特許第6444110号(P6444110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444110
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】乾燥装置及び乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 17/20 20060101AFI20181217BHJP
   F26B 3/20 20060101ALI20181217BHJP
   F26B 23/10 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   F26B17/20 B
   F26B3/20
   F26B23/10 Z
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-193912(P2014-193912)
(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2016-65658(P2016-65658A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514149820
【氏名又は名称】鹿島環境エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】間宮 尚
(72)【発明者】
【氏名】鬼木 剛一
(72)【発明者】
【氏名】西村 正夫
(72)【発明者】
【氏名】高塚 義則
(72)【発明者】
【氏名】小澤 一喜
(72)【発明者】
【氏名】土井 潤一
(72)【発明者】
【氏名】志水 俊也
【審査官】 黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−103861(JP,A)
【文献】 特開昭54−139259(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3166876(JP,U)
【文献】 特開2009−144946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 1/00−25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を収容する蒸発器、及び、前記蒸発器に収容され前記蒸発器の内壁に当接しながら略水平方向の軸線回りに周回する撹拌羽根を有する横置き型の乾燥器本体と、
前記蒸発器から移送された水蒸気を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された前記水蒸気を通流させ前記蒸発器と熱交換する凝縮器と、を備え、
前記凝縮器は、前記蒸発器に収容され少なくとも前記撹拌羽根の周回軌道面上に設けられると共に前記軸線回りに周回する第1の凝縮器、及び、前記蒸発器の外部且つ少なくとも鉛直方向下側から前記蒸発器と熱交換する第2の凝縮器を有し、
前記撹拌羽根と前記第1の凝縮器とは、周方向に関して互いに異なる位置に設けられており、
前記第1の凝縮器及び前記第2の凝縮器は、前記圧縮機から移送された前記水蒸気が順に又は並行して通流されるように結合されており、
前記第1の凝縮器は、前記蒸発器内の下部を周回するときに前記内壁との間に前記被処理物由来の固形物を挟んで前記固形物を変形させることができる押圧部を有しており、
前記第1の凝縮器及び前記第2の凝縮器の伝熱面の合計と前記圧縮機の電動機出力との比が、1.2m/kW以上である、乾燥装置。
【請求項2】
前記押圧部の周回半径は、前記軸線から鉛直方向下向きに前記蒸発器の内壁に下ろした垂線の長さの0.55倍〜0.99倍である、請求項1記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記乾燥器本体は、前記撹拌羽根を前記撹拌羽根の周回方向に複数有し、
前記凝縮器は、前記第1の凝縮器を前記第1の凝縮器の周回方向に複数有する、請求項1又は2記載の乾燥装置。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項記載の乾燥装置を用いる乾燥方法であって、
前記被処理物を前記蒸発器に収容する収容工程と、
前記収容工程の後に前記圧縮機を駆動し前記蒸発器内の水蒸気を前記凝縮器に移送する移送工程と、
前記収容工程の後に前記撹拌羽根及び前記第1の凝縮器を前記軸線回りに周回させる撹拌工程と、を有する、乾燥方法。
【請求項5】
前記被処理物は、排水、浸出水、濁水、泥水及び随伴水から選ばれる少なくとも一種であり、
前記収容工程において収容する前記被処理物の量は、前記乾燥器本体を横置きしたときの前記軸線に直交する断面において、前記軸線の位置と前記被処理物の水平となった液面の両端点とを結んでできる、前記軸線回りの鉛直方向下側の角度が、90度〜180度となる量とする、請求項記載の乾燥方法。
