(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444248
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】キノコの栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 18/00 20180101AFI20181217BHJP
【FI】
A01G1/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-83044(P2015-83044)
(22)【出願日】2015年4月15日
(65)【公開番号】特開2016-202005(P2016-202005A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】515103445
【氏名又は名称】きのこの森有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】霜鳥 大地
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−175049(JP,U)
【文献】
実開昭59−150243(JP,U)
【文献】
特開2001−000040(JP,A)
【文献】
特開2000−050729(JP,A)
【文献】
実開昭55−052950(JP,U)
【文献】
特開昭55−048324(JP,A)
【文献】
特開平05−041925(JP,A)
【文献】
特開2004−242544(JP,A)
【文献】
特開2000−333533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
菌床によるキノコの栽培において、培養瓶に充填・殺菌された培養基に、キノコの種菌を載せて前記培養瓶の瓶口内に種菌層を形成することで接種し、菌床培養が完了した後、前記種菌層の上面部を水平に薄く除去することで前記瓶口内にキノコの発芽面を形成し、次に前記発芽面の中央部を凹球面部材で押圧して凸球面状に形成することを特徴とするキノコの栽培方法。
【請求項2】
前記キノコがブナシメジであることを特徴とする請求項1記載のキノコの栽培方法。
【請求項3】
前記種菌層の上面部を水平に薄く除去する深さが、1mm〜3mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜2いずれかに記載キノコの栽培方法。
【請求項4】
前記発芽面の外周部におけるキノコの子実体の発芽を防止するように、該発芽面の外周面部をリング帯状に掻くことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のキノコの栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫の際に、子実体を個々に分離した状態にカットし易くすることができるキノコの栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、キノコの一例としての本しめじのビン栽培に関し、本しめじ栽培ビン内の種菌およびきのこ菌糸に施す発芽処理の技術として、本しめじ栽培ビンに種菌を接種し、瓶内培養基に2次菌糸が蔓延して熟成を完了した時期に前記接種された種菌の中心部分を押圧するとともにこの中心部分を残して外周部分について菌床荒らし操作を行なうしめじの栽培方法(特許文献1参照)が提案されている。
【0003】
また、きのこを培養基から均一に且つ密生したきのこから成るブロック状の菌塊を得ることのできるきのこの栽培方法として、きのこ栽培瓶に充填した培地に種菌を植菌し、菌糸を培養して成る培養基の表層部を削り、該培養基の表面を中央部が盛り上がった凸状に形成してきのこを発生させるブロック状きのこ栽培方法、及び前記培養基の表面を中央部が盛り上がった凸状に形成すべく、菌掻きを行う菌掻き刃を具備するブロック状きのこ栽培装置(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55−48324号公報(第1頁)
【特許文献2】特開平05−41925号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
キノコの栽培方法に関して解決しようとする課題は、従来の方法では、接種した種菌の表層が劣化することで子実体同士が癒着してしまい塊になりやすく、収穫の際に、子実体が個々に分離した状態にカットできないという点にある。
そこで、本発明の目的は、子実体を個々に分離した状態で綺麗にカットして収穫できるキノコの栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係るキノコの栽培方法の一例によれば、菌床によるキノコの栽培において、培養瓶に充填・殺菌された培養基に、キノコの種菌を載せて前記培養瓶の瓶口内に種菌層を形成することで接種し、菌床培養が完了した後、前記種菌層の上面部を水平に薄く除去することで前記瓶口内にキノコの発芽面を形成し、次に前記発芽面を凹球面部材で押圧して凸球面状に形成する。
【0007】
また、本発明にかかる菌床によるキノコの栽培の一例によれば、前記キノコがブナシメジであることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる菌床によるキノコの栽培の一例によれば、前記種菌層の上面部を水平に薄く除去する深さが、1mm〜3mmの範囲であることを特徴とすることができる。
