特許第6444440号(P6444440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6444440アケビ抽出物の製造方法およびその抽出物を用いた機能性食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444440
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】アケビ抽出物の製造方法およびその抽出物を用いた機能性食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20181217BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20181217BHJP
   A61K 36/185 20060101ALN20181217BHJP
   A61K 36/9068 20060101ALN20181217BHJP
   A61K 36/258 20060101ALN20181217BHJP
   A61K 36/34 20060101ALN20181217BHJP
   A61K 36/344 20060101ALN20181217BHJP
   A61K 36/488 20060101ALN20181217BHJP
   A61K 36/894 20060101ALN20181217BHJP
【FI】
   A23L19/00 A
   A23L33/105
   !A61K36/185
   !A61K36/9068
   !A61K36/258
   !A61K36/34
   !A61K36/344
   !A61K36/488
   !A61K36/894
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-47559(P2017-47559)
(22)【出願日】2017年3月13日
(65)【公開番号】特開2017-189160(P2017-189160A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2017年3月14日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0044924
(32)【優先日】2016年4月12日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517089134
【氏名又は名称】キム ソン ペ
【氏名又は名称原語表記】KIM SONG BAE
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145920
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】キム ソン ペ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョン−ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒェ−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョン−ウク
(72)【発明者】
【氏名】キム テ−ドン
【審査官】 吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−111652(JP,A)
【文献】 特開2010−148425(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3191938(JP,U)
【文献】 特開2012−016310(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2005−0087498(KR,A)
【文献】 特開2015−017048(JP,A)
【文献】 特開2014−034552(JP,A)
【文献】 特開2014−152147(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/069263(WO,A1)
【文献】 特表2008−508263(JP,A)
【文献】 JIANG, D. et al.,Triterpene saponins from the fruits of Akebia quinata,Biochem. Syst. Ecol.,2008年,Vol. 36,pp. 138-141
