特許第6444433号(P6444433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444433
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20181217BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   A61B5/055 362
   A61B5/055 330
   A61B5/055 340
   G01N24/00 540Y
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-569321(P2016-569321)
(86)(22)【出願日】2016年1月6日
(86)【国際出願番号】JP2016050252
(87)【国際公開番号】WO2016114198
(87)【国際公開日】20160721
【審査請求日】2017年6月16日
(31)【優先権主張番号】特願2015-3788(P2015-3788)
(32)【優先日】2015年1月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 武
(72)【発明者】
【氏名】今村 幸信
(72)【発明者】
【氏名】阿部 充志
【審査官】 後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/046957(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0094062(US,A1)
【文献】 特開2006−141614(JP,A)
【文献】 特開2014−12090(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/153036(WO,A1)
【文献】 特開2013−169240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00
G01R 33/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を内部の撮像空間に導入可能な円筒形状の静磁場発生源を有する静磁場発生装置と、
前記撮像空間に傾斜磁場を重畳させる傾斜磁場発生源を有する傾斜磁場発生装置と、
前記傾斜磁場発生源の径方向外側かつ前記静磁場発生装置の径方向内側に、前記撮像空間の均一磁場方向両端側に設けられた一対の円筒状の良導体部材と、
前記傾斜磁場発生源の径方向外側かつ前記静磁場発生装置の径方向内側に、前記撮像空間の均一磁場方向において一対の前記良導体部材の間に設置され、前記良導体部材よりも電気抵抗が高い円筒状の高抵抗部材と、備えた
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記高抵抗部材は、
連続性を有する一個の部材であって、
前記静磁場発生装置の中心軸方向における長さが、前記傾斜磁場発生源から漏れる磁場強度が予め定められた所定値以下となるような長さの範囲内に納められ、
前記良導体部材との間が絶縁されている
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記良導体部材は、
前記静磁場発生装置の中心軸方向に関する長さが、前記撮像空間と前記良導体部材との距離が予め定められた所定値以上となるような長さであることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記良導体部材は前記静磁場発生装置に固定され、
前記高抵抗部材は前記傾斜磁場発生源に固定され、
ていることを特徴とする
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記高抵抗部材が、前記良導体部材の径方向外側を被覆していることを特徴とする、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静磁場発生装置と傾斜磁場発生装置を備えた磁気共鳴イメージング(以下、MRI;Magnetic Resonance Imagingと称す)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置における渦電流の抑制方法に関する従来技術として、静磁場発生装置と傾斜磁場発生装置の間の傾斜磁場発生装置側に導電性の高い部材で構成されたカウンターシールドを設けることで、RFシールドに生じる渦電流に起因する磁場を遮蔽する技術が提案されている(特許文献1参照)。また、傾斜磁場発生装置の軸方向両端側に良導体リングを設けることで、渦電流の原因となる静磁場発生装置の振動を低減する技術が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】JP4334599B2
