(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記信号入出力ラインは、前記原子炉の状態を検出した検出信号が入力する検出信号入力ラインと、前記原子炉の状態を変更するための機器を操作するための操作信号を出力する操作信号出力ラインとを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の原子力発電プラントの監視制御装置。
前記第2監視制御部は、前記原子炉を冷却させるための冷却機能と、前記原子炉の格納容器の温度と圧力を低下させるための減温減圧機能とを有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の原子力発電プラントの監視制御装置。
前記非常用電源が複数設けられ、前記複数の非常用電源の蓄電量に応じて前記第2監視制御部に給電する前記非常用電源を切替える制御装置が設けられることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の原子力発電プラントの監視制御装置。
前記第1監視制御部と前記第2監視制御部とは、中央制御室に配置され、外部電源が接続されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の原子力発電プラントの監視制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、外部電源が喪失したとき、中央制御室に設けられたプラント監視制御装置は、非常用電源からの給電を受け、運転員がこのプラント監視制御装置を操作して原子炉を安全に停止させるようにしている。ところが、プラント監視制御装置へ給電を行う場合、長期の給電確保のために多くの非常用電源(バッテリ)が必要となる。しかし、このバッテリを多数配備するには、配置や空調の面で、設備の増加が必要であり、コストが大幅に増加してしまう。また、特許文献1に記載されたプロセス信号取得装置は、プロセス計算機が使用不能のときに、複数のケーブルのコネクタを差し替えるようにしており、作業性が悪く、迅速な対応が困難となる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、外部電源を喪失したときにプラントを安全に運転することができる原子力発電プラントの監視制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の原子力発電プラントの監視制御装置は、原子炉の起動操作、運転操作、停止操作を行う第1監視制御部と、前記原子炉の停止操作だけを行う第2監視制御部と、前記原子炉の信号入出力ラインを前記第1監視制御部と前記第2監視制御部との間で分配または切替える切替装置と、前記第2監視制御部に給電する非常用電源と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
従って、原子炉の起動操作、運転操作、停止操作を行う第1監視制御部に対して、原子炉の停止操作だけを行う第2監視制御部を設けることで、外部電源の喪失時に、切替装置により、原子炉の信号入出力ラインを第1監視制御部から第2監視制御部に分配または切替えると共に、非常用電源により第2監視制御部に給電する。そのため、外部電源が喪失しても、運転員は、第2監視制御部を用いて原子炉を安全に停止することができる。このとき、第2監視制御部は、必要な機能だけに集約されていることから、消費電力を抑えることができ、長時間にわたって第2監視制御部による操作が可能となる。
【0010】
本発明の原子力発電プラントの監視制御装置では、前記非常用電源から前記第1監視制御部に給電する第1給電ラインと、前記非常用電源から前記第2監視制御部に給電する第2給電ラインと、前記第1給電ラインにより給電を遮断する遮断装置とが設けられることを特徴としている。
【0011】
従って、外部電源の喪失時に、遮断装置により、非常用電源から第1監視制御部に給電する第1給電ラインを遮断することで、第1監視制御部の消費電力をなくして長時間にわたって第2監視制御部による操作を可能とすることができる。
【0012】
本発明の原子力発電プラントの監視制御装置では、前記信号入出力ラインは、前記原子炉の状態を検出した検出信号が入力する検出信号入力ラインと、前記原子炉の状態を変更するための機器を操作するための操作信号を出力する操作信号出力ラインとを有することを特徴としている。
