(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態例について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、エレベーター保守システム1の全体構成図である。
【0013】
エレベーター保守システム1は、建物2内に2台のエレベーター12A、12Bと、保守端末5とを備える。エレベーター12A、12Bは、一つのエレベーターホール4を共有して2台並列に設置される。そして、エレベーター12A、12Bを制御する制御盤21A、21Bがエレベーター12A、12Bの号機毎に用意されており、エレベーター12A、12Bの号機毎に複数の無線モジュール22A、22Bが制御盤21A、21Bに接続される。本実施の形態例ではエレベーター12AをA号機、エレベーター12BをB号機とも呼ぶ。
以下、
図1と
図2の説明では、主にA号機のエレベーター12Aの構成例について説明する。このため、エレベーター12Aと同様の構成例としたB号機のエレベーター12Bの各構成(制御盤21B、無線モジュール22B、エレベーター機構部23B、ホールドア24B)については詳細な説明を省略する。
【0014】
エレベーター保守システム1は、隣り合うホールドア24A、24Bの中間に乗場操作盤13を有する。図中の乗場操作盤13は、一例として1階ホールに設置されており、上階に移動する乗りかご(不図示)の乗場呼びボタン(上三角で表示)を有する。
【0015】
エレベーター12Aは、例えば、ホールドア24Aに表されるエレベーター機構部23Aを有する。エレベーター機構部23Aとは、エレベーター12Aの機構部分であり、昇降路内で乗りかごを昇降させるための主ロープ、主ロープを巻き上げる巻上機、主ロープの他端に接続されたカウンタおもり等を含むエレベーターの機械部分を意味する。
【0016】
さらに、エレベーター12Aは、エレベーター機構部23Aに接続された制御盤21Aを有する。制御盤21Aは、エレベーター機構部23Aの動作を制御する。さらに詳しく説明すると、乗りかごの呼び出し信号が制御盤21Aに入ると、制御盤21Aは巻上機を駆動装置により駆動する信号を発生させて巻上機を動作させて、乗りかごの昇降や停止を制御する。
【0017】
制御盤21Aには、無線モジュール22A(無線通信部の一例)が接続される。2台のエレベーター12A、12Bが並列に設置されている場合、エレベーターの間に設置される共通の乗場操作盤13内に、各エレベーターの制御盤に接続される無線モジュール22A、22Bが設置されている。通常、乗場操作盤13はあまり大きくないため、2台の無線モジュール22A、22Bは近接して乗場操作盤13内に設置される。なお、無線モジュール22A、22Bは、エレベーターホール4から視認できないように設けられる。すなわち、無線モジュール22A、22Bはいずれも、乗場操作盤13を形成する各種のモジュール内部に実装されており、外部からは乗場操作盤13の化粧板により見えない。
【0018】
図1では、保守端末5(エレベーター用保守端末の一例)を携帯する保守員Uが保守作業のためにエレベーターホール4にいる様子が示される。このような状況で保守員Uは、保守端末5から無線モジュール22Aを介してA号機の制御盤21Aとの間で情報の送受信を行う。それにより保守端末5は、保守すべき号機の運行データを読み出したり、エレベーター機構部23Aを動作させ保守を行ったりすることができる。
【0019】
保守端末5は、ネットワークNを通じて、遠隔地にある営業所等に設置されたセンター装置3と相互に通信を行うことが可能である。
センター装置3は、特定の地域に設置される複数のエレベーター保守システム1の保守に必要な情報を管理している。例えば、エレベーター12Aの号機と無線モジュール22Aの紐付け情報等があり、保守端末5は、センター装置3に必要な情報を要求する。
【0020】
エレベーター保守システム1は、2つの制御盤21A、21Bと乗場操作盤13が接続される群管理盤11を有する。群管理盤11は、2つのエレベーター12A、12Bの運行の最適化管理を行うために用いられる。群管理盤11の典型的な役割は以下のとおりである。
【0021】
例えば、乗場操作盤13で上階行きの乗場呼びボタンが押されると、群管理盤11は、そのかご呼びを登録し、A号機、B号機のうちどちらの乗りかごでそのかご呼びサービスを提供するのが全体運行上合理的であるかを判断する。このとき、B号機の乗りかごが最も近くの階にいて乗場呼びのあった階より下の階から上階に向かっており、既にA号機の乗りかごが乗場呼びのあった階より上の階にいれば、群管理盤11は、B号機の制御盤21Bに指令を出しB号機の乗りかごを呼ぶ。これにより利用者は、B号機の乗りかごに乗り込んで目的階に行くことができる。
