(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による電力変換装置の制御装置および制御方法を、好適な実施の形態にしたがって図面を用いて説明する。なお、図面の説明においては、同一部分または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各実施の形態では、家庭用電源、商用電源等の交流電源から、二次電池等の負荷への電力の供給に用いられる電力変換装置に対して本発明が適用される場合を例示する。
【0017】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置2を備えた電力供給システムを示す構成図である。
図1において、電力供給システムは、電力変換装置1と、電力変換装置1を制御する制御装置2と、入力電源としての交流電源3と、負荷4とを備える。
【0018】
電力変換装置1は、第1の電力変換回路としてのAC−DC変換回路11と、第2の電力変換回路としてのDC−DC変換回路12と、平滑コンデンサ13と、入力電圧検出器14と、入力電流検出器15と、コンデンサ電圧検出器16と、出力電圧検出器17と、出力電流検出器18とを備える。
【0019】
AC−DC変換回路11は、入力側が交流電源3に接続され、出力側が平滑コンデンサ13に接続される。DC/DC変換回路12は、入力側が平滑コンデンサ13に接続され、出力側が負荷4に接続される。すなわち、AC−DC変換回路11の入力端には、交流電源3が接続される。AC−DC変換回路11の出力端には、DC−DC変換回路12の入力端および平滑コンデンサ13が接続される。DC−DC変換回路12の出力端には、負荷4が接続される。
【0020】
AC−DC変換回路11は、ダイオードD1と、ダイオードD11〜D14によって構成されるダイオードブリッジ回路111と、スイッチング素子Q1と、平滑リアクトル112とを備える。なお、スイッチング素子Q1として、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を用いることができる。
【0021】
交流電源3は、AC−DC変換回路11の入力端を経て、ダイオードブリッジ回路111に接続される。
【0022】
AC−DC変換回路11において、ダイオードD1は、高圧側である上アームに設けられ、スイッチング素子Q1は、低圧側である下アームに設けられる。ダイオードD1のカソードは、高圧側配線に接続され、そのアノードは、スイッチング素子Q1のドレイン端子および平滑リアクトル112に接続される。スイッチング素子Q1のソース端子は、低圧側配線に接続される。
【0023】
DC−DC変換回路12は、スイッチング素子Q2〜Q5によって構成されるブリッジ回路121と、一次側巻線122aと二次側巻線122bによって構成されるトランス122と、ダイオードD21〜D24によって構成されるダイオードブリッジ回路123と、平滑リアクトル124とを備える。なお、スイッチング素子Q2〜Q5として、例えば、MOSFETを用いることができる。
【0024】
ブリッジ回路121において、スイッチング素子Q2およびスイッチング素子Q4は、高圧側である上アームに設けられ、スイッチング素子Q3およびスイッチング素子Q5は、低圧側である下アームに設けられる。
【0025】
スイッチング素子Q2のドレイン端子は、高圧側配線に接続され、そのソース端子は、スイッチング素子Q3のドレイン端子および一次側巻線122aの一端に接続される。スイッチング素子Q4のドレイン端子は、高圧側配線に接続され、そのソース端子は、スイッチング素子Q5のドレイン端子および一次側巻線122aの他端に接続される。スイッチング素子Q3のソース端子およびスイッチング素子Q5のソース端子は、共に低圧側配線に接続される。
【0026】
ダイオードブリッジ回路123において、ダイオードD21およびダイオードD23は、高圧側である上アームに設けられ、ダイオードD22およびダイオードD24は、低圧側である下アームに設けられる。
【0027】
ダイオードD21のカソードは、高圧側配線に接続され、そのアノードは、ダイオードD22のカソードおよび二次側巻線122bの一端に接続される。ダイオードD23のカソードは、高圧側配線に接続され、そのアノードは、ダイオードD24のカソードおよび二次側巻線122bの他端に接続される。ダイオードD21のアノードおよびダイオードD23のアノードは、共に低圧側配線に接続される。高圧側配線は、平滑リアクトル124を介し、DC−DC変換回路12の出力端を経て負荷4に接続される。
【0028】
平滑コンデンサ13は、DC−DC変換回路12の入力端に設けられ、一端が高圧側配線に接続され、他端が低圧側配線に接続される。その結果、平滑コンデンサ13は、ブリッジ回路121と並列に接続されることとなる。
【0029】
入力電圧検出器14は、AC−DC変換回路11の入力端に設けられ、交流電源3から入力される入力電圧Vacを検出する。入力電流検出器15は、スイッチング素子Q1のドレインとダイオードD1のアノードとを接続する接続点と、平滑リアクトル112との間に設けられ、入力電流Iacを検出する。
【0030】
コンデンサ電圧検出器16は、平滑コンデンサ13に並列接続され、平滑コンデンサ13に印加される電圧であるコンデンサ電圧Vcを検出する。
【0031】
出力電圧検出器17は、負荷4に並列接続され、出力電圧Voutを検出する。出力電流検出器18は、ダイオードブリッジ回路123と負荷4との間の低圧配線側に設けられ、DC−DC変換回路12から負荷4へ出力される出力電流Ioutを検出する。
【0032】
制御装置2は、例えば、演算処理を実行するマイクロコンピュータと、プログラムデータ、固定値データ等のデータを記憶するROM(Read Only Memory)と、格納されているデータを更新して順次書き換えられるRAM(Random Access Memory)とによって実現される。
【0033】