【0013】
従って、外部電源の喪失時に、切替装置により、検出信号入力ラインと操作信号出力ラインを第2監視制御部に分配または切替えることで、運転員は、この第2監視制御部を用いて原子炉を安全に停止することができる。
【0014】
本発明の原子力発電プラントの監視制御装置では、前記第2監視制御部は、前記原子炉を冷却させるための冷却機能と、前記原子炉の格納容器の温度と圧力を低下させるための減温減圧機能とを有することを特徴としている。
【0015】
従って、運転員は、この第2監視制御部を用いて、冷却機能により原子炉を適正に冷却させながら安全に停止することができ、また、炉心溶融時には、減温減圧機能により原子炉の格納容器の温度と圧力を低下させることができる。
【0016】
本発明の原子力発電プラントの監視制御装置では、外部電源の喪失時に、前記切替装置を作動して前記信号入出力ラインを前記第1監視制御部から前記第2監視制御部に分配または切替える制御装置が設けられることを特徴としている。
【0017】
従って、制御装置は、外部電源が喪失すると、切替装置を作動することで、信号入出力ラインを第1監視制御部から第2監視制御部に自動的に切替えることとなり、運転員は、第2監視制御部を用いて原子炉を安全に停止することができる。
【0018】
本発明の原子力発電プラントの監視制御装置では、前記非常用電源が複数設けられ、前記複数の非常用電源の蓄電量に応じて前記第2監視制御部に給電する前記非常用電源を切替える制御装置が設けられることを特徴としている。
【0019】
従って、制御装置は、非常用電源の蓄電量に応じて第2監視制御部に給電する非常用電源を切替えるため、長時間にわたって効率良く第2監視制御部に給電することができ、安全性を向上することができる。
【0020】
本発明の原子力発電プラントの監視制御装置では、前記第1監視制御部と前記第2監視制御部とは、中央制御室に配置され、外部電源が接続されることを特徴としている。
【0021】
従って、第1監視制御部と第2監視制御部は、常時、外部電源から電力が供給されることで、常時、第1監視制御部だけでなく、第2監視制御部の故障を早期に検出して安全性を向上することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の原子力発電プラントの監視制御装置によれば、原子炉の起動操作、運転操作、停止操作を行う第1監視制御部と、原子炉の停止操作だけを行う第2監視制御部と、原子炉の信号入出力ラインを第1監視制御部と第2監視制御部との間で切替える切替装置と、第2監視制御部に給電する非常用電源とを設けるので、外部電源の喪失時に、第2監視制御部を用いて原子炉を安全に停止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照して、本発明の原子力発電プラントの監視制御装置の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0025】
[第1実施形態]
図2は、原子力発電プラントを表す概略構成図である。
【0026】
本実施形態において、
図2に示すように、原子力発電プラント10は、原子炉を有している。この原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を後述する蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。なお、原子炉は、沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)であってもよい。
【0027】
原子炉格納容器11は、内部に加圧水型原子炉12と複数(図示は1個)の蒸気発生器13が格納されている。加圧水型原子炉12と各蒸気発生器13は、高温側送給配管14と低温側送給配管15を介して連結されており、低温側送給配管15に一次系冷却水ポンプ16が設けられている。
【0028】
加圧器17は、下部が1個の高温側送給配管14に連結されており、低温側送給配管15から延びるスプレイ配管18がこの加圧器17の上部に連通し、中途部にスプレイ弁19が設けられ、先端部にスプレイノズル20が設けられている。加圧器17は、上部に加圧器安全弁21を有する加圧器安全配管22の一端部が連結されており、加圧器安全配管22の他端部が大気に開放している。また、加圧器17は、上部に加圧器逃がし弁23を有する加圧器逃がし配管24の一端部が連結されており、加圧器逃がし配管24の他端部に加圧器逃がしタンク25が連結されている。
