特許第6444265号(P6444265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6444265排ガス浄化触媒、その製造方法、及び、それを用いた排ガス浄化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444265
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】排ガス浄化触媒、その製造方法、及び、それを用いた排ガス浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/44 20060101AFI20181217BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20181217BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20181217BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20181217BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   B01J23/44 AZAB
   B01J37/08
   B01D53/94 280
   B01D53/94 223
   B01D53/94 245
   F01N3/10 A
   B01J32/00
【請求項の数】6
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-110582(P2015-110582)
(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公開番号】特開2016-10798(P2016-10798A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年10月10日
(31)【優先権主張番号】特願2014-114235(P2014-114235)
(32)【優先日】2014年6月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 拓飛
(72)【発明者】
【氏名】山崎 清
(72)【発明者】
【氏名】新名 祐介
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 優一
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−019521(JP,A)
【文献】 特開2010−194384(JP,A)
【文献】 特開2013−220377(JP,A)
【文献】 特開2009−172522(JP,A)
【文献】 特開2000−026108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/86−53/90
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ担体と、該アルミナ担体の表面に形成されたシリカ層と、該シリカ層に担持された白金及びパラジウムからなる活性金属粒子とを備え、
前記シリカ層の平均膜厚が、アルミナ(Al)の単分子層の0.5〜2.5倍に相当する膜厚であり、
前記活性金属粒子の平均粒子径が2.0nm以下であり、
前記活性金属粒子における粒子径2.0nm以下の微粒子の比率が、全活性金属粒子に対して粒子数基準で50%以上であり、かつ、
前記微粒子におけるパラジウム含有率が10〜90at%である合金微粒子の比率が、全微粒子に対して粒子数基準で50%以上である、
ことを特徴とする排ガス浄化触媒。
【請求項2】
前記活性金属粒子における粒子径2.0nm以下の微粒子の比率が、全活性金属粒子に対して粒子数基準で90%以上であり、かつ、
前記微粒子におけるパラジウム含有率が10〜90at%である合金微粒子の比率が、全微粒子に対して粒子数基準で80%以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項3】
前記微粒子におけるパラジウム含有率が40〜60at%である合金微粒子の比率が、全微粒子に対して粒子数基準で80%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項4】
前記白金の担持量が、金属換算で、前記担体100質量部に対して0.1〜10質量部であり、かつ、
前記パラジウムの担持量が、金属換算で、前記担体100質量部に対して0.01〜5.0質量部である、
ことを特徴とする請求項1〜のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項5】
アルミナ担体に有機珪素を用いてシリカを担持せしめて表面にシリカ層を有するアルミナ担体を得る工程と、
前記表面にシリカ層を有するアルミナ担体に、白金塩とパラジウム塩との溶液、又は、白金とパラジウムとの合金微粒子のコロイド溶液、を用いて白金及びパラジウムを担持せしめる工程と、
前記白金及びパラジウムが担持されたアルミナ担体に400〜600℃で熱処理を施すことにより請求項1〜のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒を得る工程と、
を含むことを特徴とする排ガス浄化触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒に内燃機関から排出された排ガスを接触せしめて排ガスを浄化することを特徴とする排ガス浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化触媒、その製造方法、及び、それを用いた排ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ディーゼルエンジン、燃料消費率の低い希薄燃焼式(リーンバーン)エンジン等の内燃機関から排出されるガス中に含まれる有害な成分(例えば一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、一酸化窒素(NO)、等)を浄化するために、様々な種類の排ガス浄化触媒が研究されてきた。そして、そのような排ガス浄化触媒として、各種の金属酸化物を担体に用いた排ガス浄化触媒が提案されている。
【0003】
このような排ガス浄化触媒としては、例えば、特開2007−697号公報(特許文献1)において、アルミナ等の金属酸化物からなる担体の細孔内部に担持されたPt、Pd、Rh等の貴金属粒子の表面をAl、Zr、Ce、Si等を含む金属酸化物からなる凝集抑制材で包接又は被覆した排ガス浄化触媒が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載のような従来の排ガス浄化触媒は、低温でのCO、HC、NO等に対する酸化活性は必ずしも十分なものではなかった。
【0004】
また、特開平11−138008号公報(特許文献2)において、結晶性シリカ多孔体よりなる担体にPt、Rh、Pd等の触媒貴金属が担持された排ガス浄化用触媒であって、前記担体は酸化アルミニウムに対する二酸化珪素のモル比(SiO/Al)が1000以上であるとともに、メソ細孔をもつ粒子を5体積%以上含んで該メソ細孔の細孔径のピーク値が4.0nm以下にある細孔分布を有し、少なくとも該メソ細孔に触媒貴金属がイオン交換担持されている排ガス浄化用触媒が開示されている。更に、特開2013−107055公報(特許文献3)において、Al、Ti、Zr及びCeからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物からなる多孔質体(A)と、前記多孔質体(A)に担持されている、Ti、Fe及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含むSi系複合酸化物粒子(B)とを備えており、800℃で空気中において5時間焼成後の比表面積が100m/g以上でありかつ前記焼成後の細孔半径1〜5nmの細孔の細孔容積の割合が細孔半径1〜100nmの細孔の細孔容積に対して8〜50%である排ガス浄化用触媒担体、並びに、該担体と、前記排ガス浄化用触媒担体に担持されている、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の元素からなる活性金属粒子(C)とを備える排ガス浄化用触媒が開示されている。
【0005】