制御装置2は、電力変換装置1の負荷4への出力電力Poutを制御するための出力電力指令値Pout*を送信する指令値調整部21と、AC−DC変換回路11を制御するAC−DC制御部22と、DC−DC変換回路12を制御するDC−DC制御部23とを備える。
【0034】
指令値調整部21は、コンデンサ電圧検出器16から取得したコンデンサ電圧Vcが、コンデンサ電圧Vcを制御するためのコンデンサ電圧指令値Vc*を基準とした電圧許容範囲内に収まるように、予め設定された出力電力指令値に対して調整を行うことで調整後の出力電力指令値Pout*を生成する。また、指令値調整部21は、その出力電力指令値Pout*をAC−DC制御部22およびDC−DC制御部23に送信する。
【0035】
この出力電力指令値Pout*は、入力電流Iacを制御するための入力電流指令値Iac*と、出力電流Ioutを制御するための出力電流指令値Iout*と、出力電圧Voutを制御するための出力電圧指令値Vout*の変更を行うためのものである。
【0036】
AC−DC制御部22は、入力電流検出器15から取得した入力電流Iacと、コンデンサ電圧検出器16から取得したコンデンサ電圧Vcと、入力電圧検出器14から取得した入力電圧Vacと、出力電圧検出器17から取得した出力電圧Voutと、指令値調整部21から受信した出力電力指令値Pout*を用いて、スイッチング素子Q1のduty比を制御するための制御信号を生成し、その制御信号をスイッチング素子Q1に送信する。
【0037】
DC−DC制御部23は、出力電流検出器18から取得した出力電流Ioutと、コンデンサ電圧検出器16から取得したコンデンサ電圧Vcと、入力電圧検出器14から取得した入力電圧Vacと、出力電圧検出器17から取得した出力電圧Voutと、指令値調整部21から受信した出力電力指令値Pout*とを用いて、各スイッチング素子Q2〜Q5のduty比を制御するための制御信号を生成し、その制御信号を各スイッチング素子Q2〜Q5に送信する。
【0038】
次に、制御装置2のAC−DC制御部22およびDC−DC制御部23のそれぞれの動作について、
図2〜
図6を参照しながら説明する。
【0039】
ここで、電力変換制御部としてのAC−DC制御部22およびDC−DC制御部23は、出力電力指令値Pout*に出力電力Poutがなり、かつコンデンサ電圧指令値Vc*にコンデンサ電圧Vcがなるように、AC−DC変換回路11およびDC−DC変換回路12を制御する。また、AC−DC制御部22およびDC−DC制御部23は、出力電力指令値Pout*およびコンデンサ電圧指令値Vc*を用いてAC−DC変換回路11およびDC−DC変換回路12を制御する制御モードとして、出力電流制御モードおよび入力電流制御モードを有する。
【0040】
出力電流制御モードは、DC−DC変換回路12から負荷4へ出力される出力電流Ioutが出力電流指令値Iout*になるように制御するモードである。また、入力電流制御モードは、交流電源3からAC−DC変換回路11へ入力される入力電流Iacが入力電流指令値Iac*になるように制御するモードである。
【0041】
まず、出力電流制御モードに従ってAC−DC制御部22が動作する場合について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、
図1のAC−DC制御部22が出力電流制御モードに従ってAC−DC変換回路11を制御する場合に機能する演算器24を示すブロック図である。
【0042】
AC−DC制御部22に具備される演算器24は、出力電流制御モードに従ってAC−DC変換回路11を制御する場合、コンデンサ電圧Vcをコンデンサ電圧指令値Vc*に維持しつつ、入力力率が1になるように、入力電流Iacを制御する。
【0043】
演算器24は、減算器241、PI制御器242、乗算器243、減算器244、PI制御器245およびPWM信号生成器246を有する。
【0044】
減算器241は、コンデンサ電圧検出器16によって検出されたコンデンサ電圧Vcと、予め設定されたコンデンサ電圧指令値Vc*との差分を演算する。PI制御器242は、減算器241によって演算された差分がゼロとなるようにフィードバック制御、すなわちPI制御を行うことで入力電流Iacの振幅指令値を演算する。
【0045】
乗算器243は、PI制御器242によって演算された入力電流Iacの振幅指令値に基づいて、入力電圧Vacに同期した正弦波の入力電流指令値Iac*を演算する。減算器244は、乗算器243によって演算された入力電流指令値Iac*と、入力電流検出器15によって検出された入力電流Iacとの差分を演算する。
【0046】
PI制御器245は、減算器244によって演算された差分がゼロとなるようにフィードバック制御、すなわちPI制御を行うことでPWM信号生成器246によるPWM信号の生成を制御する。PWM信号生成器246は、PI制御器245からの制御に従って、スイッチング素子Q1のduty比を制御するための制御信号として、PWM信号を生成する。
【0047】
続いて、出力電流制御モードに従ってDC−DC制御部23が動作する場合について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、
図1のDC−DC制御部23が出力電流制御モードに従ってDC−DC変換回路12を制御する場合に機能する演算器25を示すブロック図である。
【0048】
DC−DC制御部23に具備される演算器25は、出力電流制御モードに従ってDC−DC変換回路12を制御する場合、出力電流Ioutが出力電流指令値Iout*となるように、または出力電力Poutが出力電力指令値Pout*になるように制御する。
【0049】
演算器25は、乗算器251、マルチプレクサ252、減算器253、PI制御器254およびPWM信号生成器255を有する。
【0050】
乗算器251は、出力電力指令値Pout*と、出力電圧検出器17によって検出された出力電圧Voutの逆数とを乗算することで、出力電流指令値Iout*’を演算する。マルチプレクサ252は、出力電流指令値Iout*と、乗算器251によって演算された出力電流指令値Iout*’のうち、小さい方を出力電流指令値Iout*’’として選択する。
