横断面の少なくとも部分範囲へ押込み可能であり、これにより電気的な線路は、コンタクトキャリヤ上側部分とコンタクトキャリヤ下側部分とに押圧され、このときに位置固定される。
【0012】
本発明の構成に至る思想は、とりわけ以下に説明する認識に基づいているとみなすことができる:車両に取り付けられたセンサおよびアクチュエータの数ならびにセンサの情報を処理しかつアクチュエータを制御することのできる相応する制御ユニットの数は、増え続けている。しかし、車両内で、センサ、アクチュエータおよび制御ユニットのために提供されている空間は著しく制限されている恐れがあるので、車両のこれらのコンポーネントはますます小型化された構造で製造される傾向にある。このことは、コンポーネント間の電気的な接続を形成することのできる所属のコネクタおよびプラグインモジュールにも該当する。そこで、たとえばロックエレメントが、従来汎用されているようにコンタクトキャリヤ下側部分内にのみ案内され、したがって比較的小さな横断面しか有しない場合には、ロックエレメントの櫛歯が、特に小型化された構造において、コネクタ内への押込み時にワイヤハーネスコネクタから容易に破折してしまう恐れがあることが判った。
【0013】
コンタクトキャリヤ上側部分とコンタクトキャリヤ下側部分とにおけるロックエレメントの本発明における案内により、ロックエレメントの櫛歯の横断面を増大させることができるという利点が得られる。これにより、ロックエレメントおよび特にロックエレメントの櫛歯を一層頑丈に形成することができる。さらに、櫛歯の横断面の増大に基づき、ロックエレメントの案内が改善されるという利点も得られる。これにより、安定的でかつ長寿命の、ひいては信頼性の良い電気的な接続が保証され得る。
【0014】
本発明のさらに別の実施態様では、ロックエレメントが、コネクタ内の複数の電気的な線路を主として静摩擦により位置固定する。
【0015】
コンタクトキャリヤ上側部分にもコンタクトキャリヤ下側部分にもロックエレメントが案内され、ひいては櫛歯の横断面が増大されることに基づき、コネクタ内の電気的な線路が静摩擦によって位置固定される際に用いられ、かつロックエレメント自体がコネクタ内に保持される際に用いられる面を増大させることができる。これにより、コネクタ内の電気的な線路が、たとえば振動に基づいてずれ動く恐れもなくなり、ロックエレメントは信頼性良くコネクタ内に位置固定され得る。したがって、このことは電気的な接続の安定性および寿命を高めることができるので好適である。
【0016】
本発明のさらに別の実施態様では、コンタクトキャリヤ上側部分も、コンタクトキャリヤ下側部分も、コンタクトキャリヤ上側部分とコンタクトキャリヤ下側部分との間の境界面に、前記通路のそれぞれに接して、それぞれ互いに整合するように形成された切欠きを有しており、この切欠き内にロックエレメントを押し込むことができる。
【0017】
互いに整合するように形成された切欠き内に櫛歯を押し込むことにより、電気的な線路は、コンタクトキャリヤ上側部分に設けられた通路の壁にも、コンタクトキャリヤ下側部分に設けられた通路の壁にも押圧され、これにより位置固定され得る。
【0018】
本発明のさらに別の実施態様では、ロックエレメントの櫛歯が前記切欠き内に形状接続的に係合するように、つまり係合に基づいた嵌合により結合されるように、形成されている。
【0019】
ロックエレメントの櫛歯の、前記切欠き内に形状接続的に係合する構成により、第1に、櫛歯の表面全体を、電気的な線路およびロックエレメントの固定のために使用することができ、第2にコネクタ内での電気的な線路の正確な位置決めもしくは正しい位置を確保することができる。なぜならば、正しい位置からの小さなずれが生じただけでも、もはやロックエレメントをコネクタ内に押し込むことができなくなるか、または力を過剰に加えないと押し込むことができなくなるからである。
【0020】
本発明のさらに別の実施態様では、コネクタとロックエレメントとは、ロックエレメントが前記通路の長手方向延在方向に対して直交する横方向で当該コネクタ内に押込み可能となるように形成されている。
【0021】
その結果、ロックエレメントの1つの櫛歯が、複数の通路内の複数の電気的な線路を同時に位置固定し得るようになる。なぜならば、もしも櫛歯が前記通路の長手方向延在方向に沿って押し込まれるようにすると、通路1つ当たり1つの櫛歯がロックエレメントに設けられていなければならないからである。さらに、本発明の構成では、櫛歯を通路の長手方向延在方向に沿って押し込むような構成と比較して、櫛歯の横断面を、より大きく形成することができる。なぜならば、特にコネクタの小型化された構造においては、通路の直径が比較的小さく形成されているので、櫛歯を通路の長手方向延在方向に沿って押し込むような構成では、櫛歯の横断面を大きく形成することができないからである。