しかしながら、近年は、排ガス浄化触媒に対する要求特性が益々高まっており、低温においても一酸化炭素、炭化水素、一酸化窒素等に対してより十分な酸化活性を発揮する排ガス浄化触媒が求められるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−697号公報
【特許文献2】特開平11−138008号公報
【特許文献3】特開2013−107055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、低温においても一酸化炭素、炭化水素、一酸化窒素等に対してより十分な酸化活性を発揮する排ガス浄化触媒、その製造方法、及び、それを用いた排ガス浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アルミナ担体の表面にシリカ層を形成し、該シリカ層の表面に白金及びパラジウムからなる活性金属粒子を担持させるとともに、前記活性金属粒子における特定粒子径の微粒子の比率を全活性金属粒子に対して特定割合とし、かつ、このような微粒子におけるパラジウム含有率が特定比率の合金微粒子を特定割合とすることにより、低温においても一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、一酸化窒素(NO)等に対してより十分な酸化活性を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の排ガス浄化触媒は、アルミナ担体と、該アルミナ担体の表面に形成されたシリカ層と、該シリカ層に担持された白金及びパラジウムからなる活性金属粒子とを備え、前記シリカ層の平均膜厚が、アルミナ(Al)の単分子層の0.5〜2.5倍に相当する膜厚であり、前記活性金属粒子の平均粒子径が2.0nm以下であり、前記活性金属粒子における粒子径2.0nm以下の微粒子の比率が、全活性金属粒子に対して粒子数基準で50%以上であり、かつ、前記微粒子におけるパラジウム含有率が10〜90at%である合金微粒子の比率が、全微粒子に対して粒子数基準で50%以上である、ことを特徴とするものである。
【0010】
このような本発明の排ガス浄化触媒においては、前記活性金属粒子における粒子径2.0nm以下の微粒子の比率が、全活性金属粒子に対して粒子数基準で90%以上であり、かつ、前記微粒子におけるパラジウム含有率が10〜90at%である合金微粒子の比率が、全微粒子に対して粒子数基準で80%以上であることが好ましい。
【0011】
更に、本発明の排ガス浄化触媒においては、前記微粒子におけるパラジウム含有率が40〜60at%である合金微粒子の比率が、全微粒子に対して粒子数基準で80%以上であることがより好ましい。
【0014】
また、本発明の排ガス浄化触媒においては、前記白金の担持量が、金属換算で、前記担体100質量部に対して0.1〜10質量部であり、かつ、前記パラジウムの担持量が、金属換算で、前記担体100質量部に対して0.01〜5.0質量部であることが好ましい。
【0015】
本発明の排ガス浄化触媒の製造方法は、アルミナ担体に有機珪素を用いてシリカを担持せしめて表面にシリカ層を有するアルミナ担体を得る工程と、前記表面にシリカ層を有するアルミナ担体に、白金塩とパラジウム塩との溶液、又は、白金とパラジウムとの合金微粒子のコロイド溶液、を用いて白金及びパラジウムを担持せしめる工程と、前記白金及びパラジウムが担持されたアルミナ担体に400〜600℃で熱処理を施すことにより上記本発明の排ガス浄化触媒を得る工程と、を含むことを特徴とする製造方法である。
【0016】
本発明の排ガス浄化方法は、上記本発明の排ガス浄化触媒に内燃機関から排出された排ガスを接触せしめて排ガスを浄化することを特徴とする排ガス浄化方法である。
【0017】
なお、本発明の排ガス浄化触媒において、低温でのCO及びHCに対する十分に高い酸化活性を示すことが可能となる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、本発明においては、アルミナ担体の表面にシリカ層を形成し、前記シリカ層に白金及びパラジウムからなる活性金属粒子を担持している。このようなシリカ層をアルミナ担体の表面に形成することにより、担体の表面を酸性質とすることができ、それによってアルミナと白金及びパラジウムからなる活性金属粒子との相互作用が弱められ、活性金属粒子のメタル化が促進されることにより、触媒活性がより向上することになる。
【0018】
また、本発明においては、前記活性金属粒子における粒子径2.0nm以下の微粒子の比率を、全活性金属粒子に対して粒子数基準で50%以上としている。このようなより微細な活性金属粒子とすることにより、触媒低温活性が確保できる。更に、前記微粒子におけるパラジウム含有率が10〜90at%である合金微粒子の比率を、全微粒子に対して粒子数基準で50%以上としている。このような合金率が高い白金(Pt)及びパラジウム(Pd)からなる活性金属粒子とすることにより、触媒低温活性がより向上することになる。
【0019】
このように本発明においては、活性金属粒子の微粒子化と合金化の相互作用により、排ガス浄化触媒が一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)の自己被毒(低温での強い吸着)を受け難くなり、低温においてもCO及びHCに対してより十分に高い酸化活性を示すことが可能になるものと本発明者らは推察する。
【0020】
また、本発明の排ガス浄化触媒においては、前記微粒子におけるパラジウム含有率が40〜60at%である合金微粒子の比率を、全微粒子に対して粒子数基準で80%以上とすることにより、200〜400℃におけるNOに対する酸化活性をより向上させることが可能となるが、その理由について本発明者らは以下のように推察する。すなわち、白金とパラジウムの比率(白金:パラジウム)が40:60〜60:40(at%)の範囲にある合金微粒子の比率が高くなると、アルミナと白金及びパラジウムからなる活性金属粒子との相互作用がより好適なものとなり、活性金属粒子のメタル化がより促進され、白金とパラジウムとの合金によって気相中の酸素が吸着及び活性化され、それによって200〜400℃におけるNOに対する酸化活性が向上することになるものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、低温においても一酸化炭素、炭化水素、一酸化窒素等に対してより十分な酸化活性を発揮する排ガス浄化触媒、その製造方法、及び、それを用いた排ガス浄化方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた排ガス浄化触媒の50%CO酸化温度を示すグラフである。
図2】実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた排ガス浄化触媒の50%HC酸化温度を示すグラフである。
図3】実施例2及び比較例1で得られた排ガス浄化触媒のNO酸化率を示すグラフである。
図4】実施例1で得られた排ガス浄化触媒の表面上の特定領域の状態を示す走査透過電子顕微鏡(STEM)写真である。
図5】実施例1で得られた排ガス浄化触媒の表面上の他の特定領域の状態を示す走査透過電子顕微鏡(STEM)写真である。
図6】実施例2で得られた排ガス浄化触媒の表面上の特定領域の状態を示す走査透過電子顕微鏡(STEM)写真である。
図7】比較例1で得られた比較用触媒の表面上の特定領域の状態を示す走査透過電子顕微鏡(STEM)写真である。
図8】比較例1で得られた比較用触媒の表面上の他の特定領域の状態を示す走査透過電子顕微鏡(STEM)写真である
図9】比較例2で得られた比較用触媒の表面上の特定領域の状態を示す走査透過電子顕微鏡(STEM)写真である。
図10】比較例2で得られた比較用触媒の表面上の他の特定領域の状態を示す走査透過電子顕微鏡(STEM)写真である
図11】排ガス浄化触媒の構造を示す模式図であり、図11(a)は本発明の排ガス浄化触媒の構造を示す模式図であり、図11(b)はシリカ層が無い場合の触媒の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0024】
本発明の排ガス浄化触媒は、アルミナ担体と、該アルミナ担体の表面に形成されたシリカ層と、該シリカ層に担持された白金及びパラジウムからなる活性金属粒子とを備え、前記活性金属粒子における粒子径2.0nm以下の微粒子の比率が、全活性金属粒子に対して粒子数基準で50%以上であり、かつ、前記微粒子におけるパラジウム含有率が10〜90at%である合金微粒子の比率が、全微粒子に対して粒子数基準で50%以上である、ことを特徴とするものである。このような排ガス浄化触媒とすることにより、低温においても一酸化炭素、炭化水素、一酸化窒素等に対してより十分な酸化活性を発揮することができる。