【0051】
減算器253は、マルチプレクサ252によって選択された出力電流指令値Iout*’’と、出力電流検出器18によって検出された出力電流Ioutとの差分を演算する。
【0052】
PI制御器254は、減算器253によって演算された差分がゼロとなるようにフィードバック制御、すなわちPI制御を行うことでPWM信号生成器255によるPWM信号の生成を制御する。PWM信号生成器255は、PI制御器254からの制御に従って、スイッチング素子Q2〜Q5の各duty比を制御するための制御信号として、PWM信号を生成する。
【0053】
なお、出力電流制御モードおいては、出力電圧Voutが出力電圧指令値Vout*となるように、または出力電力Poutが出力電力指令値Pout*になるように、DC−DC変換回路12が制御される場合も考えられる。このような制御について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、
図1のDC−DC制御部23が出力電流制御モードに従ってDC−DC変換回路12を制御する場合に機能する演算器26を示すブロック図である。
【0054】
演算器26は、乗算器261、マルチプレクサ262、減算器263およびPI制御器264を有する。
【0055】
乗算器261は、出力電力指令値Pout*と、出力電流検出器18によって検出された出力電流Ioutの逆数とを乗算することで、出力電圧指令値Vout*’を演算する。マルチプレクサ262は、出力電圧指令値Vout*と、乗算器261によって演算された出力電圧指令値Vout*’のうち、小さい方を出力電圧指令値Vout*’’として選択する。
【0056】
減算器263は、マルチプレクサ262によって選択された出力電圧指令値Vout*’’と、出力電圧検出器17によって検出された出力電圧Voutとの差分を演算する。
【0057】
PI制御器264は、減算器263よって演算された差分がゼロとなるようにフィードバック制御、すなわちPI制御を行うことで、出力電流指令値Iout*を演算する。この出力電流指令値Iout*は、先の
図3の演算器25に入力され、出力電圧Voutは、出力電圧指令値Vout*’’となるように制御される。また、この場合において、マルチプレクサ252は、出力電流指令値Iout*を出力電流指令値Iout*’’として選択する。
【0058】
このように、
図2〜
図3に示す出力電流制御モードに従って電力変換装置1を制御するように構成することで、出力電力指令値Pout*およびコンデンサ電圧指令値Vc*を用いて、出力電流Ioutを所望の値に制御することができる。また、
図2〜
図4に示す出力電流制御モードに従って電力変換装置1を制御するように構成することで、出力電力指令値Pout*およびコンデンサ電圧指令値Vc*を用いて、出力電圧Voutを所望の値に制御することができる。
【0059】
続いて、入力電流制御モードに従ってAC−DC制御部22が動作する場合について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、
図1のAC−DC制御部22が入力電流制御モードに従ってAC−DC変換回路11を制御する場合に機能する演算器27を示すブロック図である。
【0060】
AC−DC制御部22に具備される演算器27は、入力電流制御モードに従ってAC−DC変換回路11を制御する場合、入力電流Iacが入力電流指令値Iac*となるように、または出力電力Poutが出力電力指令値Pout*となるように制御する。
【0061】
演算器27は、乗算器271、マルチプレクサ272、乗算器273、減算器274、PI制御器275およびPWM信号生成器276を有する。
【0062】
乗算器271は、出力電力指令値Pout*と、入力電圧検出器14によって検出された入力電圧Vacの逆数とを乗算することで、入力電流指令値Iac*’を演算する。マルチプレクサ272は、入力電流指令値Iac*と、乗算器271によって演算された入力電流指令値Iac*’のうち小さい方を、入力電流Iacの振幅指令値として選択する。
【0063】
乗算器273は、マルチプレクサ272によって選択された入力電流Iacの振幅指令値に基づいて、入力電圧Vacに同期した正弦波の入力電流指令値Iac*’’を演算する。減算器274は、乗算器273によって演算された入力電流指令値Iac*’’と、入力電流検出器15によって検出された入力電流Iacとの差分を演算する。
【0064】
PI制御器275は、減算器274によって演算された差分がゼロとなるようにフィードバック制御、すなわちPI制御を行うことでPWM信号生成器276によるPWM信号の生成を制御する。PWM信号生成器276は、PI制御器275からの制御に従って、スイッチング素子Q1のduty比を制御するための制御信号として、PWM信号を生成する。
【0065】
続いて、入力電流制御モードに従ってDC−DC制御部23が動作する場合について、
図6を参照しながら説明する。
図6は、
図1のDC−DC制御部23が入力電流制御モードに従ってDC−DC変換回路12を制御する場合に機能する演算器28を示すブロック図である。
【0066】
DC−DC制御部23に具備される演算器28は、入力電流制御モードに従ってDC−DC変換回路12を制御する場合、コンデンサ電圧Vcをコンデンサ電圧指令値Vc*に維持しつつ、入力力率が1になるように、出力電流Ioutを制御する。
【0067】
演算器28は、減算器281、PI制御器282、減算器283、PI制御器284およびPWM信号生成器285を有する。
【0068】
減算器281は、コンデンサ電圧検出器16によって検出されたコンデンサ電圧Vcと、予め設定されたコンデンサ電圧指令値Vc*との差分を演算する。PI制御器282は、減算器281によって演算された差分がゼロとなるようにフィードバック制御、すなわちPI制御を行うことで出力電流指令値Iout*を演算する。
【0069】
減算器283は、PI制御器282によって演算された出力電流指令値Iout*と、出力電流検出器18によって検出された出力電流Ioutとの差分を演算する。
