(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<全体構成>
図1に、本実施形態に係る矢羽根接着装置10の平面図を例示する。矢羽根接着装置10は、接着ユニット12A,12B、センターテーブル14、タッチパネル16、及び制御部18を備える。矢羽根接着装置10は、例えば、カーボンシャフト、アルミシャフト、アルミカーボンシャフト等の、工業的に製造された中空シャフトに矢羽根を接着させる。
【0013】
矢羽根接着装置10は、2台の接着ユニット12A,12Bを備える。例えば、接着ユニット12A,12Bのうち一方で甲矢(はや)の製作が行われ、他方で乙矢(おとや)の製作が行われる。後述するように、接着ユニット12A,12Bでは、複数枚の矢羽根が一度にシャフトに接着される。
【0014】
矢羽根接着装置10は、作業者20を中心に、接着ユニット12A、センターテーブル14、及び接着ユニット12Bが扇状に配置されており、作業者20の移動負担を軽減させている。
【0015】
図2には、接着ユニット12Aの平面図が例示されている。シャフトは、作業者によって接着ユニット12Aのピン24にその底部を差し込まれる。これによりシャフトは鉛直方向に立てられた状態で仮固定される。さらに幅方向エアチャック26がシャフトを狭持(把持)することでシャフトが固定される。
【0016】
次にエアシリンダ28A,28B,28Cによってクランプ部材30A,30B,30Cがシャフトに向かって移動させられる。クランプ部材30A,30B,30Cの移動方向先端には矢羽根が保持されており、さらに矢羽根がシャフトと当接する当接面には接着剤が塗布されている。クランプ部材30A,30B,30Cの移動によって矢羽根がシャフトに当接させられ、その後所定時間、矢羽根はシャフトに押し付けられる。
【0017】
接着剤が乾燥するとクランプ部材30A,30B,30Cは矢羽根のクランプを解除する。さらにエアシリンダ28A,28B,28Cによってクランプ部材30A,30B,30Cはシャフトから離間させられる。その後、幅方向エアチャック26によるシャフトの固定が解除される。最後にシャフトは作業者によってピン24から抜き取られる。
【0018】
制御部18は、幅方向エアチャック26によるシャフトの保持/解除、クランプ部材30A,30B,30Cによる矢羽根の保持/解除、及びエアシリンダ28A,28B,28Cの推力を制御する。
【0019】
また、後述するように、制御部18は、エアシリンダ28A,28B,28Cを同期して進退させる。また、制御部18は、エアシリンダ28A,28B,28Cの推力制御に関して、クランプ部材30A,30B,30Cがシャフトに向かって移動する際の推力を相対的に低く設定するとともに、全てのクランプ部材30A,30B,30Cがシャフトに到達した後に、低く設定された推力を相対的に高い推力に切り換える。このようにすることで、エアシリンダ28A,28B,28Cの個体差等によって、各クランプ部材30A,30B,30Cのシャフトへの到着タイミングにずれが生じたとしても、シャフトの撓みが抑制された状態で、全てのクランプ部材30A,30B,30Cのシャフトへの到着を待つことが可能となる。
【0020】
<各構成の詳細>
図1に戻り、センターテーブル14は、接着ユニット12A及び12Bに挟まれた、略五角形状の板部材である。センターテーブル14は、タッチパネル16及び非常停止スイッチ31を備える。
【0021】
タッチパネル16は、矢羽根接着装置10の各種設定や操作指示を作業者20が入力するための入力手段である。タッチパネル16は、例えばセンターテーブル14の中央に配置される。タッチパネル16に入力された入力情報は、制御部18に送信される。
【0022】
非常停止スイッチ31は、保安上の観点から設けられ、当該スイッチを押すことで、接着ユニット12A,12Bの動作が強制的に停止させられる。非常停止スイッチ31は、センターテーブル14の最も作業者20寄りに配置される。
【0023】
接着ユニット12A,12Bは、ともにシャフトに矢羽根を接着させるためのユニットである。例えば、接着ユニット12A,12Bの各部材は、センターテーブルの中心軸を挟んで線対称となるように配置されている。
【0024】
このように、接着ユニット12A,12Bの構成は基本的に同一であることから、以下では接着ユニット12Aについて説明し、特に断りのない限り、当該説明は接着ユニット12Bにも該当するものとする。
【0025】
図2には、接着ユニット12Aの平面図が示され、