【0029】
加圧水型原子炉12は、内部に炉心26が設けられており、この炉心26は、複数の燃料集合体(燃料棒)27により構成されている。また、加圧水型原子炉12は、炉心26における燃料集合体27の間に複数の制御棒28が配置されている。この各制御棒28は、制御棒駆動装置29により上下移動可能となっている。制御棒駆動装置29は、制御棒28を炉心26に対して抜き差しすることで、原子炉出力を制御することができる。
【0030】
蒸気発生器13は、内部に逆U字形状をなす複数の伝熱管からなる伝熱管群31が設けられている。複数の伝熱管は、各端部が管板に支持され、入室32と出室33に連通しており、入室32に高温側送給配管14の端部が連結され、出室33に低温側送給配管15の端部が連結されている。また、蒸気発生器13は、図示しないが、伝熱管群31の上方に給水を蒸気と熱水とに分離する気水分離器と、この分離された蒸気の湿分を除去して乾き蒸気に近い状態とする湿分分離器が設けられている。
【0031】
また、加圧水型原子炉12は、化学体積制御系(CVCS)34が設けられている。低温側送給配管15は、一次系冷却水循環ライン35が設けられており、一次系冷却水循環ライン35に再生熱交換器36、非再生冷却器37、脱塩塔38、体積制御タンク39、充填ポンプ40が設けられている。一次系冷却水循環ライン35は、一次系冷却水補給ライン41を介して一次系純水タンク42に連結され、一次系冷却水補給ライン41に補給水ポンプ43が設けられている。一次系冷却水補給ライン41は、ホウ酸水供給ライン44を介してホウ酸タンク45が連結され、ホウ酸水供給ライン44にホウ酸ポンプ46が設けられている。加圧水型原子炉12は、化学体積制御系34により炉心26におけるホウ素濃度を調整可能である。
【0032】
原子炉格納容器11は、内部に原子炉非常用冷却装置47が設けられている。原子炉格納容器11は、下部に燃料取替用水ピット48が設けられており、この燃料取替用水ピット48から原子炉格納容器11の外部を通って再び原子炉格納容器11内に戻り、加圧水型原子炉12の上方まで延出される冷却水散布ライン49が設けられている。この冷却水散布ライン49は、中間部にスプレイポンプ50と冷却器51が設けられ、先端部に多数の噴射ノズル52が設けられている。また、燃料取替用水ピット48から原子炉格納容器11の外部を通って再び原子炉格納容器11内に戻り、加圧水型原子炉12に連結される冷却水供給ライン53が設けられている。この冷却水供給ライン53は、安全注入ポンプ54、開閉弁55が設けられている。
【0033】
加圧水型原子炉12は、炉心26の燃料集合体27により一次系冷却水として軽水が加熱され、高温の一次系冷却水が加圧器17により所定の高圧に維持された状態で、高温側送給配管14を通して蒸気発生器13に送られる。この蒸気発生器13は、高温高圧の一次系冷却水と二次系冷却水との間で熱交換を行うことで二次系蒸気を生成し、冷やされた一次系冷却水が加圧水型原子炉12に戻される。このとき、制御棒駆動装置29は、炉心26から制御棒28を抜き差しすることで、炉心26内での核分裂を調整する。即ち、燃料集合体27を構成する原子燃料が核分裂することで中性子を放出し、軽水が放出された高速中性子の運動エネルギを低下させて熱中性子とし、新たな核分裂を起こしやすくすると共に、発生した熱を奪って冷却する。制御棒駆動装置29は、全ての制御棒28を炉心26に挿入することで、加圧水型原子炉12を停止することができる。
【0034】
各蒸気発生器13は、上端部が配管61aを介して蒸気タービン62と連結されており、この配管61aに主蒸気隔離弁63が設けられている。蒸気タービン62は、高圧タービン64と低圧タービン65を有すると共に、発電機(発電装置)66が接続されている。また、高圧タービン64と低圧タービン65は、その間に湿分分離加熱器67が設けられている。低圧タービン65は、復水器68を有しており、この復水器68は、配管61aからバイパス弁69を有するタービンバイパス配管70が接続されると共に、冷却水(例えば、海水)を給排する取水管71及び排水管72が連結されており、取水管71に給水ポンプ(海水ポンプ、循環水ポンプ)73が装着されている。
