(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下部炉心構造物にて原子炉容器の底部に設置される底板と、炉心槽の下側に設置される下部連接板と前記底板との間に設けられる複数のショックアブソーバと、を組み立てる下部炉心構造物の組立方法において、
各前記ショックアブソーバの前記下部連接板への取り付け位置が模擬された模擬連接板に各前記ショックアブソーバの上端を仮組みする仮組工程と、
前記模擬連接板に仮組みされた各前記ショックアブソーバの相互位置を拘束治具により拘束する拘束工程と、
前記模擬連接板に仮組みされて前記拘束治具により拘束された各前記ショックアブソーバの下端を前記底板に溶接して取り付ける溶接工程と、
を含むことを特徴とする下部炉心構造物の組立方法。
前記溶接工程において、前記底板を有底の容器をなす固定治具の内部に配置して固定し、前記固定治具の容器に水を張った状態で各前記ショックアブソーバの下端を前記底板に溶接して取り付けることを特徴とする請求項1に記載の下部炉心構造物の組立方法。
前記模擬連接板は、吊具が設けられ、当該吊具を介して、各前記ショックアブソーバを吊り下げ可能に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の下部炉心構造物の組立方法。
溶接後の各前記ショックアブソーバおよび前記底板を、前記模擬連接板および前記拘束治具が取り付けられた状態で輸送する輸送工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の下部炉心構造物の組立方法。
前記模擬連接板および前記拘束治具が取り付けられた状態から、前記模擬連接板を取り外し、前記炉心槽に取り付けられた前記下部連接板に対して各前記ショックアブソーバを取り付けた後、前記拘束治具を取り外す取付工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の下部炉心構造物の組立方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した加圧水型原子炉は、十分な安全性や信頼性を確保するために各種の構造物などを定期的に検査し、必要に応じて必要箇所を補修したり、炉内構造物を取り替えたりする。炉内構造物を取り替える場合、原子炉容器に合わせた寸法に組み立てる必要がある。また、炉内構造物を取り替える場合、炉内構造物を組み立てる作業に時間を要することは原子炉を停止して発電をしない期間が長いため好ましくない。特に、下部炉心構造物は、原子炉容器の底に設置される底板を有し、この底板と下部連接板との間に取り付けられるショックアブソーバを有しており、ショックアブソーバの取り付けに高い精度が要求される。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、下部炉心構造物を容易かつ正確に組み立てることのできる炉内構造物の組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の炉内構造物の組立方法は、下部炉心構造物にて原子炉容器の底部に設置される底板と、炉心槽の下側に設置される下部連接板と前記底板との間に設けられる複数のショックアブソーバと、を組み立てる下部炉心構造物の組立方法において、各前記ショックアブソーバの前記下部連接板への取り付け位置が模擬された模擬連接板に各前記ショックアブソーバの上端を仮組みする仮組工程と、前記模擬連接板に仮組みされた各前記ショックアブソーバの相互位置を拘束治具により拘束する拘束工程と、前記模擬連接板に仮組みされて前記拘束治具により拘束された各前記ショックアブソーバの下端を前記底板に溶接して取り付ける溶接工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
この炉内構造物の組立方法によれば、各ショックアブソーバの下部連接板への取り付け位置が模擬された模擬連接板に各ショックアブソーバの上端を仮組みし、模擬連接板に仮組みされた各ショックアブソーバの相互位置を拘束治具により拘束することで、溶接工程において、溶接による底板の歪みで各ショックアブソーバの位置が変化する事態を防ぐ。この結果、下部炉心構造物を容易かつ正確に組み立てることができる。
【0009】
