特許第6444097号(P6444097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444097
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20181217BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   B41J2/17 103
   B41J2/01 305
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-169769(P2014-169769)
(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公開番号】特開2015-85679(P2015-85679A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2017年8月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-197204(P2013-197204)
(32)【優先日】2013年9月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 有人
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 敦人
(72)【発明者】
【氏名】有水 博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 禎宣
(72)【発明者】
【氏名】石田 浩一
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−143060(JP,A)
【文献】 特開2011−167890(JP,A)
【文献】 特開2006−315226(JP,A)
【文献】 国際公開第00/043209(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する液体吐出ヘッドを用い、前記液体吐出ヘッドに対して相対的に搬送される記録媒体に液体を吐出して記録を行う記録装置であって、
記録媒体の前記搬送の方向において液体吐出ヘッドの下流側に設けられた吸引機構と、
前記搬送方向において前記吸引機構の下流側に設けられた、記録媒体の前記搬送を行うためのローラ、
を具え、
前記ローラは、前記吸引機構の方向へ気体を吹き出すための吹き出し機構を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記ローラの前記吹き出し機構は、前記ローラの周面に設けられた吹き出し口から、前記吸引機構と搬送される記録媒体との間の領域に向かう方向に気体を吹き出すことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記吹き出し口は、
前記ローラの中心をO、前記吹き出し口の位置をC、前記ローラと記録媒体との接点をB、前記ローラの半径をR、前記ローラの中心から前記吸引機構までの距離をL、前記吸引機構の吸引口から記録媒体までの距離をH、線分OBと線分OCのなす角をθとするとき、
以下の式
0°<θ≦90°−tan-1((R−H)/L)
で示される範囲内の所定回転位置θにあることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記ローラから吹き出される気体の流量Feは、
前記吸引機構から排出される気体の流量をFb、前記吸引機構と記録媒体の間の領域に入り込まない気体の流量をFd−Fcとするとき、以下の式
Fe>Fb+Fd−Fc
を満たすことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記ローラから吹き出される気体の流量Feは、
前記吸引機構から排出される気体の流量をFb、前記吸引機構と記録媒体の間の領域に入り込まない気体の流量をFd−Fc、隣接する液体吐出ヘッドと記録媒体との間に流れ込む流量をFfとするとき、以下の式
Fe>Fb+Fd+Ff−Fc
を満たすことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記吹き出し機構は、前記ローラの周面に設けられた複数の吹き出し口を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
記録装置であって、
記録媒体と当接し、記録媒体の搬送を行うためのローラと、
記録媒体の前記搬送方向において前記ローラの上流側に設けられた、記録媒体に向けて液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記搬送の方向において前記ローラと液体吐出ヘッドの間に設けられた吸引口と、
を具え、
前記ローラは、前記搬送の方向において記録媒体と当接する部分の上流側に向けて気体を吹き出すための吹き出し口を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項8】
前記吹き出し口は前記搬送方向と交差する方向に延在していることを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記吹き出し口は複数並列して形成されていることを特徴とする請求項8に記載の記録装置。
【請求項10】
前記吹き出し口は、
前記ローラの中心をO、前記吹き出し口の位置をC、前記ローラと記録媒体との接点をB、前記ローラの半径をR、前記ローラの中心から前記吸引口を備える吸引機構までの距離をL、前記吸引機構の吸引口から記録媒体までの距離をH、線分OBと線分OCのなす角をθとするとき、
以下の式