【0035】
復水器68は、配管61bが接続されており、この配管61bに復水ポンプ74、グランドコンデンサ75、復水脱塩装置76、低圧給水加熱器77、脱気器78、主給水ポンプ79、高圧給水加熱器80、主給水制御弁81が設けられている。
【0036】
また、配管61aは、主蒸気逃がし弁82を有する主蒸気逃がし配管83の一端部と、主蒸気安全弁84を有する主蒸気安全配管85の一端部が接続されており、各配管83,85の他端部が大気に開放している。一方、配管61bは、主給水制御弁81と蒸気発生器13との間に補助給水配管86の一端部が接続されており、この補助給水配管86は開閉弁87が設けられ、他端部に復水タンク88が接続されている。補助給水配管86は、並列して2個の分岐補助給水配管89,90が設けられ、分岐補助給水配管89に補助給水ポンプ91が設けられ、分岐補助給水配管90に電動補助給水ポンプ92が設けられている。補助給水ポンプ91は、蒸気によりタービンが回転することで駆動し、電動補助給水ポンプ92は、非常用電源により駆動する。
【0037】
そのため、蒸気発生器13にて、二次系冷却水が高温高圧の一次系冷却水と熱交換を行って生成された二次系蒸気は、配管61aを通して蒸気タービン62(高圧タービン64から低圧タービン65)に送られ、この蒸気により蒸気タービン62を駆動して発電機66により発電を行う。このとき、蒸気発生器13からの蒸気は、高圧タービン64を駆動した後、湿分分離加熱器67で蒸気に含まれる湿分が除去されると共に加熱されてから低圧タービン65を駆動する。そして、蒸気タービン62を駆動した蒸気は、復水器68で海水を用いて冷却されて復水となり、配管61bを通って蒸気発生器13に戻される。
【0038】
また、原子力発電プラント10は、加圧水型原子炉12や蒸気発生器13などの運転状態を検出するための各種センサが設けられている。加圧水型原子炉12は、内部の温度を検出する温度センサ101と、内部の圧力を検出する圧力センサ102が設けられている。蒸気発生器13は、二次冷却水の水位を検出する水位センサ103と、内部の圧力を検出する圧力センサ104が設けられている。また、低温側送給配管15は、一次冷却水の温度を検出する温度センサ105と、圧力を検出する圧力センサ106が設けられている。加圧器17は、一次冷却水の水位を検出する水位センサ107と、内部の圧力を検出する圧力センサ108が設けられている。配管61aは、主蒸気(一次冷却水)の圧力を検出する圧力センサ109と、流量を検出する流量センサ110が設けられている。
【0039】
また、原子炉格納容器11は、内部の放射線量を検出する放射線モニタ111と、水素濃度を検出する濃度センサ112と、温度を検出する温度センサ113と、圧力を検出する圧力センサ114が設けられている。原子炉非常用冷却装置47は、冷却水散布ライン49を流れる冷却水の流量を検出する流量センサ115が設けられている。補助給水配管86は、給水ポンプ91,92により供給される冷却水の流量を検出する流量センサ116が設けられている。また、図示しないプラント機器の監視操作を行う監視操作画面における母線の電圧を表示する電圧センサ117が設けられている。この安全系VDUにより外部電源の有無や非常用電源の有無を検出することができる。
【0040】
中央制御室200は、本実施形態の原子力発電プラントの監視制御装置201が設けられている。監視制御装置201は、運転コンソールや大型表示盤、運転指令コンソールなどを有するプラントの制御設備である。運転コンソールは、運転員による一体的な監視操作を可能とするため、ハードウェアの監視器具や操作器が設置された中央制御盤などを有する。大型表示盤は、プラント全体の情報を提供したり、運転員間の情報を共有したりするため、常時表示すべきパラメータや代表警報を表示する。
【0041】
原子力発電プラントの監視制御装置201は、上述した温度センサ101,105,113、圧力センサ102,104,106,108,109,114、水位センサ103,107、流量センサ110,115,116、放射線モニタ111、濃度センサ112、電圧センサ117などの検出結果が入力される。
【0042】
