(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444383
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジンの燃焼器用の音響減衰システム
(51)【国際特許分類】
F23R 3/16 20060101AFI20181217BHJP
F23R 3/42 20060101ALI20181217BHJP
F02C 7/24 20060101ALI20181217BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
F23R3/16
F23R3/42 Z
F02C7/24 C
G10K11/16 110
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-513978(P2016-513978)
(86)(22)【出願日】2014年5月5日
(65)【公表番号】特表2016-524686(P2016-524686A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】US2014036820
(87)【国際公開番号】WO2015016995
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2017年4月28日
(31)【優先権主張番号】13/893,441
(32)【優先日】2013年5月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ファン エンリケ ポルティーヨ ビルバオ
(72)【発明者】
【氏名】ラジェシュ ラジャラム
(72)【発明者】
【氏名】ダニング ユー
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン ジェイ. スペンス
【審査官】
高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05644918(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02522910(EP,A1)
【文献】
特開2002−195565(JP,A)
【文献】
特開平07−139738(JP,A)
【文献】
実開平02−133557(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/24
F23R 3/16
F23R 3/42
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響減衰共鳴器システム(14)を備えたタービンエンジン(10)であって、
圧縮機の下流に位置し、燃焼器バスケット(22)を画定する少なくとも1つのアウタハウジング(18)と、該少なくとも1つのアウタハウジング(18)に取り付けられた少なくとも1つの上流壁(26)とによって形成されたガスタービンエンジン燃焼器(12)であって、該ガスタービンエンジン燃焼器(12)には、燃料ノズルアッセンブリ(32)の少なくとも1つの燃料ノズル(30)が延在している、ガスタービンエンジン燃焼器(12)と、
前記ガスタービンエンジン燃焼器(12)内で前記少なくとも1つのアウタハウジング(18)に配置されていて、前記燃焼器(12)内で周方向に延在している少なくとも1つの共鳴器(16)と、を有し、
前記少なくとも1つの共鳴器(16)は、前記燃料ノズルアッセンブリ(32)の少なくとも1つの外壁(34)の半径方向外側に位置しており、
前記少なくとも1つの共鳴器(16)は、前記少なくとも1つの上流壁(26)に接触しており、
前記少なくとも1つの共鳴器(16)と、前記ガスタービンエンジン燃焼器(12)との間に延在している共鳴器ネック(42)をさらに備え、
前記共鳴器ネック(42)は、前記少なくとも1つの共鳴器(16)に、かつ前記少なくとも1つの上流壁(26)と、前記燃焼器バスケット(22)を画定する前記少なくとも1つのアウタハウジング(18)との交点(24)に、接触していることを特徴とする、音響減衰共鳴器システム(14)を備えたタービンエンジン(10)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの共鳴器(16)は曲げられている、請求項1記載の音響減衰共鳴器システム(14)を備えたタービンエンジン(10)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの共鳴器(16)は、前