【実施例1】
【0022】
図1は本発明の一実施例の外側面状ライナープレート1を示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は概略のA−A断面図、(ハ)は(ロ)のB部の拡大した詳細図である。
図2は
図1における面状部材2を外した状態の外側面状ライナープレート1を示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は概略のC−C断面図、(ハ)は(イ)のD部拡大図である。
この外側面状ライナープレート1は、円弧状のライナープレート3と、このライナープレート3の円弧の外側に取り付けられる前記面状部材2とを備えている。
【0023】
前記ライナープレート3は、
図12にも示すように、波付け鋼板の上下に本体端部を曲げ加工した周方向フランジ3aを備え、左右両端にプレートを溶接固定した軸方向フランジ3bを備えている。本発明では円弧の曲げ方向が逆曲げでなく正曲げ、すなわち周方向フランジ3aが内向きに突出する態様で円弧状に湾曲する一般的なライナープレートを用いている。
上下の周方向フランジ3aには、ライナープレート3同士を軸方向(縦方向)にボルト連結するための複数のボルト孔3cが設けられ、周方向両側の軸方向フランジ3bにはライナープレート3同士を周方向(横方向)にボルト連結するための複数のボルト孔3dが設けられている。
そして、本発明のライナープレート3は、
図1、
図2等に詳細を示すように、その外側の上下位置に、前記面状部材2を取り付けるための面状部材取付け部5を有している。実施例では、面状部材取付け部5として、ライナープレート3の上下の周方向フランジ3aに直接つながる上下の平坦部3eに、詳細は後述する切欠きを形成している。
なお、一般的なライナープレートでは軸方向フランジ3bのボルト孔が、波付鋼板の円弧の内側に形成されているが、この実施例では、軸方向フランジ3bどうしのボルト連結をライナープレート3の外側から容易に行えるように、図示の通り軸方向フランジ3bのボルト孔3dを波付鋼板の円弧の外側に設けている。
なお、
図1(イ)に示すように、ライナープレート3の面状部材2と反対側の軸方向フランジ3bの内面には、ボルト連結のためのナット9がボルト孔3dの位置に溶接固定されている。このナット9は、後述の先付け面状部材6の幅を狭くして、面状部材2と反対側の軸方向フランジ3bの近傍に開口が形成されるようにした場合には、手でナットを保持できるので、予め溶接固定しておく必要はない。
【0024】
前記面状部材2は、鋼板製であり、ライナープレート3の少なくとも波付け部(上下の平坦部3eを除く波形状の部分)を覆う軸方向長さ(縦方向長さ)L(
図3参照)とライナープレート3の外側の周方向の図示例では一部(
図1(イ)で左側の一部)を覆う周方向長さ(横方向長さ)Mとを有している。そして、この実施例では、ライナープレート3の外側における面状部材2のない部分(図では右側の広い部分)に先付面状部材6を取り付けている。実施例では先付面状部材6はライナープレート3に溶接や接着剤等で固定するか、あるいは面状部材2と同様に、先付面状部材6に面状部材取付け部5を着脱可能に設けてもよい。
面状部材2はさらに、その内側の上下位置に、ライナープレート3の上下位置の前記切欠きである面状部材取付け部5に着脱可能に係合する被取付け部7を備えている。
実施例の被取付け部7は、面状部材2の本体部分(矩形の平板部分)の上下端の中央位置にそれぞれ設けたフック部である。このフック部である被取付け部7は、面状部材2の板材の一部を延出させ折り返して形成している。なお、別部品を面状部材2に固着してフック部を形成してもよい。また、面状部材2の左右の側縁に、外側面状ライナープレート1からこの面状部材2を外す際に容易に外せるように、例えば先の細い棒状の工具等を差し込むための切欠き2aを設けている。
なお、実施例では、面状部材2に鋼板製を用いているが、樹脂製であってもよく、面状の部材であれば何でもよい。
また、実施例では、先付面状部材6に鋼板製を用いているが、樹脂製であってもよく、面状の部材であれば何でもよい。
【0025】
ライナープレート3に設ける面状部材取付け部5である前記切欠きは、