【請求項6】
被処理物を収容する蒸発器、及び、前記蒸発器に収容され前記蒸発器の内壁に当接しながら略水平方向の軸線回りに周回する撹拌羽根を有する横置き型の乾燥器本体と、
前記蒸発器から移送された水蒸気を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された前記水蒸気を通流させ前記蒸発器と熱交換する凝縮器と、を備え、
前記凝縮器は、前記蒸発器に収容され少なくとも前記撹拌羽根の周回軌道面上に設けられると共に前記軸線回りに周回する第1の凝縮器、及び、前記蒸発器の外部且つ少なくとも鉛直方向下側から前記蒸発器と熱交換する第2の凝縮器を有し、
前記撹拌羽根と前記第1の凝縮器とは、周方向に関して互いに異なる位置に設けられており、
前記第1の凝縮器及び前記第2の凝縮器は、前記圧縮機から移送された前記水蒸気が順に又は並行して通流されるように結合されており、
前記第1の凝縮器は、前記蒸発器内の下部を周回するときに前記内壁との間に前記被処理物由来の固形物を挟んで前記固形物を変形させることができる押圧部を有しており、
前記第1の凝縮器に水蒸気を供給する外部熱源を更に備え、
前記圧縮機は、前記圧縮機で圧縮された前記水蒸気が前記第1の凝縮器に移送されるように前記第1の凝縮器と連結されており、
前記第2の凝縮器には、前記第1の凝縮器から通流された水蒸気中の不凝縮性ガスを排気する排気手段が設けられている、乾燥装置。
【請求項7】
前記押圧部の周回半径は、前記軸線から鉛直方向下向きに前記蒸発器の内壁に下ろした垂線の長さの0.55倍〜0.99倍である、請求項6記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記乾燥器本体は、前記撹拌羽根を前記撹拌羽根の周回方向に複数有し、
前記凝縮器は、前記第1の凝縮器を前記第1の凝縮器の周回方向に複数有する、請求項6又は7記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記第1の凝縮器及び前記第2の凝縮器の伝熱面の合計と前記圧縮機の電動機出力との比が、1.2m/kW以上である、請求項6〜8のいずれか一項記載の乾燥装置。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項記載の乾燥装置を用いる乾燥方法であって、
前記被処理物を前記蒸発器に収容する収容工程と、
前記収容工程の後に前記圧縮機を駆動し前記蒸発器内の水蒸気を前記凝縮器に移送する移送工程と、
前記収容工程の後に前記撹拌羽根及び前記第1の凝縮器を前記軸線回りに周回させる撹拌工程と、を有する、乾燥方法。
【請求項11】
前記被処理物は、排水、浸出水、濁水、泥水及び随伴水から選ばれる少なくとも一種であり、
前記収容工程において収容する前記被処理物の量は、前記乾燥器本体を横置きしたときの前記軸線に直交する断面において、前記軸線の位置と前記被処理物の水平となった液面の両端点とを結んでできる、前記軸線回りの鉛直方向下側の角度が、90度〜180度となる量とする、請求項10記載の乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置及び乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水を多く含む被処理物を濃縮し、更には乾燥する技術が知られている。例えば、特許文献1には、VCC(Vapor Compression and Condensation)技術を用いることにより、蒸発潜熱の高い水を効率的に蒸発させて被処理物を濃縮及び乾燥させることが開示されている。ここで「VCC技術」とは、被処理物の濃縮又は乾燥により生じた水蒸気を回収して加圧し、これを被処理物と熱交換して凝縮させることにより、その凝縮熱に相当する熱を被処理物の更なる濃縮及び乾燥に利用する技術をいう。
【0003】
特許文献1に開示された装置は、乾燥容器内及び乾燥容器外に凝縮器が設けられ、加圧した水蒸気をこれらに通流させる構成とされている。乾燥容器内に設けられた凝縮器は、水平方向の軸線回りに周回することによって、被処理物を撹拌する役割を兼ねている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5071975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記装置では、濃縮及び乾燥が進むにつれて固形化してきた被処理物が乾燥容器内に設けられた凝縮器の伝熱面に付着すると、被処理物が当該凝縮器に随伴して移動するようになる。すると、実質的に撹拌されているとはいえない状態となるうえ、付着した固形物により伝熱が阻害されてしまう。また、当該伝熱面から乾燥した固形物が剥離したときに、被処理物の撹拌が滞っていると、未乾燥の被処理物が当該伝熱面に接触することが遅れ、乾燥に要する時間が長くなってしまう。
