(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記予備的に吐出するインクの単位面積当たりの吐出量は、一つの上記層を形成するために吐出するインクの単位面積当たりの吐出量よりも少ないことを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の、三次元構造物の形成装置。
造形物と、該造形物表面を着色している着色部分とを有する三次元構造物を、記録ユニットおよびメンテナンスユニットを備える、三次元造形物の形成装置を用いて、インクを堆積させてなる層を積層して形成する三次元構造物の形成方法であって、
多層型のパターンデータに基づいて、上記記録ユニットを少なくとも一走査させて、該少なくとも一走査させている間に該記録ユニットから上記インクを吐出して少なくとも一つの上記層を形成し、上記インクを堆積させて上記三次元構造物を造形する造形吐出工程と、
上記記録ユニットが上記メンテナンスユニットによってメンテナンスを受ける位置を離れた位置から上記層の形成を開始する位置の間において、上記多層型のパターンデータとは異なるデータに基づいて上記記録ユニットから上記インクを予備的に吐出する予備吐出工程とを含むことを特徴とする、三次元構造物の形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態に係る、三次元構造物の形成装置および形成方法について説明するが、先ずは、本実施形態における形成装置および形成方法によって形成される三次元構造物の概要を説明する。
【0034】
(1)三次元構造物の概要
図1は、本実施形態が提供する三次元構造物を示す図である。
図1の(a)は、三次元構造物の外観図であり、
図1の(b)は、
図1の(a)の切断線A−A´における三次元構造物の矢視断面の一部分を示す図である。
【0035】
図1に示す三次元構造物5は、上面、下面、および側面が略平面であり、且つ側面から上面にかけて湾曲面であり、また側面から下面にかけて湾曲面である、水平断面が楕円形を有する略円柱形状を有している。なお、三次元構造物の形状は、
図1に示す形状に限定されるものではなく、例えば後述する六面体のほか、球型や中空構造やリング構造や蹄鉄型などあらゆる形状であってよい。
【0036】
三次元構造物5は、その表層側(外周側)から内側(中心部側)に向かって、第2の透明層4と、着色剤(着色インク)を含むインクによって形成された着色層3と、透明インクによって形成された第1の透明層2(
図1の(b))と、白色インク、あるいは光反射性を有するインクから形成された光反射層1(
図1の(b))と、造形本体部分を構成する造形層M(
図1の(b))とがこの順番で形成されている。すなわち、三次元構造物5は、中心部に在る造形層Mを、光反射層1と、第1の透明層2と、着色層3と、第2の透明層4とがこの順でコーティングしている。
【0037】
なお、本実施形態では、造形層Mと光反射層1とを併せて「造形本体部分(造形物)」とみなし、この造形本体部分の表面を、第1の透明層2と、着色層3と、第2の透明層4とを有する「着色部分」が覆っているとみなす。しかしながら、造形本体部分(造形物)は、造形層Mのみによって構成されてもよいし、あるいは、造形層Mを設けずに光反射層1のみで造形本体部分(造形物)を構成してもよい。また、造形本体部分には空洞が設けられていてもよい。
【0038】
また、第1の透明層2を造形本体部分(造形物)の一部とみなしてもよい。また、この場合に、着色層3と、第2の透明層4とを着色部分とみなすことができる。
【0039】
また、着色層3のみを着色部分とみなしてもよい。
【0040】
造形層Mと、光反射層1と、第1の透明層2と、着色層3と、第2の透明層4とは、いずれも、後述する本実施形態の形成装置60(
図2)を用いてインクジェット法を用いてインクを吐出し、これを堆積することによって形成されている。
【0041】
上記インクとしては、紫外線硬化型インクを用いることができる。紫外線硬化型インクを用いれば、短時間で硬化できるため、積層させることが容易であり、三次元構造物をより短時間で製造することができるというメリットがある。紫外線硬化型インクは紫外線硬化型化合物を含む。紫外線硬化型化合物としては、紫外線を照射した際に硬化する化合物であれば限定されない。紫外線硬化型化合物としては、例えば、紫外線の照射により重合する硬化型モノマー及び硬化型オリゴマーが挙げられる。硬化型モノマーとしては、例えば、低粘度アクリルモノマー、ビニルエーテル類、オキセタン系モノマーまたは環状脂肪族エポキシモノマー等が挙げられる。硬化型オリゴマーとしては、例えば、アクリル系オリゴマーが挙げられる。
【0042】
なお、本発明は紫外線硬化型インクに限定されるものではなく、例えば熱可塑性インクを用いることができる。熱可塑性インクを用いれば、吐出された加熱インクが室温に冷却することによって硬化する。このとき、より短時間で硬化させるために強制的に冷却する手法を用いてもよい。
【0043】
図1の(b)に示す三次元構造物5の断面は、
図1の(a)に示すXYZ座標系に関して、三次元構造物5の中央位置においてYZ平面に沿った断面を模式的に描いたものである。
【0044】
三次元構造物5は、
図1の(b)に示すように、複数の層5a(1)、5a(2)、5a(3)、5a(4)、5a(5)…をインクジェット法を用いて積層する積層方式によって立体造形された構造体である。なお、図面には、積層方向に沿った軸をZ軸とする座標系を示している。この座標系において、各層5a(1)、5a(2)、5a(3)、5a(4)、5a(5)…は、それぞれXY軸平面に沿って広がっている。なお、積層する層の総数は特に制限はない。
【0045】
先述のように中心部に在る造形層Mから、表層側に向かって、光反射層1と、第1の透明層2と、着色層3と、第2の透明層4とがこの順で造形層Mをコーティングした三次元構造物5を、
図1の(b)のようにZ軸方向に複数の層にスライスしたかたちで得られる層5a(1)、5a(2)、5a(3)、5a(4)、5a(5)…にはそれぞれ、その積層位置に応じて、造形層Mの一部分(以下、造形層の一部分50)、光反射層1の一部分(以下、光反射層の一部分51)、第1の透明層2の一部分(以下、第1の透明層の一部分52)、着色層3の一部分(以下、着色層の一部分53)または第2の透明層4の一部分(以下、第2の透明層の一部分54)を含む。
【0046】
具体的には、
