特許第6444273号(P6444273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444273
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】大判基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20181217BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   H05K1/02 G
   H05K1/02 C
   H05K3/00 X
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-129713(P2015-129713)
(22)【出願日】2015年6月29日
(65)【公開番号】特開2017-17091(P2017-17091A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2017年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126583
【弁理士】
【氏名又は名称】宮島 明
(72)【発明者】
【氏名】深澤 和真
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆弘
【審査官】 原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−062429(JP,A)
【文献】 特開2008−135475(JP,A)
【文献】 特開平08−257991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板を形成する領域とその他の領域を含み、分割すると多数の前記回路基板が得られる大判基板において、
前記回路基板を形成する領域と前記その他の領域とを接続する接続部と、
前記接続部と隣接して前記回路基板を形成する領域に設けられた段差部とを備え、
前記接続部の厚さ前記その他の領域の厚さより小さく
前記接続部から前記回路基板を形成する領域に向かう方向の前記段差部の幅は前記その他の領域の厚さより小さく、
前記方向に対し垂直な方向における前記段差部に隣接する両端部の厚さは、前記段差部の厚さより大きい
ことを特徴とする大判基板。
【請求項2】
前記段差部は2カ所あり、前記回路基板を形成する領域を挟んで対向配置している
ことを特徴とする請求項1に記載の大判基板。
【請求項3】
前記回路基板を形成する領域の側面に曲線部がある
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の大判基板。
【請求項4】
回路基板を形成する領域とその他の領域を含み、分割すると多数の前記回路基板が得られる大判基板の製造方法において、
前記回路基板を形成する領域の外形の一部に沿って長穴をあける長穴工程と、
前記回路基板を形成する領域と前記その他の領域とを接続する接続部の厚さ小さくし、さらに前記接続部に隣接する前記回路基板を形成する領域に段差部を形成し、前記接続部から前記回路基板を形成する領域に向かう方向の前記段差部の幅が前記その他の領域の厚さより小さく、前記方向に対し垂直な方向における前記段差部に隣接する両端部の厚さが前記段差部の厚さより大きい接続部及び段差部形成工程とを備える
ことを特徴とする大判基板の製造方法。
【請求項5】
前記長穴工程並びに前記接続部及び段差部形成工程の後に、前記回路基板を形成する領域に電子部品を実装する電子部品実装工程を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の大判基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割すると多数の回路基板が得られる大判基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器では大型の基板のまわりに一の機能に特化した小型の回路モジュール(以下本明細書では回路モジュールのうち発光機能に特化した発光モジュールにより説明する。)を接続させることがある。この発光モジュールに含まれる回路基板は小型であるため個別に電子部品を実装するのでは作業性が悪い。そこで、分割すると多数の回路基板が得られる大判基板に電子部品を実装し、その後大判基板を分割し、この回路基板を含む発光モジュールを同時に多数製造することがある。
【0003】
このような製造方法の一例が特許文献1に示されている。特許文献1に示された製造方法では、配線基板(回路基板)の外形ラインにそって長穴をあけた連結配線基板(大判基板)に半導体発光素子(電子部品)を実装してから、金型でパンチして配線基板を打ち抜いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−152331号公報 (図1〜3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の回路基板を含む発光モジュールは、電子機器の筐体やシャーシなどにはめ込まれて使用されることが多い。このため回路基板の外形公差は厳しく制限される。ところが、たとえ長穴加工の精度が高くても、大判基板から回路基板をパンチで打ち抜くような製造方法では、パンチにともなう位置ずれやバリが発生する。すなわち、回路基板に部品が実装されているかどうかに係らず、パンチ等で分割された回路基板は外形公差を満足できない場合がある。
【0006】
そこで本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、分割したときに回路基板が外形公差を満足させやすい構造を有する大判基板を提供することを目的とする。
【0007】