また、監視制御装置201は、手動または自動により加圧水型原子炉12や蒸気発生器13などの状態を変更するための機器を操作可能となっている。中央制御室200は、空調設備211が設けられると共に、非常用循環ファン212が設けられており、監視制御装置201は、空調設備211と非常用循環ファン212を操作可能である。監視制御装置201は、原子炉非常用冷却装置47(スプレイポンプ50、安全注入ポンプ54)を操作可能である。監視制御装置201は、化学体積制御系34(充填ポンプ40、補給水ポンプ43、ホウ酸ポンプ46)を操作可能である。監視制御装置201は、主蒸気逃がし弁82を操作可能である。また、監視制御装置201は、非常用電源が喪失した際にプラント設備への給電を可能とする空冷式非常用電源装置(電源車)213を操作可能である。
【0043】
図1は、第1実施形態の原子力発電プラントの監視制御装置を表す概略構成図である。
【0044】
図1に示すように、監視制御装置201は、加圧水型原子炉12の起動操作、運転操作、停止操作を行う第1監視制御部301と、加圧水型原子炉12の停止操作だけを行う第2監視制御部302と、加圧水型原子炉12の信号入出力ラインを第1監視制御部301と第2監視制御部302との間で分配または切替える切替装置303と、第1及び第2監視制御部301,302に給電する非常用電源304と第2監視制御部302に給電する非常用電源305とを有している。
【0045】
第1監視制御部301は、加圧水型原子炉12を含む原子力発電プラント10の通常時(正常時)にて、加圧水型原子炉12などの起動操作、運転操作、停止操作を行うものであり、多重化されて設けられている。ここで、複数の第1監視制御部301は、ほぼ同様の機能を有するものとなっている。第2監視制御部302は、加圧水型原子炉12を含む原子力発電プラント10の非常時にて、加圧水型原子炉12などの停止操作だけを行うものであり、特に外部電源(交流電源)の喪失時に使用するものである。各監視制御部301,302は、監視操作盤301a,302aと、制御盤301b,302bとから構成されている。
【0046】
第1監視制御部301は、第1外部電源ライン311を介して外部電源312が接続されている。第2監視制御部302は、第2外部電源ライン313を介して外部電源312が接続されている。また、第1監視制御部301及び第2監視制御部302は、非常用電源ライン314を介して非常用電源304が接続されている。この場合、非常用電源304から第1監視制御部301に給電する第1給電ラインは、非常用電源ライン314と第1外部電源ライン311により構成され、非常用電源304から第2監視制御部302に給電する第2給電ラインは、非常用電源ライン314と第2外部電源ライン313により構成される。
【0047】
第1給電ラインは、給電を遮断する遮断装置315が設けられている。遮断装置315は、第1外部電源ライン311に設けられており、運転員により操作可能となっている。また、第2監視制御部302は、非常用電源ライン314に遮断装置316が設けられている。原子力発電プラント10の通常時(正常時)は、遮断装置315が接続状態にあり、遮断装置316が遮断状態にある。なお、非常用電源305は、非常用電源304のバックアップ用の電源であり、第3外部電源ライン317を介して第1監視制御部301及び第2監視制御部302に接続されており、第3外部電源ライン317に遮断装置318が設けられている。
【0048】
加圧水型原子炉12の信号入出力ラインは、検出器により検出された加圧水型原子炉12の運転状態の検出信号を入力する検出信号入力ライン321と、加圧水型原子炉12の状態を変更するための各種機器を操作するための操作信号を出力する操作信号出力ライン322とから構成されている。ここで、検出器とは、前述した温度センサ101,105,113、圧力センサ102,104,106,108,109,114、水位センサ103と,107、流量センサ110,115,116、放射線モニタ111、濃度センサ112、電圧センサ117である。また、各種機器とは、非常用循環ファン212、原子炉非常用冷却装置47、化学体積制御系34、主蒸気逃がし弁82、空冷式非常用電源装置213である。
【0049】