【文献】 Azmir, J. et al.,Techniques for extraction of bioactive compounds from plant materials: A review,J. Food Eng.,2013年,Vol. 117,pp. 426-436
【文献】 Li, H. et al.,Effects of Ultrasound on Extraction of Saponin from Ginseng,Jpn. J. Appl. Phys.,1994年,Vol. 33,pp. 3085-3087
【文献】 ドライフルーツは効果で選ぶ!美肌マンゴー・便秘にバナナ,女性の美学,2016年 3月15日,[retrieved on 3/8/2018],URL,http://josei-bigaku.jp/dryfruit98236/
【文献】 7 果実類, あけび,食品成分表2014,女子栄養大学出版部/香川 芳子,2014年 2月10日,初版第1刷,pp. 88-89
【文献】 木村 進(総編集者),7.食品乾燥の実際,乾燥食品辞典,株式会社 朝倉書店,1984年 3月 1日,初版第1刷,pp. 315-318
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00−5/49、19/00−19/20、23/00−35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
MEDLINE/CROPU/FSTA/WPIDS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)アケビ種子アケビ果肉およびショウガを含む原料を熟成するステップと、
b)アルコール抽出液を用いて熟成した前記原料からサポニンが有効成分として含有された抽出物を抽出するステップと、を含む、アケビ抽出物の製造方法。
【請求項2】
前記原料は、アケビ種子1重量部に対してアケビ果肉を0.5〜5重量部含むことを特徴とする、請求項1に記載のアケビ抽出物の製造方法。
【請求項3】
前記熟成するステップにおいて、温度は20〜60℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアケビ抽出物の製造方法。
【請求項4】
前記原料は、アケビ種子1重量部に対してショウガを0.05〜0.2重量部含むことを特徴とする、請求項に記載のアケビ抽出物の製造方法。
【請求項5】
前記原料は、アケビ種子1重量部に対してチョウセンニンジン、野生のチョウセンニンジン、キキョウ、ツルニンジン、クズおよびヤマノイモからなる群から選択される1または2以上の添加物を0.1〜1重量部さらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のアケビ抽出物の製造方法。
【請求項6】
前記b)ステップは、
b1)前記a)ステップの熟成された原料にアルコール抽出液を添加した後、超音波を照射するステップと、
b2)前記b1)の生成物を遠心分離した後、上澄み液を回収して抽出物を製造するステップと、を含むことを特徴とする、請求項1に記載のアケビ抽出物の製造方法。
【請求項7】
前記b2)で上澄み液が除去された残渣を前記a)ステップの原料とし、前記b1)およびb2)ステップを2回以上繰り返すことを特徴とする、請求項に記載のアケビ抽出物の製造方法。
【請求項8】
前記b1)において超音波の照射は20〜60分である、請求項に記載のアケビ抽出物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アケビ種子に含有された有効成分を向上した効率で抽出することができるアケビ抽出物の製造方法およびこれを用いた機能性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
現代人は、汚染した大気質および西欧化した食生活、飲酒、ストレス、不規則な食事などが原因でがん、免疫力弱化、成人病、胃疾患、高血圧、糖尿病、心血管疾患、疲労の蓄積など、様々な病気に苦しんでいる。そのため、前記病気の予防、治療に関する関心が高まるにつれて、このための健康機能食品の需要が増加している。特に、近年、ビタミン、ミネラル製剤だけでなく、長期間服用しても副作用のない天然物質を加工した食品や天然物質抽出物を用いた健康機能食品に関する関心がより増加している。