【0008】
また、本発明にかかる菌床によるキノコの栽培の一例によれば、前記発芽面の外周部におけるキノコの子実体の発芽を防止するように、該発芽面の外周面部をリング帯状に掻くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるキノコの栽培方法によれば、収穫の際に子実体を個々に分離した状態で綺麗にカットして収穫でき、商品性を向上できるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るキノコの栽培方法において培養基の培養後の例を説明する断面図である。
【
図2】菌膜を水平に薄く除去する工程例を説明する断面図である。
【
図3】発芽面を押圧して凸球面状に形成する工程例を説明する断面図である。
【
図4】発芽面を押圧して凸球面状に形成後された後の形態例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明にかかるキノコの栽培方法の形態例を添付図面(
図1〜4)に基づいて詳細に説明する。以下は、ブナシメジの栽培方法を例として説明する。
本発明の菌床によるブナシメジの栽培方法よれば、培養瓶10に充填・殺菌された培養基20に、ブナシメジの種菌を載せて培養瓶10の瓶口内12に種菌層22を形成することで接種する(
図1参照)。培養瓶10に、培地の基材となるおが粉やコーンコブ等と、栄養素を充填し、殺菌後、培養基20にブナシメジの種菌を投入してブナシメジの種菌層22を形成するように接種を行うことで、良質な菌床培養をすることができる。
【0012】
次に、前述の菌床培養が完了した後、種菌層22の上面部を水平に薄く除去することで瓶口内12にブナシメジの発芽面25を形成する(
図2参照)。また、種菌層22の上面部を水平に薄く除去する深さは、1mm〜3mmの範囲が望ましい。
【0013】
これによれば、種菌層22の表層の劣化した部分を適切に除去することができ、新鮮な発芽面25とすることができるため、子実体同士の癒着を防止できる。従って、収穫の際に子実体を個々に分離した状態で綺麗にカットして収穫できるようになる。また、発芽面25が新鮮で綺麗な面となるため、子実体に菌膜や培地による汚れも着きにくく、品質を向上できる。
【0014】
さらに、除去する際に用いられる平掻き用菌掻き刃30は、金属製の鋭利なものを使用し、特許文献2に記載されたような複数の刃を備える掻き刃で切削するように掻き取ると良い。
なお、
図2に示す平掻き用菌掻き刃30の形態例では、刃部材31が3枚に設けられ、それらの刃先が同一高さの水平位置に配された構成になっていることで、適切な掻き取りを行うことができる。また、この平掻きの工程は、掻き取られたものが下方に落下できるように、
図2に示すように、培養瓶10を逆さまにして行われる。
【0015】
また、このキノコの栽培方法によって菌床瓶栽培ができるキノコは、エノキ、ブナシメジ、ヒラタケ、エリンギなど多々あるが、中でもシメジの栽培において、優れた効果を発揮する。
【0016】
次に、前記発芽面25を凹球面部材60で押圧して凸球面状に形成する(
図3参照)。すなわち、押圧することで、種菌層22が培養基20に圧縮され、発芽面25を含む種菌層22の剥離を防止できるように、凸球面状発芽面25aを好適に形成できる。これによれば、子実体が適切に成長でき、品質の良いキノコを生産できる。
【0017】
また、この凹球面部材60が発芽面25を押圧する力は、特許文献1に記載された構成のものと同様に、弾性部材の一例であるコイルスプリングの付勢力を用いることができる。これによれば、凹球面部材60の凹球面が発芽面25に当接する押圧力を、コイルスプリングの作用によって徐々に加えることができ、凸球面状発芽面25aを適切に形成することができる。
【0018】
次に、本実施例では、中央部から所定の範囲となる部分を除いた発芽面25の外周面部25bをリング帯状に掻いて除去する(
図3参照)。これにより、発芽面25を限定し、発芽面25の外周面部25bから発芽することを防止できる。なお、リング帯状に掻いて除去する方法としては、例えば、発芽面25の外周面部25bをブラシなどで荒らすことや、金属製の山掻き用菌掻き刃70などを用いて、削り取ることなどの方法がある。また、削り取る深さは、種菌層22が無くなる深さまで削るという方法もある。
【0019】
なお、本形態例では、特許文献1に記載された構成のものと同様のものであって、鉛直軸を中心に旋回する山掻き用菌掻き刃70によって外周面部25bを掻き取る構成になっている(
図3参照)。また、この山掻きの工程も、掻き取られたものが下方に落下できるように、
図3に示すように、培養瓶10を逆さまにして行われる。
【0020】
これによれば、育成の段階では、発芽面25を含む種菌層22の剥離を防止でき、収穫の段階では、種菌層の上面部を水平に薄く除去したことによって、子実体同士が癒着して塊になることを防止できると共に子実体に汚れが付着することを防止できる。また、カットキノコとしてキノコの根本を切断して収穫する際には、子実体が個々に分離した状態で育成されるため、個々に分離した状態にカットし易い効果がある。
【0021】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0022】
10 培養瓶
12 瓶口内
20 培養基
22 種菌層
25 発芽面
25a 凸球面状発芽面
25b 外周面部
30 平掻き用菌掻き刃
31 刃部材
60 凹球面部材
70 山掻き用菌掻き刃