特許第6444293号(P6444293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6444293宇宙船の動作を制御する方法および制御システム、並びに宇宙船
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444293
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】宇宙船の動作を制御する方法および制御システム、並びに宇宙船
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/26 20060101AFI20181217BHJP
   B64G 1/28 20060101ALI20181217BHJP
   G05B 13/04 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   B64G1/26 C
   B64G1/28 F
   G05B13/04
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-236437(P2015-236437)
(22)【出願日】2015年12月3日
(65)【公開番号】特開2016-124538(P2016-124538A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2018年9月14日
(31)【優先権主張番号】14/591,298
(32)【優先日】2015年1月7日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】アビシャイ・ワイス
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・ディ・カイラノ
(72)【発明者】
【氏名】ウロス・カラビック
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−112299(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1217488(EP,A1)
【文献】 米国特許第8282043(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/26
B64G 1/28
G05B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙船のモデルに従って前記宇宙船の動作を制御する方法であって、
前記宇宙船の姿勢に対する制約及び前記宇宙船のスラスターへの入力に対する制約を条件とした後退ホライズンにわたるコスト関数の最適化を用いて、前記スラスター及び前記宇宙船の運動量交換デバイスを同時に制御する制御入力を求めることであって、前記コスト関数は、前記宇宙船の前記姿勢及び前記運動量交換デバイスによって蓄えられた運動量を制御する構成要素を含み、前記コスト関数は、所望の位置からの前記宇宙船の変位にペナルティを科す前記宇宙船の位置の構成要素と、前記宇宙船のオイラー角のより大きな値にペナルティを科す前記宇宙船の姿勢の構成要素と、前記蓄えられた運動量の大きさのより大きな値にペナルティを科す前記蓄えられた運動量の構成要素と、前記宇宙船の前記動作の目的の構成要素と、前記宇宙船の前記動作の安定性を確保する構成要素とを含む複数の構成要素の組み合わせとして求められる、ことと、
前記制御入力の少なくとも一部分に従って前記スラスター及び前記運動量交換デバイスを同時に制御するコマンドを生成することと、
を含み、前記方法のステップは、前記宇宙船のプロセッサによって実行される、宇宙船のモデルに従って前記宇宙船の動作を制御する方法。
【請求項2】
前記最適化は、前記モデルのパラメーター間の関係を規定する公称モデルと、前記宇宙船に作用する外乱力を規定する外乱モデルとを含む前記宇宙船の前記モデルに基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記宇宙船が前記後退ホライズンの全期間の間、目標位置に位置しているかのように前記公称モデルの線形化を実行することと、
前記宇宙船が前記後退ホライズンの全期間の間、前記目標位置に位置しているかのように前記外乱力を求めることと、
を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記宇宙船の前記姿勢に対する前記制約は、前記宇宙船の位置を所定のウィンドウ内に維持する位置制約と、前記宇宙船のオイラー角を所定の限度内に維持する向き制約とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記スラスターへの前記入力に対する前記制約は、前記スラスターが、前記宇宙船の前記姿勢を制御する力と、前記宇宙船の前記運動量交換デバイスによって蓄えられた前記運動量をアンロードするトルクとを併せて生成する能力を保証する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記生成されたコマンドは、前記蓄えられた運動量をアンロードする前記運動量交換デバイスへのコマンドと、前記宇宙船の前記姿勢を維持又は変更するとともに、前記運動量交換デバイスが前記蓄えられた運動量をアンロードすることによって生成された第2のトルクを補償する力及び第1のトルクを生成する前記スラスターへのコマンドとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記宇宙船の前記推進システムに要求される全トルク及び全力のコマンドを最初に生成し、次いで、前記全体のトルク及び力のコマンドを反転して個々の各スラスターへの制御入力を生成すること、
を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記コスト関数の前記最適化が、個々の各構成要素の目標を、それらの相対的な重みに対応する優先順位で達成する制御入力を生成するように、前記コスト関数の前記構成要素のそれぞれを重み付けすること、
を更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記制御入力は反復的に求められ、少なくとも1つの反復は、
前記コスト関数の前記構成要素及び前記コスト関数の前記構成要素の重みのうちの1つ又はそれらの組み合わせを、前記宇宙船の所望の動作の変更に基づいて更新すること、
を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
宇宙船のモデルに従って前記宇宙船の動作を制御する制御システムであって、前記制御システムのモジュールを実行する少なくとも1つのプロセッサを備え、前記モジュールは、
前記宇宙船の姿勢に対する制約及び前記宇宙船のスラスターへの入力に対する制約を条件とした後退ホライズンにわたるコスト関数の最適化を用いて、前記スラスター及び前記宇宙船の運動量交換デバイスを同時に制御する制御入力を求める制御入力モジュールであって、前記コスト関数は、前記宇宙船の前記姿勢及び前記運動量交換デバイスによって蓄えられた運動量を制御する構成要素を含む、制御入力モジュールと、