この検出信号入力ライン321と操作信号出力ライン322は、切替装置303に接続され、この切替装置303を介して第1監視制御部301に接続されると共に、第2監視制御部302に接続されている。切替装置303は、運転員より操作可能であり、検出信号入力ライン321と操作信号出力ライン322を第1監視制御部301または第2監視制御部302に分配または切替えることができる。この場合、切替装置303は、操作信号出力ライン322により監視信号を第1監視制御部301と第2監視制御部302との間で分配し、操作信号出力ライン322により制御信号を第1監視制御部301と第2監視制御部302との間で切替える。
【0050】
第1監視制御部301は、前述したように、原子力発電プラント10の正常時に、加圧水型原子炉12などの起動操作、運転操作、停止操作を行うことができる。一方、第2監視制御部302は、原子力発電プラント10の非常時、つまり、外部電源喪失時に、加圧水型原子炉12などの停止操作だけを行うものである。そのため、第1監視制御部301は、原子力発電プラント10における全ての検出器の検出信号が入力されると共に、全ての機器に対して操作信号を出力することができる。一方、第2監視制御部302は、原子力発電プラント10における一部の検出器の検出信号が入力すると共に、一部の機器に対して操作信号を出力することができる。即ち、第2監視制御部302は、原子力発電プラント10の停止操作と事故対応操作に必要となる監視制御が集約されたものである。
【0051】
具体的に、第2監視制御部302は、加圧水型原子炉12を冷却させるための冷却機能と、加圧水型原子炉12の原子炉格納容器11(
図2参照)の温度と圧力を低下させるための減温減圧機能とを有している。この冷却機能と減温減圧機能を有するための設備として、検出器としての温度センサ101,105,113、圧力センサ102,104,106,108,109,114、水位センサ103,107、流量センサ110,115,116、放射線モニタ111、濃度センサ112、電圧センサ117と、操作機器としての非常用循環ファン212、原子炉非常用冷却装置47、化学体積制御系34、主蒸気逃がし弁82、空冷式非常用電源装置213が必要となる。即ち、第2監視制御部302は、この検出器からの信号に基づいてこの操作機器を操作することで、加圧水型原子炉12を安定して停止させるものである。
【0052】
ここで、第1実施形態の原子力発電プラントの監視制御装置201の作用を説明する。
【0053】
原子力発電プラント10の正常時、外部電源312は、第1監視制御部301と第2監視制御部302に電力を供給しており、運転員は、第1監視制御部301を用いて加圧水型原子炉12を含む原子力発電プラント10の起動操作、運転操作、停止操作を行うと共に、運転状態を監視している。
【0054】
災害により外部電源312が喪失すると、外部電源312は、第1監視制御部301と第2監視制御部302に電力を供給することができず、運転員は、第1監視制御部301を用いて加圧水型原子炉12を含む原子力発電プラント10の停止操作を行うことが困難となる。このとき、運転員は、外部電源312の喪失が判明すると、遮断装置315を遮断状態とし、遮断装置316を接続状態とする。また、運転員は、切替装置303により、検出信号入力ライン321と操作信号出力ライン322を第1監視制御部301から第2監視制御部302に分配または切替える。
【0055】
そのため、全ての第1監視制御部301は、電力供給が停止されることから、操作不能となり、第2監視制御部302は、非常用電源304から電力が供給されることから、操作可能となる。運転員は、第2監視制御部302を用い、各検出器からの検出結果を受け、各操作機器を操作することで、加圧水型原子炉12の停止操作を行う。ここで、第1監視制御部301への電力供給が停止され、且つ、第2監視制御部302は、機能が制限され、加圧水型原子炉12などの停止操作だけを行うものであることから、消費電力が低減される。
【0056】
このように第1実施形態の原子力発電プラントの監視制御装置にあっては、加圧水型原子炉12の起動操作、運転操作、停止操作を行う第1監視制御部301と、加圧水型原子炉12の停止操作だけを行う第2監視制御部302と、加圧水型原子炉12の信号入出力ライン321,322を第1監視制御部301と第2監視制御部302との間で分配または切替える切替装置303と、第2監視制御部302に給電する非常用電源304,305とを設けている。
【0057】
