(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444314
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】試料ハンドリングのためのシステムおよびデバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20181217BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
G01N1/00 101H
G01N35/02 A
【請求項の数】59
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-552774(P2015-552774)
(86)(22)【出願日】2014年1月9日
(65)【公表番号】特表2016-505855(P2016-505855A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】US2014010887
(87)【国際公開番号】WO2014110267
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2017年1月10日
(31)【優先権主張番号】61/751,508
(32)【優先日】2013年1月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】チェルノモルスキー, ロスティスラフ
(72)【発明者】
【氏名】ゲール, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】チチョン, サム
【審査官】
赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0208207(US,A1)
【文献】
特表2005−514904(JP,A)
【文献】
特開2005−177749(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0069200(US,A1)
【文献】
特開2006−345862(JP,A)
【文献】
特表2000−500362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
G01N 35/02
B01L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットプラットフォームによって試料を処理するためのシステムであって、前記システムが、
トレイであって、
排水管を画定するウェルであって、前記ウェルが底面を備える、ウェルと、
前記排水管と流体連通するアクセスポートと
を画定する、トレイと、
前記ウェル内に受容されるように適合されるインサートと
を備え、
前記インサートが底壁と側壁とを備え、前記底壁および前記側壁の両方が、前記インサートが前記ウェルに挿入されたときに前記インサートの内部が前記ウェルと流体連通するように、別々に複数の開口部を画定し、前記開口部のうちの少なくともいくつかが、流体における流れまたは回転を誘発するために、前記側壁または前記底壁に対する角度を画定する、システム。
【請求項2】
前記ウェルが前記排水管と前記アクセスポートを接続するチャネルを画定し、前記チャネルが前記排水管から前記アクセスポートへ下向きに勾配付けされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記底面が前記排水管を画定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記底面が高点と低点とを備え、前記排水管が前記低点に近接して位置付けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記低点が前記底面の中心に近接して位置付けられる、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記低点が前記底面の外縁に近接して位置付けられる、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記ウェルが外壁を備え、前記外壁が前記排水管を少なくとも部分的に画定する、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記底面が前記チャネルの上面を画定する、請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
前記底面が前記チャネルの縁を少なくとも部分的に画定する、請求項2に記載のシステム。
【請求項10】
前記トレイがスロットを画定し、前記スロットが前記ウェルと前記アクセスポートとの間に流体連通を提供する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記スロットが、ゲートを受容するように構成される1つ以上の受容器を備え、前記ゲートは、前記アクセスポートから前記ウェルを少なくとも部分的に分離させるための前記受容器への少なくとも部分的な挿入のために構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記ウェルが外壁を備え、前記ウェルに挿入されたときに前記インサートが前記外壁と締り嵌めを形成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記外壁および前記インサートのうちの少なくとも一方がガスケットを備え、前記ガスケットが前記締り嵌めを形成する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記トレイが、前記ウェル内に前記インサートを固定するためのクランプまたはラッチのうちの少なくとも一方をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記ウェルが外壁を備え、前記外壁が、円形形状、四角形形状、楕円形形状、および三角形形状のうちの少なくとも1つを画定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記インサートの前記側壁が前記外壁形状に相補的な形状を画定する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記トレイが複数のウェルを画定し、前記アクセスポートが前記複数のウェルのうちの少なくとも2つと流体連通する、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記複数の開口部のうちの少なくとも1つが鋭角コーナーを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
