(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明の概要と用語の定義)
車載端末、または携帯端末で利用されるコンテンツは、ユーザによる端末の操作に基づきサーバから送信されるだけでなく、所定の処理に基づきユーザによる明示の要求がなくともサーバから送信される。ユーザによる明示の要求がない場合に、サーバがコンテンツを送信して保存させる行為を本明細書では「プッシュ配信」と呼ぶ。サーバによりプッシュ配信されたコンテンツを保存する記憶領域を「キャッシュ」と呼ぶ。すなわち、他の機器との通信が不可能な状態であっても、車載端末は車載端末のキャッシュからコンテンツを読み込み、そのコンテンツを利用することができる。
【0009】
(第1の実施の形態)
以下、
図1〜14を参照して、本発明によるコンテンツ配信システムの第1の実施の形態を説明する。
【0010】
(構成)
図1は、コンテンツ配信システム1の構成を示すブロック図である。コンテンツ配信システム1は、車載端末10と、携帯端末20と、データセンタ30と、複数の外部サーバ71とを備える。
本実施の形態において、コンテンツとは、文字、音声、および画像の情報を少なくとも1つを出力するプログラムであり、携帯端末20により実行される。コンテンツはたとえば、天気予報コンテンツ、SNSコンテンツ、音楽再生コンテンツ、写真表示コンテンツ、動画表示コンテンツ、ニュースコンテンツなどである。
【0011】
車載端末10および携帯端末20は、移動する車両5に搭載される。車両5は、複数の衛星からの受信電波に基づいて車両5の位置を算出可能なGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機4を備え、GNSS受信機4が算出する位置は車載端末10に出力される。車載端末10と携帯端末20とは、近距離用無線通信、たとえばIEEE802.15.1の通信規格に従った無線通信や無線LANにより通信を行う。本実施の形態では、車載端末10と携帯端末20との通信は常に正常に行われるとする。携帯端末20は、広域無線通信、たとえばLTE(Long Term Evolution)方式を用いて最寄りの基地局60と通信を行う。この広域無線通信は、車両5の位置により通信速度が変化する。たとえば、車両5がトンネル内などの電波が届きにくい場所に居る場合や、基地局を利用する端末が密集する繁華街に居る場合などは、通信速度が低下する。車載端末10および携帯端末20の構成は後述する。
【0012】
基地局60は、電波を用いて携帯端末20と通信を行い、ネットワーク網6を介してデータセンタ30と通信を行う。すなわち基地局60は、携帯端末20とデータセンタ30との通信を仲介する。ネットワーク網6は、携帯電話の通信キャリアが提供するキャリアネットワーク(NW)回線、ないしはインターネットサービスプロバイダ(ISP)が提供するISPネットワークなどである。
図1には基地局60は1つしか記載されていないが、携帯端末20を搭載する車両5が移動しても通信が可能なように、基地局60は広範囲に点在している。
【0013】
データセンタ30は、アプリケーションサーバ(以下、APサーバ)40と、行動履歴解析サーバ50とを備える。
APサーバ40は、車載端末10の要求に応じたコンテンツの送信、および車載端末10へのコンテンツのプッシュ配信を行う。行動履歴解析サーバ50は、携帯端末20から受信した後述する行動履歴16bを解析し、後述するコンテンツ取得テーブル55を作成する。
【0014】
外部サーバ71は、複数のコンテンツが記録された記憶部を備える。各コンテンツにはプッシュ配信により車載端末10、携帯端末20、APサーバ40の各キャッシュに保存される期限(以下、キャッシュの有効期限)が設定されている。キャッシュの有効期限は、APサーバ40からのコンテンツの要求に応じてコンテンツとともにAPサーバ40に送信される。キャッシュの有効期限は、たとえば天気予報などのように時刻とともにコンテンツの内容が変化するため、強制的に外部サーバ71から再取得させたい場合に設定される。
【0015】
APサーバ40は、後述するようにキャッシュの有効期限を考慮してプッシュ配信を行う。キャッシュの有効期限は、コンテンツを提供するコンテンツホルダーにより設定される。外部サーバ71は、APサーバ40からの要求に応じて記憶しているコンテンツを送信する。コンテンツのキャッシュの有効期限は、コンテンツとともに要求を行ったAPサーバ40に送信される。
図1には車両5は1台のみ記載されているが、車両5および車両5に搭載される車載端末10および携帯端末20は複数存在する。
【0016】
(車載端末の構成)
図2は車載端末10のシステム構成を示す図である。車載端末10は、ユーザが情報の入力を行う入力部11と、ユーザへ情報の表示を行う表示部12と、車載端末10の動作を制御する車載端末制御部13と、外部記憶装置であるメモリーカードを識別するメモリーカードインタフェース14と、携帯端末20と通信する接続インタフェース15と、記憶部16と、APサーバ40および携帯端末20と協調動作するコンテンツ事前取得部17とを備える。
接続インタフェース15は、近距離用無線通信、たとえばIEEE802.15.1や無線LANに対応する通信インタフェースである。車載端末10は、接続インタフェース15を用いて携帯端末20と通信する。本実施の形態では、車載端末10と携帯端末20との間の通信に障害は発生しないこととする。
【0017】
記憶部16は、たとえばフラッシュメモリである。記憶部16は、プッシュ配信された1または複数のコンテンツを保存する保存領域である車載キャッシュ16aを備える。記憶部16には、行動履歴処理部18が出力する行動履歴16bが格納される。
ユーザにより不図示のイグニッションキーがONにされると、表示部12にはコンテンツの一覧が表示される。ユーザが入力部11を用いていずれかのコンテンツを選択すると、選択されたコンテンツが車載端末制御部13により実行される。車載端末制御部13は、ユーザにより選択されたコンテンツが車載キャッシュ16aに存在すればそれを使用し、車載キャッシュ16aになければ携帯端末20から、または携帯端末20を介してAPサーバ40または外部サーバ71から取得する。
【0018】
車載端末制御部13は、CPU、ROM、およびRAMを備える。ROMには後述するプログラムが保存されており、これをRAMに展開して実行する。
コンテンツ事前取得部17は、コンテンツを取得した際に行動履歴16bを取得する行動履歴処理部18と、車載キャッシュ16aを処理するキャッシュ処理部19とを備える。これらの動作は後述する。コンテンツ事前取得部17、およびコンテンツ事前取得部17を構成する行動履歴処理部18ならびにキャッシュ処理部19は、車載端末制御部13のCPUにより実行される機能を機能ブロックとして表したものである。