【0006】
そこで本発明は、被処理物が固形化してきたときにも効率よく撹拌を行うことができ、且つ、伝熱面への被処理物の接触が効率的に生じる乾燥装置、及び乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被処理物を収容する蒸発器、及び、蒸発器に収容され蒸発器の内壁に当接しながら略水平方向の軸線回りに周回する撹拌羽根を有する横置き型の乾燥器本体と、蒸発器から移送された水蒸気を圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された水蒸気を通流させ蒸発器と熱交換する凝縮器と、を備え、凝縮器は、蒸発器に収容され少なくとも撹拌羽根の周回軌道面上に設けられると共に軸線回りに周回する第1の凝縮器、及び、蒸発器の外部且つ少なくとも鉛直方向下側から蒸発器と熱交換する第2の凝縮器を有し、第1の凝縮器及び第2の凝縮器は、圧縮機から移送された水蒸気が順に又は並行して通流されるように結合されており、第1の凝縮器は、蒸発器内の下部を周回するときに内壁との間に被処理物由来の固形物を挟んで固形物を変形させることができる押圧部を有している乾燥装置を提供する。
【0008】
この乾燥装置はVCC技術を利用したものであり、蒸発器に収容した被処理物から水を蒸発させてこれを圧縮機で加圧し、加圧した水蒸気を蒸発器と熱交換する第1の凝縮器及び第2の凝縮器に順に又は並行して通流させながら凝縮させることにより、その凝縮熱に相当する熱を被処理物の更なる濃縮及び乾燥に利用するものである。ここで、第1の凝縮器は蒸発器の内部から、第2の凝縮器は蒸発器の外部且つ少なくとも鉛直方向下側からそれぞれ熱交換する。
【0009】
この乾燥装置では、被処理物が蒸発器の内壁に当接しながら周回する撹拌羽根によって撹拌され、更に被処理物の投入高さを超える高さにまで掻き上げられて落下する。また、濃縮及び乾燥が進んで被処理物が固形化してきたときには、当該撹拌羽根は、固形化した被処理物が蒸発器の内壁に付着したままにならないように掻き落とす。撹拌羽根によるこうした作用によって被処理物は混合され、均質化される。ここで、蒸発器の内部に収容された第1の凝縮器は、撹拌羽根の周回軌道面上に設けられており、撹拌羽根と軸線を共通して周回するため、撹拌羽根によって掻き落とされた被処理物が第1の凝縮器に接触しやすい。しかも、第1の凝縮器は、蒸発器内の下部を周回するときに当該内壁との間に固形化した被処理物を挟んで当該被処理物を変形させることができる押圧部を有している。このため、当該被処理物が当該押圧部と蒸発器の下部の内壁との間において押圧される恰好となり、乾燥効果が高まる。加えて、蒸発器内の下部は、第2の凝縮器と熱交換される部分でもあるため、当該押圧による乾燥効果が一層高い。こうした撹拌羽根による被処理物の撹拌混合と第1の凝縮器の押圧部による被処理物の押圧とによって、第1の凝縮器及び第2の凝縮器の伝熱面に接触する被処理物が次々と更新されることになる。従って、この乾燥装置によれば、被処理物が固形化してきたときにも効率よく撹拌を行うことができ、且つ、伝熱面への被処理物の接触が効率的に生じる。
【0010】
ここで、押圧部の周回半径は、軸線から鉛直方向下向きに蒸発器の内壁に下ろした垂線の長さの0.55倍〜0.99倍であることが好ましい。これによれば、固形化した被処理物が押圧部によって蒸発器の下部の内壁に押圧される効率が高くなる。
【0011】
また、乾燥器本体は、撹拌羽根を撹拌羽根の周回方向に複数有し、凝縮器は、第1の凝縮器を第1の凝縮器の周回方向に複数有していることが好ましい。これによれば、撹拌羽根による被処理物の撹拌混合と第1の凝縮器の押圧部による被処理物の押圧とを一層効率的に行うことができる。
【0012】
また、第1の凝縮器及び第2の凝縮器の伝熱面の合計と圧縮機の電動機出力との比が、1.2m/kW以上であることが好ましい。一般に、凝縮器に通流させる水蒸気の温度が高く、凝縮器と蒸発器との温度差が大きいほうが乾燥速度は速くなるが、投入する電力量が増加するため、エネルギー効率が悪くなり必ずしも好ましいことではない。ゆえに、乾燥速度とエネルギー効率との兼ね合いから、凝縮器と蒸発器との温度差を適切な温度差に制御することが求められる。そして、当該適切な温度差、及び現行の圧縮機の性能(電動機出力や耐熱性等)に鑑みると、被処理物の乾燥に十分な熱を伝熱するためには所定の伝熱面積が必要となることが分かる。こうした観点から、第1の凝縮器及び第2の凝縮器の伝熱面の合計が上記の値であることが好ましい。
【0013】