従って、加圧水型原子炉12の起動操作、運転操作、停止操作を行う第1監視制御部301に対して、加圧水型原子炉12の停止操作だけを行う第2監視制御部302を設けることで、外部電源312の喪失時に、切替装置303により、加圧水型原子炉12の信号入出力ライン321,322を第1監視制御部301から第2監視制御部302に分配または切替えると共に、非常用電源304,305により第2監視制御部302に給電する。そのため、外部電源312が喪失しても、運転員は、第2監視制御部302を用いて加圧水型原子炉12を安全に停止することができる。このとき、第2監視制御部302は、必要な機能だけに集約されていることから、消費電力を抑えることができ、長時間にわたって第2監視制御部302による操作が可能となる。
【0058】
第1実施形態の原子力発電プラントの監視制御装置では、非常用電源304から第1監視制御部301に給電する第1給電ラインとして非常用電源ライン314と第1外部電源ライン311を設けると共に、非常用電源304から第2監視制御部302に給電する第2給電ラインとして非常用電源ライン314と第2外部電源ライン313を設け、第1給電ラインにより給電を遮断する遮断装置315を第1外部電源ライン311に設けている。従って、外部電源312の喪失時に、遮断装置315により、非常用電源304から第1監視制御部301に給電する第1給電ラインを遮断することで、第1監視制御部301の消費電力をなくし、第2監視制御部302に給電する非常用電源304の電力を確保し、長時間にわたって第2監視制御部302による操作を可能とすることができる。
【0059】
第1実施形態の原子力発電プラントの監視制御装置では、信号入出力ラインとして、加圧水型原子炉12の状態を検出した検出信号が入力される検出信号入力ライン321と、加圧水型原子炉12の状態を変更するための機器を操作するための操作信号を出力する操作信号出力ライン322を設けている。従って、外部電源312の喪失時に、切替装置303により、検出信号入力ライン321と操作信号出力ライン322を第2監視制御部302に分配または切替えることで、運転員は、この第2監視制御部302を用いて加圧水型原子炉12を安全に停止することができる。
【0060】
第1実施形態の原子力発電プラントの監視制御装置では、第2監視制御部302は、加圧水型原子炉12を冷却させるための冷却機能と、加圧水型原子炉12の原子炉格納容器11の温度と圧力を低下させるための減温減圧機能とを有している。従って、運転員は、この第2監視制御部302を用いて、冷却機能により加圧水型原子炉12を適正に冷却させながら安全に停止することができ、また、炉心溶融時には、減温減圧機能により原子炉格納容器11の温度と圧力を低下させることができる。
【0061】
第1実施形態の原子力発電プラントの監視制御装置では、第1監視制御部301と第2監視制御部302とを中央制御室200に配置し、外部電源312を接続している。従って、第1監視制御部301と第2監視制御部302は、常時、外部電源312から電力が供給されることで、常時、第1監視制御部301だけでなく、第2監視制御部302の故障を早期に検出して安全性を向上することができる。
【0062】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態の原子力発電プラントの監視制御装置を表す概略構成図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0063】
第2実施形態において、
図3に示すように、監視制御装置201は、加圧水型原子炉12の起動操作、運転操作、停止操作を行う第1監視制御部301と、加圧水型原子炉12の停止操作だけを行う第2監視制御部302と、加圧水型原子炉12の信号入出力ラインを第1監視制御部301と第2監視制御部302との間で分配または切替える切替装置303と、第2監視制御部302に給電する非常用電源304,305とを有している。
【0064】
第1給電ラインは、給電を遮断する遮断装置315が設けられている。遮断装置315は、第1外部電源ライン311に設けられており、制御装置331により操作可能となっている。また、第2監視制御部302は、非常用電源ライン314に遮断装置316が設けられ、第3外部電源ライン317に遮断装置318が設けられており、遮断装置316,318は、制御装置331により操作可能となっている。
【0065】