ロボットプラットフォームによって試料を処理するためのトレイであって、前記トレイが、
少なくとも1つの外壁と底面とを有する幾何学的形状を画定するウェルと、
前記ウェルとは別個であり、かつ前記ウェルと流体連通するアクセスポートと、
前記ウェル内に嵌るように構成されるバスケットと
を備え、
前記バスケットが少なくとも1つの側壁および底壁を画定し、前記側壁および底壁の両方が別々に複数の開口部を画定し、前記開口部のうちの少なくともいくつかが、流体における流れまたは回転を誘発するために、前記側壁または前記底壁に対する角度を画定する、トレイ。
【請求項20】
前記ウェルが前記外壁および前記底面のうちの少なくとも一方によって画定される排水管を画定する、請求項19に記載のトレイ。
【請求項21】
前記底面が実質的に凸状および実質的に凹状のうちの少なくとも一方である、請求項19に記載のトレイ。
【請求項22】
前記底面が前記外壁に向かって傾斜している、請求項19に記載のトレイ。
【請求項23】
前記トレイが、前記ウェルを前記アクセスポートに接続するチャネルをさらに備え、前記チャネルが前記底面の下に位置付けられる、請求項19に記載のトレイ。
【請求項24】
前記底面が前記チャネルを少なくとも部分的に画定する、請求項23に記載のトレイ。
【請求項25】
前記トレイが複数のウェルを備え、前記アクセスポートが前記複数のウェルのうちの少なくとも2つと流体連通する、請求項19に記載のトレイ。
【請求項26】
試料を処理するためのシステムであって、前記システムが、
トレイであって、
排水管を画定するウェルであって、前記ウェルが底面を備える、ウェルと、
前記排水管と流体連通するアクセスポートと
を画定する、トレイと、
前記ウェル内に受容されるように適合されるインサートと
を備え、
前記インサートが底壁と側壁とを備え、前記底壁および前記側壁のうちの少なくとも一方が、前記インサートが前記ウェルに挿入されたときに前記インサートの内部が前記ウェルと流体連通するように、複数の開口部を画定し、前記開口部のうちの少なくともいくつかが、流体における流れまたは回転を誘発するために、前記側壁または前記底壁に対する角度を画定する、システム。
【請求項27】
前記ウェルが前記排水管と前記アクセスポートを接続するチャネルを画定し、前記チャネルが前記排水管と前記アクセスポートとの間で約90度の回転を含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記排水管が排水管直径(DD)を画定し、前記アクセスポートがアクセスポート直径(DA)を画定し、前記排水管直径(DD)が前記アクセスポート直径(DA)よりも大きく、前記インサートが底壁と側壁とを備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記アクセスポートが前記ウェルとは別個である、請求項26に記載のシステム。
【請求項30】
前記インサートの前記底壁および前記側壁の両方が複数の開口部を画定し、前記底壁における前記開口部および前記側壁における前記開口部が湾曲した形状を画定する、請求項26に記載のシステム。
【請求項31】
前記底壁における前記開口部および前記側壁における前記開口部が円形形状を画定する、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記インサートの前記底壁および前記側壁の両方が複数の開口部を画定し、前記底壁における前記開口部が前記側壁における前記開口部とは異なる形状を有する、請求項26に記載のシステム。
【請求項33】
前記側壁における前記開口部が長方形形状を画定し、前記底壁における前記開口部が湾曲した形状を画定する、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記インサートが、前記インサートの外面を無孔性にする化学処理を用いて処理される、請求項26に記載のシステム。
【請求項35】
前記インサートが、前記インサートが増殖因子またはサイトカインを放出することができるようにするために、化学処理される、請求項26に記載のシステム。
【請求項36】
試料を処理するためのシステムと共に使用するためのバスケットであって、前記システムが、ウェルを画定するトレイを含み、前記バスケットが、底壁と側壁とを備え、
前記底壁および前記側壁のうちの少なくとも一方が、前記バスケットの内部が前記トレイの前記ウェルと流体連通するように構成されるように、複数の開口部を画定し、前記開口部のうちの少なくともいくつかが、前記バスケットに導入される流体における流れまたは回転を誘発するために、前記側壁または前記底壁に対する角度を画定する、バスケット。
【請求項37】
前記底壁および前記側壁の両方が複数の開口部を画定する、請求項36に記載のバスケット。
【請求項38】
前記底壁における前記開口部および前記側壁における前記開口部が湾曲した形状を画定する、請求項36に記載のバスケット。
【請求項39】
前記底壁における前記開口部および前記側壁における前記開口部が円形形状を画定する、請求項38に記載のバスケット。
【請求項40】
前記底壁における前記開口部が前記側壁における前記開口部とは異なる形状を有する、請求項37に記載のバスケット。
【請求項41】
前記側壁における前記開口部が長方形形状を画定し、前記底壁における前記開口部が湾曲した形状を画定する、請求項40に記載のバスケット。
【請求項42】