本発明の乾燥装置は、第1の凝縮器に水蒸気を供給する外部熱源を更に備え、圧縮機は、圧縮機で圧縮された水蒸気が第1の凝縮器に移送されるように第1の凝縮器と連結されており、第2の凝縮器には、第1の凝縮器から通流された水蒸気中の不凝縮性ガスを排気する排気手段が設けられていることが好ましい。熱を補う外部熱源から供給される水蒸気には一般に、水以外の不純物として不凝縮性ガス(例えば酸素、窒素)が含まれている。この不凝縮性ガスは、圧縮機から移送される水蒸気が蒸発器内で凝縮するのを阻害する。従って、排気手段によって不凝縮性ガスを排気することができると水蒸気の凝縮阻害を防止することができる。
【0014】
また、本発明は、上記乾燥装置を用いる乾燥方法であって、被処理物を蒸発器に収容する収容工程と、収容工程の後に圧縮機を駆動し蒸発器内の水蒸気を凝縮器に移送する移送工程と、収容工程の後に撹拌羽根及び第1の凝縮器を軸線回りに周回させる撹拌工程と、を有する乾燥方法を提供する。
【0015】
この乾燥方法によれば、上述した撹拌羽根と第2の凝縮器が有する押圧部との作用によって、被処理物が固形化してきたときにも効率よく撹拌を行うことができ、且つ、伝熱面への被処理物の接触が効率的に生じる。
【0016】
この乾燥方法においては、被処理物は、排水、浸出水、濁水、泥水及び随伴水から選ばれる少なくとも一種であり、収容工程において収容する被処理物の量は、乾燥器本体を横置きしたときの軸線に直交する断面において、軸線の位置と被処理物の水平となった液面の両端点とを結んでできる、軸線回りの鉛直方向下側の角度が、90度〜180度となる量とすることが好ましい。この量は、一度に処理する被処理物の量として適当であり、これによれば、エネルギー効率、及び、次の被処理物を処理するための段取り替えの頻度を適切なものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被処理物が固形化してきたときにも効率よく撹拌を行うことができ、且つ、伝熱面への被処理物の接触が効率的に生じる乾燥装置、及び乾燥方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の乾燥装置の概要を示す概略構成図である。
図2】撹拌羽根及び伝熱管を含む回転体を示す斜視図である。
図3】回転体の縦断面図である。
図4】乾燥器本体の横断面図であり、図3のIV-IV断面に対応する図である。
図5】使用中の乾燥器本体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
まず、乾燥装置の概要を説明する。図1は、本実施形態の乾燥装置の概要を示す概略構成図、図2は、回転体の斜視図、図3は、回転体の縦断面図、図4は、乾燥器本体の横断面図である。
【0021】
乾燥装置1は、回転体5が収容された横置き型の乾燥器本体2と、乾燥器本体2の内部から水蒸気が移送され、この水蒸気を圧縮する圧縮機3と、圧縮機3で圧縮された水蒸気を通流させ乾燥器本体2と熱交換する凝縮器4とを備えている。凝縮器4は、後述する伝熱管(第1の凝縮器;図4参照)4Aと、ジャケット(第2の凝縮器)4Bとを有している。
【0022】
乾燥器本体2は、乾燥処理時に被処理物を収容する円筒状の蒸発器21を有し、蒸発器21の内部に回転体5が収容されている。蒸発器21の大きさは電動機出力が7.5kWの場合、内径が80cm〜120cm、長手方向の長さが2m〜5m程度であるが、被処理物の性状や設計の都合により適宜変更することができる。
【0023】
蒸発器21の下部には、断面三日月状の中空のジャケット(第2の凝縮器;図4参照)4Bが、蒸発器21の長手方向に亘って鉛直方向下側から、蒸発器21の下部の曲面に倣うように当接されている。当接されている部分の範囲としては、蒸発器21の長手方向からみて蒸発器21の外表面のうち90度以上の角度に相当する範囲を占めていることが好ましい。なお、蒸発器21の外表面のうち、ジャケット4Bが当接していない部分は断熱材で覆われていることが好ましい。
【0024】
横置きしたときの蒸発器21の上面には水蒸気を取り出すための取出し口22が設けられており、取出し口22から配管L1が接続されて延び、圧縮機3に接続されている。
【0025】
ここで、圧縮機3は水蒸気圧縮機であることが好ましいが、空気圧縮機を転用したものであってもよい。圧縮機3の電動機出力としては5.5kW〜10kW(典型的には5.5kW又は7.5kW)が好ましいが、10kW以上でも問題ない。また、圧縮機3は水蒸気の圧縮比が2以上であることが好ましい。
【0026】
圧縮機3の出口からは配管L2が接続されて延び、回転体5の両端に位置する中空回転軸51A,51Bのうちの一方側(51A)に連通して接続されている。中空回転軸51A,51Bの他方側(51B)からは、配管L3が連通して接続されて延び、ジャケット4Bの他方側の端部に接続されている。これにより、伝熱管4Aとジャケット4Bとが互いに連結されている。
【0027】