図1の(b)に示すように、複数の層5a(1)…のうち、最下位置に在る層5a(20)と、最上位置に在る層5a(1)を、第2の透明層の一部分54のみからなる層とする。そして、これらの層5a(1)、5a(20)の対向側(内側)にそれぞれ、第2の透明層の一部分54が着色層の一部分53の外周に形成された層5a(2)、5a(19)を配置する。さらにその内側に、外周端から中央に向かって第2の透明層の一部分54、着色層の一部分53および第1の透明層の一部分52がこの順で形成された層5a(3)、5a(18)を配置する。さらにその内側に外周端から中央に向かって第2の透明層の一部分54、着色層の一部分53、第1の透明層の一部分52および光反射層1の一部分51がこの順で形成された層5a(4)、5a(17)を配置する。そして、これらに挟まれる中間領域を、外周端から中央に向かって第2の透明層の一部分54、着色層の一部分53、第1の透明層の一部分52、光反射層の一部分51および造形層の一部分50がこの順で形成された層(
図1の(b)では層5a(5)…5a(16))を配置する。そして、インクジェット法を用いて最下位置に在る層5a(20)からZ軸方向を上方に向かって最後の最上位置に在る層5a(1)に至るまでを積層方式で形成することによって、
図1の(b)に示す積層構造を実現することができる。なお、これら各種の層の配設数は
図1の(b)に示したものに限定されるものではない。また、
図1の(a)に示す三次元構造物5を積層方式によって立体造形するものであれば、各層5a(1)…の構成は上述したものに限定されない。
【0047】
図1の(b)に示すように複数の層5a(1)、5a(2)、5a(3)、5a(4)、5a(5)…がZ軸方向に積層されていることにより、各層5a(1)、5a(2)、5a(3)、5a(4)、5a(5)…の第2の透明層の一部分54が概ね三次元構造物5の最外周表面方向に連なって、第2の透明層4を形成している。また、着色層の一部分53を含んでいる各層5a(2)、5a(3)、5a(4)、5a(5)…の着色層の一部分53が概ね三次元構造物5の最外周表面方向に連なって、着色層3を形成している(
図1(b)には、巨視的に見た着色画像面を破線で示している)。また、第1の透明層の一部分52を含んでいる各層5a(3)、5a(4)、5a(5)…の第1の透明層の一部分52が概ね三次元構造物5の最外周表面方向に連なって、第1の透明層2を形成している。また、光反射層の一部分51を含んでいる各層5a(4)、5a(5)…の光反射層の一部分51が概ね三次元構造物5の最外周表面方向に連なって、光反射層1を形成している。また、造形層の一部分50を含んでいる各層5a(5)、5a(6)…の造形層の一部分50が積層されて造形層Mを形成している。
【0048】
(2)形成装置
図2は、本実施形態における、三次元構造物の形成装置(以下、形成装置と記載する)の主要構成を示した図である。なお、
図2には、形成途中の三次元構造物5も併せて図示している。
【0049】
本実施形態の形成装置60は、造形本体部分(造形物)とその表面を着色している着色部分とを含む先述した三次元構造物5を
図1の(b)に示した積層構造体として積層方式により形成する装置である。本実施形態の形成装置60は、
図2に示すように、記録ユニット10と、制御ユニット20、メンテナンスユニット30、基台40とを備えている。
【0050】
(2−1)記録ユニット10
記録ユニット10は、先述した三次元構造物5を積層方式で形成するべく、インクジェット法を用いて先述したインクを吐出するとともに、吐出したインクを硬化させるためのユニットである。
【0051】
図3は、記録ユニット10の具体的構成を図示したものであり、記録ユニット10のインク吐出面(下面)を示している。記録ユニット10は、
図3に示すように、キャリッジ13と、インクジェットヘッド11と、UV照射部12とを有している。
【0052】
(2−1−1)キャリッジ13
キャリッジ13は、Y軸に沿って往復移動可能であり、インクジェットヘッド11およびUV照射部12を搭載している。キャリッジ13の移動は、後述する制御ユニット20によって制御される。
【0053】
(2−1−2)インクジェットヘッド11
インクジェットヘッド11は、インクジェット法を用いて先述したインクを吐出する。具体的には、インクジェットヘッド11は、
図3に示すように、第1インクジェットヘッドノズル部11Aと、第2インクジェットヘッドノズル部11Bと、第3インクジェットヘッドノズル部11Cを有している。
【0054】
第1インクジェットヘッドノズル部11Aは、
図1の(b)に示した三次元構造物5の一部である造形本体部分(造形物)(
図1の(b)に示した造形層の一部分50と光反射層の一部分51)を形成するための造形材であるインクを吐出する。本実施形態では、造形材として、造形層M(造形層の一部分50)を形成するための造形インクと、光反射層1(光反射層の一部分51)を形成するための白色インクとを用いる。そのため、第1インクジェットヘッドノズル部11Aには、造形インクを吐出する造形インク用ノズル列MAINと、白色インクを吐出する白色インク用ノズル列Wとを有している。造形インクには、従来周知の造形インクを用いることができるが、白色インク用ノズル列Wから吐出する白色インクや、後述する透明インク用ノズル列CLから吐出する透明インクを用いることも可能である。
【0055】
第2インクジェットヘッドノズル部11Bは、
図1の(b)に示した三次元構造物5の一部である着色部分(
図1の(b)に示した第1の透明層の一部分52、着色層の一部分53、第2の透明層の一部分54)を形成するための着色材であるインクを吐出する。本実施形態では、着色材として、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクおよび透明インクとを用いる。そのため、第2インクジェットヘッドノズル部11Bには、イエローインクを吐出するイエローインク用ノズル列Yと、マゼンタインクを吐出するマゼンタインク用ノズル列Mと、シアンインクを吐出するシアンインク用ノズル列Cと、ブラックインクを吐出するブラックインク用ノズル列Kと、透明インクを吐出する透明インク用ノズル列CLとが設けられている。
【0056】
第3インクジェットヘッドノズル部11Cは、先述の三次元構造物には構成されないサポート材であるインクを吐出する。そのため、第3インクジェットヘッドノズル部11Cには、光硬化型のサポート材インクを吐出するサポート材インク用ノズル列Sが設けられている。
【0057】
ここで、サポート材とは、三次元構造物には構成されないものであるが、三次元構造物の形成過程において三次元構造物を支持あるいは保持するためのものである。支持の一例を挙げると、
図1に示す三次元構造物5は、その下半分の形状が、積層方向にしたがって層の径が徐々に拡がった形状を有している。例えば、