前記バスケットが、前記ウェルの外壁形状に相補的である全体の形状を画定する、請求項36に記載のバスケット。
【請求項43】
前記バスケットの前記全体の形状が、円形形状、四角形形状、楕円形形状、および三角形形状のうちの少なくとも1つである、請求項42に記載のバスケット。
【請求項44】
前記バスケットが、前記バスケットの外面を無孔性にする化学処理を用いて処理される、請求項36に記載のバスケット。
【請求項45】
前記バスケットが、前記バスケットが増殖因子またはサイトカインを放出することができるようにするために、化学処理される、請求項36に記載のバスケット。
【請求項46】
試料を処理するためのトレイおよびバスケットシステムを利用する方法であって、前記方法が、
バスケットをトレイに挿入することであって、前記トレイが、底面を含む、排水管を画定するウェルと、前記排水管と流体連通するアクセスポートとを有する、ことと、
胚を前記バスケットに挿入することと、
装填されたトレイをロボット処理器具に挿入することと、
ピペットを前記アクセスポートに挿入することと、
前記ピペットを介して、流体を前記バスケットに導入および/または抽出することと、
前記トレイを前記ロボット処理器具から除去することと、
前記胚を前記バスケットから除去することと
を含み、
前記バスケットが底壁と側壁とを備え、前記底壁および前記側壁のうちの少なくとも一方が、複数の開口部を画定し、前記開口部のうちの少なくともいくつかが、前記側壁または前記底壁に対する角度を画定し、
流体を前記バスケットに導入および/または抽出するステップが、前記バスケットの構成に起因して、前記流体における流れまたは回転を誘発することを含む、方法。
【請求項47】
前記バスケットを前記トレイに挿入するステップを含む、ステップのうちの少なくとも1つが、手動で実行される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記バスケットを前記トレイに挿入するステップを含む、ステップのうちの少なくとも1つが、ロボット器具によって実行される、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記胚を前記バスケットから除去するステップを含む、ステップのうちの少なくとも1つが、手動で実行される、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記胚を前記バスケットから除去するステップを含む、ステップのうちの少なくとも1つが、ロボット器具によって実行される、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記バスケットを前記トレイに挿入するステップの前に、前記バスケットの外面を無孔性にするように構成される化学溶液を用いて前記バスケットを処理することをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記バスケットを前記トレイに挿入するステップの前に、前記バスケットが増殖因子またはサイトカインを放出することができるようにするために、前記バスケットを化学処理することをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
前記バスケットが底壁と側壁とを備え、前記底壁および前記側壁の両方が、前記流体における前記流れまたは回転を誘発するために、複数の開口部を画定する、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
前記底壁における前記開口部および前記側壁における前記開口部が湾曲した形状を画定する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記底壁における前記開口部および前記側壁における前記開口部が円形形状を画定する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記底壁における前記開口部が前記側壁における前記開口部とは異なる形状を有する、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記側壁における前記開口部が長方形形状を画定し、前記底壁における前記開口部が湾曲した形状を画定する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記バスケットを前記トレイに挿入するステップの後に、バスケットおよびトレイアセンブリを密閉することをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項59】
胚を前記バスケットに挿入するステップの前に、前記バスケットおよびトレイアセンブリからシールを除去することをさらに含む、請求項58に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年1月9日にPCT国際特許出願として出願されており、2013年1月11日出願の米国特許仮出願第61/751,508号の優先権を主張するものであり、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
自動化ロボット処理は、正確性および信頼性を改善するため、ならびに処理時間を改善して操作者資源を他の実務に解放するために、実験室状況で広範に利用される。実験室ロボットは、複数の液体をピペット、または仮想的に任意の体積の液体を分注および採取するように構成された他の器具で分注するために使用される。これらの液体は、細胞、組織、化学物質、生物学的薬剤、細胞もしくは組織を含むスライドガラス、または試験される他の物質を含み得るいくつかの試料ウェルに沈着し、かつそれから抽出され得る。これらの液体は、組織培地、試薬、洗浄液、染料、または他の化学物質であり得、これらのうちのいくつかまたは全ては、ウェル内に含まれる試料と何らかの形で反応し得る。個々の試料は、マイクロタイタープレートのウェル内に含まれ得、これは、必要に応じてロボット器具によって輸送され得る。