【0003】
かかる健康機能食品の有効成分の中でも特に注目を浴びているものがサポニン(saponin)である。サポニンは、植物界に分布するトリテルペンまたはステロイド系配糖体の総称であり、泡が立つ特性を有する天然界面活性物質である。サポニンは、チョウセンニンジン、紅参の有効成分としてよく知られているが、ダイズ、長ネギ、ツルニンジン、キキョウ、セリ、ニンニク、玉ネギ、クズなど、多くの植物に存在しており、アケビ種子にも多量含有されている。サポニン(saponin)は、コレステロールを下げ、免疫力を高める機能を果たしており、心血管疾患の予防および治療、免疫力増強作用、抗がん作用、炎症緩和、糖尿抑制、動脈硬化および高血圧の予防、肝機能促進、疲労回復、抗酸化作用、抗炎活性、免疫増強作用などの様々な薬理活性効果を示すものと知られている。
【0004】
アケビは、双子葉植物綱キンポウゲ目アケビ科アケビ属に属するブドウの木であり、韓国の全域、日本、中国などに分布している。学名はakebia quinataであり、林下婦人、木通、通草とも称し、アケビの実は燕覆子とも称する。谷間や谷に主に生息しており、隣りの木に這い上がったり岩にもたれて生長する。アケビは、葉と実が珍しい形をしており、造園用にも用いられ、根と茎、実のいずれも食用可能である。アケビの実は9月もしくは10月に実り、果肉は曲がった楕円形であり、長さは6〜10cm程度で非常に厚い皮を有している。アケビが完全に熟した場合、実の皮が割れて白く柔らかい中身と黒い種子が出る特徴がある。アケビの茎と根は秋に採取して陰で乾かしてからお茶をいれて飲んだり、秋に成熟した実を採取して生で使用したり陰で乾かしてお茶をいれて飲んだりした。また、若い葉はゆでてナムルにして食べ、熟した実は果肉を食べたりした。
【0005】
アケビの茎と根は漢方医学で薬剤として使用されることもあり、利尿作用、抗菌作用、抗炎作用があると知られている。アケビの実には、サポニン、オレアノール酸(oleanolic acid)のような有効成分が含有されており、特に、サポニンは、茎、根よりは種子に多量含有されている。
【0006】
韓国登録特許10‐0573375においては、アケビ種子抽出物を活用して抗がん活性を有する組成物を提供したりしているが、これは、アケビ種子に含有されたサポニンを十分に活用することができないという問題点があった。また、アケビの茎と根の場合、漢方医学の影響を受けこれを活用するための研究が活発に行われたが、アケビの実の場合、アケビの茎や根よりはあまり研究が行われていなかった。そのため、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、アケビ種子のサポニンの抽出効率を向上させ、これを用いた機能性食品を開発するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国登録特許10‐0573375号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、サポニンの抽出効率を向上したアケビ種子抽出物の製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、サポニンの含有量が高く、機能性がより向上したアケビ抽出物を用いた食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るアケビ抽出物の製造方法は、
a)アケビ種子およびアケビ果肉が含まれた原料を熟成するステップと、
b)アルコール抽出液を用いて熟成した前記原料からサポニンが有効成分として含有された抽出物を抽出するステップと、
を含むことができる。
【0011】
前記原料は、アケビ種子1重量部に対してアケビ果肉を0.5〜5重量部含むことができる。
【0012】
前記熟成するステップにおいて、温度は20〜60℃であってもよい。
【0013】
前記原料はアケビ種子1重量部に対してショウガを0.05〜0.2重量部含むことができる。
【0014】
前記原料は、チョウセンニンジン、野生のチョウセンニンジン、キキョウ、ツルニンジン、クズおよびヤマノイモからなる群から選択される1または2以上の添加物をさらに含むことができる。
【0015】
本発明に係る抽出において、前記b)はより詳細には、
b1)前記a)で熟成された原料にアルコール抽出液を添加して超音波を照射するステップと、