行動履歴16bには、外部サーバ71からコンテンツを取得した際の車両5の位置や携帯端末20での広域無線通信による受信電波強度等が記録される。
【0019】
図3は、行動履歴16bの一例を示す図である。
図3に示す例では、行動履歴16bは、時刻、名称、実行位置、電波強度、ダウンロード速度、ダウンロード時間、の各項目の情報から構成される。
時刻とは、ユーザが入力部11を用いてコンテンツを選択したときの時刻である。名称とは、ユーザが入力部11を用いて選択したコンテンツの名称である。実行位置とは、ユーザが入力部11を用いてコンテンツを選択した際の車両5の位置を特定する緯度と経度である。この位置は、GNSS受信機4の出力を用いる。電波強度とは、コンテンツを取得した際の携帯端末20の受信電波強度の平均値である。電波強度は、携帯端末20から当該コンテンツのダウンロード直後に取得する。ダウンロード速度とは、コンテンツを取得した際のデータの平均転送レートである。ダウンロード時間とは、コンテンツの取得に要した時間である。
【0020】
電波強度は、携帯端末20と基地局60との通信状態を表している。換言すれば電波強度は、基地局60から外部サーバ71までの通信経路の影響を受けない。一方ダウンロード速度は、携帯端末20から外部サーバ71までの通信経路の全ての影響を受ける。
図3に示す例では2つの履歴が示されており、上段は電波強度が「−55dBm」と高く、下段は電波強度が「−90dBm」と低い。そのため、下段は携帯端末20と基地局60との無線通信の通信状態が悪く、ダウンロード速度が遅くなっている。
【0021】
(携帯端末の構成)
図4は携帯端末20のシステム構成を示す図である。携帯端末20は、ユーザが情報の入力を行う入力部21と、ユーザへ情報の表示を行う表示部22と、携帯端末20の動作を制御する携帯端末制御部23と、外部通信インタフェース24と、車載端末10と接続する接続インタフェース25と、記憶部26と、APサーバ40および車載端末10と協調動作するコンテンツ事前中継部27とを備える。コンテンツ事前中継部27は、行動履歴処理部28と、携帯キャッシュ26aを処理するキャッシュ処理部29とを備える。
記憶部26は、たとえばフラッシュメモリである。記憶部26は、プッシュ配信された1または複数のコンテンツを保存する保存領域である携帯キャッシュ26aを備える。記憶部26には、携帯端末20が出力するログ等が格納される。
【0022】
携帯端末制御部23は、CPU、ROM、およびRAMを備える。CPUは、ROMに保存されているプログラムをRAMに展開して実行する。
外部通信インタフェース24は、広域無線通信、たとえばLTE(Long Term Evolution)方式に対応する無線通信インタフェースである。携帯端末20は、外部通信インタフェース24を用いて最寄りの基地局60と通信を行うことにより、ネットワーク網6を通してデータセンタ30と通信する。外部通信インタフェース24は、基地局60から受信する電波の強度である電波強度を検出し、携帯端末制御部23に出力する。
【0023】
接続インタフェース25は、近距離用無線通信、たとえばIEEE802.15.1や無線LANに対応する通信インタフェースである。携帯端末20は、接続インタフェース15を用いて車載端末10と通信する。
行動履歴処理部28は、コンテンツを外部サーバ71から取得、すなわちダウンロードした際に電波強度の平均値を車載端末10に送信する。車載端末の行動履歴処理部18は、受信した電波強度を行動履歴16bの1項目として保存する。
コンテンツ事前中継部27、およびコンテンツ事前中継部27を構成する行動履歴処理部28ならびにキャッシュ処理部29は、携帯端末制御部23のCPUにより実行される機能を示す機能ブロックとして表したものである。
【0024】
(アプリケーションサーバの構成)
図5はAPサーバ40のシステム構成を示す図である。APサーバ40は、サーバ装置である。APサーバ40は、プッシュ配信を行うコンテンツ事前配信部47と、APサーバの動作を制御するAPサーバ制御部43と、行動履歴解析サーバ50やネットワーク網7と接続する通信インタフェース44とを備える。
記憶部46は、たとえばハードディスクドライブである。記憶部46は、外部サーバ71から取得した1または複数のコンテンツを保存する保存領域であるサーバキャッシュ46aを備える。
コンテンツ事前配信部47は、サーバキャッシュ46aを処理するキャッシュ処理部49と、外部サービスとの疎通や外部サービスの死活を確認する疎通確認部48aと、車両5の出発地から目的地への経路を算出する経路算出部48bとを備える。
【0025】
(行動履歴解析サーバの構成)
図6は行動履歴解析サーバ50のシステム構成を示す図である。行動履歴解析サーバ50は、1台のサーバ装置である。行動履歴解析サーバ50は、車載端末10が出力する行動履歴を収集する行動履歴収集部51と、解析サーバ制御部53と、車載端末10から収集した行動履歴16bを格納する行動履歴DB54と、行動履歴DB54に格納された行動履歴を解析する行動履歴解析部52と、ネットワーク網6と接続する接続インタフェース56と、行動履歴解析部52が出力するコンテンツ取得テーブル55と、を備える。
【0026】
行動履歴DB54は、
図3に例を示した行動履歴16bが蓄積されたものである。したがって、行動履歴DB54に格納されている情報の種類は、行動履歴16bと同様である。ただし前述のように、コンテンツ配信システム1は複数の車載端末10、および携帯端末20から構成されるので、行動履歴DB54には複数の車載端末10が送信した行動履歴16bが蓄積されている。
行動履歴解析部52は行動履歴DB54を読み込み、後述する処理によりコンテンツ取得テーブル55を作成する。コンテンツ取得テーブル55は、コンテンツごとに実行された位置を分類し、通信状態、および実行された頻度を評価点数を用いて評価したものである。コンテンツ取得テーブル55は、APサーバ40がプッシュ配信を行う際に参照される。
【0027】
図7は、コンテンツ取得テーブル55の一例を示す図である。
図7の例では、コンテンツ取得テーブル55は、名称、要求位置、通信状態、アクセス頻度、の項目から構成される。名称とは、コンテンツの名称であり、
図3に示した行動履歴16bの「名称」と同様である。要求位置とは、ユーザが入力部11を用いてコンテンツを選択した際の車両5の位置、すなわち行動履歴16bの「位置」が、どのエリアに含まれるかを示すものである。