マイクロタイタープレートは、典型的に、6個、12個、24個、96個、384個、またはそれより多いウェルを含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様では、本技術は、ロボットプラットフォームによって試料を処理するためのシステムに関し、このシステムは、排水管を画定するウェルであって、そのウェルが底面を有するウェルと、排水管と流体連通するアクセスポートとを画定するトレイと、ウェル内に受容されるように適合されるインサートであって、このインサートが底壁および側壁を含む、インサートと、を有し、底壁および側壁のうちの少なくとも一方が、インサートがウェルに挿入されたときに、インサートの内部がウェルと流体連通するように、複数の開口部を画定する。一実施形態では、ウェルは、排水管とアクセスポートを接続するチャネルを画定し、このチャネルは、排水管からアクセスポートに下向きに勾配付けされる。別の実施形態では、底面は、排水管を画定する。さらに別の実施形態では、底面は、高点と低点とを有し、排水管は、低点に近接して位置付けられる。さらに別の実施形態では、低点は、底面の中心に近接して位置付けられる。
【0004】
上記の態様の別の実施形態では、低点は、底面の外縁に近接して位置付けられる。一実施形態では、ウェルは、外壁を有し、外壁は、排水管を少なくとも部分的に画定する。別の実施形態では、底面は、チャネルの上面を画定する。さらに別の実施形態では、底面は、チャネルの縁を少なくとも部分的に画定する。さらに別の実施形態では、トレイは、スロットを画定し、スロットは、ウェルとアクセスポートとの間に流体連通を提供する。
【0005】
上記の態様の別の実施形態では、スロットは、ゲートを受容するように構成される。一実施形態では、ウェルは、外壁を含み、ウェルに挿入されたときに、バスケットが外壁と締り嵌めを形成する。別の実施形態では、外壁およびバスケットのうちの少なくとも一方がガスケットを含み、ガスケットが締り嵌めを形成する。さらに別の実施形態では、トレイは、ウェル内にバスケットを固定するためのクランプまたはラッチのうちの少なくとも一方をさらに有する。さらに別の実施形態では、底壁および側壁の両方が、複数の開口部を画定する。
【0006】
上記の態様の別の実施形態では、ウェルは、外壁を有し、この外壁は、円形形状、四角形形状、楕円形形状、および三角形形状のうちの少なくとも1つを画定する。一実施形態では、バスケットの側壁は、外壁形状に相補的な形状を画定する。別の実施形態では、トレイは、複数のウェルを画定し、アクセスポートは、複数のウェルのうちの少なくとも2つと流体連通する。さらに別の実施形態では、複数の開口部のうちの少なくとも1つは、鋭角コーナーを有する。さらに別の実施形態では、複数の開口部のうちの少なくとも1つは、側壁に対する角度を画定する。
【0007】
別の態様では、本技術は、ロボットプラットフォームにより試料を処理するためのトレイに関し、トレイが少なくとも1つの外壁および底面を有する幾何学的形状を画定するウェルと、ウェルとは別個のものであり、かつ流体連通するアクセスポートと、ウェル内に嵌るように構成されたバスケットと、を有し、バスケットが少なくとも1つの側壁および底壁を画定し、側壁および底壁のうちの少なくとも一方が複数の開口部を画定する。一実施形態では、ウェルは、外壁および底面のうちの少なくとも一方によって画定される排水管を画定する。別の実施形態では、底面は、実質的に凸状および実質的に凹状のうちの少なくとも一方である。さらに別の実施形態では、底面は、外壁に向かって傾斜している。さらに別の実施形態では、トレイは、ウェルをアクセスポートに接続するチャネルをさらに含み、チャネルは、底面の下に位置付けられる。
【0008】
上記の態様の別の実施形態では、底面は、チャネルを少なくとも部分的に画定する。一実施形態では、トレイは、複数のウェルと、この複数のウェルのうちの少なくとも2つと流体連通するアクセスポートとを含む。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
ロボットプラットフォームによって試料を処理するためのシステムであって、
トレイであって、
排水管を画定するウェルであって、前記ウェルが底面を備える、ウェルと、
前記排水管と流体連通するアクセスポートと、を画定する、トレイと、
前記ウェル内に受容されるように適合されるインサートと、を備え、前記インサートが底壁と側壁とを備え、前記底壁および前記側壁のうちの少なくとも一方が、前記インサートが前記ウェルに挿入されたときに、前記インサートの内部が前記ウェルと流体連通するように、複数の開口部を画定する、システム。
(項目2)
前記ウェルが前記排水管と前記アクセスポートを接続するチャネルを画定し、前記チャネルが前記排水管から前記アクセスポートへ下向きに勾配付けされる、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記底面が前記排水管を画定する、項目1に記載のシステム。
(項目4)
前記底面が高点と低点とを備え、前記排水管が前記低点に近接して位置付けられる、項目1に記載のシステム。
(項目5)
前記低点が前記底面の中心に近接して位置付けられる、項目4に記載のシステム。
(項目6)
前記低点が前記底面の外縁に近接して位置付けられる、項目4に記載のシステム。
(項目7)
前記ウェルが外壁を備え、前記外壁が前記排水管を少なくとも部分的に画定する、項目4に記載のシステム。
(項目8)
前記底面が前記チャネルの上面を画定する、項目2に記載のシステム。
(項目9)
前記底面が前記チャネルの縁を少なくとも部分的に画定する、項目2に記載のシステム。
(項目10)
前記トレイがスロットを画定し、前記スロットが前記ウェルと前記アクセスポートとの間に流体連通を提供する、項目1に記載のシステム。
(項目11)
前記スロットがゲートを受容するように構成される、項目10に記載のシステム。
(項目12)
前記ウェルが外壁を備え、前記ウェルに挿入されたときにバスケットが前記外壁と締り嵌めを形成する、項目1に記載のシステム。
(項目13)
前記外壁および前記バスケットのうちの少なくとも一方がガスケットを備え、前記ガスケットが締り嵌めを形成する、項目12に記載のシステム。
