特許第6444107号(P6444107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444107
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】防振ブッシュ
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/14 20060101AFI20181217BHJP
   F16F 13/10 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   F16F13/14 Z
   F16F13/10 E
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-192038(P2014-192038)
(22)【出願日】2014年9月19日
(65)【公開番号】特開2016-61416(P2016-61416A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177900
【氏名又は名称】山下ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089509
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 清光
(72)【発明者】
【氏名】門脇 宏和
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−156769(JP,A)
【文献】 特開2011−208705(JP,A)
【文献】 特開2008−151189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 13/14
F16F 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心的に配置した、内筒(10)及び外筒(20)と、これらを連結するインシュレータ(30)とを備え、外筒(20)の内側に内筒(10)方向へ突出する外筒側ストッパ(50)を設けたブッシュにおいて、
前記内筒(10)は中心軸線(L0)上にこじり中心(A)を備え、
外筒側ストッパ(50)に対応する内筒(10)の外周部に、内筒(10)の中心方向へ凹入し、前記内筒(10)の前記中心軸線(L0)に沿う縦断面にて円弧状又はコ字状の凹部をなす内筒側ストッパ(40)を設けるとともに、
こじり入力時に、前記外筒側ストッパ(50)の内方向先端は、前記内筒側ストッパ(40)の凹部空間内へ入り、
前記内筒側ストッパ(40)は、前記こじり中心(A)を中心に回動する、
ことを特徴とする防振ブッシュ。
【請求項2】
上記請求項1において、内筒側ストッパ(40)は凹曲面状をなすことを特徴とする防振ブッシュ。
【請求項3】
上記請求項1又は2において、外筒側ストッパ(50)の内筒側ストッパ(40)に対面する部分は凸曲面状をなすことを特徴とする防振ブッシュ。
【請求項4】
上記請求項1〜3のいずれか1項において、内筒側ストッパ(40)及び外筒側ストッパ(50)の表面に内筒側ストッパ弾性体層(38)及び外筒側ストッパ弾性体層(56)を形成したことを特徴とする防振ブッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サスペンション用等の防振ブッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
サスペンションアームと車体との連結部に用いるサスペンションブッシュは公知である。このブッシュとして、同心的に配置された内外筒と、これらを連結する弾性体とを備え、内外筒よりそれぞれストッパを対向させて突出させたものがある(一例として、特許文献1参照)。
この一例を図6に示す。図6は、内筒の軸方向にカットしたサスペンションブッシュの縦断面を示し、内筒110、外筒120、インシュレータ130を備える。
内筒110の長さ方向中間部には、略球状の曲面をなして外方へ突出する内筒側ストッパ140を備える。外筒120の長さ方向中間部には、この内筒側ストッパ140に対向して内方へ突出する外筒側ストッパ150を備える。内筒側ストッパ140及び外筒側ストッパ150の各表面は弾性体層で被覆されている。
