特許第6444237号(P6444237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日鐵住金建材株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6444237-外側面状ライナープレート 図000002
  • 特許6444237-外側面状ライナープレート 図000003
  • 特許6444237-外側面状ライナープレート 図000004
  • 特許6444237-外側面状ライナープレート 図000005
  • 特許6444237-外側面状ライナープレート 図000006
  • 特許6444237-外側面状ライナープレート 図000007
  • 特許6444237-外側面状ライナープレート 図000008
  • 特許6444237-外側面状ライナープレート 図000009
  • 特許6444237-外側面状ライナープレート 図000010
  • 特許6444237-外側面状ライナープレート 図000011
  • 特許6444237-外側面状ライナープレート 図000012
  • 特許6444237-外側面状ライナープレート 図000013
  • 特許6444237-外側面状ライナープレート 図000014
  • 特許6444237-外側面状ライナープレート 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444237
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】外側面状ライナープレート
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/08 20060101AFI20181217BHJP
   E21D 5/10 20060101ALI20181217BHJP
   E21B 7/20 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   E02D17/08 A
   E21D5/10
   E21B7/20
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-66320(P2015-66320)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-186160(P2016-186160A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2018年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鐵住金建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(74)【代理人】
【識別番号】100090549
【弁理士】
【氏名又は名称】加川 征彦
(72)【発明者】
【氏名】古谷 浩平
(72)【発明者】
【氏名】グェン ハイデュン
(72)【発明者】
【氏名】大高 範寛
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−091747(JP,U)
【文献】 特開2007−107243(JP,A)
【文献】 特開2004−143675(JP,A)
【文献】 特開平03−244790(JP,A)
【文献】 米国特許第05401122(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/08
E21D 5/10
E21B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状のライナープレートと、このライナープレートの円弧の外側に取り付けられる面状部材とを備えた外側面状ライナープレートであって、
前記ライナープレートは、その外側の上下位置に面状部材取付け部を有し、
前記面状部材は、前記ライナープレートの少なくとも波付け部を覆う軸方向長さLとライナープレートの外側の周方向の一部又は全部を覆う周方向長さMとを有するとともに、前記ライナープレートの前記上下位置の面状部材取付け部に着脱可能に係合する被取付け部を内側の上下位置に備えていることを特徴とする外側面状ライナープレート。
【請求項2】
前記ライナープレートの外側に、ライナープレートの少なくとも波付け部を覆う軸方向長さとライナープレートの周方向長さより短い周方向長さを有する先付け面状部材を予め取り付けておくとともに、前記先付け面状部材の一端とライナープレートの軸方向フランジとの間の開口に前記面状部材が取り付けられることを特徴とする請求項1記載の外側面状ライナープレート。
【請求項3】
