特許第6444243号(P6444243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444243
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20181217BHJP
   B66F 9/07 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   B65G1/04 537A
   B66F9/07 J
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-69782(P2015-69782)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-188141(P2016-188141A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2017年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】小島 宏志
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−030622(JP,A)
【文献】 特開2010−030728(JP,A)
【文献】 特開2006−298293(JP,A)
【文献】 特開平06−199404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00− 1/133
B65G 1/14− 1/20
B66F 9/00−11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に移動可能な走行台車と、
前記走行台車を移動させる走行モータと、
前記走行台車に固定されるマストに沿って鉛直方向に移動可能な昇降台と、
前記走行台車の位置を指定する位置指令値をフィルタリングする制振フィルタを含み、前記昇降台の積載状態に応じて前記フィルタリングに用いるパラメータの値を決定する制振制御部と、
前記フィルタリングがなされた位置指令値に基づいて前記走行モータを駆動するための第1トルク指令値を出力する走行制御部と、を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記昇降台を移動させる昇降モータをさらに備え、
前記制振制御部は、前記昇降モータの負荷に応じて前記パラメータの値を決定することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記昇降モータを駆動するための第2トルク指令値を出力する昇降制御部をさらに備え、
前記制振制御部は、前記第2トルク指令値の大きさを用いて前記パラメータの値を決定することを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記制振制御部は、前記昇降台の移動開始前に、前記昇降台のブレーキを解除し、かつ、前記昇降モータの駆動力により前記昇降台が前記鉛直方向に停止しているときに出力される第2トルク指令値の大きさを用いて前記パラメータの値を決定することを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記制振フィルタの伝達関数Gは、前記走行モータの第1トルク指令値を入力とし、前記走行台車の水平方向の位置を出力とする第1伝達関数P、前記走行モータの第1トルク指令値を入力とし、前記昇降台の水平方向の位置を出力とする第2伝達関数P、当該搬送装置を二慣性振動系モデルで記述したときの規範モデルMを用いて、G=(P/P)Mと記述され、
前記制振制御部は、前記パラメータとして前記規範モデルMの値を前記昇降台の積載状態に応じて決定し、決定した前記規範モデルMの値を用いて前記走行台車の位置を指定する位置指令値をフィルタリングすることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倉庫や工場等で用いられる搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器を製造する工場や、日用品や雑貨、食品等を扱う物流センターでは、物品の搬入、搬出、移動を自動で行う搬送装置が使用される。このような搬送装置として、サーボモータをフィードバック制御により駆動し、物品を水平方向および鉛直方向に移動させて目標位置に搬送するスタッカークレーンが用いられる。
【0003】
スタッカークレーンは、鉛直方向に延びるマストを有することから、物品の移動開始から停止までの間の水平方向の速度変化によりマストが振動し、物品の搬送に影響を与えうる。このような速度変化に起因する振動を抑制する制振制御として、例えば、スタッカークレーンの加速時および減速時に所定の等速期間を設ける制御方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−23769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スタッカークレーンの加速時および減速時に等速期間を設けると、加速および減速にかかる時間が長くなり、目標位置まで物品を移動させるのにかかる搬送時間が長くなってしまう。仮に、制振制御をしなければ物品の移動にかかる時間を短くできるかもしれないが、停止時の振動が緩和するまで物品の積み下ろしを待つ必要が生じ、全体としての搬送時間が長くなるかもしれない。したがって、制振制御をしつつ、より短い時間で物品を搬送できることが望ましい。