【特許文献2】WO2013/046957A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記した特許文献1の技術では、カウンターシールド自体の振動に伴って新たに渦電流が生じて撮像空間の磁場が乱れ、断層画像の劣化が生じることが考えられる。なお特許文献1では、スリットを設けて一部の電気抵抗を等価的に高くすることによって、カウンターシールドの渦電流を抑制する方法が記載されている。しかし傾斜磁場発生装置から漏れる磁場が増加するため、静磁場発生装置の低温部材に渦電流発熱が生ることや、カウンターシールドの高電気抵抗領域で渦電流が集中して発熱密度が増加することが考えられた。また、特許文献2の技術では、渦電流が生じる良導体リングが撮像領域から遠いため断層画像への影響は小さいが、傾斜磁場発生装置の振動が大きくなった場合に、断層画像に対する影響が無視できなくなることが考えられた。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、振動による断層画像の劣化を抑制し、渦電流による静磁場発生装置や傾斜磁場発生装置の発熱を低減できるMRI(磁気共鳴イメージング)装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、前記傾斜磁場発生装置と前記静磁場発生源との間に、前記均一磁場の発生領域の均一磁場方向両端側で分割された外周リング構造を備えたMRI(磁気共鳴イメージング)装置であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、振動による断層画像の劣化を抑制し、渦電流による静磁場発生装置や傾斜磁場発生装置の発熱を低減できるMRI装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係るMRI(磁気共鳴イメージング)装置の概略斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るMRI装置の概略縦断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るMRI装置の傾斜磁場発生装置の概略縦断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係るMRI装置の傾斜磁場発生装置の概略縦断面図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係るMRI装置における外周リング構造の分割位置を定める概念図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係るMRI装置の傾斜磁場発生装置のうち軸方向端部の概略縦断面図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係るMRI装置における外周リング構造の分割位置を定める概念図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係るMRI装置の傾斜磁場発生装置の概略正面図である。
図9】本発明の第5の実施形態に係るMRI装置の傾斜磁場発生装置の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態に係るMRI(磁気共鳴イメージング)装置1の概略斜視図を示す。
【0011】
本実施例におけるMRI装置1が備える主な機器要素は、静磁場発生装置2、傾斜磁場発生装置3、照射コイル4、受信コイル22、および寝台6である。以下、各要素について説明する。
【0012】