図1の(b)に示す最下位置にある層5a(20)とその上に積層されている層5a(19)との関係をみてみると、上層である層5a(19)のほうがXY軸平面方向のサイズが大きく、その外周端部が、下層である層5a(20)の外周端部よりも張り出した構造となっている。
【0058】
この構造をインクジェット法を用いてインクを堆積しながら形成する際、三次元構造物だけを形成しようとすると、その張り出した部分の直下に該部分を支える下層がなく、インクは該張り出した部分を形成できずに落下してしまう。そこで、この支えとして機能するのが、サポート材である。要するに、インクが堆積してなるインク堆積物の上に更にインクを堆積させながら層を積層する方式において、下にインク堆積物が無い場合には、このサポート材を用いてサポート材の上に三次元構造物を構成するためのインクを堆積させる。このサポート材を用いた形成方式は、張り出した部分を形成する場合のほかに、アーチ状の構造物を形成する場合にも用いることができる。
【0059】
サポート材は、他の機能として、各層5a(1)…の外周端部にインクを堆積させる際に該インクが更に外側に不都合に拡がることがないように堰き止める堰き止め機能を有する。そのため、張り出した部分を持たない層を形成する場合にも、該層を積層する際に、該層の外周にサポート材を形成する。
【0060】
サポート材は、後工程において除去される。サポート材インクは、水溶性の紫外線硬化樹脂などの従来周知のものを用いることができる。
【0061】
第1インクジェットヘッドノズル部11Aに具備される複数のノズル列と、第2インクジェットヘッドノズル部11Bに具備される複数のノズル列と、第3インクジェットヘッドノズル部11Cに具備されるノズル例とは、記録ユニット10の走査方向(Y軸方向)に沿って配列している。すなわち、
図3に示すように、イエローインク用ノズル列Yと、マゼンタインク用ノズル列Mと、シアンインク用ノズル列Cと、ブラックインク用ノズル列Kと、透明インク用ノズル列CLと、白色インク用ノズル列Wと、造形インク用ノズル列MAINと、サポート材インク用ノズル列Sとが、この順でY軸方向に沿って配列している。
【0062】
なお、各ノズル列は、
図3に示すように複数のノズル孔をX軸方向に配列している。これら複数のノズル孔の一部のノズル孔のみからインクを吐出することがあってもよい。また、ノズル列の配列順や数も、
図3に示すものに限定されない。
【0063】
記録ユニット10は、これら複数のノズル列各々をキャリッジ13に搭載しているため、キャリッジ13の移動に伴うY方向への移動時に複数のノズル列から紫外線硬化型インクをZ軸方向に吐出(滴下)することが可能となっている。
【0064】
(2−1−3)UV照射部12
UV照射部12は、インク硬化用の光源を有した複数の照射器12Aを有しており、これをキャリッジ13に搭載されている。具体的には、UV照射部12は、Y軸方向に沿って配列した3つの照射器12Aを有している。キャリッジ13には、
図3の紙面右側から左側に向かってY軸方向に沿って、照射器12A、第3インクジェットヘッドノズル部11C、第1インクジェットヘッドノズル部11A、照射器12A、第2インクジェットヘッドノズル部11B、照射器12Aがこの順で配列している。このように、全てのノズル列がY方向に配列して設けられているため、一回のY方向への移動で一層を構成する全てのインクを吐出することが可能であるとともに、吐出と同時に紫外線照射もおこなうため、吐出と硬化とを同じタイミングでおこなうことができる。
【0065】
(2−2)制御ユニット20
制御ユニット20は、
図2に示すように、吐出制御部21と、照射制御部22と、移動制御部23とを有している。
【0066】
吐出制御部21は、記録ユニット10の第1インクジェットヘッドノズル部11Aと、第2インクジェットヘッドノズル部11Bと、第3インクジェットヘッドノズル部11Cとからのインク吐出を制御するためにある。インク吐出を制御することにより、吐出タイミング、吐出滴量、および吐出力などを適切なものに調整することができる。吐出タイミングは、図示しない電源からのインクジェットヘッド11への電圧印加タイミングを制御することによっておこない、吐出滴量および吐出力は、インクジェットヘッド11のインクを吐出するノズルへの電圧印加量を制御することによりおこなう。
【0067】
吐出制御部21には、図示しない記憶部が設けられており、この記憶部には、三次元構造物の形状データ(着色部分を形成するための入力データも含む)等が記憶される。三次元構造物の形状データとは、最終製品の外観内観のデザイン・機構等を三次元CADによってデータ化した後、コンピュータによって該データをスライスして薄板を重ね合わせるような多層型のパターンデータである。なお、この三次元構造物の形状データは、吐出制御部21の外部から取得するものであってもよいし、記憶部に予め記憶されているものであってもよいし、あるいは、吐出制御部21の外部から取得した情報に基づいて吐出制御部21が生成するものであってもよい。また、本実施形態では、このパターンデータに、サポート材の形成データも含まれているものとする。
【0068】
吐出制御部21は、このパターンデータに基づいて、インクジェットヘッド11の第1インクジェットヘッドノズル部11A、第2インクジェットヘッドノズル部11Bおよび第3インクジェットヘッドノズル部11Cのノズル列のノズルからのインクの吐出、その吐出量およびその吐出力を制御する。
【0069】
更に、本実施形態において特徴的なのは、この吐出制御部21が、パターンデータとは異なるデータに基づいて、三次元構造物を形成する領域の外において、第1インクジェットヘッドノズル部11A、第2インクジェットヘッドノズル部11Bおよび第3インクジェットヘッドノズル部11Cの全ノズル列の全ノズルから、予備的にインクを吐出するように、インクジェットヘッド11を制御することにある。
【0070】
この予備的にインクを吐出するためのデータ(以下、予備吐出データ)には、予備的にインクを吐出するタイミング、吐出滴量および吐出力等に関する情報が含まれている。
【0071】
この予備吐出データは、吐出制御部21の外部から取得するものであってもよいし、記憶部に予め記憶されているものであってもよいし、あるいは、吐出制御部21の外部から取得した情報に基づいて吐出制御部21が生成するものであってもよい。
【0072】
吐出制御部21では、上記パターンデータと、上記予備吐出データとを統合した一つの統合データを作成し、この統合データに基づいて、第1インクジェットヘッドノズル部11A、第2インクジェットヘッドノズル部11Bおよび第3インクジェットヘッドノズル部11Cからのインク吐出を制御する。
【0073】
照射制御部22は、記録ユニット10のUV照射部12のUV照射を制御するためにある。
【0074】
移動制御部23は、記録ユニット10のキャリッジ13の移動(走査)を制御するためにある。