また本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、分割したとき回路基板が外形公差を満足させやすい構造を有する大判基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明の大判基板は、回路基板を形成する領域とその他の領域を含み、分割すると多数の前記回路基板が得られる大判基板において、前記回路基板を形成する領域と前記その他の領域とを接続する接続部と、前記接続部と隣接して前記回路基板を形成する領域に設けられた段差部とを備え、前記接続部の厚さ前記その他の領域の厚さより小さく、前記接続部から前記回路基板を形成する領域に向かう方向の前記段差部の幅は前記その他の領域の厚さより小さく、前記方向に対し垂直な方向における前記段差部に隣接する両端部の厚さは、前記段差部の厚さより大きいことを特徴とする。
【0009】
本発明の大判基板は、回路基板を形成する領域に段差部を備えている。この段差部は、前記回路基板を形成する領域と前記その他の領域とを接続する接続部に隣接し、接続部を薄く加工する際に同時に形成されたものである。この接続部を薄くすると大判基板を分割
して回路基板を得る際、接続部を切断するのにレーザー加工を適用しやすくなる。さらに回路基板を形成する領域に段差部を設け、レーザー加工を施す部分の周囲を薄くすることにより、切断に際し高い切断品質と高い寸法精度が確保される。このとき接続部から回路基板を形成する領域に向かう方向の段差部の幅はレーザー加工の精度で決められる。すなわちこの幅は、接続部及び段差部が薄いことに基づき小さな値とすることができ、薄くする加工を施していない大判基板の他の領域の厚さより小さくてよい。
【0010】
前記段差部は2カ所あり、前記回路基板を形成する領域を挟んで対向配置していても良い。
【0011】
前記回路基板を形成する領域の側面に曲線部があっても良い。
【0012】
上記目的を達成するため本発明の大判基板の製造方法は、回路基板を形成する領域とその他の領域を含み、分割すると多数の前記回路基板が得られる大判基板の製造方法において、前記回路基板を形成する領域の外形の一部に沿って長穴をあける長穴工程と、前記回路基板を形成する領域と前記その他の領域とを接続する接続部の厚さ小さくし、さらに前記接続部に隣接する前記回路基板を形成する領域に段差部を形成し、前記接続部から前記回路基板を形成する領域に向かう方向の前記段差部の幅が前記その他の領域の厚さより小さく、前記方向に対し垂直な方向における前記段差部に隣接する両端部の厚さが前記段差部の厚さより大きい接続部及び段差部形成工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の大判基板の製造方法では、大判基板に含まれる回路基板を形成する領域に対し回路基板の外形の一部に沿って長穴を形成する。これに並行して回路基板を形成する領域とその他の領域とを接続する接続部を薄くしておく。さらに回路基板を形成する領域において接続部と隣接する部分に段差部を形成する。このようにして準備した大判基板は、接続部が薄くなっているため、大判基板を分割して回路基板を得る際、接続部を切断するのにレーザー加工を適用しやすくなる。さらに回路基板を形成する領域に段差部を設け、レーザー加工を施す部分の周囲を薄くすることにより、切断に際し高い切断品質と高い寸法精度を確保できる。
【0014】
前記長穴工程並びに前記接続部及び段差部形成工程の後に、前記回路基板を形成する領域に電子部品を実装する電子部品実装工程を有していても良い。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明の大判基板及びその製造方法は、切断品質と寸法精度を高くできるため大判基板から分割した回路基板の外形公差が満足されやすい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の大判回路基板から分割して得た発光モジュール(回路基板)を示し、(a)が平面図、(b)が底面図である。
図2図1に示す発光モジュール(回路基板)と大判基板との関係を説明するための斜視図である。
図3図2に示す大判基板と回路基板との関係を説明するための平面図である。
図4図3に示す大判基板と回路基板との関係を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図1〜4を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また説明のため部材の縮尺は適宜変更している。()に発明特定事項を示す。
【0018】
図1には、本発明の実施形態である大判基板23(図2参照)を分割して得た回路基板
11を使用する発光モジュール10が示されている。図1において(a)が平面図、(b)が底面図である。発光モジュール10は、フラッシュ用の光源であり、回路基板11の上面には2個のLED16が実装され、下面にはEEPROM18が実装されている。また回路基板11の下面には下面電極17が観察される。回路基板11は、コーナーが切り欠かれた略長方形の平面形状を有し、図1(a)の上下2カ所に段差部12、13及び貫通孔14、15が設けられている。段差部12、13は横方向の幅に比べ縦方向(短手方向)の幅が極端に狭くなっている。
【0019】
2個のLED16はそれぞれ発光色が異なる。EEPROM18にはLED16の発光特性に係るデータが格納されている。このデータにもとづいてカメラ等の本体側に設けられた制御装置が、周囲の状況に応じて最適な条件(明るさや発色)を設定し、発光モジュール10をフラッシュさせる。
【0020】
図2は、大判基板20と、回路基板11を含む発光モジュール10との関係を説明するための斜視図である。大判基板20には複数の回路基板を形成する領域11がある。なお回路基板を形成する領域11と図1に示した回路基板11は基本的に同じものであるので同じ符号を使用している。この後の説明では回路基板を形成する領域11を単に回路基板11と呼ぶ。