なお、エレベーター保守システム1によっては群管理盤11の機能は制御盤21Aに含まれ、群管理盤11自体は省略されることもある。
【0022】
図2は、エレベーター保守システム1の各部のハードウェア及び機能ブロックの構成図である。
図2ではエレベーター機構部23A、23B等の図示を省略し、無線モジュール22A、22Bと保守端末5間の信号経路を主に図示する。
【0023】
A号機の制御盤21Aは、I/O25A(エレベーター入出力部の一例)、CPU26A(エレベーター制御部の一例)、メモリ27A(エレベーター記憶部の一例)を含む。
制御盤21AのCPU26Aは、I/O25Aに所定の信号が入力されたことを契機としてメモリ27Aに記憶されているプログラムに基づいて所定の処理を行い、制御信号を形成する。
【0024】
メモリ27Aに記憶されているプログラムは、CPU26Aにより読出され、CPU26A上で各機能部として実行される。そして、CPU26Aは、I/O25Aから所定の制御信号をエレベーター機構部23A(
図1)に送って、エレベーター機構部23Aの動作を制御する。
【0025】
なお、B号機の制御盤21Bが有するI/O25B、CPU26B、メモリ27Bは、それぞれI/O25A、CPU26A、メモリ27Aと同様の機能を有するため、詳細な説明を省略する。
【0026】
保守端末5は、画面41、CPU42、メモリ43、GPS受信部44、加速度センサ45、電子コンパス46、I/O47、カメラ48、無線モジュール49を含む。この保守端末5は、無線モジュール22A、22Bと無線通信が可能であるが、以下の説明では保守端末5が無線モジュール22Aと無線通信を行い、制御盤21Aに制御指示を行う場合について示すこととする。
【0027】
画面41は、保守作業に必要となる各種の情報を表示するものであり、タッチパネルにより構成される。画面41は、イメージ画像51、52(後述する
図4と
図5を参照)を表示する表示部41aと、イメージ画像51、52のいずれかを選択可能とする選択部41bとを備える。
【0028】
表示部41aは、後述する組合せ判定部42eによって判定された号機と無線モジュール22A、22Bとの組合せに従って、撮影画像43d及びイメージ画像51、52を表示する。そして、表示部41aは、電波検出部42aにより検出された電波を発信する無線モジュール22A、22Bのそれぞれの設置位置を示す複数のイメージ画像51、52と共に撮影画像43dを表示する。
【0029】
選択部41bは、表示部41aに表示された複数のイメージ画像51、52から特定のイメージ画像51を選択する。選択部41bは、保守員Uが画面41を通じて行うタッチ操作により動作する。
【0030】
CPU42(端末制御部の一例)は、メモリ43に記憶されているプログラムを読出し、各機能部の処理を実行する。
CPU42は、電波検出部42a、位置特定部42b、行先階登録部42c、ドア状態判定部42d、組合せ判定部42e、通信制御部42f、画像判定部42g、位置補正部42h、運転状態取得部42iを備える。
【0031】
電波検出部42aは、無線モジュール22A、22Bが発信する電波を検出する。
位置特定部42bは、電波検出部42aが電波を検出した無線モジュール22A、22Bの位置と、保守端末5の位置とに基づいて、保守端末5(自端末)に対する無線モジュール22A、22Bの相対位置の相対位置を特定する。
【0032】
行先階登録部42cは、カメラ48が撮影するホールドア24A、24Bが設置される階を行先階として登録する。行先階の登録は、保守員Uが保守端末5を通じて行うことが可能である。
ドア状態判定部42dは、撮影画像43dに基づいて、ホールドア24A、24Bの開閉状態(ドア状態の一例)を判定する。この撮影画像43dは、カメラ48から出力され、又はメモリ43から読出されたものである。
【0033】