このサスペンションブッシュは、内筒110の中心軸線L0を、車体の上下方向(図の上下方向)へ向けて配置され、外筒120を車体へ固定され、内筒110をサスペンションアームへ取付けられている。このようなサスペンションブッシュの配置は、「縦差し」と称され、サスペンションの動きに応じて、中心軸線L0に沿う上下方向入力や、これと直交する横方向の入力、並びに中心軸線L0を例えば適当角度θだけ傾けてL1とするこじり入力などが加わる。これらの振動入力はインシュレータ130により吸収するとともに、大きな横方向及びこじり入力には、内筒側ストッパ140と外筒側ストッパ150が当接して大変位を規制するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−156769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図6の従来例において、こじりと横方向の入力があった場合、まず、こじり入力により内筒110が中心軸線L0からL1へ傾き、この状態で、さらに横方向の入力によりL2へ移動すると、内筒側ストッパ140が外筒側ストッパ150へ当接し、さらなる横方向変位を規制する。Aはこじり中心であり、直交線V0はこじり中心Aを通る中心軸線L0の直交線である。V1は中心軸線L0がθ傾くことにより、直交線V0がθ傾いた状態の線である。
【0005】
図7は、こじり入力における内筒側ストッパ140と外筒側ストッパ150の状態を模式的に示す図であり、(1)は振動入力前の中立時の状態、(2)は、こじり入力により中心軸線L0がθ傾いてL1となった状態を示す。
(1)において、内筒側ストッパ140の先端部と直交線V0の交点を交点B、同じく、外筒側ストッパ150の先端部と直交線V0の交点をCとする。
こじり入力があると、(2)に示すように、内筒110はθだけ傾き、中心軸線L0はL1となり、同時に直交線V0はV1になるとともに、内筒側ストッパ140も内筒110と一体にこじり中心Aを中心に回動し、V1上の交点Bは、V1上における外筒側ストッパ150の先端部の交点であるDと対向する。
すなわち、交点Bが対向する点は、CからDへ移動してオフセットしたことになる。このC−D間の距離をこじり入力による内筒側ストッパ140のオフセット量aとする。
【0006】
次に、外筒側ストッパ150における内筒側ストッパ140の当接する支持面積の変化を図8により説明する。
図8は、内筒側ストッパ140と外筒側ストッパ150の関係を模式的に示す図であり、(1)は図7の(1)と同じ中立時の状態である。
(2)は、(1)の状態で横方向の入力があり、内筒側ストッパ140が直交線V0に沿って外筒側ストッパ150方向へL0からL2まで移動した状態を示す。この状態では、外筒側ストッパ150は、ほぼ全面で内筒側ストッパ140を当接支持でき、その支持面積は、中心軸線L0方向における外筒側ストッパ150の内端両肩部E−E間における幅に対応した広いものとなる。このときの支持面積S0を、便宜的に内端両肩部E−E間の距離として示す。
(3)は、(1)の状態でこじり入力があり、中心軸線L0がL1までθなる傾きをした状態を示し、図7の(2)に対応する。この状態で、交点Bがaなるオフセット状態をなすことは前述の通りである。
(4)は、(3)の状態から横方向の入力により内筒がV1方向へ変位して、L1からL2になり、内筒側ストッパ140のうち外筒側ストッパ150へ最も近い部分Fが外筒側ストッパ150へ当接し、外筒側ストッパ150により内筒側ストッパ140の大変位を規制する。この状態では、たまたまFがCと一致している。
この状態から、さらに内筒へ横方向の入力が加わると、内筒側ストッパ140と外筒側ストッパ150は、それぞれの表面の弾性体層を圧縮しながら接近する。
しかし、外筒側ストッパ150による支持は、内筒側ストッパ140が外筒側ストッパ150の図右端部における肩部Eに達すると終了する。すなわち、こじり入力時における外筒側ストッパ150による支持面積S1は、Cから図右側のEまでの幅に対応する比較的狭いものになる。
【0007】
このように、内筒側ストッパ140が外方へ突出している構造の場合、こじり入力時には、支持面積が(2)におけるS0から、(4)におけるS1へと縮小(この例では約半減)されてしまう。
ところが、このように、支持面積が小さくなると、ストッパ分担荷重が増えるため、摩耗や破損等が生じ、耐久性が低下するおそれがある。
そこで本願は、ストッパにおけるこじり入力時における支持面積の減少を抑制し、内筒側ストッパ140、外筒側ストッパ150における耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため請求項1に係る発明は、同心的に配置した、内筒(10)及び外筒(20)と、これらを連結するインシュレータ(30)とを備え、外筒(20)の内側に内筒(10)方向へ突出する外筒側ストッパ(50)を設けたブッシュにおいて、