【0025】
(アルミナ担体)
本発明の排ガス浄化触媒における担体としては、アルミナ担体であることが必要である。ここで、本発明で用いる「アルミナ担体」は、前記担体がアルミナのみから構成されるもの、或いは、主としてアルミナからなり本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含み構成されるものであることを意味する。他の成分としては、この種の用途の担体として用いられる他の金属酸化物や添加剤等を用いることができる。後者の場合、担体におけるアルミナの含有量は、担体の全質量100質量%に対して60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。このような担体におけるアルミナの含有量が前記下限未満では、触媒活性を損なう傾向にある。
【0026】
なお、このような担体におけるアルミナ(Al)としては、ベーマイト型、擬ベーマイト型、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型及びα型からなる群から選択される少なくとも一種のアルミナとすることができるが、耐熱性の観点から、α−アルミナ、γ−アルミナを用いることが好ましく、活性の高いγ−アルミナを用いることが特に好ましい。
【0027】
また、このような担体に含有する他の成分として用いる金属酸化物としては、排ガス浄化触媒の担体に用いることが可能な金属酸化物であればよく、特に制限されず、例えば、担体の熱安定性や触媒活性の観点から、例えば、ランタン(La)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)等の希土類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の金属の酸化物、これらの金属の酸化物の混合物、これらの金属の酸化物の固溶体、これらの金属の複合酸化物を適宜用いることができる。更に、このような他の成分として用いる添加剤としては、排ガス浄化触媒の担体に用いることが可能な添加剤であればよく、特に制限されず、例えば、CeO、ZrO、CeO−ZrOを適宜用いることができる。
【0028】
更に、このような本発明の排ガス浄化触媒の担体としては、その形状は特に制限されないが、リング状、球状、円柱状、粒子状、ペレット状等、従来公知の形状のものを用いることができる。なお、活性金属粒子を分散性の高い状態で多く含有することができるという観点から、粒子状のものを用いることが好ましい。このような担体が粒子状のものである場合には、前記担体の平均粒子径は1.0nm〜0.5μmであることが好ましく、1.5nm〜0.1μmであることがより好ましい。前記アルミナ粒子の平均粒子径が、前記上限を超えると、貴金属が粒成長しやすくなる傾向にある。
【0029】
また、このような担体の比表面積としては、特に制限されないが、5m/g以上であることが好ましく、50m/g以上であることがより好ましい。前記比表面積が、前記下限未満では、活性金属粒子の分散性が低下し触媒性能(低温でのCO、HC、NO等に対する酸化活性)が低下する傾向にあり、CO、HC、NO等との反応の活性サイトの量が減少し、低温でのCO、HC、NO等に対する十分に高い酸化活性が得られない傾向にある。なお、このような比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。なお、このようなBET比表面積は、市販の装置を利用して求めることができる。
【0030】
更に、このような担体の製造方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。更に、このような担体としては、市販のものを用いてもよい。
【0031】
(シリカ層)
次に、本発明の排ガス浄化触媒においては、前記アルミナ担体の表面に形成されたシリカ(SiO)層を備えている。このようなシリカ層は、特に制限されないが、シリカ(SiO)層の平均膜厚が、アルミナ(Al、酸化アルミニウム)の単分子層の0.5〜2.5倍に相当する膜厚であることが好ましく、0.5〜1.5倍に相当する膜厚であることがより好ましい。シリカ層の平均膜厚が前記下限未満になると、担体の表面を十分な酸性質とすることができず活性金属粒子のメタル化の促進や触媒活性の向上が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、活性金属粒子が凝集する傾向にある。ここで、本発明で用いる「アルミナ担体の表面に形成されたシリカ(SiO)層」とは、前記シリカ(SiO)層がアルミナ担体の表面全体を被覆して構成されるもの、或いは、前記シリカ(SiO)層がアルミナ担体の表面の大部分を被覆して形成され本発明の効果を損なわない範囲で被覆されない部分を有して構成されるものであることを意味する。なお、後者の場合、シリカ(SiO)層の被覆割合は、アルミナ担体の表面の面積に対して50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。このような担体におけるシリカ(SiO)層の被覆割合が前記下限未満では、担体の表面を十分な酸性質とすることができず活性金属粒子のメタル化の促進や触媒活性の向上が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、活性金属粒子が過剰に凝集する傾向にある。
【0032】
(活性金属粒子)
次に、本発明の排ガス浄化触媒においては、前記シリカ層に白金(Pt)及びパラジウム(Pd)からなる活性金属粒子が担持されている。
【0033】
このような本発明の排ガス浄化触媒においては、前記活性金属粒子における粒子径2.0nm以下の微粒子の比率が、全活性金属粒子に対して粒子数基準で50%以上であることが必要である。このような微粒子の比率が前記下限未満では、酸化活性の高い微粒子の割合が低下するため、低温でのCO、HC、NO等に対する十分に高い酸化活性が得られない傾向にある。また、前記活性金属粒子におけるこのような微粒子の比率としては、活性金属の分散性を保つという観点から、50%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。なお、前記活性金属粒子の粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)等によって確認することができる。具体的には、前記活性金属粒子の粒子径を走査透過型電子顕微鏡(STEM)により求める場合、例えば収束レンズに球面収差補正装置を備えた走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)を用いて触媒を観察し、得られたSTEM像において、担体上の例えば縦10nm×横10nmの領域を無作為に好ましくは2箇所以上抽出して観察し、得られた各観察視野内における活性金属粒子の粒子径を求め、更に微粒子の比率について数基準で求める。なお、ここにいう粒子径とは、断面が円形でない場合には最小外接円の直径をいう。
【0034】
また、このような本発明の排ガス浄化触媒においては、前記活性金属粒子の前記微粒子におけるパラジウム含有率が10〜90at%である合金微粒子の比率が、全微粒子に対して粒子数基準で50%以上であることが必要である。このような合金微粒子の比率が前記下限未満では、酸化活性の高い微粒子の割合が低下するため、低温でのCO、HC、NO等に対する十分に高い酸化活性が得られない傾向にある。また、前記微粒子におけるパラジウム含有率が10〜90at%である合金微粒子の比率としては、合金効果を得るという観点から、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0035】
更に、本発明の排ガス浄化触媒においては、前記微粒子におけるパラジウム含有率が40〜60at%である合金微粒子の比率が、全微粒子に対して粒子数基準で80%以上であることがより好ましい。このように白金とパラジウムの比率(白金:パラジウム)が40:60〜60:40(at%)の範囲にある合金微粒子の比率が高くなると、200〜400℃におけるNOに対する酸化活性がより向上する傾向にあり、例えば後段に配置したSCR触媒と組み合わせることによって排ガス浄化性能をより向上させることが可能となる。
【0036】
なお、前記パラジウムの含有率や含有量は、EDX(エネルギー分散型X線検出装置)、SIMS(二次イオン質量分析装置)等を用いて組成分析して確認することができる。例えば、測定装置として、従来公知の透過型電子顕微鏡(TEM)に従来公知のエネルギー分散型X線分光器(EDX分析装置)を装備したTEM−EDX装置を用いて、任意の領域内において縦10nm×横10nmの領域を無作為に好ましくは2箇所以上抽出して観察し、このような測定点の分析により確認することができる。