また、本発明の炉内構造物の組立方法では、前記溶接工程において、前記底板を有底の容器をなす固定治具の内部に配置して固定し、前記固定治具の容器に水を張った状態で各前記ショックアブソーバの下端を前記底板に溶接して取り付けることを特徴とする。
【0010】
この炉内構造物の組立方法によれば、底板を固定しつつ水に浸しながら溶接工程を行うことで、溶接による底板の歪みをさらに抑制する。この結果、下部炉心構造物を容易かつ正確に組み立てる効果を顕著に得ることができる。
【0011】
また、本発明の炉内構造物の組立方法では、前記模擬連接板は、吊具が設けられ、当該吊具を介して、各前記ショックアブソーバを吊り下げ可能に設けられていることを特徴とする。
【0012】
この炉内構造物の組立方法によれば、模擬連接板を介して各ショックアブソーバを吊り下げることができる。この結果、ハンドリング性が向上し、下部炉心構造物を容易に組み立てることができる。
【0013】
また、本発明の炉内構造物の組立方法では、溶接後の各前記ショックアブソーバおよび前記底板を、前記模擬連接板および前記拘束治具が取り付けられた状態で輸送する輸送工程をさらに含むことを特徴とする。
【0014】
この炉内構造物の組立方法によれば、模擬連接板および拘束治具が取り付けられた状態で輸送することで、輸送時の振動や衝撃により各ショックアブソーバの位置が変化する事態を防ぐ。この結果、下部炉心構造物を正確に組み立てることができる。
【0015】
また、本発明の炉内構造物の組立方法では、前記模擬連接板および前記拘束治具が取り付けられた状態から、前記模擬連接板を取り外し、前記炉心槽に取り付けられた前記下部連接板に対して各前記ショックアブソーバを取り付けた後、前記拘束治具を取り外す取付工程をさらに含むことを特徴とする。
【0016】
この炉内構造物の組立方法によれば、各ショックアブソーバを下部連接板に対して取り付け終わるまで拘束治具により各ショックアブソーバの相互位置を拘束することで、各ショックアブソーバの位置が変化する事態を防ぐ。この結果、下部炉心構造物を容易かつ正確に組み立てることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、下部炉心構造物を容易かつ正確に組み立てることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0020】
原子力発電プラントは、図示しないが、原子炉格納容器内に配置される原子炉および蒸気発生器と、蒸気タービン発電設備とを有している。本実施形態の原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。
【0021】
原子炉は、燃料の核分裂により一次冷却水を加熱し、蒸気発生器は、この高温高圧の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換し、高圧の蒸気を生成する。蒸気タービン発電設備は、この蒸気により蒸気タービンを駆動することで発電を行う。一方、蒸気タービンを駆動した蒸気は、復水器で冷却されて復水となり、蒸気発生器に戻される。
【0022】
図1は、加圧水型原子炉の縦断面図である。上述した原子力発電プラントの加圧水型原子炉において、
図1に示すように、原子炉容器101は、圧力容器であって、その内部に燃料集合体120を含む炉内構造物が収容できるように、原子炉容器本体101aに対して原子炉容器蓋101bが複数のスタッドボルト121およびナット122により固定されている。原子炉容器本体101aは、原子炉容器蓋101bを取り外すことで上部が開口可能であり、下部が半球形状をなす下鏡101eにより閉塞された円筒形状をなす。
【0023】
炉内構造物について、原子炉容器本体101aの入口側管台101cおよび出口側管台101dより上方に上部炉心支持板123が配置され、下方の下鏡101eの近傍に下部炉心支持板124が配置される。上部炉心支持板123および下部炉心支持板124は、円板形状で図示しない多数の連通孔が形成されている。そして、上部炉心支持板123は、複数の炉心支持ロッド125を介して下方に上部炉心板126が連結されている。上部炉心板126は、図示しない多数の連通孔が形成されている。なお、上部炉心支持板123、および上部炉心支持板123に対して炉心支持ロッド125を介して上部炉心板126が連結された構造物を上部炉心構造物という。
【0024】