図2(ハ)に拡大して示すように、周方向に横長であり、その横方向の片側部分5aが縦方向に長い大サイズ、他側部分5bが縦方向に短い小サイズの切欠きであり、かつ、横方向の片側大サイズ部分5aが他側小サイズ部分5bよりライナープレート上下の中央側(図では下側)に広がり、両者の上下の端側(図では上側)の高さ位置がそろっている。
一方、前記面状部材2の被取付け部7は前記の通りフック部であり、前記面状部材取付け部5(切欠き)に差し込み可能かつ係合可能である。
そして、面状部材2の前記被取付け部7(フック部)をライナープレート3の前記面状部材取付け部5(切欠き)の片側大サイズ部分5aから差し込み、横方向にスライドさせて他側小サイズ部分5bの位置に移動することで、面状部材2がライナープレート3に取り付けられる。
【0026】
この実施例では、面状部材2の上下端の被取付け部7(フック部)が、
図3に示すように互いに対向する向きの上下対称形状であり、かつ、ライナープレート3の上下の面状部材取付け部5(切欠き)の形状も上下対称形状なので、面状部材2が上方へ移動することも下方に移動することも拘束する。したがって、円筒状の土留め壁体(ライナープレート円筒体)の圧入時、あるいは引抜き時に面状部材2に作用する上下いずれの向きの摩擦力に対しても抜け止めが図られる。
【0027】
上記の外側面状ライナープレート1による立坑土留め壁を構築する際の作業の一例を
図13を参照して説明する。
この実施例では、立坑土留め壁を構築するに際して、
図13(ト)、(チ)に概略示すように、各外側面状ライナープレート1の上下の周方向フランジ3aの両方又は一方(図は両方の場合)に、ライナープレート3と同じ円弧状に湾曲させた溝形断面のリング片11aを予めボルト連結したリング片付き外側面状ライナープレート1Aを用いている。リング片11aは、上下のライナープレート円筒体12間に介在する連結リング11を形成する部材である。
リング片11aの上下のフランジ部にはライナープレート3の周方向フランジ3aにあけたボルト孔3cと同じ位置にボルト孔を備えており、ライナープレート3の周方向フランジ3aとリング片11aのフランジ部とのボルト連結は、上下のライナープレート3の周方向フランジ3a同士のボルト連結と同様にして行う。
(1)最初は、外側面状ライナープレート1の上端の周方向フランジ3aにリング片11aをボルト連結したリング片付き外側面状ライナープレート1A'を用いる。このリング片付き外側面状ライナープレート1A'を周方向にボルト連結する作業により、立坑掘削箇所の地表に1段目の円筒状の土留め壁体13(13
1)を組み立てる。
土留め壁体13は、出来上がった構成としては、ライナープレート円筒体12(12
1)の上下の周方向フランジ3aの両方又は一方(
図13(イ)では上端のみ)に、リング片11aからなる連結リング11(11
1)がボルト連結された構成である。
(2)掘削機械により、土留め壁体13
1の内部を掘削して適宜深さの穴10を形成する(
図13(ロ))。
(3)建設機械や油圧機構等により、前記1段目の土留め壁体13
1を掘削穴内に圧入する(
図13(ハ))。この場合、土留め壁体13
1の連結リング11
1が地表より高い位置となるように圧入する。
(4)圧入した前記1段目の土留め壁体13
1の上に2段目の土留め壁体13
2をボルト連結する。
この2段目の土留め壁体13
2は、外側面状ライナープレート1の上下の周方向フランジ3aの両方にリング片11aを予めボルト連結した上下リング片付き外側面状ライナープレート1Aを用いる。
この上下リング片付き外側面状ライナープレート1Aを、1段目の土留め壁体13
1の上にボルト連結し、かつ、上下リング片付き外側面状ライナープレート1A同士を周方向にボルト連結して、2段目の土留め壁体13
2を組み立てる(
図13(ニ))。
(5)掘削機械によりさらに深く掘削する(
図13(ホ))。
(6)建設機械や油圧機構等により、2段重ねの土留め壁体13
1、13
2を掘削穴内に圧入する(
図13(ヘ))。
以下、上記(4)〜(6)の土留め壁体13の組立て、穴掘削、圧入の作業を繰り返して、所定の深さの立坑土留め壁を構築する。
なお、最上部の土留め壁体13は、ライナープレート円筒体12の下端のみに連結リング11を持つものでもよい。
