【実施例1】
【0015】
図1は、画像形成装置100の断面図である。
図1に示されるように、画像形成装置100は、装置本体Aと、装置本体Aに装着されるカートリッジBと、を備える。装置本体Aのシートカセット131から搬送ローラ(不図示)によって紙等のシートPを搬送し、このシート搬送と同期して、感光体ドラム1を帯電手段である帯電ローラ2によって帯電した後、露光装置3から選択的な露光をして静電像を形成する。
【0016】
磁性一成分現像剤T(以後トナーと称す)は収容室4から回転部材5の撹拌シート51aによって、現像室6に供給され、内部に搬送部材であるマグネットローラ7を配置した中空の現像スリーブ8(以下現像スリーブと呼ぶ)表面に担持される。更に現像ブレード9により現像スリーブ8の表面に所望の量を薄層担持される。尚、感光体ドラム1は転写終了後、弾性を有するクリーニングブレード10によってクリーニングされる。
【0017】
次に、現像スリーブ8に現像バイアスを印加する事によって、静電像に応じて現像剤を供給し感光体ドラム1上に現像剤像を現像する。この像を転写ローラ11へのバイアス電圧印加によって同期されたシートSに転写する。シートSは定着装置12へ搬送され画像定着し、排出ローラ(不図示)によって装置上部の排出部132に排出される。
【0018】
回転部材5は、収容室4内の長手方向に回転可能に配置された回転軸52に、可撓性を持つ撹拌シート51aの一端を貼付した構成となる。回転部材5は印刷動作に伴って、動作する。その作用として、撹拌シート51aの回転によって、収容室4から現像室6へ適量のトナーを搬送することと、収容室4の内のトナーかさ密度の安定化が挙げられる。
【0019】
トナーのかさ密度に関しては、しばらく画像形成装置を使わない状態(例えば、電源OFF後数時間経過した後)であると、トナーが沈降し、適正な循環や静電容量の検知結果が得られなくなることがある。撹拌シート51aの材質として例えば、数百μm程度の厚みのポリエチレンテレフタレート(PET)等の可撓性を有する材料を用いている。また、ポリカーボネイト(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の可撓性を有する材料を用いても良い。
【0020】
図2(a)は、封止シート51bの開封前の収容室4の断面図である。カートリッジBが新品のときには、カートリッジBは、現像剤を収容する収容室4と現像室6とは封止シート51bによって分離されている。こうすることで、新品時においては、カートリッジBの内部のパーツがトナーの付着の無い清浄な状態に保ち、輸送時のトナー漏れを防止する。
【0021】
図2(b)は、封止シート51bを開封した後のカートリッジBの断面図である。収容室4の内部には、『シート部材』としての撹拌シート51aと封止シート51bが配置される。すなわち、回転部材5は、回転軸52と、回転軸52に取付けられる『撹拌部材』としての撹拌シート51a(シート)と、『封止部材』としての封止シート51b(シート)と、を有する。撹拌シート51aは、現像剤を撹拌するためのシートである。封止シート51bは、撹拌シート51aよりも剛性が小さい部材であり、収容室4の開口20aから現像剤が漏出しないように封止する。
【0022】
カートリッジBが使用開始されるときには、回転軸52が回転されて、封止シート51bが剥離方向Lに回転しながら回転軸52に巻き取られて開封される。封止シート51bが取り除かれて、収容室4の内部のトナーが現像室6に搬送される。封止シート51bは、開口20aが開封された後は、撹拌シート51aと共に回転して、撹拌シート51aを補助するように収容室4の内部の現像剤を撹拌する。
【0023】
本実施例では、安価な構成とするために、回転軸52が撹拌シート51aを回転させる機能を有すると共に封止シート51bを巻き取る機能を有する。こうすることで、封止シート51bを巻き取る巻取り軸を別途設ける必要がないようになっている。新品の状態では、撹拌シート51aと封止シート51bの位相は、60°ズレるように設定されている。
【0024】
これは、
図2(a)にて、回転軸52の表面の取付面に沿ってぴんと張られた撹拌シート51aと回転軸52の表面の取付面に沿ってぴんと張られた封止シート51bとで形成される角度が60°の関係になることに起因する(