静磁場発生装置2は、被検体10の生体組織を構成する原子のスピンを配向させるために、撮像空間8に均一磁場7(図2参照)を生成する。なお、均一磁場7の磁場を補正し、均一度を高めるためにシムコイル(図示せず)が静磁場発生装置2の撮像空間8側に設けられることもある。また、静磁場発生装置2は水平方向に平行なZ軸を中心軸とした場合、この軸を中心として筒状の内壁を有する円筒形状をしており、真空容器支持脚2fによって床面から支持されている。なお、説明を簡単にするためにZ軸を水平方向に平行な直線と述べたが、現実にはこれに限ることなく、概ね水平方向であって、例えば寝台6を撮像空間8に導入する方向などがZ軸であってよい。
【0013】
傾斜磁場発生装置3は、静磁場発生装置2よりも撮像空間8側に設けられており、静磁場発生装置2が発生させた均一磁場に対して、直交する3軸方向の勾配を有する磁場を重畳させる。傾斜磁場発生装置3の構造に関する詳細な説明は後述する。
【0014】
照射コイル4は、傾斜磁場発生装置3よりも撮像空間8側に設けられている。照射コイル4は、静磁場発生装置2と中心軸を共通とする(Z軸を中心軸とする)円筒状の部材であって、中心軸と直交する面で分割した場合、その断面における内径の形状は円や楕円である。またその役割は、高周波信号を照射することによって、被検体10の生体組織を構成する原子の原子核に核磁気共鳴を起こさせることである。照射コイル4によって励起された核磁気共鳴による信号は、寝台6に取り付けられている受信コイル22によって取得される。
【0015】
図2に、本発明の第1の実施形態に係るMRI装置1の概略縦断面図を示す。
【0016】
静磁場発生装置2は、超電導コイルを採用した静磁場メインコイル2a(以下、メインコイル2aと呼ぶ)と、超伝導コイルを採用した静磁場シールドコイル2b(以下、シールドコイル2bと呼ぶ)を備える。これらメインコイル2aとシールドコイル2bとをまとめて静磁場発生源と呼ぶ。
【0017】
また、MRI装置1は、超電導コイルであるメインコイル2aとシールドコイル2bを冷媒と共に収納し冷却する冷却容器2eと、冷却容器2eを内包する構造を有する輻射シールド板2dと、冷却容器2eと輻射シールド板2dとを真空環境下に収納し断熱する真空容器2cと、真空容器2cを設置床面に支持する真空容器支持脚2f(図1参照)と、冷却容器2eと輻射シールド板2dを真空容器2c内に断熱支持する荷重支持体(図示せず)等を有している。
【0018】
メインコイル2aはリング形状を有しており、その中心軸はZ軸と一致する。本実施例においては、メインコイル2aは、Z軸方向に沿って複数(図2の例では4個)配置されている。メインコイル2aは、撮像空間(空間)8に、均一磁場7(静磁場)を生成することができる。なお、メインコイル2aが生成する磁場は、撮像空間8外にも生じ、特に、撮像領域9を中心に考えた場合、Z軸方向においてメインコイル2aよりも遠くの位置における磁場(漏れ磁場)が比較的強くなる。シールドコイル2bは、この漏れ磁場の大きさを小さくすることができる。
【0019】
シールドコイル2bは、リング形状を有しており、その中心軸はZ軸と一致する。また、シールドコイル2bは、Z軸方向に複数(図2の例では2個(一対))配置されている。Z軸方向の配置位置は、メインコイル2aのうちZ軸方向において両端に配置された一対のメインコイル2aの近傍であって、撮像領域9を中心としたときに、それらのメインコイル2aよりも遠くに配置されている。なお、シールドコイル2bが、Z軸方向において両端に配置されたメインコイル2aよりも撮像領域9側に配置されていてもよい。また、シールドコイル2bの直径は、Z軸方向において両端に配置されるメインコイル2aよりも大きいものを例示したが、これに限らず、メインコイル2aよりも小さな径であることも考えられる。
【0020】
図2のうち傾斜磁場発生装置3について詳細に示したのが図3である。本図面を用いて傾斜磁場発生装置3、外周リング構造5の詳細について説明する。
【0021】
傾斜磁場発生装置3の形状は、全体の外形としては、静磁場発生装置2と中心軸を共通とする(Z軸を中心軸とする)円筒形状を有し、中心軸と直交する面で分割した場合、その断面形状は円や楕円の形状を呈する。また、傾斜磁場発生装置3を構成する主な要素は、傾斜磁場メインコイル3a(以下、メインコイル3aと呼ぶ)、傾斜磁場シールドコイル3b(以下、シールドコイル3bと呼ぶ)、およびこれらを一体的に固定するレジン3cである。メインコイル3aとシールドコイル3bはそれぞれ複数個が備え付けられていてよく、またレジン3cはビーズやガラス繊維クロス等が含まれていてもよい。
【0022】