組合せ判定部42eは、複数の無線モジュール22A、22Bから通信対象となる号機の無線モジュール22A、22Bを選択するための選択モードにおいて動作する。そして、組合せ判定部42eは、ドア状態判定部42dにより開閉状態が判定されたホールドア24A、24Bによって特定されるエレベーター12A、12Bの号機と、ホールドア24A、24Bに設けられる無線モジュール22A、22Bとの組合せを判定する。このとき、組合せ判定部42eは、運転状態取得部42iが取得した運転状態に基づくホールドア24A、24Bの開閉状態と、ドア状態判定部42dが判定したホールドア24A、24Bの開閉状態とが一致するホールドア24Aを特定する。そして、組合せ判定部42eは、通信制御部42fが無線通信を確立する対象の無線モジュール22Aがあると判定する。
【0034】
通信制御部42fは、選択部41bによって選択された特定のイメージ画像51に対応する無線モジュール22Aとの間で無線通信を確立する制御を行う。また、通信制御部42fは、センター装置3とのネットワークNを介した無線通信を確立する制御を行うことも可能である。
【0035】
画像判定部42gは、撮影画像43dに基づいて、保守端末5に対する無線モジュール22A、22Bの相対位置に基づいて複数のイメージ画像51、52が表示部41aに重なって表示されているか否かを判定する。この撮影画像43dについても、カメラ48から出力され、又はメモリ43から読出されたものである。
【0036】
位置補正部42hは、画面41に表示される無線モジュール22Aを特定するために用いられるイメージ画像の表示位置を補正する。表示部41aに表示される複数のイメージ画像51、52が重なっていると判定された場合に、位置特定部42bによって特定された無線モジュール22A、22Bの位置に合わせて、複数のイメージ画像51、52が重ならないように表示部41aに表示する。このため、位置補正部42hは、イメージ画像51、52の表示位置を補正したモジュール位置補正情報43cを作成する。このモジュール位置補正情報43cは、メモリ43に格納されると共に、通信制御部42fを通じてセンター装置3のメモリ33にも格納される。このため、位置補正部42hは、メモリ43にモジュール位置補正情報43cがある場合にはメモリ43からモジュール位置補正情報43cを取得する。一方、位置補正部42hは、メモリ43にモジュール位置補正情報43cがない場合にはセンター装置3からモジュール位置補正情報43cを取得する。
【0037】
なお、位置補正部42hは、センター装置3にモジュール位置補正情報43cがある場合には通信制御部42fの制御によりセンター装置3からモジュール位置補正情報43cを取得し、メモリ43にモジュール位置補正情報43cを格納する。一方、位置補正部42hは、センター装置3にモジュール位置補正情報43cがない場合には、作成したモジュール位置補正情報43cを通信制御部42fの制御によりセンター装置3に登録する。
【0038】
運転状態取得部42iは、通信制御部42fが無線モジュール22A、22Bと無線通信を行い、制御盤21A、21Bからエレベーター12A、12Bの運転状態を取得する。
【0039】
メモリ43(端末記憶部の一例)は、プログラムの他、各種の情報を記憶している。このメモリ43は、自機位置情報43a、モジュール位置情報43b、モジュール位置補正情報43cを記憶する。
【0040】
自機位置情報43aは、GPS受信部44により計測された保守端末5の現在位置と、加速度センサ45が計測した保守端末5の傾き、電子コンパス46が計測した保守端末5の向きとを含む保守端末5の位置情報である。
モジュール位置情報43bは、保守端末5がセンター装置3から受信した無線モジュール22A、22Bの位置情報である。
モジュール位置補正情報43cは、位置補正部42hにより補正された、表示部41aに表示される、無線モジュール22A、22Bに対応するイメージ画像51、52の表示位置を補正した位置情報である。
【0041】
GPS受信部44は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)によりGPS衛星から受信したGPS信号に基づいて、保守端末5の現在位置を示す位置情報を算出する。
加速度センサ45は、例えば、保守端末5の3軸の加速度を検出することにより、保守端末5の傾きを計測する。
電子コンパス46は、保守端末5の向き(例えば、カメラ48の撮像方向)を計測する。
【0042】
I/O47(端末入出力部の一例)は、通信制御部42fの制御により、センター装置3との間でネットワークNを介してデータの送受信を行う。
カメラ48(撮影部の一例)は、保守作業の現場を静止画像又は動画像により撮影する。カメラ48が撮影した静止画像又は動画像は、メモリ43に撮影画像43dとして記憶される。本実施の形態例において、撮影画像43dは、エレベーターホール4において、保守が複数のエレベーター12A、12Bが設置されるホールドア24A、24Bを撮影したものである。