前記内筒(10)は中心軸線(L0)上にこじり中心(A)を備え、
外筒側ストッパ(50)に対応する内筒(10)の外周部に、内筒(10)の中心方向へ凹入し、前記内筒(10)の前記中心軸線(L0)に沿う縦断面にて円弧状又はコ字状の凹部をなす内筒側ストッパ(40)を設けるとともに、
こじり入力時に、前記外筒側ストッパ(50)の内方向先端は、前記内筒側ストッパ(40)の凹部空間内へ入り、
前記内筒側ストッパ(40)は、前記こじり中心(A)を中心に回動する、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、上記請求項1において、内筒側ストッパ(40)は凹曲面状をなすことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2において、外筒側ストッパ(50)の内筒側ストッパ(40)に対面する部分は凸曲面状をなすことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項において、内筒側ストッパ(40)及び外筒側ストッパ(50)の表面に内筒側ストッパ弾性体層(38)及び外筒側ストッパ弾性体層(56)を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、外筒側ストッパに対応する内筒の外周部に、内筒の中心方向へ凹入し、前記内筒の前記中心軸線に沿う縦断面にて円弧状又はコ字状の凹部をなす内筒側ストッパを設けるとともに、
こじり入力時に、前記外筒側ストッパの内方向先端が前記内筒側ストッパの凹部空間内へ入り、前記内筒側ストッパが前記こじり中心を中心に回動するようにしたので、
こじり入力時において、外筒側ストッパの内筒側ストッパに対する支持面積を大きくすることができる。このため、内筒側ストッパ及び外筒側ストッパにおける耐久性を向上させることができる。また内筒に凹部からなる内筒側ストッパを設けたので、軽量化できる。
さらに、外筒側ストッパの内方向先端を内筒側ストッパの凹部空間内へ入り込ませたので、外筒側ストッパを内筒側ストッパへ可及的に接近させることができる。
このため、こじり入力時において、外筒側ストッパとの間隔変化を可及的に少なくすることができるので、接触面積の変化が可及的に少なくなり、局部接触による偏摩耗が可及的に少なくなるので、耐久性がより向上する。
【0014】
請求項2の発明によれば、内筒側ストッパを凹曲面にしたので、こじり入力時において、外筒側ストッパとの間隔変化を少なくすることができる。このため、接触面積の変化が少なくなり、局部接触による偏摩耗が少なくなるので、耐久性が向上する。
【0015】
請求項3の発明によれば、外筒側ストッパの内筒側ストッパに対面する部分を凸曲面状にしたので、こじり入力時において、内筒側ストッパの表面と外筒側ストッパの表面との間隔変化を少なくすることができる。このため、接触面積の変化が少なくなり、局部接触による偏摩耗が少なくなるので、耐久性が向上する。
【0016】
請求項4の発明によれば、内筒側ストッパ(40)及び外筒側ストッパ(50)の表面に内筒側ストッパ弾性体層(38)及び外筒側ストッパ弾性体層(56)を形成したので、内筒側ストッパ(40)と外筒側ストッパ(50)の接触初期におけるショックを緩和することができる。このためストッパの摩耗を抑えることができる、耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態のサスペンションブッシュにおける縦断面
図2】実施形態における中立時の状態を従来例と対比させて模式的に示す図
図3】実施形態におけるこじり入力時の状態を模式的に示す図
図4】実施形態における内外ストッパの関係を模式的に示す図
図5】実施形態における中間組立体を示す図
図6】従来例のサスペンションブッシュにおける縦断面
図7】従来例における中立時とこじり入力時の状態を模式的に示す図
図8】従来例における内外ストッパの関係を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、サスペンションブッシュとして構成された一実施形態を説明する。なお、図6とほぼ同様のものであるため、符号A〜F、L0〜L2、V0、V1、θについては共通して用いるものとし、それぞれの意味も同じである。また、図1の上下方向をサスペンションブッシュの上下方向、左右方向を横方向とする。これらは取付けられる車体の上下方向及び左右方向とも一致する。
【0020】
図1は、縦差し式のサスペンションブッシュにおける縦断面であり、この例では内部に液体を封入した液封式となっている。