なお、シールドコイル3bとメインコイル3aの配置関係に関しては、シールドコイル3bがメインコイル3aに対して、静磁場発生装置2側、すなわちz軸により遠い位置に配置されている。また、傾斜磁場発生装置3は、取付部材(図示せず)を介して真空容器2cに取り付けられている。なお、今後の説明において便宜上、メインコイル3aとシールドコイル3bとをまとめて傾斜磁場発生源と呼ぶ。
【0023】
次に外周リング構造5について説明する。外周リング構造5は、静磁場発生装置2よりも撮像空間8側、かつ傾斜磁場発生装置3の外周面よりも外側に設けられている円筒形状の部材である。その構造は中心軸方向において少なくとも異なる2つの位置で分割されており、少なくとも3つ以上のリング構造がz軸方向に並ぶように配置されているものである。以降では、外周リング構造5が2カ所で分割されている場合を例に説明を続けることとし、z軸方向において両端に位置するリングを左端リング5a(第1リング部材)、右端リング5c(第2リング部材)と呼び、これらに挟まれたリングを中央リング(第3リング部材)と便宜的に称する。
【0024】
外周リング構造5に関して、各リングの特性等は次のように規定される。まず左端リング5a及び右端リング5cは非磁性かつ導電性を有する銅やアルミニウムで形成される。一方。中央リング5bは非磁性かつ円筒状であって、左端リング5a及び右端リング5cよりも電気抵抗の高いステンレス鋼やチタン合金で形成されている。
【0025】
また、外周リング構造5の外形や構造の特徴は次のように纏められる。すなわち、左端リング5aと中央リング5bとの分割部(突き合わせ)は、中心軸方向において、撮像空間8よりも外側、つまり中心軸方向において撮像空間8の差渡しに含まれない位置に設けられている。この配置関係を換言すると、左端リング5aと中央リング5bとの突き合わせは、傾斜磁場発生装置3から静磁場発生装置2の側に漏れる磁場が大きくなるような端部ではなく、そこよりも撮像空間8側に位置していることとなる。即ち、両端側リング5a、5cは傾斜磁場発生装置3から静磁場発生装置2の側に漏れる磁場が大きい領域にのみ設置され、中央側リング5bは漏れ磁場が大きい位置には設置されないことが望ましい。
【0026】
また、中央側リング5bはZ軸方向(均一磁場7の磁場方向)において撮像空間8と重なるように配置され、かつZ軸方向に関して少なくとも撮像空間8の差渡し全域を含むような長さを有する一個の部材である。
【0027】
また外周リング構造5は、傾斜磁場発生装置3に機械的に結合して設置されている。外周リング構造5の設置方法としては、リングの焼き嵌めや、円弧状に曲げた複数の板を溶接する方法が挙げられ、どの方法を採用してもよい。
【0028】
次に、本実施例のMRI装置1において、渦電流による断層画像の劣化や導体部材の発熱が抑制される仕組みについて説明する。
【0029】
まず、渦電流による断層画像の劣化抑制について説明する。
【0030】
MRI装置1によって被検体を撮影する際には、静磁場発生装置2によって、撮像空間8に均一磁場7が生成される。この際、同時に、傾斜磁場発生装置3が配置されている領域にも、静磁場発生装置2に由来する静磁場が生成されている。このように静磁場の影響を受けた状況下で、傾斜磁場発生装置3の傾斜磁場発生源にパルス状の電流が流される。そうすると傾斜磁場発生装置3が配置された領域に生じている静磁場と、このパルス状の電流のカップリングによりパルス状のローレンツ力が傾斜磁場発生源に作用して、傾斜磁場発生装置3が振動する。
【0031】
そして、この傾斜磁場発生装置3の振動は、傾斜磁場発生装置3を静磁場発生装置2に取り付けている取付部材を介して真空容器2cに伝搬し、更に、真空容器2cから荷重支持体を介して輻射シールド板2dや冷却容器2eに伝播し、静磁場発生装置2の各部材が振動する。なお、ここでは傾斜磁場発生装置3が静磁場発生装置2に取り付けられる例を挙げたが、これに限らず、例えば真空容器2cなど、MRI装置1を構成する他の部材に傾斜磁場発生装置3が取り付けられる場合も、振動は同様に発生し連結された箇所を介して伝達される。
【0032】
また、静磁場発生装置2を構成する真空容器2c、輻射シールド板2d、冷却容器2eなどでは、傾斜磁場発生装置3が発生させる傾斜磁場の一部が漏れ、この漏れ磁場が作用することによって渦電流が生じる。この傾斜磁場に由来する渦電流と静磁場発生装置2により生成される静磁場とがカップリングすることで、静磁場発生装置2にパルス状のローレンツ力が作用する。これにより静磁場発生装置2の各部材が振動し、これらの振動が静磁場発生装置2に取り付けている取付部材を介して傾斜磁場発生装置3に伝播するため、傾斜磁場発生装置3の振動が増加する。