【0070】
PI制御器284は、減算器283によって演算された差分がゼロとなるようにフィードバック制御、すなわちPI制御を行うことでPWM信号生成器285によるPWM信号の生成を制御する。PWM信号生成器285は、PI制御器284からの制御に従って、スイッチング素子Q2〜Q5の各duty比を制御するための制御信号として、PWM信号を生成する。
【0071】
このように、
図5および
図6に示す入力電流制御モードに従って電力変換装置1を制御するように構成することで、出力電力指令値Pout*およびコンデンサ電圧指令値Vc*を用いて、入力電流を所望の値に制御することができる。
【0072】
次に、制御装置2の指令値調整部21の動作について、
図7を参照しながら説明する。
図7は、
図1の指令値調整部21の一連の動作を示すフローチャートである。なお、
図7のフローチャートの処理は、例えば、入力電流Iacの周波数と比べて十分に短い周期で繰り返し行われる。
【0073】
ステップS101において、指令値調整部21は、コンデンサ電圧検出器16によって一定周期の間に検出されたコンデンサ電圧の振幅値(以下、コンデンサ電圧振幅値と称す)を演算し、処理がステップS102へと進む。検出されたコンデンサ電圧は、リプル電圧成分を含むので、波形となる。
【0074】
なお、コンデンサ電圧の振幅値を演算する手法としては、様々な手法が考えられ、例えば、検出されたコンデンサ電圧の電圧波形から振幅値を直接的に求める手法、検出されたコンデンサ電圧の最大値および最小値の和の平均を振幅値として求める手法等が考えられる。
【0075】
ステップS102において、指令値調整部21は、ステップS101で演算したコンデンサ電圧振幅値が、予め設定された許容振幅値よりも大きいか否か判定する。コンデンサ電圧振幅値が許容振幅値よりも大きいと判定された場合には、処理がステップS103へと進み、コンデンサ電圧振幅値が許容振幅値以下であると判定された場合には、処理がステップS106へと進む。
【0076】
なお、上記の許容振幅値は、例えば、平滑コンデンサ13の許容リプル電流と、DC−DC変換回路12の制御系の安定限界を考慮して決められる。
【0077】
具体的には、まず、平滑コンデンサ13の定められた許容リプル電流を満たすリプル電圧振幅値を算出する。続いて、DC−DC変換回路12の制御系設計において、安定限界となる入力変動振幅値を算出する、またはその入力変動振幅値をシミュレーションから求める。最後に、このように求めたリプル電圧振幅値および入力変動振幅値のうち、小さい方を許容振幅値とする。
【0078】
ステップS103において、指令値調整部21は、現在の出力電力指令値Pout*を下げる調整を行い、処理がステップS104へと進む。
【0079】
なお、出力電力指令値Pout*を下げる場合、どのように下げてもよいが、例えば、出力電力指令値Pout*を予め設定された値の分だけ下げるケース、出力電力指令値Pout*を予め設定された割合の分だけ下げるケース等が考えられる。
【0080】
ここで、出力電力指令値Pout*を下げる調整について、
図8を参照しながら説明する。
図8は、
図1の指令値調整部21が出力電力指令値Pout*を下げる調整を行った場合のコンデンサ電圧Vcおよび出力電力Poutの挙動の一例を示す説明図である。
【0081】
なお、
図8において、上部は、コンデンサ電圧Vc[V]の時間変化を示し、下部は、出力電力Pout[W]の時間変化を示す。また、
図8では、予め設定される、コンデンサ電圧指令値Vc*および許容振幅値も併せて図示している。さらに、
図8の網掛け部分の期間において、出力電力指令値Pout*を下げる調整が行われたものとする。
【0082】
図8に示すように、許容振幅値は、コンデンサ電圧指令値Vc*を基準とした電圧許容範囲の上限値および下限値を規定するものである。すなわち、電圧許容範囲において、上限値とコンデンサ電圧指令値Vc*との差と、コンデンサ電圧指令値Vc*と下限値との差は、互いに値が等しく、その値が許容振幅値となる。
【0083】
図8に示すように、出力電力指令値Pout*を下げる調整が行われることで、出力電力Poutが下がるのに伴って、コンデンサ電圧振幅値が許容振幅値を超えない状態となる。このように、コンデンサ電圧振幅値と、許容振幅値を比較し、その比較の結果、コンデンサ電圧振幅値の方が大きければ、出力電力指令値Pout*を下げる調整を行うことで、リプル電圧成分の振幅値が許容範囲内に収まるようにすることができる。
【0084】
このように、指令値調整部21は、比較結果として、コンデンサ電圧振幅値が許容振幅値よりも大きい場合、出力電力指令値Pout*を下げる調整を行う。
【0085】
図7の説明に戻り、ステップS104において、ステップS103での調整後の出力電力指令値Pout*が予め設定された設定値以下であるか否かを判定する。出力電力指令値Pout*が設定値以下であると判定された場合には、処理がステップS105へと進み、出力電力指令値Pout*が設定値よりも大きいと判定された場合には、処理が終了となる。
【0086】
ステップS105において、指令値調整部21は、電力変換装置1の駆動を停止し、処理が終了となる。
【0087】
なお、電力変換装置1の駆動を停止する手法としては、様々な手法が考えられ、例えば、指令値調整部21が出力電力指令値Pout*をゼロにする手法、指令値調整部21がAC−DC制御部22およびDC−DC制御部23に対して電力変換装置1の駆動を停止するように指令する手法が考えられる。
【0088】
ここで、調整後の出力電力指令値Pout*が設定値以下となれば、平滑コンデンサ13の寿命による静電容量低下等の電力変換装置1の大幅な劣化が原因で、平滑コンデンサ13のリプル電圧成分が変化したと考えられる。そこで、これ以上の電力変換装置1の劣化を防ぐため、調整後の出力電力指令値Pout*が設定値以下となれば、電力変換装置1の駆動を停止するように構成している。
【0089】