【0037】
また、このようなパラジウムの含有率や含有量の他の測定方法としては、排ガス浄化触媒を王水等の溶解用液体を用いて完全に溶解し、得られた溶解液についてICP(Inductively Coupled Plasma)分析装置を用いてICP分析を行い、パラジウムの含有率や含有量を算出することにより得ることもできる。具体的には、例えば、排ガス浄化触媒粉末(例えば0.5g)を王水([HNO]:[HCl]=1:3(体積比))中に添加して分解した後、この分解液に硫酸水溶液を添加して触媒を完全に溶解せしめる。次に、得られた溶解液についてICP分析装置((例えば、株)リガク製「CIROS 120EOP」)を用いてICP分析を行なう。なお、ICP分析は、溶解液をアルゴンプラズマ中に導入し、被測定対象(パラジウム、白金、等)の発光スペクトル強度を測定し、予め作成した検量線を用いて溶解液中の被測定対象金属(パラジウム、白金、等)の濃度を求め、この被測定対象金属濃度から触媒中の被測定対象金属の含有量を算出する。
【0038】
更に、このような本発明の排ガス浄化触媒においては、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)からなる活性金属粒子の担持量としては、金属換算で、前記担体100質量部に対して0.5〜10質量部であることが好ましい。このような活性金属粒子の担持量が、前記下限未満では低温でのCO、HC、NO等に対する十分に高い酸化活性が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、活性金属粒子の分散度が低下して低温でのCO、HC、NO等に対する十分に高い酸化活性が得られない傾向にある。また、このような活性金属粒子の担持量としては、高い活性金属粒子分散度の保持の観点から、1.0〜8.0質量部であることがより好ましい。
【0039】
また、このような本発明の排ガス浄化触媒においては、前記活性金属粒子の平均粒子径が、2.0nm以下であることが好ましい。このような活性金属粒子の平均粒子径が前記上限を超えると、低温でのCO、HC、NO等に対する十分に高い酸化活性が得られない傾向にある。また、このような活性金属粒子の平均粒子径としては、高い活性金属粒子分散度の保持の観点から、1.5nm以下であることがより好ましい。なお、このような活性金属粒子の平均粒子径は、従来公知のCO化学吸着法により求めることができる。また、このような活性金属粒子の平均粒子径は、前記Cs−STEMを用いて触媒を観察し、得られたSTEM像において、無作為に10個以上の白金粒子を抽出し、これらの粒子径を測定して平均することによって求めることもできる。
【0040】
更に、このような本発明の排ガス浄化触媒にかかる活性金属粒子としては、Pt−Pd合金が前記活性金属粒子の全質量の20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。前記Pt−Pd合金の含有量が前記下限未満では低温でのCO、HC、NO等に対する十分に高い酸化活性が得られない傾向にある。
【0041】
なお、このような本発明の排ガス浄化触媒においては、このような活性金属粒子における白金(Pt)の担持量としては、金属換算で、前記担体100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましい。このような白金の担持量が、前記下限未満では低温でのCO、HC、NO等に対する十分に高い酸化活性が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、白金のシンタリングが起こりやすく、白金の分散度が低下して低温でのCO、HC、NO等に対する十分に高い酸化活性が得られない傾向にある。また、このような白金の担持量としては、触媒低温活性の確保の観点から、1.0〜6.0質量部であることがより好ましい。なお、このような活性金属粒子における白金の粒子径としては、2.0nm以下(より好ましくは1.5nm以下)であることが好ましい。このような粒子径が、前記上限を超えると、触媒活性が低下する傾向にある。また、このような活性金属粒子における白金の粒子径は、従来公知のCO化学吸着法、Cs−STEMを用いたSTEM像の観察等により求めることができる。
【0042】
また、このような活性金属粒子におけるパラジウム(Pd)の担持量としては、金属換算で、前記担体100質量部に対して0.01〜5.0質量部であることが好ましい。このようなパラジウムの担持量が、前記下限未満では、Pt粒子が過剰成長する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、Pd粒子が過剰成長する傾向にある。また、このようなパラジウムの担持量としては、粒子の微細化と高合金化の観点から、0.5〜3.0質量部であることがより好ましい。なお、このようなパラジウムは、酸化物として担持されていてもよい。なお、このような活性金属粒子におけるパラジウムの粒子径としては、2.0nm以下(より好ましくは1.5nm以下)であることが好ましい。このような粒子径が、前記上限を超えると、触媒活性が低下する傾向にある。また、このような活性金属粒子におけるパラジウムの粒子径は、従来公知のCO化学吸着法、Cs−STEMを用いたSTEM像の観察等により求めることができる。
【0043】
更に、本発明の排ガス浄化触媒においては、前記活性金属粒子の活性金属の分散度が5.0%以上であることが好ましい。このような活性金属の分散度が、前記下限未満では、触媒活性が低下する傾向にある。また、このような活性金属の分散度としては、触媒活性確保の観点から、10.0%以上であることがより好ましい。なお、活性金属粒子の分散度の測定法としては、例えば、CO吸着量と活性金属粒子の担持量とから求める方法、等により求めることができる。なお、CO吸着量は、例えば、ガス吸着量測定装置を用いたCOパルス測定法により求めることができる。また、活性金属粒子の分散度(%)は、前記により得られたCO吸着量と、活性金属粒子の担持量とから、下記式(1):
[活性金属粒子の分散度(%)]=([触媒1g当たりに吸着したCO吸着量(mol)]/[触媒1g当たりに吸着した活性金属粒子担持量(mol)])×100 ・・・式(1)
を用いて、活性金属粒子の分散度を算出することができる。
【0044】
また、このような活性金属粒子の分散度は、前記により得られたCO吸着量と、活性金属粒子の担持量とから、下記式(2):
[活性金属粒子の分散度(%)]=([触媒1g当たりに吸着したCOの吸着量(ml)]/[触媒1g当たりに含まれる活性金属粒子の質量(質量%)])×100 ・・・式(2)
を用いて、活性金属粒子の分散度を算出することもできる。
【0045】
このように活性金属粒子の分散度を測定することにより、触媒反応に作用する活性金属の活性点の割合を確認することができる。なお、活性金属粒子の分散度により、排ガス浄化触媒中における活性金属成分(Pt、Pd、Pt−Pd合金、等)の分散の程度を測ることができ、例えば、活性金属粒子の分散度の値が大きいほど活性金属成分が触媒中に高分散で分布していることを示す。
【0046】
ここで、排ガス浄化触媒の構造の一実施態様を示す模式図を図11に示す。なお、図11(a)は本発明の排ガス浄化触媒の構造の一実施態様を示す模式図であり、担体としてのアルミナ(Al)の表面にシリカ層が形成(被覆)され、前記シリカ層の表面に活性金属粒子としてPt−Pd合金粒子が担持されている。また、図11(b)はシリカ層が無い場合の触媒の構造を示す模式図であり、担体としてのアルミナ(Al)の表面に、活性金属粒子としてPt粒子、Pd粒子及びPt−Pd合金粒子が担持されている(シリカ層は無い)。
【0047】
なお、本発明の排ガス浄化触媒の形態としては、特に制限されないが、例えば、ハニカム形状のモノリス触媒、ペレット形状のペレット触媒等の形態にすることができ、更に、粉末状のものをそのまま所望の箇所に配置する形態とすることもできる。このような形態の排ガス浄化触媒を製造する方法としては、特に制限されないが、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、触媒をペレット状に成形してペレット形状の排ガス浄化触媒を得る方法や、触媒を触媒基材にコートすることにより、触媒基材にコート(固定)した形態の排ガス浄化触媒を得る方法等を適宜採用してもよい。なお、このような触媒基材としては、特に制限されないが、例えば、得られる排ガス浄化触媒の用途等に応じて適宜選択されるが、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等が好適に採用される。また、このような触媒基材の材質も、特に制限されないが、例えば、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。更に、本発明の排ガス浄化触媒は、他の触媒と組み合わせて利用してもよい。このような他の触媒としては、特に制限されないが、公知の触媒(例えば、酸化触媒、NOx還元触媒(SCR触媒)、NOx吸蔵還元触媒(吸蔵還元型NOx触媒、NSR触媒)、等)を適宜用いてもよい。