図2(c)参照)。回転軸52が六角形であることに起因する。なお、回転軸52は必ずしも六角形に限定されなくても良い。封止シート51bも、撹拌シート51aと同様に、可撓性を有する部材で形成されて回転軸52に一端部が貼付されている。
【0025】
封止シート51bの材質として例えば、数十μm程度の厚みのポリエチレンテレフタレート(PET)等の可撓性を有する材料を用いている。また、ポリカーボネイト(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の可撓性を有する材料を用いても良い。封止シート51bは、撹拌シート51aに比べ薄い材質を用いることで、低コスト化を図ることができる。
【0026】
図2(b)の状態で、カートリッジBの内部の現像剤量(現像剤残量)を検知する構成に関して説明する。収容室4の天井には電極41が取付けられ、収容室4の床面には電極42が取付けられる。これらの電極41と電極42とは、静電容量を検知するために用いられる。電極41、42は、プレート状の板金で形成され、2枚の面が対向するように配置され、カートリッジBの長手方向に延びる。
【0027】
電極41と電極42との間の静電容量Cは、電極41、42の面積A、電極41と電極42との間の距離d、電極41と電極42との間の比誘電率Kεから、C=Kε×A/dと導出される。比誘電率Kεは、電極41と電極42との間のトナー量に応じて変化する値である。電極41と電極42との間のトナーの割合が、多いときにはKεは大きくなり、少ないときにはKεは小さくなることから、トナー量(トナー残量)と静電容量が関係付けられる。
【0028】
尚、長期不使用時のトナーのかさ密度を安定化させて静電容量を検出する観点で、撹拌シート51a、封止シート51bは、『第1の電極』としての第1電極41と『第2の電極』としての第2電極42との間の位置に配置される。
【0029】
図3は、カートリッジBが装置本体Aに装着されたときのトナー量の検知回路を示す構成図である。装置本体AとカートリッジBとの間には、電気接点(不図示)が設けられる。そして、カートリッジBが装置本体Aに装着された際に、前述の電気接点を通じて、カートリッジBの電極41、42(板金で形成される)が装置本体Aの内部の静電容量検出部15が電気的に接続される。『検出部』としての静電容量検出部15は、第1電極41と第2電極42との間の静電容量に関連する出力値を検出する。静電容量検出部15は、コントローラ50の基板の一部であって半導体であり、電極41と電極42との間に流れる電流を計測して電流と電圧により両極間の静電容量を検出する。
【0030】
電極41(第1電極)には電源14から直流と交流成分を重畳した現像剤量検知バイアスが印加される。その際に電極42(第2電極)に電荷が誘起され、静電容量検出部15に流れる電流を検知することによって電極41と電極42との間の静電容量を測定することができる。
【0031】
静電容量検出部15には、演算部16、制御部18、現像剤量表示装置19が順に接続される。また、静電容量検出部15には、メモリ17、現像剤量算出テーブル20が順に接続される。さらに、演算部16とメモリ17が接続され、制御部18がメモリ17と現像剤量算出テーブル20とを接続する線の間に接続される。メモリ17は、任意の現像剤量において、封止シート51bが劣化するに従って静電容量検出部15の出力値が低下する特徴を有する、封止シート51bの劣化度毎の静電容量の出力値と現像剤量との関係に関する情報を有する(詳しくは後述する)。演算部16は、メモリ17の情報と静電容量検出部15の出力値に基づいて、現像剤量を検出する。
【0032】
前述の演算部16では、静電容量検出部15で検出された印加電圧の実効値Ve、印加電流の実効値Ie、周波数fに基づいて、静電容量C=Ie/(2πfVe)を求める。この値を「静電容量検出値」と呼び、予測されるカートリッジBの内部のトナー量を算出すために利用する。なお、これ以後の説明にて、便宜上、前述した演算部16、メモリ17、現像剤量算出テーブル20、制御部18、を総称してコントローラ50という場合がある。
【0033】
(静電容量平均値の算出)
図4(d)は、静電容量検出中のカートリッジBの断面図である。
図4(e)は、
図4(d)のときの静電容量検出値を示すグラフである。