【0006】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、より短い時間で物品搬送が可能な搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の搬送装置は、水平方向に移動可能な走行台車と、走行台車を移動させる走行モータと、走行台車に固定されるマストに沿って鉛直方向に移動可能な昇降台と、走行台車の位置を指定する位置指令値をフィルタリングする制振フィルタを含み、昇降台の積載状態に応じてフィルタリングに用いるパラメータの値を決定する制振制御部と、フィルタリングがなされた位置指令値に基づいて走行モータを駆動するための第1トルク指令値を出力する走行制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明のある態様によれば、より短い時間で物品搬送が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る搬送システムを示す図である。
図2】スタッカクレーンの動作に関する制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る搬送システム1を示す図である。搬送システム1は、搬送装置であるスタッカクレーン10と、スタッカクレーン10を制御する地上制御盤40と、を備える。
【0012】
スタッカクレーン10は、走行レール12、走行台車14、走行装置16、マスト18、昇降台20、昇降装置22、フォーク台24、機上制御盤30、光通信装置32を備える。走行レール12は、地上に設置されたラック8に沿って敷設される。走行台車14は、走行レール12に沿って移動可能である。以下、走行レール12が延びる水平方向をX方向、鉛直方向をZ方向とし、走行レール12からラック8に向かう方向をY方向とする。
【0013】
走行装置16は、地上制御盤40からの制御指令にもとづいて、走行台車14の走行を制御する。マスト18は、走行台車14上に設置されており、走行台車14とともに走行レール12に沿って移動する。昇降台20は、マスト18に対して鉛直方向(Z方向)に移動可能に取り付けられる。昇降装置22は、地上制御盤40からの制御指令にもとづいて昇降台20の位置を変化させる。
【0014】
昇降台20は、上下方向の位置を一時的に固定するためのブレーキを有する。昇降装置22は、昇降台20の上下位置を固定する場合にブレーキを動作させ、昇降台20の移動を開始させるときにブレーキを解除する。昇降装置22は、ブレーキを解除したときに昇降台20が落下しないようにしながら昇降台20の位置を制御する。
【0015】
フォーク台24は、図示しない荷物をラック8に置き、あるいはラックから荷物を取り出すために設けられる。フォーク台24は、Y方向に移動可能となるように昇降台20に取り付けられる。フォーク台24も、地上制御盤40からの制御指令にもとづいてY方向の位置が制御される。スタッカクレーン10は、その他、図示しないカメラや各種センサを備える。
【0016】
スタッカクレーン10および地上制御盤40はそれぞれ、光通信装置32、42を備え、光通信によって地上制御盤40からスタッカクレーン10に制御指令を伝送する。光通信装置32が受信した制御指令は、機上制御盤30に入力され、機上制御盤30は、地上制御盤40からの制御指令にもとづいて、走行装置16、昇降装置22などを制御する。また、機上制御盤30は、制御指令の受領のアクノリッジ、指令完了の通知などを光通信を介して地上制御盤40に伝送する。
【0017】
図2は、スタッカクレーン10の動作に関する制御ブロック図を示す。スタッカクレーン10は、地上制御盤40からの制御指令として、走行台車14の位置を指定する第1位置指令値Xaと、昇降装置22の位置を指定する第2位置指令値Zaを受信する。スタッカクレーン10は、主に第1位置指令値Xaと第2位置指令値Zaを入力として、走行装置16および昇降装置22の動作を制御する。
【0018】
走行装置16は、第1駆動部52、走行モータ54、第1エンコーダ56を含む。第1駆動部52は、たとえばサーボドライバであり、走行制御部70から出力される第1トルク指令値Tに基づいて走行モータ54を駆動する。第1エンコーダ56は、走行モータ54の駆動状態を検出し、走行台車14の水平位置Xおよび走行速度Vr1の算出に必要な信号を走行制御部70に送信する。
【0019】
昇降装置22は、第2駆動部62、昇降モータ64、第2エンコーダ66を含む。第2駆動部62は、たとえばサーボドライバであり、昇降制御部90から出力される第2トルク指令値Tに基づいて走行モータ54を駆動する。第2エンコーダ66は、昇降モータ64の駆動状態を検出し、昇降装置22の上下位置Zおよび昇降速度Vr2の算出に必要な信号を昇降制御部90に送信する。
【0020】
スタッカクレーン10は、走行制御部70、昇降制御部90、制振制御部110を備える。走行制御部70は、昇降制御部90、制振制御部110は、例えば、機上制御盤30に実装される。変形例においては、走行制御部70が走行装置16に含まれてもよいし、昇降制御部90が昇降装置22に含まれてもよい。
【0021】