なお、ステップS105において、警告を行うように指令値調整部21を構成してもよい。具体的には、指令値調整部21は、警告として、例えば、アラームを出す、ランプを点灯させる、他の制御回路に信号を出力する等の動作を行う。このように構成することで、電力変換装置1からの電力供給を停止することで負荷4、他の機器等に不都合が生じる場合に対処ができる。
【0090】
このように、指令値調整部21は、調整後の出力電力指令値Pout*が設定値以下となった場合、電力変換装置1の駆動を停止する、または警告を行う。
【0091】
ステップS106において、指令値調整部21は、電力制限がすでに行われているか否かを判定する。指令値調整部21は、以前にステップS103の処理(すなわち、出力電力指令値Pout*を下げる調整)を行っていれば、電力制限がすでに行われていると判定し、処理がステップS107へと進む。一方、指令値調整部21は、以前にステップS103の処理を行っていなければ、電力制限がまだ行われていないと判定し、処理が終了となる。
【0092】
ステップS107において、指令値調整部21は、現在の出力電力指令値Pout*を上げる調整を行い、処理が終了となる。
【0093】
なお、出力電力指令値Pout*を上げる場合、どのように上げてもよいが、例えば、出力電力指令値Pout*を予め設定された値の分だけ上げるケース、出力電力指令値Pout*を予め設定された割合の分だけ上げるケース等が考えられる。
【0094】
このように、指令値調整部21は、出力電力指令値Pout*を下げる調整を行った後、比較結果として、コンデンサ電圧振幅値が許容振幅値以下となった場合、出力電力指令値Pout*を上げる調整を行う。
【0095】
すなわち、指令値調整部21は、出力電力指令値Pout*を下げる調整によってコンデンサ電圧振幅値が減少し、コンデンサ電圧振幅値が許容振幅値に対して余裕がある状態となった場合には、出力電力指令値Pout*を上げる調整を行うように構成されている。したがって、電力変換装置1の使用環境が改善されたことを自動的に検知し、可能な限り大きな出力電力を電力変換装置1が出力するようにすることができる。
【0096】
以上、
図7の説明から分かるように、指令値調整部21は、コンデンサ電圧Vcを取得し、取得したコンデンサ電圧Vcが、コンデンサ電圧指令値Vc*を基準とした電圧許容範囲内に収まるように、出力電力指令値Pout*を調整する。
【0097】
具体的には、指令値調整部21は、取得したコンデンサ電圧Vcの振幅値を演算し、演算した振幅値であるコンデンサ電圧振幅値と、コンデンサ電圧指令値Vc*を基準とした電圧許容範囲の上限値および下限値を規定する許容振幅値とを比較し、比較結果に基づいて、出力電力指令値Pout*を調整する。
【0098】
なお、ステップS102において、コンデンサ電圧振幅値が許容振幅値よりも大きい場合には、処理がステップS103へと進み、出力電力指令値Pout*を下げる調整が行われるように構成する場合を示したが、コンデンサ電圧振幅値が許容振幅値よりも小さい場合においても、ある一定以上の振幅の増加量であれば、出力電力指令値Pout*を下げる調整が行われるように構成してもよい。このように構成することで、出力短絡異常等により、急激にコンデンサ電圧振幅値が増加したとしても、許容振幅値を大幅に上回ることを防ぐことができる。
【0099】
なお、ステップS103において、指令値調整部21は、出力電力指令値Pout*を下げる調整を行いながら、コンデンサ電圧を取得してコンデンサ電圧振幅値を演算し、そのコンデンサ電圧振幅値が許容振幅値を下回るまで、出力電力指令値Pout*を下げる調整を行ってもよい。このように構成することで、出力電力が際限なく下がることを防ぎ、可能な限り大きな出力電力を電力変換装置1が出力することができる。
【0100】
また、ステップS107において、指令値調整部21は、出力電力指令値Pout*を上げる調整を行いながら、コンデンサ電圧を取得してコンデンサ電圧振幅値を演算し、そのコンデンサ電圧振幅値が許容振幅値となるまで、出力電力指令値Pout*を上げる調整を行ってもよい。このように構成することで、出力電力が上昇してコンデンサ電圧が許容振幅値を超えることを防ぐことができる。
【0101】
また、本実施の形態1では、出力電力Poutの指令値として出力電力指令値Pout*を定義し、この出力電力指令値Pout*を調整することで出力電力Poutを調整する形態を示した。しかしながら、この形態に限定されず、出力電流Iout、出力電圧Vout、入力電流Iacの各指令値Iout*、Vout*、Iac*に対して乗算する変数を定義し、この変数を調整することで、各指令値Iout*、Vout*、Iac*を直接調整して、出力電力Poutを調整する形態を実現してもよい。具体的には、例えば、出力電力Poutを調整しない場合には、変数を1とし、出力電力Poutを下げる場合には、変数を下げて、各指令値Iout*、Vout*、Iac*に対して乗算する手法等が考えられる。
【0102】
以上、本実施の形態1によれば、AC−DC変換回路とDC−DC変換回路との間に設けられる平滑コンデンサのコンデンサ電圧を取得し、取得したコンデンサ電圧が、コンデンサ電圧指令値を基準とした電圧許容範囲内に収まるように、出力電力指令値を調整するように構成されている。
【0103】
これにより、電力変換装置の動作中に平滑コンデンサの静電容量減少に起因して、平滑コンデンサのリプル電圧成分の振幅値が許容値範囲外となる可能性が生じたとしても、コンデンサ電圧に基づいて出力電力指令値が調整される。したがって、リプル電圧成分を含むコンデンサ電圧の振幅値が減少するので、電力変換装置を安定的に動作させることができる。
【0104】
また、平滑コンデンサの電圧瞬時値によらず、定常的に出力電力指令値が調整されるので、負荷に流れる負荷電流に平滑コンデンサのリプル電圧成分に依存したリプル電流が重畳されることを抑制することができる。その結果、周囲温度の変化、劣化等に起因して平滑コンデンサの静電容量が減少したとしても、リプル電圧成分を含むコンデンサ電圧の振幅値を許容範囲内に収めることができる。したがって、平滑コンデンサの静電容量を削減するとともに、電力変換装置のコストおよびサイズを低減することができる。
【0105】
実施の形態2.