図4(e)に示すように静電容量検出値をみると、一定の周期で増減していることが分かる。これは、撹拌シート51aの動きに伴って電極41と電極42との間のトナーのかさ密度が、変化するためである。
【0034】
簡単のために、シートが一枚の系で説明する。
図4(a)(b)は、回転部材5の撹拌シート51aと封止シート51bとが一枚の系のカートリッジBの断面図である。
図4(a)のように、回転部材5がトナーを持ち上げ終えた状態では、静電容量に寄与する領域(斜線部)でのトナーのかさ密度は小さくなり、小さな静電容量を取る。
【0035】
一方で
図4(b)のように、回転部材5がトナーを持ち上げる途中の状態では、静電容量に寄与する領域(斜線部)外のトナーは沈降し、回転部材5によって静電容量に寄与する領域(斜線部)へ、トナーが押しこまれる。そのため、トナーのかさ密度は大きくなり、大きな静電容量を取る。以上のように撹拌周期で静電容量は変動する。
【0036】
シートが一枚の系では
図4(c)のように、撹拌シートの位相に対応したピークを持った静電容量検出値を取る。シートが二枚の系では
図4(e)のように、撹拌シート51aと封止シート51bのそれぞれのシートに対応したピークを持つ。
【0037】
図4(e)の静電容量検出値をそのまま採用すると撹拌周期のばらつきが計上されるため、更なる高精度化を行うために、本実施例では回転部材5の回転周期(3秒/1周)で得られた検出値に対して平均化処理を行う。つまり、静電容量検出値は、10msec毎にサンプリングを行い、それを3秒間繰り返す。そこで得られた300点の検出値を平均化することで平均値(以後、「静電容量平均値」と呼ぶ。)を得る。
【0038】
図5(a)は、静電容量平均値[pF]とトナー量[g]との関係を示すグラフである。ここでは、静電容量平均値といった出力平均値を用いて、トナー量と対応づけることで、安定した静電容量平均値とトナー量との対応を取ることができる。
【0039】
図5(b)は、静電容量検出値[pF]と時間[t]との関係を示すグラフである。回転部材5が回転する周期で静電容量検出値が変化している。この静電容量検出値が所定時間で変化する静電容量を検出して、それを平均化処理して、ここでは静電容量検出値として15pFを得た。また、このときのトナー量が50gであった。こうしたデータをプロットしたのが
図5(a)に相当する。
【0040】
制御部18は、
図5(a)のような静電容量平均値とトナー量との関係を示すテーブルに基づいて、トナー量を算出して、装置本体Aの現像剤量表示装置19に表示する。ここでは、以下に説明するように更に精細な制御を行う。
【0041】
次に封止シート51bの劣化に対する構成を説明する。近年、プリンターの長寿命化、高耐久化が求められてきているが、高温下で長期間連続でプリント動作をする等の過酷な使用環境下において印刷動作を行うことで、撹拌シート51aに比べて、薄膜化された封止シート51bが劣化することがあった。
【0042】
図6は、封止シート51bの劣化に伴うカートリッジBの変化を示す断面図である。
図6(a)は新品の状態であり、
図6(b)は少し劣化した状態であり、
図6(c)は劣化した状態である。
図6(d)は、
図6(a)〜(c)の状態と対応する静電容量平均値とトナー量との関係を示すグラフである。
図6(a)→
図6(b)→
図6(c)のように、封止シート51bは、劣化するに従って、ヤング率が低下すると共に回転軸52に巻きつくような塑性変形をする。
【0043】
このような場合、
図6(b)(c)のように、回転軸52の周囲を覆うように封止シート51bが変形する。封止シート51bが劣化するに従い、黒矢印部のようにトナーの往来が阻害されるようになり、網点部のように封止シート51bの内側にトナーが入りにくくなる。そうなると、その分、電極41と電極42との間のトナーかさ密度は低下する。その結果、
図6(d)のように、封止シート51bが劣化するに従い、実際のトナー量に比べ、静電容量が低く検出されるようになる。
【0044】
図7は、封止シート51bが新品、少し劣化、劣化の各々の場合の静電容量検出値と時間との関係を示すグラフである。前述の理由から、ここでは、静電容量検出値のプロファイルを解析することで、封止シート51bの劣化状態(へたり状態)を予測し、静電容量出力値とトナー量との対応を選択することを試みる。静電容量検出値のプロファイルは、封止シート51bの劣化に従い変化する。
【0045】