前記面状部材は、前記先付け面状部材側の片側縁部に、前記先付け面状部材の前記一端側部分とライナープレートの外側との間に差し込まれる差込み部を設けたことを特徴とする請求項2記載の外側面状ライナープレート。
【請求項4】
前記ライナープレートの上下位置の前記面状部材取付け部は、周方向に横長でその横方向の片側部分が縦方向に長い大サイズ、他側部分が縦方向に短い小サイズの切欠きであり、前記面状部材の被取付け部は、前記切欠きに差し込み可能かつ係合可能な突出部であり、面状部材の前記突出部をライナープレートの前記面状部材取付け部の前記切欠きの片側大サイズ部分から差し込み、横方向にスライドさせることにより他側小サイズ部分において、面状部材がライナープレートに取り付けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の外側面状ライナープレート。
【請求項5】
前記ライナープレートの前記上下の2つの切欠きは、前記横方向の片側大サイズ部分が他側小サイズ部分よりライナープレート上下の端側に広がり、両者の上下の中央側の高さ位置がそろっていて、概ね上下対称形状をなしていることを特徴とする請求項4記載の外側面状ライナープレート。
【請求項6】
前記ライナープレートの前記上下の2つの切欠きは、前記横方向の片側大サイズ部分が他側小サイズ部分よりライナープレート上下の中央側に広がり、両者の上下の端側の高さ位置がそろっていて、概ね上下対称形状をなしていることを特徴とする請求項4記載の外側面状ライナープレート。
【請求項7】
前記ライナープレートの前記上下の2つの切欠きは、いずれも前記横方向の片側大サイズ部分が他側小サイズ部分よりライナープレート上側又は下側の一方に広がり下側又は上側の他方側が揃っていることを特徴とする請求項4記載の外側面状ライナープレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、深礎杭や集水井等の立坑を構築する際に土留め壁として用いられるライナープレートに適用して好適な外側面状ライナープレートに関する。
【背景技術】
【0002】
深礎杭や集水井等の立坑を構築する場合、土留め壁として円弧状のライナープレートが広く用いられている。この場合のライナープレートによる土留め壁は一般に、地盤掘削と、その掘削地盤内に人が入り、ライナープレートの円弧の内側からライナープレートを組立てる作業とを繰り返すことで構築される。
しかし、坑内でのライナープレート組立作業は組立作業と地盤掘削との交互作業となるため作業効率も悪いことから、近年ではライナープレート土留め壁の構築を、坑内に人が入らずに行う施工方法が検討されている。
【0003】
ライナープレート土留め壁の構築を坑内に入らずに行うためには、ライナープレートを周方向に連結してリング状のライナープレート円筒体(土留め壁体)を組み立てる作業と、円筒体を軸方向に連結する作業を、地上でライナープレートの円弧の外側から行うことが必要である。
ライナープレート円筒体の組立て作業をライナープレートの外側から行うことを可能にするために、ライナープレートを逆曲げ加工(すなわち、ライナープレートの円弧の向き(ないし湾曲の向き)を逆にした曲げ加工)する方法がある(特許文献1(特開2000−120367))。なお、この逆曲げ加工のライナープレートとは、上下の周方向フランジが円弧の外側に突出しているライナープレートである。
しかし、このライナープレート逆曲げ加工には設備投資に莫大な費用がかかることから、上下の周方向フランジが円弧の内側に突出する通常の曲げ加工をした一般的なライナープレートを用いながら、ライナープレート円筒体の組立て作業をライナープレートの外側から行うことを可能にしたものもある(特許文献2、3)。
【0004】
特許文献2の深礎工法は、特許文献2中の符号を用いて説明すると、立坑掘削位置に四角形枠状の支持枠5を設置し、次いで、掘削機で立坑を掘削し、次いで、予め杭外で1段分のライナープレート円筒体を組み立てかつその上端の周方向フランジに連結リング12を固定してなる最初のライナープレートユニット11を、クレーンで吊って前記支持枠5の上に配置し、次いで、掘削機で立坑を所定深さに掘削し、次いで、上下端の周方向フランジに連結リング12を固定した二番目のライナープレートユニット11を、先に支持枠5上に配置した前記最初のライナープレートユニット11の上に配置するとともに、上下のライナープレートユニット11の連結リング12どうしをボルトで連結し、次いで再びクレーンで吊って立坑内に所定距離だけ下降させる、という作業を繰り返して立坑を構築する(特許文献2の図5参照)。
【0005】