b2)前記b1)の生成物を遠心分離した後、上澄み液を回収して第1抽出物を製造するステップと、
を含むことができる。
【0016】
また、前記b2)で上澄み液が除去された残渣を前記a)ステップの原料とし、前記b1)およびb2)ステップを2回以上繰り返すことができる。
【0017】
前記b1)ステップで超音波の照射は20〜60分であってもよい。
【0018】
また、本発明の方法により製造された抽出物を用いた機能性食品を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るアケビ抽出物の製造方法は、アケビの果肉を用いてアケビ種子のサポニンの抽出効率を向上させる利点があり、ショウガを用いてアケビ種子のサポニンの抽出効率をさらに向上させる利点がある。また、これにより機能性が向上した健康機能食品を提供できる利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、下記の実施例および製造例は、本発明を例示するためのものであって、本発明は下記の実施例および製造例に限定されない。また、本発明において使用する用語は、本発明において特に他に定義されない限り、本分野における通常の技術者の一般の知識水準を基準とし、発明の本質を不明にする周知の技術に関する説明は省略する。
【0021】
本発明に係る「アケビ」とは、学名がakebia quinataであるものを意味し、アケビの実、果肉、果皮、種子とは、収穫期に成熟したものを採取したものを意味する。
【0022】
本出願人は、アケビ種子に含有されたサポニンの抽出効率を向上させるために鋭意研究を重ねた結果、サポニンをほとんど含有していないアケビ果肉とアケビ種子を共に熟成して抽出する場合、アケビ種子のサポニンの抽出効率が著しく高くなることを見出した。さらに、アケビ種子とアケビ果肉を共に熟成して抽出物を製造する場合、苦味の減少、清涼感の向上など、官能度が向上した。
【0023】
本発明に係るアケビ抽出物の製造方法は、
a)アケビ種子およびアケビ果肉を含む原料を熟成するステップと、
b)アルコール抽出液を添加して熟成した前記原料からサポニンが有効成分として含有された抽出物を抽出するステップと、を含むことができる。
【0024】
上述のように、アケビの種子、果皮、皮、果肉などにおいて、アケビの種子にサポニンが存在し、他の部分にはサポニンがほとんど含有されていないと知られている。そのため、アケビに含有されたサポニンを抽出する際、通常、アケビ種子を対象として抽出が行われる。
【0025】
しかし、アケビの種子を用いてサポニンを抽出する場合、その抽出効率には限界があり、アケビ種子に多量のサポニンが存在しても抽出効率が低いため、アケビ種子に含有されたサポニンを十分に活用することができず捨てることになる問題点がある。
【0026】
上述のように、本出願人は、アケビ種子に含有されたサポニンの抽出効率を向上させるために長期間研究を行った結果、驚くべきことにアケビ果肉にはサポニンがほとんど存在しないにもかかわらずアケビ種子にアケビ果肉を添加して熟成する場合、アケビ種子に含有されたサポニンの抽出効率を著しく向上できることを見出した。実際、アケビ種子にアケビ果肉を添加し熟成した後に抽出する場合、単にアケビ種子を熟成して抽出した場合に比べ、最大170%に至る抽出効率の向上を図ることができる。かかる現象の原因について明確にされてはいないが、アケビ果肉の所定の成分がアケビ種子の細胞膜を破壊してサポニンの抽出効率を向上したと推測される。
【0027】
本発明におけるアケビ種子またはアケビ果肉は、乾燥粉末、粉砕されたものまたは片に切断したものであり得るが、これに制限されるものではない。また、本発明に係るアケビの抽出は、アケビ種子、果肉を混合するかアケビの実自体を用いて行われ得る。
【0028】
本発明の一実施例によれば、前記原料は、アケビ種子1重量部に対してアケビ果肉0.5〜5重量部が含まれてもよく、好ましくは0.7〜2重量部、より好ましくは0.9〜1.5重量部含まれてもよい。サポニンの抽出効率を向上させるためには、アケビ果肉をアケビ種子1重量部に対して0.5重量部以上添加することが好ましく、果肉があまりにも多く添加される場合、アケビ種子の抽出効率がこれ以上向上せず、抽出を妨げることがあるため、アケビ種子1重量部に対して5重量部よりも少量添加することが好ましい。
【0029】