封止シート51bが新品のときには、撹拌シート51aと封止シート51bとは貼付位置の位相が異なり、撹拌シート51aがトナーを押し上げてから60°後に、封止シート51bがトナーを押し上げる。これを反映して、封止シート51bが新品のときの静電容量プロファイルは、0°に相当する位置と60°に相当する位置に、2つのピークを有する。ここで0°のピークが撹拌シート51aのピークに対応し、60°のピークが封止シート51bのピークに対応する。
【0046】
新品のときのグラフを分析する。時間T0(この時間を仮に0msecとする)が撹拌シート51aの回転による静電容量検出値のピークであり、時間T1(この時間を仮に500msecとする)が封止シート51bの回転による静電容量検出値のピークである。従って、新品のときの静電容量検出値の位相時間差は△T1(この時間が500msecとなる)となる。
【0047】
封止シート51bが少し劣化したときには、封止シート51bのピークに対応する60°のピークが90°の位置へシフトする。すなわち、封止シート51bのピーク時間は、新品のときにT1(この時間を仮に500msecとする)であったのが、少し劣化したときにT2(この時間を仮に750msecとする)になっている。これにより撹拌シート51aと封止シート51bの位相時間差は、△T1(この時間が500msecとなる)から△T2(この時間が750msecとなる)に変化する。この状態では、封止シート51bが丸まるため、
図6(b)の丸囲み部のように押し上げのピークになるポイントが変化し、新品時より遅れてトナーを押し上げる。
【0048】
封止シート51bが更に劣化したときには、封止シート51bのピークに対応する120°程度ずれた位置にシフトする。すなわち、封止シート51bのピーク時間は、新品のときにT1(この時間を仮に500msecとする)であったのが、劣化したときにT3(この時間を仮に1000msecとする)になっている。これにより撹拌シート51aと封止シート51bの位相時間差は、△T1(この時間が500msecとなる)から△T3(この時間が1000msecとなる)に変化する。以上のように封止シート51bの劣化と共に両方の極大値の位相時間差△Tは広がり、位相時間差△Tから劣化の状態を見積もることができる。
【0049】
なお、時間T0=0msecの場合に、時間T1=500msec、時間T2=750msec、時間T3=1000msecとする理由は、以下の計算による。すなわち、
図7の正弦波は、周期が3秒であり、換算すると3000msecとなる。そして、位相が60°ズレる場合には、3000msec×60°/360°=500msecとなる。位相が90°ズレる場合には、3000msec×90°/360°=750msecとなる。位相が120°ズレる場合には、3000msec×120°/360°=1000msecとなる。
【0050】
そして、△T1=T1−T0=500msec、△T2=T2−T0=750msec、△T3=T3−T0=1000msec、となる。
【0051】
シーケンスを始める準備として、
図6(d)に対応した出力平均値とトナー量の対応テーブルを表1として、複数用意する。また
図3の演算部16では静電容量検出値のプロファイルから、△Tを算出できるようにする。この△Tの値に対して閾値を設定する。
【0052】
本実施例の場合には、
図7のグラフ中で、封止シート51bが新品から少し劣化へと移行するときの閾値に関して、第1閾値t1=575msecとした。これは、時間T1と時間T2との間を取った数値である。また、
図7のグラフ中で、封止シート51bが少し劣化から劣化へと移行するときの閾値に関して、第2閾値t2=875msecとした。これは、時間T2と時間T3との間を取った数値である。
【0053】
封止シート51bの劣化度毎の静電容量の出力値と現像剤量との関係に関する情報は、現像剤量が同一の場合に、封止シート51bが劣化するに従って静電容量検出部15が検出する静電容量の出力値が低下する関係を示すプロファイル(表1)となる。そして、この情報の劣化度毎の個別情報(テーブル1〜3)は、時間に対する静電容量の出力値の大きさが異なる複数のグラフの各々(
図7参照の新品、少し劣化、劣化のグラフ)に関連付けられる。静電容量検出部15は、封止シート51bが回転軸52に巻き付くと出力値が変化することを検出する。