特許文献3の工法も、基本的には特許文献1と同様であり、特許文献3中の符号を用いて説明すると、ライナープレート円筒体(円筒壁体60)の上下の周方向フランジ間を連結具32を用いて連結する。そして、(1)ライナープレート2を連結して一段目の円筒壁体60を形成する円筒壁体形成工程と、(2)円筒壁体60の下方を掘削して坑穴56を形成する掘削工程と、(3)坑穴56内へ円筒壁体60を落とし込む落とし込み工程と、(4)円筒壁体60の上縁に次段の円筒壁体60を構築する構築工程とを備え、前記(4)の工程後は、(2)〜(4)を順次繰り返し、所定深さまで基礎杭を形成する、というものである(特許文献3の[0055]、図20参照)。
【0006】
ところで、立坑を掘削する掘削作業とライナープレート円筒体を組み立てる組立て作業とを交互に行って立坑を構築する工法の場合に、ライナープレート円筒体をクレーン等で吊って掘削した立坑内に落とし込む(下降させる)のではなく、ライナープレート円筒体を掘削した立坑に圧入する工法がある。
この場合、ライナープレートは波付け鋼板であり、ライナープレート円筒体を立坑内に圧入するには外周面の摩擦抵抗が大きいので、ライナープレートの外周面に鉄板等を溶接もしくは接着することでライナープレート円筒体の外面全体を平滑化する必要がある。
例えば特許文献4、5では、その摩擦抵抗を低減するために、ライナープレート2(内層体2)の外側(外周面側)の全面に平滑なスキンプレート23(外層体3)を固着した外構成片21(セグメント1)を用いている。なお、括弧外の符号は特許文献4(特開平7-11862)中の符号、括弧内は特許文献5(特開平3−244790)における符号である。
なお、深礎杭においては、ライナープレート土留め壁を引き抜き、他の深礎杭構築に転用することも検討されているが、その場合には特に、例えば特許文献4、5のように、ライナープレート円筒体の外周面を平滑にする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−120367
【特許文献2】特開2011−58189
【特許文献3】特開2011−106190
【特許文献4】特開平7−11862
【特許文献5】特開平3−244790
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献4、5のライナープレートによれば、外周面が平滑になるので、圧入工法を採用する際にスムーズに圧入できる。
しかし、特許文献4、5のようにライナープレートの外周面がスキンプレートや外層体等のような部材で覆われると、特に軸方向フランジ同士のボルト連結(円筒状に組み立てる際のボルト連結)を外側から行うことができないので、坑内のボルト連結作業をしないためには、予めライナープレート円筒体を組み立てておく必要がある。そのためには、地上に組み立て作業ができるだけの広いスペースがなければならないが、深礎杭等は山間での施工となり、そのような作業ができるスペースを確保できない場合が多い。
このため、ライナープレート円筒体の組立て作業のスペースを確保できない場合に、圧入工法を採用しながら、坑壁との摩擦を小さくしてスムーズに立坑を構築することが困難であった。
また、ライナープレート円筒体の組立て作業スペースを確保できたとしても、特許文献4、5のように、ライナープレートの外周面に鉄板等を溶接もしくは接着してライナープレート円筒体の外面全体を平滑化する方法では、土留め壁を解体する際にライナープレート円筒体の取外しが極めて困難となる。また、鉄板等を溶接する溶接工が必要になり、時間とコストがかかる。
【0009】
本発明は上記従来背景のもとになされたもので、深礎杭等の立坑を圧入工法を採用して構築する際に、坑内に人が入らずに立坑構築が可能で、あり、また、立坑掘削上方位置でライナープレート円筒体組立て作業を行うことが可能でその組立てのための広い作業スペースを確保する必要がなく、さらに、ライナープレート外周面に鉄板等を固着する方法と異なり、施工性が良くかつコストを安くすることができ、さらに、土留め壁を解体する際のライナープレート円筒体の取外しが容易になるライナープレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する請求項1の発明は、円弧状のライナープレートと、このライナープレートの円弧の外側に取り付けられる面状部材とを備えた外側面状ライナープレートであって、
前記ライナープレートはその外側の上下位置に面状部材取付け部を有し、
前記面状部材は、前記ライナープレートの少なくとも波付け部を覆う軸方向長さLとライナープレートの外側の周方向の一部又は全部を覆う周方向長さMとを有するとともに、前記ライナープレートの前記上下位置の面状部材取付け部に着脱可能に係合する被取付け部を内側の上下位置に備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項2は、請求項1の外側面状ライナープレートにおいて、前記ライナープレートの外側に、ライナープレートの少なくとも波付け部を覆う軸方向長さとライナープレートの周方向長さより短い周方向長さを有する先付け面状部材を予め取り付けておくとともに、前記先付け面状部材の一端とライナープレートの軸方向フランジとの間の開口に前記面状部材が取り付けられることを特徴とする。