【0033】
そして静磁場発生装置2や傾斜磁場発生装置3が振動するということは、すなわち各装置を構成する導体部材と静磁場発生源2a、2bとの相対距離が変化することと同義であるため、鎖交磁束の変化により起電力が生じることとなる。その結果、各装置の導体部材には渦電流が誘導され、この渦電流が、撮像空間8においても均一磁場を乱すような磁場を作り出すため、断層画像が劣化する。以上が、渦電流によって断層画像が劣化する仕組みの一例である。
【0034】
このような断層画像劣化に対して、本実施例のMRI装置1が備える外周リング構造5は、傾斜磁場発生装置3の外周側に設置され機械的に一体の構造されることで、傾斜磁場発生装置3の剛性が増加するため、傾斜磁場発生装置3の振動を低減することができる。また、取付部材を介して静磁場発生装置2に伝播する振動が減少することで、静磁場発生装置2の振動が低減される。
【0035】
さらに、外周リング構造5のうち、傾斜磁場発生装置3の漏れ磁場が大きい領域に設置されている左端リング5a、右端リング5cは、導電性の高い部材で構成されている。そのため、撮像時に傾斜磁場発生装置3が有する傾斜磁場発生源にパルス状の電流が流れると、左端リング5a、右端リング5cには渦電流が生じ、この渦電流が、傾斜磁場発生装置3から静磁場発生装置2の側に漏れる磁場を遮蔽するため、静磁場発生装置2を構成する導体部材に生じる渦電流が減少し、ローレンツ力も減少する。このような作用を外周リング構造5が生じさせるため、静磁場発生装置2の振動が低減される。
【0036】
さらに、外周リング構造5のうち、中央リング5bも傾斜磁場発生装置3と機械的に一体となっていることから、傾斜磁場発生装置3の全体にわたってその剛性が高められ、傾斜磁場発生装置3の振動を低減する効果が得られる。これに伴い、傾斜磁場発生装置3から静磁場発生装置2に伝播する振動が減少するため、静磁場発生装置2の振動が低減する。なお、剛性を高めるという観点から、中央リング5bは全面が連続している一個の部材で構成されることが望ましい。
【0037】
このように、本実施例のMRI装置1は、静磁場発生装置2のローレンツ力の減少と、傾斜磁場発生装置3からの振動伝播低減によって、振動に伴い静磁場発生装置2を構成する導体部材に誘導される渦電流が減少し、撮像空間8に生じる渦電流による磁場が抑制され、断層画像の劣化防止の効果が得られる。
【0038】
なお、外周リング構造5は傾斜磁場発生装置3と機械的に一体となっているため、傾斜磁場発生装置3の振動に伴って外周リング構造5も振動し、静磁場発生源2a、2bとの相対距離が変化して鎖交磁束が変化するため、渦電流が生じる。しかし、外周リング構造5の軸方向の分割部、すなわち左端リング5aと中央リング5bとの突き合わせ部や、右端リング5cと中央リング5bとの突き合わせ部は、中心軸方向関して撮像空間8の直径よりも両端側に位置する、すなわち中心軸方向において端部に設置される各リングは、撮像空間8から遠ざけられているため、渦電流が発生したとしても断層画像への影響を小さくできる。
【0039】
また、本実施例のMRI装置1の体系であれば傾斜磁場発生装置3の振動が低減されるため、鎖交磁束の変化は従来よりも小さく、左端リング5a、右端リング5cに生じる渦電流が減少するため、断層画像への影響はより小さくできる。一方、電気抵抗の大きい中央側リング5bは撮像空間8に近接しているが、中心軸方向において、シールドコイル3bに全体が覆われるような設置とすることで、傾斜磁場の大部分がシールドコイル3bによって遮蔽されており、誘導される渦電流が小さいため断層画像への影響は小さい。
【0040】
以上のように、本実施形態によれば断層画像の劣化を抑制できる。
【0041】
次に、渦電流による発熱の抑制について説明する。
【0042】
撮像時に傾斜磁場発生装置3が有するメインコイル3aとシールドコイル3bにパルス状の電流が流れると、傾斜磁場発生装置3から静磁場発生装置2に向かって漏れる磁場によって、静磁場発生装置2を構成する導体部材に渦電流が誘導される。これに伴い、静磁場発生装置2を構成する導体部材に渦電流損が生じ、導体部材が発熱する。この導体部材のうち、輻射シールド板2dと冷却容器2eは、冷媒や冷凍機によって常温よりも低く保たれているため、渦電流損が熱負荷となり、冷媒を消費するあるいは冷凍機の出力を上げるなどして再冷却する必要がある。