また、炉内構造物について、原子炉容器本体101aの内部に、その内壁面と所定の隙間をおいて円筒形状の炉心槽127が配置される。炉心槽127は、下端に下部炉心支持板124が固定される。また、炉心槽127は、その内部下方に下部炉心板128が設けられる。下部炉心板128は、円板形状で図示しない多数の連通孔が形成されており、複数の下部炉心支持柱129を介して下部炉心支持板124に支持される。なお、炉心槽127、および炉心槽127に対して設けられる下部炉心板128、並びに下部炉心支持板124を下部炉心構造物という。そして、この下部炉心構造物の炉心槽127は、上方から上部炉心構造物が挿入され、上端に上部炉心板126が連結される。下部炉心構造物の下部炉心支持板124は、原子炉容器本体101aに固定される。即ち、下部炉心構造物および上部炉心構造物は、下部炉心支持板124を介して原子炉容器本体101aに支持されることとなる。
【0025】
また、炉内構造物について、上部炉心板126と炉心槽127と下部炉心板128とにより炉心130が形成される。炉心130は、多数の燃料集合体120が炉心槽127の内部に配置され、かつ下部炉心板128上に装荷される。また、炉心130は、内部に多数の制御棒135が配置される。この多数の制御棒135は、上端部がまとめられて制御棒クラスタ136となり、燃料集合体120内に挿入可能に設けられる。上部炉心支持板123は、多数の制御棒クラスタ案内管137が貫通して固定される。
【0026】
原子炉容器101を構成する原子炉容器蓋101bには、磁気式ジャッキの制御棒駆動装置138が設けられる。制御棒駆動装置138は、原子炉容器蓋101bと一体をなすハウジング139内に収容される。そして、制御棒駆動装置138から下方に延出された制御棒クラスタ駆動軸140が、制御棒クラスタ案内管137内を通って燃料集合体120まで延出され、制御棒クラスタ136を把持可能に設けられる。
【0027】
また、原子炉容器101は、上述した構成により、炉心130に対して、炉心槽127の内部であって、上部炉心板126の上方域に出口側管台101dに連通する上部プレナム142が形成される一方、炉心槽127の外部であって、下部炉心支持板124の下方域に下部プレナム143が形成される。そして、原子炉容器101の内壁と炉心槽127との間に入口側管台101cおよび下部プレナム143に連通するダウンカマー部144が形成される。
【0028】
なお、原子炉容器本体101aは、下鏡101eを貫通する多数の計装管台145が設けられる。各計装管台145は、炉内側の上端部に、下部炉心構造物を構成する炉内計装案内管146が連結される一方、炉外側の下端部にコンジットチューブ147が連結される。各炉内計装案内管146は、上端部が下部炉心支持板124に連結される。そして、中性子束を計測可能な中性子束検出器(図示せず)が装着されたシンブルチューブ148が、コンジットチューブ147から計装管台145および炉内計装案内管146を通り、下部炉心板128を貫通して燃料集合体120まで挿入可能となる。また、各炉内計装案内管146は、振動を抑制するため上下に配置される下部連接板150,151が取り付けられる。下部連接板150,151は、下部炉心構造物を構成するもので、支持柱152を介して下部炉心支持板124に連結される。また、下部連接板150,151は、ショックアブソーバ153により支持される。ショックアブソーバ153は、下鏡101eの最も底に固定される底板154と下側の下部連接板151との間に配置される。
【0029】
ここで、ショックアブソーバ153および底板154の詳細について説明する。
【0030】
図2は、下部炉心構造物におけるショックアブソーバの側面図である。
図3は、下部炉心構造物における底板の平面図である。
図4は、下部炉心構造物における底板の側面図である。
【0031】
ショックアブソーバ153は、下部炉心構造物を構成するもので、下部炉心構造物を原子炉容器101の内部に配置した状態で、上からの衝撃を吸収する。ショックアブソーバ153は、下側の下部連接板151と底板154との間に複数本(例えば、4本)配置される。このショックアブソーバ153は、