【0022】
本発明のさらに別の実施態様では、コネクタの互いに反対の側に位置する2つの側で、少なくとも2つのロックエレメントが、コネクタ内に押込み可能である。
【0023】
コネクタの互いに反対の側に位置する2つの側で2つのロックエレメントを押し込むことにより、各ロックエレメントの櫛歯を一層短く形成することができる。これにより、ロックエレメントは一層安定的でかつ一層頑丈に形成され得ると同時に、櫛歯は、著しく長い櫛歯を備えた1つのロックエレメントしか設けられていないような構成に比べて、簡単には破折し得なくなる。なぜならば、本発明の構成では、てこ力が小さくなり得るからである。しかし、両ロックエレメントの櫛歯の長さは同一である必要はなく、両ロックエレメントの櫛歯の互いに異なる長さが設定されていてよい。個々のロックエレメントの櫛歯も、その長さに関して互いに異なっていてよい。しかし、特にコネクタの小型化された構造においては、唯一つのロックエレメントしか有しないコネクタの構成も十分に考えられる。
【0024】
本発明のさらに別の実施態様では、前で説明した実施態様において、2つのロックエレメントが、コネクタ内に押込み可能な櫛歯の数に関して互いに異なっている。
【0025】
一般に、1つのコネクタ内には、種々の目的、たとえば電流案内や信号伝送のための電気的な線路が収納されている。これらの電気的な線路はその数に関してもその直径に関しても種々異なっている。電気的な線路の種々異なる直径に基づき、これらの電気的な線路を貫通案内するための通路も種々異なる直径を有していてよい。たとえばコネクタ内部で電流線路と信号線路とを十分に分離するためには、コネクタの所定の部分範囲には、電流線路のための通路しか設けられておらず、別の部分範囲には、信号線路のための通路しか設けられていなくてもよい。これらの通路は、直径や、これらの通路が相並んで配置されている列の数の点で互いに異なっていてよい。このことにより、全ての電気的な線路を正しく位置決めしかつ位置固定し得るようにするためには、コネクタの各部分範囲における通路の列の数に相当し得る、種々異なる個数の櫛歯を有するロックエレメントがコネクタ内に押し込まれなければならないことが必要となり得る。
【0026】
本発明のさらに別の実施態様では、ロックエレメントが、単一部品として一体に形成されている。
【0027】
ロックエレメントの一体の形成に基づき、ロックエレメントの安定性を一層高めることができ、かつコネクタのための製作プロセスを単純化することができる。なぜならば、少数の個別コンポーネントしか必要とならないからである。このことは、さらに製作プロセスのためのコストを減少させることができる。
【0028】
本発明のさらに別の実施態様では、ロックエレメントが、プラスチックから成っている。
【0029】
負荷耐性を有すると同時にある程度のフレキシブル性を有する材料としてのその材料特性に基づいて、プラスチックはロックエレメントの要求に好適に応えることができる。さらに、プラスチックは比較的僅かな製造コストをかけるだけで、たとえば射出成形により所望の形状にもたらすことができるので、製作プロセスを安価に形成することができる。しかし、ロックエレメントのための別の材料も十分に考えられる。
【0030】
本発明はさらに、本発明によるコネクタと、該コネクタを収容するためのプラグインモジュールとを備えたコネクタシステムに関する。このコネクタシステムは、たとえば自動車内のワイヤハーネスと制御装置との間の電気的な接続を形成するために役立つことができる。この場合、プラグインモジュールは制御装置に取り付けられていてよく、そしてコネクタは車両のワイヤハーネスに接続されていてよい。
【0031】
念のため付言しておくと、本発明の実施態様の可能な特徴および利点は、コネクタもしくはコネクタシステムの種々異なる構成に関して説明されている。当業者であれば、別の実施態様および場合によっては相乗効果を得るために、前記特徴を適宜に組み合わせるか、もしくは入れ替えることができることが判る。
【0032】
以下に、本発明の実施形態を図面につき説明するが、ただし以下の説明も図面も、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の1実施形態によるコネクタの斜視図である。
図2図1に示したコネクタの一部を示す斜視図である。
図3図2に示したコネクタの一部を示す分解図である。
図4図3に示したコネクタの部分を中心平面に沿って断面した横断面図である。
図5図4に示したコネクタの横断面図の一部の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。図面は概略的なものであるに過ぎず、縮尺通りに描かれたものではない。基本的に、同一の構成部分または類似の構成部分は同じ符号で示されている。