そして、ジャケット4Bの一方側の端部付近の下部には凝縮水及び水蒸気を外部に取り出すための取出し口41が設けられており、取出し口41には凝縮水及び水蒸気を回収するための配管L4が接続されている。また、ジャケット4Bの一方側の上部には、水蒸気中の不凝縮性ガスを排気するためのエアベント(排気手段)42が設けられている。エアベント42は、圧縮機3の電動機出力2kWにつき一つの割合で複数設けることが好ましい。
【0028】
次に、図2〜4を参照しながら回転体5の構成について説明する。回転体5は、伝熱管4A及び撹拌羽根23等が支持部材によって互いに支持ないし連結された構造物であり、回転体5の両端に位置する中空回転軸51A,51Bがそれぞれ架台8(図2参照)に載せられ、略水平方向を向いた中空回転軸51A,51Bの軸線回りに回転可能とされている。当該回転は、スイベル構造によって任意の周方向へ連続回転させることが可能とされている。
【0029】
中空回転軸51A,51Bは、回転体5の軸線方向に所定の厚さを有する横断面視略八角形の中空板52A,52Bの中心にそれぞれ接続され、中空回転軸51A,51Bと中空板52A,52Bは、それぞれ内部が連通されている。中空板52A,52Bが有する軸線方向に垂直な面のうち中空回転軸51A,51Bが接続していない側の面(軸線方向で回転体5の内側を向く面)の中心には中実回転軸51Cが接続され、中空板52A,52B同士が結合されている。そして、中空板52A,52B間の空間には、五枚の略八角形の仕切り板53が、軸線方向視で中空板52A,52Bと同形となるように、且つ、中実回転軸51Cによって貫通されるように、等間隔に並べられ、六つの仕切り部屋54が構成されている。
【0030】
中空板52Aの略八角形のうちの一つ飛びの四辺の側面からは、対向する他方の中空板52Bの対応する側面に向って、支持板55Aが、五枚の仕切り板53間をそれぞれ互いに架け渡すようにして設けられている。
【0031】
各仕切り部屋54に架け渡された四辺の支持板55Aのうち、対向する二辺については、その支持板55Aよりも中実回転軸51Cに近い側に、更にもう一枚の支持板55Bが平行に設けられている。これらの支持板55A,55B間には、補強板56が軸線方向に所定の間隔で二枚渡されており、これにより軸線方向に三つの小部屋が形成されている。当該三つの小部屋のうち両側の小部屋には、それぞれ軸線方向に垂直な方向且つ中実回転軸51Cを中心とする径方向に軸棒57が挿通されている。そして、支持板55Aから外方側に突き出た軸棒57の端部には、平板状の撹拌羽根23が取り付けられている。撹拌羽根23は、図2に示されたとおり、軸線方向に対して所定の角度で傾けられている。この傾き角度は軸線方向に対して5度〜45度であることが好ましい。
【0032】
軸棒57及び撹拌羽根23は、当該対向する二辺の支持板55Aのいずれにも取り付けられている。すなわち、回転体5は、その回転方向に撹拌羽根23を複数有している。
【0033】
各軸棒57にはバネが内蔵されており、撹拌羽根23は当該バネによって外方側へ付勢され、蒸発器21の内壁21Aに当接されている(図3及び図4参照)。
【0034】
撹拌羽根23は、蒸発器21及び撹拌羽根23を軸線の側面側から射影した場合に、蒸発器21の内壁21Aの軸線方向の全ての部分に亘って撹拌羽根23が当接する箇所が存在するように、且つ、六つの仕切り部屋54のそれぞれに架け渡された四箇所の支持板55Aのうち、いずれかの対向する二箇所について取り付けられている。具体的には、隣り合う仕切り部屋54,54同士では、撹拌羽根23の取り付け位置が90度異なる位置関係になるように、そして、一つの仕切り部屋54を挟んだ仕切り部屋54,54同士では撹拌羽根23の取り付け位置が同じ位置関係になるように、対向する二辺が選ばれて互い違いに取り付けられている。例えば、図3における図示右から一番目及び三番目の仕切り部屋54,54に対応する撹拌羽根23は図示上側及び下側に取り付けられているが、これらに隣り合う図示右から二番目の仕切り部屋54に対応する撹拌羽根23は、図示手前側及び奥側に取り付けられているため、図3では見えていない(図2も参照)。
【0035】
なお、図3では仕切り板53や支持板55A,55B等を一体成形したように描かれている部分があるが、これらの構造物は互いに溶接したものでもよく、複数種の部材を互いにボルト締め等で結合したものであってもよい。
【0036】
回転体5は、図2に示されたとおり、軸線方向に延びる伝熱管4Aを有している。伝熱管4Aは、中空板52A,52Bが有する軸線方向に垂直な面のうち中実回転軸51Cが接続されている面において中空板52A,52Bの中空部に連通するように接続されており、五枚の仕切り板53をいずれも貫通して延び、中空板52A,52Bの中空部分同士を連通している。
【0037】
図2及び図4に示されたとおり、伝熱管4Aは、仕切り板53の略八角形のうち、撹拌羽根23が設けられた辺の隣の辺に沿って8本が並設され、この8本に沿うように、略八角形の内側となる位置に更に7本が並設され、計15本で一つの伝熱管群Hを構成するように仕切り板53を貫通している。こうした伝熱管群Hは、仕切り板53の略八角形の一つおきの辺に沿って同様に仕切り板53を貫通している。すなわち、回転体5は、伝熱管4Aを回転方向に複数有し、且つ、伝熱管群Hを回転方向に複数有している。