図2に示すように、上下方向に延在する円柱形状のショックアブソーバ本体153Aを有している。ショックアブソーバ本体153Aは、下側が太径の基部153Aaで構成され、上側が細径の括部153Abで構成されている。また、ショックアブソーバ153は、括部153Abの上端に、下部連接板151に対して取り付けられるフランジ部153Bが設けられている。フランジ部153Bは、その上端面の周縁に沿って取り付け用のネジ穴153Baが複数(例えば、4つ)形成されている。また、フランジ部153Bは、その上端面の中央部に突起部153Bbが形成されている。また、ショックアブソーバ153は、基部153Aaの下端面の中央に突起部153Cが形成されている。
【0032】
底板154は、ショックアブソーバ153の下端が溶接により取り付けられる。底板154は、
図3に示すように、矩形状を基に角部が面取して形成されている。また、底板154は、
図4に示すように、原子炉容器101の下鏡101eの形状に沿うように底面が湾曲形成されている。また、底板154は、
図3および
図4に示すように、複数の受穴154Aが形成されている。受穴154Aは、ショックアブソーバ153において基部153Aaの下端面の中央に形成された突起部153Cが挿入されるように貫通して形成されている。また、底板154は、その中央に軽量化のために貫通して形成された穴部154Bが形成されている。
【0033】
以下、上述した下部炉心構造物であって、特に、ショックアブソーバ153と底板154の組立方法について説明する。ここでの組立方法は、上述した加圧水型原子炉の定期検査時に、炉内構造物を取り替える場合に適用される。そして、ショックアブソーバ153は、原子炉容器101に合わせた寸法に組み立てるため、取り替え前に新規で組み立てられた炉内構造物において計測された底板154と下部連接板151との間の寸法L(
図13参照)に基づいて製作され、組み立てられる。この寸法計測については、例えば、特許文献2として特許第2592132号公報に記載されている事項である建設時のデータが適用できる。
【0034】
図5、
図8、
図10〜
図13は、本実施形態に係る下部炉心構造物の組立方法の工程図である。
図6は、本実施形態に係る下部炉心構造物の組立方法で用いられる模擬連接板の平面図である。
図7は、本実施形態に係る下部炉心構造物の組立方法で用いられる模擬連接板の一部拡大縦断面図である。
図9は、本実施形態に係る下部炉心構造物の組立方法で用いられる拘束治具の斜視図である。
【0035】
まず、
図5に示すように、仮組工程として、ショックアブソーバ153の上端を模擬連接板160に仮組みする。模擬連接板160は、ショックアブソーバ153の下部連接板151への取り付け位置が模擬されたものである。
【0036】
具体的に、模擬連接板160は、
図6および
図7に示すように、嵌合穴160Aおよびボルト穴160Bが設けられている。嵌合穴160Aは、各ショックアブソーバ153(本実施形態では4つ)における上端の突起部153Bbが嵌合するように貫通して形成された穴である。ボルト穴160Bは、ボルト161(
図5参照)が挿入されるように貫通して形成された穴であり、1つのショックアブソーバ153における上端のネジ穴153Baに対応して嵌合穴160Aの周囲に複数(本実施形態ではネジ穴153Baの4つに対応して4つ)形成されている。そして、1つの嵌合穴160A、およびその周囲に配置された複数(4つ)のボルト穴160Bにより、1つのショックアブソーバ153の取り付け位置が規定される。即ち、1つのショックアブソーバ153の突起部153Bbを嵌合穴160Aに嵌合し、各ネジ穴153Baに各ボルト穴160Bを対応させ、各ボルト穴160Bにボルト161を挿入すると共にボルト161を各ネジ穴153Baに締め付けることで、ショックアブソーバ153の上端のフランジ部153Bが模擬連接板160に取り付けられる。同様に、本実施形態では4つのショックアブソーバ153が用いられるため、1つの嵌合穴160A、およびその周囲に配置された複数(4つ)のボルト穴160Bが、各ショックアブソーバ153の下部連接板151への取り付け位置を模擬して配置されている。
【0037】
また、模擬連接板160は、
図6に示すように、吊具としてのアイボルト162(
図5参照)が取り付けられるボルト穴160Cが複数箇所(例えば、4箇所)に設けられている。また、模擬連接板160は、
図6に示すように、その中央に軽量化のために貫通して形成された穴部160Dが形成されている。
【0038】
次に、
図8に示すように、拘束工程として、模擬連接板160に仮組みされた各ショックアブソーバ153の相互位置を拘束治具164により拘束する。拘束治具164は、隣り合う1対のショックアブソーバ153を互いに結び、これを複数対のショックアブソーバ153で同様にすることで、各ショックアブソーバ153を模擬連接板160に仮組みされた相互位置で拘束するものである。