通信状態はコンテンツを取得した際の携帯端末20と基地局60との無線通信の通信状態を表しており、行動履歴16bの「電波強度」、および「ダウンロード速度」に基づき、1〜3点のいずれかの評価点数が付される。「電波強度」が強く「ダウンロード速度」が速いほど通信状態がよいと判断され、「電波強度」が弱く「ダウンロード速度」が遅いほど通信状態が悪いと判断される。通信状態がよいと判断される場合には大きな評価点数が、通信状態が悪いと判断される場合には小さな評価点数が割り当てられる。「電波強度」、「ダウンロード速度」、およびデータセンタ30の管理者が設定する所定の閾値に基づき、評価点数が決定される。
【0028】
たとえば、「電波強度」をA<Bの関係を満たす電波強度の閾値A及びBを用いて評価する。「電波強度」がA未満であれば、通信状態の評価点数を1点とし、B以上であれば3点、A以上B未満であれば2点とする。さらに「電波強度」を評価した評価点数が2点以上の場合は、「ダウンロード速度」も加味して以下のとおり修正する。すなわち、「ダウンロード速度」がダウンロード速度の閾値C未満であれば、通信状態の評価点数を1つ下げる。
【0029】
アクセス頻度は、コンテンツが起動された回数より決定される。例えば所定の期間にコンテンツが起動された回数と、整数である所定の閾値D及びEに基づき決定される。起動された回数が多いほど低い評価点数が設定される。あるコンテンツが所定期間に起動された回数が「D回」未満の場合は、アクセス頻度の評価点数は3点に設定される。同様に、起動された回数が「E回」以上であれば1点、「D回」以上かつ「E回」未満であれば2点に設定される。通信状態の閾値と同様に、アクセス頻度の評価点数を決定する閾値は、データセンタ30の管理者によって任意に設定可能である。
【0030】
(システムの3つの動作)
コンテンツ配信システム1の3つの主な動作を説明する。3つの主な動作とはすなわち、コンテンツの取得、コンテンツ取得テーブル55の作成、コンテンツのプッシュ配信である。
【0031】
(コンテンツの取得)
車載端末10は、ユーザにより選択されたコンテンツを取得し、実行する。コンテンツは外部サーバ71に保存されているが、車載端末10、携帯端末20、およびAPサーバ40はプッシュ送信されたコンテンツを備える。ユーザにより選択されたコンテンツが車載キャッシュ16a、携帯キャッシュ26a、およびサーバキャッシュ46aのいずれにもない場合に、車載端末10はそのコンテンツを外部サーバ71から取得する。ユーザにより選択されたコンテンツがいずれかのキャッシュに含まれる場合には、そのキャッシュから読み込まれる。
外部サーバ71からコンテンツを取得する際は、前述のとおり車載端末10の行動履歴処理部18が行動履歴を取得し、記憶部16に行動履歴16bとして蓄積する。
【0032】
(コンテンツ取得テーブルの作成)
図8は、コンテンツ取得テーブル55が作成される過程を示す遷移図である。図中のステップ番号と対応させて説明する。
所定の時間間隔ごとに、車載端末10は、記憶部16に保存された行動履歴16bを行動履歴解析サーバ50へ送信するために、携帯端末20へ行動履歴16bを送信する(ステップS80)。ただし行動履歴16bの送信は、ユーザにより任意のタイミングで行われてもよい。
【0033】
携帯端末20に送信された行動履歴16bは、携帯端末20から行動履歴解析サーバ50へ転送される(ステップS81)。すなわち、ステップS80、S81の処理が車載端末10と携帯端末20においてそれぞれ行われることにより、行動履歴16bが車載端末10から携帯端末20を介して行動履歴解析サーバ50へ送信される。
行動履歴解析サーバ50に送信された行動履歴16bは、蓄積済みの情報と統合されて行動履歴DB54に格納される。行動履歴DB54は行動履歴解析部52により解析され、コンテンツ取得テーブル55が作成、または更新される(ステップS82)。行動履歴解析部52は、携帯端末20から行動履歴を受信した後直ぐに行動履歴DB54の解析を実施してもよいし、一定時間毎に解析を実施してもよい。
【0034】
(プッシュ配信)
図9は、APサーバ40によりコンテンツがプッシュ配信される過程を示す遷移図である。図中のステップ番号と対応させて説明する。
ユーザにより入力部11を介して車載端末10に目的地、出発地の情報が入力されると、入力された情報が携帯端末20を経由してAPサーバ40へ送信される(ステップS83)。ただし出発地は、車両5のGNSS受信機4から取得した位置を用いてもよい。
携帯端末20からAPサーバ40へ目的地および出発地が送信されると、APサーバ40の経路算出部48bにより出発地から目的地への経路が算出される(ステップS83a)。APサーバ40は、行動履歴解析サーバ50のコンテンツ取得テーブル55を参照し、算出した経路に含まれる電波不良場所を特定する。そして、APサーバ40、携帯端末20または車載端末10に保存すべきコンテンツを判断する(ステップS84)。保存すべきコンテンツがある場合、APサーバ40は、コンテンツ取得要求を外部サーバ71へ送信する(ステップS85)。
【0035】
コンテンツ取得要求を受信した外部サーバ71は、要求されたコンテンツの送信であるコンテンツ応答をAPサーバ40へ送信する(ステップS86)。
外部サーバ71よりコンテンツ応答を受信したAPサーバ40は、受信したコンテンツのうち、APサーバ40が保存すべきコンテンツをサーバキャッシュ46aへ保存する(ステップS87)。APサーバ40は、車載端末10または携帯端末20に保存すべきコンテンツを携帯端末20へ送信する(ステップS88)。このとき送信する情報には、コンテンツの保存先の情報、およびキャッシュの有効期限を含む。
携帯端末20のキャッシュ処理部29は、コンテンツに付加された保存先の情報を参照し、受信したコンテンツのうち、携帯端末20に保存すべきコンテンツを携帯キャッシュ26aへ保存する(ステップS89)。コンテンツ事前中継部27は、コンテンツに付加されたキャッシュ先の情報を参照し、車載端末10へ保存すべきコンテンツを車載端末10へ送信する(ステップS90)。
携帯端末20から車載端末10がコンテンツを受信すると、キャッシュ処理部19が受信したコンテンツを車載キャッシュ16aへ保存する(ステップS91)。
【0036】
上記説明した動作を実行するプログラムのフローチャートを説明する。
(APサーバのプッシュ配信のフローチャート)
図10は、APサーバ40によるコンテンツのプッシュ配信の動作を説明するフローチャートである。以下に説明する各ステップの実行主体は、APサーバ40のコンテンツ事前配信部47である。
ステップS210において、携帯端末20から目的地および出発地を受信し、ステップS211に進む。ステップS211において、経路算出部48bを用いてステップS210において受信した出発地から目的地までの経路を算出してステップS212に進む。ステップS212において、行動履歴解析サーバ50のコンテンツ取得テーブル55を参照し、ステップS211において算出した経路に要求位置が含まれるコンテンツを特定する。これにより、車両5が出発地から目的地まで走行する際に車載端末10で利用される可能性が高いコンテンツを特定する。たとえば、算出した経路に「LocA」、「Loc B」、および「LocD」が含まれる場合は、コンテンツAおよびBが特定される。次にステップS213に進む。