また、本発明における前記原料は、アケビ種子、アケビ果肉の抽出効率の向上のための添加剤としてショウガをさらに含んでもよい。アケビ種子のサポニンの抽出効率をより向上させるために、様々な添加剤を添加し、添加剤がアケビ種子の抽出効率に及ぼす影響を検討した結果、驚くべきことにショウガをさらに添加して熟成および抽出する場合、アケビ種子のサポニンの抽出効率がより向上することを見出した。上述のように、アケビ果肉をアケビ種子と共に熟成および抽出することで、アケビ種子のみを用いた場合に比べて170%に至る抽出効率の向上を図ることができ、さらに、アケビ果肉、アケビ種子と共にショウガを添加剤としてさらに添加して熟成する場合、アケビ種子およびアケビ果肉を抽出する場合より最大120%に至る抽出効率の向上を図ることができる。すなわち、原料がアケビ果肉、アケビ種子およびショウガを含有する場合、アケビ種子のみを用いた場合に比べて最大200%に至る抽出効率の向上を図ることができる。かかる現象の原因もまた明確にされていないが、ショウガの所定の成分が、アケビ種子の細胞膜を破壊してサポニンの抽出効率を向上したと推測される。原料として含有されるショウガは、ショウガ乾燥粉末、ショウガ片、粉砕したショウガまたはショウガ汁などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0030】
本発明の一実施例によれば、前記原料は、アケビ種子1重量部に対してショウガ0.05〜0.2重量部が含まれてもよく、好ましくは0.07〜0.13重量部が含まれてもよく、より好ましくは0.08〜0.12重量部が添加されてもよい。アケビ種子のサポニンの抽出効率の向上を図るためには、アケビ種子1重量部に対してショウガ0.05重量部以上添加することが好ましく、ショウガをあまりにも多く添加する場合、抽出効率がこれ以上向上せず、むしろ抽出を妨げる恐れがあるため、0.2重量部以下添加することが好ましい。
【0031】
また、本発明の熟成ステップにおいて、熟成温度は20〜60℃であってもよく、好ましくは30〜50℃であってもよく、より好ましくは35〜45℃であってもよい。アケビを含む原料の熟成温度が40℃である場合、20℃未満で熟成する場合より200%以上の抽出効率の向上を図ることができる。これにより、アケビ果肉やショウガがアケビ種子に及ぼす作用が温度に応じて著しく影響を受けることが分かる。
【0032】
本発明における熟成は、原料の2〜10倍重量の精製水で行われてもよく、これに限定されるものではない。また、本発明のアルコール抽出液は、C1〜4のアルコールもしくはC1〜4のアルコール50〜95重量%と残部の水からなる溶液を意味する。好ましくは、エタノールまたはメタノール50〜90重量%と残部の水からなる溶液を意味し、より好ましくはエタノール70〜90重量%と残部の水からなる溶液であってもよい。
【0033】
本発明の他の一実施例によるアケビの抽出において、前記b)は、
b1)前記a)の熟成された原料にアルコール抽出液を添加した後、超音波を照射するステップと、
b2)前記b1)ステップの生成物を遠心分離した後、上澄み液を回収して抽出物を製造するステップと、
を含んでもよく、b2)における上澄み液が除去された残渣を前記b1)の原料とし、アルコール抽出液を添加した後、b1)およびb2)ステップを1回または2回以上繰り返してもよい。好ましくは2回繰り返してもよい。
【0034】
アケビ種子のサポニンの抽出効率の向上を図るために鋭意研究を重ねた結果、アケビ種子の抽出効率の向上を図るための方法として抽出液を用いた抽出の際に超音波を照射した場合、アケビ種子の抽出効率が向上した。通常、超音波を用いた植物の抽出の際、超音波の照射は3時間〜72時間行われることが一般的である。しかし、本発明の超音波の照射は、20〜60分、好ましくは30〜50分であることがより効果的である。具体的に、アケビ種子の抽出の際、超音波を照射する場合、超音波を照射しない場合より最大330%の効率の向上を図った。より詳細には、超音波を20分間照射する場合、最大270%の抽出効率の向上を図り、40分間照射する場合、310%の抽出効率の向上を図り、60分間照射する場合、330%の抽出効率の向上を図った。これにより、超音波の照射時間が、アケビ種子のサポニンの抽出効率に著しい影響を及ぼすことが分かる。超音波を10分より短く照射する場合、サポニンの抽出効率の向上を図ることができず、超音波を60分以上照射する場合、抽出物の他の有効成分が破壊する問題点が発生し得る。また、本発明の一実施例による超音波は、10〜50kHzであってもよい。超音波が10kHzより小さい場合、抽出効率の向上効果を奏することができず、50kHzより大きい場合、抽出物中の他の有効成分が破壊する可能性がある。