【0012】
請求項3は、請求項2の外側面状ライナープレートにおいて、前記面状部材の前記先付け面状部材側の片側縁部に、前記先付け面状部材の前記一端側部分とライナープレートの外側との間に差し込まれる差込み部を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項4は、請求項1〜3のいずれか1項の外側面状ライナープレートにおいて、前記ライナープレートの上下位置の前記面状部材取付け部は、周方向に横長でその横方向の片側部分が縦方向に長い大サイズ、他側部分が縦方向に短い小サイズの切欠きであり、前記面状部材の被取付け部は、前記切欠きに差し込み可能かつ係合可能な突出部であり、面状部材の前記突出部をライナープレートの前記面状部材取付け部の前記切欠きの片側大サイズ部分から差し込み、横方向にスライドさせることにより他側小サイズ部分において、面状部材がライナープレートに取り付けられることを特徴とする。
【0014】
請求項5は、請求項4の外側面状ライナープレートにおいて、前記ライナープレートの前記上下の2つの切欠きは、前記横方向の片側大サイズ部分が他側小サイズ部分よりライナープレート上下の端側に広がり両者の上下の中央側の高さ位置がそろっていて、概ね上下対称形状をなしていることを特徴とする。
【0015】
請求項6は、請求項4の外側面状ライナープレートにおいて、前記ライナープレートの前記上下の2つの切欠きは、前記横方向の片側大サイズ部分が他側小サイズ部分よりライナープレート上下の中央側に広がり両者の上下の端側の高さ位置がそろっていて、概ね上下対称形状をなしていることを特徴とする。
【0016】
請求項7は、請求項4の外側面状ライナープレートにおいて、前記ライナープレートの前記上下の2つの切欠きは、いずれも前記横方向の片側大サイズ部分が他側小サイズ部分よりライナープレート上側又は下側の一方に広がり下側又は上側の他方側が揃っていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の外側面状ライナープレートによれば、ライナープレート円筒体(土留め壁体)の外側の波部分を面状部材で覆うことができるので、深礎杭等の立坑を圧入工法を採用して構築する際に、地山との摩擦を低減することができ、坑内に人が入らずに容易に立坑構築が可能である。
また、立坑掘削位置でライナープレート円筒体組立て作業を行うことができるので、その組立てのための広い作業スペースを確保する必要がない。
【0018】
また、ライナープレートの外側に形成した面状部材取付け部に着脱可能に係合する被取付け部を内側に備え、前記ライナープレートの外側の周方向の一部又は全部が前記面状部材で覆われるので、ライナープレート円筒体を圧入する際の外周面の摩擦抵抗が小さく、圧入工法による立坑構築を円滑に行うことができる。
【0019】
また、ライナープレート外周面に鉄板等を溶接や接着剤で固着して外周面を平滑にする方法と異なり、溶接作業や接着作業が不要となり、施工性が良くかつコストを安くすることができる。
さらに、本発明によれば、ライナープレート円筒体を撤去する場合、立坑から引き抜いた後に平滑化するための面状部材を取り外すことができるの、土留め壁を解体する際のライナープレート円筒体の取外しが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施例の外側面状ライナープレートを示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は概略のA−A断面図、(ハ)は(ロ)のB部の拡大した詳細図である。
図2図1における面状部材を外した状態の外側面状ライナープレートを示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は概略のC−C断面図、(ハ)は(イ)のD部拡大図である。
図3図1における面状部材を示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は左側面図、(ハ)は平面図である。
図4】面状部材を外した図2の状態の外側面状ライナープレートに面状部材を取り付ける要領を説明するもので、取付けの手順を(イ)、(ロ)、(ハ)で示す。
図5】(イ)、(ロ)、(ハ)はそれぞれ、図4(イ)、(ロ)、(ハ)に対応する要部拡大平面図である。
図6】他の実施例の面状部材を取り付けた外側面状ライナープレートを示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は概略のE−E断面図である。