【0037】
ステップS213において、S212で特定されたコンテンツのうち、コンテンツ取得テーブル55の「通信状態」と「アクセス頻度」の評価点数の合計値が5点以下であるコンテンツの有無を判断する。ここで、通信状態とアクセス頻度の評価点数の合計値は、その値が低いコンテンツほど、携帯端末20と基地局60との無線通信の通信状態が悪い通信不良場所において、当該コンテンツが過去に頻繁に取得されたことを表している。その結果、5点以下のコンテンツがあると判断する場合はステップS214に進み、特定したすべてのコンテンツが6点であると判断する場合は
図10に示すフローチャートを終了する。ただし、あるコンテンツに複数の要求位置が含まれる場合は、推定される走行経路によらず、通信状態とアクセス頻度の合計値が一番低い値を参照する。なお、評価点数が6点のコンテンツはプッシュ配信されないので、ユーザがコンテンツを利用する都度、外部サーバ71から取得されることとなる。
以上説明したステップS212およびS213の処理により、コンテンツ事前配信部47は、車両5が出発地から目的地まで走行する際に、携帯端末20と基地局60との無線通信の通信状態が悪い通信不良場所で車載端末10により利用される可能性が高いコンテンツを、コンテンツ取得テーブル55に基づいて事前に特定することができる。ここで、前述のようにコンテンツ取得テーブル55は、複数の車載端末10から送信された行動履歴16bを蓄積した行動履歴DB54に基づいて作成されるものである。すなわち、ステップS212およびS213の処理では、複数の車載端末10における過去のコンテンツ利用履歴に基づいて、通信不良場所で利用される可能性が高いコンテンツが特定される。
【0038】
ステップS214において、ステップS211において特定されたコンテンツのうち、評価点数の合計値が5以下であるコンテンツ、およびコンテンツのキャッシュの有効期限を外部サーバ71から取得してステップS215に進む。
ステップS215において、ステップS211で算出された経路及び現在時刻から、車載端末10がコンテンツ取得テーブル55の要求位置にキャッシュの有効期限内に到達するか否かを判断する。キャッシュの有効期限内に到達すると判断する場合はステップS216に進み、キャッシュの有効期限内に到達できないと判断する場合は
図10に示すフローチャートを終了する。
【0039】
ステップS216において、S211で特定されたコンテンツのうち、コンテンツ取得テーブル55の通信状態とアクセス頻度の評価点数の合計値が4点以下のコンテンツが存在するか否かを判断する。4点以下のコンテンツが存在すると判断する場合はステップS217へ進み、4点以下のコンテンツが無いと判断する場合はステップS218へ進む。これにより、携帯端末20と基地局60の間の無線通信の通信状態およびコンテンツが利用される頻度を表す評価点数の合計値を、当該コンテンツの優先度として設定する。この優先度の大きさに基づいて、当該コンテンツをサーバキャッシュ46aに保存すべきか、または他のキャッシュに保存すべきかを判断する。
ステップS217において、コンテンツ取得テーブル55の通信状態とアクセス頻度の評価点数の合計値が4点以下のコンテンツを、その評価点数とともに携帯端末20へプッシュ配信し、ステップS218へ進む。これにより、当該コンテンツがAPサーバ40から携帯端末20へ、または携帯端末20を介して車載端末10へと送信される。S218ではコンテンツ取得テーブル55の通信状態とアクセス頻度の合計が5点のコンテンツをAPサーバ40のサーバキャッシュ46aに保存する。
【0040】
(携帯端末のプッシュ配信のフローチャート)
図11は、携帯端末20によるコンテンツのプッシュ配信の動作を説明するフローチャートである。以下に説明する各ステップの実行主体は、携帯端末20のコンテンツ事前中継部27である。
ステップS240において、APサーバ40からコンテンツ、および各コンテンツの評価点数を受信し、ステップS241に進む。ステップS241において、評価点数が2点のコンテンツの有無を判断する。2点のコンテンツがあると判断する場合はステップS242に進み、2点のコンテンツがないと判断する場合はステップS243に進む。これにより、携帯端末20と基地局60の間の無線通信の通信状態およびコンテンツが利用される頻度を表す評価点数の合計値を、当該コンテンツの優先度として設定する。この優先度の大きさに基づいて、当該コンテンツを携帯キャッシュ26aに保存すべきか、または車載キャッシュ16aに保存すべきかを判断する。
【0041】
ステップS242において、評価点数が2点のコンテンツを車載端末10へプッシュ配信し、ステップS243へ進む。なお、コンテンツを受信した車載端末10のコンテンツ事前取得部17は、受信したコンテンツを車載キャッシュ16aに保存する。
ステップS243において、APサーバ40から受信したコンテンツのうち評価点数が2点より大きいコンテンツ、すなわち評価点数が3〜4点のコンテンツを携帯キャッシュ26aに保存し、
図11に示すフローチャートを終了する。
【0042】
(車載端末のコンテンツ要求のフローチャート)
図12は、車載端末10によるコンテンツ要求の処理を示すフローチャートである。以下で説明する各ステップの実行主体は、車載端末制御部13のCPUである。
ステップS310において、入力部11を介してユーザからコンテンツを起動する要求を受け付けるとステップS311に進む。ステップS311において、キャッシュ処理部19を用いて要求されたコンテンツをキャッシュ16aから検索し、ステップS312に進む。
【0043】
ステップS312において、ステップS310において要求されたコンテンツが車載キャッシュ16aの中に存在するか否かを判断する。存在すると判断する場合はステップS313に進み、存在しないと判断する場合はステップS314へ進む。ステップS313において、当該コンテンツのキャッシュの有効期限を経過しているか否かを判断する。有効期限を経過していると判断する場合はステップS314に進み、有効期限を経過していないと判断する場合はステップS317へ進む。
【0044】
ステップS314において、携帯端末20へコンテンツ要求を送信し、ステップS315に進む。ステップS315において、要求がタイムアウトもしくは失敗したか否かを判断する。タイムアウトまたは失敗したと判断する場合はステップS318に進み、その他の場合はステップS316に進む。ステップS316において、携帯端末20から正常な応答を受信したか否かを判断する。正常な応答を受信したと判断する場合はステップS316aに進み、正常な応答を受信していないと判断する場合はステップS318に進む。