0°<θ≦90°−tan-1((R−H)/L)
で示される範囲内の所定回転位置θにあることを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項11】
前記ローラから吹き出される気体の流量Feは、
前記吸引から排出される気体の流量をFb、前記吸引口を備える吸引機構と記録媒体の間の領域に入り込まない気体の流量をFd−Fcとするとき、以下の式
Fe>Fb+Fd−Fc
を満たすことを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項12】
前記ローラから吹き出される気体の流量Feは、
前記吸引口を備える吸引機構から排出される気体の流量をFb、前記吸引機構と記録媒体の間の領域に入り込まない気体の流量をFd−Fc、隣接する液体吐出ヘッドと記録媒体との間に流れ込む流量をFfとするとき、以下の式
Fe>Fb+Fd+Ff−Fc
を満たすことを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出して記録を行う記録装置に関し、詳しくは、液体吐出ヘッドからのインク吐出に伴って発生することがあるインクミストを気流によって制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の技術の一例として、特許文献1には、ミストが生じ得る箇所に空気流を供給する供給部と空気を吸い込む吸引部を設け、これにより、吸引部に至る空気の流れを生じさせることが記載されている。この構成によれば、発生したミストを吸引部に至る気流によって効率的に導くことができ、液体吐出ヘッドの吐出口が形成された面にミストが付着してインク吐出に影響を及ぼしたり、装置に付着して装置内や記録用紙を汚染したりすることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開2006/0238561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるような、インクミストを制御する構成では、供給部から供給される空気が効率的にミストの除去に用いられないという問題がある。すなわち、特許文献1のミスト制御構成では、図10にて後述するように、供給部からの空気流は搬送される記録媒体に対してほぼ垂直方向に吹き出される。このため、吹き出された空気流のうち吸引機構の吸引口に向かう空気流は、約半分となり、効率的に吸引口に向かう空気流を生成することができない。その結果、例えば、吸引機構の吸引口に向かう空気流の必要量を確保するために、大量の空気を供給しなければならない場合がある。
【0005】
本発明の目的は、比較的少量の空気を吹き出す場合でも、インクミストを効率的に回収することが可能な記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために本発明では、液体を吐出する液体吐出ヘッドを用い、前記液体吐出ヘッドに対して相対的に搬送される記録媒体に液体を吐出して記録を行う記録装置であって、記録媒体の前記搬送の方向において液体吐出ヘッドの下流側に設けられた吸引機構と、前記搬送方向において前記吸引機構の下流側に設けられた、記録媒体の前記搬送を行うためのローラ、を具え、前記ローラは、前記吸引機構の方向へ気体を吹き出すための吹き出し機構を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上の構成によれば、インクミスト回収において、比較的少量の空気を吹き出す場合でも、インクミストを効率的に回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係る記録装置における、特に、インクミスト回収のための構成を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示す構成を記録媒体に対して垂直上方から見た平面図である。
図3図2におけるA−A’線に沿う断面図である。
図4図3に示したミスト回収構成における、各部の空気流量およびそれらの量の関係を説明するための図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る記録装置におけるインクミスト回収のための構成を示す斜視図である。
図6図5に示す構成を記録媒体1に対して上方から見た平面図である。
図7図6におけるD−D’線に沿う断面図である。
図8図6に示したミスト回収構成における、本実施形態における各部の空気流量およびそれらの量の関係を説明するための図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る記録装置における、特に、インクミスト回収のための構成を模式的に示す斜視図である。
図10】従来技術に係るインクミスト回収のための構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る記録装置における、特に、液体吐出ヘッドによりインク等の液体を吐出した際に発生するミスト(インクミスト)回収のための構成を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示す構成を記録媒体に対して垂直上方から見た平面図である。また、図3は、図2におけるA−A’線に沿う断面図である。
【0011】
これら図に示すように、本実施形態の記録装置は、図中矢印2に示す方向に記録媒体1を搬送する搬送機構と、この搬送される記録媒体の幅にわたって複数のインク吐出口を配列した、いわゆるフルラインタイプの液体吐出ヘッド3を備える。液体吐出ヘッド3には、インク色に応じた6つの吐出口列が設けられている。そして、液体吐出ヘッド3に対する記録媒体の相対的な搬送の方向において液体吐出ヘッド3の下流側には吸引機構4が設けられ、これにより、図4等で後述されるように、液体吐出ヘッド3からインク11が吐出されるのに伴って発生するインクのミストを吸引することができる。吸引機構4は、吸引口9とこの吸引口を介して吸引した空気とミストを機外に排出するための吸引流路10とを備え、不図示の駆動部によって負圧を発生しこの負圧によって吸引口9を介した吸引を行う。