図7図6における面状部材を示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は左側面図、(ハ)は平面図である
図8図6の外側面状ライナープレートにおいて、面状部材を取り付ける要領を説明するもので、取付けの手順を(イ)、(ロ)、(ハ)で示す。
図9】(イ)、(ロ)、(ハ)はそれぞれ、図8(イ)、(ロ)、(ハ)に対応する要部拡大平面図である。
図10】面状部材の特に被取付け部(フック部)についての他の実施例を示すもので、(イ)は面状部材の側面図、(ロ)は(イ)のF部拡大図、(ハ)は面状部材のフック部が係合するライナープレート側の面状部材取付け部の拡大図、(ニ)は面状部材の特に被取付け部(フック部)についてのさらに他の実施例を示す側面図である。
図11】ライナープレート側の面状部材取付け部、及び、面状部材側の被取付け部についての他の実施例を示すもので、図(イ)はライナープレートにおける面状部材取付け部の近傍の正面図である。(ロ)は面状部材の正面図、(ハ)は同左側面図、(ニ)は同平面図である。図(ロ')、(ハ')、(ニ')はそれぞれ前記図(ロ)、(ハ)、(ニ)を拡大した図である。
図12】上記実施例のライナープレートの斜視図である。
図13】上記実施例の外側面状ライナープレートを用いて立坑を構築する要領を説明する図である。
図14】外側面状ライナープレート同士の周方向のボルト連結部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の外側面状ライナープレートを実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は本発明の一実施例の外側面状ライナープレート1を示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は概略のA−A断面図、(ハ)は(ロ)のB部の拡大した詳細図である。図2図1における面状部材2を外した状態の外側面状ライナープレート1を示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は概略のC−C断面図、(ハ)は(イ)のD部拡大図である。
この外側面状ライナープレート1は、円弧状のライナープレート3と、このライナープレート3の円弧の外側に取り付けられる前記面状部材2とを備えている。
【0023】
前記ライナープレート3は、図12にも示すように、波付け鋼板の上下に本体端部を曲げ加工した周方向フランジ3aを備え、左右両端にプレートを溶接固定した軸方向フランジ3bを備えている。本発明では円弧の曲げ方向が逆曲げでなく正曲げ、すなわち周方向フランジ3aが内向きに突出する態様で円弧状に湾曲する一般的なライナープレートを用いている。
上下の周方向フランジ3aには、ライナープレート3同士を軸方向(縦方向)にボルト連結するための複数のボルト孔3cが設けられ、周方向両側の軸方向フランジ3bにはライナープレート3同士を周方向(横方向)にボルト連結するための複数のボルト孔3dが設けられている。
そして、本発明のライナープレート3は、図1図2等に詳細を示すように、その外側の上下位置に、前記面状部材2を取り付けるための面状部材取付け部5を有している。実施例では、面状部材取付け部5として、ライナープレート3の上下の周方向フランジ3aに直接つながる上下の平坦部3eに、詳細は後述する切欠きを形成している。
なお、一般的なライナープレートでは軸方向フランジ3bのボルト孔が、波付鋼板の円弧の内側に形成されているが、この実施例では、軸方向フランジ3bどうしのボルト連結をライナープレート3の外側から容易に行えるように、図示の通り軸方向フランジ3bのボルト孔3dを波付鋼板の円弧の外側に設けている。
なお、図1(イ)に示すように、ライナープレート3の面状部材2と反対側の軸方向フランジ3bの内面には、ボルト連結のためのナット9がボルト孔3dの位置に溶接固定されている。このナット9は、後述の先付け面状部材6の幅を狭くして、面状部材2と反対側の軸方向フランジ3bの近傍に開口が形成されるようにした場合には、手でナットを保持できるので、予め溶接固定しておく必要はない。
【0024】
前記面状部材2は、鋼板製であり、ライナープレート3の少なくとも波付け部(上下の平坦部3eを除く波形状の部分)を覆う軸方向長さ(縦方向長さ)L(図3参照)とライナープレート3の外側の周方向の図示例では一部(図1(イ)で左側の一部)を覆う周方向長さ(横方向長さ)Mとを有している。そして、この実施例では、ライナープレート3の外側における面状部材2のない部分(図では右側の広い部分)に先付面状部材6を取り付けている。実施例では先付面状部材6はライナープレート3に溶接や接着剤等で固定するか、あるいは面状部材2と同様に、先付面状部材6に面状部材取付け部5を着脱可能に設けてもよい。
面状部材2はさらに、その内側の上下位置に、ライナープレート3の上下位置の前記切欠きである面状部材取付け部5に着脱可能に係合する被取付け部7を備えている。