所望の位置からの前記宇宙船の変位にペナルティを科す前記宇宙船の位置の構成要素と、前記宇宙船のオイラー角の増加にペナルティを科す前記宇宙船の姿勢の構成要素と、前記蓄えられた運動量の大きさの増加にペナルティを科す前記蓄えられた運動量の構成要素と、前記宇宙船の前記動作の目的の構成要素と、前記宇宙船の前記動作の安定性を確保するとともに、前記コスト関数の前記最適化が、個々の各構成要素の目標を、それらの相対的な重みに対応する優先順位で達成する制御入力を生成するように、前記コスト関数の前記構成要素のそれぞれを重み付けする構成要素とを含む複数の構成要素の組み合わせとして前記コスト関数を求めるコスト関数モジュールと、
前記制御入力の少なくとも一部分に従って前記スラスター及び前記運動量交換デバイスを同時に制御するコマンドを生成する力トルクマップモジュールであって、前記生成されたコマンドは、前記蓄えられた運動量をアンロードする前記運動量交換デバイスへのコマンドと、前記宇宙船の前記姿勢を維持又は変更するとともに、前記運動量交換デバイスが前記蓄えられた運動量をアンロードすることによって生成されたトルクを補償する力及びトルクを生成する個々のスラスターへのコマンドとを含む、力トルクマップモジュールと、
を含む、宇宙船のモデルに従って前記宇宙船の動作を制御する制御システム。
【請求項11】
前記最適化は、前記モデルのパラメーター間の関係を規定する公称モデルと、前記宇宙船に作用する外乱力を規定する外乱モデルとを含む前記宇宙船の前記モデルに基づいており、
前記制御システムは、
前記宇宙船が前記後退ホライズンの全期間の間、目標位置に位置しているかのように前記公称モデルを線形化し、前記外乱力を求める現在モデルモジュール、
を備える、請求項10に記載の制御システム。
【請求項12】
前記宇宙船の前記姿勢に対する前記制約は、前記宇宙船の位置を所定のウィンドウ内に維持する位置制約と、前記宇宙船のオイラー角を所定の限度内に維持する向き制約とを含み、前記スラスターへの前記入力に対する前記制約は、前記スラスターが、前記宇宙船の前記姿勢を制御する力と、前記宇宙船の前記運動量交換デバイスによって蓄えられた前記運動量をアンロードするトルクとを併せて生成する能力を保証する、請求項10に記載の制御システム。
【請求項13】
前記制御入力は反復的に求められ、少なくとも1つの反復について、前記コスト関数モジュールは、前記コスト関数の前記構成要素及び前記コスト関数の前記構成要素の重みのうちの1つ又はそれらの組み合わせを、前記宇宙船の目標動作の変更に基づいて更新する、請求項10に記載の制御システム。
【請求項14】
宇宙船であって、
前記宇宙船の姿勢を変更する一組のスラスターと、
前記宇宙船に作用する外乱トルクを吸収する一組の運動量交換デバイスと、
前記スラスター及び前記運動量交換デバイスを制御する請求項10に記載の前記制御システムと、
を備える、宇宙船。
【請求項15】
宇宙船であって、
前記宇宙船の姿勢を変更する一組のスラスターと、
前記宇宙船に作用する外乱トルクを吸収する一組の運動量交換デバイスと、
前記スラスター及び前記運動量交換デバイスの動作を同時に制御する制御システムであって、前記制御システムは、前記制御システムのモジュールを実行する少なくとも1つのプロセッサを備え、前記モジュールは、
前記宇宙船の姿勢に対する制約及び前記スラスターへの入力に対する制約を条件とした後退ホライズンにわたるコスト関数の最適化を用いて、前記宇宙船のスラスター及び前記宇宙船の運動量交換デバイスを同時に制御する制御入力を求める制御入力モジュールであって、前記コスト関数は、前記宇宙船の前記姿勢及び前記運動量交換デバイスによって蓄えられた運動量を制御する構成要素を含む、制御入力モジュール
前記制御入力の少なくとも一部分に従って前記スラスター及び前記運動量交換デバイスを同時に制御するコマンドを生成する力トルクマップモジュールであって、前記生成されたコマンドは、前記蓄えられた運動量をアンロードする前記運動量交換デバイスへのコマンドと、前記宇宙船の前記姿勢を維持又は変更するとともに、前記運動量交換デバイスが前記蓄えられた運動量をアンロードすることによって生成されたトルクを補償する力及びトルクを生成する個々のスラスターへのコマンドとを含む、力トルクマップモジュールと、
前記宇宙船の前記モデルのパラメーター間の関係を規定する公称モデルを線形化することによって、前記最適化によって用いられる前記宇宙船のモデルを求めるとともに、前記宇宙船が前記後退ホライズンの全期間の間、目標位置に位置しているかのように求められた前記モデルに外乱力を含める現在モデルモジュールと、
所望の位置からの前記宇宙船の変位にペナルティを科す前記宇宙船の位置の構成要素と、前記宇宙船のオイラー角の増加にペナルティを科す前記宇宙船の姿勢の構成要素と、前記蓄えられた運動量の大きさの増加にペナルティを科す前記蓄えられた運動量の構成要素と、前記宇宙船の前記動作の目的の構成要素と、前記宇宙船の前記動作の安定性を確保するとともに、前記コスト関数の前記最適化が、個々の各構成要素の目標を、それらの相対的な重みに対応する優先順位で達成する制御入力を生成するように、前記コスト関数の前記構成要素のそれぞれを重み付けする構成要素とを含む複数の構成要素の組み合わせとして前記コスト関数を求めるコスト関数モジュールと、
を含む、制御システムと、
を備える、宇宙船。
【請求項16】
前記制御入力は反復的に求められ、少なくとも1つの反復について、前記コスト関数モジュールは、前記コスト関数の前記構成要素及び前記コスト関数の前記構成要素の重みのうちの1つ又はそれらの組み合わせを、前記宇宙船の目標動作の変更に基づいて更新する、請求項15に記載の宇宙船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、宇宙船の動作を制御することに関し、より詳細には、後退ホライズンにわたってモデル予測制御(MPC:model predictive control)を用いて動作を制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
軌道上の宇宙船は、その場所、すなわち、所望の軌道及び所望の軌道上の位置を維持するその能力に影響を与える様々な外乱力を受ける。これらの力を相殺するために、宇宙船は、一般に、軌道保持マヌーバ用のスラスターを装備している。軌道保持要件を処理する既存の手法は、地上管制センターから手動で指令される衝撃推進システムを用いる。
【0003】
軌道摂動に加えて、宇宙船は、当該宇宙船が地球又は恒星に対して相対的な所望の向きを維持することを可能にするリアクションホイール又はコントロールモーメントジャイロスコープ等の搭載された運動量交換デバイスによって一般に吸収される外部トルクによって擾乱される。運動量交換デバイスの飽和及び続いて起こる所望の宇宙船姿勢の喪失を防止するために、蓄えられた角運動量が、搭載されたスラスターを介して周期的にアンロードされる。これも、地上管制センターからの手動で指令されるプロセスである。