無線モジュール49は、通信制御部42fの制御により、エレベーター12A、12Bの無線モジュール22A、22Bのいずれかとの間で近距離無線通信によりデータの送受信を行う。
【0043】
センター装置3は、I/O31、CPU32、メモリ33を含む。
I/O31は、保守端末5との間でネットワークNを介してデータの送受信を行う。
CPU32は、メモリ33に記憶されているプログラムを読出して所定の処理を実行する。
メモリ33は、プログラムの他、センター装置3が保守端末5にI/O31を通じて送信するモジュール位置情報43b、保守端末5からI/O31を通じて受信するモジュール位置補正情報43cを格納する。
【0044】
図3は、保守端末5が、エレベーター12A、12Bと無線モジュール22A、22Bの組合せを特定するための処理例を示すフローチャートである。
【0045】
保守端末5は、電波検出部42aによる無線モジュール22A、22Bのいずれかが発信した電波の検出結果に基づいて、組合せ判定部42eがエレベーター12A、12Bと無線モジュール22A、22Bの組合せを判定可能である。しかし、左右に並んだエレベーター12A、12BのどちらがA号機でB号機であるか、すなわち無線モジュール22A、22Bが左右どちらのエレベーター12A、12Bに接続されているかは認識できない。
【0046】
このため、保守員Uは、保守端末5を操作して無線モジュール選択モードを起動する(S1)。無線モジュール選択モードとは、保守端末5を用いた保守作業の開始時に、保守員Uが複数の無線モジュール22A、22Bから通信対象となる号機の無線モジュール22Aを選択するための選択モードの一例である。
【0047】
次に、保守員Uは、カメラ48を起動し、エレベーターホール4の撮影を開始する。このとき、保守員Uは、がエレベーター12A、12B及び乗場操作盤13がカメラ48の撮影範囲に収まる位置で撮影を行う。そして、表示部41aは、カメラ48により撮像されたエレベーターホール4の撮影画像43dを画面41に表示する(S2)。カメラ48の撮影範囲は、画面41の表示範囲にほぼ一致するものとする。
【0048】
次に、保守員Uは、保守端末5を所持したまま、エレベーター12A、12Bにそれぞれ接続された無線モジュール22A、22Bの電波を検出できる範囲に近づく。電波検出部42aは、無線モジュール22A、22Bが発信する電波を検出する。
【0049】
次に、電波検出部42aは、無線モジュール22A、22Bの電波強度と共に、無線モジュール22A、22Bの識別子であるSSID(Service Set Identifier)を読み取る。そして、位置特定部42bは、通信制御部42fの制御により、センター装置3に無線モジュール22A、22BのSSIDを送信し、センター装置3から無線モジュール22A、22Bのモジュール位置情報を取得する(S3)。センター装置3には、例えば、緯度及び経度によって特定される無線モジュール22A、22Bの正確な位置情報が予め格納されている。センター装置3から無線モジュール22A、22Bのモジュール位置情報を取得することで、位置特定部42bは、保守員Uが保守端末5を操作する階における無線モジュール22A、22Bの正確な位置を特定することができる。
【0050】
次に、位置特定部42bは、GPS受信部44、加速度センサ45、電子コンパス46から得た保守端末5の自機位置情報43aをメモリ43から読出す。上述したように加速度センサ45、電子コンパス46、自機位置情報43aにより、保守端末5がどの位置でどの方向を向き、どの程度傾いているかが特定される。また、位置特定部42bは、ステップS3にて電波検出部42aが検出した無線モジュール22A、22Bの電波強度に基づいて、保守端末5を基準として、無線モジュール22A、22Bの相対的な方向、距離を特定する。そして、位置特定部42bは、保守端末5に対する無線モジュール22A、22Bの相対的な方向、距離をモジュール位置情報43bとしてメモリ43に格納する。
【0051】
表示部41aは、メモリ43に格納されたモジュール位置情報43bに基づいて、ステップS2で撮影した画像に無線モジュール22Aの位置を示すイメージ画像51と、無線モジュール22Bの位置を示すイメージ画像52を画面41に表示する(S4)。無線モジュール22A、22Bの位置を示すイメージ画像51、52は、後述する
図4に示されるように表示部41aに表示される。