先の実施の形態1では、リプル電圧成分を含むコンデンサ電圧Vcの振幅値が、許容振幅値範囲内に収まるように、出力電力指令値Pout*を調整するように構成された制御装置2について説明した。これに対して、本発明の実施の形態2では、リプル電圧成分を含むコンデンサ電圧Vcの振幅値が、許容振幅値内に収まるように、コンデンサ電圧指令値Vc*を調整するように構成された制御装置2について説明する。なお、本実施の形態2では、先の実施の形態1と同様である点の説明を省略し、先の実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0106】
ここで、本実施の形態1では、コンデンサ電圧指令値Vc*が一定とし、コンデンサ電圧指令値Vc*に対して正側と負側の許容振幅値を等しくして、出力電力指令値Pout*を下げる調整を行っているので、出力電力Poutが必要以上に制限される可能性がある。そこで、本実施の形態2では、コンデンサ電圧指令値Vc*を調整することで、出力電力指令値Pout*を可能な限り変更することなく、平滑コンデンサ13の静電容量を削減する。
【0107】
図9は、本発明の実施の形態2における電力変換装置の制御装置2を備えた電力供給システムを示す構成図である。指令値調整部21は、AC−DC制御部22およびDC−DC制御部23に対して、出力電力指令値Pout*を送信し、コンデンサ電圧指令値Vc*を調整するための調整値Vc_addをさらに送信する。なお、調整値Vc_addの初期値はゼロである。
【0108】
AC−DC制御部22およびDC−DC制御部23は、先の実施の形態1と同様に、出力電流制御モードと、入力電流制御モードを有する。また、本実施の形態2におけるAC−DC制御部22およびDC−DC制御部23は、先の
図2および
図6に示すコンデンサ電圧指令値Vc*を以下のように演算するように構成されている。
【0109】
図10は、
図9のAC−DC制御部22およびDC−DC制御部23がコンデンサ電圧指令値Vc*を演算する場合に機能する演算器29を示すブロック図である。
【0110】
AC−DC制御部22およびDC−DC制御部23のそれぞれに具備される演算器29は、加算器291を有する。加算器291は、予め設定された原指令値Vc_ori*に、調整値Vc_addを加算することで、コンデンサ電圧指令値Vc*を生成する。
【0111】
次に、制御装置2の指令値調整部21の動作について、
図11を参照しながら説明する。
図11は、
図9の指令値調整部21の一連の動作を示すフローチャートである。
【0112】
ステップS201において、指令値調整部21は、コンデンサ電圧検出器16によって一定周期の間に検出されたコンデンサ電圧波形の振幅値と、原指令値Vc_ori*とから、正側振幅値および負側振幅値をコンデンサ電圧振幅値として演算し、処理がステップS202へと進む。具体的には、指令値調整部21は、原指令値Vc_ori*を基準として、コンデンサ電圧波形の正側の振幅値を正側振幅値として演算し、コンデンサ電圧波形の負側の振幅値を負側振幅値として演算する。
【0113】
ステップS202において、指令値調整部21は、ステップS201で演算した正側振幅値が正側許容振幅値よりも大きいか否かを判定する。正側振幅値が正側許容振幅値よりも大きいと判定された場合には、処理がステップS203へと進み、正側振幅値が正側許容振幅値以下であると判定された場合には、処理がステップS206へと進む。
【0114】
ステップS203において、指令値調整部21は、ステップS201で演算した負側振幅値が負側許容振幅値よりも大きいか否かを判定する。負側振幅値が負側許容振幅値よりも大きいと判定された場合には、処理がステップS204へと進み、負側振幅値が負側許容振幅値以下であると判定された場合には、処理がステップS205へと進む。
【0115】
ステップS204において、指令値調整部21は、先の
図7のステップS103と同様に、現在の出力電力指令値Pout*を下げる調整を行い、処理が先の
図7に示すフローチャートに移行する。
【0116】
ステップS205において、指令値調整部21は、調整値Vc_addを下げる調整を行い、処理が終了となる。
【0117】
なお、調整値Vc_addを下げる場合、どのように下げてもよいが、例えば、調整値Vc_addを予め設定された値の分だけ下げるケース、調整値Vc_addを予め設定された割合の分だけ下げるケース等が考えられる。
【0118】
ここで、調整値Vc_addを下げる調整をについて、
図12を参照しながら説明する。
図12は、
図9の指令値調整部21が調整値Vc_addを下げる調整を行った場合のコンデンサ電圧Vcおよび出力電力Poutの挙動の一例を示す説明図である。
【0119】
なお、
図12において、上部は、コンデンサ電圧Vc[V]の時間変化を示し、下部は、出力電力Pout[W]の時間変化を示す。また、
図12では、コンデンサ電圧指令値Vc*、正側許容振幅値および負側許容振幅値の各時間変化も併せて図示している。さらに、