【0043】
外周リング構造5は、傾斜磁場発生装置3の外周側に設置され、傾斜磁場発生装置3が有する傾斜磁場発生源と磁気的に結合している。そのため、撮像時に傾斜磁場発生源にパルス状の電流が流されると、傾斜磁場発生装置3の外周部に向かう漏れ磁場に誘起された渦電流が外周リング構造5に生じる。
【0044】
ここで、いわゆる水平磁場型のMRI装置1における傾斜磁場発生装置3の一般的な外形との兼ね合いを考慮すると、外周リング構造5は大直径で薄肉の構造を有する。また、特に傾斜磁場発生源に流れるパルス電流により誘起される渦電流は、高周波電流であるため、自己インダクタンスがインピーダンスに対して電気抵抗よりも支配的である。そのため、傾斜磁場発生装置3の漏れ磁場による誘導起電力が同じならば、誘導される渦電流は電気抵抗に依らず、自己インダクタンスによって決定されるためほぼ一定となる。このため、傾斜磁場発生装置3の漏れ磁場が大きい領域に電気抵抗の高い部材が配置されていると、渦電流による発熱が過大となる可能性がある。
【0045】
しかし、本実施例のMRI装置1が備える外周リング構造5のうち左端リング5a、右端リング5cは、導電性の高い部材で構成されているため、撮像時に渦電流が効果的に生じ、傾斜磁場発生装置3から静磁場発生装置2の側に漏れる磁場を遮蔽する。それによって、静磁場発生装置2を構成する導体部材に生じる渦電流が減少し、渦電流損も減少するため、静磁場発生装置2の冷媒消費や冷凍機出力が低減される。また、左端リング5a、右端リング5cの電気抵抗が小さいため、左端リング5a、右端リング5c自体の渦電流による発熱は小さく、傾斜磁場発生装置3の加熱は起こりにくい。
【0046】
一方、外周リング構造5のうち、中央リング5bは導電性の低い部材で構成されているが、傾斜磁場発生装置3から静磁場発生装置2の側に漏れる磁場が小さい領域に配置されているため、誘導される渦電流は小さい。このため、傾斜磁場発生装置3の加熱は起こりにくい。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば静磁場発生装置2や傾斜磁場発生装置3の渦電流による発熱を抑制できる。
【0048】
このように、傾斜磁場発生装置3の外周側に外周リング構造5を設け、中心軸方向に対し撮像空間8よりも両端側かつ傾斜磁場発生装置3から静磁場発生装置2の側に漏れる磁場が大きくなる端部位置よりも内側の位置で軸方向に分割し、軸方向両端側の電気抵抗を小さく、軸方向中央側の電気抵抗を大きくすることで、断層画像の劣化の抑制と、渦電流による発熱の抑制を両立したMRI装置を提供することができる。また、渦電流の原因となる振動が低減するため、静磁場発生装置2から寝台6へ伝播する振動の低減や、被検体10や検査技師(図示せず)が感じる騒音の低減といった効果も得られる。
【0049】
(第2の実施形態)
図4に、本発明の第2の実施形態に係るMRI装置1の傾斜磁場発生装置3の概略縦断面図を示す。第2の実施形態のMRI装置1が、第1の実施形態のMRI装置1と異なっている点は、外周リング構造5の分割部の配置領域のうち、傾斜磁場発生装置3から静磁場発生装置2の側に漏れる磁場が大きくなる端部位置を、中央リング5bに生じる渦電流損が、傾斜磁場発生装置3を過熱させる漏れ磁場以下となるように決めた点である。
【0050】
中央リング5bの軸方向長さと、中央リング5bに生じる渦電流損との関係は、以下のように記述できる。中央リング5bの軸方向長さをz、中央リング5bの軸方向単位長さ当たりの円周を周回する電気抵抗、自己インダクタンスをそれぞれR、L、傾斜磁場発生装置3の軸方向単位長さ当たりの漏れ磁場をB、中央リング5bの半径をr、傾斜磁場発生装置3に通電されるパルス電流の角周波数をωとおくと、中央側リング5bの渦電流損Wは、回路方程式で求めた中央側リング5bに生じる渦電流Iを用いて、以下のように計算できる。
【0051】
【数1】
【0052】
式(1)をBの関数に変形すると、式(2)を得る。
【0053】
【数2】
【0054】