【0004】
地上管制センターから、搭載されたスラスターを決定してこれに指令するプロセスは、手動による面倒なものであり、例えば宇宙船のコロケーションの必要に応じた、特定の軌道上、例えば静止軌道上の宇宙船の数の増加と、それらのタイトな軌道保持ウィンドウとに容易にスケーリングしない。また、そのような手動による制御は、開ループストラテジーをもたらし、このストラテジーは、所望の軌道保持マヌーバ及び運動量管理マヌーバのモデル化又は実施に導入された誤差を自動的に訂正することができず、このため、宇宙船の位置決め及び位置指定の精度が限られる。
【0005】
一般に、軌道保持及び運動量アンロードは、異なる一組のスラスターによって達成されるが、これは、質量が宇宙船設計において駆動上考慮すべき事項であることと、複雑性及びコストが増大することとに起因して望ましくない。同じ一組のスラスターを用いて軌道保持及び運動量アンロードの問題を組み合わせることによって、その結果、目的が複数となり、そのような目的を同時に達成するためにこれらの目的を調整する方法は困難なものとなる。これについては、例えば、スラスターのトルク及び力に利用可能な最大値を用いることによって制御を簡略化する特許文献1に記載された方法を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第8282043号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の幾つかの実施の形態の目的は、単一組のスラスターを用いた宇宙船の軌道位置及び累積された搭載運動量の同時制御のシステム及び方法を提供することである。幾つかの実施の形態の別の目的は、後退ホライズンにわたるモデル予測制御(MPC)を用いて上記同時制御を達成するような方法を提供することである。幾つかの実施の形態の更なる目的は、地上から手動で指令される制御を回避し、搭載された制御システムにおいて実施することができる自律制御を提供し、その結果、よりタイトでより正確な軌道保持及び運動量アンロードを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の幾つかの実施の形態は、全体の推力限界を考慮しながら、要求された推力を利用可能なスラスター間で双方のマヌーバについて調整することによって、単一組のスラスターを軌道保持マヌーバ及び運動量アンロードマヌーバに同時に用いることが可能であるという認識に基づいている。例えば、タイトな許容できる軌道保持ウィンドウ、利用可能な推力に対する厳格な制約、及び軌道保持のための軌道制御と運動量アンロードのための姿勢制御との間に必要とされる調整等の軌道保持及び運動量管理の要件は、コントローラーが満たさなければならない状態及び入力に制約を課す。
【0009】
更なる認識は、明確に定義されたモデル、コスト関数、及び制約を用いたモデル予測制御(MPC)は、宇宙船の実効寿命を伸ばす燃料効率のよいマヌーバを生成するのに有利な可能性があるということである。例えば、MPCのコスト関数は、単一組のスラスターを用いた宇宙船の軌道位置及び蓄積された搭載運動量の同時制御の2重の目的を有することができる。さらに、そのコスト関数の最適化は、調整された軌道制御及び姿勢制御用の状態及び入力に対する制約を条件とすることができる。
【0010】
加えて、MPCは、搭載された制御システムにおいて実施することができる自律閉ループ制御である。幾つかの実施の形態は、任意選択で、宇宙船の公称動作条件に関する線形化された軌道力学方程式及び線形化された姿勢力学方程式に基づく宇宙船の予測モデルを利用する2次計画法(QP:quadratic program)としてMPCを定式化することによって、MPCの計算複雑度を更に低減することができる。
【0011】
また、静止地球軌道(GEO:geostationary Earth orbit)上の宇宙船を制御する1つの実施の形態は、線形化された軌道(CWH)方程式の軌道面結合を利用して、燃料効率の良いマヌーバを達成する。この実施の形態は、関連した非ケプラー外乱力の解析式をMPC予測モデルに用いた外乱予測モデルを含む。
【0012】
したがって、本発明の1つの実施の形態は、宇宙船のモデルに従って宇宙船の動作を制御する方法を開示する。本方法は、宇宙船の姿勢に対する制約及び宇宙船のスラスターへの入力に対する制約を条件とした後退ホライズンにわたるコスト関数の最適化を用いて、スラスター及び宇宙船の運動量交換デバイスを同時に制御する制御入力を求めることであって、コスト関数は、宇宙船の姿勢及び運動量交換デバイスによって蓄えられた運動量を制御する構成要素を含むことと、制御入力の少なくとも一部分に従ってスラスター及び運動量交換デバイスを同時に制御するコマンドを生成することと、を含む。本方法のステップは、宇宙船のプロセッサによって実行される。
【0013】
別の実施の形態は、宇宙船のモデルに従って宇宙船の動作を制御する制御システムであって、制御システムのモジュールを実行する少なくとも1つのプロセッサを備える制御システムを開示する。モジュールは、宇宙船の姿勢に対する制約及び宇宙船のスラスターへの入力に対する制約を条件とした後退ホライズンにわたるコスト関数の最適化を用いて、スラスター及び宇宙船の運動量交換デバイスを同時に制御する制御入力を求める制御入力モジュールであって、コスト関数は、宇宙船の姿勢及び運動量交換デバイスによって蓄えられた運動量を制御する構成要素を含む、制御入力モジュールと、制御入力の少なくとも一部分に従ってスラスター及び運動量交換デバイスを同時に制御するコマンドを生成する力トルクマップモジュールであって、生成されたコマンドは、蓄えられた運動量をアンロードする運動量交換デバイスへのコマンドと、宇宙船の姿勢を維持又は変更するとともに、運動量交換デバイスが蓄えられた運動量をアンロードすることによって生成されたトルクを補償する力及びトルクを生成する個々のスラスターへのコマンドとを含む、力トルクマップモジュールと、を含む。
【0014】
更に別の実施の形態は、宇宙船であって、宇宙船の姿勢を変更する一組のスラスターと、宇宙船に作用する外乱トルクを吸収する一組の運動量交換デバイスと、スラスター及び運動量交換デバイスの動作を同時に制御する制御システムであって、制御システムは、制御システムのモジュールを実行する少なくとも1つのプロセッサを備える制御システムと、を備える、宇宙船を開示する。モジュールは、宇宙船の姿勢に対する制約及びスラスターへの入力に対する制約を条件とした後退ホライズンにわたるコスト関数の最適化を用いて、宇宙船のスラスター及び宇宙船の運動量交換デバイスを同時に制御する制御入力を求める制御入力モジュールであって、コスト関数は、宇宙船の姿勢及び運動量交換デバイスによって蓄えられた運動量を制御する構成要素を含む、制御入力モジュール、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本発明の1つの実施形態による問題の定式化の概略図である。
図1B】本発明の1つの実施形態による問題の定式化の概略図である。