なお、連結リング11は、開口部を覆う面状部材を取り付けてから圧入するのが望ましい。
【0028】
上記の立坑土留め壁構築作業における作業の詳細について説明する。
本発明では人が坑内に入らずに立坑土留め壁の構築作業を行う。したがって、ライナープレート3同士のボルト連結もライナープレートの円弧の外側(湾曲の外側)から行う。
なお、前述の通り実施例では、各外側面状ライナープレート1にリング片11aを取り付けたリング片付き外側面状ライナープレート1A(1A')の状態で、外側面状ライナープレート1同士を周方向にボルト連結するが、リング片11a同士は必ずしも周方向に連結しなくてもよい。
単に外側面状ライナープレート1同士を周方向へボルト連結してライナープレート円筒体12を組み立てる作業として説明すると、次のようにして行う。
外側面状ライナープレート1同士を周方向に連結する場合、
図14に示すように、一方(図では左側)の外側面状ライナープレート1の面状部材と反対側の軸方向フランジ3bと、面状部材2を外した他方(図では右側)の外側面状ライナープレート1の面状部材2側の軸方向フランジ3bとを接触させ、面状部材2を外した開口(面状部材2のあった部分)15からボルト孔3dにボルト16を挿入し、前記左側の外側面状ライナープレート1の軸方向フランジ3bのボルト孔位置内面に溶接固定したナット9に螺合させ、締着して連結する。
軸方向フランジ3b同士の3カ所のボルト連結を済ませた後、図示例では右側の外側面状ライナープレート1の開口15に前記外していた面状部材2を取り付ける。
この場合、
図4(イ)、
図5(イ)の状態から、面状部材2を
図4(ロ)、
図5(ロ)のように開口15に対して少し右寄り状態にして当て、次いで、
図4(ハ)、
図5(ハ)のように、面状部材2を同図で左方にスライドさせる。これにより、面状部材2が外側面状ライナープレート1の開口15を閉ざすと同時に、被取付け部7(フック部)が面状部材取付け部5(切欠き)の他側小サイズ部分5bの位置に移動して、面状部材2がライナープレート3に取り付けられる。
なお、前述の通り実施例では、各外側面状ライナープレート1にリング片11aを取り付けたリング片付き外側面状ライナープレート1A(1A')の状態で、ライナープレート円筒体12を組み立てるが、必要であればリング片11a同士の周方向のボルト連結も行うとよい。
【0029】
個々の外側面状ライナープレート1の上下の周方向フランジ3aにそれぞれリング片11aをボルト連結する作業は、前述したように、上下のライナープレート3の周方向フランジ3a同士のボルト連結と同様であり、ライナープレート3の周方向フランジ3aのボルト孔3cと溝形断面のリング片11aのフランジ部のボルト孔とをボルト17で連結する(
図13(チ)参照)。
【0030】
以上で外側面状ライナープレート1同士(リング片付き外側面状ライナープレート1A(1A')同士)の周方向のボルト連結が行われ、続く外側面状ライナープレート1を周方向に順次連結して円筒状にすると、ライナープレート円筒体12及び連結リング11が同時に形成されて1段の土留め壁体13が形成される。
この実施例では上記の通り、軸方向フランジ3bのボルト孔3dが波付鋼板の湾曲の外側に設けているので、人がライナープレート円筒体12(土留め壁体13)の内側に入らずに、容易にライナープレート円筒体12の組立てを行うことができる。
なお、作業スペースを確保でき、人がライナープレート円筒体12の内側へ入って組み立てできる場合には、ライナープレート3の軸方向フランジ3bのボルト孔3dが内側にある標準品のライナープレートの場合でも、手作業であるいは何らかの工具を用いて、外側面状ライナープレート同士の周方向のボルト連結を行うことが可能である。
【0031】
土留め壁体13の上に上段の土留め壁体13をボルト連結する場合、上側の土留め壁体13の下端及び下側の土留め壁体13の上端に、それぞれ外側に開放の溝形断面のリング片11aがあるので、土留め壁体13の外側から上下のリング片11aのフランジ部同士をボルト連結することで、上下の土留め壁体13同士をボルト連結することがができる。
この場合、上下のリング片付き外側面状ライナープレート1A(1A')同士のボルト連結を行った後に、隣接する外側面状ライナープレート1の軸方向フランジ3b同士のボルト連結を行ってもよい。