実施例の被取付け部7は、面状部材2の本体部分(矩形の平板部分)の上下端の中央位置にそれぞれ設けたフック部である。このフック部である被取付け部7は、面状部材2の板材の一部を延出させ折り返して形成している。なお、別部品を面状部材2に固着してフック部を形成してもよい。また、面状部材2の左右の側縁に、外側面状ライナープレート1からこの面状部材2を外す際に容易に外せるように、例えば先の細い棒状の工具等を差し込むための切欠き2aを設けている。
なお、実施例では、面状部材2に鋼板製を用いているが、樹脂製であってもよく、面状の部材であれば何でもよい。
また、実施例では、先付面状部材6に鋼板製を用いているが、樹脂製であってもよく、面状の部材であれば何でもよい。
【0025】
ライナープレート3に設ける面状部材取付け部5である前記切欠きは、図2(ハ)に拡大して示すように、周方向に横長であり、その横方向の片側部分5aが縦方向に長い大サイズ、他側部分5bが縦方向に短い小サイズの切欠きであり、かつ、横方向の片側大サイズ部分5aが他側小サイズ部分5bよりライナープレート上下の中央側(図では下側)に広がり、両者の上下の端側(図では上側)の高さ位置がそろっている。
一方、前記面状部材2の被取付け部7は前記の通りフック部であり、前記面状部材取付け部5(切欠き)に差し込み可能かつ係合可能である。
そして、面状部材2の前記被取付け部7(フック部)をライナープレート3の前記面状部材取付け部5(切欠き)の片側大サイズ部分5aから差し込み、横方向にスライドさせて他側小サイズ部分5bの位置に移動することで、面状部材2がライナープレート3に取り付けられる。
【0026】
この実施例では、面状部材2の上下端の被取付け部7(フック部)が、図3に示すように互いに対向する向きの上下対称形状であり、かつ、ライナープレート3の上下の面状部材取付け部5(切欠き)の形状も上下対称形状なので、面状部材2が上方へ移動することも下方に移動することも拘束する。したがって、円筒状の土留め壁体(ライナープレート円筒体)の圧入時、あるいは引抜き時に面状部材2に作用する上下いずれの向きの摩擦力に対しても抜け止めが図られる。
【0027】
上記の外側面状ライナープレート1による立坑土留め壁を構築する際の作業の一例を図13を参照して説明する。
この実施例では、立坑土留め壁を構築するに際して、図13(ト)、(チ)に概略示すように、各外側面状ライナープレート1の上下の周方向フランジ3aの両方又は一方(図は両方の場合)に、ライナープレート3と同じ円弧状に湾曲させた溝形断面のリング片11aを予めボルト連結したリング片付き外側面状ライナープレート1Aを用いている。リング片11aは、上下のライナープレート円筒体12間に介在する連結リング11を形成する部材である。
リング片11aの上下のフランジ部にはライナープレート3の周方向フランジ3aにあけたボルト孔3cと同じ位置にボルト孔を備えており、ライナープレート3の周方向フランジ3aとリング片11aのフランジ部とのボルト連結は、上下のライナープレート3の周方向フランジ3a同士のボルト連結と同様にして行う。
(1)最初は、外側面状ライナープレート1の上端の周方向フランジ3aにリング片11aをボルト連結したリング片付き外側面状ライナープレート1A'を用いる。このリング片付き外側面状ライナープレート1A'を周方向にボルト連結する作業により、立坑掘削箇所の地表に1段目の円筒状の土留め壁体13(13)を組み立てる。
土留め壁体13は、出来上がった構成としては、ライナープレート円筒体12(12)の上下の周方向フランジ3aの両方又は一方(図13(イ)では上端のみ)に、リング片11aからなる連結リング11(11)がボルト連結された構成である。

(2)掘削機械により、土留め壁体13の内部を掘削して適宜深さの穴10を形成する(図13(ロ))。
(3)建設機械や油圧機構等により、前記1段目の土留め壁体13を掘削穴内に圧入する(図13(ハ))。この場合、土留め壁体13の連結リング11が地表より高い位置となるように圧入する。
(4)圧入した前記1段目の土留め壁体13の上に2段目の土留め壁体13をボルト連結する。
この2段目の土留め壁体13は、外側面状ライナープレート1の上下の周方向フランジ3aの両方にリング片11aを予めボルト連結した上下リング片付き外側面状ライナープレート1Aを用いる。
この上下リング片付き外側面状ライナープレート1Aを、1段目の土留め壁体13の上にボルト連結し、かつ、上下リング片付き外側面状ライナープレート1A同士を周方向にボルト連結して、2段目の土留め壁体13を組み立てる(図13(ニ))。
(5)掘削機械によりさらに深く掘削する(図13(ホ))。
(6)建設機械や油圧機構等により、2段重ねの土留め壁体13、13を掘削穴内に圧入する(図13(ヘ))。