【0054】
封止シート51bの劣化度とは、封止シート51bが劣化している度合であり、撹拌シート51aと封止シート51bとの位相時間差△Tが大きくなるに従って大きくなる度合に相当する。前述してきたように、封止シート51bの劣化度は、封止シート51bが新品のとき(位相時間差△T1)<封止シート51bが少し劣化のとき(位相時間差△T2)<封止シート51bが劣化のとき(位相時間差△T3)ということができる。なお、位相時間とは、所定の位相のときの時間をいう。
【0055】
コントローラ50は、演算部16が演算するところの『複数のシート部材の各々』としての撹拌シート51aと封止シート51bとの回転周期を伴う波形の静電容量の出力値に関するデータ(出力値の極大値の位相時間差)に基づいて、以下のことをする。すなわち、コントローラ50(制御部18)は、そのような位相時間差に基づいて、そのグラフの位相時間差の1つ(△T1、△T2、△T3の中の1つ)に関連付けられた個別情報の1つ(テーブル1、テーブル2、テーブル3の中の1つ)を選択する。なお、ここでは、前述の『複数のシート部材』のいずれかである封止シート51bの劣化度を認識する。
【0056】
また、コントローラ50(制御部18)は、そのような位相時間差が大きい程に、その位相時間差の1つ(△T1、△T2、△T3の中の1つ)に関連付けられた静電容量の出力値に対する現像剤量が大きい個別情報(テーブル1、テーブル2、テーブル3の中の1つ)を選択する。表1を見てみると一目瞭然であるが、例えば、現像剤量が48gのときに、新品のテーブル1では15.01pF、少し劣化のテーブル2では13.83pF、劣化のテーブル3では12.92pFとなっている。このことから、静電容量平均値(静電容量の出力値)に対する現像剤量が大きくなるに従って、テーブル1→テーブル2→テーブル3を用いるということになる。
【0057】
また、コントローラ50(制御部18)は、静電容量の出力値の平均値を算出して、その出力値の平均値に基づいて、選択された個別情報の1つの出力値に対応する現像剤量を導出する。
【0058】
例えば、
図7にて、封止シート51bが新品のときには、静電容量の出力値の平均値は、15pFである。ここで、表1のテーブル1(新品時)を参照すると、静電容量の平均値が15.01pFのときの現像剤量の残量が48gとなっている。従って、収容室4の内部には、現像剤量が48g存在することが検知される。
【0059】
また、
図7にて、封止シート51bが少し劣化のときには、静電容量の出力値の平均値は、14.90pFである。ここで、表1のテーブル2(少し劣化時)を参照すると、静電容量の平均値が14.89pFのときの現像剤量の残量が60gとなっている。従って、収容室4の内部には、現像剤量が60g存在することが検知される。
【0060】
さらに、
図7にて、封止シート51bが劣化のときには、静電容量の出力値の平均値は、14.80pFである。ここで、表1のテーブル3(劣化時)を参照すると、静電容量の平均値が14.88pFのときの現像剤量の残量が80gとなっている。従って、収容室4の内部には、現像剤量が80g存在することが検知される。
【0061】
【表1】
【0062】
図8は、制御部18の制御工程を示すフローチャートである。制御部18は、電極42から電流値が静電容量検出部15に入力されて、演算部16がその電流値をアナログーデジタル変換して、静電容量検出値を測定して、静電容量検出値を平均化することで静電容量平均値を算出するように制御する(S11)。
【0063】
制御部18は、演算部16が静電容量検出値のプロファイルを解析して、静電容量検出値の位相時間差△Tを算出するように制御する(S12)。具体的には、静電容量検出値の300点からピークの位相を算出する。値毎の増減を比較し、傾きが−から+に切り替わる点をピーク位置(極大値)であるとする。以上のようにしてピークの位相を算出し、撹拌シート51aに対応する位相と封止シート51bに対応する位相時間差を△Tとして求める。
【0064】
外部要因で測定値がばらつく時には、区間毎に平均化処理をしてもよい。例えば、静電容量検出値を3000点等、細かく測定しそのうち、順に10点ずつを平均化処理し、平均化処理を行った区間毎の増減を分析してもよい。制御部18は、この△Tの値を予め設けておいた閾値と比較する。
【0065】