(項目14)
前記トレイが、前記ウェル内に前記バスケットを固定するためのクランプまたはラッチのうちの少なくとも一方をさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目15)
前記底壁および前記側壁の両方が複数の開口部を画定する、項目1に記載のシステム。
(項目16)
前記ウェルが外壁を備え、前記外壁が、円形形状、四角形形状、楕円形形状、および三角形形状のうちの少なくとも1つを画定する、項目1に記載のシステム。
(項目17)
前記バスケットの前記側壁が前記外壁形状に相補的な形状を画定する、項目16に記載のシステム。
(項目18)
前記トレイが複数のウェルを画定し、前記アクセスポートが前記複数のウェルのうちの少なくとも2つと流体連通する、項目1に記載のシステム。
(項目19)
前記複数の開口部のうちの少なくとも1つが鋭角コーナーを含む、項目1に記載のシステム。
(項目20)
前記複数の開口部のうちの少なくとも1つが前記側壁に対する角度を画定する、項目1に記載のシステム。
(項目21)
ロボットプラットフォームによって試料を処理するためのトレイであって、
少なくとも1つの外壁と底面とを有する幾何学的形状を画定するウェルと、
前記ウェルとは別個のものであり、かつ流体連通するアクセスポートと、
前記ウェル内に嵌るように構成されるバスケットと、を備え、前記バスケットが少なくとも1つの側壁および底壁を画定し、前記側壁および底壁のうちの少なくとも一方が複数の開口部を画定する、トレイ。
(項目22)
前記ウェルが前記外壁および前記底面のうちの少なくとも一方によって画定される排水管を画定する、項目21に記載のトレイ。
(項目23)
前記底面が実質的に凸状および実質的に凹状のうちの少なくとも一方である、項目21に記載のトレイ。
(項目24)
前記底面が前記外壁に向かって傾斜している、項目21に記載のトレイ。
(項目25)
前記トレイが、前記ウェルを前記アクセスポートに接続するチャネルをさらに備え、前記チャネルが前記底面の下に位置付けられる、項目21に記載のトレイ。
(項目26)
前記底面が前記チャネルを少なくとも部分的に画定する、項目25に記載のトレイ。
(項目27)
前記トレイが複数のウェルを備え、前記アクセスポートが前記複数のウェルのうちの少なくとも2つと流体連通する、項目21に記載のトレイ。
【0009】
図面には、現在好ましい実施形態が示されるが、本技術は、示される精密な配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図10】試料のロボット処理のためのトレイおよびバスケットシステムを使用する、1つの方法を描写する。
【
図11】スライドガラスの処理における使用のためのトレイの上面斜視図を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1Aおよび1Bは、それぞれ、生体試料処理における使用のための6ウェルトレイを描写する。
図1Aでは、トレイ100が、それぞれ、外壁104と底面106とを有する6個のウェル102を画定する。外壁104はウェル102の上縁にリム108を画定することもある。リム108は、特定の嵌合バスケット(これの様々な種類は下記に記載される)を収容するために、必要または所望に応じて、滑らか、先細り、またはネジ式であり得る。底面106は、底面106において中心に位置付けられ、かつこれによって画定される排水管110を画定する。チャネル112は、排水管110をアクセスポート114に接続する。アクセスポート114は、ピペットを受容するように寸法決めおよび構成される。概して、アクセスポート114の底面は、排水管110の底面の下に位置付けられ、したがって、チャネル112内のあらゆる流体がアクセスポート114に向かって受動的に排水できるようにする。底面106は、コーナー116で外壁106と交差する。底面106は、コーナー116から排水管110へ下向きに勾配付けされる。したがって、ウェル102内に位置する流体は、底面106の高点(この場合はコーナー116)から底面106の低点(この場合は排水管110)へ、その後チャネル112の傾斜を下ってアクセスポート114へ排水する。このトレイ100では、ウェル102およびアクセスポート114は、ウェル102の外壁104を貫通するスロット118を介して接続される。スロット118の利点には、ウェル102とアクセスポート114との間の流量の増加(例えばピペットがアクセスポート114に挿入されウェル102に流体を送達するまたはそこから流体を抽出する場合)が挙げられる。
【0012】
図1Bは、トレイ100の別の実施形態を描写する。この図面では、
図1Aで特定される要素に類似した参照番号を有する要素は、別様が述べられない限り、先に特定した要素と同じである。なお、
図1Bの実施形態では、チャネル112は、外壁104に実質的に直角な初期配向に沿って経路を取る。外壁104に近接すると、チャネル112は約90度回転し、アクセスポート114へと続く。先の実施形態と同様に、底面106は凸状であり、一方でチャネル112は排水管110からアクセスポート114へ下向きに傾斜する。
図1Aおよび1Bの実施形態を比較することから分かり得るように、チャネル112の経路は排水管110からアクセスポート114への任意の配向であり得る。
【0013】
図2Aおよび2Bは、生体液体処理における使用のための12ウェルトレイ200の2つの実施形態を描写する。
図1Aの実施形態の符号に類似する符号で特定される要素は、先に特定した要素と概して同じである。アクセスポート214の整列がこの実施形態において注目に値する。アクセスポート114は、C
1およびC
2の2つの列で、ならびに6つの行R
1〜R
6に沿って整列する。アクセスポート214がそのように整列するようなトレイ200の構成は、マルチピペット器具がウェル202に流体を導入し、かつそこから流体を抽出するために効果的に使用されることを可能にする。さらに、
図2Aのトレイ200は、その関連する行および列を特定することによって具体的なウェルを特定するために使用され得る印220を含む。
【0014】