【0021】
また大判基板20には、各回路基板11を取り囲むフレーム23(他の領域)、各回路基板11とフレーム23を接続する接続部21、22、接続部21、22と接続する段差部12、13がある。接続部21、22及び段差部12、13は回路基板11を介して対向配置している。回路基板11の外形は段差部12、13を除き長穴24、25で画定されている。
【0022】
図3は、大判基板20と回路基板11との関係を説明するために、接続部21の周辺部を拡大した大判基板20の平面図である。大判基板20では、接続部21と段差部12が一体的に形成されている。この領域は、ルータによって形成された長穴24、25が入り込んでいるため、その平面形状は長円の両端部が半円形に切り欠かれたようになっている。
【0023】
前述のように大判基板20において回路基板11の接続部21、22以外の側面はルータにより加工される(長穴24、25)。一方、後述するように大判基板20を分割して回路基板11を得るときは、回路基板11の外形に沿って接続部21、22がレーザー加工で切断される。図1に示したように回路基板11は、一のコーナーに斜めの切欠きがあり、他のコーナーは面取りされている。すなわちルータは曲線的な長穴24、25を容易に形成できるため、回路基板11は3カ所のコーナーを曲線的に加工した。
【0024】
図4は、大判基板20と回路基板11との関係を説明するため、図3のAA´線に沿って描いた断面図である。図4では、長穴25及び貫通孔14が観察される。接続部21は他の部分に比べて薄くなっている。段差部12の底面12cは接続部21の上面と面一になっている。図4において長穴25の右側面12aと段差部12の上側の側面12bとの間隔が段差部12の短手方向(前記接続部から前記回路基板を形成する領域に向かう方向)の幅に相当する。また長穴25の右側面12aの位置が段差部12における回路基板11の外形となる。なお大判基板20の他の領域(フレーム23等)の厚さは1.15mmであるのに対し、接続部21、22の厚さは0.40mmである。
【0025】
図2〜4で示してきたように回路基板11は、大判基板20と接続していた部分(接続部21、22)の近傍に段差部12、13を備えている。前述のように段差部12、13及び接続部21、22は、大判基板20の他の部分に比べて薄くなっていた。すなわち大
判基板20は、薄い部分を設けることにより、通常薄い基板にしか適用できないレーザー加工を使用できるようになった。
【0026】
なお無理に厚い部分をレーザーで切断しようとすると、レーザーの照射量を大きくしなければならない。この場合、切断面が炭化したり切断精度が低下したりする。これに対し接続部21、22を薄くした大判基板20では、回路基板11を分割するのに比較的弱いレーザーで切断加工できる。この結果、切断品質の向上とともに高い寸法精度が確保される。
【0027】
図2〜4に基づいて回路基板11の製造方法について説明する。まず大判基板20に対し、接続部21、22を除き分割すべき回路基板11の外形に沿って長穴24、25をあける(長穴工程)。これと並行して接続部21、22及び段差部12、13をルータにより他の部分より薄くする(接続部及び段差部形成工程)。なお長穴24、25の形成と、接続部21、22及び段差部12、13の形成との順序は問わない。
【0028】
次に大判基板20にLED16やEEPROM18のような電子部品を実装する(電子部品実装工程)。なお回路基板11を個片化してから電子部品を実装しても良い。しかしながら回路基板11は小型であるため扱いづらくなるので、大判基板20の状態で電子部品を実装してしまう方が製造が楽になる。
【0029】
このようにして準備した大判基板20に対し接続部21、22をレーザーにより切断し回路基板11を分割する。図4に示すように接続部21、22のレーザーによる切断は、大判基板20の下面側からレーザー41を照射することによって行う。レーザー41の照射は大判基板20の上面側から行っても良いが、段差部12、13の長手方向の端部で厚い部分にレーザーのスポット42の一部が当たった場合、切断上の不具合を生じることがある。そこでレーザー41の照射は、接続部12、13と他の部分が面一になっている大判基板20の下面側から行うのが好ましい。
【0030】
また図4に示すように接続部21、22のレーザーによる切断において、レーザー41のスポット42の一部が段差部13にかかるようにしている。これは回路基板11を含む発光モジュール10がケース等の筐体にはめ込まれて使用されるため、回路基板11の外形について基準値を超えることが厳しく制限されているからである。つまり段差部12、13も接続部21、22と同様に薄いため、レーザー加工にともなう切断品質や切断精度を高く維持した状態で回路基板11を外形公差の範囲内に収めることが可能となる。
【0031】
ちなみに接続部21、22を薄くしない(厚さが1.15mmのとき)でレーザーにより切断した場合、照射回数が7回以上必要であった。これに対し薄くした(厚さが0.40mmのとき)接続部21、22ではレーザー41の照射回数を3〜4回に減らすことができた。なおレーザー41の一回の照射強度は両者とも同じである。すなわち照射回数(トータルの照射強度)の削減は、そのダメージを減らすことにより、回路基板11に対して、レーザー加工による良質な切断面を得るとともに外形公差を満足させることにつながる。
【符号の説明】
【0032】
10…発光モジュール、
11…回路基板(回路基板を形成する領域)、
12、13…段差部、
14、15…貫通孔、
16…LED、
17…下面電極、
18…EEPROM、
20…大判基板、
21、22…接続部、
23…フレーム(その他の領域)、
24、25…長穴、
41…レーザー、
42…スポット。
図1
図2
図3
図4