昇降制御部90は、第2位置制御器92、第2速度制御器94、第2位置検出器96、第2速度検出器98、減算器100、減算器102を含む。第2位置検出器96は、第2エンコーダ66からの信号を用いて昇降台20の上下位置Zを算出する。第2速度検出器98は、第2エンコーダ66からの信号を用いて昇降台20の昇降速度Vr2を算出する。
【0022】
第2位置制御器92は、第2位置指令値Zaと上下位置Zの差が解消されるように第2速度指令値Vを生成する。第2位置制御器92の入力には減算器100が設けられる。減算器100は、第2位置指令値Zaから上下位置Zを減算して得られた差分を第2位置制御器92に入力する。
【0023】
第2速度制御器94は、第2速度指令値Vと昇降速度Vr2の差が解消されるように第2トルク指令値Tを生成する。第2速度制御器94の入力には減算器102が設けられる。減算器102は、第2速度指令値Vから昇降速度Vr2を減算して得られた値を第2速度制御器94に入力する。生成した第2トルク指令値Tは、昇降装置22に出力される。
【0024】
制振制御部110は、制振フィルタ112、速度フィードフォワード部114、トルクフィードフォワード部116、パラメータ決定部120を含む。制振フィルタ112は、第1位置指令値Xaに伝達関数G=(P/P)Mを乗算して、第1位置指令値Xaをフィルタリングする。伝達関数Gは、規範モデル×反共振で表すことができ、ノッチフィルタと位相進みフィルタの組み合わせで実現できる。
【0025】
ここでPは、第1トルク指令値Tを入力とし、走行台車14の水平位置Xを出力とする伝達関数である。またPは、第1トルク指令値Tを入力とし、昇降台20の水平位置、つまりマスト18の振動振幅を出力とする伝達関数である。伝達関数P、Pは、例えば、二つの物体をバネを介して接続した二慣性振動系モデルを用いて、走行台車14、マスト18、昇降台20をモデル化することにより記述可能である。このとき、Pは2階積分×反共振×共振として、Pは2階積分×共振として表すことができる。ただしスタッカクレーン10を記述するモデルおよび伝達関数P、Pは特に限定されず、その他のモデルを用いて実現することも可能である。
【0026】
パラメータMは規範モデルであり、スタッカクレーン10を二慣性振動系モデルで表す場合には2次遅れの系で記述される。パラメータMの値は、走行台車14、マスト18、昇降台20の重量や、昇降台20に積載される荷物の重量によって決定される値である。本実施の形態では、後述するパラメータ決定部120によりパラメータMの値が動的に決定される。
【0027】
速度フィードフォワード部114は、フィルタリングされた位置指令値Xbを微分して速度フィードフォワード値Vを生成する。生成された速度フィードフォワード値Vは、走行制御部70にて生成される第1速度指令値Vに加算される。
【0028】
トルクフィードフォワード部116は、第1位置指令値Xaに伝達関数G=(1/P)Mを乗算して、トルクフィードフォワード値Tを生成する。伝達関数Gは、上述の伝達関数PおよびパラメータMを用いて表され、例えば、規範モデル×共振逆特性×2階疑似微分で表すことができる。生成されたトルクフィードフォワード値Tは、走行制御部70にて生成されるトルク指令値Tに加算され、第1トルク指令値Tに反映される。
【0029】
パラメータ決定部120は、昇降制御部90から昇降装置22に出力される第2トルク指令値Tを用いて、制振フィルタ112およびトルクフィードフォワード部116にて使用されるパラメータMを決定する。パラメータMは、昇降台20に積載される荷物の重量に応じて制振制御に最適となる値が変化しうる。パラメータ決定部120は、第2トルク指令値Tから昇降モータ64にかかる負荷を推定し、モータ負荷から昇降台20に積載される荷物の重量を推定することで、昇降台20の積載状態に応じたパラメータMの値を算出する。
【0030】
昇降台20が昇降モータ64の駆動力により停止しているとき、昇降モータ64の出力は、荷物を含む昇降台20の総重量を支えるための仕事率に、昇降モータ64の電力損失や、昇降装置22の摩擦等の機械損失を加えた値と釣り合っている。荷物の重量以外は事前に把握可能な値であることから、昇降台20の停止時に出力される第2トルク指令値Tを取得することで、積載状態を加味した昇降台20の重量を推定し、最適なパラメータMの値を算出できる。パラメータMの決定に用いる第2トルク指令値Tは、昇降台20の移動開始前にブレーキが解除され、昇降モータ64の駆動力によって昇降台20が支持されて停止しているときに出力される第2トルク指令値Tを参照して計算される。
【0031】
パラメータ決定部120は、M=f(T)の関係式を満たす関数fを用いることで、第2トルク指令値Tの大きさに応じたパラメータMを算出する。この関数fは、昇降台20の重量や、昇降装置22の電力損失および機械損失を用いてあらかじめ決定され、パラメータ決定部120に保持される。
【0032】
パラメータ決定部120は、関数f(T)にフィルタを組み込むことでパラメータMの値を丸めてもよい。また、パラメータMとして複数の固定値を予め用意し、パラメータMの各固定値と第2トルク指令値Tの大きさとの対応関係を保持するテーブルを参照することによってパラメータMの値を決定してもよい。例えば、パラメータMの固定値として3段階の値を用意し、第2トルク指令値Tの大きさに応じてパラメータMの値を段階的に切り替えてもよい。
【0033】
