特許第6444355号(P6444355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6444355無段変速機用金属エレメントおよび無段変速機用金属エレメントの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444355
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】無段変速機用金属エレメントおよび無段変速機用金属エレメントの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16G 5/16 20060101AFI20181217BHJP
   B21D 28/00 20060101ALI20181217BHJP
   B21D 28/02 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   F16G5/16 C
   B21D28/00 B
   B21D28/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-215901(P2016-215901)
(22)【出願日】2016年11月4日
(65)【公開番号】特開2018-71752(P2018-71752A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2017年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢ケ崎 徹
(72)【発明者】
【氏名】隅田 聡一朗
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/156432(WO,A1)
【文献】 特開2006−105368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 5/16
B21D 28/00
B21D 28/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の金属リング(22)に多数個支持されて無段変速機用の金属ベルト(15)を構成する金属エレメント(23)が、前記一対の金属リング(22)が嵌合する左右一対のリングスロット(27)と、前記一対のリングスロット(27)間に位置するネック部(25)と、前記ネック部(25)の径方向外側に連なるイヤー部(26)と、前記ネック部(25)の径方向内側に連なって前記金属リング(22)の内周面を支持するサドル面(28)が形成されたボディ部(24)とを備え、前記ボディ部(24)の前面に、左右方向に延びるロッキングエッジ(29)と、前記ロッキングエッジ(29)から径方向内側かつ後方に延びる傾斜面(30)とが形成された無段変速機用金属エレメントであって、
前記金属エレメント(23)の後面は、前記イヤー部(26)の左右両端側に形成された左右一対の第1当接部(C1)と、前記ネック部(25)に形成された第2当接部(C2)と、前記ボディ部(24)の前記ロッキングエッジ(29)近傍の左右方向中央部に形成された第3当接部(C3)とを備え、前記金属ベルト(15)の駆動力伝達側の弦部において、前記第1当接部(C1)、前記第2当接部(C2)および前記第3当接部(C3)は後側に隣接する他の金属エレメント(23)の前面に当接可能であり、前記第2当接部(C2)における前記金属エレメント(23)の板厚は、前記第1当接部(C1)における前記金属エレメント(23)の板厚よりも小さく、かつ前記第3当接部(C3)における前記金属エレメント(23)の板厚よりも大きいことを特徴とする無段変速機用金属エレメント。
【請求項2】
請求項1に記載の金属エレメント(23)を、一定断面を有する帯板状の金属エレメント素材(23′)を金型(47,49)を用いてプレス加工することで製造する無段変速機用金属エレメントの製造方法であって、