【0038】
上記構成を有する回転体5において、撹拌羽根23と伝熱管4Aはいずれも、中空回転軸51A,51Bがその軸線を中心として回転することに合わせて、同軸線回りを周回する。ここで、撹拌羽根23と伝熱管4Aとの位置関係としては、伝熱管4Aは、軸線回りの撹拌羽根23の周回軌道面上に少なくとも存在していることになる。
【0039】
ここで、後述する被処理物の乾燥方法において、伝熱管4Aはいずれも、回転体5の回転により蒸発器21内の下部を周回するときに、内壁21Aとの間に被処理物由来の固形物を挟んで固形物を変形させることができる押圧部43として機能する。本実施形態では、全ての伝熱管4Aが押圧部43として機能することができる。押圧部43の周回半径は、軸線から鉛直方向下向きに蒸発器21の内壁21Aに下ろした垂線の0.55倍〜0.99倍であることが好ましく、0.65倍〜0.99倍であることがより好ましく、0.70倍〜0.99倍であることがさらに好ましい。
【0040】
蒸発器21と熱交換する伝熱管4A及びジャケット4Bの伝熱面の合計と圧縮機3の電動機出力との比は、1.2m/kW以上であることが好ましく、1.4m/kW以上であることがより好ましく、1.6m/kW以上であることが更に好ましい。その内訳としては、伝熱管4Aの伝熱面の合計が0.8m/kW以上であることが好ましく、1.0m/kW以上であることがより好ましい。また、ジャケット4Bの伝熱面が0.25m/kW以上であることが好ましく、0.5m/kW以上であることがより好ましい。
【0041】
一般に、凝縮器(伝熱管4A及びジャケット4B)に通流させる水蒸気の温度が高く、凝縮器と蒸発器21との温度差が大きいほうが乾燥速度は速くなるが、投入する電力量が増加するため、エネルギー効率が悪くなり必ずしも好ましいことではない。ゆえに、乾燥速度とエネルギー効率との兼ね合いから、凝縮器4と蒸発器21との温度差を適切な温度差(例えば16℃)に制御することが求められる。そして、当該適切な温度差、及び用いる圧縮機3の性能(電動機出力や耐熱性等)に鑑みると、被処理物の乾燥に十分な熱を伝熱するためには所定の伝熱面積が必要となることが分かる。こうした観点から、伝熱管4A及びジャケット4Bの伝熱面の合計が上記の値であることが好ましい。
【0042】
本実施形態の乾燥装置1は、図1に示されたとおり、配管L5を通じて伝熱管4Aに水蒸気を供給する外部熱源7を更に備えている。外部熱源7としては、ボイラが好ましい。
【0043】
次に、図1及び図5を参照しながら上記乾燥装置1を用いた乾燥方法について説明する。ここでは、被処理物としては、廃棄処理すべき被処理水を例にする。このような被処理水としては、例えば、産業用施設から排出される排水、最終処分場などの処分場から出る浸出水、建設現場で生じる濁水や泥水、及び石油やガスの採掘で随伴する随伴水が挙げられる。
【0044】
まず、蒸発器21の投入口(図示せず)から被処理物Wを蒸発器21に収容する(収容工程)。ここで被処理物Wの投入量としては、図5に示されたとおり、乾燥器本体2を横置きしたときに、中実回転軸51Cの高さを超えないことが好ましく、より具体的には、軸線に直交する断面において、軸線Cと被処理物Wの水平となった液面の両端点とを結んでできる、軸線回りの鉛直方向下側の角度αが、90度〜180度となる量とすることが好ましい。この量は、一度に処理する被処理物Wの量として適当であり、これによれば、エネルギー効率、及び、次の被処理物を処理するための段取り替えの頻度を適切なものとすることができる。
【0045】
あるいは、投入する被処理物Wの量としては、伝熱管4Aの伝熱面の総面積の4分の1以上が被処理物Wに浸かる量としてもよい。例えば図5においては、軸線Cの周方向四等配の位置に設けられている四つの伝熱管群Hのうち、少なくとも一つの伝熱管群H(すなわち伝熱管4Aの伝熱面の総面積の4分の1)が必ず被処理物Wに浸かる量となっている。これによれば、伝熱面を効率的に利用することができる。
【0046】
被処理物Wを収容した後、乾燥器本体2を横置きして、圧縮機3を駆動する。圧縮機3を駆動すると、蒸発器21内が減圧されていき、初めは蒸発器21内の空気が、続いて被処理物Wから蒸発した水蒸気が圧縮機3に移送されてゆく。圧縮機3に移送された水蒸気は圧縮機3により圧縮され、圧力及び温度が高められる。圧縮機3により昇圧・昇温された水蒸気は、回転体5の一方側の中空回転軸51A(図1参照)に移送される(移送工程)。
【0047】
圧縮機3の駆動に合わせて、図示しない回転駆動装置を駆動して回転体5を軸線回りに回転させることにより、撹拌羽根23及び伝熱管4Aを軸線回りに周回させる(撹拌工程)。このとき撹拌羽根23は、軸棒57に内蔵されたバネの付勢力により蒸発器21の内壁21Aに当接しながら周回する。ここで、回転体5の回転速度は、被処理物Wに浸かった伝熱管4Aの表面が回転中に乾く速さと撹拌のバランスで適宜調整する。