記燃焼器バスケット(22)の前記少なくとも1つのアウタハウジング(18)と、前記少なくとも1つの上流壁(26)とに取り付けられている、請求項1記載の音響減衰共鳴器システム(14)を備えたタービンエンジン(10)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの共鳴器(16)は、前記ガスタービンエンジン燃焼器(12)の長手方向軸線(40)を通って延在していて、かつ前記ガスタービンエンジン燃焼器(12)の前記長手方向軸線(40)に対して垂直に位置する軸線(38)を中心として曲げられている、請求項1記載の音響減衰共鳴器システム(14)を備えたタービンエンジン(10)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの共鳴器(16)は、前記燃焼器バスケット(22)を画定する前記少なくとも1つのアウタハウジング(18)と、前記少なくとも1つの上流壁(26)との間に直線状に延在している、請求項1記載の音響減衰共鳴器システム(14)を備えたタービンエンジン(10)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの共鳴器(16)は、前記少なくとも1つの上流壁(26)に位置している、請求項1記載の音響減衰共鳴器システム(14)を備えたタービンエンジン(10)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの共鳴器(16)は、前記燃焼器バスケット(22)を画定する前記少なくとも1つのアウタハウジング(18)に接触している、請求項1記載の音響減衰共鳴器システム(14)を備えたタービンエンジン(10)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの共鳴器(16)は、前記少なくとも1つの上流壁(26)と、前記燃焼器バスケット(22)を画定する前記少なくとも1つのアウタハウジング(18)との前記交点(24)に位置している、請求項1記載の音響減衰共鳴器システム(14)を備えたタービンエンジン(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してガスタービンエンジンに関し、特に、ガスタービンエンジンの燃焼器バスケットにおける縦モード動態(longitudinal mode dynamics)を減衰するための音響減衰システムに関する。
【0002】
背景技術
ガスタービンエンジンは典型的には、圧縮機の下流かつタービンアッセンブリの上流に位置する複数の燃焼器バスケットを有している。運転中、
図1〜
図3に示されたように、燃焼器バスケット内ではしばしば縦モード動態が生じる。縦モード動態は通常、燃焼器バスケットの空気流路入口で発生し、下流に向かってタービン入口にまで伝わる。このような動態により、新たなガスタービンにますます求められる低エミッション運転を行うためのガスタービンエンジンの調整柔軟性は制限されてしまう。
【0003】
発明の概要
以下に、上記問題を解決し、ここに実施態様を示し広く説明する本発明の目的に応じて利益と利点を提供する発明の簡単な概要を記載する。本発明は、音響減衰共鳴器システムを備えたガスタービンエンジン燃焼器を有する音響的に減衰されるガスタービンエンジンを対象としている。音響減衰共鳴器システムは、1つ又は複数の共鳴器により形成されていて良く、この共鳴器は、ガスタービンエンジン燃焼器内でアウタハウジングに配置されていて、燃焼器内で周方向に延在している。共鳴器は、燃焼器バスケットのヘッド領域に配置されていて良い。一実施態様では、共鳴器は、アウタハウジングと、燃焼器の少なくとも一部を形成する上流壁との間の交点の近位に配置されていて良い。音響減衰共鳴器システムは縦モード動態を弱めることができ、これにより、エンジン動作範囲が増大し、エミッションが減じられる。
【0004】
音響減衰共鳴器システムを備えたタービンエンジンは、圧縮機の下流に位置していて、燃焼器バスケットを画定する1つ以上のアウタハウジングと、このアウタハウジングに取り付けられている少なくとも1つの上流壁とによって形成されるガスタービンエンジン燃焼器を含んでいて良い。燃料ノズルアッセンブリの1つ以上の燃料ノズルが燃焼器内に延在していて良い。共鳴器は、ガスタービンエンジン燃焼器内でアウタハウジングに配置されていて良く、燃焼器内で周方向に延在していて良い。共鳴器は、燃料ノズルアッセンブリの少なくとも1つの外壁の半径方向外側に位置していても良く、上流壁に接触していて良い。
【0005】