前記金属エレメント(23)の後面における前記左右一対の第1当接部(C1)と前記第2当接部(C2)とに囲まれた前記イヤー部(26)の中央部にはプレス加工により形成された第1凹部(26a)が設けられ、かつ前記イヤー部(26)の径方向内端部には前記金属エレメント素材(23′)に予め形成された溝状の素材凹部(34)よりなる第2凹部(26b)が設けられることを特徴とする無段変速機用金属エレメントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の金属リングに多数個支持されて無段変速機用の金属ベルトを構成する無段変速機用金属エレメントと、その無段変速機用金属エレメントを製造する製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト式無段変速機の金属ベルトの駆動力伝達側の弦部において相互に当接する金属エレメントのピッチングを抑制して金属ベルトの剛性を高めるべく、金属エレメントの後面のイヤー部の左右方向両端部と、ネック部と、ロッキングエッジ部の左右方向中央部とに、隣接する金属エレメントの前面に当接可能な当接部を形成したものが、下記特許文献1により公知である。
【0003】
特許文献1では、金属エレメントのピッチングを抑制するためには、ネック部の当接部の径方向外端がイヤー部の当接部の径方向内端よりも径方向外側に位置することと、ネック部の当接部とロッキングエッジ部の当接部とが段差を有することとが必要であると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4129448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来のものは、図13に示すように、ネック部の当接部bが金属エレメントの後面から最も後方に突出しているため、金属エレメントが前上がりにピッチングしてイヤー部の当接部aとネック部の当接部bとが隣接する金属エレメントに当接するときに、ロッキングエッジ部の当接部cが隣接する金属エレメントから浮き上がってしまい、逆に金属エレメントが前下がりにピッチングしてロッキングエッジ部の当接部cとネック部の当接部bとが隣接する金属エレメントに当接するときに、イヤー部の当接部aが隣接する金属エレメントから浮き上がってしまうため、隣接する金属エレメントが交互に逆方向にピッチングし、金属ベルトの駆動力伝達側の弦部の剛性が低下して動力伝達効率が悪化する可能性があった。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、金属ベルトの駆動力伝達側の弦部における金属エレメントのピッチングを抑制するとともに、金属エレメント素材をプレス加工して金属エレメントを製造する際のプレス荷重を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、一対の金属リングに多数個支持されて無段変速機用の金属ベルトを構成する金属エレメントが、前記一対の金属リングが嵌合する左右一対のリングスロットと、前記一対のリングスロット間に位置するネック部と、前記ネック部の径方向外側に連なるイヤー部と、前記ネック部の径方向内側に連なって前記金属リングの内周面を支持するサドル面が形成されたボディ部とを備え、前記ボディ部の前面に、左右方向に延びるロッキングエッジと、前記ロッキングエッジから径方向内側かつ後方に延びる傾斜面とが形成された無段変速機用金属エレメントであって、前記金属エレメントの後面は、前記イヤー部の左右両端側に形成された左右一対の第1当接部と、前記ネック部に形成された第2当接部と、前記ボディ部の前記ロッキングエッジ近傍の左右方向中央部に形成された第3当接部とを備え、前記金属ベルトの駆動力伝達側の弦部において、前記第1当接部、前記第2当接部および前記第3当接部は後側に隣接する他の金属エレメントの前面に当接可能であり、前記第2当接部における前記金属エレメントの板厚は、前記第1当接部における前記金属エレメントの板厚よりも小さく、かつ前記第3当接部における前記金属エレメントの板厚よりも大きいことを特徴とする無段変速機用金属エレメントが提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1に記載の金属エレメントを、一定断面を有する帯板状の金属エレメント素材を金型を用いてプレス加工することで製造する無段変速機用金属エレメントの製造方法であって、前記金属エレメントの後面における前記左右一対の第1当接部と前記第2当接部とに囲まれた前記イヤー部の中央部にはプレス加工により形成された第1凹部が設けられ、かつ前記イヤー部の径方向内端部には前記金属エレメント素材に予め形成された溝状の素材凹部よりなる第2凹部が設けられることを特徴とする無段変速機用金属エレメントの製造方法が提案される。
【0009】