【0048】
[排ガス浄化触媒の製造方法]
次に、本発明のガス浄化触媒の製造方法を説明する。本発明の排ガス浄化触媒の製造方法は、アルミナ担体に有機珪素を用いてシリカを担持せしめて表面にシリカ層を有するアルミナ担体を得る工程(シリカ層形成工程)と、前記表面にシリカ層を有するアルミナ担体に、白金塩とパラジウム塩との溶液、又は、白金とパラジウムとの合金微粒子のコロイド溶液、を用いて白金及びパラジウムを担持せしめる工程(活性金属粒子担持工程)と、前記白金及びパラジウムが担持されたアルミナ担体に熱処理を施すことにより上記本発明の排ガス浄化触媒を得る工程(焼成工程)と、を含むことを特徴とする製造方法である。このような方法により、低温においても一酸化炭素、炭化水素、一酸化窒素等に対してより十分な酸化活性を発揮する本発明の排ガス浄化触媒を製造することができる。
【0049】
(シリカ層形成工程)
本発明の排ガス浄化触媒の製造方法においては、先ず、アルミナ担体に有機珪素を用いてシリカを担持せしめて表面にシリカ層を有するアルミナ担体を得る(シリカ層形成工程)。
【0050】
このような本発明の製造方法にかかるシリカ層形成工程において用いるアルミナ担体としては、特に制限されないが、例えば、公知のアルミナの製造方法を適宜採用して得られるアルミナや、市販のアルミナを用いることができる。このようなアルミナの製造方法としては、例えば、硝酸アルミニウム溶液にアンモニア水を添加して中和して得られる沈殿物を500〜1200℃程度で0.5〜10時間程度焼成した後、乾式粉砕してアルミナを得る方法が挙げられる。なお、このようなアルミナ担体としては、その形状は特に制限されないが、リング状、球状、円柱状、粒子状、ペレット状等、従来公知の形状のものを用いることができる。なお、活性金属粒子を分散性の高い状態で多く含有することができるという観点から、粒子状のものを用いることが好ましい。このような担体が粒子状のものである場合には、担体の平均粒子径は0.002〜0.1μmであることが好ましい。
【0051】
次に、このような本発明の製造方法にかかるシリカ層形成工程においては、前記アルミナ担体に有機珪素を用いてシリカを担持せしめて前記アルミナ担体の表面にシリカ層を形成する。
【0052】
このようなシリカ層形成工程において用いる有機珪素としては、シリカ層のシリカ源となるものであれば特に制限されないが、例えば、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシランであることが好ましい。この中でも、アルミナ担体の表面に特性の安定した所望の厚さのシリカ層をコーティングできるという観点から、加水分解反応によってシリカを生成析出するものであることが好ましく、アルコキシシランであることが好ましい。
【0053】
このようなアルコキシシランとしては、特に制限されないが、具体的には、テトラメトキシシラン[Si(OCH]、Si(OC)、テトラエトキシシラン[Si(OC、TEOS]、テトラプロポキシシラン[Si(OC]、テトラブトキシシラン[Si(OC]等が挙げられる。また、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等の各種アルキルアルコキシシランが挙げられる。この中でも、加水分解反応の制御及びシリカの量的制御が容易となり所望のシリカ層を均一に分散析出しやすいという観点から、テトラエトキシシラン(TEOS)であることがより好ましい。また、溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水(好ましくはイオン交換水及び蒸留水等の純水)、エタノール等のアルコール等の溶媒が挙げられる。更に、このような加水分解においては、アンモニア(水)等のアルカリ、界面活性剤等の構造制御剤、凝集防止剤等の各種添加剤を適宜添加することができる。
【0054】
また、このようなシリカ層形成工程においてアルミナ担体に有機珪素を用いてシリカを担持せしめる方法としては、特に制限されないが、例えば、有機珪素の化合物等を用いた加水分解法、ゾルゲル法、溶解再析出法、等が挙げられるが、その中でも、アルミナ担体の表面に特性の安定した所望の厚さのシリカ層を容易に形成(好ましくはコーティング、被覆)できるという観点から、有機珪素の化合物等を用いた加水分解法であることが好ましい。
【0055】
このようなアルミナ担体に有機珪素を用いてシリカを担持せしめる方法としては、具体的には、有機珪素の化合物等を用いた加水分解法の場合、先ず、アルミナ粒子の水分散液やアルコール懸濁体等のアルミナ粒子分散液を用意する。次に、アルミナ粒子分散液に、テトラエトキシシラン化合物等のシリカ源又はこのようなシリカ源を含むアルコール溶液等のシリカ源分散液を加え、前記化合物を加水分解する。加水分解の反応中は攪拌を行い、加水分解の反応終了後、処理後の沈殿を濾別、洗浄、乾燥、焼成等を行う。なお、前記アルミナ粒子分散液とシリカ源分散液との添加順序は、上記と逆であってもよい。また、シラン化合物の加水分解反応については、前記のようにアルミナ担体(或いはその前躯体粒子)及びシリカ源の分散液を調製後、この分散液中のシラン化合物を加水分解する方法、或いは、予めそれぞれ加水分解反応をしておいてから両液を混合する方法のいずれでもよい。更に、上記においては、アルミナ担体としてアルミナ粒子等の粒子状のアルミナからなるアルミナ担体にシリカ層を担持せしめる例を説明したが、リング状、球状、円柱状、粒子状、ペレット状等のアルミナ担体の表面にシリカ層を形成する場合には、先に用意したシリカ源分散液にこれら形状のアルミナ担体を接触させることによりアルミナ担体の表面にシリカ層を形成することもできる。このような処理操作により、アルミナ担体の表面に所定量のシリカ層を担持せしめることができる。
【0056】
(活性金属粒子担持工程)
次に、本発明の排ガス浄化触媒の製造方法においては、前記シリカ層形成工程において得られた表面にシリカ層を有するアルミナ担体に、白金塩とパラジウム塩との溶液、又は、白金とパラジウムとの合金微粒子のコロイド溶液、を用いて白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を担持せしめる(活性金属粒子担持工程)。
【0057】
このような本発明の製造方法にかかる活性金属粒子担持工程において用いる白金塩とパラジウム塩との溶液としては、特に制限されないが、例えば、白金塩としては、白金(Pt)の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、クエン酸塩等、又はそれらの錯体が挙げられる。また、パラジウム塩としては、特に制限されないが、例えば、パラジウム(Pd)の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、クエン酸塩等、又はそれらの錯体の溶液が挙げられる。更に、溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水(好ましくはイオン交換水及び蒸留水等の純水)等のイオン状に溶解せしめることが可能な溶媒が挙げられる。また、このような白金塩とパラジウム塩との溶液としては、白金塩及びパラジウム塩を含む混合溶液としてもよい。なお、このような白金塩とパラジウム塩との溶液の濃度としては、特に制限されないが、活性金属を微細に担持できるように、溶媒(水等)の使用量は担体量の20〜40倍であることが好ましく、30〜40倍であることがより好ましい。
【0058】