1つの実施態様では、共鳴器は、上流壁と、燃焼器バスケットを画定するアウタハウジングとに接触していて良い。別の実施態様では共鳴器は、燃焼器バスケットのアウタハウジングと、上流壁とに取り付けられていて良い。共鳴器は上流壁に位置していても良く、燃焼器内で周方向に延在していて良い。共鳴器は、上流壁と、燃焼器バスケットを画定するアウタハウジングとの交点に配置されていても良い。別の実施態様では、共鳴器は、燃料ノズルアッセンブリの少なくとも1つの外壁の半径方向外側に位置して良い。
【0006】
1つ又は複数の共鳴器ネックが、共鳴器とガスタービンエンジン燃焼器との間に延在していて良い。共鳴器ネックは、共鳴器に、かつ上流壁と、燃焼器バスケットを画定するアウタハウジングとの交点に、接触していて良い。
【0007】
共鳴器は複数の異なる構造を有していて良い。共鳴器は、部分的にのみ燃焼器の周りに周方向で延在していて良い。燃料ノズルアッセンブリの周りに半径方向で位置する2つ以上の共鳴器が設けられていても良い。少なくとも1つの実施態様では、共鳴器は曲げられていて良い。特に、共鳴器は、ガスタービンエンジン燃焼器の長手方向軸線を通って延在し、かつガスタービンエンジン燃焼器の長手方向軸線に対して垂直に位置していて良い軸線を中心として曲げられて良い。別の実施態様では、共鳴器は、燃焼器バスケットを画定するアウタハウジングと上流壁との間に直線状に延在していて良い。
【0008】
使用中、音響減衰システムは、縦モード燃焼器動態を減衰することができ、これにより、ガスタービンエンジン動作範囲を増大させることができる。音響減衰システムは、ヘッド端部においてより一様の流れを形成することにより、かつ下流のより良好な混合を形成することにより、流れ調整器として機能することができる。
【0009】
これらの及びその他の利点と目的とは、以下に記載する本発明の詳細な説明を参照する際に明らかとなろう。
【0010】
本明細書に組み込まれ、明細書の一部を成す添付の図面は、本発明の実施態様を示しており、詳細な説明と共に、本発明の原理を開示している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ガスタービンエンジンの従来の燃焼器バスケットを示す側方断面図である。
【
図2】動圧と周波数に関して従来の縦モード動態を示したグラフである。
【
図3】ガスタービンエンジンの燃焼器バスケットを示す側方断面図である。
【
図4】
図3の細部5における燃焼器バスケット内に位置する音響減衰システムの部分的な側方断面図である。
【
図5】
図4に示された燃焼器バスケットを形成するアウタハウジングに位置する共鳴器を示す側面図である。
【
図6】燃焼器への入口近くにある燃焼器バスケットの半径方向外側壁に位置する共鳴器を示す部分的な断面図である。
【
図7】燃焼器への入口近くにある燃焼器バスケットの半径方向外側壁に位置する別の共鳴器を示す部分的な断面図である。
【
図8】燃焼器の入口周りの内面に位置する共鳴器を有する音響減衰システムのさらに別の実施態様を示す部分的な側方断面図である。
【0012】
発明の詳細な説明
図3〜
図8に示したように、本発明は、音響減衰共鳴器システム14を備えたガスタービンエンジン燃焼器12を有する音響的に減衰されるガスタービンエンジン10を対象としている。音響減衰共鳴器システム14は、1つ又は複数の共鳴器16により形成されていて良く、この共鳴器16は、ガスタービンエンジン燃焼器12内でアウタハウジング18に配置されていて、燃焼器12内で周方向に延在している。共鳴器16は、燃焼器バスケット22のヘッド領域20に配置されていて良い。一実施態様では、共鳴器16は、アウタハウジング18と、燃焼器12の少なくとも一部を形成する上流壁26との間の交点24の近位に配置されていて良い。音響減衰共鳴器システム14は縦モード動態を弱めることができ、これにより、エンジン動作範囲が増大し、エミッションが減じられる。
【0013】
音響減衰共鳴器システム14はガスタービンエンジン10内に位置していて良い。ガスタービンエンジン10は、燃焼器を有する任意のタービンエンジンであって良い。少なくとも1つの実施態様では、音響減衰共鳴器システム14は、1つ又は複数の環状缶型燃焼器12を備えたガスタービンエンジン10内に位置していて良い。少なくとも1つの実施態様では、ガスタービンエンジン燃焼器12は、圧縮機の下流に位置していて良い。圧縮機は任意の適切な構造を有していて良い。ガスタービンエンジン燃焼器12は、燃焼器バスケット22を画定する1つ以上のアウタハウジング18と、このアウタハウジング18に取り付けられて良い1つ以上の上流壁26とによって形成されて良い。1つ以上の燃料ノズル30が燃焼器12内へと延在していて良い。燃料ノズル30は、任意の適切な構造を有していて良い。