図3には、そのA−A断面図が示されている。なお、これらの図は、説明を容易にするため、一部の部材については図示を省略している。
【0026】
接着ユニット12Aは、ピン24、幅方向エアチャック26、エアシリンダ28A,28B,28C、クランプ部材30A,30B,30C、ファイバーセンサ32A,32B、及びレギュレータ34A,34B,34Cを備える。
【0027】
ピン24は、接着ユニット12Aのテーブル36上に配置された突起部材である。中空のシャフトS(
図3にて破線で示す)をこのピン24に差し込むことで、当該シャフトSが鉛直方向に直立した状態で支持される。ピン24は、その中心軸が、幅方向エアチャック26のクランプ中心と一致するように配置されていることが好適である。
【0028】
幅方向エアチャック26は、ピン24と協働してシャフトSを固定する。
図3を参照すれば明らかなように、ピン24はシャフトSの鉛直方向下側を支持し、幅方向エアチャック26はシャフトSの鉛直方向上側を支持する。
【0029】
幅方向エアチャック26は、
図2の紙面左右方向に往復移動するアーム38A,38Bを備える。幅方向エアチャック26に空気圧が加えられると、これに応じてアーム38A,38Bが移動させられる。アーム38A,38Bが閉じることで、シャフトSがこれらに狭持(把持)される。
【0030】
また、
図3に示すように、幅方向エアチャック26は、クランプ部材30Cとは鉛直方向に離間されて配置されており、両者の干渉が回避されている。すなわち、鉛直方向に延設された支持シャフト40A,40B及び支持シャフト40A,40Bに掛け渡された支持バー42によって、幅方向エアチャック26は鉛直方向上方に懸架され、この下をクランプ部材30Cが進退可能となるように配置されている。
【0031】
ファイバーセンサ32A,32Bは、シャフトSの有無を検知する。この検知結果に基づいて、幅方向エアチャック26の駆動が制御される。ファイバーセンサ32A,32Bは光電センサから構成され、例えば一方が投光器、他方が受光器から構成される。または、両者とも投受光器一体型のセンサであってもよい。
【0032】
ファイバーセンサ32A,32Bは、幅方向エアチャック26と同様に、支持シャフト40A,40B及び支持バー42によって、鉛直方向上方に懸架されている。また、ファイバーセンサ32A,32Bは、その光路がピン24の中心軸と交差するように配置されており、ピン24にシャフトSが仮固定される(差し込まれる)と、シャフトSの存在を検知する。ファイバーセンサ32A,32Bの検出信号は、制御部18に送信される。
【0033】
エアシリンダ28A,28B,28Cは、クランプ部材30A,30B,30CをシャフトSに対して進退可能に移動させる進退手段である。また、後述するように、シャフトSに到達したクランプ部材30A,30B,30Cのそれぞれに保持された矢羽根をシャフトSに押し付けて接着させる。
【0034】
エアシリンダ28A,28B,28Cは、例えば、ともに自身に設けられたステージ44を直動させるリニア駆動型のスライドシリンダから構成される。エアシリンダ28A,28B,28Cは、それぞれステージ44の移動軸がピン24の中心軸(つまりシャフトSの中心軸)と交差するように配置されている。
【0035】
また、エアシリンダ28A,28B,28Cは、それぞれのステージ44がシャフトSに対して等角度間隔となるように配置される。
図2に示す例では、いわゆる3枚羽根の弓矢を製造する構成となっており、エアシリンダ28A,28B,28Cは、120°間隔で配置される。
【0036】
なお、
図2に示す例では、エアシリンダ28A,28B,28Cを3台設けているが、この形態に限らない。つまり、本実施形態に係る矢羽根接着装置10では、弓矢に接着させる矢羽根の枚数に応じた台数のエアシリンダが配置される。
【0037】
エアシリンダ28A,28B,28Cは、例えば、InポートとOutポートの2種類の空気圧ポートを備える。Outポートはステージ44をピン24(シャフトS)側に近づける、進み側の空気圧を印加するためのポートであり、Inポートは、ステージ44をピン24(シャフトS)から離間させる、戻り側のポートである。
【0038】
レギュレータ34A,34B,34Cは、進退手段の一部として設けられる部材であって、エアシリンダ28A,28B,28CのOutポートに印加される空気圧(推進空気圧)を調整するための減圧弁である。レギュレータ34A,34B,34Cは、それぞれ、エアシリンダ28A,28B,28CのOutポートと図示しないコンプレッサ等の圧縮空気源とを結ぶエアホースに設けられる。レギュレータ34A,34B,34Cは、それぞれ設定圧を複数指定することが可能であり、例えば直動式またはパイロット式のレギュレータから構成される。