なお、実施の形態のカウンタパンチ47およびメインパンチ49は本発明の金型に対応する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、金属エレメントの後面は、イヤー部の左右両端側に形成された左右一対の第1当接部と、ネック部に形成された第2当接部と、ボディ部のロッキングエッジ近傍の左右方向中央部に形成された第3当接部とを備え、金属ベルトの駆動力伝達側の弦部において、第1当接部、第2当接部および第3当接部は後側に隣接する他の金属エレメントの前面に当接可能であり、第2当接部における金属エレメントの板厚は、第1当接部における金属エレメントの板厚よりも小さく、かつ第3当接部における金属エレメントの板厚よりも大きいので、第2当接部が第1当接部および第3当接部に対して後方に突出することがなくなり、第1当接部、第2当接部および第3当接部は略同一平面内に位置することになる。その結果、金属ベルトの駆動力伝達側の弦部において、第1当接部、第2当接部および第3当接部は隣接する金属エレメントの前面に略均等に当接するため、金属エレメントのピッチングが抑制されて金属ベルトの剛性が高まることで動力伝達効率が向上する。
【0011】
また請求項2の構成によれば、金属エレメントは、一定断面を有する帯板状の金属エレメント素材を金型を用いてプレス加工することで製造される。金属エレメントの後面における左右一対の第1当接部と第2当接部とに囲まれたイヤー部の中央部にはプレス加工により形成された第1凹部が設けられ、かつイヤー部の径方向内端部には金属エレメント素材に予め形成された溝状の素材凹部よりなる第2凹部が設けられるので、金型のプレス荷重により第1凹部から押し出された肉の一部が金属エレメント素材に予め形成された溝よりなる第2凹部内に流動することで、プレス荷重が低減して金型の耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ベルト式無段変速機の全体構成を示す図。(第1の実施の形態)
図2】金属ベルトおよび金属エレメントの斜視図。(第1の実施の形態)
図3】金属エレメントの後面図。(第1の実施の形態)
図4図3の4−4線断面図。(第1の実施の形態)
図5】金属エレメント素材の斜視図。(実施の形態)
図6】打ち抜き加工装置および金属エレメント素材の断面図。(第1の実施の形態)
図7図6に対応する作用説明図。(第1の実施の形態)
図8図6に対応する作用説明図。(第1の実施の形態)
図9】プレス成形時の作用を説明する模式図。(第1の実施の形態)
図10】駆動力伝達側の弦部における金属エレメントの挙動の説明図。(第1の実施の形態)
図11図3に対応する図、(第2の実施の形態)
図12図3に対応する図。(第3の実施の形態)
図13】駆動力伝達側の弦部における金属エレメントの挙動の説明図。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【第1の実施の形態】
【0013】
以下、図1図10に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0014】
図1は自動車に搭載されたベルト式無段変速機Tの概略構造を示すもので、ベルト式無段変速機Tはエンジンに接続されるドライブシャフト11と、駆動輪に接続されるドリブンシャフト12とを備えており、ドライブシャフト11に設けたドライブプーリ13とドリブンシャフト12に設けたドリブンプーリ14とに無端状の金属ベルト15が巻き掛けられる。ドライブプーリ13は、ドライブシャフト11に固設された固定側プーリ半体16と、この固定側プーリ半体16に対して接離可能な可動側プーリ半体17とを備えており、可動側プーリ半体17は油室18に作用する油圧で固定側プーリ半体16に向けて付勢される。ドリブンプーリ14は、ドリブンシャフト12に固設された固定側プーリ半体19と、この固定側プーリ半体19に対して接離可能な可動側プーリ半体20とを備えており、可動側プーリ半体20は油室21に作用する油圧で固定側プーリ半体19に向けて付勢される。
【0015】
図2図4に示すように、金属ベルト15は左右の一対の金属リング22に多数の金属エレメント23を支持したもので構成される。本明細書において、金属ベルト15が走行する方向を前後方向の前方と定義し、金属ベルト15がドライブプーリ13およびドリブンプーリ14に巻き付いた状態で、ドライブプーリ13およびドリブンプーリ14の外周側を径方向の外側と定義し、前後方向および径方向に直交する方向を左右方向と定義する。また金属エレメント23の素材となる金属エレメント素材23′(図5参照)と、金属エレメント素材23′から金属エレメント23を成形および打ち抜きする打ち抜き加工装置41(図6参照)とについても、金属エレメント23の前後方向、径方向および左右方向に対応する方向を、それらの前後方向、径方向および左右方向と定義する。