【0075】
(2−3)メンテナンスユニット30
メンテナンスユニット30は、記録ユニット10のインクジェットヘッド11をメンテナンスするためにある。具体的には、インクジェットヘッド11に設けられた第1インクジェットヘッドノズル部11A、第2インクジェットヘッドノズル部11Bおよび第3インクジェットヘッドノズル部11Cのノズル吐出面に対して、メンテナンスユニット30は、ワイピング、キャッピング、および各ノズル列からのインクのフラッシングのうちの少なくとも1つをおこなう。なお、従来周知のインクジェット法を用いたインク吐出装置に設けられたメンテナンス機構を採用することができる。
【0076】
メンテナンスユニット30は、
図2に示すように、記録ユニット10が三次元構造物を形成する領域から離れた箇所に配設されている。記録ユニット10は、三次元構造物を形成していない間に、移動制御部23による制御を受けて該箇所に移動して、メンテナンスユニット30からメンテナンスを受ける。メンテナンスユニット30は、記録ユニット10のY軸方向の走査経路上に配設されていることが好ましい。本実施形態では、メンテナンスユニット30が、記録ユニット10がY軸方向に沿って正方向に移動する先に在るように配設されている。
【0077】
メンテナンスユニット30によるメンテナンスを受けた記録ユニット10は、Y軸方向を負方向に移動(走査)し、基台40の上方を通過する間に、吐出制御部21による制御を受けて所定のタイミングで所定のインク列の所定のノズルからインクを吐出する。
【0078】
本実施形態では、記録ユニット10が一走査する間、すなわち、記録ユニットが、メンテナンスユニット30によるメンテナンスを受けた位置から、Y軸方向を負方向に一走査することによって、
図1の(b)に示した1つの層5a(1)…を形成することができる。
【0079】
本実施形態では、メンテナンスユニット30は、記録ユニット10が三次元構造物の形成を開始する、すなわち最下位置にあたる層5a(20)を形成する前に記録ユニット10をメンテナンスする。なお、メンテナンスユニット30によるメンテナンスは、このときだけに限らない。例えば、形成装置60の電源スイッチがオンされた立上げ時に実行してもよい。
【0080】
(2−4)基台40
基台40は、記録ユニット10のインクジェットヘッド11から吐出されたインクを堆積させるプレート状のステージである。基台40上に、
図2に示すように三次元構造物5が形成されるとともに、先述した予備的に吐出されたインクが堆積する。
【0081】
基台40の上面に記録ユニット10の下面を対向配置し、先述のように、記録ユニット10をY軸方向に往復移動させてその移動中にインクを吐出させることにより、基台40の上面に沿って広がる層5a(20)を最下位置の層として、複数層(本実施形態では全20層)積層することができる。
【0082】
なお、本実施形態では、基台40の位置は固定されており、記録ユニット10のみが移動する態様について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録ユニット10と、基台40との相対位置が所定の方向に変化すればよいため、記録ユニット10がXYZ座標系において所定の方向に移動してもよいし、基台40をXYZ座標系において所定の方向に移動させてもよく、どちらがおこなってもよい。
【0083】
(3)形成方法(形成装置の動作)
以下に、形成装置60の動作と併せて、本実施形態の三次元構造物5の形成方法を説明する。
図4は、
図2の一部を拡大して示した図である。
【0084】
本実施形態の形成方法の特徴としては、記録ユニット10がメンテナンスユニット30によるメンテナンスを受けた位置から、記録ユニット10が三次元構造物を構成する層5a(20)…の形成を開始するまでの間に、層形成に用いるインクを記録ユニット10から予備的に吐出する予備吐出工程を含む点にある。「予備的に吐出」とは、層5a(20)…を形成する前に、層5a(20)…の形成に用いるインクを層5a(20)…を形成しない箇所(領域)に吐出するという意味である。
【0085】
本実施形態の形成方法について、
図1の(b)に示す上から五層目の層5a(5)を記録ユニット10が形成する過程を示した
図4を用いて説明する。
【0086】
図4では、記録ユニット10が、メンテナンスを受ける位置からY軸方向を負方向に沿った一走査を開始して、層5a(6)の上に更に層5a(5)を積層しようとする段階を図示している。層5a(5)を形成するためにおこなう一走査中において、層5a(5)の形成を開始する前、より具体的には層5a(5)の中でも最も先に形成されるサポート材の一部分66が形成される前に、予備吐出工程をおこなう。
【0087】
予備吐出工程では、記録ユニット10の第1インクジェットヘッドノズル部11A、第2インクジェットヘッドノズル部11B、および第3インクジェットヘッドノズル部11Cの各インク列の全ノズルからインクを吐出する。吐出された各種インクは、層5a(5)(正確には、層5a(5)が形成される予定の領域)よりもY軸方向の正方向側において、基台40に着弾する(
図4中の予備吐出堆積物7)。
【0088】
予備吐出後に、更に記録ユニット10の走査位置が進み、形成済みの層5a(6)の外周に形成されたサポート材の一部分66の上に、層5a(5)の外周に相当する位置にサポート材の一部が積層され、続いて、Y軸方向を負方向に沿って、第2の透明層の一部分54、着色層の一部分53、第1の透明層の一部分52、光反射層の一部分51および造形層の一部分50が形成され、層5a(5)のうち、Y軸方向の最も負側の端部を構成する第2の透明層の一部分54を形成して、一つの層5a(5)が完成する。そして引き続いて、層5a(5)の外周にサポート材の一部分66を形成して、一走査が完了する。
【0089】
本実施形態では、一つの層5a(5)を完成させてY軸方向の負側において一走査を終えた記録ユニット10は、Y軸方向を正方向に移動して、その移動の間に、層5a(5)の上に図示しない層5a(4)(
図1の(b))を積層する記録工程をおこなう。
【0090】
そして、層5a(4)およびその外周のサポート材の一部分66の形成が完了すると、記録ユニット10は、層5a(3)の形成開始(正確には、層5a(3)の外周のサポート材の一部分66の形成開始)前に、先述と同様に予備吐出工程をおこない、インクを予備的に吐出した後に、層5a(3)の形成(正確には、層5a(3)の外周のサポート材の一部分66の形成)を開始する。
【0091】
なお、積層が進み、適当なタイミングで、記録ユニット10は、Z軸方向を負方向に沿って移動する。
【0092】