制御部18は、位相時間差△T<第1閾値t1(
図8中で閾値1と表示)か否かを判断する(S13)。制御部18は、S13の結果YESの場合には、予め設けておいたテーブル1を選択する(S14)。制御部18は、S13の結果NOの場合には、第1閾値t1≦位相時間差△T<第2閾値t2か否かを判断する(S15)。なお、第1閾値t1は、
図8中にて閾値1と表示して、第2閾値t2は、
図8中にて閾値2と表示している。
【0066】
制御部18は、S15の結果YESの場合には、予め設けておいたテーブル2を選択する(S16)。制御部18は、S15の結果NOの場合には、予め設けておいてテーブル3を選択する(S17)。 以上のようにして、制御部18は、選択すべきテーブルを決定する。
【0067】
制御部18は、選択されたテーブルから静電容量平均値と対応の取れるトナー量を算出し、現像剤量表示装置19に表示する(S18)。以上のようにすることで、封止シート51bの劣化に依らず高精度な現像剤量検知を実現できる。
【0068】
こうして、制御部18は、静電容量検出部15が検出する撹拌シート51aの波形の極大値と封止シート51bの波形の極大値との間の位相時間差が大きくなるに従って、この検出した静電容量に対する収容室4の内部の現像剤量を大きく見積もるように制御する。
【0069】
本実施例は、撹拌シート51aと封止シート51bの劣化速度が異なることを前提としている。原理的にはどちらのシートが早く劣化しても、このシーケンスは可能である。
【0070】
本実施例では、両シートの初期の位相差を60°としたが、この値に限る必要はない。初期の位相差が0°の場合は、同位相のため、静電容量検出値は1ピークになり、封止シート51bが劣化するに従いピークが分裂する。
【0071】
本実施例では極大値に着目したが、プロファイルの形状は使用するトナーの流動性、容器の形状等によって変化する。封止シート51bの劣化に対して、極小値の変化が顕著なプロファイルが得られた場合に極小値の△Tを利用することもできる。
【実施例2】
【0072】
図9は、実施例2に係る、封止シート51bが新品、少し劣化、劣化の各々の場合の静電容量検出値と時間との関係を示すグラフである。実施例2は、コントローラ50の演算部16が実施例1の構成とは別の静電容量検出値の解析をする。静電容量検出値のプロファイルの2つのピークとして、撹拌シート51aによる静電容量の極大値C1と封止シート51bによる静電容量の極大値C2とを計測して、静電容量の極大値の差=極大値C1−極大値C2とする。なお、
図9のグラフは、
図7のグラフの新品、少し劣化、劣化のグラフと同じである。
【0073】
封止シート51bが新品のときには、極大値差△C1の部分の静電容量の極大値C1(15.5pF)と静電容量の極大値C2(15.4pF)とを参照する。そうすると、極大値差△C1=C1−C2=0.1pFとなる。
【0074】
封止シート51bが少し劣化したときには、極大値差△C2の部分の静電容量の極大値C1(15.4pF)と静電容量の極大値C2(15.1pF)とを参照する。そうすると、極大値差△C2=C1−C2=0.3pFとなる。
【0075】
封止シート51bが劣化したときには、極大値差△C3の部分の静電容量の極大値C1(15.3pF)と静電容量の極大値C2(14.8pF)とを参照する。そうすると、極大値差△C3=C1−C2=0.5pFとなる。
【0076】
新品、少し劣化、劣化の各々を比較すると、劣化するに従って、極大値C1が低下するが、それ以上に極大値C2の低下が著しい。
【0077】
以上より△Cは劣化前と比べて大きくなる。封止シート51bが更に劣化した場合、同様の理由から△Cは更に大きくなる。以上から△Cを解析することで、封止シート51bの劣化状態を見積もることができる。以上を考慮し、
図6(d)に対応した出力平均値とトナー量の対応テーブルを複数用意する(表1)。
【0078】
封止シート51bの劣化度とは、封止シート51bが劣化している度合であり、撹拌シート51aと封止シート51bとの静電容量の極大値の極大値差△Cが大きくなるに従って大きくなる度合に相当する。前述してきたように、封止シート51bの劣化度は、封止シート51bが新品のとき(極大値差△C1)<封止シート51bが少し劣化のとき(極大値差△C2)<封止シート51bが劣化のとき(極大値差△C3)ということができる。
【0079】