式(2)より、許容される渦電流損Wを定めると、許容される漏れ磁場Bと中央リング5bの長さzとの関係を描くことができる。一方、傾斜磁場発生装置3の漏れ磁場のz方向分布BGCの曲線は、傾斜磁場発生源のメインコイル3a、シールドコイル3bの配置から求められる。よって、グラフ上で上記2つの曲線が重なる位置を、中央リング5bの端部と決め、外周リング構造5を形成することで、中央リング5bにおいて生じる渦電流損を小さくすることができる。
【0055】
【数3】
【0056】
一例として、傾斜磁場発生装置3が作る漏れ磁場が式(4)で表される場合について記す。
【0057】
【数4】
【0058】
中央リング5bとして直径900mm、板厚1mmのステンレス鋼板で、周波数を1kHz、渦電流損の許容値を1kWとおくと、Rは0.6Ω程度、Lは1μH程度となり、Bはzが300mmの位置で9mT、600mmの位置で5mT、900mmの位置で3mT程度となる。これより、2つの曲線が交わる位置を求めると、z=566mm、810mmとなる。よって、これらの解のうち小さい側が、中央リング5bを設置して良い配置領域の端部となる。上記の関係の概念図を、図5に示す。
【0059】
外周リング構造5の分割部の配置領域を、傾斜磁場発生装置3からの漏れ磁場が許容値を超える位置を基準に決めることにより、中央リング5bの軸方向長さを、傾斜磁場発生装置3の過熱が生じない範囲で最大化できる。このような外周リング構造5の中央軸方向の構造について換言するならば、上述した技術思想に基づけば、本実施形態における外周リング構造5は、撮像空間8に面した中央リング5bの側面と撮像空間8の中心との距離が、傾斜磁場発生源から漏れる磁場の強度に基づき予め取得することのできる所定の値以下に納められることによって、中央リング5bの長さの最大化と過熱防止とのバランスを取ることができるということを意味する。これにより、傾斜磁場発生装置3の剛性を増加させる効果が最大化され、傾斜磁場発生装置3の振動が低減されて渦電流を抑制することができる。
【0060】
(第3の実施形態)
図6に、本発明の第3の実施形態に係るMRI装置1の傾斜磁場発生装置3の概略縦断面図を示す。第3の実施形態のMRI装置1が、第1の実施形態のMRI装置1と異なっている点は、外周リング構造5の分割部の配置領域のうち、傾斜磁場発生装置3から静磁場発生装置2の側に漏れる磁場が大きくなる端部位置を、左端リング5a、右端リング5cに生じる渦電流が、断層画像を劣化させる磁場を撮像空間8に生じさせる許容電流値以下となるように決めた点である。
【0061】
中央リング5aの軸方向長さと、左端リング5aに生じる渦電流との関係は、以下のように記述できる。右端リング5cについては、左端リング5aと略鏡面対称構造となっているため、説明を省略する。
【0062】
左端リング5aの軸方向端部位置から撮像空間8の中心までの距離をd、左端リング5aの軸方向長さをz、左端リング5bの軸方向単位長さ当たりの円周を周回する電気抵抗、自己インダクタンスをそれぞれR、L、静磁場発生装置2が左端リング5a位置に作る静磁場の強度をB0、左端リング5aの半径をr、左端リング5aの振動速度をv、振動の角周波数をωとおくと、左端リング5aに生じる渦電流Iは、回路方程式より以下のように求まる。
【0063】
【数5】
【0064】
一方、上記のIが撮像空間8に作る磁場Berrは、真空透磁率μ0を用いて以下のように現される。
【0065】
【数6】
【0066】
式(6)より、許容される磁場Berrを定めると、許容される渦電流Ierrと左端リング5aの長さzとの関係を描くことができる。よって、グラフ上で上記2つの曲線が重なる位置を、左端リング5aの軸方向内側の端部と決めることで、左端リング5aに生じる渦電流を小さくし、断層画像の劣化を抑制できる。
【0067】
【数7】
【0068】
一例として、Berrが10μTである場合について記す。左端リング5aとして直径900mm、軸方向端部位置850mm、板厚1mmの銅板が、静磁場強度B0が4Tの位置にあり、周波数150Hz、速度100mm/sで振動している場合、Rは10mΩ程度、Lは1μH程度となり、式(5)よりIはzが200mmの位置で70A、400mmの位置で50A、600mmの位置で30A程度となる。一方、式(7)よりIerrはzが200mmの位置で7A、400mmの位置で15A、600mmの位置で30A程度となる。これより、2つの曲線が交わる実数解を求めると、z=592mmとなる。よって、これが左端リング5aを設置して良い配置領域の軸方向内側の端部となる。
【0069】