【0045】
ステップS316aにおいて、行動履歴処理部18により、ステップS314において要求したコンテンツに関する履歴を行動履歴16bとして記録させる。すなわち、ステップS316aにおける処理により、
図3に例示した行動履歴16bの記録が1行分増加する。次にステップS317に進む。
ステップS317において、取得したコンテンツを実行して表示部12に表示し、
図12のフローチャートを終了する。ステップS318において、表示部12へ要求失敗箇所を含んだ要求失敗メッセージを表示し、
図12のフローチャートを終了する。
【0046】
(携帯端末のコンテンツ要求のフローチャート)
図13は、携帯端末20によるコンテンツ要求の処理を示すフローチャートである。以下で説明する各ステップの実行主体は、携帯端末制御部23のCPUである。
ステップS410において、車載端末10からコンテンツ要求を受信しステップS411に進む。ステップS411において、キャッシュ処理部29を用いて要求されたコンテンツを携帯キャッシュ26aから検索し、ステップS412に進む。
【0047】
ステップS412において、ステップS410において要求されたコンテンツが携帯キャッシュ26aの中に存在するか否かを判断する。存在すると判断する場合はステップS413に進み、存在しないと判断する場合はステップS414へ進む。ステップS413において、当該コンテンツのキャッシュの有効期限が切れているか否か、すなわち有効期限を経過しているか否かを判断する。有効期限が切れていると判断する場合はステップS414に進み、有効期限が切れていないと判断する場合はステップS417へ進む。
【0048】
ステップS414において、APサーバ40へコンテンツ要求を送信し、ステップS415に進む。ステップS415において、要求がタイムアウトもしくは失敗したか否かを判断する。タイムアウトまたは失敗したと判断する場合はステップS418に進み、その他の場合はステップS416に進む。ステップS416において、APサーバ40から正常な応答を受信したか否かを判断する。正常な応答を受信したと判断する場合はステップS417に進み、正常な応答を受信していないと判断する場合はステップS418に進む。
ステップS417において、車載端末10へコンテンツ応答を送信し、
図13のフローチャートを終了する。ステップS418において、車載端末10へ要求失敗箇所を含んだ要求失敗メッセージを送信し、
図13のフローチャートを終了する。
【0049】
(APサーバのコンテンツ要求のフローチャート)
図14は、APサーバ40によるコンテンツ要求の処理を示すフローチャートである。以下で説明する各ステップの実行主体は、APサーバ制御部43のCPUである。
ステップS230において、携帯端末20からコンテンツ要求を受信しステップS231に進む。ステップS231において、キャッシュ処理部49を用いて要求されたコンテンツをサーバキャッシュ46aから検索し、ステップS232に進む。
【0050】
ステップS232において、ステップS230において要求されたコンテンツがサーバキャッシュ46aの中に存在するか否かを判断する。存在すると判断する場合はステップS233に進み、存在しないと判断する場合はステップS234へ進む。ステップS233において、当該コンテンツのキャッシュの有効期限が切れているか否か、すなわち有効期限を経過しているか否かを判断する。有効期限が切れていると判断する場合はステップS234に進み、有効期限が切れていないと判断する場合はステップS417へ進む。
【0051】
ステップS234において、疎通確認部48aを用いて外部サーバ71との疎通の有無を判断する。外部サーバ71との疎通があると判断する場合はステップS235に進み、外部サーバ71との疎通がないと判断する場合はステップS239へ進む。
ステップS235において、外部サーバ71へコンテンツ要求を送信し、ステップS236に進む。ステップS236において、要求がタイムアウトもしくは失敗したか否かを判断する。タイムアウトまたは失敗したと判断する場合はステップS239に進み、その他の場合はステップS237に進む。ステップS237において、外部サーバ71から正常な応答を受信したか否かを判断する。正常な応答を受信したと判断する場合はステップS238に進み、正常な応答を受信していないと判断する場合はステップS239に進む。
ステップS238において、車載端末10へコンテンツ応答を送信し、
図14のフローチャートを終了する。ステップS418において、携帯端末20へ要求失敗箇所を含んだ要求失敗メッセージを送信し、
図14のフローチャートを終了する。
【0052】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)コンテンツ配信システム1は、携帯端末20と基地局60との間で行われる無線通信を介して接続される車載端末10とAPサーバ40とを含む。APサーバ40は、この無線通信の通信状態が悪い通信不良場所で車載端末10により利用される可能性が高いコンテンツを特定し(ステップS212、S213)、車載端末10を搭載した車両5が通信不良場所に到達する前に、特定したコンテンツを車載端末10に送信する(ステップS217)事前送信部、すなわちコンテンツ事前配信部47を備える。車載端末10は、コンテンツ事前配信部47により送信されたコンテンツを保存する車載端末保存部、すなわち車載キャッシュ16aを有する記憶部16を備える。
コンテンツ配信システム1をこのように構成したので、車載端末10の記憶部16に通信不良場所で利用されるコンテンツが保存されるので、車載端末10は通信状態が悪い場所でもコンテンツを利用できる。
【0053】
(2)APサーバ40には、車載端末10が複数接続される。APサーバ40の事前送信部、すなわちコンテンツ事前配信部47は、ステップS212、S213において、複数の車載端末10における過去のコンテンツ利用履歴に基づいて、通信不良場所で利用される可能性が高いコンテンツを特定する。
そのため、複数の車載端末10のコンテンツの利用履歴に基づいて車載端末10にプッシュ配信するコンテンツを特定することができる。たとえば、ある車載端末10を搭載した車両5がはじめて通行する通信不良場所でも、他の携帯端末20のコンテンツの利用履歴に基づきコンテンツのプッシュ配信を受けることができる。
【0054】