【0039】
なお、本実施形態に係る進退手段として、エアシリンダ28A,28B,28C及びレギュレータ34A,34B,34Cを挙げたが、この形態に限らない。要するに、シャフトSに近づく際の推力を可変にできる進退手段であればよく、例えば単軸ロボット等を用いてもよい。
【0040】
クランプ部材30A,30B,30Cは、矢羽根を保持(把持)する保持手段である。クランプ部材30A,30B,30Cは、それぞれ、エアシリンダ28A,28B,28Cのステージ44に固定され、ステージ44とともに移動させられる。
【0041】
クランプ部材30A,30B,30Cは、それぞれ、固定プレート46、フラッププレート48、ピンシリンダ50、及びスプリング52を備える。
【0042】
固定プレート46は、ステージ44に固定された板部材であり、ピン24の中心軸(つまりシャフトSの中心軸)に向かって延設されている。フラッププレート48は、固定プレート46に対して回動可能な板部材であり、ピンシリンダ50に空気圧が印加されると固定プレート46に当接し、ピンシリンダ50への空気圧が解除されるとスプリング52により固定プレート46から離間するように構成されている。後述するように、固定プレート46とフラッププレート48との間に矢羽根が狭持(把持)される。
【0043】
制御部18(
図1参照)は、コンピュータから構成されてよく、例えばシーケンサ(プログラマブルロジックコントローラ、PLC)から構成される。制御部18の記憶部には、後述する接着プロセスを実行するためのプログラムが記憶されている。
【0044】
また制御部18は、幅方向エアチャック26と圧縮空気源とを繋ぐエアホースに設けられた、図示しないバルブの開閉を介して、幅方向エアチャック26の動作(アーム38A,38Bの移動)を制御する。また、制御部18は、ピンシリンダ50と圧縮空気源とを繋ぐエアホースに設けられた、図示しないバルブの開閉を介して、ピンシリンダ50の動作(開閉)を制御する。
【0045】
さらに、制御部18は、エアシリンダ28A,28B,28Cの各Inポートと圧縮空気源とを繋ぐエアホースに設けられた、図示しないバルブの開閉を介して、エアシリンダ28A,28B,28Cのステージ44の後退移動時(シャフトSから離間するとき)の推力を制御する。また、制御部18は、エアシリンダ28A,28B,28Cの各Outポートと圧縮空気源とを繋ぐエアホースに設けられたレギュレータ34A,34B,34Cの設定圧力を変更させることで、エアシリンダ28A,28B,28Cのステージ44の前進移動時(シャフトSに近づくとき)の推力を制御する。
【0046】
また、制御部18は、エアシリンダ28A,28B,28Cの進退動作を同期させる。具体的には、それぞれのInポートに接続されたバルブの開閉やOutポートに接続されたレギュレータの設定圧力の変更を同時に実行する。
【0047】
さらに、制御部18は、各種センサやボタンからの入力を受信する。具体的には、制御部18は、タッチパネル16からの入力情報を受信する。また、制御部18は、非常停止スイッチ31が押し下げ(オン)られたときの非常停止信号を受信する。また、制御部18は、操作スイッチ53がオンにされたときのオン信号や、プロセス開始ボタン54A,54Bが押し下げ(オン)られたときの開始信号を受信する。さらに、制御部18は、ファイバーセンサ32A,32Bからの検出信号を受信する。
【0048】
<矢羽根の接着プロセス>
次に、本実施形態に係る矢羽根接着装置を用いた、矢羽根接着プロセスについて説明する。まず、作業者20により、シャフトSがピン24に差し込まれる。このとき、ファイバーセンサ32A,32Bがピン24に差し込まれたシャフトSを検知して検知信号を制御部18に送信する。これを受けて制御部18は、幅方向エアチャック26に空気圧を印加させてアーム38A,38Bを閉じさせる。これによりシャフトSが鉛直直立状態で固定される。
【0049】
次に、
図4に示すように、クランプ部材30A,30B,30Cにそれぞれ矢羽根56A,56B,56Cを保持(把持)させる。矢羽根56A,56B,56Cは、いずれも羽軸58のシャフト当接面に接着剤60が塗布されている。
【0050】