また、本発明の製造方法にかかる活性金属粒子担持工程において白金とパラジウムとの合金微粒子のコロイド溶液を用いる場合、かかるコロイド溶液としては白金とパラジウムとの合金微粒子を含有するものであればよく、特に制限されないが、例えば特開2011−144421号公報に記載の方法により製造された白金とパラジウムとの合金微粒子のコロイド溶液であることが好ましい。また、このようなコロイド溶液に含有される白金とパラジウムとの合金微粒子においては、前記微粒子におけるパラジウム含有率が40〜60at%である合金微粒子の比率が、全微粒子に対して粒子数基準で80%以上であることが好ましい。更に、このようなコロイド溶液に含有される白金とパラジウムとの合金微粒子としては、平均粒子径が2.0nm以下であることが好ましく、1.5nm以下であることがより好ましい。このようなコロイド溶液を用いることにより、前述の200〜400℃におけるNOに対する酸化活性がより向上した本発明の排ガス浄化触媒をより効率よくかつ確実に得ることが可能となる。なお、このようなコロイド溶液の分散媒としては、特に制限されないが、例えば、水(好ましくはイオン交換水及び蒸留水等の純水)が挙げられる。
【0059】
また、このような前記担体に前記白金塩とパラジウム塩との溶液又は白金とパラジウムとの合金微粒子のコロイド溶液を用いて白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を担持せしめる方法としては、特に制限されないが、例えば、前記白金塩とパラジウム塩との溶液又は白金とパラジウムとの合金微粒子のコロイド溶液に前記担体を含浸せしめる方法、前記白金塩とパラジウム塩との溶液又は白金とパラジウムとの合金微粒子のコロイド溶液を前記担体に吸着担持せしめる方法等、公知の方法を適宜採用できる。なお、前記担体をこのような白金塩とパラジウム塩との溶液に接触(含浸又は吸着等)させる方法としては、白金塩を含む溶液とパラジウム塩を含む溶液を個別に用意して、先ず前記担体を白金塩を含む溶液(又はパラジウム塩を含む溶液)に接触させ、次いで、他の塩溶液としてパラジウム塩を含む溶液(又は白金塩を含む溶液)に接触させる方法、或いは、白金塩を含む溶液及びパラジウム塩を含む溶液を同時に接触させる方法(白金塩及びパラジウム塩を含む溶液でもよい)、等いずれでもよい。
【0060】
更に、このように前記担体に前記白金塩とパラジウム塩との溶液又は白金とパラジウムとの合金微粒子のコロイド溶液を担持せしめる際においては、前記溶液又はコロイド溶液中の白金元素及びパラジウム元素の担持量が、金属換算で、前記担体100質量部に対して0.1〜15質量部となることが好ましく、1.0〜12質量部となることがより好ましい。前記白金元素及びパラジウム元素の担持量が、前記下限未満では、触媒活性不足となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、活性金属粒子のシンタリングとなる傾向にある。なお、このような担持量としては、触媒活性の確保の観点から、前記白金元素の担持量が、金属換算で、前記担体100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、1.0〜8.0質量部であることがより好ましい。また、このような担持量としては、活性金属粒子の微細化と合金化の観点から、前記パラジウム元素の担持量が、金属換算で、前記担体100質量部に対して0.1〜5.0質量部であることが好ましく、0.5〜4.0質量部であることがより好ましい。
【0061】
また、前記担体に活性金属粒子を担持させた後、必要に応じてこれを乾燥させる。乾燥させるための具体的な手法としては、特に制限されないが、公知の方法を適宜採用することができ、例えば自然乾燥、蒸発乾固法の他、ロータリーエバポレーターや沿送風乾燥機等を用いた乾燥等の方法を採用してもよい。乾燥の温度及び時間としては、特に制限されないが、目的とする設計等に応じて適宜選択され、例えば、80〜150℃の温度範囲内で2〜48時間程度の乾燥処理を施す。場合によっては、この乾燥段階を省略して、次工程の加熱処理において乾燥させることとしてもよい。
【0062】
(焼成工程)
次いで、本発明の排ガス浄化触媒の製造方法においては、前記活性金属粒子担持工程において得られた前記白金及びパラジウムが担持されたアルミナ担体(活性金属粒子担持担体)に熱処理を施すことにより前記本発明の排ガス浄化触媒を得る(焼成工程)。
【0063】
このような本発明の排ガス浄化触媒の製造方法にかかる焼成工程においては、白金及びパラジウムが担持された担体(活性金属粒子担持担体)を400〜800℃の範囲内の温度で焼成せしめることが好ましい。前記焼成温度が、前記下限未満では、得られる焼結体が低温からCO、HC、NO等に対する十分に高い酸化活性を発揮することができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、担体粒子が過剰成長する傾向になる。なお、このような焼成温度は、触媒活性の確保という観点から、400〜600℃の範囲内の温度であることがより好ましい。また、焼成(加熱)時間としては、前記焼成温度により異なるものであるため一概には言えないが、3〜20時間であることが好ましく、4〜15時間であることがより好ましい。更に、このような焼成工程における雰囲気としては、特に制限されないが、大気中或いは窒素(N)等の不活性ガス中であることが好ましい。
【0064】
[排ガス浄化方法]
次に、本発明の排ガス浄化方法について説明する。本発明の排ガス浄化方法は、前記本発明の排ガス浄化触媒に内燃機関から排出された排ガスを接触せしめて排ガスを浄化することを特徴とする方法である。
【0065】
このような本発明の排ガス浄化方法において、前記排ガス浄化触媒に排ガスを接触させる方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、内燃機関から排出されるガスが流通する排ガス管内に上記本発明にかかる排ガス浄化触媒を配置することにより、排ガス浄化触媒に対して内燃機関からの排ガスを接触させる方法を採用してもよい。
【0066】
なお、本発明の排ガス浄化方法において用いる前記本発明の排ガス浄化触媒は、低温においても一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、一酸化窒素(NO)等に対してより十分な酸化活性を発揮するものであるため、低温からCO、HC、NO等に対する十分に高い酸化活性を発揮することが可能であり、このような前記本発明の排ガス浄化触媒に、例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガスを接触させることで、十分に排ガス中のCO、HC、NO等を浄化することが可能となる。このような観点から、本発明の排ガス浄化方法は、例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出されるような排ガス中のCO、HC、NO等を浄化するための方法等として好適に採用することができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
先ず、200mlの蒸留水にアルミナ粉末(WRグレース社製「MI307」、比表面積100m/g、平均粒子径10nm)20gを加えて、50℃で30分間加熱攪拌し、アルミナ粉末分散液を得た。
【0069】
次に、得られたアルミナ粉末分散液に、Si(OC)(23.3g)を加え、10分間攪拌後、NH水(28%、5ml)溶液を加えて30分間攪拌し、更に110℃で加熱攪拌して蒸発乾燥させて凝固物を得た(蒸発乾固)。次いで、得られた凝固物を、大気中で500℃、5時間の条件で熱処理を行い、焼成せしめてアルミナ粉末の表面にシリカ層を有するSiO−Al担体を得た。なお、SiO−Al担体のSiO層の平均膜厚はアルミナの単分子層の0.67倍の膜厚であった。
【0070】
次に、ジニトロジアンミン白金硝酸水溶液(0.05mol/L)と硝酸パラジウム水溶液(0.05mol/L)との混合液に、前記工程で得られた表面にシリカ層を有するアルミナ担体20gを添加して、前記アルミナ粉末100質量%に対して白金の担持量が1.0質量%及びパラジウムの担持量が0.5質量%となるように含浸させて担持せしめ、110℃の温度条件で300分間加熱攪拌して蒸発乾燥させて凝固物を得た(蒸発乾固)。次いで、得られた凝固物を、大気中で550℃、5時間の条件で熱処理を行い焼成した。次に、得られた焼成物を加圧成形、粉砕して、直径0.5〜1mmのペレット状の排ガス浄化触媒を得た。
【0071】
(実施例2)
先ず、特開2011−144421号公報に記載の方法にしたがって以下のようにして原料溶液を得た。すなわち、Pt含有量が4.545質量%のジニトロジアンミン白金硝酸水溶液4.40g及びPd含有量が4.328質量%の硝酸パラジウム水溶液2.54gの混合物にイオン交換水を添加して、陽イオン(Ptイオン/Pdイオン=1:1)濃度が0.008mol/Lの貴金属イオン含有原料水溶液250mlを調製した。また、ヒドラジン一水和物1.20g及びポリビニルピロリドン(PVP)2.20gの混合物にイオン交換水を添加してこれらを溶解させ、高分子分散剤水溶液250mlを調製した。この高分子分散剤水溶液には、前記貴金属イオン含有原料水溶液と混合した後のpHが2.0となるように微量の硝酸を添加した。