本実施形態では、予備吐出工程は、記録ユニットがメンテナンスを受ける位置から層形成を開始する位置までを走査する間に毎回、あるいは複数層の形成毎に1回におこなわれ、複数の層5a(20)…が積層されていくにつれ、予備吐出工程において吐出されたインクが着弾して堆積した予備吐出堆積物7が、基台40上に形成される。
【0093】
なお、
図4では、予備吐出堆積物7が一つに纏まって存在しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、散在していても構わないが、最終的に基台40から除去するものであるため、これを考慮すれば、一つに堆積しているか幾つかに纏まって在るほうが除去し易く好ましい。
【0094】
また、本実施形態では、予備吐出したインクを基台40上に堆積させているが、基台40の外、あるいは基台40に穴を設けて、基台40に着弾させずに、基台40の下方に落としても良い。
【0095】
予備吐出工程において予備的にインクを吐出する吐出タイミングは、例えば、記録ユニット10(より具体的には各インクジェットヘッドノズル部)と、基台40との相対位置によって決定することができる。例えば記録ユニット10の位置をセンシングして、
図4の予備吐出堆積物7の領域の上方に記録ユニット10が在るときに、全ノズルからインクを吐出する構成とすることができる。
【0096】
あるいは、タイミングチャートを制御ユニット20(
図2)が予め有しており、一走査を開始してから所定の時間を経過したときに、全ノズルからインクを吐出する構成とすることもできる。この態様のほうが、相対位置をセンシングする態様よりもセンシングに関連する部品を付属させる必要がなく、形成装置全体のサイズの小型化を図ることができる。
【0097】
予備吐出工程においてインクを予備的に吐出することによって、層形成のために吐出するインクの吐出条件を、所定の条件に合致させることができ、所望の層を形成することができるという効果を奏する。
【0098】
記録ユニット10がメンテナンスを受ける位置から層形成開始位置までの間に少しでも時間があくと、記録ユニット10のノズルからインク溶媒が蒸発してインクの粘度が上がってしまうなどの不都合が生じ、これにより、いざ層形成を開始すると、所定の条件でインクが吐出されない虞がある。具体的には、インク吐出滴量、インク吐出方向、インク吐出力などが所定の条件でおこなわれない虞がある。これに対して、本実施形態の形成方法では、層の形成に先だって、予備的にインクを吐出することによって、インク吐出条件を整え、層の形成を所定の条件で精度良くおこなうことを可能にしている。
【0099】
また、インク吐出条件は、層の形成開始の直前に整えることが好ましい。なぜなら、整えてからまた時間が空けば、吐出条件がずれる原因になってしまうからである。そこで、インクを予備的に吐出する箇所は、サポート材6(サポート材の一部分66)に極力近い位置であることが好ましい。ただし、
図1に示す本実施形態が提供する三次元構造物5は、側面が外側に膨らんでいることから、
図4のように、側面のうちの最も膨らんだ箇所を構成する層の外周に形成されるサポート材の一部分よりも外側であって、且つ、該サポート材の一部分の近傍にインクを予備的に吐出することが好ましい。ここで、
図5は、上述の各工程を経て形成された層5a(5)の上面図を示しており、説明の便宜上、層5a(5)の外周に形成されるサポート材の一部分66、および予備的に吐出したインクの予備吐出堆積物7も併せて図示している。
図5のように、予備的に吐出されるインクは、層5a(5)の外周に形成されるサポート材の一部分66の、Y軸に沿って正方向側の近傍に堆積している。
【0100】
なお、予備的に吐出するインクの吐出滴量、吐出方向、吐出力は、何れも、制御ユニット20の吐出制御部21が制御する。
【0101】
ここで、本実施形態では、予備吐出工程において記録ユニット10の第1インクジェットヘッドノズル部11A、第2インクジェットヘッドノズル部11B、および第3インクジェットヘッドノズル部11Cの各インク列の全ノズルからインクを予備的に吐出する態様を説明している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、一部のノズル列のみからインクを予備的に吐出する態様であってもよい。
【0102】
また、このように一部のノズル列のみからインクを予備的に吐出する態様の場合には、着色部分を構成するインク、具体的には、第2インクジェットヘッドノズル部11Bに構成されるノズル列のノズルからインクを予備的に吐出することが好ましい。その理由は、本実施形態の三次元構造物5が呈する色調を着色部分が決定しているからである。着色部分を構成するインクの吐出条件が所定の吐出条件から外れると所定の色調を呈すことができなくなるため、着色部分を構成するインクを吐出する第2インクジェットヘッドノズル部11Bに構成されるノズル列のノズルは、少なくともインクの予備吐出をおこなうことが望ましい。
【0103】
ここで、予備的に吐出するインクの単位面積当たりの吐出量は、各層5a(1)…を形成するために吐出するインクの単位面積当たりの吐出量よりも少ない構成とする。予備的に吐出するインクは、いわゆる無駄に消費されるインクであることから、その消費量を極力する無くすることによって、無駄な消費を抑えることができる。例えば、予備的に吐出するインクの単位面積当たりの吐出量は、各層5a(1)…を形成するために吐出するインクの単位面積当たりの吐出量の80%以下、好ましくは50%以下とすることが好ましい。
【0104】
なお、
図4を用いて説明した予備吐出工程では、予備吐出するまえにメンテナンスユニット30によるメンテナンスは受けていない。メンテナンスを受けることは必須でない。本発明の本質は、メンテナンスユニット30の位置から、層形成を開始する位置までの間に予備的にインクを吐出することにあり、予備的にインクを吐出する度に、その直前にメンテナンスをおこなう必要はない。
【0105】
なお、本実施形態の制御ユニット(特に吐出制御部21、照射制御部22および移動制御部23)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。後者の場合、形成装置60は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0106】
(4)三次元構造物のその他
三次元構造物5に関して、上記では概要のみを説明したので、三次元構造物5のその他の構成について
図1の(b)を用いて以下に説明する。
【0107】