以下、上記(4)〜(6)の土留め壁体13の組立て、穴掘削、圧入の作業を繰り返して、所定の深さの立坑土留め壁を構築する。
なお、最上部の土留め壁体13は、ライナープレート円筒体12の下端のみに連結リング11を持つものでもよい。
なお、連結リング11は、開口部を覆う面状部材を取り付けてから圧入するのが望ましい。
【0028】
上記の立坑土留め壁構築作業における作業の詳細について説明する。
本発明では人が坑内に入らずに立坑土留め壁の構築作業を行う。したがって、ライナープレート3同士のボルト連結もライナープレートの円弧の外側(湾曲の外側)から行う。
なお、前述の通り実施例では、各外側面状ライナープレート1にリング片11aを取り付けたリング片付き外側面状ライナープレート1A(1A')の状態で、外側面状ライナープレート1同士を周方向にボルト連結するが、リング片11a同士は必ずしも周方向に連結しなくてもよい。
単に外側面状ライナープレート1同士を周方向へボルト連結してライナープレート円筒体12を組み立てる作業として説明すると、次のようにして行う。
外側面状ライナープレート1同士を周方向に連結する場合、図14に示すように、一方(図では左側)の外側面状ライナープレート1の面状部材と反対側の軸方向フランジ3bと、面状部材2を外した他方(図では右側)の外側面状ライナープレート1の面状部材2側の軸方向フランジ3bとを接触させ、面状部材2を外した開口(面状部材2のあった部分)15からボルト孔3dにボルト16を挿入し、前記左側の外側面状ライナープレート1の軸方向フランジ3bのボルト孔位置内面に溶接固定したナット9に螺合させ、締着して連結する。
軸方向フランジ3b同士の3カ所のボルト連結を済ませた後、図示例では右側の外側面状ライナープレート1の開口15に前記外していた面状部材2を取り付ける。
この場合、図4(イ)、図5(イ)の状態から、面状部材2を図4(ロ)、図5(ロ)のように開口15に対して少し右寄り状態にして当て、次いで、図4(ハ)、図5(ハ)のように、面状部材2を同図で左方にスライドさせる。これにより、面状部材2が外側面状ライナープレート1の開口15を閉ざすと同時に、被取付け部7(フック部)が面状部材取付け部5(切欠き)の他側小サイズ部分5bの位置に移動して、面状部材2がライナープレート3に取り付けられる。
なお、前述の通り実施例では、各外側面状ライナープレート1にリング片11aを取り付けたリング片付き外側面状ライナープレート1A(1A')の状態で、ライナープレート円筒体12を組み立てるが、必要であればリング片11a同士の周方向のボルト連結も行うとよい。
【0029】
個々の外側面状ライナープレート1の上下の周方向フランジ3aにそれぞれリング片11aをボルト連結する作業は、前述したように、上下のライナープレート3の周方向フランジ3a同士のボルト連結と同様であり、ライナープレート3の周方向フランジ3aのボルト孔3cと溝形断面のリング片11aのフランジ部のボルト孔とをボルト17で連結する(図13(チ)参照)。
【0030】
以上で外側面状ライナープレート1同士(リング片付き外側面状ライナープレート1A(1A')同士)の周方向のボルト連結が行われ、続く外側面状ライナープレート1を周方向に順次連結して円筒状にすると、ライナープレート円筒体12及び連結リング11が同時に形成されて1段の土留め壁体13が形成される。
この実施例では上記の通り、軸方向フランジ3bのボルト孔3dが波付鋼板の湾曲の外側に設けているので、人がライナープレート円筒体12(土留め壁体13)の内側に入らずに、容易にライナープレート円筒体12の組立てを行うことができる。
なお、作業スペースを確保でき、人がライナープレート円筒体12の内側へ入って組み立てできる場合には、ライナープレート3の軸方向フランジ3bのボルト孔3dが内側にある標準品のライナープレートの場合でも、手作業であるいは何らかの工具を用いて、外側面状ライナープレート同士の周方向のボルト連結を行うことが可能である。
【0031】
土留め壁体13の上に上段の土留め壁体13をボルト連結する場合、上側の土留め壁体13の下端及び下側の土留め壁体13の上端に、それぞれ外側に開放の溝形断面のリング片11aがあるので、土留め壁体13の外側から上下のリング片11aのフランジ部同士をボルト連結することで、上下の土留め壁体13同士をボルト連結することがができる。
この場合、上下のリング片付き外側面状ライナープレート1A(1A')同士のボルト連結を行った後に、隣接する外側面状ライナープレート1の軸方向フランジ3b同士のボルト連結を行ってもよい。
【実施例2】
【0032】
図7図9に他の実施例の面状部材22を示す。
この面状部材22は、前記先付け面状部材6側の片側縁部に、先付け面状部材6の面状部材22側の部分(図6等で左端側部分)とライナープレート3の波形状の谷部に差し込まれる差込み部22aを設けた構成である。