【0016】
金属エレメント素材23′から製造された金属エレメント23は、左右方向に延びるボディ部24と、ボディ部24の左右方向中央から径方向外側に延びるネック部25と、ネック部25の径方向外端に接続される略三角形のイヤー部26とを備えており、ボディ部24、ネック部25およびイヤー部26間に左右方向外側に開放して金属リング22が嵌合する一対のリングスロット27が形成される。リングスロット27に臨むボディ部24の径方向外端には金属リング22の内周面が着座するサドル面28が形成され、サドル面28よりも径方向内側のボディ部24の前面には左右方向に延びるロッキングエッジ29が形成され、更にボディ部24の前面にはロッキングエッジ29から径方向内向きかつ後向きに傾斜する傾斜面30が形成される。
【0017】
金属エレメント23のボディ部24の左右両端には、ドライブプーリ13およびドリブンプーリ14のV面に当接するプーリ当接面31が形成される。また金属エレメント23のイヤー部26の前面には、イヤー部26の後面に形成した円錐台状のホール33に嵌合可能な円錐台状のノーズ32が形成される。
【0018】
金属エレメント23の傾斜面30は、ロッキングエッジ29から第1傾斜角θ1で径方向内向きかつ後向きに傾斜する第1傾斜面30aと、第1傾斜面30aの径方向内端から第2傾斜角θ2で径方向内向きかつ後向きに傾斜する第2傾斜面30bとからなり、ボディ部24の前後方向板厚は傾斜面30の範囲で径方向内側に向かって次第に薄くなる。
【0019】
図3から明らかなように、金属エレメント23の後面には、イヤー部26のホール33の周囲を取り囲む平坦な第1凹部26aが形成されるとともに、イヤー部26の径方向内端に沿って左右方向に連続する平坦な第2凹部26b(斜線部参照)が形成される。更に、金属エレメント23のボディ部24の左右方向中央部におけるロッキングエッジ29よりも径方向外側部分に平坦な第3凹部24aが形成される。その結果、金属エレメント23の後面には、イヤー部26の左右両端側に位置する左右一対の第1当接部C1と、ネック部25に位置する第2当接部C2と、ボディ部24の左右方向中央部におけるロッキングエッジ29の近傍に位置する第3当接部C3とが形成される。なお、第3当接部C3は、ボディ部24の後面の他の部分と面一であるが、ボディ部24の後面における所定の位置が第3当接部C3として定義される。第1当接部C1、第2当接部C2および第3当接部C3は、第1凹部26a、第2凹部26bおよび第3凹部24aを除いて平坦な金属エレメント23の後面上にあるため、その後方への突出高さは均一である。
【0020】
図4から明らかなように、金属エレメント23の第1当接部C1、第2当接部C2および第3当接部C3における前後方向板厚は均一ではなく僅かに異なっており、径方向外側に位置するイヤー部26の第1当接部C1の板厚t1が最も大きく、径方向中間に位置するネック部25の第2当接部C2の板厚t2が次いで大きく、径方向内側に位置するロッキングエッジ29の近傍の第3当接部C3の板厚t3が最も小さくなっている。すなわち、第1当接部C1の板厚t1>第2当接部C2の板厚t2>第3当接部C3の板厚t3に設定される。
【0021】
図5に示すように、金属エレメント23を製造する際の素材となる金属エレメント素材23′は、長手方向に一定断面を有するように圧延加工された帯状の金属板からなる。金属エレメント素材23′は、金属エレメント23のイヤー部26、ネック部25およびボディ部24にそれぞれ対応する、イヤー部対応部26′、ネック部対応部25′およびボディ部対応部24′を備える。金属エレメント素材23′のイヤー部対応部26′の後面の径方向内端には、金属エレメント素材23′の長手方向に沿って溝状に延びる素材凹部34が形成される。素材凹部34は、金属エレメント23のイヤー部26の第2凹部26bに対応する。
【0022】
また金属エレメント素材23′のボディ部対応部24′はロッキングエッジ29に対応する位置でボディ部24の第3当接部C3の板厚t3と略同じ板厚を有しており、そこから径方向内側に向かって板厚が減少する。すなわち、金属エレメント素材23′のボディ部対応部24′の傾斜面対応部30′は、ロッキングエッジ対応部29′から第1傾斜角θ1で径方向内向きかつ後向きに傾斜する第1傾斜面対応部30a′と、第1傾斜面対応部30a′の径方向内端から第2傾斜角θ2で径方向内向きかつ後向きに傾斜する第2傾斜面対応部30b′とからなる。
【0023】