このサスペンションブッシュは、円筒状の内筒10と、その周囲へ略同心的に配置された外筒20と、これらを連結するインシュレータ30とを備える。内筒10は金属又は樹脂製であり、軸方向に貫通穴12が設けられ、ここに図示しないボルト等の結合部材を通して、サスペンションアーム(図示省略)へ連結される。
【0021】
内筒10の長さ方向中間部には、外周面から中心方向へ凹入する凹部14が外方へ開放されて形成されている。凹部14は表面が断面円弧状の曲面をなし、この表面を覆う内筒側ストッパ弾性体層38(後述)とともに内筒側ストッパ40を構成している。凹部14は内筒10の外周全体に連続して形成される環状の凹部であり、内筒側ストッパ40も内筒10の外周全体に連続して環状に形成されている。なお、凹部14は必ずしも環状に形成される必要はなく、後述する外筒側ストッパに応じて、周方向へ部分的に設けてもよい。
【0022】
外筒20は、金属製で内筒10より大径の筒状体である。なお、外筒20の横断面形状(直交線V0方向断面)は、円形に限らず、楕円や多角形等の非円形形状を含む。
外筒20の内周面には、中間組立体70が嵌合されている。中間組立体70は、インシュレータ30の成形時に内筒10と外周部の中間リング32をインシュレータ30で一体化したものである(図1参照)。
軸方向両端部に、中間リング32を介してインシュレータ30が連結されている。
【0023】
図5は中間組立体70を示し、(a)は軸方向から示す側面図、(b)は(a)のb−b線断面図、(c)は(a)のc−c線断面図、(d)は(b)のd−d線断面図である。
この図において、インシュレータ30は、ゴム等の防振作用を有する適宜弾性材料からなり、中間リング32及び内筒10と一体に形成され、加硫接着等により中間リング32及び内筒10と一体化され、中間組立体70をなしている。中間リング32は中間組立体70の軸方向両端部にのみ一対で設けられる金属製等のリング状部材である。
インシュレータ30は軸方向中間部が外方へ開放された凹部であるポケット部35をなし、このポケット部35が外筒20により塞がれ、さらに液体が封入されることにより、左右の液室60、62をなす(図1参照)。液室60、62はインシュレータ30と一体に形成された隔壁31によって、内筒10を挟む左右に分離されている。隔壁31は、図5の(c)に示すように、内筒10に沿ってインシュレータ30のほぼ軸方向全長に延びるとともに、図5(d)にも示すように、内筒10から径方向外方へ延び、外筒20の内周面に密接するまで延びる壁部になっている。隔壁31は周方向へ180°間隔で設けられる。この隔壁31により、液室60、62を形成するポケット部35が上下に区画されている。
【0024】
インシュレータ30の軸方向両端は、図5の(b)においてポケット部35の左右壁部をなす円形の端壁34、34をなす。インシュレータ30の内周部は、内筒10の外周部を覆う被覆部36をなし、その一部が内筒側ストッパ40の表面を被覆部36と連続して一体に覆う内筒側ストッパ弾性体層38となっている。内筒側ストッパ弾性体層38は、内筒側ストッパ40に沿って肉厚が略一定に形成された凹曲面をなしている。内筒側ストッパ弾性体層38の表面は、内筒側ストッパ40が外筒側ストッパ50と接触しない状態では、内筒側ストッパ40の表面になっている。
中間組立体70を外筒20の内側へ嵌合一体化すると、図1に示すように完成したサスペンションブッシュになる。
【0025】
図1において、液室60及び液室62内には、外筒側ストッパ50が配置され、図示断面にて、外筒20から内筒側ストッパ40の凹部空間内へ突出している。
外筒側ストッパ50は、内筒側ストッパ40へ向かって凸曲面状をなす内周側表面と内筒側ストッパ40との間に所定間隔bを保って、その周囲を略環状に囲む部材である。所定間隔bは内筒10における規制する横方向の変位量に応じて設定される。
【0026】
外筒側ストッパ50は、樹脂等の適宜剛性部材で構成され、内筒10の軸方向視で略半円弧状をなす一対の部材であり、それぞれが液室60及び液室62内に配置され、各長さ方向端部を液室の隔壁へ当接される。
外筒側ストッパ50の外周側は外筒20の内周面へ密着固定され、外筒側ストッパ50の外周部と外筒20の内周面の間には、オリフィス通路64が形成されている。オリフィス通路64は、外筒側ストッパ50の外周面に形成された外方へ開放される円弧状溝52と外筒20との間に形成され、液室60と液室62を連通している。
【0027】
外筒側ストッパ50の内周面54は、内筒側ストッパ弾性体層38の表面と略平行する凸曲面をなし、その表面は外筒側ストッパ弾性体層56で覆われている。