図1C】本発明の1つの実施形態による問題の定式化の概略図である。
図2】本発明の1つの実施形態による宇宙船の動作を制御するコントローラーのブロック図である。
図3】本発明の1つの実施形態による図1Aのコントローラーの一般的な構造のブロック図である。
図4】本発明の1つの実施形態によるコントローラーの様々なモジュールのブロック図である。
図5】本発明の1つの実施形態によるコントローラーのモジュールによって実行される方法のブロック図である。
図6】本発明の1つの実施形態による外乱予測問題の概略図である。
図7】本発明の1つの実施形態による一対のスラスターの実現可能な力及びトルクの値の一例示の領域の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1A及び図1Bは、スラスター150及び運動量交換デバイス151等の複数のアクチュエーターを装備した宇宙船102を示している。アクチュエーターのタイプの例には、リアクションホイール(RW:reaction wheels)及びコントロールモーメントジャイロスコープ(CMG:control moment gyroscopes)が含まれる。宇宙船は、その動作が、アクチュエーターに送信されるコマンドに応答して当該宇宙船の位置、その速度、及びその姿勢又は向き等の物理量を変更する、大気圏外空間を飛行するように設計された乗り物、飛行船、又は機械である。アクチュエーターは、指令を受けると、宇宙船の速度を増減し、このため、宇宙船がその位置を並進させる力を宇宙船に与え、また、アクチュエーターは、指令を受けると、宇宙船が回転し、それによって、その姿勢又は向きを変更するトルクも宇宙船に与える。本明細書において用いられているように、宇宙船の動作は、そのような物理量を変更する宇宙船の運動を決定するアクチュエーターの動作によって決定される。
【0017】
宇宙船は、大気圏外空間において、地球161、月、及び/又は他の惑星(celestial planet)、恒星、小惑星、彗星等の1つ又は複数の重力体の周囲、それらの間、又はそれらの近くを開軌道経路又は閉軌道経路160に沿って飛行する。通例、軌道経路に沿った所望の位置又は目標位置165が与えられている。基準座標系170が、所望の位置に取り付けられる。ここで、この座標の原点、すなわち、その基準座標系における全てがゼロの座標は、常に所望の位置の座標である。
【0018】
宇宙船は様々な外乱力114を受ける。これらの外乱力は、宇宙船の軌道経路を決定するときに考慮されていなかった全ての力である。これらの外乱力は、宇宙船に対して、当該宇宙船を軌道経路上の所望の位置から引き離すように作用する。これらの力は、重力、放射圧、大気抵抗、非球形中心体、及び漏出燃料を含むことができるが、これらに限定されるものではない。このため、宇宙船は、目標位置から離れた距離167に存在する可能性がある。
【0019】
これらの外乱力のために、宇宙船をその軌道に沿った所望の位置に保つことが常に可能であるとは限らない。したがって、その代わりに、宇宙船は、所望の位置の周囲の指定された寸法604を有するウィンドウ166内に留まることが所望されている。そのために、宇宙船は、ウィンドウ内に含まれる任意の経路606に沿って動くように制御される。この例では、ウィンドウ166は、長方形の形状を有するが、ウィンドウの形状は、実施形態が異なれば変化する可能性がある。
【0020】
宇宙船は、多くの場合、所望の向きを維持することも必要とされる。例えば、遠方の恒星172に対して固定された慣性基準座標系171、又は常に地球を指し示すように方位付けられた基準座標系173等の所望の基準座標系と整列されるのに、宇宙船固定基準座標系174が必要とされる。しかしながら、宇宙船の形状に応じて、種々の外乱力114が宇宙船に不均一に作用する可能性があり、それによって、宇宙船をその所望の向きから離れて回転させる外乱トルクが生成される。これらの外乱トルクを補償するために、リアクションホイール等の運動量交換デバイス151が用いられて、外乱トルクが吸収され、このため、宇宙船は、その所望の向きを維持することが可能になる。
【0021】
運動量交換デバイスが飽和し、それによって、外乱トルクを補償する能力を失うことがないように、それらのデバイスに蓄えられた運動量が、例えば、リアクションホイールのスピン量を低減することによってアンロードされる。運動量交換デバイスをアンロードすることによって、不要なトルクが宇宙船に与えられる。そのような不要なトルクも、スラスターによって補償される。
【0022】
図1Cは、宇宙船固定基準座標系174と所望の基準座標系171との間のオイラー角175を示している。例えば、幾つかの実施形態は、これらのオイラー角が運動量アンロードプロセスの間、限度181内に留まるように宇宙船を制御する。
【0023】
図2は、宇宙船102の動作を制御する制御システム101のブロック図を示している。この制御システムは、目標動作、例えば、所望の飛行軌道又は上記物理量のうちの幾つかの目標点等の宇宙船の所望の運動103を受信し、制御入力104を介して宇宙船を制御する。これらの制御入力は、宇宙船の動作のパラメーターを変更するコマンドを含むこともできるし、宇宙船の運動に影響を与える電圧、圧力、トルク、力等のパラメーターの実際の値を含むこともでき、その結果、宇宙船の物理量105が生成される。加えて、外乱力及び外乱トルク114が、宇宙船の運動に影響を与える。
【0024】
本発明の幾つかの実施形態の目的は、宇宙船がボックス166内に留まると同時に蓄えられた超過運動量をアンロードするように、スラスター150及び運動量交換デバイス151へのコマンド104を求めることである。これは、宇宙船112のモデルを用いる自動制御システム101を実施することによって行われる。例えば、幾つかの実施形態は、宇宙船の姿勢及びスラスターへの入力に対する制約115を条件とした後退ホライズン(receding horizon)にわたるコスト関数116の最適化を用いて、宇宙船のスラスター及び宇宙船の運動量交換デバイスを同時に制御する制御入力を求め、適切な制御入力コマンド104を生成する。宇宙船の姿勢は、宇宙船の絶対的又は相対的な位置及び向きのうちの1つ又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、コスト関数は、宇宙船の姿勢を制御する構成要素と、運動量交換デバイスによって蓄えられた運動量をアンロードする構成要素とを含む。
【0025】
制御システム101は、宇宙船に直接接続又はリモート接続されたセンサー、ハードウェア、又はソフトウェアから、宇宙船の運動についての情報106を受信する。情報106は、宇宙船の状態を含む。宇宙船は、制御入力104を選択するのにこの状態を用いる。情報106は、運動の物理量105のうちの幾つか又は全てを含むことができ、また、宇宙船についての追加の情報も含むことができる。物理量105、制御入力104、又はそれらの組み合わせは、宇宙船の動作に対する制約115に従って幾つかの所定の範囲内に留まるように要求することができる。
【0026】