【0035】
さらに、遠心分離の後、上澄み液が除去された残渣にまたアルコール抽出液を添加して抽出する場合、残渣に残っていた捨てられるサポニンを活用することができる利点がある。
【0036】
また、本発明に係るアケビ抽出物の有効成分はsaponin Dであり、具体的には、下記化1の「Pulsatilla saponin D」である。
【0037】
[化1]
【0038】
本発明の一実施例によるアケビの抽出において、さらに、植物をさらに含んで熟成した後、抽出することができることは言うまでもない。具体的に、チョウセンニンジン、野生のチョウセンニンジン、キキョウ、ツルニンジン、クズおよびヤマノイモからなる群から選択される1または2以上を含んでもよい。チョウセンニンジン、野生のチョウセンニンジン、キキョウ、ツルニンジン、クズ、ヤマノイモのような植物をさらに添加して熟成した後に抽出する場合、前記の植物が有する有効成分をアケビ抽出物と共に摂取することができ、さらに機能性が向上した食品の製造が可能である。
【0039】
本発明に係るアケビの抽出物は、抽出物自体を摂取するか顆粒化、カプセル化して摂取するか、他の食品の添加物として使用してもよく、他の食品の添加物として使用する場合、通常の方法により適宜使用してもよい。アケビの抽出物が添加物として使用される場合、アケビ抽出物は、食品中に0.01〜50重量%に添加されてもよく、抽出物の添加量は、使用目的に応じて適宜調整されてもよい。
【0040】
本発明に係るアケビ抽出物が添加される食品は、特に制限されず、具体例としては、肉類、ソーセージ、ハム、その他の加工肉、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、パン、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む乳製品、飲料、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料およびビタミン複合剤などがある。
【0041】
本発明に係る健康機能食品のうち飲料は、通常の飲料のように様々な着香剤または天然炭水化物などを追加の成分として含有してもよい。天然炭水化物は、ブドウ糖、果糖のようなモノサッカライド、マルトース、スクロースのようなジサッカライドおよびデキストリン、シクロデキストリンのようなポリサッカライド、キシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールであってもよい。
【0042】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。下記の実施例は、発明の理解を容易にするための具体的な例示であって、本発明が下記実施例により制限されない。
【実施例1】
【0043】
アケビ果肉粉末の割合によるサポニンの抽出効率の向上
アケビ種子粉末1gにそれぞれアケビ果肉粉末0g(比較例1)、0.3g(実施例1‐1)、0.5g(実施例1‐2)、0.7g(実施例1‐3)、1.0g(実施例1‐4)、1.5g(実施例1‐5)、2.0g(実施例1‐6)を混合した後、精製水10mlに入れて45℃で5時間熟成する。これにエタノール80重量%、水20重量%の抽出液20mlを添加して攪拌しながら30kHzの超音波を30分間照射する。次に、3000rpmで20分間遠心分離を経て上澄み液を回収し、第1抽出物を製造する。前記上澄み液が除去された残渣に前記抽出液を30mlさらに添加して30分間攪拌しながら30kHzの超音波を照射して遠心分離後上澄み液を回収し、第2抽出物を製造する。前記第1抽出物と第2抽出物を合わせて減圧乾燥した後、精製水100mlに溶解して凍結乾燥する。次に、高速液体クロマトグラフィー(Waters、Waters2695 HPLC system)を用いてサポニンの含有量を測定し、表1に示した。
【0044】
【表1】
【実施例2】
【0045】
ショウガのサポニンの抽出効率の向上
アケビ種子1g、アケビ果肉1gにショウガをそれぞれ0g(実施例2‐1)、0.03g(実施例2‐2)、0.05g(実施例2‐3)、0.1g(実施例2‐4)、0.15g(実施例2‐5)、0.2g(実施例2‐6)、0.3g(実施例2‐7)を混合し、実施例1のような方法で実験してサポニンの含有量を測定した後、表2に示した。