加圧水型原子炉12の信号入出力ラインは、検出器が加圧水型原子炉12の運転状態を検出した検出信号を入力する検出信号入力ライン321と、加圧水型原子炉12の状態を変更するための各種機器を操作するための操作信号を出力する操作信号出力ライン322とから構成されている。この検出信号入力ライン321と操作信号出力ライン322は、切替装置303に接続され、この切替装置303を介して第1監視制御部302に接続されると共に、第2監視制御部302に接続されている。切替装置303は、制御装置331により操作可能となっている。
【0066】
制御装置331は、外部電源312に設けられた検出器332の信号が入力される。この検出器332は、例えば、外部電源312の電圧を監視しており、外部電源312が喪失して電圧が低下すると、制御装置331に対して外部電源喪失信号を出力する。そのため、制御装置331は、検出器332から外部電源喪失信号を受けると、切替装置303を作動し、検出信号入力ライン321と操作信号出力ライン322を第1監視制御部301から第2監視制御部302に切替える。また、このとき、制御装置331は、検出器332から外部電源喪失信号を受けると、遮断装置315を遮断する一方、遮断装置316を接続状態とする。
【0067】
また、非常用電源304,305は、充電センサ333,334が設けられ、非常用電源304,305の蓄電量を制御装置331に出力している。制御装置331は、充電センサ333,334の検出結果に基づいて遮断装置316,318を操作し、第2監視制御部302に給電する非常用電源304,305を切替える。
【0068】
ここで、第2実施形態の原子力発電プラントの監視制御装置201の作用を説明する。
【0069】
災害により外部電源312が喪失すると、外部電源312は、第1監視制御部301と第2監視制御部302に電力を供給することができず、検出器332は、制御装置331に外部電源喪失信号を出力する。すると、制御装置331は、遮断装置315を遮断状態とし、遮断装置316を接続状態とする。また、制御装置331は、切替装置303により、検出信号入力ライン321と操作信号出力ライン322を第1監視制御部301から第2監視制御部302に分配または切替える。
【0070】
そのため、全ての第1監視制御部301は、電力供給が停止されることから、操作不能となり、第2監視制御部302は、非常用電源304から電力が供給されることから、操作可能となる。運転員または制御装置331は、第2監視制御部302を用い、各検出器からの検出結果を受け、各操作機器操作することで、加圧水型原子炉12の停止操作を行う。ここで、第1監視制御部301への電力供給が停止され、且つ、第2監視制御部302は、機能が制限され、加圧水型原子炉12などの停止操作だけを行うものであることから、消費電力が低減される。その後、非常用電源304の蓄電量が低下すると、制御装置331は、遮断装置316を遮断状態とし、遮断装置318を接続状態とし、第2監視制御部302への給電を非常用電源304から非常用電源305に切替える。
【0071】
このように第2実施形態の原子力発電プラントの監視制御装置にあっては、外部電源喪失信号を受けて切替装置303により検出信号入力ライン321と操作信号出力ライン322を第1監視制御部301から第2監視制御部302に切替える制御装置331を設けている。
【0072】
従って、外部電源312の喪失時に、制御装置331は、切替装置303を作動し、加圧水型原子炉12の信号入出力ライン321,322を自動的に第1監視制御部301から第2監視制御部302に切替えることとなる。そのため、運転員は、第2監視制御部302を用いて加圧水型原子炉12を安全に停止することができる。
【0073】
第2実施形態の原子力発電プラントの監視制御装置では、複数の非常用電源304,305を設け、制御装置331は、各非常用電源304,305の蓄電量に応じて第2監視制御部302に給電する非常用電源304,305を切替えるようにしている。従って、長時間にわたって効率良く第2監視制御部302に給電することができ、安全性を向上することができる。
【0074】
なお、上述した実施形態にて、第2監視制御部302は、加圧水型原子炉12の停止操作だけを行うものとして、冷却機能と減温減圧機能を有し、具体的に、複数の検出器と操作機器を例示して説明したが、これは一例であって限定されるものではなく、検出器や操作機器は、加圧水型原子炉12の安全性などを考慮して適宜設定すればよいものである。