制御システム101は、後退ホライズンにわたるモデル予測制御(MPC)を用いて同時制御を達成する。MPCは、宇宙船のモデルと、宇宙船の運動の一組の目的と、宇宙船推進システム及び宇宙船推進運動に対する制約とに基づく反復的な有限ホライズン最適化に基づいており、将来の事象を予想し、その結果として、適切な制御行動を取る能力を有する。これは、制約を条件として宇宙船のモデルに従って取得された予測を用いて、将来の有限時間ホライズンにわたり、上記一組の目的に従って宇宙船の動作を最適化することによって、あとは現在のタイムスロットにわたって制御を実施するだけで達成される。例えば、制約は、宇宙船の物理的限界、宇宙船の動作に対する安全性限界、及び宇宙船の飛行軌道に対する性能限界を表すことができる。宇宙船の制御ストラテジーは、そのような制御ストラテジーについて宇宙船によって生成された運動が全ての制約を満たすときに許容可能である。例えば、時刻tにおいて、宇宙船の現在の状態がサンプリングされ、許容可能なコスト最小化制御ストラテジーが、将来における比較的短い時間ホライズンについて求められる。具体的には、オンライン計算又はリアルタイム計算が、時刻t+Tまでのコスト最小化制御ストラテジーを求める。この制御の最初のステップが実施された後、状態が再び測定又は推定され、計算が、その時点で現在の状態から開始して繰り返され、新たな制御及び新たな予測された状態飛行軌道が得られる。予測ホライズンは、前方にシフトし、このため、MPCは、後退ホライズン制御とも呼ばれる。
【0027】
図3は、本発明の1つの実施形態による制御システム101の全体構造を示している。制御システム101は、コントローラーのモジュールを実行する少なくとも1つのプロセッサ130を備える。プロセッサ130は、宇宙船モデル112及び制約115を記憶するメモリ120に作動接続されている。本発明の幾つかの実施形態の目的は、制約115を条件とした宇宙船112のモデルを用いて制御入力104を求めることである。メモリは、コスト関数116も記憶することができる。1つの実施形態では、プロセッサは、制御中にコスト関数、制約、及びモデルのうちの少なくとも1つを求め及び/又は更新する。
【0028】
図4は、本発明の1つの実施形態による制御システム101の様々なモジュールのブロック図を示している。幾つかの実施形態では、宇宙船のモデルは、宇宙船の並進運動を統制する宇宙船軌道力学、並びに宇宙船の姿勢運動を統制する宇宙船姿勢力学及び宇宙船姿勢運動学等の、モデル112のパラメーター間の関係を規定する公称モデル202を含む。モデル112は、宇宙船に作用する外乱力114を規定する外乱モデル203も含む。幾つかの実施形態では、これらの外乱力は、宇宙船の実際の位置にかかわらず、宇宙船が、制御の種々の時間ステップについて、所定の位置、例えば所望の位置165に位置しているかのように求められる。それらの実施形態は、そのような近似が、精度を大幅に下げることなく外乱の計算複雑性を単純化するという認識に基づいている。外乱モジュール203によって、MPCは、ナチュラルダイナミクス(natural dynamics)を利用して外乱力を補償することが可能になり、そのため、宇宙船の運動目的を満たしながら、燃料消費量を削減することができる。
【0029】
宇宙船の物理量のうちの幾つかは、宇宙船の動作に対する制約205によって規定された所望の範囲内に留まる必要がある。例えば、そのような物理量は、宇宙船をウィンドウ166内に維持する要件から導出された位置制約と、オイラー角175を限度181内に維持する要件から導出された向き制約とを含む宇宙船の姿勢を含むことができる。
【0030】
本発明の幾つかの実施形態は、制御入力に対する制約206が、推力の大きさの限度等の宇宙船アクチュエーターの操作限度を満たすのに必要とされるという追加の認識に基づいている。幾つかの実施形態では、この制御入力制約206は、単一組のスラスター150が、全体の推力の大きさの限度を考慮しながら、軌道制御用の力及び姿勢制御用のトルクの双方を生成するように定式化される。幾つかの実施形態では、制約206は、宇宙船を制御する少なくとも幾つかの制約205と組み合わせて用いられる。
【0031】
幾つかの実施形態では、制御入力104は、宇宙船の動作に対する制約205及び制御入力に対する制約206を条件としたコスト関数209の最適化に基づいて求められる。幾つかの実施形態では、このコスト関数は、宇宙船の位置用の構成要素291、宇宙船の姿勢用の構成要素292、蓄えられた運動量の構成要素293、宇宙船の動作の目的の構成要素294、及び宇宙船の動作の安定性を確保する構成要素295を含む複数の構成要素の組み合わせを含む。
【0032】
例えば、宇宙船の位置の構成要素291は、所望の位置165からの宇宙船のより大きな変位167にペナルティを科し、そのため、コスト関数209の最適化の結果、制御入力が宇宙船に印加されると、ウィンドウ166内に留まるという目的を達成するのを援助するように変位167を削減する制御入力が得られるようになっている。
【0033】
宇宙船の姿勢の構成要素292は、宇宙船固定基準座標系174と所望の基準座標系、例えば171との間の宇宙船のオイラー角175のより大きな大きさにペナルティを科し、そのため、コスト関数209の最適化の結果、制御入力が宇宙船に印加されると、宇宙船の所望の向きを維持するという目的を達成するのを援助するようにオイラー角175を削減する制御入力が得られるようになっている。
【0034】
蓄えられた運動量の構成要素293は、蓄えられた運動量のより大きな大きさにペナルティを科し、そのため、コスト関数209の最適化の結果、制御入力が宇宙船に印加されると、蓄えられた運動量をアンロードする制御入力が得られるようになっており、例えば、リアクションホイールスピン量の高い値はペナルティを科され、その結果、最適化は、リアクションホイールのスピン量を削減する制御入力を生成する。
【0035】
宇宙船の動作の目的の構成要素294は、例えば、コスト関数209の最適化の結果、用いる燃料がより少ない制御入力が得られるように、スラスターが用いる燃料の量に対するペナルティを含むこともできるし、コスト関数の最適化の結果、宇宙船をより高速に動作させる制御入力、すなわち、より短い時間期間で目的を達成する制御入力が得られるように、宇宙船が動作する速度の大きさのより小さなものに対するペナルティを含むこともできる。
【0036】
安定性の構成要素295は、コスト関数209の最適化の結果、宇宙船の動作の安定性を確保する制御入力が得られるように求められる。1つの実施形態では、所望の軌道160が円形である場合、コスト関数の安定性構成要素は、離散代数リッカチ方程式(DARE:Discrete Algebraic Riccati Equation)の解を用いることによって、MPCホライズンの端部における宇宙船の位置にペナルティを科す。他の実施形態では、所望の軌道は円形でない。例えば、所望の軌道は楕円形であるか、又はそれ以外の非円形及び周期的である。その場合、安定性構成要素は、周期的微分リッカチ方程式(PDRE:Periodic Differential Riccati Equation)の解を用いることによって、MPCホライズンの端部における宇宙船の位置にペナルティを科す。PDREの解は一定ではなく、このため、現在のコスト関数209のペナルティは、MPCホライズンの端部における時間に対応する時点でのPDREの解に対応するように選択されることに留意されたい。