矢羽根56A,56B,56Cは、いずれも、羽根部分をクランプ部材30A,30B,30Cに狭持(把持)される。作業者20が矢羽根56Aの羽根部分をクランプ部材30Aのフラッププレート48と固定プレート46との間に配置した後に、操作スイッチ53をオンにすることで、クランプ部材30Aのピンシリンダ50に空気圧が印加され、フラッププレート48が固定プレート46に当接する。これにより矢羽根56Aがフラッププレート48と固定プレート46とに狭持(把持)される。以下同様にして矢羽根56B,56Cをそれぞれクランプ部材30B,30Cに狭持(把持)させる。
【0051】
次に、作業者20が開始ボタン54A,54B(
図2参照)を押すと、
図5に示すように、エアシリンダ28A,28B,28Cの各ステージ44がシャフトSに向かって前進する。このとき、制御部18は、レギュレータ34A,34B,34Cの設定圧を、相対的に低圧(Lo)に設定し、ステージ44の推力を相対的に低く設定する。
【0052】
レギュレータ34A,34B,34Cの設定圧は、エアシリンダ28A,28B,28CにシャフトSが押し付けられてもシャフトSが撓まないか、撓んだとしてもシャフトSに接着される矢羽根56A,56B,56Cの配置角度間隔が、予め定めた公差内に収まる程度の撓み量となるように設定される。
【0053】
上述したように、エアシリンダ28A,28B,28Cには個体差があり、同期制御を行っても、各ステージ44を同時にシャフトSに到着させることは技術的に困難あるいは不経済である(コスト高になる)。そこで、本実施形態に係る矢羽根接着装置10では、全てのクランプ部材30A,30B,30CがシャフトSに到着するまでの推力を相対的に低く設定し、先に到着したクランプ部材の押し付けによるシャフトSの撓みを抑制している。
【0054】
クランプ部材30A,30B,30CがシャフトSに到達したか否かは、図示しないオートスイッチ等により検知することができる。制御部18は、クランプ部材30A,30B,30CのシャフトSへの到着を順次検知するとともに、最後のクランプ部材のシャフトSへの到着を検知した後に、エアシリンダ28A,28B,28Cの推力を増加させる。
【0055】
ここで、シャフトSへの当接時の振動等が収まる時間を考慮して、クランプ部材30A,30B,30Cの全てがシャフトSに到達した時点から所定の待機時間後に、推力の切り換え(Lo→Hi)を行うようにしてもよい。この待機時間は、例えば1秒以上3秒以下の範囲で定められる。
【0056】
クランプ部材30A,30B,30Cの全てがシャフトSに到達した後、矢羽根56A,56B,56CをシャフトSに押し付けるために、制御部18は、
図6に示すように、レギュレータ34A,34B,34Cの設定圧を相対的に高い(Hi)圧力に切り換える。
【0057】
このように、本実施形態に係る矢羽根接着装置10では、エアシリンダ28A,28B,28Cのステージ移動速度の個体差に鑑み、全てのクランプ部材30A,30B,30CがシャフトSに到達するまでエアシリンダ28A,28B,28Cの推力を低く抑えている。このようにすることで、全てのクランプ部材30A,30B,30Cは、撓みが抑制されたシャフトSに当接可能となり、その結果、シャフトSに対して矢羽根56A,56B,56Cを等角度間隔に配置することが可能となる。
【0058】
レギュレータ34A,34B,34Cの設定圧が相対的に高い(Hi)圧力に設定される時間は、矢羽根56A,56B,56Cのそれぞれに塗布された接着剤60が乾燥する時間に基づいて定められる。この時間が経過すると、制御部18は、エアシリンダ28A,28B,28CのInポート及びOutポートへの空気圧の印加を一旦停止する。
【0059】
さらに作業者20により操作スイッチ53がオフにされると、
図7に示すように、ピンシリンダ50への空気圧の印加が遮断される。これにより矢羽根56A,56B,56Cはクランプ部材30A,30B,30Cから解放される。その後、制御部18は、エアシリンダ28A,28B,28CのInポートに空気圧を印加させてエアシリンダ28A,28B,28Cのそれぞれのステージ44(及びクランプ部材30A,30B,30C)を退避(後退)させる。
【0060】
クランプ部材30A,30B,30Cの退避を、図示しないオートスイッチ等で検知すると、制御部18は、幅方向エアチャック26(
図2参照)に対して、アーム38A,38Bを解放させるように空気圧を印加する。最後に作業者20がピン24からシャフトSを引き抜く。これにより、矢羽根56A,56B,56Cが等角度間隔に接着されたシャフトSが得られる。