以上のように、金属エレメント素材23′の断面形状は、金属エレメント23のノーズ32およびホール33と、金属エレメント23のイヤー部26の第1凹部26aに対応する部分と、金属エレメント23のボディ部24の第3凹部24aに対応する部分とを持たない点を除いて、金属エレメント23の断面形状と略一致している。
【0024】
図6に示すように、金属エレメント素材23′から金属エレメント23を打ち抜き加工する打ち抜き加工装置41は、枠体42の下部に固定された下側ダイ43と、枠体42の上部に昇降自在に支持されてダイ駆動シリンダ44で昇降駆動される上側ダイ45と、下側ダイ43に形成した上面開放の凹部43aに嵌合してカウンタパンチ駆動シリンダ46で昇降駆動されるカウンタパンチ47と、上側ダイ45に形成した下面開放の凹部45aに嵌合してメインパンチ駆動シリンダ48で昇降駆動されるメインパンチ49とを備える。
【0025】
カウンタパンチ47およびメインパンチ49の輪郭形状は、金属エレメント23の輪郭形状と同じであり、カウンタパンチ47には金属エレメント23のノーズ32を成形するためのノーズ成形部47aと、金属エレメント23の第1傾斜面30aを成形するための第1傾斜面成形部47bとが形成され、メインパンチ49には金属エレメント23のホール33を成形するためのホール成形部49aと、金属エレメント23のイヤー部26の第1凹部26aを成形するための第1凹部成形部49bと、金属エレメント23のボディ部24の第3凹部24aを成形するための第3凹部成形部49cとが形成される。
【0026】
カウンタパンチ47の第1傾斜面成形部47bは、金属エレメント素材23′の傾斜面対応部30′の第1傾斜面対応部30a′と平行であり、第1傾斜面成形部47bおよび第1傾斜面対応部30a′は共に第1傾斜角θ1だけ傾斜している。従って、第1傾斜面成形部47bは、金属エレメント素材23′の傾斜面対応部30′の第2傾斜面対応部30b′との間に間隙αを備えている。
【0027】
次に、上記構成を備えた金属エレメント23の形状による作用効果を説明する。
【0028】
ドライブプーリ13およびドリブンプーリ14に巻き掛けられた金属ベルト15は、ドライブプーリ13からドリブンプーリ14に向かって延びる駆動力伝達側の弦部の押し力により駆動力を伝達する。駆動力伝達側の弦部では金属エレメント23が相互に略平行に整列するのに対し、金属ベルト15がプーリ13,14に巻き付く巻き付き部では、金属エレメント23がプーリ13,14の軸線を中心とする放射状に姿勢を変更するため、隣接する金属エレメント23の径方向外端の間隔が広がり、径方向内端の間隔が狭まるように相対的に揺動する。その際に、前側の金属エレメント23の後面に当接する後側の金属エレメント23のロッキングエッジ29が支点となり、前後の金属エレメント23がノーズ32およびホール33間の隙間の範囲で相対的にピッチング(前後方向の揺動)することで、前記姿勢を変更が許容される。
【0029】
金属ベルト15の駆動力伝達側の弦部において多数の金属エレメント23が相互に当接して駆動力を伝達するとき、前側の金属エレメント23の後面のイヤー部26の第1当接部C1、ネック部25の第2当接部C2およびボディ部24第3当接部C3が、後側の金属エレメント23の前面に当接するが、金属エレメント23の板厚が、第1当接部C1の板厚t1>第2当接部C2の板厚t2>第3当接部C3の板厚t3に設定されているため、図10に示すように、第1〜第3当接部C1〜C3は何れも浮き上がることなく隣接する金属エレメント23の前面に略均等に当接し、安定した当接状態が維持される。
【0030】
このとき、上記特許文献1に記載されたもののように、第2当接部C2の板厚t2が第1当接部C1の板圧t1および第3当接部C3の板厚t3よりも大きいと、図13に示すように、第2当接部C2を支点とて金属エレメント23が前上がりあるいは前下りにピッチングしてしまい、金属ベルト15の駆動力伝達側の弦部の剛性が低下して動力伝達効率の低下を招くことになる。このように、本実施の形態によれば、金属ベルト15の駆動力伝達側の弦部における金属エレメント23のピッチングを抑制して動力伝達効率の低下を回避することができる。しかも金属エレメント23の板厚が径方向外側で僅かに厚く、径方向外側で僅かに薄くなるため、金属ベルト15の駆動力伝達側の弦部が径方向外側に僅かに湾曲して安定した姿勢を維持することができる。
【0031】
次に、金属エレメント23の製造工程における作用効果を説明する。
【0032】