【0072】
次に、原料溶液としてそれぞれ前記貴金属イオン含有原料水溶液及び前記高分子分散剤水溶液を用いた以外は特開2011−144421号公報に記載の実施例1と同様にして同公報に記載の図1に示す製造装置(スーパーアジテーションリアクター)を用いて白金とパラジウムとの合金微粒子のコロイド溶液を作製した。
【0073】
次いで、前記工程で得られた白金とパラジウムとの合金微粒子のコロイド溶液に、実施例1と同様にして得られた表面にシリカ層を有するアルミナ担体19.7gを添加して、前記アルミナ粉末100質量%に対して白金の担持量が1.0質量%及びパラジウムの担持量が0.5質量%となるように含浸させて担持せしめ、110℃の温度条件で300分間加熱攪拌して蒸発乾燥させて凝固物を得た(蒸発乾固)。次いで、得られた凝固物を、大気中で500℃、5時間の条件で熱処理を行い焼成した。次に、得られた焼成物を加圧成形、粉砕して、直径0.5〜1mmのペレット状の排ガス浄化触媒を得た。
【0074】
(比較例1)
市販のアルミナ粉末(WRグレース社製「MI307」、比表面積100m/g、平均粒子径10nm)20gに、ジニトロジアンミン白金硝酸水溶液(0.05mol/L)と硝酸パラジウム水溶液(0.05mol/L)との混合溶液を用いて、前記アルミナ粉末100質量%に対して白金の担持量が1.0質量%及びパラジウムの担持量が0.5質量%となるように含浸させて担持せしめ、110℃の温度条件で300分間加熱攪拌して蒸発乾燥させて凝固物を得た(蒸発乾固)。次に、得られた凝固物を、大気中で550℃、5時間の条件で熱処理を行い焼成せしめた後、焼成物を加圧成形、粉砕して、直径0.5〜1mmのペレット状の比較用触媒を得た。
【0075】
(比較例2)
市販のシリカ粉末(日本アエロジル社製「90G」、比表面積90m/g、平均粒子径12nm)20gに、ジニトロジアンミン白金硝酸水溶液(0.05mol/L)と硝酸パラジウム水溶液(0.05mol/L)との混合溶液を用いて、前記シリカ粉末100質量%に対して白金の担持量が1.0質量%及びパラジウムの担持量が0.5質量%となるように含浸させて担持せしめ、110℃の温度条件で300分間加熱攪拌して蒸発乾燥させて凝固物を得た(蒸発乾固)。次に、得られた凝固物を、大気中で550℃、5時間の条件で熱処理を行い焼成せしめた後、焼成物を加圧成形、粉砕して、直径0.5〜1mmのペレット状の比較用触媒を得た。
【0076】
<触媒活性評価試験1:CO酸化活性及びHC酸化活性>
実施例1〜2で得られた排ガス浄化触媒及び比較例1〜2で得られた比較用触媒をそれぞれ用いて、各触媒のCO及びHCに対する酸化性能を測定した。
【0077】
先ず、固定床流通式反応装置(ベスト測器社製)を用い、内径15mmの石英反応管に得られたペレット状の触媒試料を充填し、CO(10容量%)、O(10容量%)、CO(800ppm)、C(400ppmC)、NO(100ppm)、HO(5容量%)、N(残部)からなるモデルガスをNベースで7L/分の流量で供給しながら、触媒への入りガス温度を10℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し、300℃で5分間加熱した後、触媒の床温(触媒への入りガス温度)が100℃となるまで冷却する処理(前処理)を施した。
【0078】
次に、前記前処理後の触媒に対して前記モデルガスをNベースで7L/分の流量で供給しながら、触媒への入りガス温度を10℃/分の昇温速度で100℃から500℃まで昇温した。そして、このような昇温中における触媒からの出ガス(触媒に接触した後に石英反応管から排出されるガス)中のCO濃度を連続ガス分析計を用いて測定し、上記モデルガス中のCO濃度と出ガス中のCO濃度とからCO転化(酸化)率を算出し、CO転化(酸化)率が50%に到達したときの温度を50%CO酸化温度(℃)として求めた。また、同様にしてHC(C)転化(酸化)率が50%に到達したときの温度を50%HC酸化温度(℃)として求めた。
【0079】
実施例1〜2で得られた排ガス浄化触媒及び比較例1〜2で得られた比較用触媒の50%CO酸化温度を示すグラフを図1に示す。また、実施例1〜2で得られた排ガス浄化触媒及び比較例1〜2で得られた比較用触媒の50%HC酸化温度を示すグラフを図2に示す。
【0080】
図1〜2に示した結果から明らかなように、実施例1〜2の排ガス浄化触媒は、50%CO酸化温度及び50%CO酸化温度において高いCO酸化活性及びHC酸化活性を示していることが確認された。
【0081】
<触媒活性評価試験2:NO酸化活性>
実施例2で得られた排ガス浄化触媒及び比較例1で得られた比較用触媒をそれぞれ用いて、各触媒のNOに対する酸化性能を測定した。
【0082】
先ず、固定床流通式反応装置(ベスト測器社製)を用い、内径15mmの石英反応管に得られたペレット状の触媒試料(0.7g)を充填し、CO(10容量%)、O(10容量%)、CO(800ppm)、C(400ppmC)、NO(150ppm)、HO(5容量%)、N(残部)からなるモデルガスをNベースで7L/分の流量で供給しながら、触媒への入りガス温度を10℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し、300℃で5分間加熱した後、触媒の床温(触媒への入りガス温度)が100℃となるまで冷却する処理(前処理)を施した。
【0083】
次に、前記前処理後の触媒に対して前記モデルガスをNベースで7L/分の流量で供給しながら、触媒への入りガス温度を10℃/分の昇温速度で100℃から500℃まで昇温した。そして、このような昇温中における触媒からの出ガス(触媒に接触した後に石英反応管から排出されるガス)中のNO濃度を連続ガス分析計を用いて測定し、上記モデルガス中のNO濃度と出ガス中のNO濃度とからNO酸化率を算出した。
【0084】
実施例2で得られた排ガス浄化触媒及び比較例1で得られた比較用触媒のNO酸化率を示すグラフを図3に示す。図3に示した結果から明らかなように、実施例2の排ガス浄化触媒は、比較例1の比較用触媒より50%程度NO酸化率が向上しており、200〜400℃におけるNOに対する酸化活性が向上していることが確認された。
【0085】
<STEM観察試験>
実施例1〜2で得られた排ガス浄化触媒及び比較例1〜2で得られた比較用触媒をそれぞれ用いて、各触媒試料を、球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM、(株)日立製作所製「HD−2700」)を用い、以下の条件で観察した。
【0086】
[観察条件]
電子銃:熱陰極電界放出形
加速電圧 :最大200kV
格子分解能(格子像):0.1nm
点分解能(粒子像):0.19nm
STEM分解能:0.2nm
倍率:最高倍率150000000倍(適宜倍率を変更して測定)
X線検出立体角:0.24sr(単位srはステラジアンを示す。球の半径の平方に等しい面積の球面上の部分の中心に対する立体角)。
【0087】
このような走査透過型電子顕微鏡観察により得られた各触媒材料の電子顕微鏡写真図を、図4図10に示す。
【0088】
図4及び図5には実施例1で得られた排ガス浄化触媒のSTEM写真を示す。図4及び図5中の白点は総てPt−Pd粒子であり、白線で囲った領域はPt−Pd粒子であり、粒子径が2.0nm以下のPt−Pd粒子が存在していることが確認された。また、STEM写真において縦200nm×横260nmの領域を無作為に抽出し、この領域に存在する全金属粒子について詳細に調べたところ、金属粒子は総て活性金属粒子でPt−Pd合金粒子であり、金属粒子の総数が196個であった。更に、全活性金属粒子のうち粒子径が2.0nm以下の微粒子(Pt−Pd微粒子)が191個で、微粒子の全活性金属粒子に対する割合(粒子数基準)は97.4%であった。また、前記微粒子191個から無作為にて20個を抽出し、無作為抽出した20個の微粒子について詳細に調べたところ、パラジウム含有率が10〜90at%である合金微粒子の割合(粒子数基準、%)は90.0%であった(なお、パラジウム含有率が10〜30at%である合金微粒子の割合も90.0%であった。また、パラジウム含有率が40〜60at%である合金微粒子の割合は0.0%であった。)。
【0089】