外側面状ライナープレート1から面状部材22を外した図8(イ)、図9(イ)の状態から、この面状部材22を取り付ける場合、差込み部22aを、同図の屈曲矢印のように先付け面状部材6とライナープレート3の波形状の谷部の隙間に向けて送り込んで、図8(ロ)、図9ロ)のように前記隙間に少し奥へ差し込み、次いで同図左向き矢印の向きで、図8(ハ)、図9(ハ)のように左方にスライドさせる。これにより、面状部材22が外側面状ライナープレート1の開口15を閉ざすと同時に、被取付け部7(フック部)が面状部材取付け部5(切欠き)の他側小サイズ部分5bの位置に移動して、面状部材22がライナープレート3に取り付けられる。
なお、差込み部22aの差し込みは、面状部材22側の部分とライナープレート3の外側との間に差し込まれればよく、波形状の谷部に限らず、波形状の山部との間など差し込みが可能であればよい。
【実施例3】
【0033】
図10に面状部材の特に被取付け部(フック部)についての他の実施例を示す。
図10(イ)、(ロ)の面状部材32における上下の被取付け部は、前述の折り返したフック部ではなく、折り返さずに段差形に折曲させた被取付け部7'(フック部)である。
この場合に対応するライナープレート3側の面状部材取付け部5'(切欠き)は、図10(ハ)に示すように、横方向の片側大サイズ部分5aが他側小サイズ部分5bよりライナープレート上下の端側(図では上側)に広がり、かつ両者の上下の中央側(図では下側)の高さ位置がそろっている。
【0034】
図10(ニ)は面状部材の特に被取付け部(フック部)についてのさらに他の実施例を示すもので、この面状部材42における上側は、図10(イ)と同様に折り返さずに段差形に折曲させた被取付け部7'(フック部)であり、下側の被取付け部は、図3の被取付け部7と同じ折り返した被取付け部7である。
【実施例4】
【0035】
図11に面状部材の被取付け部についてのさらに他の実施例を示す。
図(イ)はライナープレートにおける上部側の面状部材取付け部55の近傍の正面図、(ロ)は面状部材の正面図、(ハ)は同左側面図、(ニ)は同平面図、(ロ')、(ハ')、(ニ')はそれぞれ前記(ロ)、(ハ)、(ニ)を拡大した図である。
この実施例では、ライナープレート3の上下部に設ける面状部材取付け部55として、ライナープレート3の上下の周方向フランジ3aに直接つながる上下の平坦部3eに、円形切欠きである片側大サイズ部分55aとこれに通じる細長切欠きである他側小サイズ部分55bとを持つ鍵穴状の切欠きを形成している。
一方、面状部材52の内側の上下位置に、ライナープレート3の上下位置の前記鍵穴状の切欠きである面状部材取付け部55に着脱可能に係合する被取付け部57として根本側にクビレを持つ突起部を設けている。
そして、面状部材52の前記被取付け部57(クビレを持つ突起部)をライナープレート3の前記面状部材取付け部55(鍵穴状の切欠き)の片側大サイズ部分55a(円形切欠き)から差し込み、横方向にスライドさせて他側小サイズ部分55b(細長切欠き)の位置に移動することで、面状部材52がライナープレート3に取り付けられる。
【0036】
上述の実施例では、先付け面状部材6をライナープレート3に溶接や接着剤で固定するものとしたが、着脱可能なものとしてもよい。この場合、2つの着脱可能な面状部材でライナープレートの波付け部の全体を覆うことになる。
また、本発明における着脱可能な面状部材の幅は特に制限されない。先付け面状部材6がなく、1枚の着脱可能な面状部材でライナープレートの波付け部の全体を覆う広さのものでもよい。
また、ライナープレートの上下位置に設ける面状部材取付け部として、実施例では面状部材取付け部5、55を切欠きとしたが、面状部材取付け部は必ずしも切欠きに限定されない。面状部材側に設ける被取付け部との関係で、被取付け部が係合可能なものであればよい。
【符号の説明】
【0037】
1 外側面状ライナープレート
1A、1A' リング片付き外側面状ライナープレート
2、22、32、42、52 面状部材
22a 差込み部
3 ライナープレート
3a 周方向フランジ
3b 軸方向フランジ
3c (周方向フランジの)ボルト孔
3d (軸方向フランジの)ボルト孔
3e 平坦部
5、5' 面状部材取付け部(切欠き)
5a 片側大サイズ部分
5b 他側小サイズ部分
6 先付け面状部材
7、7' 被取付け部(フック部)
9 ナット
10 掘削穴
11 連結リング
11a リング片
12 ライナープレート円筒体
13(13、13) 土留め壁体
15 開口
16 ボルト
17 ボルト
55 面状部材取付け部(鍵穴状の切欠き)
55a 片側大サイズ部分(円形切欠き)
55b 他側小サイズ部分(細長切欠き)
57 被取付け部(クビレを持つ突起部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14