図12の網掛け部分の期間において、調整値Vc_addを下げる調整が行われることで、コンデンサ電圧指令値Vc*が下がるものとする。
【0120】
図12に示すように、正側許容振幅値は、原指令値Vc_ori*を基準とした正側の電圧許容範囲の上限値を規定し、負側許容振幅値は、原指令値Vc_ori*を基準とした負側の電圧許容範囲の下限値を規定するものである。すなわち、正側の電圧許容範囲において、上限値と原指令値Vc_ori*の差が正側許容振幅値であり、負側の電圧許容範囲において、原指令値Vc_ori*と下限値との差が負側許容振幅値である。また、原指令値Vc_ori*は一定値であるので、正側許容振幅値および負側許容振幅値も一定値となる。
【0121】
図12に示すように、調整値Vc_addを下げる調整が行われることで、コンデンサ電圧指令値Vc*が下がるのに伴って、正側振幅値が正側許容振幅値を超えない状態となる。このように、正側振幅値が正側許容振幅値よりも大きく、かつ負側振幅値が負側許容振幅値以下であれば、コンデンサ電圧指令値Vc*を下げる調整を行うことで、コンデンサ電圧の振幅値が許容振幅値範囲内に収まるようにすることができる。
【0122】
このように、指令値調整部21は、比較結果として、正側振幅値が、正側許容振幅値よりも大きく、かつ負側振幅値が負側許容振幅値以下である場合、コンデンサ電圧指令値Vc*を下げる調整を行う。
【0123】
図11の説明に戻り、ステップS206において、指令値調整部21は、ステップS201で演算した負側振幅値が負側許容振幅値よりも大きいか否かを判定する。負側振幅値が負側許容振幅値よりも大きいと判定された場合には、処理がステップS207へと進み、負側振幅値が負側許容振幅値以下であると判定された場合には、処理がステップS208へと進む。
【0124】
ステップS207において、指令値調整部21は、調整値Vc_addを上げる調整を行い、処理が終了となる。
【0125】
なお、調整値Vc_addを上げる場合、どのように上げてもよいが、例えば、調整値Vc_addを予め設定された値の分だけ上げるケース、調整値Vc_addを予め設定された割合の分だけ上げるケース等が考えられる。
【0126】
ここで、調整値Vc_addを上げる調整について、
図13を参照しながら説明する。
図13は、
図9の指令値調整部21が調整値Vc_addを上げる調整を行った場合のコンデンサ電圧Vcおよび出力電力Poutの挙動の一例を示す説明図である。
【0127】
なお、
図13において、上部は、コンデンサ電圧Vc[V]の時間変化を示し、下部は、出力電力Pout[W]の時間変化を示す。また、
図13では、コンデンサ電圧指令値Vc*、正側許容振幅値および負側許容振幅値の各時間変化も併せて図示している。さらに、
図13の網掛け部分の期間において、調整値Vc_addを上げる調整が行われることで、コンデンサ電圧指令値Vc*が上がるものとする。
【0128】
図13に示すように、正側許容振幅値は、原指令値Vc_ori*を基準とした正側の電圧許容範囲の上限値を規定し、負側許容振幅値は、原指令値Vc_ori*を基準とした負側の電圧許容範囲の下限値を規定するものである。すなわち、正側の電圧許容範囲において、上限値と原指令値Vc_ori*との差が正側許容振幅値であり、負側の電圧許容範囲において、原指令値Vc_ori*と下限値との差が負側許容振幅値である。また、原指令値Vc_ori*は一定値であるので、正側許容振幅値および負側許容振幅値も一定値となる。
【0129】
図13に示すように、調整値Vc_addを上げる調整が行われることで、コンデンサ電圧指令値Vc*が上がるのに伴って、負側振幅値が負側許容振幅値を超えない状態となる。このように、正側振幅値が正側許容振幅値以下であり、かつ負側振幅値が負側許容振幅値よりも大きければ、コンデンサ電圧指令値Vc*を上げる調整を行うことで、リプル電圧成分の振幅値が許容振幅値範囲内に収まるようにすることができる。
【0130】
このように、指令値調整部21は、比較結果として、正側振幅値が、正側許容振幅値以下であり、かつ負側振幅値が負側許容振幅値よりも大きい場合、コンデンサ電圧指令値Vc*を上げる調整を行う。
【0131】
図11の説明に戻り、ステップS208において、指令値調整部21は、現在の調整値Vc_addが0であるか否かを判定する。調整値Vc_addが0であると判定された場合には、処理が終了となり、調整値Vc_addが0でないと判定された場合には、処理がステップS209へと進む。
【0132】
ステップS209において、指令値調整部21は、調整値Vc_addが0となるように調整を行い、処理が終了となる。
【0133】
このように、コンデンサ電圧指令値Vc*を調整した後、比較結果として、正側振幅値が、正側許容振幅値以下となり、かつ負側振幅値が負側許容振幅値以下となった場合、コンデンサ電圧指令値Vc*を調整する前の元の値に戻す。
【0134】
すなわち、指令値調整部21は、調整値Vc_addがゼロ以外の場合、調整値Vc_addがゼロとなるように調整する動作を行うように構成されている。したがって、正側振幅値および負側振幅値が減少した際に、自動的にコンデンサ電圧指令値Vc*を原指令値Vc_ori*に戻すことができる。