各層5a(1)…のZ方向の厚さ(高さ)は、積層数等により適宜設定することができる。本実施形態ではインクジェット法を用いて積層するため、その積層方法において実現可能な層5a(1)…のZ方向の厚さを考慮すれば良い。1つの層5a(1)…のZ方向の厚さは主に着色層3の減法混色による多色形成に適切な値で5μm〜50μmの範囲である。また、本実施形態では紫外線硬化型インクをインクジェット法で層形成するため、各層5a(1)…の厚さはインク滴の大きさに依り5μm〜20μmとすることができ、好ましい範囲は10μm〜25μmである。
【0108】
以下に、光反射層1(光反射層の一部分51)と、第1の透明層2(第1の透明層の一部分52)と、着色層3(着色層の一部分53)と、第2の透明層4(第2の透明層の一部分54)とについて、それぞれ説明する。
【0109】
●光反射層1(光反射層の一部分51)
光反射層1(光反射層の一部分51)は、光反射性を有する層であり、光反射層1の少なくとも着色層側の表面において可視光の全領域の光を反射することができる光反射性を有している。
【0110】
光反射層1(光反射層の一部分51)は、白色顔料を含むインク(白色インク)から形成することができる。白色インクから形成することにより、光反射層1において三次元構造物の表層側から入った光を良好に反射し、減法混色による着色を実現することができる。なお、白色でなくとも、金属粉末を含んだインクなどの光反射性を有するインクから形成されるそうであってもよい。
【0111】
光反射層1の厚さは最小で5μm〜20μmとすることができる。ここでいう光反射層1の厚さとは、層5a(4)…に含まれる光反射層の一部分51の外周端側から中心側方向に沿った幅と同じである。なお、本発明はこの数値範囲に限定されるものではない。
【0112】
●第1の透明層2(第1の透明層の一部分52)の構成
第1の透明層2(第1の透明層の一部分52)は、透明インクから形成される。
【0113】
ここで、透明インクとは、単位厚さ当たりの光透過率が50%以上である透明層を形成することができるインクであれば良い。透明層の単位厚さ当たりの光透過率が50%を下回ると、光の透過が不都合に阻止されて、造形物が減法混色による所望の色調を呈することができないため望ましくない。また、好ましくは、透明層の単位厚さ当たりの光透過率が80%以上となるインクを用い、透明層の単位厚さ当たりの光透過率が90%以上となるインクを用いることがより好ましい。
【0114】
光反射層1(光反射層の一部分51)と、着色層3(着色層の一部分53)との間に第1の透明層2(第1の透明層の一部分52)を配設することにより、着色層3を形成する着色インクと光反射層1を形成するインクとが混じり合うことを回避することができる。仮に、着色層を形成する着色インクが、第1の透明層を形成する透明インクと混じり合っても着色層3の色は失われないので色調に不都合な変化を生じさせることはない。したがって、着色層3において所望の色調(加飾)を呈した造形物を実現することができる。
【0115】
第1の透明層2の厚さは、5μm〜20μmとすることができる。ここでいう第1の透明層2の厚さとは、層5a(3)…に含まれる第1の透明層の一部分52の外周端側から中心側方向に沿った幅と同じである。なお、本発明はこの数値範囲に限定されるものではない。
【0116】
●着色層3(着色層の一部分53)
着色層3(着色層の一部分53)の形成に用いられるインクは、着色剤を含有する着色インクを含む。
【0117】
着色インクとしては、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)、ブラック(K)、各々の淡色のインクが含まれるが、これに限定されるものではなく、赤(R)、緑(G)、青(B)や、オレンジ(Or)等を加えても良い。また、メタリックやパールや蛍光体色を使用することも可能である。所望の色調を表現するべく、これらの着色インクの一種類または複数種類を用いる。
【0118】
ところで、着色層3(着色層の一部分53)を形成するために用いられる着色インクの量は、所望の(呈したい)色調によってばらつきがある。そのため、低濃度の明るい色調の場合は着色インクのみでは着色層3(着色層の一部分53)のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たすに至らず、Z方向の高さに凹凸が形成される場合や、X、Y方向に沿った途中に着色インクが無い凹みが形成される場合がある。何れの場合も、本実施形態のように積層方式によって形成される造形物には不都合な凹凸を生じることになり、好ましくない。特に、
図1の(b)に示す積層構造の真ん中付近の垂直な造形面では、誤差拡散法によるインク形成で、着色層3の一つの断面が縦横各々のインク滴二滴の計四滴の充填密度の場合で、着色インクの数は最大(最高濃度)で四滴、最小(濃度ゼロ、つまり白色)でゼロとなるので、最小の場合は四滴分の隙間の空間を形成してしまう場合があり、造形面からも色調面からも大きく品質を損なう。
【0119】
そこで、本実施形態では、着色インクのみでは着色層3(着色層の一部分53)のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たさない箇所について、補填インクによって着色層3(着色層の一部分53)のインク充填密度を補填することをおこなう。すなわち、着色層3(着色層の一部分53)を、着色インクと補填インクの合算の密度(インク滴の数)を一定となるように形成する。これにより、上述した凹みの発生を回避して、三次元構造物5の形状をち密に造形することができる。
【0120】
着色インクの吐出量、着色インクに構成される各色インクの着弾位置は予めわかっているため、これらを考慮すれば補填インクの補填量と補填位置(着弾位置)を判断することができる。該判断は、インクジェットヘッドまたは制御ユニット20(
図2)、あるいは他の制御手段においておこなうことができる。
【0121】
また、補填インクによりインク充填密度を補填することにより、着色層3で形成される面が平坦になるために光沢感を持たせることができる。
【0122】
補填インクは、着色層3(着色層の一部分53)に呈されるべき色調に悪影響を与えないインクであればよく、一例としては、第1の透明層2(第1の透明層の一部分52)および第2の透明層4(第1の透明層の一部分54)において用いる透明インクを採用することができる。
【0123】
着色層3の厚さは、例えば5μm〜20μmとすることができる。ここでいう着色層3の厚さとは、各層5a(2)…に含まれる着色層の一部分53の外周端側から中心側方向に沿った幅と同じである。
【0124】
なお、本実施形態では着色層3に基づいて説明しているが、本発明は着色層に限定されるものではなく、加飾層であれば特に制限はない。
【0125】
●第2の透明層4(第2の透明層の一部分54)の構成