【0048】
中空回転軸51Aに移送された水蒸気は中空板52Aの内部に案内され、続いて、中空板52Aの内部から連通した複数の伝熱管4Aに分配される(移送工程)。分配された水蒸気は各伝熱管4Aを通流し、蒸発器21の内部と熱交換しながら一部が凝縮して凝縮水となる(通流工程)。水蒸気は他方側の中空板52Bの内部に到達して合流し、中空回転軸51Bの内部を通って、中空回転軸51Bに接続された配管L3に入る。
【0049】
なお、上記回転体5内に通流させる水蒸気として、必要に応じて外部熱源7から配管L5を通じて水蒸気を供給してもよい。
【0050】
回転体5から排出された水蒸気は、配管L3を通じてジャケット4Bに導入される。ジャケット4Bの内部では、水蒸気は蒸発器21と熱交換しながら一部が凝縮して凝縮水となる(通流工程)。ここで、外部熱源7から水蒸気を供給した場合は、手動又は自動でエアベント42を開いて、水蒸気中に混入している不凝縮性ガスを排気することが望ましい。
【0051】
ジャケット4B内の通流を終えて残存した水蒸気及び凝縮水は、取出し口41から配管L4を通じて回収される。
【0052】
以下、本実施形態の乾燥装置1及び乾燥方法の作用及び効果について説明する。上述した乾燥装置1及び乾燥方法は、VCC技術を利用したものであり、蒸発器21に収容した被処理物Wから水を蒸発させてこれを圧縮機3で加圧し、加圧した水蒸気を蒸発器21と熱交換する伝熱管4A及びジャケット4Bに順に又は並行して通流させながら凝縮させることにより、その凝縮熱に相当する熱を被処理物Wの更なる濃縮及び乾燥に利用する。ここで、伝熱管4Aは蒸発器21の内部から、ジャケット4Bは蒸発器の外部且つ鉛直方向下側からそれぞれ熱交換する。
【0053】
この乾燥装置1では、被処理物Wが蒸発器21の内壁21Aに当接しながら周回する撹拌羽根23によって撹拌され、更に被処理物Wの投入高さを超える高さにまで掻き上げられて落下する。また、濃縮及び乾燥が進んで被処理物Wが固形化してきたときには、撹拌羽根23は、固形化した被処理物Wが蒸発器21の内壁21Aに付着したままにならないように掻き落とす。撹拌羽根23によるこうした作用によって被処理物Wは混合され、均質化される。
【0054】
ここで、伝熱管4Aは撹拌羽根23の周回軌道面上に設けられており、撹拌羽根23と軸線Cを共通して周回するため、撹拌羽根23によって掻き落とされた被処理物Wが伝熱管4Aに接触しやすい。しかも、伝熱管4Aは、蒸発器21内の下部を周回するときに蒸発器21の内壁21Aとの間に固形化した被処理物Wを挟んで当該被処理物Wを変形させる(例えば、内壁21Aと押圧部43とにより生じる剪断応力による)ことができる押圧部43を有している。このため、被処理物Wが当該押圧部43と蒸発器21の下部の内壁21Aとの間において押圧される恰好となり、乾燥効果が高まる。
【0055】
加えて、蒸発器21内の下部は、ジャケット4Bと熱交換される部分でもあるため、当該押圧による乾燥効果が一層高い。こうした撹拌羽根23による被処理物Wの撹拌混合と伝熱管4Aの押圧部43による被処理物Wの押圧とによって、伝熱管4A及びジャケット4Bの伝熱面に接触する被処理物Wが次々と更新されることになる。従って、この乾燥装置1によれば、被処理物Wが固形化してきたときにも効率よく撹拌を行うことができ、且つ、伝熱面への被処理物Wの接触が効率的に生じる。
【0056】
また、本実施形態では押圧部43の周回半径が、軸線から鉛直方向下向きに蒸発器21の内壁21Aに下ろした垂線の長さの0.55倍〜0.99倍の範囲内にあるため、固形化した被処理物Wが押圧部43によって蒸発器21の下部の内壁21Aに押圧される効率が高くなっている。
【0057】
また、乾燥器本体2は、撹拌羽根23を撹拌羽根23の周回方向に複数有しており、凝縮器4としては、伝熱管4Aを伝熱管4Aの周回方向に複数有している。これにより、撹拌羽根23による被処理物Wの撹拌混合と伝熱管4Aの押圧部43による被処理物Wの押圧とを一層効率的に行うことができる。
【0058】
また、熱を補う外部熱源7から供給される水蒸気には一般に、水以外の不純物として不凝縮性ガス(例えば酸素、窒素)が含まれており、この不凝縮性ガスは、圧縮機3から移送される水蒸気が蒸発器21内で凝縮するのを阻害する。従って、外部熱源7から水蒸気を供給した場合には、ジャケット4Bに設けられたエアベント42によって不凝縮性ガスを排気することにより、水蒸気の凝縮阻害を防止することができる。
【0059】