図2Bは、排水管210およびチャネル212を伴うウェル202を有するトレイ200を描写する。
図1A〜2Aの先の実施形態は、アクセスポート114よりも直径が小さい排水管110を描写した。しかしながら、
図2Bの実施形態では、排水管210は、アクセスポートの直径D
Aよりも大きい排水管の直径D
Dを有する。このより大きい排水管の直径D
Dは、より多くの流量が排水管214を通ることを可能にする。このより大きい排水管は、手順の間の流体乱流ならびに充填時間および排水時間を減少させることに役立つ。これは、流体が導入される際のバスケット浮遊も減少させる。
【0015】
図3Aおよび3Bは、生体液体処理における使用のためのトレイ300を描写する。
図1Aの実施形態の符号に類似した符号で特定される要素は、先に特定した要素と概して同じである。トレイ300と前述のトレイとの顕著な違いは、アクセスポート314がウェル302とは別個のものであるということである。ここでは、ウェル302の外壁304は壊れていない。したがって、アクセスポート314への流体導入またはそこからの抽出の量に関わらず、全ての流体は、チャネル312を介してウェル302に入る(先に描写した実施形態では、非常に多い流量が、流体を上記に描写したスロットを貫流させ得る)。
図3Bに描写するように、チャネル312は排水管310からアクセスポート314へ下向きに勾配付けされる。特定の実施形態では、この勾配は約2度〜約5度の間であり得る。これは、ウェル302の凸状底面306と同様に、ウェル302の排水を容易にすることに役立つ。さらに、アクセスポート314の底部分322は、チャネル312よりも低く、これは全ての流体をウェルの外に取り出し得る(例えばチャネル312内に有意な量を残すことなく)ことを保証することに役立つ。ウェル302のうちの1つ以上は、1つ以上のクランプ、ラッチ、またはウェル302内にバスケットを固定するために使用され得る他の係止要素324と関連付けられ得る。
【0016】
図4は、トレイ400の別の実施形態の斜視断面図を描写する。この実施形態では、それぞれのウェル402の底面406は、凸状構成であり、これはバスケット浮遊の減少に役立ちかつウェル402の排水を改善する。したがって、ウェル402内の流体はウェル402の中心から外壁404に向かって排水する。コーナー416は、底面406の外周で高点から低点に勾配付けされ得る。排水管(表示せず)は低点に位置付けられる。特定の実施形態では、排水管は、別個の要素である必要はないが、アクセスポート414をウェル402に接続するスロット418であり得る。
【0017】
図5は、トレイ500の別の実施形態を描写する。この実施形態では、アクセスポート514は、ウェル502に非常に近くかつスロット518を介してこれと完全に流体連通している。この場合の排水管510はアクセスポート514の低点であり、底面506はアクセスポート514および排水管510に向かって勾配付けされる。したがって、本実施形態では、ピペットがアクセスポート514に挿入され排水管510から流体を抽出し、底面506の傾斜のために、これがウェル502の流体含有量を受容する。スロット518は、ゲート526を受容するために1つ以上のチャネルまたは受容器524をさらに画定し得る。ゲート526は、具体的な応用の必要または所望に応じて、アクセスポート514からウェル502を部分的にまたは完全に分離させるために、受容器524内に完全にまたは部分的に受容され得る。ガスケットまたは他の漏洩防止デバイスが、アクセスポート514とウェル502との間の望ましくない漏洩を防止するために、ゲート526と、受容器524および底面506のいずれかまたは両方とのインターフェースにて利用され得る。したがって、ゲート526の底縁は、アクセスポート514とウェル502との間の流れ制御要素として作用するために、底面506の上に位置付けられ得る。
【0018】
図6は、トレイ600の別の実施形態の斜視断面図を描写する。本実施形態では、それぞれのウェル602の底面606は凸状構成であり、これはバスケット浮遊を減少させることに役立ち、ウェル602の排水を改善する。したがって、ウェル602内の流体はウェル602の中心から外壁604に向かって排水する。コーナー616は、底面606の外周で高点から低点に勾配付けされ得る。排水管、この場合スロット618は、アクセスポート614をウェル602に接続する。アクセスポート614の底は凹状であり、したがってその関連付けられるウェル602の底面606よりも低く、これは排水を改善することに役立つ。
【0019】
図7はトレイ700の別の実施形態の斜視断面図を描写する。本実施形態では、複数のウェル702が単一のアクセスポート714によって供給される。
図6の実施形態と同様に、それぞれのウェル702の底面706は、凸状構成であり、これはバスケット浮遊を減少させることに役立ち、ウェル702の排水を改善する。したがって、ウェル702内の流体はウェル702の中心から外壁704に向かって排水する。コーナー716は底面706の外周にて高点から低点に勾配付けされ得る。排水管、この場合スロット718は、アクセスポート714をウェル702のそれぞれに接続する。アクセスポート714の底は凹状であり、したがってその関連付けられるウェル702の底面706よりも低く、これは排水を改善することに役立つ。4つのウェル702が単一のアクセスポート714との連通で描写されるが、具体的な応用の必要または所望に応じて、4つよりも多いまたは少ないウェルが単一のアクセスポートと流体連通し得る。一般的に、複数のウェルの含有物の相互汚染が懸念されない場合、複数のウェルが単一のアクセスポートを介して排水および充填され得る。
【0020】