【0052】
次に、位置補正部42hは、通信制御部42fを通じてセンター装置3又はメモリ43にモジュール位置補正情報43cがあるか否かを問合せる(S5)。センター装置3又はメモリ43のいずれかにモジュール位置補正情報43cがある場合(S5のYES)、位置補正部42hは、センター装置3又はメモリ43からモジュール位置補正情報43cを取得する。そして、表示部41aは、から取得したモジュール位置補正情報43cにより後述する
図5に示すように表示位置を補正したイメージ画像51、52を画面41に表示する(S6)。この場合、以下の処理(S7〜S15)を省略可能であり、本処理を終了する。
【0053】
一方、センター装置3及びメモリ43にモジュール位置補正情報43cがない場合(S5のNO)、画像判定部42gは、ステップS4で表示部41aに表示されたイメージ画像51、52を分析する。そして、画像判定部42gは、後述する
図4に示すようにイメージ画像51、52が互いに重なって表示部41a(画面41)に表示されているか否かを判定する(S7)。
【0054】
ここで、表示部41aに重なって表示されるイメージ画像51、52の例について
図4を参照して説明する。
図4は、イメージ画像51、52が互いに重なって表示された例を示すユーザー・インターフェース図である。
図4の上部には実際のホールドア24A、24Bと乗場操作盤13の様子が示され、
図4の下部には保守端末5の画面41に表示される撮影画像43dが示される。
【0055】
図4には、撮影画像43dと共に無線モジュール22A、22Bの位置を示す吹き出し状のイメージ画像51、52が画面41に重畳して表示された例が示される。イメージ画像51は無線モジュール22Aの位置を示し、イメージ画像52は無線モジュール22Bの位置を示す。
【0056】
図1に示したようにエレベーターホール4にいる保守員Uから見て左側にエレベーター12Aが設けられ、右側にエレベーター12Bが設けられるにも拘らず、イメージ画像51、52は左右が逆に表示されている。さらにイメージ画像51、52は重なって表示されるため、イメージ画像52が示す号機は分かりにくい。このようにイメージ画像51、52が重なって表示されると、保守員Uがエレベーター12Aの保守作業を行うためにイメージ画像51を選択しようとしても、誤ってイメージ画像52を選択し、エレベーター12Bに対して誤ったコマンドを送信する可能性がある。
【0057】
このため、
図4に示すようにイメージ画像51、52が重なって表示される場合(S7のYES)、選択部41bによる画面タッチによる選択機能が一時的に無効とされる(S8)。このため、保守員Uが画面41をタッチして無線モジュール22A、22Bのいずれかを選択する操作は一時的に行えなくなり、以降の処理は自動的に実行される。
【0058】
一方、後述する
図5に示すようにイメージ画像51、52が互いに重なって表示されていない場合(S7のNO)、以下の処理(S8〜S15)を省略可能であり、本処理を終了する。
【0059】
ステップS8にて選択機能が無効とされた後、運転状態取得部42iは、無線モジュール22Aを介して、エレベーター12Aの運転状態を取得する(S9)。このエレベーター12Aの運転状態には、エレベーター12Aの乗りかごの位置、ホールドア24Aの開閉状態等が含まれる。
【0060】
次に、行先階登録部42cは、エレベーター12Aに対し、無線モジュール22Aを介して、行先階に最下階を設定する(S10)。最下階には保守端末5を操作する保守員Uがいるためであり、保守員Uがいる階であれば、行先階を最下階以外とすることもできる。
【0061】
次に、カメラ48は、ホールドア24A、24Bの開閉状態の撮影を行い、撮影した画像をメモリ43に撮影画像43dとして記憶する(S11)。なお、カメラ48は、ステップS2の時点からホールドア24A、24Bの撮影を継続している。
【0062】
次に、ドア状態判定部42dは、カメラ48から出力された撮影画像43dに基づいて、ホールドア24A、24Bの開閉状態を監視する(S12)。そして、ドア状態判定部42dは、ホールドア24A、24Bのいずれかが開くか、保守員Uの操作で処理を中断するまで、監視を継続する。
【0063】
ホールドア24A、24Bのいずれかが開くと、ドア状態判定部42dは、ステップS9で取得したエレベーター12Aの運転状態に含まれるホールドア24A、24Bの開閉状態と照合し、ホールドア24A、24Bのどちらが開いたかを特定する。これにより位置特定部42bは、エレベーター12A、12Bの左右の設置位置を特定し、さらに無線モジュール22A、22Bが左右どちらに設置されているかを特定できる(S13)。