【0035】
図1には、コネクタカバー11とコネクタレバー13とコネクタボディ12とを備えたコネクタ10が図示されている。コネクタボディ12はコネクタベース14を有しており、このコネクタベース14は、プラグインモジュール(図示しない)との電気的な接続を形成するために、プラグインモジュールに差し被せることができる。コネクタカバー11は収容開口15を有しており、この収容開口15を介して、ワイヤハーネスの電気的な線路をコネクタボディ12内に案内することができる。
【0036】
コネクタベース14はさらに切抜き部16を有している。この切抜き部16を介して、ロックエレメント18a(図2参照)が外部からコネクタ10内に押込み可能である。
【0037】
コネクタレバー13はコネクタボディ12を2つのアーム17によってU字形に取り囲んでいる。両アーム17の端部には、それぞれ1つのシャフト19が設けられている。両シャフト19は、コネクタベース14の互いに反対の2つの側に収容されている。両アーム17はクロスビーム21に結合されており、このクロスビーム21には、コネクタレバーが確実に終端位置に位置している場合にのみコネクタのロックを許すコネクタ安全装置23が取り付けられている。
【0038】
コネクタレバー13は、開始位置から終端位置へ運動させられて、このときにコネクタ10をプラグインモジュールに引き付けるように形成されている。図1には、コネクタレバー13が終端位置で図示されており、この場合、コネクタ安全装置23はプラグインモジュールとの電気的な接続を確保するためにロックされている。
【0039】
図2には、図1に示したコネクタ10がコネクタカバー11なしで図示されている。コネクタボディ12はコンタクトキャリヤ上側部分24を有しており、このコンタクトキャリヤ上側部分24は収容範囲25を有しており、この収容範囲25内には押圧板27が挿入されている。押圧板27は、コネクタボディ12内に電気的な線路を貫通案内するための複数の通路29aを有している。
【0040】
さらに図2には、2つのロックエレメント18a,18bが図示されている。両ロックエレメント18a,18bは、コネクタ10の互いに反対の2つの側に設けられた切抜き部16(一方の切抜き部しか図示されていない)を介し、コネクタベース14を通してコネクタ10内に押込み可能である。ロックエレメント18a,18bは、コネクタ10内の電気的な線路を位置固定するために形成されている。
【0041】
ロックエレメント18a,18bはそれぞれ複数の櫛歯20a,20bを有している。これらの櫛歯20a,20bはクロスステー22a,22bに結合されていて、このクロスステー22a,22bから櫛状に突出している。両ロックエレメント18a,18bはこの場合、櫛歯の数および長さに関して互いに異なっていてよい。
【0042】
図3には、コネクタ10がコネクタカバー11およびコネクタレバー13なしに分解図で図示されている。コネクタボディ12のコンタクトキャリヤ上側部分24に設けられた収容範囲25内には、コンタクトキャリヤ上側部分24と押圧板27との間でマットシール部材31が挿入可能である。
【0043】
マットシール部材31は電気的な線路を密に貫通案内するための複数の通路29bを有している。コネクタベース14には、さらにコンタクトキャリヤ下側部分26が挿入可能である。このコンタクトキャリヤ下側部分26は電気的な線路を収容するための複数の通路29dを有している。押圧板27とシール部材31とがコンタクトキャリヤ上側部分24の収容範囲25内に挿入されていると、押圧板27に設けられた複数の通路29aがマットシール部材31の通路20bに開口し、すなわち通路29bと整合し、マットシール部材31の通路29bはコンタクトキャリヤ上側部分24に設けられた通路29cに開口し、すなわち通路29cと整合し、コンタクトキャリヤ上側部分24の通路29cはコンタクトキャリヤ下側部分26の通路29dに開口し、すなわち通路29dと整合するので、一貫した通路29a,29b,29c,29dが形成される。
【0044】
ワイヤハーネスの電気的な線路は、こうしてコネクタカバー11に設けられた収容開口15を介して、一貫して延びる通路29a,29b,29c,29dを通じてコネクタボディ12内に案内され得る。この場合、一貫して延びる通路29a,29b,29c,29dの延在方向により、コネクタ10の軸方向が規定される。コネクタ10がプラグインモジュールに差し被せられると、プラグインモジュールの電気的なコンタクト(図示しない)はコンタクトキャリヤ下側部分26によって収容され、これによりプラグインモジュールの電気的なコンタクトと、コネクタボディ12の通路29a,29b,29c,29d内の電気的な線路との間の電気的な接続が形成される。
【0045】