走行制御部70は、第1位置制御器72、第1速度制御器74、第1位置検出器76、第1速度検出器78、減算器80、加減算器82、加算器84を含む。第1位置検出器76は、第1エンコーダ56からの信号を用いて走行台車14の水平位置Xを算出する。第1速度検出器78は、第1エンコーダ56からの信号を用いて走行台車14の走行速度Vr1を算出する。
【0034】
第1位置制御器72は、制振フィルタ112によりフィルタリングされた位置指令値Xbと、第1位置検出器76により算出された水平位置Xの差が解消されるように第1速度指令値Vを生成する。第1位置制御器72の入力には減算器80が設けられる。減算器80は、フィルタリングされた位置指令値Xbから水平位置Xを減算して得られた差分を第1位置制御器72に入力する。
【0035】
第1速度制御器74は、第1速度指令値Vに速度フィードフォワード値Vを加えた速度指令値と、第1速度検出器78により算出された走行速度Vr1の差が解消されるようにトルク指令値Tを生成する。第1速度制御器74の入力には加減算器82が設けられ、加減算器82は、第1速度指令値Vに速度フィードフォワード値Vfを加算し、走行速度Vr1を減算して得られた値を第1速度制御器74に入力する。
【0036】
加算器84は、第1速度制御器74が生成するトルク指令値Tにトルクフィードフォワード値Tを加算して第1トルク指令値Tを生成する。生成した第1トルク指令値Tは、走行装置16に出力される。
【0037】
つづいて、本実施の形態に係るスタッカクレーン10の動作について説明する。
スタッカクレーン10は、搬送元の位置にて昇降台20に荷物を積載する。昇降装置22は、昇降台20の移動開始前に昇降台20のブレーキを解除し、昇降モータ64の駆動力により昇降台20を一時的に停止させる。制振制御部110は、昇降台20の停止時に出力される第2トルク指令値Tを取得してパラメータMを決定し、決定したパラメータMに基づいて第1位置指令値Xaをフィルタリングする。走行制御部70は、フィルタリングされた位置指令値Xbに基づいて第1トルク指令値Tを出力し、走行台車14を搬送先の位置まで移動させる。
【0038】
本実施の形態によれば、制振フィルタ112によって地上制御盤40からの第1位置指令値Xaがフィルタリングされる。そのため、スタッカクレーン10の固有振動数となる周波数成分を含む第1位置指令値Xaが入力される場合であっても、スタッカクレーン10の振動を抑制するように走行台車14を走行させ、停止させることができる。また、速度フィードフォワード部114による速度フィードフォワードと、トルクフィードフォワード部116によるトルクフィードフォワードにより、振動抑制の効果をより高めることができる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、昇降台20の積載状態に応じて制振フィルタ112のパラメータMが最適化されるため、昇降台20の積載重量に適した制振制御を実現できる。仮にパラメータMが固定値であると、そのパラメータMに対応した積載重量でなければ適切に振動が抑制されず、走行台車14の停止時に生じる振動が収まるまで次の動作を待たなければならない。その結果、振動が収まるまでの時間として最長の揺れ時間を考慮してスタッカクレーン10の動作を設計する必要が生じる。この場合、振動がそれほど大きくない場合であっても最長の揺れ時間を待ってから次の動作に移るため、搬送時間短縮の妨げとなってしまう。
【0040】
一方、本実施の形態によれば、昇降台20の積載重量に応じて制振制御のパラメータMを動的に変更するため、積載重量が変化したとしても振動が収まるまでの時間を短くすることができる。これにより、搬送時間の短縮化を実現できる。また、積載重量に応じた制振制御を実現することで、スタッカクレーン10の剛性の下げつつ振動の抑制を実現できる。スタッカクレーン10の剛性を下げて軽量化することで、スタッカクレーン10の製造コストを低減するとともに、スタッカクレーン10の動作に必要な電力量を低減することができる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、昇降装置22に出力される第2トルク指令値Tを用いてパラメータMを決定するため、昇降台20や走行台車14に別途重量計を設けることなく積載重量を推定することができる。また、昇降台20の移動開始直前に昇降台20が一時的に停止する状態を利用してパラメータMを決定するため、一連の搬送工程に追加の動作を加えることなくパラメータMの決定に必要な情報を得ることができる。
【0042】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0043】
上述の実施の形態では、制振フィルタ112によるフィルタリングと、フィードフォワードの併用により、制振制御を実現することとした。変形例においては、制振フィルタ112のみを用いてもよいし、制振フィルタ112と速度フィードフォワード部114の組み合わせ、もしくは、制振フィルタ112とトルクフィードフォワード部116の組み合わせを用いてスタッカクレーン10の振動を抑制してもよい。
【符号の説明】
【0044】
10…スタッカクレーン、14…走行台車、18…マスト、20…昇降台、54…走行モータ、64…昇降モータ、70…走行制御部、90…昇降制御部、110…制振制御部、112…制振フィルタ、T…第1トルク指令値、T…第2トルク指令値、M…パラメータ。
図1
図2