(3)車載端末10は、APサーバ40からコンテンツを取得した際の携帯端末20と基地局60との間の無線通信の通信状態および車両5の位置に関する行動履歴16bを行動履歴解析サーバ50に送信する(ステップS80、S81)行動履歴処理部18を備える。APサーバ40のコンテンツ事前配信部47は、行動履歴処理部18から送信された行動履歴16bに基づいて無線通信の通信状態とアクセス頻度がコンテンツごとに記録されたコンテンツ取得テーブル55を用いて、通信不良場所で利用される可能性が高いコンテンツを特定する。
そのためコンテンツ事前配信部47は、コンテンツ取得テーブル55を参照することで効率よく携帯端末20にプッシュ配信するコンテンツを決定することができる。
【0055】
(4)APサーバ40は、車両5の出発地から目的地への経路を算出する(ステップS211)経路算出部48bを備える。APサーバ40のコンテンツ事前配信部47は、経路算出部48bにより算出された経路中の通信不良場所で車載端末10により利用される可能性が高いコンテンツを特定し、当該車載端末10に配信する。
そのためコンテンツ事前配信部47は、これから車載端末10を搭載した車両5が通行する通信不良場所を推定し、その通信不良場所で利用されるコンテンツをプッシュ配信できる。
【0056】
(5)コンテンツ配信システム1は、車載端末10とAPサーバ40との通信を中継し車載端末10とともに移動する携帯端末20、およびAPサーバ40からの要求に応じてコンテンツを提供するコンテンツ提供サーバ、すなわち外部サーバ71を備える。携帯端末20は、コンテンツ事前配信部47により送信されたコンテンツを保存する携帯端末保存部、すなわち携帯キャッシュ26aを有する記憶部26を備える。APサーバ40は、コンテンツを保存するサーバ保存部、すなわちサーバキャッシュ46aを有する記憶部46を備える。APサーバ40のコンテンツ事前配信部47は、コンテンツを外部サーバ71から取得し、車載キャッシュ16a、携帯キャッシュ26a、およびサーバキャッシュ46aのいずれか1つに保存させる。
そのため、複数のキャッシュを利用してコンテンツを保存することができる。
【0057】
(6)APサーバ40のコンテンツ事前配信部47は、無線通信の通信状態、および/またはコンテンツが利用される頻度に基づき、記憶部16、記憶部26、および記憶部46のいずれにコンテンツを保存させるかを決定する。
そのため、コンテンツが利用できる確率が高くなるように、無線通信の通信状態やコンテンツが利用される頻度に基づき、コンテンツの保存先を決定することができる。
【0058】
(7)APサーバ40のコンテンツ事前配信部47は、コンテンツ取得テーブル55の通信状態とアクセス頻度の評価点数の合計値を用いて、無線通信の通信状態、および/またはコンテンツが利用される頻度に基づき、コンテンツの優先度を設定する。そして、コンテンツの優先度が高い場合にはコンテンツを記憶部16に保存させ、コンテンツの優先度が中程度の場合にはコンテンツを記憶部26に保存させ、コンテンツの優先度が低い場合にはコンテンツを記憶部46に保存させる。
【0059】
コンテンツを利用する車載端末10が備える車載キャッシュ16aにコンテンツを保存することが、通信が不要であり読み込みも高速なので最も好ましい。しかし、車載キャッシュ16aのサイズには限りがあるので、同一の車両5に搭載される携帯端末20の携帯キャッシュ26aにコンテンツを保存することが次に望ましい。また、携帯端末20と基地局60とを接続する無線通信には障害が発生していなくとも、外部サーバ71に障害が発生することや、外部サーバ71とAPサーバ40との間の通信に障害が発生することも考えられる。そのため、APサーバ40のサーバキャッシュ46aにコンテンツを保存することも有益である。以上を総合すると、コンテンツの保存先として最も好ましいのが車載キャッシュ16aであり、次に携帯キャッシュ26a、最後にサーバキャッシュ46aとなる。
したがって、コンテンツ事前配信部47をこのように構成したので、コンテンツの優先度が高いほどより好ましい保存先にコンテンツを保存することができる。
【0060】
(変形例1)
第1の実施の形態では、携帯端末20の行動履歴処理部28は、コンテンツを外部サーバ71から取得した際に、コンテンツを取得している期間における電波強度の平均値を車載端末10に送信した。しかし、行動履歴処理部28は電波強度の情報を行動履歴解析サーバ50に送信してもよい。すなわち、車載端末10と携帯端末20から送信された情報を統合して、行動履歴解析サーバ50に行動履歴DB54が構築できればよい。
さらに、行動履歴DB54に蓄積される情報は、他の端末から送信された情報でもよい。たとえば、車載端末10のメモリーカードインタフェース14に接続されたメモリーカードに行動履歴16bを保存し、メモリーカードをPC(図示外)に接続してPCからネットワーク網6経由で行動履歴解析サーバ50へ送信してもよい。
【0061】
(変形例2)
第1の実施の形態では、行動履歴解析部52は、携帯端末20と基地局60とを接続する無線通信の種類を区別せずにコンテンツ取得テーブル55を作成したが、無線通信の種別を考慮してもよい。無線通信の種別とは、たとえば通信キャリアや周波数、通信方式である。携帯端末20が利用する基地局60は、通信キャリアごとに個別に設けられることが一般的なので、同一の地点であっても通信キャリアごとに電波強度が異なる。周波数や通信方式により、障害物から受ける影響や通信速度が異なる。また、通信キャリアを選択するユーザの嗜好により、通信キャリアごとにアクセス頻度が異なることも考えられる。
【0062】
図15は、無線通信の通信キャリアを考慮したコンテンツ取得テーブル55aの一例を示す図である。
図15に示すように、コンテンツおよび要求位置が同じでも、通信キャリアにより通信状態、およびアクセス頻度が異なる。コンテンツ取得テーブル55aをこのように構成すると、特定の通信キャリアを使用している端末に対してのみプッシュ配信することも起こりえる。
行動履歴解析部52が上記のようにコンテンツ取得テーブル55aを作成するためには、第1の実施の形態から以下のように変更する。すなわち、携帯端末20の行動履歴処理部28は、外部サーバ71からコンテンツを取得した際に電波強度に加えて通信キャリアの情報を車載端末10に伝達し、車載端末10は通信キャリアを行動履歴16bに含めて保存する。
【0063】
(変形例3)
第1の実施の形態では、プッシュ配信されたコンテンツは、車載キャッシュ16a、携帯キャッシュ26a、およびサーバキャッシュ46aのいずれか1か所に保存された。しかし、複数の個所で重複して保存してもよい。たとえば、APサーバ40のコンテンツ事前配信部47は、携帯端末20にコンテンツを送信する際に、そのコンテンツをサーバキャッシュ46aに保存してもよい。
この変形例3によれば、あるキャッシュが利用できなくなった際に、他のキャッシュを利用することができる。
【0064】
(変形例4)