【0064】
位置補正部42hは、位置特定部42bにより特定されたエレベーター12A、12B及び無線モジュール22A、22Bの左右の位置関係に合わせて、イメージ画像51、52の表示位置を補正する。そして、表示部41aは、位置補正部42hにより位置が補正されたイメージ画像51、52を画面41に再表示する。これによりイメージ画像51、52が重なることなく画面41に表示される(S14)。その後、位置補正部42hは、表示位置を補正したイメージ画像51、52の位置情報をモジュール位置補正情報43cとしてメモリ43に記憶する。
【0065】
ここで、画面41に重ならずに表示されるイメージ画像51、52の例について
図5を参照して説明する。
図5は、無線モジュール22A、22Bの位置を示すイメージ画像51、52が互いに重ならずに画面41に表示された例を示すユーザー・インターフェース図である。
図5の上部には実際のホールドア24A、24Bと乗場操作盤13の様子が示され、
図5の下部には保守端末5の画面41に表示される撮影画像43dが示される。
【0066】
図5に示すように、表示部41aは、モジュール位置補正情報43cに基づいて複数のイメージ画像51、52を重ならないように画面41の左寄りにイメージ画像51を配置し、画面41の右寄りにイメージ画像52を配置して表示する。このため、A号機に接続される無線モジュール22Aの位置と、B号機に接続される無線モジュール22Bの位置が特定しやすくなる。このようにイメージ画像51、52が表示されると、保守員Uは、実際にエレベーターホール4から見ているホールドア24A、24Bの位置と、無線モジュール22A、22Bの位置関係を間違えずにイメージ画像51を選択することができる。
【0067】
そして、位置補正部42hは、通信制御部42fの制御により、ネットワークNを介してセンター装置3にモジュール位置補正情報43cを送信し、センター装置3にモジュール位置補正情報43cを登録する(S15)。これにより、次回からの保守作業にて他の保守端末5が用いられた際には、他の保守端末5は、センター装置3からモジュール位置補正情報43cを取得することが可能となる。
【0068】
その後、保守端末5は、選択部41bの選択機能を有効とする。そして、保守員Uが選択部41bによりイメージ画像51を選択することで、通信制御部42fは、通信対象とする無線モジュール22Aとの間で無線通信を開始し(S16)、無線モジュール選択モードを終了する(S17)。
【0069】
以上説明した一実施の形態例に係るエレベーター保守システム1では、保守員Uが保守端末5を操作して保守作業を行う際に、無線モジュール22A、22Bに対応するイメージ画像51、52が画面41に表示される。このため、保守員Uは、保守対象である号機のイメージ画像51、52のいずれかを選択して、保守端末5を無線モジュール22A、22Bのいずれかに接続することが可能となる。
【0070】
また、イメージ画像51、52が重なって画面41に表示されたとしても、無線モジュール22A、22Bが設置されている正しい位置にイメージ画像51、52が補正されて表示される。このため、保守員Uは、表示位置が補正されたイメージ画像51、52を見ながら、保守対象の号機に対応する無線モジュール22A、22Bを選択することができる。このようにイメージ画像51、52を表示することで、無線モジュール22A、22Bに対応する号機を明確に示すことが可能となる。
【0071】
なお、上述した実施の形態例では、画面41は、タッチパネルで構成され、保守員がイメージ画像51、52のいずれかを画面41にタッチして選択するようにした。この他にも保守端末5に設けられる選択キー等によりイメージ画像51、52を選択できるようにしてもよい。
【0072】
また、本発明は上述した実施の形態例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した実施の形態例は本発明を分かりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ここで説明した実施の形態例の構成の一部を他の実施の形態例の構成に置き換えることは可能であり、さらにはある実施の形態例の構成に他の実施の形態例の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。