【0135】
以上、
図11の説明から分かるように、指令値調整部21は、取得したコンデンサ電圧Vcの電圧波形と、原指令値Vc_ori*から、正側振幅値および負側振幅値を演算し、演算した正側振幅値および負側振幅値と、コンデンサ電圧指令値Vc*を基準とした電圧許容範囲の上限値を規定する正側許容振幅値と、電圧許容範囲の下限値を規定する負側許容振幅値とを比較し、比較結果に基づいて、コンデンサ電圧指令値Vc*を調整する。
【0136】
なお、ステップS205において、指令値調整部21は、調整値Vc_addを下げる調整を行いながら、コンデンサ電圧を取得して正側振幅値を演算し、その正側振幅値が正側許容振幅値を下回るまで、調整値Vc_addを下げる調整を行ってもよい。このように構成することで、コンデンサ電圧が際限なく下がることを防ぎ、可能な限り元々の指令値に近い値のコンデンサ電圧とすることができる。
【0137】
また、ステップS205において、指令値調整部21は、調整値Vc_addを下げる調整を行いながら、コンデンサ電圧を取得して負側振幅値を演算し、その負側振幅値が負側許容振幅値を下回る直前までを上限として、調整値Vc_addを下げる調整を行ってもよい。このように構成することで、コンデンサ電圧が際限なく下がることを防ぎ、平滑コンデンサ13のリプル電圧成分の振幅値と許容振幅値の間にマージンを置くことができる。
【0138】
また、ステップS207において、指令値調整部21は、調整値Vc_addを上げる調整を行いながら、コンデンサ電圧を取得して正側振幅値を演算し、その正側振幅値が正側許容振幅値を上回るまで、調整値Vc_addを上げる調整を行ってもよい。このように構成することで、コンデンサ電圧が際限なく上がることを防ぎ、可能な限り元々の指令値に近い値のコンデンサ電圧とすることができる。
【0139】
また、ステップS207において、指令値調整部21は、調整値Vc_addを上げる調整を行いながら、コンデンサ電圧を取得して正側振幅値を演算し、その正側振幅値が正側許容振幅値を上回る直前までを上限として、調整値Vc_addを上げる調整を行ってもよい。このように構成することで、コンデンサ電圧が際限なく上がることを防ぎ、平滑コンデンサ13のリプル電圧成分の振幅値と許容振幅値との間にマージンを置くことができる。
【0140】
また、ステップS209において、指令値調整部21は、正側振幅値が減少した場合、正側振幅値が正側許容振幅値となるまでを上限として、調整値Vc_addを上げる調整を行ってもよい。このように構成することで、平滑コンデンサ13のコンデンサ電圧を戻す際に、正側振幅値が許容振幅値を超えることを防ぐことができる。
【0141】
また、ステップS209において、指令値調整部21は、コンデンサ電圧振幅値が減少した場合、負側振幅値が負側許容振幅値となるまでを下限として、調整値Vc_addを下げる調整を行ってもよい。このように構成することで、平滑コンデンサ13のコンデンサ電圧を戻す際に、負側振幅値が許容振幅値を超えることを防ぐことができる。
【0142】
以上、本実施の形態2によれば、AC−DC変換回路とDC−DC変換回路との間に設けられる平滑コンデンサのコンデンサ電圧を取得し、取得したコンデンサ電圧が電圧許容範囲内に収まるように、コンデンサ電圧指令値を調整するように構成されている。より具体的には、実施の形態2では、取得した平滑コンデンサのコンデンサ電圧の振幅値として、一定の原指令値を基準とした正側振幅値および負側振幅値を演算し、演算した正側振幅値および負側振幅値と、正側許容振幅値と、負側許容振幅値とを比較し、比較結果に基づいて、原指令値に対して加算する調整値を調整することでコンデンサ電圧指令値を調整するように構成されている。
【0143】
これにより、電力変換装置の動作中に平滑コンデンサの静電容量減少に起因して、平滑コンデンサのリプル電圧成分の振幅値が許容範囲外となる可能性が生じたとしても、コンデンサ電圧に基づいて、出力電力指令値ではなく、コンデンサ電圧指令値が調整される。したがって、先の実施の形態1と同様の効果が得られ、さらに、出力電力Poutが必要以上に制限されることを抑制することができる。
【0144】
なお、本実施の形態1、2では、第1の電力変換回路がAC/DC変換回路11であり、第2の電力変換回路がDC/DC変換回路12である電力変換装置1に対して本発明を適用する場合を例示したが、以下の形態の電力変換装置に対しても本発明を適用することで同様の効果が得られる。
【0145】
すなわち、第1の電力変換回路がAC−DC変換回路であり、第2の電力変換回路がインバータ回路である電力変換装置に対しても本発明を適用することができる。また、第1の電力変換回路がDC−DC変換回路であり、第2の電力変換回路がDC−DC変換回路である電力変換装置に対しても本発明を適用することができる。さらに、第1の電力変換回路がDC−DC変換回路であり、第2の電力変換回路がインバータ回路である電力変換装置に対しても本発明を適用することができる。