図6に示すように、予め製造した金属エレメント素材23′を打ち抜き加工装置41の下側ダイ43およびカウンタパンチ47の上に載置する。続いて、図7に示すように、ダイ駆動シリンダ44で上側ダイ45を下降させ、下側ダイ43および上側ダイ45間に金属エレメント素材23′を挟んで固定した後、メインパンチ駆動シリンダ48でメインパンチ49を下降させ、カウンタパンチ47およびメインパンチ49間に金属エレメント素材23′を挟んでプレス加工する。
【0033】
その結果、カウンタパンチ47のノーズ成形部47aおよびメインパンチ49のホール成形部49aにより金属エレメント23のノーズ32およびホール33が成形され、カウンタパンチ47の第1傾斜面成形部47bで金属エレメント23の第1傾斜面30a(すなわち金属エレメント素材23′bの第1傾斜面対応部30a′)が成形され、メインパンチ49の第1凹部成形部49bで金属エレメント23の第1凹部26aが成形されるとともに、第3凹部成形部49cで金属エレメント23の第3凹部24aが成形される。このとき、金属エレメント23のイヤー部26の第2凹部26bは、メインパンチ49によりプレス加工されることなく、金属エレメント素材23′に予め形成された素材凹部34の一部として成形される。
【0034】
このようにして金属エレメント23のプレス成形が完了すると、図8に示すように、下側ダイ43および上側ダイ45に対して、カウンタパンチ47およびメインパンチ49をカウンタパンチ駆動シリンダ46およびメインパンチ駆動シリンダ48で相対的に下降させることにより、金属エレメント素材23′から金属エレメント23を打ち抜き加工する。
【0035】
図9は金属エレメント23をプレス加工するときの作用を模式的に示すもので、図3に示す金属エレメント23の4−4線断面図に対応している。図9(A)は金属エレメント素材23′が素材凹部34を持たない場合に対応する比較例であり、メインパンチ49の第1凹部成形部49bでイヤー部26の第1凹部26aをプレスすると、1凹部26aの周囲に肉が押し出されるため、押し出された肉を更にプレスして第1当接部C1を所定の板厚に仕上げるのに大きなプレス荷重が必要になる。
【0036】
一方、図9(B)は金属エレメント素材23′が素材凹部34を持つ本実施の形態であり、メインパンチ49の第1凹部成形部49bによって押し出された肉の一部が金属エレメント素材23′の素材凹部34に流れ込むことで、押し出された肉を更にプレスして第1当接部C1および第2当接部C2を所定の板厚に仕上げるためのプレス荷重が減少することで、打ち抜き加工装置41の耐久性が向上する。
【第2の実施の形態】
【0037】
次に、図11に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0038】
第1の実施の形態は金属エレメント23のイヤー部26の径方向内端に沿ってプレス加工時の肉を逃がすための第2凹部26bを備えているが、第2の実施の形態は第2凹部26bに加えて、イヤー部26の径方向外端にプレス加工時の肉を逃がすための第4凹部26cを第1凹部26aの一部として設けたものであり、第2凹部26bおよび第4凹部26cの両方を備えることでプレス荷重を更に低減することができる。第4凹部26cがプレス加工により形成されるものではなく、金属エレメント素材23′に予め形成された素材凹部により形成されることは第2凹部26bと同様である。
【第3の実施の形態】
【0039】
次に、図12に基づいて本発明の第3の実施の形態を説明する。
【0040】
第1の実施の形態は金属エレメント23のイヤー部26の径方向内端に沿ってプレス加工時の肉を逃がすための第2凹部26bを備えているが、第3の実施の形態は第2凹部26bに加えて、ネック部25の径方向内端に第3凹部成形部49cによるプレス加工時の肉を逃がすための第5凹部25aを設けたものであり、これによりプレス荷重を更に低減することができる。第5凹部25aがプレス加工により形成されるものではなく、金属エレメント素材23′に予め形成された素材凹部により構成されることは、第2凹部26bと同様である。
【0041】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0042】
15 金属ベルト
22 金属リング
23 金属エレメント
23′ 金属エレメント素材
24 ボディ部
25 ネック部
26 イヤー部
26a 第1凹部
26b 第2凹部
27 リングスロット
28 サドル面
29 ロッキングエッジ
30 傾斜面
34 素材凹部
47 カウンタパンチ(金型)
49 メインパンチ(金型)
C1 第1当接部
C2 第2当接部
C3 第3当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13