このような外周リング構造5について換言するならば、上述した技術思想に基づけば、本実施形態における外周リング構造5は、中央軸に面した左端リング5aおよび右端リング5cの側面と撮像空間8との距離が所定の値以上となるように、左端リング5aおよび右端リング5cを設置することによって、各リングに生じる渦電流による傾斜磁場発生源から漏れる磁場の遮蔽能力を維持させつつ、左端リング5aおよび右端リング5cの振動に伴う渦電流による均一磁場の劣化抑制を図ることができることを示している。上記の関係の概念図を、図7に示す。
【0070】
外周リング構造5の分割部の配置領域を、左端リング5aに生じた渦電流が撮像空間8に作る磁場が許容値を超える位置を基準に決めることにより、中央リング5bの軸方向長さを、断層画像の劣化が生じない範囲で最大化できる。これにより、傾斜磁場発生装置3の剛性を増加させる効果が最大化され、傾斜磁場発生装置3の振動が低減されて渦電流を抑制することができる。
【0071】
(第4の実施形態)
図8に、本発明の第4の実施形態に係るMRI装置1の傾斜磁場発生装置3の概略縦断面図を示す。第4の実施形態のMRI装置1が、第1から第3の実施形態のMRI装置1と異なっている点は、左端リング5a、右端5cが傾斜磁場発生装置3ではなく、静磁場発生装置2と機械的に一体化している点である。
【0072】
左端リング5a、右端リング5cを静磁場発生装置2の側に固定することで、左端リング5a、右端リング5cが傾斜磁場発生装置3の振動ではなく静磁場発生装置2の振動に伴って振動することとなるため、傾斜磁場発生装置3の振動が静磁場発生装置2の振動よりも大きい場合に断層画像への影響を低減することができる。
【0073】
(第5の実施形態)
図9に、本発明の第5の実施形態に係るMRI装置1の傾斜磁場発生装置3の概略正面図を示す。第5の実施形態のMRI装置1が、第1から第3の実施形態のMRI装置1と異なっている点は、左端リング5a、右端5cと中央リング5bの傾斜磁場発生装置3に隣接する側の分割部が、中心軸方向に対し撮像空間8よりも両端側かつ傾斜磁場発生装置3から静磁場発生装置2の側に漏れる磁場が小さい位置にあり、更に中央リング5bの径方向外側部分が左端リング5a、右端リング5cに軸方向に覆い被さっている点である。左端リング5a、右端5cと中央リング5bが重なった領域では、左端リング5a、右端5cと中央リング5bの界面は絶縁されていることが望ましい。
【0074】
中央リング5bが左端リング5a、右端リング5cに覆い被さっていることで、左端リング5a、右端リング5cが構造的に補強されるため、傾斜磁場発生装置3や左端リング5a、右端リング5cの振動が低減し、断層画像への影響も小さくできる。また、中央リング5bが傾斜磁場発生装置3から静磁場発生装置2の側に漏れる磁場の大きい軸方向の領域に重なるが、傾斜磁場発生源との間に左端リング5a、右端リング5cが存在し漏れ磁場は遮蔽されるため、中央リング5bに誘導される渦電流は小さい。このため、中央リング5bの渦電流損も小さく、外周リング構造5や傾斜磁場発生装置3の温度上昇を小さくすることができる。
【0075】
なお、前記した第1から第5の実施形態では、静磁場発生源2aと2bとして超電導コイルを取り上げたが、これに限らない。静磁場発生源2aと2bとして常電導コイルや永久磁石を用いてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 磁気共鳴イメージング装置
2 静磁場発生装置
2a 静磁場発生源(メインコイル)
2b 静磁場発生源(シールドコイル)
2c 真空容器(静磁場発生装置の外壁)
2d 輻射シールド板
2e 冷却容器
2f 真空容器支持脚
3 傾斜磁場発生装置
3a 傾斜磁場発生源(メインコイル)
3b 傾斜磁場発生源(シールドコイル)
3c レジン
4 照射コイル
5 外周リング構造
5a、5c 左端リング、右端側リング
5b 中央リング
6 寝台
7 均一磁場
8 撮像空間
9 傾斜磁場
10 被検体
11 弾性体
12 シムトレイ
15 外周リング構造分割部配置領域
21 高周波コイル
22 受信コイル
31 傾斜磁場発生装置の漏れ磁場分布
32 中央側リング渦電流損一定の場合の中央側リング長さと漏れ磁場の関係
33 両端側リング長さと両端側リング渦電流の関係
34 断層画像が劣化する渦電流と発生位置の関係
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9