【0046】
【表2】
【実施例3】
【0047】
熟成温度によるサポニンの抽出効率の向上
アケビ種子粉末5gとアケビ果肉粉末5gの混合物を精製水50mlに入れてそれぞれ20℃(実施例3‐1)、25℃(実施例3‐2)、30℃(実施例3‐3)、35℃(実施例3‐4)、40℃(実施例3‐5)、45℃(実施例3‐6)、50℃(実施例3‐7)、55℃(実施例3‐8)、60℃(実施例3‐9)で5時間熟成する。これにエタノール80重量%、水20重量%の抽出液70mlを添加して攪拌しながら30kHzの超音波を30分間照射する。次に、3000rpmで20分間遠心分離を経て上澄み液を回収し、第1抽出物を製造する。前記上澄み液が除去された残渣に前記抽出液を100mlさらに添加して30分間攪拌しながら30kHzの超音波を照射して遠心分離した後、上澄み液を回収し、第2抽出物を製造する。前記第1抽出物と第2抽出物を合わせて減圧乾燥した後、精製水400mlに溶解して凍結乾燥する。次に、高速液体クロマトグラフィーを使用してサポニンの含有量を測定した。
【0048】
【表3】
【実施例4】
【0049】
超音波の照射時間によるサポニンの抽出効率の向上
熟成温度を40℃とし、実施例3のような方法で抽出を行う際、第1抽出物の製造過程および第2抽出物の製造過程における超音波の照射時間をそれぞれ0分(実施例4‐1)、10分(実施例4‐2)、20分(実施例4‐3)、30分(実施例4‐4)、40分(実施例4‐5)、50分(実施例4‐6)、60分(実施例4‐7)、70分(実施例4‐8)として抽出を行った。各実施例別のサポニンの含有量を表4に示した。
【0050】
【表4】
【0051】
[実験例1]アケビ抽出物の官能検査
前記抽出物の製造方法により比較例1、実施例1‐4、実施例2‐4で得られた抽出物、および実施例2‐4で得られた抽出物に乾燥したチョウセンニンジン粉末0.5gをさらに混合した抽出物(実施例5)を製造し、20〜40代の訓練された評価員50名にそれぞれ100mgずつ服用させた。服用後にそれぞれ感じる香と味の特性に対して、5点スケール(1点:非常に嫌いまたは非常に強い、2点:嫌い、3点:普通、4点:満足または良い、5点:非常に満足または非常に良い)で表示させた後、その平均値を求め、表5に示した。
【0052】
【表5】
【0053】
[実験例2]アケビ抽出物の活力増進の効果
前記実施例2‐4による抽出物を男女各15名ずつ総30名の20〜50代の一般人に毎日一日二回100mgずつ10日間服用させ、活力増進効果を比較するために疲労回復度を5点スケール(5点:非常に優秀、4点:優秀、3点:差異なし、2点:悪い、1点:非常に悪い)で表示させ、平均値を求めた結果、平均が4、標準偏差は0.73と現れ、疲労回復効果を有することが分かる。
【0054】
[実験例3]アケビ抽出物の風邪予防または風邪症状緩和の効果
前記実施例2‐4による抽出物10mgを毎日服用する実験群、小麦粉で製造したプラセボ10mgを毎日服用する対照群を定め、1年間実験を行った。実験群と対照群の1年間の風邪の発病回数と風邪の継続日を表示し、表6に示した。ここで、風邪とは、微熱または高熱、咽頭痛、咳、筋肉痛、悪寒などの症状が2以上現れる状態と定義した。
【0055】
【表6】
【0056】
[実験例4]アケビ抽出物の胃部不快感緩和の効果
前記実施例2‐4による抽出物を胸焼け、呑酸など胃部の不快感を訴える10名の一般人を対象として一日2回0.1gずつ一ヶ月服用させた後、胸焼け、悪心および胃液逆流症状の改善度を5点スケール(1:非常に悪化、2:悪化、3:変化なし、4:改善する、5:非常に改善する)で表示させた。その結果、胸焼けの場合、平均4.4点、標準偏差0.69を示しており、悪心および胃液逆流は、平均4.0点、標準偏差0.94と示された。
【0057】
[製造例1]アケビ抽出物錠剤の製造
実施例2‐4による抽出物150mg、結晶性セルロース50mg、乳糖50mg、ステアリン酸マグネシウム3mgおよびエタノールを混合して顆粒を製造する。
【0058】
[製造例2]アケビ抽出物カプセル剤の製造
実施例2‐4による抽出物200mg、タルク10mg、コロイドシリカ5mg、乳糖85mgを通常のカプセル剤の製造方法で製造する。
【0059】
[製造例3]アケビ抽出物飲料の製造
実施例2‐4による抽出物4g、オリゴ糖0.5g、高フルクトースコーンシロップ1g、クエン酸0.1g、ビタミンC0.2gおよび精製水50mlを混合し、通常の飲料製造方法で製造する。