【0012】
さらに、記録媒体の搬送方向において吸引機構4の下流側にはピンチローラ5が設けられる。すなわち、本実施形態の記録媒体搬送機構は、所定の範囲を周回するベルト(不図示)と、このベルトに沿って、ベルトに対して記録媒体3を押圧して搬送力を生じさせる複数のローラを備える。これらのローラの一つであるピンチローラ5には、空気(気体)を吹き出すための吹き出し口7が設けられている。本実施形態の吹き出し口は矩形状であり、この矩形の吹き出し口7がピンチローラ5の周面に複数配列するよう設けられている。本実施形態において吹き出し口7はピンチローラ5の長手方向に沿ってスリット状に並列して複数形成されている。吹き出し口7はピンチローラ5の記録媒体1との当接面と同じ面に形成されていてもよいし、当接面に対して凹となる位置に形成されていてもよい。そして、本実施形態の記録装置の所定部位には、不図示の気体供給ユニットが設けられており、この供給ユニットから、ピンチローラ5の中空のシャフト6に接続するチューブ(不図示)を介してそれぞれのピンチローラ内に空気が供給される。これに対応して、それぞれのピンチローラの内部には吹き出し口7とほぼ同形状の供給口が回転移動するそれぞれの吹き出し口7と対向する位置に設けられている。これにより、それぞれの吹き出し口7は、ピンチローラの回転に伴って上記供給口と位置合わせされて、図3にて後述される所定回転位置θで空気を吹き出すことが可能となる。
【0013】
図3は、ピンチローラの吹き出し口7について、どの範囲の吹き出し口が気流を生じさせるか(吹き出すか)を説明する図である。同図に示すように、ピンチローラ5の中心をO、吹き出し口7の位置をC、ピンチローラ5と記録媒体1との接点をB、ピンチローラ5の半径をR、ピンチローラ5の中心から吸引機構4の側壁までの距離をL、吸引口9から記録媒体1までの距離をH、線分OBと線分OCのなす角をθとする。
【0014】
このとき、以下の(1)式で示される範囲内の所定回転位置θにある1つの吹き出し口7から吹き出した空気8は、吸引機構4の下側の記録媒体1との間のHの高さの空間に向けて吹き出される。
0°<θ≦90°−tan−1((R−H)/L) (1)
ここで、tan−1((R−H)/L)が示す角度は、吸引機構4の図3における右下の角とピンチローラの中心Oとを結んだ線分が線分OBとなす角である。このように本実施形態において上記の(1)式で示される回転位置θにある1つの吹き出し口7から空気を吹き出していれば効果を奏するものである。その回転位置θ以外の位置にある吹き出し口7について、空気を吹き出していても良いし、吹き出していなくても良い。つまり、回転位置θの位置にある少なくとも1つの吹き出し口7から空気が吹き出されていれば良い。また空気の吹き出しは連続して吹き出していてもよく、また上記の回転位置θの範囲以外では吹き出しを止めるように制御しても良い。
【0015】
図4は、図3に示した本実施形態のミスト回収構成における、各部の空気流量およびそれらの量の関係を説明するための図である。
【0016】
図4に示すミスト回収に係わる空気(およびインクミスト)の流れ系では、この系に入り込む流量は、記録媒体1の搬送に伴って生じる流れの流量Faと、ピンチローラ5の1つの吹き出し口7から吹き出される空気の流量Feの和である。これに対し、系から出て行く流量は、吸引機構4の吸引流路10を介して吸引機構から排出される空気(およびインクミスト)の流量Fbと、ピンチローラから吹き出された空気の一部など吸引機構4の下側の領域40に入り込まない気流の流量Fdの和である。これらの入、出流量は、質量保存の法則により等しいから次の(2)式が成り立つ。
Fa+Fe=Fb+Fd (2)
【0017】
ここで、吸引機構4の下側の領域40内に入り込んだ空気(およびインクミスト)を総て吸引流路10を介して回収するための条件は、領域40に図中右側から入り込む気流が図中右向きの速度成分(領域40から出てゆく速度成分)を持たないことである。この条件は、領域40に入り込む気流の流量FcおよびFaについて次の(3)式が成り立つ条件でもある。
Fc>Fa (3)
【0018】
以上の(2)、(3)式から、ピンチローラ5が吹き出す空気の流量Feの条件は、次の(4)式によって表される。なお、このFeは、本実施形態場合、3つのローラから吹き出される空気の流量として表されるものである。
Fe>Fb+Fd−Fc (4)
【0019】
以上の本実施形態に係るミスト回収機構によれば、ピンチローラ5の所定角度範囲内の1つの吹き出し口7から吹き出される空気は、吸引機構4と記録媒体1との間に形成される領域40に向かう流量Fcの気流を形成する。これにより、吹き出し口からの吹き出される空気を効率よく領域40内に導くことができ、結果として、ピンチローラから吹き出す空気の量が比較的少なくても、インクミストを良好に回収することができる。また、その場合に、上記(4)式に従ってピンチローラから吹き出す量Feを定めることにより、吸引機構4は領域40内に入り込む空気(およびミスト)の多く(80%以上)を効率的に回収することが可能となる。
【0020】
なお、吸引機構とピンチローラの距離が大きくなると記録媒体の搬送精度が低下するため、ピンチローラと吸引機構との距離を小さくすることが望ましい。一方で、ピンチローラと吸引機構との距離が小さくなりすぎると、ピンチローラが消耗して交換する際にその着脱が困難になる。したがって、ピンチローラと吸引機構との距離は、高い搬送精度を維持できてかつ脱着が容易となる距離が好ましい。