【0037】
幾つかの実施形態では、コスト関数209の構成要素291〜294のそれぞれは、コスト関数の最適化が、様々な個々の構成要素の目標を、それらの相対的な重みに対応する優先順位で達成する制御入力を生成するように重み付けられる。
【0038】
例えば、1つの実施形態では、重みは、スラスターが用いる燃料にペナルティを科す構成要素294に最も大きな重みが与えられるように選択される。その結果、この実施形態は、平均変位167がより大きくなることを犠牲にして、可能な限り最小の量の燃料を用いることを優先する宇宙船の動作を生成する。異なる実施形態では、所望の位置165からの変位167にペナルティを科す構成要素291に最も大きな重みが与えられる。その結果、この実施形態は、用いられる燃料がより多くなることを犠牲にして、小さな平均変位167を維持することを優先する宇宙船の動作を生成する。幾つかの実施形態では、安定性の構成要素295は、その重みが、安定化させる制御入力を生成する重みに従って規定される。
【0039】
制御システム101のプロセッサ130は、現在のコスト関数209を最適化することによって現在の反復中に力、トルク、及び搭載された運動量交換デバイスへのコマンド107を求める制御入力モジュール208を含む制御システムの様々なモジュールを実行する。制御入力モジュールは、宇宙船の動作に対する制約205及び現在の制御入力に対する制約206を条件として、宇宙船の現在のモデル201を用いて現在のコスト関数を最適化する。
【0040】
1つの実施形態では、制御入力モジュール208におけるコスト関数209の最適化は、2次計画法(QP)として定式化される。2次計画法は、搭載された計算能力が限られている宇宙船等のリソース制約を受けるハードウェアにおいて高速かつ効率的に解くことができる。2次計画法を利用するために、線形2次MPC(LQ−MPC:linear−quadratic MPC)が用いられる。
【0041】
例えば、制御システムは、目標軌道上の所望の目標ロケーション165における公称モデル202の線形化、及び所望の目標ロケーション165における外乱力の決定のための現在モデルモジュール201も備える。幾つかの実施形態では、この線形化は、LQ−MPCが線形予測モデルを利用することに起因している。モジュール201は、現在の時点についてのMPCホライズン全体にわたる宇宙船の現在のモデルを求める。モジュール201は、宇宙船106の現在の状態を受信して、線形化に対する宇宙船の状態を求めることもできる。
【0042】
1つの実施形態では、制御システムは、宇宙船の指令された全力及び全トルクから現在の制御入力104を求めて個々のスラスターに印加し、スラスターが、制御入力モジュール208によって生成された所望の力及びトルク107を宇宙船に完全に与えるようにするために、制御入力制約206を反転する力トルクマップモジュール204も備える。力トルクマップモジュール204は、制御入力モジュール208において計算されたコマンドを、変更することなく、個々のスラスターコマンドとともに現在の制御入力104として、搭載された運動量交換デバイスに渡す。
【0043】
制御システムは、現在のコスト関数209を求めるコスト関数モジュール207も備える。例えば、このコスト関数モジュールは、宇宙船の目標動作の変更、例えば所望の運動103の変更に基づいて以前のコスト関数を更新する。なぜならば、運動が異なると、宇宙船の物理量105がそれらの所望の目的を満たすのに異なるコスト関数が必要となる可能性があるからである。また、コスト関数モジュールは、所望の軌道が、当該軌道に基づく更新された重みを必要とする場合に、コスト関数の安定性構成要素295を更新することができる。制御のステップは反復的に実行されるので、現在のモデル及び現在のコスト関数は、その後の反復については、以前のモデル及び以前のコスト関数になる。例えば、以前のモデル、以前のコスト関数、及び以前の制御入力は、以前の反復においては、現在のモデル、現在のコスト関数、及び現在の制御入力として求められる。
【0044】
図5は、制御システム101のモジュールによって実行される方法のブロック図を示している。この方法は、コスト関数の最適化に基づいて宇宙船のモデルを用いて求められた制御入力を用いて、宇宙船の動作を反復的に制御する。この方法は、宇宙船の以前のモデルを用いて以前のコスト関数を最適化することによって以前の反復について求められた以前の制御入力を用いた制御の結果得られる宇宙船の現在の状態を求める(210)。現在の宇宙船の状態は、ハードウェア、ソフトウェア、又は地上との通信、例えば、GPS、相対距離測定、恒星追跡器、ホライズンセンサーを用いて求めることができる。
【0045】
1つの実施形態では、現在の制御入力を求める前に、この方法はモデルを更新する(230)。例えば、モデル更新は、現在の時点についての将来の予測ホライズンにわたる目標軌道上の所望の目標ロケーション165における宇宙船モデル112の線形化を含む。モデル更新は、目標ロケーションにおける同じホライズンにわたる予測された外乱力230も計算し、これを力学予測モデルと組み合わせて、全体の予測を形成する。最後に、幾つかの実施形態では、モデル更新230は、コスト関数の安定性構成要素295も、現在の時点についての将来の予測ホライズンにわたる正しい値に更新することができる。
【0046】
次に、この方法は、現在のモデル及び現在のコスト関数を用いて、現在の反復において、宇宙船を制御する現在の制御入力を求める(240)。例えば、この方法は、予測された将来の宇宙船の状態及び入力が、宇宙船の動作に対する制約及び制御入力に対する制約を満たすように、更新された現在のコスト関数及び現在の宇宙船モデルを用いて、現在の時点から少なくとも新たな宇宙船の状態測定値を取得するまでの長さの将来の固定時間の間の、力、トルク、及び搭載された運動量交換デバイスへのコマンドの将来の入力のシーケンスを求める(240)。宇宙船の状態の新たな測定値を取得するのに必要とされる時間に等しい継続期間の間のこの入力シーケンスの最初の部分は、力及びトルクから個々のスラスタープロファイルに変換され(250)、搭載された運動量交換デバイスへのコマンドとともに、現在の制御入力として宇宙船に印加される(260)。宇宙船の現在の状態、宇宙船の現在のモデル、及び宇宙船への現在の制御入力に基づいて、宇宙船の次の状態が求められ、コントローラーは、新たな状態測定値が受信されるまで待機する(270)。
【0047】
スラスターへのコマンドを計算するのに用いられる式
本発明の1つの実施形態では、宇宙船モデル112は、直交したマスバランス構成で剛性バスに取り付けられた6つの2軸電気スラスター150及び3つの線対称リアクションホイール151を装備した、静止地球軌道(GEO)上の天底照準(nadir−pointing:天底指示)宇宙船について求められる。バス固定座標系174は、宇宙船について規定され、慣性座標系171は、宇宙船の姿勢を求めるために指定される。宇宙船の運動方程式は、以下の式によって与えられる。