第1の実施の形態では、プッシュ配信されたコンテンツは、車載キャッシュ16a、携帯キャッシュ26a、およびサーバキャッシュ46aのいずれか1か所に保存された。しかし、少なくともいずれか1か所に保存されればよい。たとえば、APサーバ40はサーバキャッシュ46aを備えず、プッシュ配信されるコンテンツは車載キャッシュ16a、または携帯キャッシュ26aにのみ保存されてもよい。
【0065】
(変形例5)
コンテンツ事前配信部47は、コンテンツの一部のみをプッシュ配信してもよいし、当該コンテンツの他の一部を他の端末にプッシュ配信してもよい。たとえば、コンテンツに必須のデータを車載端末10にプッシュ配信して車載キャッシュ16aに保存させ、当該コンテンツに必須ではないが高い頻度で必要となるデータを携帯端末20にプッシュ配信して携帯キャッシュ26aに保存させ、低い頻度で必要となるデータをAPサーバ40のサーバキャッシュ46aに保存させてもよい。
【0066】
(変形例6)
第1の実施の形態では、行動履歴解析部52は通信状態、およびアクセス頻度に基づきコンテンツの優先度を評価した。しかし、アクセス頻度やダウンロード速度をコンテンツの優先度を評価に考慮しなくてもよい。すなわち、少なくとも電波強度をコンテンツの優先度を評価に考慮すればよい。
【0067】
(変形例7)
第1の実施の形態では、コンテンツ事前配信部47は車載端末10から受信した出発地と目的地とに基づき経路を算出し、プッシュ配信するコンテンツを決定した。しかし、ユーザが目的地を設定しない場合にプッシュ配信を行ってもよい。たとえば、当該車載端末10が過去に通行した移動経路の履歴や、他の車載端末10の移動履歴、および車載端末10の現在位置に基づき移動経路を推定し、プッシュ配信を行う。さらに、車載端末10の現在位置が推定した移動経路から外れた場合には、再度移動経路を推定しプッシュ配信を行ってもよい。
これを実現するために、車載端末10はGNSS受信機4の出力する現在位置を所定時間ごとに記録し、移動経路に関する情報をAPサーバ40に送信する。APサーバ40は、車載端末10から送信された移動経路に関する情報を蓄積し、前述した移動経路の推定に利用する。
【0068】
(変形例8)
第1の実施の形態では、コンテンツ事前配信部47は車載端末10から受信した出発地と目的地とに基づき経路を算出し、プッシュ配信するコンテンツを決定した。しかし、経路を算出せず、当該車載端末10の現在位置から所定の距離、たとえば半径10km以内の通信不良場所を算出し、コンテンツ取得テーブル55を参照してプッシュ配信を行ってもよい。
すなわち、車載端末10の現在位置を受信すると、その位置から所定の距離以内の通信不良場所が要求位置に含まれるコンテンツをコンテンツ取得テーブル55から抽出し、そのコンテンツをプッシュ配信する。
【0069】
この変形例8によれば、以下の作用効果が得られる。
(1)APサーバ40のコンテンツ事前配信部47は、車両5の位置の周辺における通信不良場所で車載端末10により利用される可能性が高いコンテンツを特定し、当該車載端末10に送信する。
そのため、ユーザが目的地を指定しなくても車載端末10の周辺の通信不良場所で利用されるコンテンツがプッシュ配信される。さらに、所定時間ごと、または所定距離を走行するごとにこのプッシュ配信を繰り返すことにより、いずれの通信不良場所を通行している際にもプッシュ配信されたコンテンツを利用することができる。
【0070】
(変形例9)
プッシュ配信されるコンテンツは、キャッシュとしての利用制限が課されていてもよい。利用制限が課されている場合には、コンテンツを利用する前に外部サーバ71に利用の可否を問い合わせ、外部サーバ71から利用可能な旨の回答、または新たなコンテンツを取得してコンテンツを利用する。利用制限の有無は、キャッシュの有効期限と同様にコンテンツとともにプッシュ配信される。
【0071】
この場合は、第1の実施の形態におけるフローチャートを以下のように変更すればよい。
図12のステップS313、
図13のステップS413、
図14のステップS233において、キャッシュの有効期限が経過している場合、または利用制限が課されている場合に肯定判断を行い、キャッシュの有効期限が経過しておらず、なおかつ利用制限が課されていない場合に否定判断を行う。肯定判断を行った場合は、
図12のステップS314、
図13のステップS414、
図14のステップS235において、コンテンツの要求に代えてコンテンツの利用可否を問い合わせる。
【0072】
(変形例10)
第1の実施の形態では、車載端末10、携帯端末20、およびAPサーバ40のコンテンツ要求時の処理におけるタイムアウト時間を規定しなかった。しかし、タイムアウト時間を以下のような関係に設定してもよい。
図12のステップS315におけるタイムアウト時間は、
図13のステップS415におけるタイムアウト時間より長く、
図13のステップS415におけるタイムアウト時間は、
図14のステップS236におけるタイムアウト時間より長い。このように関係を有するタイムアウト時間を設定することにより、たとえばAPサーバ40の要求処理が完了しない内に携帯端末20がタイムアウトと判定することが防止される。
【0073】
(変形例11)
第1の実施の形態では、コンテンツは情報および出力プログラムから構成されていた。しかし、コンテンツは出力プログラムを含まない情報のみから構成されてもよい。この場合は、車載端末10に備えられた出力プログラムを用いてコンテンツが利用される。
(変形例12)
第1の実施の形態では、コンテンツは車載端末10により実行された。しかし、コンテンツが携帯端末20により実行され、コンテンツの画像および音声が車載端末10に転送されて、車載端末10から出力されてもよい。この場合は、評価点数が2点のコンテンツを携帯端末20の携帯キャッシュ26aに保存し、評価点数が3〜4点のコンテンツを車載端末10の車載キャッシュ16aに保存する。
【0074】
(変形例13)
コンテンツ要求の処理において、タイムアウトを待たずに通信が失敗したと判断して処理を進めてもよい。たとえば、
図13のステップS415では、電波強度の時系列変化を監視し、電波強度が非常に弱くなると予測する場合、または圏外になるエリアに入ると予測する場合は、タイムアウトを待たずに要求失敗と判断しステップS418に進む。
図14のステップS236では、疎通確認部48aによる外部サーバ71との通信エラーの割合が所定の割合を超えた場合に、要求失敗と判断しステップS239に進む。
【0075】
(変形例14)
携帯端末20のコンテンツ事前中継部27は、車両の現在位置と走行情報、自身の行動履歴情報より、現時点ではネットワーク網7へ接続できないが、まもなく接続できると判断した場合、車載端末10へタイムアウト時間の延長を要求してもよい。車載端末10が携帯端末20へタイムアウト時間延長の応答を返した場合、携帯端末20はネットワーク網7と通信可能となるまで待機してからAPサーバ40と通信を行う。