第2の透明層4(第2の透明層の一部分54)は、第1の透明層2(第1の透明層の一部分52)において説明した透明インクを用いて形成される。なお、第2の透明層4と第1の透明層2とは同一種の透明インクを用いても形成されても良く、異種の透明インクを用いても形成されても良い。
【0126】
第2の透明層4の厚さは、例えば10μm以上とすればよく、上限値については、三次元構造物5の外形の大きさに応じて適宜変更することができる。ここでいう第2の透明層4の厚さとは、第2の透明層の一部分54を含む各層5a(1)…の外周端側から中心側方向に沿った第2の透明層の一部分54の幅と同じである。
【0127】
第2の透明層4は、着色層3の保護層としての機能を有するだけでなく、積層方式を採用している本発明(本実施形態)において、三次元構造物をち密に製造することを可能にするという優位な効果を奏する。すなわち、仮に着色層3が三次元構造物5の最表層を構成している場合、つまり着色層の一部分53を有する層において仮に着色層の一部分53が最も端部に位置している場合には、着色層3(着色層の一部分53)が精度よく形成できない虞がある。しかしながら、本実施形態のように三次元構造物5の最表層に第2の透明層4(第2の透明層の一部分54)が形成されていることにより、着色層3(着色層の一部分53)が精度よく形成されることから、第2の透明層4(第2の透明層の一部分54)によって、所望の色調を呈することに寄与できる。
【0128】
また、仮に着色層3が三次元構造物5の最表層を構成している場合は、着色層3がむき出しになるので、擦れによる脱色や、紫外線による退色が起き易くなる。しかしながら、本実施形態のように三次元構造物5の最表層に第2の透明層4(第2の透明層の一部分54)が形成されていることにより、脱色や退色を防止することができる。
【0129】
〔実施形態2〕
上記の実施形態1では、サポート材よりも外側にインクを予備的に吐出する態様について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。そこで、本実施形態では、予備的に吐出するインクの着弾位置の別例を挙げて、本発明に係る形成方法の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0130】
図6は、本実施形態の形成方法を説明するための図であり、実施形態1の
図4に対応している。
【0131】
本実施形態と上記実施形態1との相違点は、予備吐出堆積物7の形成箇所である。
図6に示すように、本実施形態の形成方法では、予備吐出堆積物7がサポート材6´中に形成されている点で、実施形態1とは異なっている。
【0132】
要するに本実施形態では、各層の外周に形成するサポート材の一部分66´を形成する工程において、実施形態1で説明した予備吐出工程をおこなう。これにより、
図6に示すように、サポート材の一部分66´中に予備吐出堆積物7が形成される。予備吐出堆積物7の形成箇所は、制御ユニット20による制御によって実現できる。
【0133】
本実施形態のように、予備吐出堆積物7をサポート材6´中に形成することにより、最終的にサポート材を除去する際に予備吐出堆積物7も併せて除去することができるため、実施形態1のように予備吐出堆積物7を別途除去する処理が不要であり、形成過程の簡素化を実現することができる。
【0134】
なお、
図6では、各層に含まれる予備吐出堆積物7の形成位置が、各層の端から異なる距離にあるが、各層の端から一定距離のところに予備吐出堆積物7が形成されてもよい。すなわち、サポート材6´中において、予備吐出堆積物7が積層方向に一直線に並んだ態様であってもよい。
【0135】
〔変形例1〕
なお、上述した実施形態1および2では、記録ユニット10が一往復する毎に予備吐出工程をおこなう態様について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録ユニット10が層を形成する度に、すなわち往路であるか復路であるかを問わず一走査毎に、走査を開始してから、層の形成を開始する(サポート材の一部分の形成を開始する)までの間に、予備的にインクを吐出してもよい。
【0136】
〔変形例2〕
なお、上述した実施形態1および2では、Y軸上において三次元構造物5を形成する領域よりもY軸正方向側のみにメンテナンスユニット30を設けているが、三次元構造物5を形成する領域よりもY軸負方向側(
図2でいうところの紙面左端部)にもメンテナンスユニット30を設けてもよい。そして、記録ユニット10が往路であるか復路であるかを問わず、走査を開始する前にメンテナンスを受けるような態様としてもよい。
【0137】
[付記事項]
本発明に係る、三次元構造物の形成装置一形態は、造形本体部分と、その表面を着色している着色部分とを有する三次元構造物5を、インクを堆積させてなる層5a(1)、5a(2)…を積層して形成する三次元構造物の形成装置60であって、少なくとも一走査する間に上記インクを吐出して一つの上記層5a(1)、5a(2)…を形成する記録ユニット10と、上記記録ユニット10をメンテナンスするメンテナンスユニット30と、上記記録ユニット10を制御する制御ユニット20とを備え、上記制御ユニット20は、上記記録ユニット10が上記メンテナンスユニット30によるメンテナンスを受ける位置から上記層の形成を開始する位置までの間に、上記インクを予備的に吐出するよう制御することを特徴としている。
【0138】
上記の構成によれば、層5a(1)、5a(2)…の形成を開始時点から、所定の吐出条件でインクの吐出をおこなうことができ、高精度に三次元構造物5を形成することができる形成装置を提供することができる。
【0139】
具体的には、上記の構成によれば、メンテナンスを受ける位置から層の形成を開始する位置までの間において、記録ユニット10からインクを予備的に吐出する構成となっている。これにより、層形成の直前に、記録ユニットのインク吐出条件を上記層の形成に適した状態とすることができる。
【0140】
例えば、層形成のためにインクの吐出を開始するまでに、インクを吐出しない期間があると、記録ユニット10のインクを吐出するノズル孔が乾燥するなどして、記録ユニット10のインク吐出条件が不都合に変化する場合がある。しかしながら、上記の構成によれば、層形成前に予備的にインクを吐出するため、その予備的なインク吐出によって、記録ユニット10のインクの吐出条件を最適なものとすることができる。これにより、最適なインク吐出条件のもとで層形成を開始することができる。
【0141】
よって、形成装置60によれば、上記層を精度よく形成することができる。
【0142】