【数1】
ここで、r∈Rは、地球の中心に対する宇宙船の位置ベクトルであり、F∈Rは、スラスターによって印加される外力のベクトルであり、a∈Rは、摂動加速度114のベクトルであり、mは、宇宙船の質量であり、μは、地球の重力定数であり、J∈R3×3は、宇宙船バス及びリアクションホイールアレイの慣性のモーメントであり、Jα∈R3×3は、リアクションホイールアレイの慣性のモーメントであり、ω∈Rは、慣性座標系に対するバス座標系の角速度であり、ν∈Rは、リアクションホイールアレイの角速度であり、τ∈Rは、スラスターによって印加されるトルクであり、ω×は、ωの外積行列であり、R∈R3×3は、バス座標系174において分解された、慣性座標系171をバス座標系174に変換する回転ディアディック(rotation dyadic)である。
【0048】
他の実施形態では、(1)の式は、他の軌道上にあり、リアクションホイール以外の他の運動量交換デバイスを有する宇宙船を統制する式の代わりに用いられる。
【0049】
1つの実施形態では、モデル(1)は線形化されて、現在の予測モデル201が形成される。公称円軌道の周りの小さなマヌーバの場合、線形化された式は、以下の式のように宇宙船の相対運動を近似する。
【数2】
ここで、δx、δy、及びδzは、公称ロケーション165に対する宇宙船の位置ベクトルの成分であり、F、F、Fは、推力ベクトルの成分であり、ap,x、ap,y、ap,zは、摂動加速度ベクトルの成分であり、
【数3】
は、公称軌道の平均運動である。
【0050】
1つの実施形態では、姿勢誤差回転行列
【数4】
は、3−2−1オイラー角(ψ,θ,φ)のセットを用いて
【数5】
としてパラメーター化される。ここで、Rは、所望の姿勢飛行軌道であり、C、C、及びCは、それぞれx軸、y軸、及びz軸の回りのψ,θ,及びφの基本回転である。軌道の平均運動nに対応する角速度を有する平衡y軸(主軸)スピンについての姿勢力学及び姿勢運動学の線形化は、以下の式となる。
【数6】
ここで、δω、δω、δω、δφ、δθ、δψ、及びδν、δν、δνは、宇宙船の相対角速度成分、宇宙船の相対オイラー角、及びリアクションホイールアレイの相対角速度成分である。すなわち、それらは、所望の宇宙船の角速度成分、所望のオイラー角、及び所望のリアクションホイールアレイの角速度成分からの誤差を表す物理量である。
【0051】
宇宙船がGEO上にある実施形態の場合、主な摂動加速度は、太陽及び月の重力と、太陽放射圧と、異方性ジオポテンシャル(anisotropic geopotential)、すなわち地球の非球形重力場とに起因するものである。単位質量あたりのこれらの摂動力、すなわち外乱加速度の解析式は、それぞれ、以下の式によって与えられる。
【数7】
ここで、
【数8】
は、座標によらない(未分解)ベクトルを示し、μsun及びμmoonは、太陽及び月の重力定数であり、Csrpは、太陽放射圧定数であり、Sは、太陽に向いている表面の面積であり、creflは、表面反射率であり、ρは、地球の赤道半径であり、
【数9】
は、地球を中心とした慣性座標系のz軸単位ベクトルであり、Jは、考察されているジオポテンシャル摂動モデルにおける支配的な係数であり、ここでは、付加的なより高次の項は無視される。(4)における個々の外乱加速度の総和によって、(1)において考察された全外乱加速度が得られる。
【0052】
幾つかの実施形態では、状態空間モデルが、以下の式によって与えられる。
【数10】
ここで、
【数11】
である。
【0053】
MPC方式において予測モデルとして用いられるために、(5)は、ΔT秒のサンプリング周期を用いて離散化され、これによって、以下の式が得られる。
【数12】
ここで、xは、時間ステップk∈Zにおける状態であり、uは、時間ステップk∈Zにおける制御ベクトルであり、
【数13】
は、(5)における連続時間システム実現値(A,B)に基づいて取得される離散化された行列である。
【0054】
宇宙船に作用する外乱の推定
幾つかの実施形態では、モデル(8)は、外乱加速度(4)の予測モデル203を用いて増強され、以下の式が取得される。
【数14】
ここで、ap,kは、所望の位置165の伝達に基づいて時間ステップkにおいて予測された全外乱加速度であり、OH/Eは、慣性座標系171からのap,kの成分を、所望の基準座標系170における同じ加速度の成分に変換する回転行列である。
【0055】
外乱加速度予測の所望の位置165は、(4)における解析式の非線形性に起因して(9)において用いられる。
【0056】
図6は、時間ステップk=0におけるその所望の位置165から変位した宇宙船102を示している。時間ステップk=1,k=2,...,k=Nにおける公称軌道160上の所望の位置601、602、及び603は事前に知られているので、ap,kは、外乱力604、605、及び606から、時間ステップk=1,k=2,...,k=Nにおける解析式(4)に基づいて予測することができる。宇宙船の位置は、タイトなウィンドウ166内に制約されるので、所望の位置601、602、及び603における外乱加速度及び真の衛星位置907における外乱加速度の差は、前もって知られていないが、無視することができる。したがって、幾つかの実施形態は、宇宙船が後退ホライズンの全期間の間、目標位置に位置しているかのように外乱力を求める。
【0057】
スラスターへの入力に対する制約
幾つかの実施形態では、宇宙船の動作に対する制約205は、以下の関係を用いて、軌道保持ウィンドウ166に対応するδy及びδzによって少なくとも部分的に課せられる。
【数15】
ここで、λ1,maxは最大許容可能経度誤差であり、λ2,maxは、最大許容可能緯度誤差である。
【0058】
本発明の幾つかの実施形態では、宇宙船は、6つの2軸スラスターを装備している。T=[T]と定義する。ここで、Tは、各2軸スラスターによって作用される力である。個々のスラスターの大きさに対する制約、すなわち、
【数16】
は、力トルクマップ204を介して制御入力の力F及びトルクτに対する制約に関係付けられる。(11)及び(12)を組み合わせることによって、(2)を(3)と効果的に結合する、力及びトルク用の制御入力206に対する制約が得られる。すなわち、スラスターは、軌道制御用の力及び姿勢制御用のトルクの双方を生成する。
【数17】
【0059】
図7は、一対のスラスターの実現可能な力及びトルクの値の領域703の一例を示している。ここで、スラスター対が生成することができる最大力701は、この対が生成することができる最大トルク702とトレードオフする。制約(13)は、宇宙船がボックス166内に留まるという目的及び蓄えられた超過運動量をアンロードするという目的の2重の目的を同時に実現することができるように、制御システム101が宇宙船スラスターへの実現可能なコマンド104を生成することを保証する。
【0060】