【0076】
(変形例15)
コンテンツ事前配信部47は、コンテンツの容量を考慮してプッシュ配信を行うコンテンツを制限してもよい。車載端末10の記憶部16および携帯端末20の記憶部26は容量が比較的小さいため、情報量の大きなコンテンツを保存することが困難である。そのためコンテンツ事前配信部47は、所定の情報量以上のコンテンツのプッシュ配信を行わないことにしてもよい。また、コンテンツの情報量ではなくコンテンツの種別によりプッシュ配信を行うコンテンツを制限してもよい。たとえば、動画データや車両走行ルートの検索データを含むコンテンツは情報量が非常に大きい傾向にあるので、車載端末10および携帯端末20へのプッシュ配信を制限する。
【0077】
(変形例16)
コンテンツ事前配信部47は、ネットワーク間の通信時間を考慮してコンテンツに設定されているキャッシュの有効期限を評価してもよい。すなわち、車載端末10、携帯端末20、APサーバ40が出力する通信ログをAPサーバ40が解析して各ネットワーク間の通信時間を把握し、各ネットワーク間の通信時間に応じて、キャッシュの有効期限を設定されていた値より短くする。プッシュ配信先とキャッシュの有効期限の関係は、設定されていた有効期限≧APサーバ40向けに評価する有効期限≧携帯端末20向けに評価する有効期限≧車載端末10向けに評価する有効期限、となる。さらに、車両の現在地や目的地などの情報を用いて、キャッシュの有効期限を短く評価してもよい。また、これらの情報を通信時間と組合せてキャッシュの有効期限を評価してもよい。
【0078】
(変形例17)
第1の実施の形態では、行動履歴解析サーバ50の行動履歴DB54には、複数の車載端末10から送信された行動履歴16bが蓄積された。しかし、1台の車載端末10のみから送信された行動履歴16bが蓄積されてもよい。また、行動履歴解析サーバ50が複数の行動履歴DB54を備え、車載端末10ごとに異なる行動履歴DB54に行動履歴16bが蓄積されてもよい。
【0079】
(変形例18)
第1の実施の形態では、APサーバ40、および行動履歴解析サーバ50はそれぞれ1台のサーバ装置として説明した。しかし、APサーバ40、および行動履歴解析サーバ50がそれぞれ複数のサーバから構成され、これら複数のサーバが全体としてAPサーバ40および行動履歴解析サーバ50の機能を発揮してもよい。
APサーバ40と行動履歴解析サーバ50との間で機能の分担を変更してもよく、たとえばAPサーバ40が行動履歴DB54を備えてもよい。すなわち、データセンタ30がアプリケーションサーバ40と行動履歴解析サーバ50の機能を備えれば、ハードウエアの構成および機能分担は第1の実施の形態における記載に限定されない。
【0080】
(変形例19)
コンテンツ配信システム1は、APサーバ40と車載端末10のみから構成されてもよい。この場合は、APサーバ40が、行動履歴解析サーバ50および外部サーバ71の機能を兼ね備え、車載端末10が携帯端末20の機能を兼ね備える。
この場合は、APサーバ40が行動履歴DB54、コンテンツ取得テーブル55、およびコンテンツをさらに備え、サーバキャッシュ46aを備えない。車載端末10が基地局60と無線通信を行うための外部数新インタフェース24をさらに備える。
【0081】
(変形例20)
コンテンツ取得テーブルが、プッシュ配信によりコンテンツが保存される装置(以下、キャッシュ先)を記録する欄を備えてもよい。
図16は、キャッシュ先の欄を備えるコンテンツ取得テーブル55bの一例を示す図である。
この場合には、行動履歴解析部52は、第1の実施の形態で述べた処理を行った後で、「通信状態」と「アクセス頻度」の評価点数の合計値に基づき、キャッシュ先を決定する。たとえば、評価点数とキャッシュ先を、2点の場合は「車載端末」、3〜4点の場合は「携帯端末」、5点の場合は「サーバ」、6点の場合は「なし」とする。
APサーバ40のコンテンツ事前配信部47は、コンテンツ取得テーブル55bの「キャッシュ先」の欄を参照して動作を決定する。すなわち、該当するコンテンツの「キャッシュ先」が「車載端末」および「携帯端末」の場合は携帯端末20にプッシュ配信を行い、「サーバ」の場合はAPサーバ40のサーバキャッシュ46aに保存し、「なし」の場合は処理を行わない。
【0082】
(第2の実施の形態)
本発明によるコンテンツ配信システムの第2の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、車載キャッシュ16a、および携帯キャッシュ26aに保存したコンテンツを削除する点で、第1の実施の形態と異なる。
APサーバ40は、車載端末10、携帯端末20へプッシュ配信を行う際に、コンテンツ取得テーブル55の通信状態とアクセス頻度をコンテンツに付加して送信する。
【0083】
車載端末10のキャッシュ処理部19、および携帯端末20のキャッシュ処理部29は、記憶部16、および記憶部26の残り容量が所定の閾値よりも少なくなると、以下の処理により車載キャッシュ16a、および携帯キャッシュ26aに保存されたコンテンツを削除する。以下の処理は、キャッシュ処理部19とキャッシュ処理部29が同様の処理なので、キャッシュ処理部19の処理のみを説明する。
キャッシュ処理部19は、記憶部16の残り容量が所定の閾値よりも少なくなると、キャッシュに付加された通信状態とアクセス頻度を参照し、通信状態とアクセス頻度の評価点数の和が最も大きいキャッシュを削除する。評価点数の和が同じ場合は通信状態、またはアクセス頻度の評価値が大きいコンテンツを優先して削除する。通信状態とアクセス頻度の評価点数のどちらかのみを参照して削除するコンテンツを決定してもよい。
【0084】
以上説明した第2の実施の形態によれば、以下の作用効果が得られる。
(1)車載端末10は、無線通信の通信状態、および/またはコンテンツが利用される頻度に基づき、車載端末保存部から削除するコンテンツを決定するキャッシュ削除部、すなわちキャッシュ処理部19を備える。
そのため、通信状態やアクセス頻度に基づいた車載キャッシュ16a、および携帯キャッシュ26aの管理が可能である。一般的にキャッシュの入れ替え方法として、LRU(Least Recently Used)、LFU(Least Frequently Used)や、キャッシュの生成時刻の古いものから削除する方法等が知られている。しかしこれらの方法は、記憶部16、および記憶部26に保存されているコンテンツの利用頻度などに着目しており、通信状態やアクセス頻度が考慮されない。
【0085】
上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。