図8Aおよび8Bは、容器部分802とリップ804とを含む、試料インサートまたはバスケット800の一実施形態を描写する。リップ804は、トレイのウェル(上記のウェルおよびトレイ等)に挿入されたときに、バスケット800を固定するために使用され得る、ガスケットを受容するための溝806を含み得る。ウェルのリムとガスケットとの間の締りは、バスケット800が処理の間にウェルから外れるのを防止する、締り嵌めを形成する。あるいは、リップ804自体は、ガスケットまたはOリングの代わりにウェルのリムと締り嵌めを形成するために弾性材料から製造され得る。あるいは、クランプ、レバー、掛け金等の機械固定要素が、ウェル内にバスケット800を保持するために利用され得る。特定の実施形態では、リップはウェルのリム上の対応するネジに嵌合するようにネジ状であり得る。さらに、バスケットを固定するため、ならびに液体が輸送の間不注意でウェルの外へ跳ねることを防止するために、マスクまたはシールがトレイの上面に固定され得る。リップ804の内面804aは、跳ねを防止することに役立ち、バスケット800のその関連付けられるウェルからの取り外しを支援する。
【0021】
バスケット800の容器部分802は、その側壁810および底壁812の両方において、多数の穴、開口部、貫通808を画定する。貫通808は、具体的な応用の必要または所望に応じて、任意の形状または大きさを画定し得る。貫通808は、そこを通る多い流量を可能にするのに十分に大きいが、バスケット800内に位置する試料が逃げることを防止するのに十分に小さくあるべきである。側壁および底壁の大部分を覆う開口部を含むバスケットは、ウェルへの流体導入を可能にするために他の構造を利用するシステム(例えばメッシュ底面を利用するウェルを有するシステム)を超える流量の改善を可能にすることが決定されている。そこを通る十分な流量を可能にしないバスケットは関連付けられるウェルから外れ得るため、多い流量を有するバスケットは、バスケットを外さずにウェルが迅速に充填されることを可能にする。さらに、鋭角コーナー(例えば
図8Aおよび8Bの長方形穴等)を有する穴を画定するバスケットは、より高い粘度の液体の表面張力を破壊することに役立つ。これは、より多くの流量を可能にし、バスケット浮遊を減少させるまたは排除することに役立つ。この穴のうちのいくつかまたは全ては、試料がそこに固着することを防止するために、流体における流れまたは回転を誘発するために、バスケットの側壁または底壁に対する角度も画定し得る。
【0022】
図9Aおよび9Bはバスケット900の他の構成を描写する。
図8Aおよび8Bに描写される実施形態と同様に、開口部908は容器部分902の側壁910および底壁912を貫通する。図面から明らかであるように、開口部908は任意の大きさまたは形状であり得る。他のバスケット形状が企図される。例えば、バスケットはウェルの形状に相補的に形状化され得る(すなわち円形バスケットおよびウェル、正方形バスケットおよびウェル等)。実際は、バスケットおよびウェルの両方の形状は、具体的な応用の必要または所望に応じて構成され得る。
【0023】
図10は生体試料処理、具体的には、胚の染色を含む胚の自動ロボット処理のために、トレイおよびバスケットシステムを利用する方法1000を描写する。動作1002では、まずバスケットをトレイのそれぞれのウェルに挿入することによって、トレイには1つ以上のバスケットが装備される。これは技術師によって手動でなされ得るか、または適切に構成されたロボット器具によって実行され得る。製造および組立の間にバスケットをウェルに挿入することが有利でもあり得る。トレイおよびバスケットシステムはその後汚染を回避するために適切に密閉され、末端ユーザに発送され得る。バスケットが装備された後、または汚染密閉が取り外された後、動作1004にあるように、胚は1つ以上のバスケットに装填され得る。胚の繊細な本質のために、これは、ロボット器具が使用され得るが多くの場合人の操作者によって実行される。胚が適切なバスケットに挿入されると、その後動作1006で、それぞれの装填されたトレイはロボット処理器具に挿入される。特定の動作が、処理器具または実験室管理ソフトウェアにプログラム化され、具体的な適用の必要または所望に応じて実行される。処理の間、導入される液体の種類に関わらず、本明細書に記載されるトレイおよびバスケットシステムの構造は、ピペットが、胚に損傷を与えるもしくは胚を除去することなく、またはバスケットがトレイから外れることなく、液体を導入もしくは抽出することを可能にする。動作1008にあるように、ピペットをアクセスポートに挿入することにより、胚への損傷または胚のバスケットからの除去は排除される。動作1010では、流体はアクセスポートを介してウェルに導入されおよびそこから抽出される。この手順は、具体的なプロセスの必要に応じて反復され得る。ロボット器具を制御するために使用されるプログラムは、適切な手順である動作1012を、完結するまで実行し続ける。その後、動作1014で示されるように、トレイはロボット処理器具から取り除かれる。人の操作者または専用ロボット器具は、動作1016において示されるように、その後胚を取り除き得る。
【0024】
動作1010に戻り、例示的な胚処理プロトコルの全体が下記に提供される。上記のとおり、胚への損傷またはその除去の傾向を減少させるために、流体はアクセスポートを介して導入および抽出される。処理は、ビブラトームまたは滑走式ミクロトーム由来の組織切片、胚または成人臓器または組織の全体または部分プレパラート等の、ウェル内に保持され得る任意の標本のために適合され得る。
マウス胚全体処理プロトコル
A.モジュールW1、1日目
i.マウス胚をロボットに搭載−実行開始。
ii.胚を2%グルタルアルデヒド/パラホルムアルデヒドに浸す(60分間)。
iii.胚をPBSに浸す(5分間)。
iv.胚を4回PBSに浸す(15分間)。例えば、撹拌しながら10分間を3回。
v.胚をLacZ染色溶液に浸す。
vi.胚をロボットから取り除く。
(1)スライドガラスを4℃で12〜48時間インキュベートする。
(2)インキュベートの時間および温度は多様である。
B.モジュールW2、3日目
i.胚をロボットに戻す。
ii.胚をPBSに3回浸す(それぞれ5分間)。
iii.胚を2%パラホルムアルデヒドに浸す。
iv.胚をロボットから取り除く。
(1)12時間インキュベートする。
C.モジュールW3、4日目
i.胚をロボットに戻す。
ii.胚を3回PBSに浸す(15分間)。
iii.胚を50%のグリセロールに浸す。
iv.胚をロボットから取り除く。
(1)12時間インキュベートする。
D.モジュールW4、5日目