幾つかの実施形態では、蓄えられた超過運動量をアンロードしている間であっても宇宙船の向きを維持するために、相対オイラー角(δφ,δθ,δψ)は、以下の式の小さな許容範囲内になるように制約される。
【数18】
【0061】
幾つかの実施形態では、現在のコスト関数209は、様々な目的、例えば、公称軌道位置からの変位を定量化する目的J、オイラー角の誤差を定量化して宇宙船の角速度成分にペナルティを科す目的J、スラスターを用いて力及びトルクを生成することにペナルティを科す目的J、並びにリアクションホイール運動量にペナルティを科す目的J、と関連付けられたコストからなる。幾つかの実施形態では、これらのコストJ〜Jは、以下の式によって与えられる。
【数19】
【0062】
各目的J〜Jは、重みwを乗算され、以下の式の総コスト関数Jtotに組み合わされる。
【数20】
【0063】
各目的に割り当てられる重みwは、その相対的な重要度を定めている。所与の目的に割り当てられた重みが大きいほど、その目的は、コスト関数が最適化されるときに優先度が高くなる。
【0064】
(6)及び(7)に基づいて、Jtotは、状態空間を定式化したものについて以下の式のように記述することができる。
【数21】
ここで、Q及びRは、各目的に割り当てられた重みwを符号化する対称正定値重み付け行列であり、更に変更することもできるし、構成要素を定式化したもの(18)から明らかでないクロス重み等の追加の重みを加えることもできる。
【0065】
コスト関数の安定性目的
幾つかの実施形態では、所望の軌道が円形ではなく、例えば、楕円形又はそれ以外の非円形及び周期的である場合、その軌道の周りの宇宙船の運動のモデル201は、線形かつ時間不変とすることができる。そのような実施形態では、コスト関数209の安定性の構成要素295は、以下の周期的差分リッカチ方程式(PDRE:Periodic Difference Riccati Equation)に基づいて求められる。
【数22】
ここで、A、Bは、時間ステップkにおけるモデル201の行列であり、P、Q、及びRは、対称正定値重み付け行列である。行列Q及びRは、(19)における重み付け行列と同じものとみなされる。
【0066】
線形化が、公称円軌道、例えばGEOの周りの運動のように時間不変である実施形態の場合、安定性の構成要素295は、以下の離散代数(正:Algebraic)リッカチ方程式(DARE)の解に基づいて求められる。
【数23】
ここで、A、Bは、(8)におけるモデルの行列であり、P、Q、及びRは、対称正定値重み付け行列である。上記と同様に、行列Q及びRは、(19)における重み付け行列と同じものとみなされる。
【0067】
制御入力計算
幾つかの実施形態では、制御入力モジュール208は、以下の式のように、有限ホライズン数値最適化問題の形を取る。
【数24】
この式は、現在のコスト関数209と、(9)を用いてホライズンにわたる状態の展開を予測する現在の線形化された宇宙船モデル201と、(10)、(13)、及び(14)を用いた宇宙船の制約206とから形成される。ここで、P、Q、Rは、(15)において与えられる行列であり、Dは、(13)と同様に、同時に利用可能な力及びトルクを実施する行列であり、x(t)は、現在の時間ステップにおける状態である。問題(17)は、数値ソルバーを用いて解かれ、この数値ソルバーは、問題制約を条件として現在のコスト関数を最小化する入力シーケンスU=[u...uを見つける。
【0068】
この入力シーケンスにおける最初の入力uは、入力計算208の出力107とみなされる。入力uは、力トルクマップモジュール204に渡され、この力トルクマップモジュールは、(12)を反転し、その結果、(13)を満たす入力に起因して宇宙船のスラスターによって同時に達成することができる実現可能な値を得ることによって、スラスターへのコマンド104を構成する。次の時間ステップt+1において、モデル及びコスト関数が更新され、状態が更新され、数値最適化問題が再び解かれる。
【0069】
軌道が、宇宙船モデル201が時間不変となるようなものである場合、A=A=...=Aであり、B=B=...=Bであり、(17)におけるP、Q、及びRは、(16)における行列P、Q、及びRによって与えられる。(17)のコスト関数にP又はPが含まれることによって、制約が効力を持たない原点の近くのような目標位置の局所安定性が確保され、外乱予測がない場合、(17)の解は、周期的LQRコントローラー又はLQRコントローラーのいずれかの解と同等である。
【0070】
本発明の上記で説明した実施形態は、数多くの方法のうちの任意のもので実施することができる。例えば、これらの実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせを用いて実施することができる。ソフトウェアで実施されるとき、ソフトウェアコードは、単一のコンピューターに設けられるか又は複数のコンピューター間に分散されるかを問わず、任意の適したプロセッサ又はプロセッサの集合体上で実行することができる。そのようなプロセッサは、集積回路コンポーネントに1つ又は複数のプロセッサを有する集積回路として実施することができる。ただし、プロセッサは、任意の適した形式の回路部を用いて実施することができる。
【0071】
さらに、コンピューターは、ラックマウントコンピューター、デスクトップコンピューター、ラップトップコンピューター、ミニコンピューター、又はタブレットコンピューター等の複数の形態のうちの任意のもので具現化することができることが理解されるべきである。そのようなコンピューターは、エンタープライズネットワーク又はインターネット等のローカルエリアネットワーク又はワイドエリアネットワークを含む1つ又は複数のネットワークによって任意の適した形態に相互接続することができる。そのようなネットワークは、任意の適した技術に基づくことができ、任意の適したプロトコルに従って動作することができ、無線ネットワーク、有線ネットワーク、又は光ファイバーネットワークを含むことができる。
【0072】
また、本明細書において略述した様々な方法又はプロセスは、様々なオペレーティングシステム又はプラットフォームのうちの任意の1つを用いる1つ又は複数のプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとしてコード化することもできる。加えて、そのようなソフトウェアは、複数の適したプログラミング言語及び/又はプログラミングツール若しくはスクリプティングツールのうちの任意のものを用いて記述することができる。
【0073】
また、本発明の実施形態は、方法として具現化することもできる。この方法の一例が提供されている。この方法の一部として実行されるステップは、任意の適した方法で順序付けることができる。したがって、例示されたものと異なる順序で動作が実行される実施形態を構築することができ、これらの実施形態は、幾つかの動作を、例示の実施形態では順次的な作用として示されていても同時に実行することを含むことができる。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7