図6には実施例2で得られた排ガス浄化触媒のSTEM写真を示す。図6中の白点は総てPt−Pd粒子であり、粒子径が2.0nm以下のPt−Pd粒子が存在していることが確認された。また、STEM写真において縦200nm×横260nmの領域を無作為に抽出し、この領域に存在する全金属粒子について詳細に調べたところ、金属粒子は総て活性金属粒子でPt−Pd合金粒子であり、金属粒子の総数が14個であった。更に、全活性金属粒子のうち粒子径が2.0nm以下の微粒子(Pt−Pd微粒子)が8個で、微粒子の全活性金属粒子に対する割合(粒子数基準)は57%であった。また、前記微粒子14個から無作為にて6個を抽出し、無作為抽出した6個の微粒子について詳細に調べたところ、パラジウム含有率が40〜60at%である合金微粒子の割合(粒子数基準、%)は100.0%であった。
【0090】
次に、図7及び図8には比較例1で得られた比較用触媒のSTEM写真を示す。図7及び図8中の白点は金属粒子でありPt粒子、Pd粒子又はPt−Pd合金粒子で、白線で囲った領域はPt−Pd粒子であり、Pt粒子、Pd粒子又はPt−Pd合金粒子からなる活性金属粒子が存在していることが確認された。また、STEM写真において縦200nm×横260nmの領域を無作為に抽出し、この領域に存在する全金属粒子について詳細に調べたところ、金属粒子の総数が32個で(総てが活性金属粒子)、全活性金属粒子のうち粒子径が2.0nm以下の微粒子が4個で、全活性金属粒子に対する割合(粒子数基準)は12.5%であった。更に、粒子径が2.0nm以下の微粒子4個について詳細に調べたところ、パラジウム含有率が10〜90at%である合金微粒子の割合(粒子数基準、%)は0.0%であった(なお、パラジウム含有率が10at%である合金微粒子の割合も0.0%であった。また、パラジウム含有率が40〜60at%である合金微粒子の割合も0.0%であった。)。
【0091】
次いで、図9及び図10には比較例2で得られた比較用触媒のSTEM写真を示す。図9及び図10中の白点は金属粒子でありPt粒子、Pd粒子又はPt−Pd合金粒子であり、Pt粒子、Pd粒子又はPt−Pd合金粒子からなる活性金属粒子が存在していることが確認された。また、STEM写真において縦200nm×横260nmの領域を無作為に抽出し、この領域に存在する全金属粒子について詳細に調べたところ、金属粒子の総数が64個で(総てが活性金属粒子)、全活性金属粒子のうち粒子径が2.0nm以下の微粒子が5個で、全活性金属粒子に対する割合(粒子数基準)は7.8%であった。更に、粒子径が2.0nm以下の微粒子5個について詳細に調べたところ、パラジウム含有率が10〜90at%である合金微粒子の割合(粒子数基準、%)は20.0%であった(なお、パラジウム含有率が10〜20at%である合金微粒子の割合も20.0%であった。また、パラジウム含有率が40〜60at%である合金微粒子の割合は0.0%であった。)。
【0092】
なお、実施例1〜2で得られた排ガス浄化触媒及び比較例1〜2で得られた比較用触媒について、全活性金属粒子の数(個)、そのうち粒子径が2nm以下の微粒子の数(個)、全活性金属粒子に対する微粒子(粒子径2nm以下のもの)の割合(粒子数基準、%)、前記微粒子におけるパラジウムの含有率が10〜90at%である合金微粒子の割合(粒子数基準、%)及び前記微粒子におけるパラジウムの含有率が40〜60at%である合金微粒子の割合(粒子数基準、%)を表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
また、実施例1において無作為抽出した20個の微粒子の粒子径(nm)及びパラジウムの含有率(at%)を表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
更に、実施例2において無作為抽出した6個の微粒子の粒子径(nm)及びパラジウムの含有率(at%)を表3に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
更に、比較例1における前記微粒子の粒子径(nm)及びパラジウムの含有率(at%)を表4に示す。
【0099】
【表4】
【0100】
また、比較例2における前記微粒子の粒子径(nm)及びパラジウムの含有率(at%)を表5に示す。
【0101】
【表5】
【0102】
<Pt−Pd合金の平均粒子径の測定>
実施例1〜2で得られた排ガス浄化触媒及び比較例1〜2で得られた比較用触媒における活性金属粒子(Pt−Pd合金、Pt又はPd)の平均粒子径をCO化学吸着法によって求めた。得られた結果を表6に示す。
【0103】
<CO吸着量の測定>
実施例1〜2で得られた排ガス浄化触媒及び比較例1〜2で得られた比較用触媒のCO吸着量は、以下のCOパルス測定法により求めた。
【0104】
すなわち、先ず、得られた触媒試料を、内径1.1cm、長さ100cmの試験用ガス管のガス流の上流から下流側に向かって長さ54.5cmの領域(中間部)に設置した。次に、1000℃の温度下、H(2容量%)、CO(10容量%)、HO(3容量%)及びN(残部)からなるリッチガスと、O(1容量%)、CO(10容量%)、HO(3容量%)及びN(残部)からなるリーンガスとを1分ずつ交互に、ペレット触媒試料0.3g当たり200ml/分の流量で通過するように供給し、これを50時間継続して耐久試験を行なった。
【0105】
次に、前記耐久試験後のペレット触媒試料を、0.03g、0.04g、0.05gの3水準で秤量し、ガス吸着量測定装置(大倉理研社製、「R6015」)の計量管の内部にそれぞれ設置した。各計量管の内部をO(100容量%)のガス雰囲気にして400℃まで40分で昇温した後、15分間保持した。次いで、前記計量管それぞれの内部のガス雰囲気をHe(100容量%)のガス雰囲気に変更し、400℃で40分間保持した。その後、前記計量管それぞれの内部のガス雰囲気をH(100容量%)のガス雰囲気に変更して400℃で15分間保持し、次いで、ガス雰囲気をHe(100容量%)のガス雰囲気に変更して400℃で15分間保持した後、He(100容量%)のガス雰囲気を保ったまま、50℃まで自然冷却した。その後、He(100容量%)のガス雰囲気下において、温度を50℃(一定)に維持したまま、各水準量の触媒それぞれに対して、1.0μmol/pulseのCOを吸着が飽和するまでパルスした(吸着温度:50℃)。このパルスしたCOのうち、触媒に吸着されなかったCOの量を、熱伝導検出器(TCD)を用いて検出し、パルス回数と吸着が飽和した時のTCD面積から、各水準量の触媒へのCO吸着量をそれぞれ測定した。その後、このようにして求められる3水準量の触媒へのCO吸着量を平均して「CO吸着量」を算出した。得られた結果を表6に示す。
【0106】
<活性金属粒子の分散度の測定>
前記により得られたCO吸着量と、活性金属粒子の担持量とから、下記式(3):
[活性金属粒子の分散度(%)]=([触媒1g当たりに吸着したCOの吸着量(ml)]/[触媒1g当たりに含まれる活性金属粒子の質量(質量%)])×100 ・・・式(3)
を用いて、活性金属粒子の分散度を算出した。得られた結果を表6に示す。
【0107】
【表6】
【0108】
表6に示した実施例1〜2の結果と比較例1〜2の結果との比較から明らかなように、実施例1〜2の排ガス浄化触媒は、活性金属粒子(Pt−Pd合金)の分散度が高いものであることが確認された。
【0109】
以上の結果より、本発明の排ガス浄化触媒は、低温においても一酸化炭素、炭化水素、一酸化窒素に対してより十分な酸化活性を発揮することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上説明したように、本発明によれば、低温においても一酸化炭素、炭化水素、一酸化窒素等に対してより十分な酸化活性を発揮する排ガス浄化触媒を提供することが可能となる。このように、本発明の排ガス浄化触媒は、低温からCO、HC、NO等に対する十分に高い酸化活性を発揮することが可能であるため、このような前記本発明の排ガス浄化触媒に、例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガスを接触させることで、十分に排ガス中のCO、HC、NO等を浄化することが可能となる。このような観点から、本発明の排ガス浄化方法は、例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出されるような排ガス中のCO、HC、NO等を浄化するための方法等として好適に採用することができる。
【0111】
したがって、本発明の排ガス浄化触媒、その製造方法、及び、それを用いた排ガス浄化方法は、ディーゼルエンジン等の内燃機関からの排ガス中に含まれるCO、HC、NO等を浄化するための排ガス浄化触媒、その製造方法、及び、それを用いた排ガス浄化方法等として特に有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11