なお、これは、メンテナンスユニット30によって記録ユニット10がメンテナンス(例えば、ワイピング、キャッピングおよびフラッシング)を受けた直後から層形成の開始時点までの間においても言えることである。すなわち、仮にメンテナンスによって記録ユニット10が良好な状態となったとしても、吐出データが長時間無いインクジェットヘッドのノズル孔は、吐出を開始するまでの間に走査による空気の流れで乾燥してしまい、良好な状態は維持できない場合がある。そのような場合でも、本発明の上記の構成を具備することにより、層形成の開始時点においてインクを所定の吐出条件で吐出することができ、層を精度よく形成することができる。
【0143】
また本発明に係る、三次元構造物の形成装置の一形態は、上記の構成に加えて、上記制御ユニット20は、上記記録ユニット10が上記少なくとも一走査毎に上記インクを上記予備的に吐出するように制御している。
【0144】
上記の構成によれば、一走査毎にインクの予備的吐出をおこなうことから、層5a(1)、5a(2)…の形成をより一層精度よくおこなうことが可能となる。
【0145】
また本発明に係る、三次元構造物の形成装置の一形態は、上記の構成に加えて、上記記録ユニット10は、上記インクとして、上記造形本体部分を形成するための1つまたは複数の種類の造形物用インクと、上記着色部分を形成するための1つまたは複数の種類の着色部分用インクとを、それぞれに対して設けたノズルヘッドから吐出し、上記制御ユニットは、上記記録ユニット10が少なくとも1つの上記ノズルヘッドからインクを予備的に吐出するように制御する。
【0146】
また本発明に係る、三次元構造物の形成装置の一形態は、上記の構成に加えて、上記制御ユニット20は、上記記録ユニットが、上記着色部分用インクに対して設けられた上記ノズルヘッドからインクを予備的に吐出するよう制御する。
【0147】
上記の構成によれば、着色部分を構成するためのインクを予備的に吐出するため、三次元構造物5の色調を高精度に制御し、所望の色調の三次元構造物5を提供することができる。
【0148】
また本発明に係る、三次元構造物の形成装置の一形態は、上記の構成に加えて、上記記録ユニット10は、上記三次元構造物5には含まれないサポート材インクを吐出し、上記少なくとも一走査毎に、上記層5a(1)、5a(2)…の外周に沿って該サポート材インクを堆積させ(サポート材の一部分66、66´)、上記制御ユニット20は、上記記録ユニット10は、上記予備的に吐出する上記インク(予備吐出堆積物7)を、上記サポート材インクの堆積領域(サポート材の一部分66´)内に堆積させてもよい。
【0149】
上記の構成によれば、サポート材インクの堆積物(サポート材の一部分66´)内に、予備的に吐出したインク(予備吐出堆積物7)を堆積させるため、サポート材インクの堆積物(サポート材の一部分66´)を除去する際に予備的に吐出したインク(予備吐出堆積物7)も同時に除去することができる。これにより、予備的に吐出したインク(予備吐出堆積物7)を別途、除去する必要がなくなり、形成過程を簡素化することができる。
【0150】
また本発明に係る、三次元構造物の形成装置の一形態は、上記の構成に加えて、上記記録ユニット10から吐出されるインクを堆積させる基台40を更に備え、上記記録ユニット10が上記予備的に吐出する上記インクは、上記基台40に着弾する構成となっていてもよい。
【0151】
上記の構成によれば、予備的に吐出するインクを、三次元構造物5を形成する基台40に着弾させている。これにより、メンテナンスユニット30上で予備的にインクを吐出する場合に比べ、三次元構造物5の近傍に予備的にインクを吐出することができるため、記録ユニット10のインクジェットヘッド11のノズル部(第1インクジェットヘッドノズル部11A、第2インクジェットヘッドノズル部11B、第3インクジェットヘッドノズル部11C)の乾燥を抑制し、吐出の不具合をより一層抑制することができる。
【0152】
また本発明に係る、三次元構造物の形成装置の一形態は、上記の構成に加えて、上記予備的に吐出するインクの単位面積当たりの吐出量は、一つの上記層5a(1)、5a(2)…を形成するために吐出するインクの単位面積当たりの吐出量よりも少ない構成となっていてもよい。
【0153】
上記の構成によれば、予備的に吐出するインクを少なくすることにより、インクの消費量を抑えることができる。
【0154】
また本発明に係る、三次元構造物の形成方法の一形態は、造形本体部分と、その表面を着色している着色部分とを有する三次元構造物5を、記録ユニット10およびメンテナンスユニット30を備える、三次元造形物の形成装置60を用いて、インクを堆積させてなる層5a(1)、5a(2)…を積層して形成する三次元構造物の形成方法であって、記録ユニット10を少なくとも一走査させて、該少なくとも一走査させている間に該記録ユニット10から上記インクを吐出して少なくとも一つの上記層5a(1)、5a(2)…を形成する記録工程と、上記記録ユニット10が上記メンテナンスユニット30によってメンテナンスを受ける位置から上記層の形成を開始する位置の間において、上記記録ユニット10から上記インクを予備的に吐出する予備吐出工程とを含むことを特徴としている。
【0155】
上記の構成によれば、層の形成を開始時点から、所定の吐出条件でインクの吐出をおこなうことができ、高精度に三次元構造物を形成することができる。
具体的には、上記の構成によれば、メンテナンスを受ける位置から層の形成を開始する位置までの間において、記録ユニット10からインクを予備的に吐出する構成となっている。これにより、層形成の直前に、記録ユニットのインク吐出条件を上記層の形成に適した状態とすることができる。
【0156】
例えば、層形成のためにインクの吐出を開始するまでに、インクを吐出しない期間があると、記録ユニット10のインクを吐出する孔が乾燥するなどして、記録ユニット10のインク吐出条件が不都合に変化する場合がある。しかしながら、上記の構成によれば、層形成前に予備的にインクを吐出するため、その予備的なインク吐出によって、記録ユニット10のインクの吐出条件を最適なものとすることができる。これにより、最適なインク吐出条件のもとで層形成を開始することができる。
【0157】
なお、これは、メンテナンスユニット30によって記録ユニット10がメンテナンス(例えば、ワイピング、キャッピングおよびフラッシング)を受けた直後から層形成の開始時点までの間においても言えることである。すなわち、仮にメンテナンスによって記録ユニット10が良好な状態となったとしても、層形成を開始するまでの間に時間が空くため、良好な状態は維持できない場合がある。そのような場合でも、本発明の上記の構成を具備することにより、層形成の開始時点においてインクを所定の吐出条件で吐出することができ、層を精度よく形成することができる。
【0158】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。