外筒側ストッパ弾性体層56は、インシュレータ30と同じか又は異なる弾性材料からなり、その表面は、内筒側ストッパ弾性体層38の表面と略平行する凸曲面をなす。また、外筒側ストッパ50の軸方向端面まで一体に覆っている。外筒側ストッパ弾性体層56の表面は、内筒側ストッパ40と接触しない状態で、外筒側ストッパ50の表面になっている。
このように、内筒側ストッパ40及び外筒側ストッパ50の表面に内筒側ストッパ弾性体層38及び外筒側ストッパ弾性体層56を形成すると、内筒側ストッパ40と外筒側ストッパ50の接触初期におけるショックを緩和することができる。
【0028】
外筒側ストッパ50は、直交線V0方向において、その凸曲面部が内筒側ストッパ40の凹曲面と重なるように配置され、外筒側ストッパ50の凸曲面部における最も内方(こじり中心A方向)へ突出する部分と、内筒側ストッパ40の凹曲面のうち最も内方へ引き込んでいる部分がそれぞれ直交線V0上に位置するようになっている。また、図示断面において、内筒側ストッパ40の凹曲面における軸方向幅は、外筒側ストッパ50の凸曲面部における軸方向幅より広く形成され、内筒10がこじり中心Aを中心に回動しても、外筒側ストッパ50の凸曲面部が内筒側ストッパ40の凹曲面と対面を維持して、内筒側ストッパ40から軸方向へ外れないようになっている。
【0029】
このサスペンションブッシュは、上下方向の入力に対しては、内筒10が外筒20に対して上下動し、これをインシュレータ30の弾性変形により吸収する。
また、横方向の入力に対しては、インシュレータ30が弾性変形するとともに、液体がオリフィス通路64を介して、液室60と液室62間を移動することにより、吸収する。
さらに、大きな入力により、内筒10が外筒側ストッパ50へ接近する場合には、外筒側ストッパ50が内筒側ストッパ40と当接して内筒10の過大な横方向変位を規制する。
【0030】
また、こじり入力の場合には、内筒10がθなる傾動により、中心軸線L0からL1になるとともに、インシュレータ30を弾性変形させて吸収する。
さらに、この状態から横方向入力があると、内筒10はV1方向に沿ってL1からL2へ移動し、インシュレータ30のさらなる弾性変形及び液体の液室60と液室62の間における移動により吸収する。また、大入力の場合には、外筒側ストッパ50が内筒側ストッパ40へ当接してこれを規制する。
【0031】
次に、こじり入力と内筒側ストッパ40及び外筒側ストッパ50の動作について説明する。
図2は中立状態、すなわちこじり入力及び横入力前の状態における内筒側ストッパ40及び外筒側ストッパ50を示し、仮想線で図7に示す従来例を対比のために示してある。この状態で、外筒側ストッパ50の先端は、内筒側ストッパ40を除く部分における内筒10の外周線Gとほぼ一致し、直交線V0上の交点BとCは近接し、CはG上にある。
外筒側ストッパ50の先端は、この外周線G上もしくは、よりこじり中心A側の内筒側ストッパ40の凹部空間内へ入り込むように設定される。
【0032】
内筒10がこじりにより外筒側ストッパ50へ近づいたとき、直交線V0はV1となり、V1上の交点Bに対向する外筒側ストッパ弾性体層56の点はDへ移動し、CからDへのオフセット量はcとなる。但し、このオフセット量は、図7に示す従来例のオフセット量aと比べれば著しく小さくなっている。
【0033】
図3は、こじり入力時の状態を示す。まず、内筒10がθだけこじれると、中心軸線L0はこじり中心Aを中心にθだけ傾いてL1となる。このとき、直交線V0はV1となり、直交線V0上の交点BはV1上へ移り、CはV1上のDへ移る。このときのオフセット量はcである。
【0034】
続いて、内筒10が横入力によりV1に沿って変位し、L1からL2になると、内筒側ストッパ弾性体層38の一部が外筒側ストッパ弾性体層56の一部と点Fで接触する。図示はこの状態を示している。
この段階から外筒側ストッパ50による内筒10の変位規制が開始され、より変位が大きくなると、内筒側ストッパ弾性体層38及び外筒側ストッパ弾性体層56を弾性変形させてつぶしながら内筒側ストッパ40が外筒側ストッパ50へ接近し、やがて限界までつぶれると、内筒10の変位を止める。
【0035】
次に、本実施形態の作用を図4により説明する。図4は内筒側ストッパ40及び外筒側ストッパ50の動作を説明する図8と同様のものである。
図4の(1)は中立時であり、交点B、Cは直交線V0上にある。
この状態で横方向の入力があると、(2)に示すように、内筒10は直交線V0に沿って変位し、内筒側ストッパ40のほぼ全体に外筒側ストッパ50のほぼ全体が入り込んで交点BとCが当接し、全体も重なる状態となる。このときの支持面積は、両E−E間の距離に対応する広いS0となる。