また、乾燥が進むと蒸発器21内の蒸気量が少なくなるところ、特許文献1に開示された装置では、被処理物から蒸発した水蒸気が蒸発器の内壁で凝縮することがみられて乾燥が遅れる場合があったが、本実施形態の乾燥装置1では蒸発器21の内壁21Aに固形物が固着しないこと、蒸発器21と接しているジャケット4Bとの熱交換面積が大きいこと、それ以外の蒸発器21の内壁21Aの裏面には断熱が施されており、かつ、内壁21Aの表面が周回する伝熱管4Aと近いために内壁21Aの表面温度が高く維持されるため、被乾燥物から蒸発した水蒸気が蒸発器21内で凝縮しにくいという利点がある。
【0060】
また、従来の乾燥装置を用いた濃縮及び乾燥では、蒸発器の内壁を所定の頻度で清掃する必要があるために連続運転する時間が限られていたが、本実施形態の乾燥装置1では、撹拌羽根23が内壁21Aに当接しながら周回することで内壁21Aの清掃を兼ねているため、より長時間の連続運転(例えば24時間連続運転)が可能である。半バッチ式で乾燥装置1を運転し、固形物が蒸発器21内に所定量以上溜まった時点で清掃すればよい。
【0061】
本実施形態の乾燥装置1を用いた乾燥方法によれば、被処理物Wの含水率を10%以下にすることができる。
【0062】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【0063】
例えば、上記実施形態における伝熱管4Aの配置に関し、伝熱管群Hにおいて回転体5の径方向外側に並設された8本の伝熱管4Aのうち、両端の伝熱管4Aと蒸発器21の内壁21Aとの距離(「a」とする。)と、中央の伝熱管4Aと蒸発器21の内壁21Aとの距離(「b」とする。)とを互いに違えて、「a<b」となるように配置することができる。この場合、伝熱管群Hに被処理物Wの固形物が詰まりにくくなる。また、伝熱管群Hに対してその周方向の直前及び直後に位置するように、鉤形状の掻き上げ機構を回転体5に取り付けてもよい。これによれば、伝熱管群Hに被処理物Wの固形物が詰まることが一層防止される。
【0064】
また、上記実施形態では蒸発器21が円筒状である場合を示したが、他の形状であってもよい。この場合において、蒸発器の内壁の形状次第では、撹拌羽根が当該内壁に当接しない領域を含んでいてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、撹拌羽根23が周方向二等配、伝熱管群Hが周方向四等配の位置に設けられる態様を示したが、これらは他の態様であってもよい。例えば、回転体5の構造の安定性の観点からは、撹拌羽根23が周方向三等配の位置に設けられることが好ましい。
【0066】
また、上記実施形態では伝熱管4Aと撹拌羽根23とが別体として設けられている態様を示したが、互いに干渉しない範囲内で、これらが一体化した態様とすることもできる。また、回転体5の軸線視形状は略八角形に限らず、他の形状、例えば円形、星形等であってもよい。
【0067】
また、上記実施形態では回転体5が一つである態様を示したが、複数の回転体5を有する構成としてもよい。このとき、装置の設計上、複数の軸線は互いに平行であることが好ましく、撹拌羽根23が蒸発器の内壁に当接するように蒸発器の横断面形状を設計する。
【0068】
また、上記実施形態では仕切り板53や支持板55A等によって回転体5の骨格が構成されており、且つ、第1の凝縮器が軸線から離間した位置であって回転体5の一部を構成する伝熱管である態様を示したが、これに代えて、第1の凝縮器自体が回転体の主要部であり第1の凝縮器内に軸線が含まれるように構成してもよい。この場合、第1の凝縮器の構造の全体ではなく一部が押圧部として機能することになる。また、この場合において、第1の凝縮器からなる回転体は、軸線視形状が円筒形、星形等、水蒸気が通流することができる中空形状であればよい。
【0069】
また、上記実施形態では、ジャケット4Bが蒸発器21の下部の曲面に倣うように当接する態様を示したが、ジャケット4Bが蒸発器21の周方向全面を覆う態様としてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、伝熱管4A及びジャケット4Bが、圧縮機3から移送された水蒸気が順に(直列に)流通されるように互いに連結されている例を示したが、伝熱管4A及びジャケット4Bは、水蒸気が並行して(並列に)通流されるように、例えば配管L2を分岐させてこれらを結合させてもよい。
【0071】
また、乾燥装置1は、蒸発器21内の固形物を自動排出する自動排出機構を備えていてもよい。この場合、蒸発器21の内壁21Aを清掃する頻度が一層小さくなり、より長時間の連続運転が可能となる。
【0072】
以上に示した他の実施態様は、適宜組み合わせて本発明の実施形態を構成することができる。
【符号の説明】
【0073】
1…乾燥装置、2…乾燥器本体、3…圧縮機、4…凝縮器、4A…伝熱管(第1の凝縮器)、4B…ジャケット(第2の凝縮器)、7…外部熱源、21…蒸発器、21A…内壁、23…撹拌羽根、42…エアベント(排気手段)、43…押圧部、C…軸線、W…被処理物、α…角度。
図1
図2
図3
図4
図5