コンタクトキャリヤ上側部分24と、押圧板27と、マットシール部材31と、コンタクトキャリヤ下側部分26とは、それぞれ種々異なる直径を有する通路を有していてよく、これらの通路は、種々異なる直径を有する電気的な線路、たとえば電流供給用の線路および/または信号伝送用の線路の貫通案内または収容のために使用され得る。
【0046】
コネクタベース14内には、さらにコンタクトキャリヤ上側部分24とコンタクトキャリヤ下側部分26との間でシールエレメント33が挿入可能である。このシールエレメント33はコネクタボディ12の内部でコンタクトキャリヤ上側部分24を巡るように延びている。シールエレメント33は、プラグインモジュールに設けられたつば(図示しない)とコネクタベース14との間に収容されて、プラグインモジュールに差し被されたコネクタ10が周辺環境に対してシールされるようにするために形成されている。
【0047】
図4には、図3に示したコネクタ10のコンポーネントを、軸方向に対して平行な中心平面に沿って断面した横断面図が示されている。この場合、押圧板27とマットシール部材31とがコンタクトキャリヤ上側部分24の収容範囲25内に挿入されていて、コンタクトキャリヤ下側部分26がコネクタベース14内に挿入されているので、通路29a,29b,29c,29dはそれぞれ互いに開口もしくは整合し合って、電気的な線路を貫通案内するための一貫した通路を形成している。マットシール部材31の通路29bは、さらにそれぞれ1つのくびれ状の減径範囲35を有しており、この減径範囲35は、マットシール部材31の内部で電気的な線路を密に取り囲むように形成されている。
【0048】
さらに、ロックエレメント18bが、コンタクトキャリヤ上側部分24とコンタクトキャリヤ下側部分26との間の境界面に跨がるようにコネクタ10内に押し込まれている。この場合、ロックエレメント18bの櫛歯20bは、通路29c,29dのそれぞれに接しかつそれぞれ互いに整合するように配置された切欠き28内に押し込まれている。したがって、ロックエレメント18bの櫛歯20bはその横断面に関して一部はコンタクトキャリヤ上側部分24内に延びていて、別の一部はコンタクトキャリヤ下側部分26内に延びている。ロックエレメント18bの櫛歯20bはこの場合、通路29c,29dの長手方向延在方向に対して直交する横方向で、すなわち軸方向に対して直角に、通路29c,29d内に係合するので、それぞれ通路29c,29dの横断面の部分範囲が櫛歯20bによって占められる。この場合、通路29c,29d内の電気的な線路はそれぞれ通路29c,29dの壁に押圧されるので、これらの電気的な線路は静摩擦によって位置固定されている。
【0049】
図5には、コンタクトキャリヤ上側部分24とコンタクトキャリヤ下側部分26との間の境界面の詳細図が示されている。図5からは、ロックエレメント18bの、互いに整合するように形成された切欠き28内に押し込まれた櫛歯20bが良く判る。
【0050】
櫛歯20bは、コンタクトキャリヤ上側部分24内に延びる方形の上側範囲30と、コンタクトキャリヤ下側部分26内に延びる方形の下側範囲32と、コンタクトキャリヤ上側部分24とコンタクトキャリヤ下側部分26との間の境界面に延びて、上側範囲30と下側範囲32とを結合する台形状の中央範囲34とを有している。方形の上側範囲30は辺長さに関して、方形の下側範囲32よりも小さく形成されている。
【0051】
櫛歯20bの横断面に対応するように切欠き28も形成されているので、櫛歯20bは切欠き28内に形状接続的に係合する。
【0052】
しかし、ロックエレメント18bの櫛歯20bの横断面ならびに切欠き28の横断面は、必ずしも上で説明したように形成されている必要はない。たとえば櫛歯20bはその全横断面に関して完全に台形、三角形、方形または任意の別の形状に形成されていてもよく、その場合、切欠き28は櫛歯20bの横断面に対応するように形成されており、これにより櫛歯20bは切欠き28内に形状接続的に係合することができ、こうしてコネクタ10内の電気的な線路を位置固定することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 コネクタ
11 コネクタカバー
12 コネクタボディ
13 コネクタレバー
14 コネクタベース
15 収容開口
16 切抜き部
17 アーム
18a,18b ロックエレメント
19 シャフト
20a,20b 櫛歯
21 クロスビーム
22a,22b クロスステー
23 コネクタ安全装置
24 コンタクトキャリヤ上側部分
25 収容範囲
26 コンタクトキャリヤ下側部分
27 押圧板
28 切欠き
29a,29b,29c,29d 通路
30 上側範囲
31 マットシール部材
32 下側範囲
33 シールエレメント
34 中央範囲
35 減径範囲
図1
図2
図3
図4
図5