【0021】
本実施形態では、吸引口から記録媒体までの距離Hを1.5mm、記録媒体の搬送速度を0.2m/s、ピンチローラ中心から吸引機構側壁までの距離Lを10mm、吸引機構側壁から吸引口までの距離を5mmとした。また、ピンチローラの半径Rを5.5mm、吹き出し口の幅を500μm、吹き出し口の長さを100mm、吹き出し口の配列ピッチを15°とした。さらに、吹き出しは、吹き出し空気の速度を10m/sとし、線分OBと線分OCのなす所定角度(所定回転位置)θが45°となる位置で行った。また、吸引口の幅を500μm、吸引口の長さを300mm、吸引速度を0.2m/sとした。この場合、吸引機構によるインクミストの回収率は実質的に100%であった。
【0022】
これに対して、特許文献1では、図10に示すように、吹き出しのための構成は、吸引機構4の下流側でかつピンチローラの上流側に設けられた吹き出し機構50である。この構成では、一例として、吸引機構4の吸引口から記録媒体までの距離Hを1.5mm、記録媒体の搬送速度を0.2m/s、ピンチローラ中心から吹き出し機構側壁までの距離を10mm、吹き出し機構側壁から吹き出し口までの距離を5mm、吹き出し口から吸引口までの距離を10mmとすることができる。また、吹き出しについては、吹き出し空気の速度を10m/sとし、吹き出し口の幅を500μm、吹き出し口の長さを300mmとした。吸引については、本実施形態と同様に吸引口の幅を500μm、吸引口の長さを300mm、吸引速度を0.2m/sとした。この条件のもとでインクミストの回収率を調べた結果、回収率は80%程度であった。
【0023】
以上のとおり、本実施形態によれば、比較的少ない空気の吹き出し量で高い回収率を実現することが可能となる。
【0024】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る記録装置におけるインクミスト回収のための構成を示す斜視図である。図6は、図5に示す構成を記録媒体1に対して上方から見た平面図である。また、図7は、図6におけるD−D’線に沿う断面図である。
【0025】
これらの図に示すように、本実施形態が上述した第1実施形態と異なる点は、1組の液体吐出ヘッド3、吸引機構4およびピンチローラ5に対し、記録媒体1の搬送方向下流側に、他の組の液体吐出ヘッド、吸引機構およびピンチローラが設けられる点である。
【0026】
図7に示すように、第1実施形態と同様、それぞれのピンチローラ5の複数の吹き出し口7のうち、上述の(1)式を満たす範囲の所定の回転位置θに位置する吹き出し口から空気を吹き出す。
【0027】
図8は、本実施形態における各部の空気流量およびそれらの量の関係を説明するための図である。
【0028】
図8に示すミスト回収に係わる空気(およびインクミスト)の流れ系では、この系に入り込む流量は、第1実施形態と同様、記録媒体1の搬送に伴って生じる流れの流量Faと、ピンチローラ5の1つの吹き出し口7から吹き出される空気の流量Feの和である。これに対し、系から出て行く流量は、吸引機構4の吸引流路10を介して吸引機構から排出される空気の流量Fbと、ピンチローラから吹き出された空気の一部など吸引機構4の下側の領域40に入り込まない気流の流量Fdに、隣接する(図中右側の)液体吐出ヘッドと記録媒体1との間に流れ込む流量Ffを加えた量である。これらの入、出流量は、質量保存の法則により等しいから次の(5)式が成り立つ。
Fa+Fe=Fb+Fd+Ff (5)
ここで、第1実施形態と同様、吸引機構4の下側の領域に入り込んだ空気(およびインクミスト)を総て吸引流路10を介して回収するための条件は、次の(6)式が成り立つ条件でもある。
Fc>Fa (6)
【0029】
以上の(5)、(6)式から、ピンチローラ5が吹き出す空気の流量Feの条件は、次の(7)式によって表される。なお、このFeは、本実施形態場合、3つのローラから吹き出される空気の流量として表されるものとなる。
Fe>Fb+Fd+Ff−Fc (7)
このような条件下で、ピンチローラ5からの空気の吹き出しと吸引機構4による吸引を組み合わせることにより、吹き出し空気8が比較的少量でも記録媒体1から吸引口9に至る空気の流れを生じさせることができる。その結果、記録媒体1近傍を浮遊するインクミストを吸引口9へと導き効率的な回収を実現することができる。
【0030】
(第3実施形態)
上述した各実施形態の吹き出し口7は、矩形状であるとしたが、この形態に限られないことはもちろんである。図9に示すように、円形の穴の形状の吹き出し口であってもよい。ピンチローラ5の周面においてこの丸穴形状の吹き出し口を記録媒体の搬送方向と直交する方向に配列するとともに、その丸穴列をピンチローラの円周方向に配列するように設ける。このような吹き出し口7についても、上述した(1)式で示す範囲内の所定の角度位置(回転位置)θで、それぞれの丸穴列から空気を吹き出すように構成する。この場合、吹き出し量Feは、上述の(4)式を満たすことが望ましい。
【0031】
このような条件で、ピンチローラ5からの空気の吹き出しと吸引機構4による吸引を組み合わせることにより、吹き出し空気が比較的少量でも記録媒体1から吸引口9に至る空気の流れを生じさせることができる。その結果、記録媒体1近傍を浮遊するインクミストを吸引口9へと導き効率的な回収を実現することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 記録媒体
3 液体吐出ヘッド
4 吸引機構
5 ピンチローラ
6 回転シャフト
7 吹き出し口
9 吸引口
10 吸引流路10
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10