i.胚をロボットに戻す。
ii.胚を70%のグリセロールに浸す(12時間)。
iii.胚をロボットから取り除く。
iv.胚を貯蔵所に移す。
【0025】
本明細書に描写されるトレイシステムは、ピペットによって生じる吸引で、試料に損傷を与えるまたは不注意に試料を除去することなく、流体をウェルに添加またはウェルから抽出しなければならない、多くの他の生体処理において有用である。これは、他の種類の組織化学、原位置ハイブリダイゼーション、または免疫組織化学を含み得る。例えば、ウェル内の試料は、植物または動物細胞または組織を含む、任意の懸濁組織または細胞培養コロニーを含み得る。いくつかの実施形態では、試料はスライドガラス上へ増殖され、トレイシステムはそのスライドガラスを保持するように構成される。いくつかの実施形態では、試料は遠心分離または他の既知の技術を使用して、スライドガラス上に配置され、スライドガラスを保持するように構成されたトレイシステムは染色プロセスで使用される。トレイおよびバスケットシステムが使用される生体プロセスに関わらず、トレイは典型的に、外側の寸法の大きさ(長さ、幅、厚さ)において、標準マイクロタイタープレートに類似するまたは同一であるように構成される。これは、バスケットおよびトレイシステムが、既存の実験室ロボット処理システムと共に容易に使用されることを可能にする。
【0026】
図11は、複数のスライドガラスを処理するためのトレイ1100を描写する。トレイは、それぞれが複数の側壁1104および底面(表示せず)を有する、多数のウェル1102を含む。アクセスポート1114(この場合、それぞれのウェル1102に関連付けられる2つ)は、トレイ1100の上面を貫通する。アクセスポート1114は、前述の図面で描写されるものと同じ様式で、ウェル1102と流体連通し得る。つまり、アクセスポート1114は、ここに示されかつ
図3Aに描写されるように、ウェルとは完全に別個のものであり得る。他の実施形態では、アクセスポートは底面における排水管および/もしくはチャネルを介してウェルと、ならびに/または側壁1104におけるスロットと流体連通し得る。それぞれのウェル1102の1つ以上の壁1104(典型的に対向する壁)は、多数の突出物1120を少なくとも部分的に画定する。隣接する突出物1120はその間にスライドガラスを受容するために離間する。任意の数のスライドガラスが具体的なウェル1102内に保持され得、そのスライドガラスは、スライドガラスの縦軸が実質的に垂直(描写されるように)または水平になるように配向され得る。描写される実施形態ではバスケットを使用する必要はないが、他の実施形態では、スライドガラスは適切に構成されたバスケット内に搭載され得、その後バスケットがウェルに挿入され得る。
【0027】
例示的なスライドガラス処理システムが下記に描写される。
スライドガラス処理プロトコル
A.スライドガラスをロボットに搭載−実行開始(モジュールS1、1日目)。
B.スライドガラスを2%のパラホルムアルデヒドに浸す(5分間)。
C.スライドガラスをPBSに浸す(5分間)。
D.スライドガラスを4回PBSに浸す(10分間)。
E.スライドガラスをLac Z染色溶液に浸す。
F.スライドガラスをロボットから取り除く。
i.スライドガラスを37℃で一晩インキュベートする。
ii.スライドガラスをRTに戻させる。
G.スライドガラスをロボットに戻す(モジュールS2、2日目)。
H.スライドガラスを3回PBSに浸す(それぞれ5分間)。
I.2%のパラホルムアルデヒドに浸す(60分間)。
J.スライドガラスを3回PBSに浸す(10分間)。
i.スライドガラスを中性赤に浸す(3分間)。
K.スライドガラスをD H2Oに浸す(10秒間)。
L.スライドガラスを70%のエタノールに浸す(5分間)。
M.スライドガラスを85%のエタノールに浸す(5分間)。
N.スライドガラスを95%のエタノールに浸す(5分間)。
O.スライドガラスを2回100%のエタノールに浸す(それぞれ5分間)。
P.スライドガラスをエタノール/ヒストクリアに浸す(5分間)。
Q.スライドガラスを2回ヒストクリアに浸す(それぞれ5分間)。
R.ロボット実行を終了し、スライドガラスを保持する。
【0028】
いくつかの態様では試料はマウス胚である。他の態様では試料は組織である。さらに他の態様では、試料は懸濁された細胞培養コロニーである。本明細書に記載される試料は本質が生体であるが、本明細書には任意の試料が企図され、ここにおいて試料の大きさは、バスケットにおける穴、開口部、または貫通を通る移動を回避するのに十分な大きさである。
【0029】
そこに記載されるトレイおよびバスケットの製造において利用される材料は、既存のロボット生体処理システムにおいて使用されるものに類似し得る。例えば、TEFLON(登録商標)、DELRYN、様々な等級のポリプロピレン、ABS、またはPVC等のプラスチック材料が使用され得る。アルミ、ステンレス鋼、およびチタン等の金属も利用され得る。さらに、本明細書に記載されるトレイおよびバスケットは、3次元印刷に利用される標準材料から製造され得る。製造の後に、トレイまたはバスケットは、トレイまたはバスケットの外面を溶かし無孔性にする、化学溶液で処理され得る。この処理は非常に複雑なトレイまたはバスケット構成に特に有用であり得る。
【0030】
本明細書では、バスケットは、処理または未処理であり得ることが企図される。例えば、処理されたバスケットは、バスケット内の組織または細胞の増殖を容易にするために、増殖因子またはサイトカインを放出することができ得る。
【0031】
本明細書に、本技術の例示的および好ましい実施形態と考えられるものが記載されてきた一方で、当業者には本明細書の教示から本技術の他の変形が明白となるであろう。本明細書に開示される、具体的な製造方法および形状は本質的に例示的であり、限定的であると考えられるべきではない。したがって、全てのかかる変形が、本技術の精神および範囲内に収まるものとして、添付の請求項において保証されることが望ましい。したがって、特許証によって保証されることが望ましいものは、以下の請求項において定義および区別される技術、ならびに全ての等価物である。