【0014】
共鳴器16は、ガスタービンエンジン燃焼器12内でアウタハウジング18に配置されていて良く、燃焼器12内で周方向に延在していて良い。共鳴器16は、燃料ノズルアッセンブリ32の半径方向外側に位置していて良い。燃料ノズルアッセンブリ32は、燃料ノズル30の少なくとも一部を取り囲む外壁34を含んでいて良い。外壁34は、開放遠位端部36を備えたほぼ円筒の形状を有していて良い。共鳴器16は、外壁34の半径方向外側に位置していて良い。共鳴器16は、
図8に示したように、外壁34に関して側方に延在していても良い。
【0015】
共鳴器16は、ハウジングの外壁34の半径方向外側に位置していて良く、上流壁26に接触していて良い。別の実施態様では、共鳴器16は、上流壁26と、燃焼器バスケット22のアウタハウジング18の両方と接触していて良い。さらに別の実施態様では、共鳴器16は、上流壁26とアウタハウジング18のどちらかに、又は両方に取り付けられていて良い。共鳴器16は、燃焼器バスケット22のアウタハウジング18と上流壁26とに取り付けられていて良い。
【0016】
一実施態様では、
図6〜
図8に示したように、共鳴器16は上流壁26に位置していて良く、燃焼器12内で周方向に延在していて良い。共鳴器16は、上流壁26と、燃焼器バスケット22を画定するアウタハウジング18とに接触していて良い。共鳴器16は、上流壁26と、燃焼器バスケット22を画定するアウタハウジング18との交点24に配置されていて良い。共鳴器16は、燃料ノズルアッセンブリ32の少なくとも1つの外壁34を形成する外壁34の半径方向外側に位置していて良い。
【0017】
図6に示したように、共鳴器16は、ガスタービンエンジン燃焼器12の長手方向軸線40を中心として曲げられているのに加えてさらに曲げられていて良い。特に、共鳴器16は、ガスタービンエンジン燃焼器12の長手方向軸線40に対して垂直に位置する軸線38を中心として曲げられて良い。少なくとも1つの実施態様では、この軸線38は、ガスタービンエンジン燃焼器12の長手方向軸線40を通って延在していても良い。上述した通り、共鳴器16は、ガスタービンエンジン燃焼器12の長手方向軸線40を中心として曲げられていても良く、又は、長手方向軸線40の周りで直線状に延在していても良い。1つ以上の共鳴器16が、燃焼器12の周りに周方向で位置していて良い。
【0018】
さらに別の実施態様では、
図7に示したように、共鳴器16は、燃焼器バスケット22を画定するアウタハウジング18と上流壁26との間に直線状に延在していて良い。この実施態様では、共鳴器16は、ガスタービンエンジン燃焼器12の長手方向軸線40を中心として曲げられていても良く、又は、長手方向軸線40の周りで直線状に延在していても良い。1つ以上の共鳴器16が、燃焼器12の周りに周方向で位置していて良い。
【0019】
図6〜
図8に示したように、音響減衰共鳴器システム14は、共鳴器16と、ガスタービンエンジン燃焼器12との間に延在する共鳴器ネック42を含んでいて良い。共鳴器ネック42は、共鳴器16に、かつ上流壁26と、燃焼器バスケット22を画定するアウタハウジング18との交点24に、接触していて良い。共鳴器ネック42は任意の適切な構造を有していて良い。少なくとも1つの実施態様では、共鳴器ネック42は、ほぼ円筒状であって良い。共鳴器ネック42は、単一単体の部材であって良く、または、2つ以上の構成要素から形成されていて良い。共鳴器ネック42は、共鳴器16を燃焼器12に、例えばアウタハウジング18と上流壁26のどちらかに、又は両方に連結することができる。選択的に、共鳴器ネック42は、共鳴器16に連結されて、かつ燃焼器12に接触していて良い。
図6及び
図7に示したように、共鳴器ネック42は、共鳴器16を貫通して延在していて良く、共鳴器16に穴を形成して良い。
図8に示した共鳴器ネック42は軸方向に延在していて良い。
【0020】
使用中、音響減衰共鳴器システム14は、縦モード燃焼動態を減衰することができ、これにより、タービンエンジン動作範囲を増大させることができる。音響減衰共鳴器システム14は、燃焼器入口44においてより一様の流れを形成することにより、かつ下流のより良好な混合プロフィールを形成することにより、流れ調整器として機能することができる。
【0021】
上記記載は、本発明の実施態様を図示し、説明し、詳述するために呈示されている。これら実施態様の変化形及び応用形は、当業者に明らかであり、本発明又は以下の請求項の範囲及び概念から逸脱することなく形成されるだろう。