コントローラ50は、演算部16が演算するところの『複数のシート部材の各々』としての撹拌シート51aと封止シート51bとの回転周期を伴う波形の静電容量の出力値に関するデータ(出力値の極大値の極大値差)に基づいて、以下のことをする。すなわち、コントローラ50(制御部18)は、そのような極大値差に基づいて、そのような極大値差の1つ(△C1、△C2、△C3の中の1つ)に関連付けられた個別情報の1つ(テーブル1、テーブル2、テーブル3の中の1つ)を選択する。
【0080】
また、コントローラ50(制御部18)は、そのような極大値差が大きい程に、その極大値差(△C1、△C2、△C3)に関連付けられた静電容量の出力値に対する現像剤量が大きい個別情報(テーブル1、テーブル2、テーブル3)を選択する。表1を見てみると一目瞭然であるが、例えば、現像剤量が48gのときに、新品のテーブル1では15.01pF、少し劣化のテーブル2では13.83pF、劣化のテーブル3では12.92pFとなっている。このことから、静電容量平均値(静電容量の出力値)に対する現像剤量が大きくなるに従って、テーブル1→テーブル2→テーブル3を用いるということになる。
【0081】
また、
図3の演算部16で、極大値差△Cを算出できるようにする。本実施例の場合には、
図9のグラフ中で、封止シート51bが新品から少し劣化へと移行するときの閾値に関して、第1閾値c1=0.16pFとした。これは、極大値差△C1と極大値差△C2との間を取った数値である。また、
図9のグラフ中で、封止シート51bが少し劣化から劣化へと移行するときの閾値に関して、第2閾値c2=0.34pFとした。これは、極大値差△C2と極大値差△C3との間を取った数値である。
【0082】
図9にて、封止シート51bが新品のときには、静電容量の平均値は15pFで、表1のテーブル1を参照して、収容室4の内部の現像剤量が48g存在することは、実施例1と同様である。
図9にて、封止シート51bが少し劣化のときには、静電容量の平均値は14.90pFで、表1のテーブル2を参照して、収容室4の内部の現像剤量が60g存在することは、実施例1と同様である。
図9にて、封止シート51bが劣化のときには、静電容量の平均値は14.80pFで、表1のテーブル3を参照して、収容室4の内部の現像剤量が80g存在することは、実施例1と同様である。
【0083】
図10は、制御部18の制御工程を示すフローチャートである。制御部18は、電極42から電流値が静電容量検出部15に入力されて、演算部16がその電流値をアナログーデジタル変換して、静電容量検出値を測定して、静電容量検出値を平均化することで静電容量平均値を算出する(S21)。
【0084】
制御部18は、演算部16が静電容量検出値のプロファイルを解析して、静電容量検出値の極大値差△Cを算出するように制御する(S22)。
【0085】
制御部18は、△C<第1閾値c1か否かを判断する(S23)。制御部18は、S23の結果YESの場合には、予め設けておいたテーブル1を選択する(S24)。制御部18は、S23の結果NOの場合には、第1閾値c1≦△C<第2閾値c2か否かを判断する(S25)。なお、
図10中では、第1閾値c1は閾値1と表示して、第2閾値c2は閾値2と表示している。
【0086】
制御部18は、S25の結果YESの場合には、予め設けておいたテーブル2を選択する(S26)。制御部18は、S25の結果NOの場合には、予め設けておいたテーブル3を選択する(S27)。以上のようにして、制御部18は選択すべきテーブルを決定する。
【0087】
制御部18は、選択されたテーブルから静電容量平均値と対応の取れるトナー量を算出し、現像剤量表示装置19によって表示し(S28)。以上のようにすることで、封止シート51bの劣化に依らず高精度な現像剤量検知を実現できる。
【0088】
このように、制御部18は、静電容量検出部15が検出する撹拌シート51aの波形の極大値と封止シート51bの波形の極大値との間の極大値差が大きくなるに従って、この検出した静電容量に対する収容室4の内部の現像剤量を大きく見積もるように制御する。
【0089】
本実施例では極大値に着目したが、プロファイルの形状はトナーの流動性、容器の形状等によって変化する。封止シート51bの劣化に対して、極小値の変化が顕著なプロファイルが得られた場合に極小値差△Cを利用することもできる。