【0036】
(3)は(1)の状態においてこじり入力があった状態を示す。内筒10がこじりにより傾くと、中心軸線L0はこじり中心Aを中心にθだけ傾いてL1となり、直交線V0はV1となる。
このとき、内筒側ストッパ弾性体層38の一部が、外筒側ストッパ弾性体層56の一部Fと接触する。FはほぼEの延長上となる。
【0037】
(4)は、(3)の状態においてさらに横入力があった状態であり、内筒10は、内筒側ストッパ弾性体層38及び外筒側ストッパ弾性体層56を弾性変形によりつぶしながらV1に沿って外方へ変位し、やがて内筒側ストッパ弾性体層38及び外筒側ストッパ弾性体層56が限界までつぶれると、内筒側ストッパ40と外筒側ストッパ50の一部が当接し、これ以上の内筒10の変位を停止させる。
この状態を便宜的に内筒側ストッパ40の表面と外筒側ストッパ50の表面が接触した状態として示す。
【0038】
このとき、内筒側ストッパ40は左側のE上にあり、右側のE近傍では、内筒側ストッパ弾性体層38がHで外筒側ストッパ弾性体層56と接している。したがって、支持面積は、左側のEとH間の距離に対応する比較的広いS2となる。このS2はS0とほぼ同じ程度に広いものとなるから、こじり入力及び横入力時でも大きな支持面積を確保できる。
したがって、こじり入力及び横入力によっても、内筒側ストッパ40及び外筒側ストッパ50における摩耗や破損を抑制することができ、耐久性を向上させることができる。
なお、上記説明はこじり入力後に横入力があった状態であるが、大きなこじり入力により内筒10がθよりも大きく傾いた場合も同様になる。
【0039】
また、内筒側ストッパ40を凹曲面にしたので、こじり入力時において、外筒側ストッパ50との間隔変化を少なくすることができるので、接触面積を大きくすることができ、内筒側ストッパ及び外筒側ストッパにおける耐久性を向上させることができる。そのうえ、内筒10に凹部からなる内筒側ストッパ40を設けたので、軽量化できる。
また、外筒側ストッパ50の内筒側ストッパ40に対面する部分を凸曲面状にしたので、こじり入力時において、内筒側ストッパ40の表面と外筒側ストッパ50の表面との間隔変化を少なくすることができるので、偏摩耗を抑制して内筒側ストッパ40及び外筒側ストッパ50における耐久性を向上させることができる。
【0040】
さらに、内筒側ストッパ40を凹曲面とし、外筒側ストッパ50の内筒側ストッパ40に対面する部分を凸曲面状とすることで、上記間隔変化をさらに少なくすることができる。
また、外筒側ストッパ50の内方向先端を内筒側ストッパ40の凹部空間内へ入り込ませることにより、外筒側ストッパ50を内筒側ストッパ40へ可及的に接近させることができる。このため、外筒側ストッパ50と内筒側ストッパ40との間隔変化を可及的に少なくすることができるので、接触面積の変化が可及的に少なくなり、局部接触による偏摩耗が可及的に少なくなるので、耐久性がより向上する。
【0041】
なお、内筒側ストッパ40は必ずしも凹曲面状にする必要はなく、断面が略コ字状等をなす環状溝としてもよい。
また、上記略コ字状等断面の場合を含め、内筒側ストッパ40を環状に形成せず、外筒側ストッパ50に応じて、周方向へ部分的に設けてもよい。この場合、外筒側ストッパ50も環状でなく、例えば、180°間隔等、周方向へ部分的に設けられ、内筒側ストッパ40もこれに対応するように周方向へ部分的に設けられる。
さらに、外筒側ストッパ50の内周側最先端は、中立時で内筒側ストッパ40内へ入りこませてもよい。内筒側ストッパ40内へ入り込むほど、こじり入力時における支持面積の減少を抑制できる。なお、外筒側ストッパ50を内筒側ストッパ40内へ入り込ませない場合でも、中立時における外筒側ストッパ50の内周側最先端を内筒10の外周線G(図2)近傍にする。
また、内筒側ストッパ弾性体層38及び外筒側ストッパ弾性体層56は、いずれか一方又は双方を省略することもできる。さらに、液封形式でなく、液体を封入しない非液封式のブッシュでもよい。
【0042】
また、用途はサスペンションに限らず、他の各種用途が可能である。そのうえ、縦差し式に限らず、中心軸線L0を横に向けた横差し式としてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10:内筒、20:外筒、30:インシュレータ、38:内筒側ストッパ弾性体層、40:内筒側ストッパ、50:外筒側ストッパ、56:外筒側ストッパ弾性体層
図1
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図8