【0039】
具体的に、拘束治具164は、
図8および
図9に示すように、隣り合う1対のショックアブソーバ153に対し、ショックアブソーバ本体153Aの細径の括部153Abに固定されるそれぞれの固定具164Aと、それぞれの固定具164Aを連結しつつ各固定具164A間の距離を可変できる連結具164Bとを有する。固定具164Aは、ショックアブソーバ153の括部153Abの周りを囲むように環状に形成され、括部153Abの側部から取り付けることを可能とするためC字形状の第一部材164Aaと、第一部材164AaにおけるC字形状の開口部を開閉する第二部材164Abと、を有している。これら第一部材164Aaと第二部材164Abとは、ボルト164Acで締結される。即ち、固定具164Aは、第一部材164Aaを側部から括部153Abに配置し、第二部材164Abで第一部材164AaのC字形状の開口部を閉じつつボルト164Acで相互を締結することで、ショックアブソーバ153の括部153Abに固定される。連結具164Bは、棒状に形成され、各固定具164Aの第一部材164Aaから外側に延在するそれぞれのスタッドボルト164Adに両端部が螺合する。そして、連結具164Bをスタッドボルト164Adの廻りに正逆回転させることで、それぞれのスタッドボルト164Adを介して連結具164Bを近づけたり遠ざけたりして、それぞれの固定具164Aを連結しつつ各固定具164A間の距離を可変する。このような、拘束治具164は、本実施形態において矩形状に配置される4つのショックアブソーバ153に対し、各辺に4つ対角に2つの計6つ設けられる。この場合、ショックアブソーバ153の括部153Abの上下方向に固定具164Aが複数積層される。
【0040】
次に、
図10に示すように、溶接工程として、模擬連接板160に仮組みされて拘束治具164により拘束された各ショックアブソーバ153の下端を底板154に溶接して取り付ける。
【0041】
即ち、各ショックアブソーバ153の下端の突起部153Cを、底板154に形成された受穴154Aに挿入した状態で、各ショックアブソーバ153の下端と底板154の上面とを溶接して取り付ける。
【0042】
この際、固定治具166が用いられる。固定治具166は、
図10に示すように、有底の容器をなすもので、その内部に底板154が配置される。底板154は、容器の底166Aに底面が当接した状態で、その周囲が固定治具166の容器の周縁166Bに取り付けられた爪部166Cで底166A側に押さえられる。爪部166Cは、周縁166Bにボルト166Dで取り付けられる。また、底板154は、その中央の穴部154Bの上に被せられた押板166Eが、ボルト166Fにより容器の底166Aに対して締結されることで、底166A側に押さえられる。そして、溶接にあたり、固定治具166の容器に水が張られ、溶接部分に水か掛からない程度で底板154の一部が浸される。このようにして、各ショックアブソーバ153の下端を底板154に溶接して取り付ける。
【0043】
このような、仮組工程、拘束工程、溶接工程は、原子力発電プラント内の作業設備や、原子力発電プラント以外の作業設備において行われる。
【0044】
その後、輸送工程として、
図11に示すように、
図10で示す固定治具166を取り外し、模擬連接板160に仮組みされて拘束治具164により拘束された各ショックアブソーバ153の下端に底板154が取り付けられた下部炉心構造物の底の構成部(以下、底構成部という)を、原子力発電プラント内の下部炉心構造物の組み立て作業設備に輸送する。輸送に際し、模擬連接板160に取り付けられたアイボルト162を用いてクレーンにより吊り下げてハンドリングする。このように、予め組み立てられた底構成部を原子力発電プラント内の下部炉心構造物の組み立て作業設備に輸送することで、原子力発電プラント内での組み立て作業工数を低減することができる。
【0045】
そして、下部炉心構造物の組み立て作業設備では、炉心槽127の下部炉心支持板124に炉内計装案内管146が連結され、この炉内計装案内管146に下部連接板150,151が取り付けられ、下部連接板151に上述した底の構成部が取り付けられる。
【0046】
この場合、
図11に示す底の構成部は、取付工程として、模擬連接板160および拘束治具164が取り付けられた状態から、
図12に示すように、模擬連接板160を取り外す。そして、拘束治具164が取り付けられた状態のまま、炉心槽127に取り付けられた下部連接板151に対して各ショックアブソーバ153を取り付ける。
図13に示すように、下部連接板151に対して各ショックアブソーバ153は、模擬連接板160が模擬する嵌合穴160Aと同等の嵌合穴151Aに突起部153Bbを嵌合し、各ネジ穴153Baに各ボルト穴151Bを対応させ、各ボルト穴151Bにボルト168を挿入すると共にボルト168を各ネジ穴153Baに締め付けることで、ショックアブソーバ153の上端のフランジ部153Bが下部連接板151に取り付けられる。その後、
図13に示すように、拘束治具164を取り外す。
【0047】
このように、本実施形態における下部炉心構造物の組立方法は、下部炉心構造物にて原子炉容器101の底部に設置される底板154と、炉心槽127の下側に設置される下部連接板151と底板154との間に設けられる複数のショックアブソーバ153と、を組み立てる下部炉心構造物の組立方法において、各ショックアブソーバ153の下部連接板151への取り付け位置が模擬された模擬連接板160に各ショックアブソーバ153の上端を仮組みする仮組工程と、模擬連接板160に仮組みされた各ショックアブソーバ153の相互位置を拘束治具164により拘束する拘束工程と、模擬連接板160に仮組みされて拘束治具164により拘束された各ショックアブソーバ153の下端を底板154に溶接して取り付ける溶接工程と、を含む。
【0048】
この下部炉心構造物の組立方法によれば、各ショックアブソーバ153の下部連接板151への取り付け位置が模擬された模擬連接板160に各ショックアブソーバ153の上端を仮組みし、模擬連接板160に仮組みされた各ショックアブソーバ153の相互位置を拘束治具164により拘束することで、溶接工程において、溶接による底板154の歪みで各ショックアブソーバ153の位置が変化する事態を防ぐ。この結果、下部炉心構造物を容易かつ正確に組み立てることができる。
【0049】
また、本実施形態における下部炉心構造物の組立方法では、溶接工程において、底板154を有底の容器をなす固定治具166の内部に配置して固定し、固定治具166の容器に水を張った状態で各ショックアブソーバ153の下端を底板154に溶接して取り付ける。
【0050】
この下部炉心構造物の組立方法によれば、底板154を固定しつつ水に浸しながら溶接工程を行うことで、溶接による底板154の歪みをさらに抑制する。この結果、下部炉心構造物を容易かつ正確に組み立てる効果を顕著に得ることができる。
【0051】
また、本実施形態における下部炉心構造物の組立方法では、模擬連接板160は、アイボルト(吊具)162が設けられ、当該アイボルト162を介して、各ショックアブソーバ153を吊り下げ可能に設けられている。
【0052】
この下部炉心構造物の組立方法によれば、模擬連接板160を介して各ショックアブソーバ153を吊り下げることができる。この結果、ハンドリング性が向上し、下部炉心構造物を容易に組み立てることができる。
【0053】
また、本実施形態における下部炉心構造物の組立方法では、溶接後の各ショックアブソーバ153および底板154を、模擬連接板160および拘束治具164が取り付けられた状態で輸送する輸送工程をさらに含む。
【0054】
この下部炉心構造物の組立方法によれば、模擬連接板160および拘束治具164が取り付けられた状態で輸送することで、輸送時の振動や衝撃により各ショックアブソーバ153の位置が変化する事態を防ぐ。この結果、下部炉心構造物を正確に組み立てることができる。
【0055】
また、本実施形態における下部炉心構造物の組立方法では、模擬連接板160および拘束治具164が取り付けられた状態から、模擬連接板160を取り外し、炉心槽127に取り付けられた下部連接板151に対して各ショックアブソーバ153を取り付けた後、拘束治具164を取り外す取付工程をさらに含む。
【0056】
この下部炉心構造物の組立方法によれば、各ショックアブソーバ153を下部連接板151に対して取り付け終わるまで拘束治具164により各ショックアブソーバ153の相互位置を拘束することで、各ショックアブソーバ153の位置が変化する事態を防ぐ。この結果、下部炉心構造物を容易かつ正確に組み立てることができる。